説明

直流電源装置

【課題】リチウムイオンキャパシタ・ユニットを主電源として用い、二次電池を予備電源として用いる直流電源装置において、二次電池の負担を減らして二次電池の劣化を抑え、安定して電力の供給が可能な直流電源装置を提供する。
【解決手段】切換回路8は、電流制限抵抗4を有する第1の放電回路81と、電流制限抵抗4を短絡する第2の放電回路83から構成されている。電圧検出手段5がリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧がユニット下限電圧に達したことを検出すると、第1の放電回路81を通して二次電池3を放電する。リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧がユニット下限電圧よりも高い第1の設定電圧まで上昇したことを検出するかまたはリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧がユニット下限電圧よりも低い第2の設定電圧まで低下したことを検出すると、第2の放電回路83を通して二次電池3を放電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電手段からの放電により、負荷に直流電力を供給する直流電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車のモータなどの負荷に直流電力を供給するための直流電源装置には、比較的容量の大きいキャパシタ(コンデンサ)を用いているものがある(例えば、実開平3−104002号公報)。また、キャパシタは電荷がなくなると電力を供給できなくなるため、二次電池(バッテリ)と併用することで、直流電源の使用時間を延ばす工夫をしている直流電源装置もある(例えば、特開平6−270695号公報〔特許文献2〕、特開2009−112122号公報〔特許文献3〕、特開2004−266888号公報〔特許文献4)及び特開2010−4587号公報〔特許文献5〕)。特に、特許文献3及び5では、大容量のキャパシタとしてリチウムイオンキャパシタを使用して必要最大電力をまかない、二次電池の必要最大電力を小さくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−104002号公報
【特許文献2】特開平6−270695号公報
【特許文献3】特開2009−112122号公報
【特許文献4】特開2004−266888号公報
【特許文献5】特開2010−4587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リチウムイオンキャパシタに比べて、二次電池は、急激な充放電や過放電・過充電によって劣化しやすく、従来の制御方法によっては、二次電池が劣化してしまうという問題がある。例えば、特許文献4に記載の構成では、二次電池が主電源とリレーを介して並列に接続されており、充放電時には二次電池にも制限無く大きな負荷が接続されることになる。また特許文献5に記載の構成では、二次電池の使用頻度が高く、また、DC/DCコンバータを常時使用しているために常に電力を消費してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、リチウムイオンキャパシタ・ユニットを主電源として用い、二次電池を予備電源として用いる直流電源装置において、二次電池の負担を減らして二次電池の劣化を抑え、寿命を延ばし、また、安定して電力の供給が可能な直流電源装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、外部電源によりリチウムイオンキャパシタ・ユニットを充電する際に、二次電池も併せて充電が可能な直流電源装置を提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、直流電源装置が使用される環境温度に適した条件で二次電池を充電可能な直流電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の直流電源装置は、負荷に並列接続されるリチウムイオンキャパシタ・ユニットと、負荷及びリチウムイオンキャパシタ・ユニットに並列接続可能な二次電池と、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧を検出する電圧検出手段と、二次電池を負荷及びリチウムイオンキャパシタ・ユニットに並列接続するための切換回路とを備えている。
【0009】
一般的なリチウムイオンキャパシタは、単体では3.8V程度であるため、用途に合わせて複数のリチウムイオンキャパシタを直列接続してリチウムイオンキャパシタ・ユニットを構成し、必要な出力電圧を得る。また、二次電池は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの充放電可能なものであればよく、その種類は限定されるものではない。
【0010】
