直線移動装置
【課題】可動部がコイルを備えたリニアモータを冷却する装置の冷却性能を向上させる。
【解決手段】円筒状のコイル32を2枚の放熱板64の各集熱部66により覆うとともに樹脂モールド40で覆い、集熱部66からコイル32の中心線から遠ざかる向きに延び出させられた放熱部68を樹脂モールド40の外へ突出させ、突出部74の上下両面80,82にフィン78を設ける。放熱部68,フィン78の移動空間を覆う状態でダクト86を固定子14に沿って静止して設け、ダクト86の両端部にファンを設ける。可動子16の移動時にコイル32に発生する熱は集熱部66により集められ、放熱部68,フィン78から放熱される。ダクト86により周辺部材への熱の伝達が防止され、ファンによりダクト86内に生じさせられる冷却風によってフィン78が冷却されるとともに、ダクト86内の高温の空気が強制的に排出される。可動子にダクトおよびファンを設けてもよい。
【解決手段】円筒状のコイル32を2枚の放熱板64の各集熱部66により覆うとともに樹脂モールド40で覆い、集熱部66からコイル32の中心線から遠ざかる向きに延び出させられた放熱部68を樹脂モールド40の外へ突出させ、突出部74の上下両面80,82にフィン78を設ける。放熱部68,フィン78の移動空間を覆う状態でダクト86を固定子14に沿って静止して設け、ダクト86の両端部にファンを設ける。可動子16の移動時にコイル32に発生する熱は集熱部66により集められ、放熱部68,フィン78から放熱される。ダクト86により周辺部材への熱の伝達が防止され、ファンによりダクト86内に生じさせられる冷却風によってフィン78が冷却されるとともに、ダクト86内の高温の空気が強制的に排出される。可動子にダクトおよびファンを設けてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニアモータ冷却装置に関するものであり、特に、可動部がコイルを備えたリニアモータの冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リニアモータにおいては、コイルへの電流供給に基づいて可動部を移動させる移動推力が生じさせられるのであるが、それと共にコイルが発熱し、可動部の温度が上昇する。そのため、下記の特許文献1に記載のリニアモータは、可動部にフィンおよびファンが設けられ、冷却が行われるようにされている。可動部は、コイルおよび電磁鋼板が樹脂モールドにより直方体状に形成されて成り、その上面と下面とにそれぞれ、複数のフィンが可動部の移動方向に平行に設けられるとともに、ファンが可動部の移動方向に直角な軸線まわりに回転可能に設けられて可動部に送風するようにされている。それにより、コイルに発生した熱は樹脂モールドからフィンに伝達され、放熱されて可動部が冷却される。また、ファンの送風により可動部が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−309963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のリニアモータ冷却装置においては、未だ冷却が十分であるとは言えない問題があった。フィンは可動部の外面である上面および下面に設けられるため、コイルから熱が伝わり難く、十分に放熱が為されないのである。
本発明は、上記の事情を背景として為されたものであり、可動部がコイルを備えたリニアモータを冷却する装置の冷却性能の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置を、(A)前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、(B)その放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンとを含むものとすることにより解決される。
【0006】
上記課題はまた、直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置を、(a)前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、(b)前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部が移動する空間を覆うダクトと、(c)そのダクト内の空気を換気する換気装置とを含むものとすることによっても解決される。
【発明の効果】
【0007】
「可動部の外部」とは、コイルの外であることは勿論、コイルがカバーや樹脂モールド等のコイル保護部材により覆われている場合には、コイル保護部材の外であり、放熱部は、例えば、可動部の外側面に沿って延び出させてもよく、可動部から離れる状態で延び出させてもよい。
放熱部材として、例えば、熱伝導率の高い材料製の部材が用いられ、例えば、熱伝導率の高い金属材料製の部材やヒートパイプを使用することができる。
