説明

直動案内ユニット

【課題】この直動案内ユニットは,エンドキャップに給油路を形成するチューブを配設し,ユニットの配設姿勢にかかわらず,ローラの循環路へ潤滑油を漏洩させることなく少量でも確実に給油できる。
【解決手段】この直動案内ユニットは,スライダを構成するエンドキャップ4には,ローラが転走する軌道路に潤滑油を給油するため,給油口29から方向転換路に延びる可撓自在なフッ素樹脂製のチューブ20が配設されている。チューブ20は,潤滑油の給油路を構成する。チューブ20の先端部50は,エンドキャップ4を構成するスペーサ8に配設された方向転換路に開口する分岐部材39に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,長尺な軌道レール及び該軌道レール上を転動体を介して相対移動するスライダから構成されている直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,直動案内ユニットは,工作機械,各種組立装置,搬送機械等の各種の装置の摺動部に組み込まれて使用され,特に,工作機械では,取付けベース即ちベッドが傾斜した傾斜面に取り付けて使用されることがあり,その上で高精度が要望されている。また,直動案内ユニットについて,環境問題を含め,潤滑油の漏れが無く,少量の潤滑油の給油で効果的に潤滑されることが求められている。
【0003】
従来,直動転がり案内ユニットとして,本出願人に係る出願のものが知られている。該直動転がり案内ユニットは,エンドキャップの潤滑溝に流量調整弁を設けて,水平以外の状態で使用してもスライダに設けた左右の軌道路へ潤滑油の供給量が等しく良好な潤滑が行えるものである(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,直動案内装置として,潤滑油の漏出やコストアップ等を招くことなく,潤滑油をエンドキャップの正面側及び側面側にいずれからでも供給できるものが知られている。該直動案内装置は,スライダの移動方向両端に設けられたエンドキャップにブロック状の給油路形成部材を配設し,エンドキャップの正面側及び側面側のいずれからでも潤滑油を供給できるように構成したものである(例えば,特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平6−35645号公報
【特許文献2】特開2005−155909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,上記の本出願人が開発した直動転がり案内ユニットは,潤滑油の給油が少量な場合には,潤滑油をエンドキャップに形成した潤滑溝を直接通って供給しているため,例えば,潤滑油を12分毎に0.03ccの給油量では,少々の間欠的な給油であるため,それぞれの循環路である軌道路に所定の潤滑油を給油することが難しかった。
【0006】
また,上記直動案内装置では,潤滑油の給油が少量な場合等では,潤滑油の漏れが無いようにしなければならないものであり,潤滑油の供給通路の密封構造が複雑になるという問題があった。
【0007】
ところで,近年,工作機械等については,高速摺動,高剛性,高精度に適合する直動案内ユニットが要望される一方,他方では,近年の環境問題等から少量の潤滑油の給油であっても,直動案内ユニットを傾斜状態,横向き状態等の各種の取付け状態であっても,転動体が転走する循環路に適切に給油できる直動案内ユニットが要望されている。また,直動案内ユニットでは,当然のことながら,転動体が転動する軌道面間でなる軌道路において,金属接触して異常摩耗や損傷が生じないように,潤滑剤を給油することが不可欠なものになっている。また,工作機械用の直動案内ユニットとしては,転動体がローラでなる形式のものが負荷荷重や精度の面からも好適であり,上記要望に最適なものが求められている。
【0008】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,スライダを構成するエンドキャップに給油路を構成するチューブを配設することによって,ユニットそのものが傾斜状態,横向き状態等の如何なる配設姿勢で使用されても,給油途中経路での潤滑油の漏れが発生することなく,少量の潤滑油の給油でもスムーズに且つ確実に給油を行うことができ,しかも少量の潤滑油でも確実に迅速に給油できるので,循環路を転走する転動体を効率的に潤滑することができることを特徴とする直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,両側面の長手方向に沿って第1軌道面が形成された軌道レール及び前記軌道レールに跨架して転動体を介して相対摺動自在なスライダを備え,