リチウムイオンキャパシタには、特性上必然的に定まる下限電圧を下回って過放電状態となると、再充電したとしても、元の特性を得られなくなるという性質がある。そこで、本発明においては、リチウムイオンキャパシタ・ユニットを構成する各リチウムイオンキャパシタの電圧が下限電圧を割り込んでしまうことを避けるために、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧を電圧検出手段で検出し、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧がユニット下限電圧に達すると、切換回路がリチウムイオンキャパシタ・ユニットに二次電池を並列接続して、リチウムイオンキャパシタ・ユニット内の複数のリチウムイオンキャパシタが下限電圧以下に低下するのを防止する。
【0011】
なお、本願明細書において「ユニット下限電圧」とは、直列接続されている複数のリチウムイオンキャパシタの下限電圧の合計値よりも高く、二次電池の定格電圧よりも低い電圧値であり、リチウムイオンキャパシタの電圧が下限電圧以下に下がることを防止できる値である。
【0012】
本発明において、切換回路は、2つの回路構成を切り換えるように構成されている。まず、切換回路は、二次電池を負荷及びリチウムイオンキャパシタ・ユニットに並列接続したときには、最初に二次電池を負荷及びリチウムイオンキャパシタ・ユニットに電流制限手段を含む第1の放電回路を介して並列接続する第1の回路構成となる。その後リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧がユニット下限電圧よりも高い第1の設定電圧まで上昇したことを検出するかまたはリチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧がユニット下限電圧よりも低い第2の設定電圧まで低下したことを検出すると、切換回路は、二次電池を負荷及びリチウムイオンキャパシタ・ユニットに電流制限手段を含まない第2の放電回路を介して並列接続する第2の回路構成となる。
【0013】
“リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧がユニット下限電圧よりも高い第1の設定電圧まで上昇したことを検出する場合”は、切換回路が第1の回路構成になった後、二次電池を使用して負荷に対して過電流を流すことなく必要な電力を供給できており、しかもリチウムイオンキャパシタ・ユニットも二次電池によって充電できている場合である。そのために、ユニット下限電圧よりも高い第1の設定電圧まで電圧が上昇している。第1の設定電圧は、二次電池から負荷への放電電流が過電流になることを阻止できる電圧である。したがってこの状態では、電流制限素子の存在は、電力損失の発生原因となり、過電流の発生防止機能は果たしていない。そこで第2の回路構成に切り換わることで、電流制限手段を切り離して、電流制限手段における損失の発生を阻止し、二次電池の負荷を減少させることになる。その結果、二次電池の容量低下速度を遅いものとすることができる。
【0014】
これに対して“リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧がユニット下限電圧よりも低い第2の設定電圧まで低下したことを検出する場合”は、切換回路が第1の回路構成になった時点における負荷が大き過ぎるために、電流制限素子を介して負荷に電流を供給していたのでは、十分な電力を供給できず、しかもリチウムイオンキャパシタ・ユニットの放電が継続される場合である。したがってこの場合において、電流制限素子を放電回路に存在させることは、リチウムイオンキャパシタ・ユニットからの放電を継続させて、各リチウムイオンキャパシタの電圧を下限電圧まで低下させてしまう危険性がある。そこで第2の回路構成に切り換わることで、電流制限手段を切り離すことにより、負荷に対して必要な電力を供給し、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧低下を防止する。このような観点から第2の設定電圧は、リチウムイオンキャパシタの電圧が下限電圧以下になることを阻止できる電圧である。
【0015】
以上のように、本発明によれば、特定の条件の場合に第1の回路構成から第2の回路構成に切り換えることで、二次電池からの過電流の放電を阻止して二次電池の劣化を抑制し且つ電力損失を抑制することができ、しかも負荷に必要な電力を供給することができる。
【0016】
第2の放電回路は、具体的には、第1の放電回路の電流制限手段を短絡する短絡回路で構成することができる。このように構成することで、切換回路の構成を簡単なものとすることができる。
【0017】