放熱部材およびフィンを含むリニアモータ冷却装置においては、コイルへの電流供給により発生した熱は、その多くがコイルに近接した集熱部により集められるとともに、放熱部によって可動部の外部へ放出される。放熱部に伝達された熱はまた、フィンからも放出され、放熱面積が大きく、放熱が十分に為され、可動部が効果的に冷却される。フィンは可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられており、フィンを可動部の移動方向と交差する方向に設ける場合のように、可動部の移動に抵抗を与えることがなく、しかも、可動部の移動に伴って生じる可動部周辺の空気の流れによってフィンから熱が効果的に奪われ、より良好に冷却が為される。
また、冷却が十分に為されるため、可動部の温度上昇を抑えつつコイルへの供給電流を増大させ、推力を増大させることができ、リニアモータにより駆動される部材の熱膨張による歪の発生を抑え、制御精度を確保しつつ、リニアモータを必要な推力が得られ、容積が小さく、安価なものとすることができる。
【0008】
放熱部材,ダクトおよび換気装置を含むリニアモータ冷却装置において換気装置は、ダクト内に空気を押し込む空気押込装置でもよく、ダクト内の空気を吸い出す空気吸引装置でもよく、その両方でもよい。ただし、ダクト内の温められた空気がダクト壁の隙間から外部に漏れることを回避する観点からすれば、少なくとも空気吸引装置を設けることが望ましい。空気押込装置として、例えば、コンプレッサ,ブロア,ファンを使用することができ、空気吸引装置として、例えば、バキュームポンプ,アスピレータ(流体として液体を使用するものでも気体を使用するものでもよい),ブロア,ファンを使用することができる。
本リニアモータ冷却装置においては、放熱部材の集熱および放熱作用によって可動部の冷却が十分に為されるとともに、放熱によって温められた放熱部周辺の空気がリニアモータ周辺に拡散し、周辺部材の温度を上昇させることがダクトにより防止される。また、ダクト内の空気は換気装置により換気され、ダクト内にダクト外から空気が取り入れられるとともに、放熱により温められた空気がダクトを通って、リニアモータが設けられた機械の外や、その機械から離れた場所等、機械に影響を与えず、熱気が排出されても支障のない場所へ強制的に排気され、作業環境の悪化やリニアモータ周辺部材,装置の温度上昇およびそれによる機械的熱変形等を抑制することができる。さらに、ダクト内の空気が換気装置によって換気される際にダクト内に生じさせられる空気の流れによって放熱部が冷却される効果も得られる。
さらにまた、ダクトおよび換気装置が固定部側に設けられており、可動部に設けられる場合に比較して可動部を軽くすることができ、可動部の加,減速時の振動が低減させられる。また、可動部を移動させる推力が小さくて済み、コイルへの供給電流を減少させ、消費電力量および発熱量を低減させることができる。冷却性能の向上によるリニアモータの小形化と合わせて、リニアモータを更に容積が小さく、安価なものとすることもできる。
なお、ダクトは放熱部が移動する空間を覆うが、放熱部のダクト内を移動する部分と、ダクト外を移動する部分との間の部分に対応する部分は空けられ、放熱部の移動を許容するようにされる。ダクトは、放熱部の移動方向の全体にわたって外に開かれる開口部を有することとなるのであるが、この開口部は放熱部の通過時以外は閉じられていることが望ましく、例えば、ダクトに開閉可能な遮蔽部材を設け、放熱部の通過時には開口部を開いて放熱部の移動を許容し、通過後は閉じてダクト内からの空気の漏れを防止するようにすることが望ましい。
【発明の態様】
【0009】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0010】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(7)項が請求項5に、(8)項と(9)項とを合わせた項が請求項6に、(12)項が請求項7に、(14)項が請求項8に、(16)項が請求項9に、(17)項が請求項10にそれぞれ相当する。
【0011】
(1)直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
その放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンと
を含むリニアモータ冷却装置。
リニアモータは、可動部が筒状を成し、固定部を囲む状態で配置されて固定部に沿って移動する筒形リニアモータでもよく、可動部が概して平板状を成し、固定部と対向して配置されて固定部に沿って移動する平板形リニアモータでもよい。また、直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータであればよく、請求可能発明は、リニア同期モータ,リニア誘導モータ,リニアステッピングモータ,リニア直流モータ等、種々のリニアモータの冷却装置に適用可能である。(14)項に記載のリニアモータ冷却装置についても同様である。
(2)前記可動部が前記コイルの外側を覆う樹脂モールドを備え、前記放熱部材の前記集熱部が、それらコイルと樹脂モールドとの間に配設され、前記放熱部が樹脂モールドの一部を貫通して外部に延びさせられた(1)項に記載のリニアモータ冷却装置。