前記スライダは,前記軌道レールの前記第1軌道面に対向して第2軌道面が形成され且つ前記第1軌道面と第2軌道面間に形成される軌道路に平行なリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面に取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,及び前記軌道路と前記リターン路と一対の前記方向転換路とで構成される循環路を転走する複数の前記転動体を有することから成る直動案内ユニットにおいて,
前記スライダには,前記軌道路に潤滑油を給油するための給油口が設けられ,前記給油口から前記循環路に連通する可撓自在なチューブが配設され,前記チューブは,前記スライダの前記給油口から給油された前記潤滑油の給油路を構成していることを特徴とする直動案内ユニットに関する。
【0010】
また,この直動案内ユニットにおいて,前記給油口は,前記エンドキャップに形成されている。更に,前記潤滑油は,前記スライダの1箇所の前記給油口のみから給油されるように構成されている。
【0011】
また,この直動案内ユニットにおいて,前記チューブは,前記給油口から前記スライダの両袖部の前記循環路にそれぞれに連通する複数本でなる。更に,前記チューブは,互いに同一口径及び/又は異なる口径を有するものである。
【0012】
また,この直動案内ユニットにおいて,前記循環路は,前記スライダの両袖部に前記循環路がそれぞれ一対形成され,前記循環路にそれぞれ給油するため,前記循環路のそれぞれに開口する分岐部材が前記チューブの先端部に嵌合して設けられている。
【0013】
また,前記エンドキャップは,前記方向転換路の外周部を形成するエンドキャップ本体と前記エンドキャップ本体に嵌合して前記方向転換路の内周部を形成するスペーサとから構成され,前記スペーサに前記分岐部材が嵌合して配設されている。
【0014】
また,この直動案内ユニットは,前記チューブの先端部には,潤滑油の油量を制限する調整弁が配設されている。また,前記チューブは,前記エンドキャップに形成された油溝内に入って配設されている。
【0015】
また,前記チューブは,フッ素樹脂製になっている。
【発明の効果】
【0016】
この直動案内ユニットは,上記のように構成されているので,直動案内ユニットの取付け姿勢が傾斜状態又は横向き状態にあっても,潤滑油をチューブ内を通して循環路に確実に且つ迅速に給油することができ,給油量が間欠的に少量であっても確実に給油することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,図面を参照して,この発明による直動案内ユニットの実施例を説明する。この発明による直動案内ユニットは,図1及び図2に示すように,両側面45の長手方向に沿ってそれぞれ一対の軌道面11が形成された長尺状の軌道レール1,及び軌道レール1に跨架して転動体であるローラ5を介して相対摺動自在なスライダ2から成り,スライダ2の軌道レール1への取付け姿勢にかかわらず,給油が確実に行われるものである。スライダ2は,軌道面11に対向して形成された軌道面12及び軌道面11,12間の軌道路46に平行なリターン路10が形成されたケーシング3,ケーシング3の両端面35に固着されて軌道路46とリターン路10とを連通する方向転換路30が形成されたエンドキャップ4,エンドキャップ4の外端面47に配置されて軌道レール1とスライダ2との隙間をシールするエンドシール15,軌道路46とリターン路10と一対の方向転換路30とからなる循環路55(図4)を転走する複数のローラ5,及び軌道路46にてケーシング3の長手方向に対向して延び且つローラ5を保持する保持板13を有している。軌道レール1には,軌道レール1を取付けベース23に取り付けるための取付けボルト19が挿通する取付け用孔17が形成されている。ケーシング3には,ケーシング3に他部品を固定するための取付け用ねじ孔18が設けられている。ケーシング3に形成されているリターン路10は,ケーシング3に軌道溝12にほぼ平行に延びるように形成された嵌挿孔9に筒体6を挿通するこよによって形成されている。また,エンドキャップ4は,方向転換路30の外周部を構成するエンドキャップ本体7とエンドキャップ本体7に嵌合して方向転換路30の内周部を構成するスペーサ8とから構成されている。エンドキャップ4には,ケーシング3にエンドシール15と共に固定されるため,取付けボルト(図示せず)が挿通する取付け孔42が形成されている。また,エンドキャップには,方向転換路30をリターン路10に連通させるため,ケーシング3の嵌挿孔9に嵌挿する接続部43(図6)が設けられている。