本発明の直流電源装置は、モータにより駆動する自動搬送車(AGV)等に適している。一般的には、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧が低下した場合には、自動搬送車であれば、待機ステーションに自動搬送車が戻った時点で充電装置(外部充電器)により充電が行われる。この際、リチウムイオンキャパシタ・ユニットに外部充電器から充電電圧が印加されたときに動作状態になって二次電池を充電する充電回路をさらに具備するようにすれば、二次電池も併せて充電することができる。ただし、リチウムイオンキャパシタ・ユニットと二次電池の充電特性及び充電時間は大きく異なるため、同時に充電を行うと、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの充電時間が充電に時間のかかる二次電池の充電時間に拘束されて、必要以上に延びてしまい、リチウムイオンキャパシタ・ユニットを有効に活用できない問題が生じる。また、充電回路を常に接続した状態にしておくと、リチウムイオンキャパシタ・ユニットから常に二次電池を充電する動作が可能となり、電力損失が発生する。そこで、充電回路にスイッチング回路を含めておき、スイッチング回路が導通状態になっている場合に、二次電池の充電が行われるようにしておくことが望ましい。充電回路にスイッチング回路を含めておくことで、充電時間の短いリチウムイオンキャパシタ・ユニットを充電した後で、待機時間などを利用して、充電時間の長い二次電池を充電することが可能になる。また、このようなスイッチング回路を設けると、リチウムイオンキャパシタ・ユニットから二次電池に充電する動作を任意に止めることができる。なお、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの充電電圧は二次電池の充電電圧よりも高い。そのため、充電回路には充電電圧を二次電池の充電に適した電圧に降圧するDC/DCコンバータを含めることができる。DC/DCコンバータは任意に電圧制御することができるため、適切な充電電圧で二次電池を充電して二次電池の寿命低下を抑制することができる。
【0018】
二次電池の充電に適している電圧は、二次電池がおかれる環境温度によって変わることが知られている。そこで、過充電及び充電不足を防止するように二次電池の充電を行うためには、環境温度を検出する温度検出手段をさらに備え、環境温度によって充電回路に含めるDC/DCコンバータの出力電圧を変化させることが好ましい。具体的には、温度検出手段が検出する検出温度が予め定めた基準上限温度より高くなると、二次電池の充電に適した電圧を低下させ、温度検出手段が検出する検出温度が予め定めた基準下限温度より低くなると二次電池の充電に適した電圧を上昇させるようにすればよい。
【0019】
なお、充電回路を、1以上のダイオードを含んで構成し、リチウムイオンキャパシタ・ユニットに外部充電器から充電電圧が印加されたときに充電電圧を二次電池の充電に適した電圧に降圧して二次電池に印加するように構成してもよい。具体的には、1以上のダイオードを直列に接続し、アノード側をリチウムイオンキャパシタ・ユニットの陽極端子に接続し、カソードを二次電池の陽極端子に接続する。このように構成すれば、使用する二次電池の定格電圧に応じてダイオードの数を決めるだけで、容易に二次電池の充電電圧を調整することが可能である。そのためスイッチング回路やDC/DCコンバータなどの複雑な回路を必要としない。この場合にも、充電回路にスイッチング回路を含めておき、スイッチング回路が導通状態になっている場合だけ、二次電池の充電が行われるようにしておくことが望ましい。
【0020】
上述の通り、第1の設定電圧は、二次電池から負荷への放電電流が過電流になることを阻止できる電圧である。このように第1の設定電圧を定めるのは、切換回路によって第1の回路構成から第2の回路構成に切り替わった時点で、二次電池の電圧がリチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧よりも大きく且つ両電圧の電圧差が所定値以上になると、二次電池の最大放電電流を超える電流が流れてしまう可能性があるためである。「二次電池の最大放電電流」とは、二次電池の寿命を縮めることなく、放電可能な最大の電流のことであり、二次電池の仕様によって規定されるものである。二次電池の性能及び二次電池の使用環境によっては、第1の設定電圧として、固定値を用いることも可能である。しかし第1の設定電圧を固定値にした場合には、二次電池の劣化、個体差、環境温度などの条件によって、放電時の二次電池の電圧変化率が大きくなると、第1の放電回路の電流制限手段を短絡したときに、放電電流が最大放電電流より大きくなる事態が発生する可能性がある。そこで、第1の設定電圧は、二次電池の電圧値(端子間電圧)から放電電流が過電流になることを阻止することを許容する許容差電圧を減算した電圧とすることができる。このように第1の設定電圧を設定することで、第1の回路構成から第2の回路構成に切り替わる際に、二次電圧とリチウムイオンキャパシタ・ユニットとの電圧差が十分に小さくなり、二次電池の最大放電電流を超える放電電流が流れることがなくなる。
【0021】