コイルは線材同士の隙間に樹脂が充填されたものであっても、充填されていないものであってもよい。前者の場合には集熱部が充填樹脂の表面に密着し、後者の場合には集熱部がコイルの外側面に密着する状態で配設されることが望ましい。コイルの線材同士の隙間に樹脂が充填される場合、樹脂は空気に比較して熱伝導率が高いため、コイル内周部から外周部への熱伝達が促進される。リニアモータがコイルがコアにより保持されず、コアを有さないコアレスリニアモータである場合には、集熱部は充填樹脂の表面あるいはコイルの外側面に密着する状態で配設される。リニアモータがコイルがコアにより保持されるコア付きモータであり、コアを有する場合、集熱部を充填樹脂の表面あるいはコイルの外側面に密着させることができないのであれば、集熱部を直接コアに密着させればよい。
コイルは樹脂モールドにより覆われて、保護されているが、集熱部は樹脂モールドを介することなく、コイルに直接接触させられ、あるいは直接接触させられているに等しく(線材同士の隙間に樹脂が充填される場合)、あるいはコアを介してではあるがコイルに極く近接して配設され、十分に熱を集めて放熱部から放熱することができる。樹脂モールドは放熱部材より熱伝導率が低く、集められた熱が樹脂モールドに伝達されることは少なく、可動部の外において放熱部から効果的に放出される。
(3)前記コイルが筒状を成し、前記集熱部がその筒状コイルの外周の80%以上を覆う状態で配設された(1)項または(2)項に記載のリニアモータ冷却装置。
放熱部材はコイルのほぼ全体から熱を集めて外部に放出することができる。コイルが筒状を成し、その内周側に固定子が配設されて磁界が形成される場合、磁気回路を遮断することなくコイルの外周全体を集熱部によって覆うことができ、集熱を効果的に行うことができる。
コイルは、例えば、円筒状を成すものでもよく、中心線に直角な断面形状が長方形,正方形等の四角形等、多角形状を成すものでもよい。
(4)前記放熱部が、前記筒状コイルの中心線に対してほぼ対称の2つの位置から互いに逆向きに延び出させられた(3)項に記載のリニアモータ冷却装置。
コイルのほぼ全体から集められた熱がコイルの両側においてそれぞれ放出され、放熱が均等にかつ効果的に行われる。
「ほぼ対称」とは、2つの位置が対称である場合および対称からやや外れた位置であっても、対称と言い得る場合を含む。
(5)前記放熱部材が、前記筒状コイルの周方向においてほぼ半分の部分を覆う半筒状を成す集熱部とその集熱部の一端から筒状コイル中心線から遠ざかる向きに延び出す放熱部とを備えた放熱板を2枚含み、放熱部が互いに反対向きに延び出す状態で配設された(4)項に記載のリニアモータ冷却装置。
集熱部および放熱部を有する放熱部材の板材からの成形、および筒状コイルへの装着が容易になる。
(6)前記放熱部が前記可動部の外側面から片持ち状に突出させられ、その突出部に前記フィンが設けられた(1)項ないし(5)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
放熱部は可動部の外側面に沿って延びるようにすることも可能であるが、外側面から片持ち状に突出する状態とすればフィンを突出部の両面に設けることが可能となる。また、次項に記載のとおり、突出部の基端部を除く部分にフィンを設ければ、放熱部およびフィンが移動する空間をダクトによりほぼ完全に覆うことが可能となる。
(7)前記突出部の基端部を除く部分に前記フィンが設けられ、そのフィンと放熱部の基端部を除く部分とを覆うダクトが、前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部および前記フィンが移動する空間を覆う状態で静止して設けられた(6)項に記載のリニアモータ冷却装置。
フィンから放出された熱により温められた空気が周辺に拡散し、周辺部材,装置の温度を上昇させることがダクトにより防止される。ダクトは、放熱部が移動する空間を覆う状態で静止して設けられており、可動部の移動領域全体にわたって加熱空気拡散防止効果が得られる。また、可動部の移動に伴って生じるフィンと周辺の空気との相対移動がダクトにより確保され、フィンが確実に冷却される。
(8)前記可動部に支持されて可動部と一緒に移動し、前記フィンに沿った方向の冷却風を生じさせるファンを含む (1)項ないし(6)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
フィンは、可動部の移動により生ずる空気の相対移動によって冷却される上、ファンによって強制的に生じさせられる風によっても冷却され、放熱が十分に為される。
(9)前記フィンが、前記可動部の移動方向における中間部から両端の各々に向かって延びている第一フィンと第二フィンとを含み、前記ファンがそれら第一フィンと第二フィンとの各々に対して設けられた第一ファンと第二ファンとを含む(8)項に記載のリニアモータ冷却装置。
第一,第二ファンにより、第一,第二フィンのそれぞれについて、可動部の移動方向に平行な方向において正逆いずれかの方向に冷却風を生じさせることができる。
フィンを第一,第二フィンを含むものとすれば、第一フィンと第二フィンとの間にスペースが設けられ、風の取り入れ口あるいは排出口として利用することができ、ファンによる送風に基づいて種々の態様で冷却を行うことができる。
(10)前記第一ファンと前記第二ファンとが前記第一フィンと前記第二フィンとの前記中間部側の端に近接して設けられた(9)項に記載のリニアモータ冷却装置。