【0018】
この直動案内ユニットは,軌道路46において,大きな負荷を受けながら転動体5が軌道面11,12間を転動するので,金属接触して異常摩耗や損傷が生じないように,潤滑剤(グリース・潤滑油)を給油することが不可欠なものになっており,エンドキャップ4には,スライダ2の循環路55,特に軌道路46に潤滑剤を供給するために,また,どちらからの方向でも給油できるように,両側面31及び端面47の中央部に給油口29が設けられている(図1,図5参照)。この直動案内ユニットでは,給油口29は給油に必要な位置の給油口29を選択し,その他の給油口29は封止栓をして密封しておくものである。ケーシング3は,軌道レール1の両側面45に沿って延びる袖部16,及び軌道レール1に跨がって両袖部16を連結する連結部53から構成されている。また,エンドキャップ4は,ケーシング3の袖部16に対向する袖部26,及び軌道レール1に跨がって両袖部26を連結し且つ連結部53に対向する連結部27から構成されている。
【0019】
図2に示すように,スライダ2の両袖部(ケーシング3の袖部16,エンドキャップ4の袖部26)には,それぞれ一対の循環路55が形成され,一対の循環路55の内,一方のローラ5は,スライダ2の下方向負荷を受ける下側の軌道路46からケーシング3の上側のリターン路10に循環し,他方のローラ5は,スライダ2の上方向負荷を受ける上側の軌道路46からケーシング3の下側のリターン路10に循環して構成され,方向転換路30は,エンドキャップ4の両袖部26にたすき掛けに交差状態(図5参照)にそれぞれ形成されている。また,循環路55のローラ5間には,ローラ5同士の接触を防止するセパレータ49が介在している。スライダ2の下面には,軌道路46に異物等が浸入するのを防止するため,下面シール14は取り付けられている。
【0020】
図3に示すように,この直動案内ユニットは,工作機械等に使用される場合に,取付けベース23(又はベッド)が傾斜(傾斜角θ)した傾斜面48に取り付けられる仕様が多いものになっており,傾斜角θは,例えば,30°,45°,60°,90°等に形成されている。図3に示すの実施例は,傾斜角θが30°の傾斜面48に形成されている。この実施例では,傾斜面48には,一対の直動案内ユニットの軌道レール1がそれぞれ平行に延びて設置されており,図示していないが,一つの軌道レール1に2つのスライダ2が跨架してなり,合計4つのスライダ2により,ベース48に対向して可動するテーブル等の可動体が取り付けられており,可動体がベース48上を安定して堅固に直動案内されるように構成されている。また,この実施例では,軌道レール1に取り付けられる給油のための配管継ぎ手22は,互いに向き合って取り付けられ,下側の軌道レール1には,エンドキャップ4の上方側の側面31の給油口29に取り付けられ,また,上側の軌道レール1には,エンドキャップ4の下方側の側面31の給油口29に取り付けられている。
【0021】
工作機械等の装置では,複数のスライダ2に同時に給油できるように,潤滑剤には流動性を有する潤滑油が使用され,給油ポンプから集中給油され,エンドキャップ4の給油口29(ねじ穴)には配管継ぎ手22が配設され,配管継ぎ手22には給油ポンプからの給油パイプが接続される。この実施例では,潤滑油の方向転換路30への集中給油に際し,配管継ぎ手22は,例えば,一方(図3の左側)の直動案内ユニットLにおいては,傾斜したエンドキャップ4の上側になる側面31に取り付けられ,対向する他方(図3の右側)の直動案内ユニットRでは,傾斜したエンドキャップ4の下側になる側面31に取り付けられている。エンドキャップ4について,チューブ20が接続される給油口29は,ベース23が傾斜している場合に,上側に位置する側面31に(図5の左側)に形成され,図3で示される一方の直動案内ユニットの正面側のエンドキャップ4になっている。エンドキャップ4に形成された給油口29は,実施例ではねじ付きの盲穴であり,チューブ20は,給油口29の壁面に形成された連通孔51に通されて給油口29内に先端が開口している。連通孔51を貫通するチューブ20の回りはシール剤24で密封されている。従って,給油ポンプから給油口29に給油された潤滑油は,給油口29からチューブ20の先端の開口からチューブ20内に流入し,チューブ20によって循環路55の方向転換路30の給油領域へと給油されることになる。
【0022】