第2の回路構成になった場合、リチウムイオンキャパシタ・ユニットと二次電池は、直接接続された状態となり、リチウムイオンキャパシタ・ユニットと二次電池を含む放電回路中の抵抗成分はリチウムイオンキャパシタ・ユニットの内部抵抗(RC)と二次電池の内部抵抗(RB)のみになる。この放電回路において、放電電流が二次電池の最大放電電流を超えないようにするためには、二次電池とリチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧差(Vdif)を内部抵抗の合計値(RC+RB)で割って得られる電流値(I)が、二次電池の最大放電電流(Iref)以下になるように設定すればよい。したがって、許容差電圧として、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの内部抵抗及び二次電池の内部抵抗の合計値(RC+RB)と二次電池の最大放電電流(Iref)の積で求まる電圧値を用いれば、二次電池からの放電電流が最大放電電流を超えることを防止することができて、二次電池の劣化を防ぎながら、電流制限手段による電力損失を最も小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の直流電源装置の第1の実施の形態の一例の構成を示す回路図である。
【図2】(A)及び(B)は、本発明の直流電源装置の切換回路で切換のタイミングを示すタイムチャートである。
【図3】本発明の直流電源装置の切換回路を制御する制御回路のフローを示すフロー図である。
【図4】本発明の直流電源装置の第2の実施の形態の一例の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の直流電源装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
〔構成〕
図1は、本発明の直流電源装置を自動搬送車の直流電源装置に適用した第1の実施の形態の構成を示す回路図である。本実施の形態の直流電源装置は、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1、鉛蓄電池等の二次電池3、電圧検出手段5、制御回路7及び切換回路8を備えている。リチウムイオンキャパシタ・ユニット1及び二次電池3は、負荷であるモータMに対して並列に接続されている。本実施の形態のリチウムイオンキャパシタ・ユニット1は、16個のリチウムイオンキャパシタが直列接続されたキャパシタアレイが4本並列接続されたモジュールからなる(ただし、図においては、キャパシタの図示を一部省略してある)。リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の容量は450F(リチウムイオンキャパシタ単セルで1800F)である。リチウムイオンキャパシタC1〜C16の上限電圧が3.8[V]であるとすると、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧は、60.8[V]になる。リチウムイオンキャパシタC1〜C16の下限電圧は2.2[V]であるので、35.2[V]を下回らないことと、負荷側のシステムがダウンしない電圧設定により、本実施の形態のユニット下限電圧は40.0[V]に設定してある。リチウムイオンキャパシタのそれぞれには、各リチウムイオンキャパシタの電圧を均等化させるための電圧均等化回路を構成する抵抗素子が並列に接続されている(ただし、図においては省略してある)。電圧均等化の抵抗素子には例えば1kΩの抵抗が使用される。二次電池3としては、定格48.0[V](定格2Vのセルが24個直列接続されている)、44Ahの制御弁式鉛蓄電池を使用している。
【0025】
電圧検出手段5は、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1及び二次電池3の端子間電圧をそれぞれ検出できるように、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の一対の端子T3及びT4と、二次電池3の一対の端子T5及びT6に並列に接続されている。電圧検出手段5は、例えば抵抗分圧回路を用いて構成することができる。制御回路7は、電圧検出手段5が検知した電圧値に基づいて、スイッチSW1,SW3及びSW5の導通及び遮断を制御している。具体的な制御動作については、後述する。
【0026】
切換回路8は、第1の放電回路81と、第2の放電回路83から構成されている。第1の放電回路81は、スイッチSW1とスイッチSW1に直列接続された電流制限抵抗4とから構成されている。第2の放電回路83は、スイッチSW3を含んで構成されている。後述のように電流制限抵抗4は、スイッチSW1が導通したときに、二次電池3から過電流が放電されることを防ぐ目的で備えられている。なお図示していないが、負荷としてのモータを含むモータ回路Mには、制御指令に応じて動作するインバータ回路を含むモータ駆動回路が接続されている。
【0027】