(11)前記第一ファンと前記第二ファンとが前記第一フィンと前記第二フィンとの前記中間部側とは反対側の端に近接して設けられた(9)項に記載のリニアモータ冷却装置。
(12)前記第一ファンと前記第二ファンとが前記中間部に向かって流れる冷却風を生じさせるものであり、前記中間部に、第一ファン側から中間部に流れる冷却風と第二ファン側から中間部に流れる冷却風とを前記可動部から離れる向きに流れるように案内する導風部材が設けられた(9)項ないし(11)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
第一,第二ファンにより生じさせられた冷却風は、いずれも可動部の移動方向における中間部に向かって流れるが、導風部材の案内により可動部から離れる向きに流れさせられるため、上記中間部においてぶつかり合って中間部近傍における流速が低下することが回避される。
(13)前記フィンを覆って前記可動部の移動方向に平行に延びるダクトを含む(1)項ないし(6)項および(8)項ないし(12)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
ダクトは可動部と共に移動し、可動部の移動に伴って生じる風をフィンに沿って流れさせ、冷却を促進する。
また、ファンを備えたリニアモータ冷却装置においては、ファンによりダクト内に冷却風が生じさせられ、フィンが確実に冷却風に晒されて冷却が効率良く行われる。
(14)直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部が移動する空間を覆うダクトと、
そのダクト内の空気を換気する換気装置と
を含むリニアモータ冷却装置。
(15)前記放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンを含む(14)項に記載のリニアモータ冷却装置。
コイルに発生した熱は放熱部から放出されるとともに、フィンからも放出され、コイルが良好に冷却される。
(16)前記換気装置が、前記ダクトの長手方向の少なくとも一端部に設けられた送風機を含む(14)項または(15)項に記載のリニアモータ冷却装置。
送風機として、例えば、ファン,ブロアが使用される。
換気装置をダクトの長手方向の一端部に設ける場合、送風機はダクトに空気を送り込む送り込み送風機としてもよく、ダクトから空気を吸い出す吸気送風機としてもよい。送風機をダクトの長手方向の両端部に設ける場合、一方が送り込み送風機、他方が吸気送風機とされ、ダクト内の空気が確実に換気される。
(17)前記換気装置が、主ダクトとしての前記ダクトの一端部に接続された接続ダクトと、その接続ダクトの先端部に設けられた送風機とを含む(14)項または(15)項に記載のリニアモータ冷却装置。
接続ダクトの先端部に設けられる送風機を送り込み送風機とすることも可能であるが、吸気送風機とすれば、主ダクトの一端にのみ接続ダクトを設ければよく、また、ダクト壁の隙間等から温かい空気が周辺へ漏れることを容易に防止し得る。接続ダクトの先端部に設けられる送風機は、複数の発熱部に対して共通に設けることも可能である。例えば、1台の機械に複数の電動モータ(リニアモータを含む)のような発熱部が設けられることが多く、その場合に、それら複数の発熱部の各々に設けられた主ダクトにそれぞれ接続ダクトを接続するとともにそれら接続ダクトを合流させ、合流部の下流側にブロア等の送風機を設けるのである。この態様にすれば、暖かい空気を完全に機械外へ排出することが容易となる。
作業ラインを構成する複数の機械の各々における少なくとも1つの接続ダクトの合流部に更に接続ダクトを接続するとともに合流させ、その合流部の下流側に送風機を設けてもよい。
さらに、複数の作業ラインについて、各ラインの最下流の接続ダクト合流部に接続ダクトを接続するとともに合流させ、その合流部の下流側に送風機を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】請求可能発明の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示す正面断面図である。
【図2】上記リニアモータ冷却装置およびリニアモータを、リニアモータにより移動させられるテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図3】上記リニアモータ冷却装置のダクトの開口を覆う遮蔽幕を放熱板の放熱部と共に示す側面図(一部断面)である。
【図4】上記リニアモータ冷却装置およびリニアモータを備えた電子回路部品装着機を概略的に示す平面図である。
【図5】上記電子回路部品装着機のY軸移動装置を示す正面図である。
【図6】別の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示す正面断面図である。
【図7】図6に示すリニアモータ冷却装置およびリニアモータをテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図8】図6に示すリニアモータ冷却装置のフィン,ファンおよびダクトを概略的に示す側面図である。