図4に示すように,エンドキャップ4に形成される循環路55における方向転換路30は,たすき掛けに交差状態に直交して形成され,それぞれに,リターン路10,軌道路46,及びリターン路10と軌道路46とを連通する周長の長い方向転換路30Lと周長の短い方向転換路30Sとで構成されている。エンドキャップ4の給油口29から給油された潤滑油は,ケーシング3の端面35に当接したエンドキャップ4の背面部32になるスペーサ8の背面部に形成された開口部即ち注ぎ口41から吐出され,図5では,方向転換路30と軌道路46との境部分の開口部から潤滑油が吐出して,転動体5が軌道路46に循環することによって軌道路46に給油される。また,他方では,方向転換路30とリターン路10との境部分の開口部から潤滑油が吐出して,転動体5が軌道路46に循環することによって軌道路46に給油される。
【0023】
この直動案内ユニットは,特に,図5に示すように,エンドキャップ4には,一つの給油口29から可撓自在即ち曲がり自在なチューブ20を配管して循環路55の方向転換路30に連通させ,チューブ20が給油口29から給油された潤滑油を循環路55に吐出する給油路に形成されたことに特徴を有している。即ち,チューブ20は,一端が給油口29に開口し且つ他端が循環路55の方向転換路30に開口する分岐部材39に接続し,潤滑油を給油口29から分岐部材39へと給油する給油路を構成している。チューブ20は,両袖部26の一対の循環路55の方向転換路30にそれぞれ確実に給油できるように,1箇所の給油口29から別々のチューブ20によって各袖部26の一対の循環路55の方向転換路30に配管されている。ここでは,別個になる2本のチューブ20が配管されている。更に,チューブ20の給油出口側の先端部50には,一対の循環路55の方向転換路30のそれぞれに開口する分岐部材39が嵌着している。また,エンドキャップ4には,従来からケーシング3の端面35に当接する当接面(背面)32に給油口29から各袖部26の一対の循環路55の方向転換路30に連通する油溝25が形成されており,油溝25とケーシング3の端面35とで給油口29から給油された潤滑剤の給油路が形成されている。
【0024】
この直動案内ユニットについて,図5〜図7に示す実施例は,チューブ20の配管が取付けベース23の傾斜角が30°でなる傾斜面48に取り付けた場合である。エンドキャップ4は,両袖部26が形成され,各袖部26には直交する一対の方向転換路30の外周部が形成されたエンドキャップ本体7と,エンドキャップ本体7の各方向転換路30に直交してそれぞれに嵌合したスペーサ8(8S及び8L)とで構成されている。詳細には,長いサイズのスペーサ8Lは,エンドキャップ本体7に合体して周長の長い方向転換路30Lを形成し,方向転換路30Lの内周部を形成している。また,短いサイズのスペーサ8Sは,エンドキャップ本体7にスペーサ8Lが合体した後の嵌合部分に合体して周長の短い方向転換路30Sを形成し,方向転換路30Sの内周部を形成している。従って,正確には,周長の短い方向転換路30Sの外周部は,エンドキャップ本体7とスペーサ30Lとで構成される。合体したスペーサ8Sとスペーサ8Lとの背面には,エンドキャップ本体7に形成された油溝25に連通してそれぞれの循環路55の方向転換路30に開口するように,十字状(X字状)に延びる油溝33が形成されている。スペーサ8の油溝33に分岐部材39が嵌合している。分岐部材39には,凹溝37が形成されている。従って,スペーサ8の油溝33に分岐部材39が嵌入することによって,スペーサ8の油溝33と分岐部材39の凹溝37とが向かい合って給油路を形成することになる。
【0025】
チューブ20は,エンドキャップ4に形成された油構25内に嵌入して配設されている。チューブ20は,実施例では2本から構成され,2本のチューブ20の口元をそろえて油溝25から(左側の)給油口29に連通する連通孔51に通して給油口29に覗かせ,2本のチューブ20が一緒になって給油口29から延びる油溝25内に沿って中央部52まで配管され,中央部52から個々に分かれてそれぞれの袖部26の方向転換路30に延びて配管され,それぞれのチューブ20の先端部50には分岐部材39が嵌着され,分岐部材39により分岐して各方向転換路30L,30Sに開口したものになっている。また,2本のチューブ20が挿入された給油口29の連通孔51には,チューブ20と連通孔51との隙間から潤滑油が漏れないようにシーリングされている。現状,シール剤24により塞がれているが,シール部材24を嵌め込むようにしてもよい。また,袖部26の一方の分岐部材39は,一方の方向転換路30Sのリターン路10側に開口し,他方の方向転換路30Lの軌道路46側に開口したものになっており,他方の分岐部材39は,一方の方向転換路30Lのリターン路10側に開口し,他方の方向転換路30Sの軌道路46側に開口したものになっている。