本実施の形態では、モータ回路Mの一対の端子T1及びT2にリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の一対の端子T3及びT4がそれぞれ電気的に接続されている。なおモータ回路Mの端子T1、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の端子T3及び二次電池3の端子T5は、陽極端子であり、モータ回路Mの端子T2、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の端子T4及び二次電池3の端子T6は、それぞれ充電器9のアース端子に共通接続された負極端子である。第1の放電回路81はリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の陽極端子T3と、二次電池3の陽極端子T6との間に配置されている。第2の放電回路83は、第1の放電回路81に対して並列に接続されている。よって、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1と二次電池3は、第1の放電回路81及び第2の放電回路83からなる切換回路8を介して並列接続されている。
【0028】
充電器(充電用直流電源)9は自動搬送車の待機ステーションに設けられた充電器である。自動搬送車が待機ステーションに戻るたびに、端子T1及びT2が充電器9の出力端子T7及びT8に接続され、充電動作が行われる。充電器9と自動搬送車の直流電源装置が接続されると、充電器9は、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の上限電圧よりも少し低い充電電圧でリチウムイオンキャパシタ・ユニット1を充電する。本実施の形態では、端子T1と二次電池3の端子T5との間に二次電池3の充電回路13が接続されている。充電回路13は、スイッチSW5とDC/DCコンバータ15とが直列に接続されて構成されている。充電器9が直流電源装置に接続されているときに、スイッチSW5が制御回路7からの導通信号に応じて導通状態になることで、二次電池3の充電が開始される。制御回路7は電圧検出手段5が検出する二次電池3の電圧が、予め定めた充電開始電圧以下に下がっていることを検出すると、充電器9が直流電源装置に接続されたときに、スイッチSW5を導通状態にする導通信号を出力する。スイッチSW5は、このオン指令が出力されている間、導通状態を維持する。DC/DCコンバータ15は、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の充電電圧を二次電池3の充電に適した電圧まで降圧して得た充電電圧を二次電池3に印加する。DC/DCコンバータ15からの充電電流が大きくなりすぎると、二次電池3の劣化につながるため、DC/DCコンバータ15は1〜7A程度の電流で二次電池3を充電するように構成してある。電圧検出手段5が、二次電池3の端子T5及びT6間電圧が予め定めた設定電圧(充電完了電圧)まで充電されたことを検出すると、制御回路7はオン指令の出力を停止してスイッチSW5を遮断し、充電が終了する。本実施の形態では、二次電池3を充電しているとき以外では、スイッチSW5を遮断しているので、待機電力を消費しない。そのため、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1を二次電池3の充電に影響を受けることなく、迅速に充電することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、二次電池3の環境温度を検出する温度検出手段6も備えられている。温度検出手段6の出力は、DC/DCコンバータ15の図示しない制御部に入力される。図示しない制御部は、温度検出手段6により検出された二次電池3が置かれている環境温度に応じてDC/DCコンバータ15の出力電圧を調整する。具体的には、図示しない制御部は、環境温度が高くなれば、二次電池への充電電圧を下げ、環境温度が低くなれば二次電池への充電電圧を上げるように、DC/DCコンバータ15の出力電圧を調整する。このようにすることにより、環境温度の変化に適した充電電圧で二次電池を充電することにより、過充電または充電不足により、二次電池が受けるストレスを軽減して、二次電池3の寿命を延ばすことができる。
【0030】
〔切換回路の制御〕
次に図2及び図3を参照して、制御回路7によって制御される切換回路8の切換動作を説明する。
【0031】
本実施の形態の直流電源装置では、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の充電電圧がユニット下限電圧V1(40.0[V])よりも高いときには、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1のみからモータ回路Mに給電を行う。このときには、切換回路8中のスイッチSW1及びスイッチSW3は双方共に遮断された状態である。リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の端子間電圧VLICがユニット下限電圧V1(40.0[V])まで低下したことを電圧検出手段5が検出すると(ステップST1)、制御回路7はスイッチSW1を導通状態にする導通信号を出力する(ステップST2)。この状態で、切換回路8は、第1の回路構成となっている。スイッチSW1が導通状態になると、電圧が下がったリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧よりも高い電圧に充電されている二次電池3からモータ回路Mに駆動電流が供給されるのと同時にリチウムイオンキャパシタ・ユニット1に充電電流が供給される。