【図9】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示すテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図10】図9に示すリニアモータ冷却装置のフィン,ファンおよびダクト等を概略的に示す側面図である。
【図11】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示すテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図12】図11に示すリニアモータ冷却装置のフィン,ファンおよびダクト等を概略的に示す側面図である。
【図13】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置を概略的に示す平面図である。
【図14】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0014】
図1に、請求可能発明の一実施例であるリニアモータ冷却装置10およびそれにより冷却されるリニアモータ12が図示されている。本実施例のリニアモータ冷却装置10およびリニアモータ12は、電子回路部品装着機に設けられている。電子回路部品装着機は、作業機の一種であって、回路基板に作業を施す対回路基板作業機の一種であり、回路基板に電子回路部品を装着する。回路基板は部品装着基板の一種であり、プリント基板はその一例である。電子回路部品装着機は、例えば、図4および図5に概略的に示すように、電子回路部品を供給する部品供給装置300と、回路基板を保持する基板保持装置302と、部品供給装置300から電子回路部品を受け取って回路基板304に装着する作業ヘッドとしての装着ヘッド306と、部品供給装置300と基板保持装置302と装着ヘッド306とを相対移動させる相対移動装置308と、少なくとも基板保持装置302,装着ヘッド306および相対移動装置308を制御する制御装置310とを含むように構成される。制御装置310はコンピュータを主体として構成され、部品供給装置300等は、位置を固定して設けられたベッド312上に設けられている。ベッド312は電子回路部品装着機の本体を構成する。本電子回路部品装着機は、他に、回路基板304に設けられた基準マークを撮像するマーク撮像装置および装着ヘッド306に保持された電子回路部品を撮像する部品撮像装置を含む。
【0015】
相対移動装置308は、例えば、特開平6−291490号公報に記載されているように、装着ヘッド306を、基板保持装置302により保持された回路基板304の部品装着面に平行な一平面たる水平面内において互いに直交する2方向であるX軸方向およびY軸方向に移動させる装着ヘッド平行方向移動装置たる装着ヘッド水平方向移動装置316と、装着ヘッド306を、上記2方向と直交する方向である鉛直方向(Z軸方向)に移動させる装着ヘッド直交方向移動装置たる装着ヘッド昇降装置318とを含む。相対移動装置308は、装着ヘッド306を、位置を固定して設けられた部品供給装置300へ移動させて部品供給装置300から電子回路部品を受け取らせ、基板保持装置302へ移動させて、基板保持装置302に保持された回路基板304に電子回路部品を装着させる。
【0016】
基板保持装置302は、例えば、基板搬送装置320により搬入された回路基板304を下方から支持するとともに、縁部をクランプする装置とされる。装着ヘッド水平方向移動装置316は、装着ヘッド306をX軸方向に移動させるX軸移動装置322と、Y軸方向に移動させるY軸移動装置324とを含み、リニアモータ12は、例えば、それらX軸移動装置322およびY軸移動装置324の各駆動源として用いられ、X軸移動部材326およびY軸移動部材328をそれぞれX軸方向およびY軸方向に移動させる。本電子回路部品装着機のX軸移動装置322は、図4に示すようにリニアモータ12を一対備え、これらリニアモータ12は制御装置310により同時に共通して制御され、X軸移動部材326を移動させる。これらX軸移動装置322の2つのリニアモータ12およびY軸移動装置324の1つのリニアモータ12についてそれぞれ、リニアモータ冷却装置10が設けられている。電子回路部品装着機はまた、装着ヘッド306をその軸線まわりに回転させて部品保持具330に保持された電子回路部品を回転させるヘッド回転装置等を含む。ヘッド回転装置および前記装着ヘッド昇降装置318は、例えば、特開平4−372199号公報に記載の装置と同様に構成される。これら装着ヘッド306,相対移動装置308および回転装置を含む装着装置により電子回路部品が回路基板304に装着される。X軸移動装置322およびY軸移動装置324の各々のリニアモータ12およびリニアモータ冷却装置10は同様に構成されており、以下、X軸移動装置322の一対ずつのリニアモータ12およびリニアモータ冷却装置10の各一方を取り出し、図1ないし図3に基づいて代表的に説明する。
【0017】