【0026】
図8に示すように,分岐部材39は,チューブ20が嵌着する断面円形状の凹溝である嵌合溝36が形成された嵌合部34と,嵌合部34から分岐してチューブ20の先端開口部に連通する給油溝である凹溝37が形成された二股の分岐部38とからなっている。実施例では,分岐部材39は,スペーサ8の油溝33に嵌合され,分岐部材39に形成された凹溝37がスペーサ8に形成された油溝33と共働して給油路を形成している。しかしながら,分岐部材39に形成した凹溝37の代わりに,図示していないが,分岐部材39に連通孔を形成してもよいものである。分岐部材37は,例えば,合成ゴム製になっている。この直動案内ユニットは,上記構成により,図3に示すように,直動案内ユニットRのスライダ2の一箇所の給油口29である配管継ぎ手22に給油ポンプから給油された潤滑油は,各チューブ20内を流れて各循環路55に吐出するものになっており,少量の潤滑油の給油にあっても,潤滑油の漏れがなく且つ各循環路55に確実に潤滑できるものになっている。
【実施例1】
【0027】
この直動案内ユニットを傾斜した取付けベース23に配設して,潤滑油の供給を次のように行った。この時,取付けベース23の傾斜角θが30°,給油ポンプ(図示せず)の吐出圧が1.4Mpaであり,吐出量が5分毎に0.03cc(0.03cc/5min)の給油である。また,潤滑油の粘度が40℃での動粘度の中心値が68cSt(ISO,VG68)であり,チューブ20の仕様は,内径;Φ0.65mm,外径;Φ1.25mmであり,使用されている2本のチューブは同径に形成されている。また,チューブ20の長さは,現状,左側(分岐部材L側)が若干長くなっているが,或いは,同じ長さに形成してよいものである。また,チューブ20は,傾斜状態,給油状態などによっては,2本のチューブ20の口径を互いに異径に構成することによって,各循環路55に均等の油量を給油することができる。また,チューブ20は,フッ素樹脂製になっており,流動性もよく,耐熱性,耐薬品性に優れたものになっている。
【0028】
図7に示すように,エンドキャップ4は,図5のエンドキャップ4に対して,給油口29が逆側,即ち,図示の右側側面に設けられており,図3で示される他方の直動案内ユニットRの正面側のエンドキャップ4になっている。エンドキャップ4の給油口29は,傾斜した時に,下側に位置する側面(図7の図示で右側側面)に形成(設定)されている。集中給油する際に,給油パイプの配管の関係からこのような給油口29の位置に設定されている。
【0029】
エンドキャップ4は,図5のエンドキャップ4に比較して給油口29がエンドキャップ4の反対の側面に形成(設定)され,図5のチューブ20の配管と同様に,給油口29から2本のチューブ20が延びて中央部52まで配管され,中央部52から個々に分かれてそれぞれの袖部26の方向転換路30に延びて配管され,それぞれのチューブ20の先端部50には分岐部材39が嵌着され,分岐部材39により分岐して各方向転換路30L,30Sに開口したものになっている。この直動案内ユニットは,上記構成により,傾斜状態の下側からの給油にもかかわらず,図3に示すように,直動案内ユニットRのスライダ2の一箇所の給油口29である配管継ぎ手22に給油ポンプから給油された潤滑油は,各チューブ20内を流れて各循環路55に吐出するものになっており,前述の実施例1に示すように,少量の潤滑油の給油にあっても,潤滑油の漏れがなく且つ各循環路55に確実に潤滑できるものになっている。従って,この直動案内ユニットは,スライダ2の給油口29から循環路55までチューブ20を配管することによって,直動案内ユニットが傾斜状態に取り付けられても少量の潤滑油で確実に給油できるものになっている。また,チューブ20は,従来のエンドキャップの油溝に嵌入するように配管すればよく,簡単に構成することができるものである。
【0030】
図9には,この発明による直動案内ユニットの別の実施例が示されており,図3で示される傾斜角θが90°,即ち,スライダ2が横向き状態で取り付けられた場合におけるチューブ20の配管状態を示している。従って,第2実施例は,第1実施例とはチューブ20に配管状態が異なっている。チューブ20が配管される給油口29は,横向き状態で取り付けられた時に,真上になるエンドキャップ4の左側側面に設けられている。チューブ20は,2本でなり,2本のチューブ20の口元をそろえて油溝25から(左側の)給油口29に連通する連通孔に通して給油口29に覗かせ,給油口29から個々に分かれて,一本は近くの袖部26の方向転換路30に延びて配管され,他の一本は袖部26間の連結部27を通り遠い方の袖部26の方向転換路30に延びて配管され,それぞれのチューブ20の先端部50には分岐部材40が嵌着され,分岐部材40により分岐して各方向転換路30L,30Sに開口したものになっている。