【0032】
このときの二次電池3の電圧が48.0[V]であると、二次電池3の電圧とユニット下限電圧V1(40.0[V])まで低下したリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧との電圧差は、8.0[V]である。リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の内部抵抗は10[mΩ]であり、二次電池の内部抵抗も10[mΩ]とすると、電流制限抵抗4がない場合には、二次電池3は計算上の瞬間最大電流は400[A]の大電流を放電することになる。そこで、二次電池3からの放電電流を制限するために、電流制限抵抗4が含まれている第1の放電回路81を介して二次電池3からリチウムイオンキャパシタ・ユニット1を充電する。電流制限抵抗4の抵抗値は、例えば、二次電池3とリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電位差が8.0[V]のときに、最大3[A]程度に放電を制限する場合、3.0Ω50W程度の抵抗を選択するのが好ましい。ただし、実際には負荷への供給電力に不足がない電力値を考慮して電流制限抵抗4の値を決定する必要がある。
【0033】
スイッチSW1が導通状態になった後、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧が、ユニット下限電圧V1よりも高い第1の設定電圧V2(42.5[V])またはユニット下限電圧V1よりも低い第2の設定電圧V3(37.5[V])になったことを電圧検出手段5が検出すると(ステップST3)、制御回路7は、スイッチSW3を導通状態にする導通信号を出力する(ステップST4)。スイッチSW3が導通状態になったときに、切換回路8は第2の回路構成となる。なお、スイッチSW3を投入した後は、スイッチSW1を遮断してもよい。
【0034】
スイッチSW3が導通状態になると、第1の放電回路81は第2の放電回路83により短絡された状態になり、以後二次電池3からの放電電流は第2の放電回路83からモータ回路M及びリチウムイオンキャパシタ・ユニット1に供給される。リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧が第1の設定電圧V2まで上昇する場合は、切換回路8が第1の回路構成になった後、二次電池3を使用してモータ回路(負荷)Mに対して過電流を流すことなく必要な電力を供給できており、しかもリチウムイオンキャパシタ・ユニット1も二次電池3によって充電できている場合である(図2(A))。第1の設定電圧V2は、二次電池3から負荷Mへの放電電流が過電流になることを阻止できる電圧である。したがってこの状態では、電流制限抵抗4は、電力損失の発生原因となるだけで、過電流の発生防止機能は果たしていない。そこで第2の回路構成に切り換わることで、電流制限抵抗4を切り離して、電流制限抵抗4における電力損失の発生を阻止し、二次電池3の負荷を減少させる。その結果、二次電池3の容量低下速度を遅いものとすることができる。
【0035】
なお、第1の設定電圧V2は第1の回路構成から第2の回路構成に切り替わった際に、二次電池3から負荷への放電電流が最大放電電流を超えないように設定する必要がある。第1の設定電圧V2として、上記のように固定値を用いることも可能である。しかし第1の設定電圧V2を固定値にした場合には、二次電池の劣化、個体差、環境温度などの条件によって二次電池の放電時の電圧変化率が大きくなると、第1の放電回路の電流制限手段を短絡したときに、放電電流が最大放電電流より大きくなる事態が発生する可能性がある。そこで、このような場合には、(1)式のように、二次電池の電圧値(端子間電圧)VBからの放電電流が過電流になることを阻止することを許容する許容差電圧Vdifを減算した電圧値を第1の設定電圧V2とするのが好ましい。
【0036】
2=VB−Vdif ・・・(1)
許容差電圧Vdifは、(2)式から算出できる。
【0037】
dif=Iref・(RC+RB) ・・・(2)
ただし、Irefは二次電池3の最大放電電流、RCはリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の内部抵抗、RBは二次電池3の内部抵抗である。例えば、Iref=10[A]、RC=10[mΩ]、RB=10[mΩ]の場合には、Vdif=200[mV]となる。(2)式により予め算出した許容差電圧Vdifを制御回路7が記憶しておき、(1)式に基いて第1の設定電圧V2を制御回路7が決定する。そして電圧検出手段5が、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧が第1の設定電圧V2まで上昇したことを検出すると、制御回路7は切換回路8に切換指令を出力する。