リニアモータ12は、本実施例では円筒形のリニアモータであって、三相のコアレスリニアモータであり、図1に示すように、固定部としての固定子14および可動部としての可動子16を含み、被駆動部材たる移動部材としてのテーブル18を予め設定された経路に沿って移動させる。このテーブル18に上記X軸移動部材326が設けられている。固定子14は、本実施例においては、複数の永久磁石22および磁性材製の磁石保持部材としてのロッド24を含む。ロッド24は、横断面形状が円形を成し、一直線状を成す。複数の永久磁石22はそれぞれ、例えば、リング状を成し、その外周側がN極とされ、内周側がS極とされたものと、外周側がS極とされ、内周側がN極とされたものとがあり、ロッド24の表面に、軸方向において磁極が交互に変わるように等ピッチで、かつ隣接する永久磁石22との間に非磁性材製のスペーサ(図示省略)を挟んで設けられている。固定子14は、可動子16の移動に必要な長さを備え、ベース26に、支持部材28(図2参照)により軸方向の両端部を支持されて水平に配設されている。ベース26は、前記ベッド312上に設けられ、固定子14は、その長手方向がX軸方向に平行に設けられている。
【0018】
可動子16は、複数のコイル32(図1には1つのみ図示されている)を含む。これらコイル32はそれぞれ、本リニアモータ12では、線材が巻回されて円筒状を成すとともに、線材同士の隙間に樹脂34が充填され、その外周側も樹脂によって覆われており、非磁性材製のリング状のスペーサ(図示省略)を間に挟んで同心状に一体的に、かつ等間隔に設けられている。可動子16は、固定子14の外側に半径方向の隙間36を有して嵌合されており、固定子14の軸方向に沿って移動可能であり、コイル32の外側を樹脂モールド40により覆われて前記テーブル18の裏面ないしベース26あるいは固定子14側の面である下面に固定されている。樹脂モールド40の樹脂は、本実施例では、上記充填された樹脂34と同じ樹脂とされている。
【0019】
テーブル18は、ベース26上にリニアガイド48により案内されて、固定子14の長手方向に平行な方向に一直線状に移動可能に設けられている。リニアガイド48は、ベース26上に設けられた1対の案内部材としてのガイドレール50と、テーブル18に設けられてガイドレール50に相対移動可能に嵌合された1対のスライダ52と、スライダ52に循環可能に保持された転動体(例えば、ボール。図示省略)とを含む。また、リニアエンコーダ54が設けられ、テーブル18の移動方向の位置ないしX軸移動部材326の位置が検出されるようにされている。リニアエンコーダ54は位置検出装置の一種であり、ベース26に、テーブル18の移動方向に平行に設けられたリニアスケール56と、テーブル18に設けられ、リニアスケール56に沿って移動させられる移動検出ヘッド58とを含む。なお、リニアエンコーダ54は、本X軸移動装置322においては、2つのリニアモータ12のうちの一方について設けられる。2つのリニアモータ12についてそれぞれリニアスケール56を設け、それらリニアスケール56による位置検出結果に基づいて2つのリニアモータ12が制御され、X軸移動部材326の移動が制御されてもよい。X軸移動装置は、リニアモータおよびリニアモータ冷却装置を1つずつ含む装置としてもよい。
【0020】
リニアモータ冷却装置10を説明する。電流供給により前記コイル32に発生する熱は、少なくとも1枚、本実施例では2枚の放熱板64により放熱される。これら放熱板64は、本実施例においてはそれぞれ、伝熱性に優れた金属材料の一種であり、かつ単位質量あたりの放熱特性(放熱量/質量)に優れた材料、例えば、アルミニウム合金により作られ、半円筒状を成し、複数の円筒状のコイル32全部について、そのほぼ半周を覆う集熱部66と、その集熱部66の一端からコイル32の中心線から遠ざかる向きに延び出す板状の放熱部68とを備えている。2枚の放熱板64の各集熱部66は、樹脂34の表面に密着させられた状態で複数のコイル32と共に樹脂モールド40によって覆われている。集熱部66は、複数のコイル32と樹脂モールド40との間に配設され、コイル32に近接し、直接接触させられたに等しい状態で設けられているのであり、2つの集熱部66はコイル32の外周のほぼ全体を覆っている。なお、コイル32の線材同士の隙間への樹脂34の充填と、コイル32および集熱部66の樹脂によるモールドとは、同時に行ってもよい。
【0021】
2枚の放熱板64の各放熱部68は、図1に示すように、コイル32のほぼ直径方向に隔たった2部分であり、コイル32の中心線に対して対称の2つの位置であって、テーブル18の板面ないしテーブル18の移動平面に直角な方向ないしテーブル18とベース26とが隔たった方向である上下方向にずれた位置において集熱部66からテーブル18の板面に平行な方向であって水平に、かつ互いに逆向きに真っ直ぐに延び出させられ、樹脂モールド40の一部を貫通して外部に延び出させられている。放熱部68の突出端部は自由であり、放熱部68は樹脂モールド40の外側面(本実施例では樹脂の外表面)から片持ち状に突出させられ、集熱部66から可動子16の外部まで延び出させられている。なお、図3に示すように、放熱部68の、可動子16の移動方向に隔たった両端部はそれぞれ、端側ほど厚さが薄くされて案内部72が設けられている。案内部72の先端は丸くされている。案内部72を設ける理由は、後に説明する。
【0022】