【0031】
この直動案内ユニットは,横向き状態で下側になる袖部26の一方の分岐部材40は,それぞれの方向転換路30L,30Sのリターン路10側に開口したものになっており,横向き状態で上側になる他方の分岐都材40は,それぞれの方向転換路30L,30Sの軌道路46側に開口したものになっている。2本のチューブ20が挿入された給油口29の連通孔には,チューブ20と連通孔との隙間から潤滑油が漏れないように,シーリングされている。連通孔は,実施例では,シール剤24により塞がれているが,シール部材24を嵌め込むようにしてもよい。図10に示すように,分岐部材40は,チューブ20が嵌着する断面円形状の凹溝(嵌合溝)が形成された嵌合部34と,嵌合部34から分岐してチューブ20の先瑞開口部に連通する凹溝37が形成された二股の分岐部44とからなっており,スペーサ8の油溝33に嵌合して分岐部材40の凹溝37とで給油路を形成するものになっている。しかしながら,分岐部材40に形成した凹溝37に限らず,分岐部材40に連通孔(図示せず)を形成してもよいものである。この実施例では,分岐部材40は,成形加工で高精度に形成するため全属製になっている。分岐部材40の内部になるチューブ20の先端には,潤滑油の流量を調整するため調整弁となる鋼球のボール28が配設され,調整弁28は,両側の分岐部材40に配設されている。ボール28は,分岐部材40の嵌合部34に遊嵌した状態に配設されている。調整弁のボール28は,横向き状態になった場合に,下側に潤滑油が多く流れ出るのを制限するように作用するものになっている。この直動案内ユニットは,上記構成により,スライダ2が横向き状態(θ=90°)でも,スライダ2の一箇所の給油口29である配管継ぎ手22に給油ポンプから給油された潤滑油は,各チューブ20内を流れて各循環路55に吐出するものになっており,次の実施例に示すように,少量の潤滑油の給油にあっても,潤滑油の漏れがなく且つ各循環路55に確実に潤滑できるものになっている。
【実施例2】
【0032】
この直動案内ユニットを水平面に対して垂直,即ち,鉛直状態の取付けベースに配設して,潤滑油の供給を次のように行った。この時,取付けベース23の傾斜角θが90°,給油ポンプ(図示せず)の吐出圧が1.4Mpaであり,吐出量が12分毎に0.03cc(0.03cc/12min)の給油である。また,潤滑油の粘度が40℃での動粘度の中心値が32cSt(ISO,VG32)であり,チューブ20の仕様は,内径;Φ0.5mm,外径;Φ1.0mmであり,使用されている2本のチューブは同径に形成されている。また,なお,チューブは,2本のチューブの口径を互いに異径にすることで,各循環路55に均等の油糧が給油されることになる。また,チューブ20は,フッ素樹脂製になっており,流動性もよく,耐熱性,耐薬品性に優れたものになっている。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明による直動案内ユニットは,工作機械,各種組立装置,搬送機械,半導体製造装置,測定装置等の各種の装置の摺動部に組み込まれて使用され,特に,傾斜状態又は横向き状態で設置される工作機械に最適なものになっている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明による直動案内ユニットを断面部分を含んだ状態で示す斜視図である。
【図2】図1のA−A平面で断面した横断面図である。
【図3】図1の直動案内ユニットが一対になって取付けベースの傾斜面に取り付けられた状態であってスライダの一端側を示す説明図である。
【図4】図1の直動案内ユニットにおける軌道レールに跨架したスライダに形成される循環路を示す断面図である。
【図5】図3の下側に位置する直動案内ユニットにおいてエンドキャップへのチューブの配設状態の一実施例を示す背面図である。
【図6】図5のエンドキャップを示す側面図である。
【図7】図3の上側に位置する直動案内ユニットにおいてエンドキャップへのチューブの配設状態の一実施例を示す背面図である。
【図8】図5及び図7に示すチューブの先端部に接続する分岐部材であり,スペーサの油溝に嵌入される分岐部材を示す背面図である。