【0038】
なお、(2)式は、次のような理由から定めている。すなわち、第2の回路構成になった場合、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1と二次電池3は直接接続された状態となる。そしてこのときのリチウムイオンキャパシタ・ユニット1と二次電池3を含む放電回路中の抵抗は、リチウムイオンキャパシタ・ユニットの内部抵抗(RC)と二次電池の内部抵抗(RB)のみになる。この回路構成において、放電電流が二次電池3の最大放電電流を超えないようにするためには、二次電池3とリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧差を内部抵抗の合計値(RC+RB)で割って得られる電流値(I)が、二次電池の最大放電電流(Iref)以下になるように設定すればよい。すなわち、許容差電圧Vdifと最大放電電流(Iref)との間には、次の(3)式が成立すればよい。
【0039】
dif/(RC+RB)=I<=Iref ・・・(3)
そこで、許容差電圧Vdifとして、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の内部抵抗及び二次電池3の内部抵抗の合計値(RC+RB)と二次電池の最大放電電流(Iref)の積[上記(2)式]で求まる電圧値を用いれば、二次電池の劣化を防ぎながら、電流制限抵抗4による電力損失を最も小さくすることができる。
【0040】
リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧が第2の設定電圧V3まで低下する場合は、切換回路8が第1の回路構成(スイッチSW1が導通状態)になった時点における負荷が大き過ぎるために、電流制限抵抗4を介して負荷に電流を供給していたのでは、十分な電力を供給できず、しかもリチウムイオンキャパシタ・ユニット1の放電が継続される場合である(図2(B))。したがってこの場合において、電流制限抵抗4を放電回路に存在させることは、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1からの放電を継続させて、各リチウムイオンキャパシタの電圧を下限電圧まで低下させてしまう危険性がある。そこで第2の回路構成(スイッチSW3が導通状態)に切り換わることで、電流制限抵抗4を放電回路から切り離すことにより、モータ回路(負荷)Mに対して必要な電力を供給し、リチウムイオンキャパシタ・ユニット1の電圧低下を防止する。このような観点から第2の設定電圧V3は、リチウムイオンキャパシタの電圧が下限電圧以下になることを阻止できる電圧である。
【0041】
図4に示すように、二次電池3の充電回路113において、充電電圧を降圧する手段として、DC/DCコンバータの代わりに、直列に接続した複数のダイオードを使用することも可能である。図4は、充電回路113にダイオードを利用した第2の実施の形態の構成を示している。図4において、図1に示した実施の形態と同じ部材には、図1に付した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。本実施の形態では、複数のダイオードを直列に接続してダイオードアレイ117を構成し、ダイオードアレイ117のアノード側をリチウムイオンキャパシタ・ユニット101の端子T3に接続し、カソードを二次電池103の陽極端子T5に接続する。このように構成することによって、DC/DCコンバータを用いることなく、使用する二次電池103の定格電圧に応じてダイオードの数を決めるだけで、容易に二次電池103の充電電圧を調整することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、リチウムイオンキャパシタ・ユニットを主電源として用い、二次電池を予備電源として用いる直流電源装置において、二次電池の負担を減らして二次電池の劣化を抑え、寿命を延ばし、また、安定して電力の供給が可能な直流電源装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 リチウムイオンキャパシタ・ユニット
3 二次電池
4 電流制限抵抗
5 電圧検出手段
6 温度検出手段
7 制御回路
8 切換回路
9 充電用直流電源
13 充電回路
C1〜C16 リチウムイオンキャパシタ
M モータ
SW1,SW3,SW5 スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に並列接続されるリチウムイオンキャパシタ・ユニットと、
前記負荷及び前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットに並列接続可能な二次電池と、