放熱部68のコイル32から外部へ突出させられた突出部74には、その基端部76を除く部分に複数のフィン78が設けられている。フィン78は、本リニアモータ冷却装置10では、放熱板64と同様に、伝熱性に優れた金属材料の一種であり、かつ単位質量あたりの放熱特性に優れた金属材料の一種であるアルミニウム合金製の薄い板材が凹凸状に曲げられることにより形成され、突出部74の第1面たるテーブル18側の面である上面80と第2面たるベース26側の面である下面82とにそれぞれフィン78が複数ずつ、可動子16の移動方向と平行な方向に延びる状態で固定されている。
【0023】
前述のように、2枚の放熱板64の各放熱部68は上下方向の位置が異ならされており、上面80に固定されたフィン78と下面82に固定されたフィン78とは高さ(放熱部68からの突出長さ)が異ならされている。上下方向の位置が高い方の放熱部68の上面80に固定のフィン78と、低い方の放熱部68の下面82に固定のフィン78とは高さが同じにされており、高い方の放熱部68の下面82に固定のフィン78と、低い方の放熱部68の上面80に固定のフィン78とは高さが同じにされており、後者の方が前者より高くされている。したがって、2枚の放熱板64の各々について、上面80に固定のフィン78の先端から下面82に固定のフィン78の先端までの距離は同じであり、2枚の放熱板64の各上面80に固定のフィン78の先端面は水平な同一平面内に位置させられ、各下面82に固定のフィン78の先端面も水平な同一平面内に位置させられている。なお、フィンは、放熱板64と一体に形成してもよい。
【0024】
前記ベース26には、図1に示すように、固定子14に沿って1対のダクト86が設けられている。これらダクト86はそれぞれ、固定子14の両側に設けられ、それぞれ、2枚の放熱板64の各放熱部68の基端部76を除く部分と、上面80および下面82にそれぞれ固定のフィン78とを覆うとともに、可動子16の移動に伴って放熱部68およびフィン78が移動する空間を覆う状態で静止して設けられている。ダクト86は、その長手方向であって、可動子16の移動方向に隔たった両端部がそれぞれ、リニアモータ12の外に開口させられた管状を成し、図1および図3に示すように、その固定子14側の側壁には、突出部74の基端部76に隣接する部分であって、フィン78が設けられていない部分の移動経路に対応する部分に開口88が固定子14に沿って設けられ、放熱部68の基端部76を除く部分およびフィン78がダクト86により覆われた状態で可動子16の移動に伴ってダクト86内を移動することを許容するようにされている。なお、図2はリニアモータ冷却装置10およびリニアモータ12を概略的に示す図であり、ダクト86等、構成部材は概略的に図示されており、ダクト86は上壁が略されて可動子16が見える状態で図示されている。
【0025】
上記開口88は、図3に示すように、ダクト86に設けられた遮蔽部材としての遮蔽幕90により塞がれている。遮蔽幕90は、可撓性を有する材料、例えば、合成樹脂製の薄いシートにより作られて帯状を成し、長手方向に平行な一方の側縁部においてダクト86の開口88の上側の部分に固定され、開口88全体を塞いでいる。遮蔽幕90の他方の側縁部であって下端部は自由であり、開口88を開放することができる。
【0026】
上記1対のダクト86の各長手方向の両端開口部にはそれぞれ、図2に示すように、換気装置の一種である送風機としてのファン100が設けられている。本リニアモータ冷却装置10においては、ダクト86およびファン100は、固定子14側に設けられているのである。これらファン100は、図2に示すように、ダクト86の長手方向に平行であって、可動子16の移動方向に平行な軸線まわりに回転可能に設けられている。1対のダクト86はそれぞれ、放熱板64の突出部74の上面80と下面82とにそれぞれ固定のフィン78を覆うように設けられており、ファン100は上面80に固定のフィン78に対しても下面80に固定のフィン78に対しても風を作用させる。
【0027】
なお、前記Y軸移動装置324は、図5に示すように、X軸移動部材326上に設けられている。Y軸移動装置324においてリニアモータ12およびリニアモータ冷却装置10は、テーブル18の板面ないし移動平面が鉛直であって、基板保持装置302に保持された回路基板304の部品装着面に直角となり、放熱板64の放熱部68が集熱部66から鉛直(上下)方向に延び出す状態で設けられる。Y軸移動装置324においてはY軸移動部材328がテーブル18を構成し、あるいはテーブル18上にY軸移動部材328が設けられる。また、X軸移動部材326がベース26を構成し、あるいはX軸移動部材326上にベース26が設けられる。Y軸移動装置324のリニアモータ12を冷却するリニアモータ冷却装置10の一対のダクト86は、X軸移動部材326上にY軸方向に平行に設けられた固定子14に沿って設けられている。
【0028】
以上のように構成されたリニアモータ12においては、コイル32への駆動電流の供給により、コイル32に移動磁界が発生させられるとともに、永久磁石22が発生させている界磁磁束との相互作用により軸方向の移動推力が発生させられ、可動子16が固定子14の軸線に平行な方向に移動させられ、テーブル18がリニアガイド48により案内されつつ移動させられる。この際、コイル32が発熱するが、その熱は、放熱板64のコイル32を覆う集熱部66により集熱され、放熱部68およびフィン78から放熱され、可動子16外へ放出される。
【0029】