【図9】図1の直動案内ユニットにおけるスライダを鉛直状態に配設した別の実施例を示し,エンドキャップへのチューブの配設状態の一実施例を示す背面図である。
【図10】図9のエンドキャップにおけるスペーサに配設される分岐部材とチューブとの接続状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 軌道レール
2 スライダ
3 ケーシング
4 エンドキャップ
5 転動体
7 エンドキャップ本体
8 スペーサ
10 リターン路
11 軌道面(第1軌道面)
12 軌道面(第2軌道面)
13 保持板
16 袖部
20 チューブ
23 取付けベース
24 シール剤
25 油溝
26 袖部
27 連結部
28 ボール(調整弁)
29 給油口
30 方向転換路
33 油溝
35 端面
37 凹溝
38,44 分岐部
39,40 分岐部材
45 側面
46 軌道路
50 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側面の長手方向に沿って第1軌道面が形成された軌道レール及び前記軌道レールに跨架して転動体を介して相対摺動自在なスライダを備え,
前記スライダは,前記軌道レールの前記第1軌道面に対向して第2軌道面が形成され且つ前記第1軌道面と第2軌道面間に形成される軌道路に平行なリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面に取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,及び前記軌道路と前記リターン路と一対の前記方向転換路とで構成される循環路を転走する複数の前記転動体を有することから成る直動案内ユニットにおいて,
前記スライダには,前記軌道路に潤滑油を給油するための給油口が設けられ,前記給油口から前記循環路に連通する可撓自在なチューブが配設され,
前記チューブは,前記スライダの前記給油口から給油された前記潤滑油の給油路を構成していることを特徴とする直動案内ユニット。
【請求項2】
前記給油口は,前記エンドキャップに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記潤滑油は,前記スライダの1箇所の前記給油口のみから給油されることを特徴とする請求項1又は2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記チューブは,複数本からなり,前記給油口から前記スライダの両袖部のそれぞれの前記循環路に連通していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記チューブは,互いに同一口径及び/又は異なる口径を有することを特徴とする請求項4に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記循環路は,前記スライダの両袖部にそれぞれ一対形成され,前記循環路にそれぞれ給油するため,前記チューブの先端部が前記方向転換路のそれぞれに開口する分岐部材に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記エンドキャップは,前記方向転換路の外周部を形成するエンドキャップ本体と,前記エンドキャップ本体に嵌合して前記方向転換路の内周部を形成するスペーサとから構成され,前記スペーサに形成された凹溝に前記分岐部材が嵌合して配設されていることを特徴とする請求項6に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
前記チューブの前記先端部には,油量を制限する調整弁が配設されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の直動案内ユニット。
【請求項9】
前記チューブは,前記エンドキャップに形成された油溝内に入って配設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項10】
前記チューブは,フッ素樹脂製になっていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−224014(P2008−224014A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67750(P2007−67750)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】