前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段が前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットのユニット下限電圧を検出するまでは、前記二次電池を前記負荷及び前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットから電気的に切り離し、前記電圧検出手段が前記ユニット下限電圧を検出すると、前記二次電池を前記負荷及び前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットに並列接続する切換回路とを具備し、
前記切換回路は、前記二次電池を前記負荷及び前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットに並列接続したときには、最初に前記二次電池を前記負荷及び前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットに電流制限手段を含む第1の放電回路を介して並列接続する第1の回路構成となり、その後前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧が前記ユニット下限電圧よりも高い第1の設定電圧まで上昇したことを検出するかまたは前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットの電圧が前記ユニット下限電圧よりも低い第2の設定電圧まで低下したことを検出すると、前記二次電池を前記負荷及び前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットに前記電流制限手段を含まない第2の放電回路を介して並列接続する第2の回路構成となることを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記第2の放電回路は、前記第1の放電回路の前記電流制限手段を短絡する短絡回路によって構成されている請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットに外部充電器から充電電圧が印加されたときに動作状態になって前記二次電池を充電する充電回路をさらに具備している請求項1に記載に直流電源装置。
【請求項4】
前記充電回路には、スイッチング回路が含まれており、前記スイッチング回路が導通状態になった場合に、前記二次電池の充電が行われる請求項3に記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記充電回路は、前記充電電圧を前記二次電池の充電に適した電圧に降圧するDC/DCコンバータを含んでいる請求項3または4に記載の直流電源装置。
【請求項6】
環境温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記DC/DCコンバータは、前記温度検出手段が検出する検出温度が予め定めた基準上限温度より高くなると、前記二次電池の充電に適した電圧を低下させ、前記温度検出手段が検出する検出温度が予め定めた基準下限温度より低くなると前記二次電池の充電に適した電圧を上昇させる請求項5に記載の直流電源装置。
【請求項7】
1以上のダイオードを含んで構成され、前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットに外部充電器から充電電圧が印加されたときに前記充電電圧を前記二次電池の充電に適した電圧に降圧して前記二次電池に印加する充電回路をさらに具備している請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項8】
前記充電回路には、スイッチング回路が含まれており、前記スイッチング回路が導通状態になった場合に、前記二次電池の充電が行われる請求項7に記載の直流電源装置。
【請求項9】
前記第1の設定電圧は、前記二次電池からの放電電流が過電流になることを阻止することを許容する許容差電圧を前記二次電池の端子間電圧から減算した電圧であることを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項10】
前記許容差電圧は、前記リチウムイオンキャパシタ・ユニットの内部抵抗及び前記二次電池の内部抵抗の合計値と前記二次電池の最大放電電流の積で定まることを特徴とする請求項9に記載の直流電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−182857(P2012−182857A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29003(P2011−29003)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】