また、少なくとも可動子16の移動時にはファン100が回転させられる。この際、図2に矢印で示すように、ダクト86の長手方向の一端部に設けられたファン100は、ダクト86内に空気を送り込むように回転させられ、他端部に設けられたファン100は、ダクト86内の空気を外へ吸い出すように回転させられ、ダクト86内にはその長手方向において一方向に流れる空気の流れが生じさせられる。可動子16は、固定子14に沿って往復移動させられるが、本実施例では、可動子16の移動方向に関係なく、ファン100により生じさせられる空気の流れの方向は一定である。
【0030】
ダクト86は、その両端部がリニアモータ12の外に開口させられており、一方のファン100により、リニアモータ12の外からダクト86内に空気が送り込まれ、他方のファン100によってダクト86内の空気が、ダクト86の外であってリニアモータ12の外へ排出されて、ダクト86内の空気が強制的に換気される。ダクト86内に送り込まれる空気の温度はフィン78の温度より低く、可動子16の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィン78は、ファン100によりダクト86内に生じさせられた冷却風によって良好に冷却される。放熱部68およびフィン78はダクト86により覆われているため、確実に冷却風の中に位置することとなり、冷却が確実に為されるとともに、熱を奪って温度の上昇した空気はダクト86内を流れ、リニアモータ12の周辺部材,装置の温度を上昇させることなく、リニアモータ12外へ排気される。フィン78は、可動子16の移動に伴って生ずる空気の相対移動により冷却される上、ファン100によって強制的に生じさせられる風によっても冷却され、放熱が十分に為される。可動子16の移動に伴う空気の相対移動はダクト86により確保され、フィン78が確実に冷却される。
【0031】
可動子16が移動するとき、放熱部68は遮蔽幕90をめくり上げつつ移動する。前述のように、放熱部68の、可動子16の移動方向に隔たった両端部にはそれぞれ、案内部72が設けられており、この案内部72によって遮蔽幕90を容易にめくり上げることができる。遮蔽幕90は、放熱部68の通過後、ダクト86内の空気の流れにより生ずる負圧によってダクト86に密着した状態に戻り、開口88を塞ぐ。そのため、開口88はほぼ全体が閉じられた状態に保たれ、ダクト86内の空気がその長手方向両端の開口以外の部分から漏れることが良好に回避され、空気の送り込みと吸気とによる換気が良好に為される。
【0032】
このようにコイル32から発せられる熱が良好に放熱され、リニアモータ12が良好に冷却される。本リニアモータ12はコアレスのリニアモータであり、コア付きのリニアモータに比較して、同一のトルクを得るために必要な供給電流量が多く、発熱量が多いが、良好に冷却される。2枚の放熱板64およびそれらに設けられた複数のフィン78はアルミニウム合金により作られており、質量に対する放熱量が大きいため、放熱板64等を設けることによる質量の増大を抑えつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0033】
リニアモータ12の冷却が良好に為されることにより、テーブル18やベース26への熱の伝達が抑制されてそれらの熱変形が低減させられ、リニアエンコーダ54の変形も低減させられてテーブル18の位置検出が精度良く行われ、テーブル18が精度良く所定の位置へ移動させられる。
また、リニアモータ12が駆動源とされ、リニアエンコーダ54の位置検出に基づいてテーブル18の位置が制御されることにより、高い制御精度が得られる。回転モータが駆動源とされる場合、被駆動部材である移動部材との間にねじ軸およびナットを含む運動変換機構が設けられるため、移動部材の移動量は回転モータの作動量と厳密には対応せず、運動変換機構の弾性変形に起因する不確定な変動成分を含むこととなる。そのため、たとえ移動部材の位置がリニアエンコーダにより検出され、その検出結果に基づいて回転モータの作動が制御されても、移動部材の位置が上記変動成分の変化の影響を受けることを避け得ず、位置決め精度の向上に限界がある。それに対し、リニアモータの場合、ねじ軸を介することなく、移動部材が直接駆動されるため、リニアエンコーダによる位置の検出結果に基づいてリニアモータが制御されれば、上記弾性変形に起因する不確定な変動成分が排除され、移動部材の位置が精度良く制御されるのである。
このように、リニアモータ12が良好に冷却されて各部の熱変形が低減させられることと、移動部材の位置制御がリニアモータ12とリニアエンコーダ54との組合わせにより運動変換機構の不確定な弾性変形の影響が排除されて行われることとの両方によって、X軸移動部材326およびY軸移動部材328が精度良く所定の位置へ移動させられ、装着ヘッド306が部品供給装置300から電子回路部品を取り出す部品取出位置や回路基板304に電子回路部品を装着する部品装着位置等の作業位置へ精度良く移動させられて、装着作業等が精度良く行われる。
【0034】
また、ダクト86およびファン100が位置を固定して設けられており、それらを可動子16に設ける場合に比較して可動子16の質量が小さく、また、冷却が効率良く行われることから、コイル32への供給電流を増大させ、可動子16の駆動に必要な推力を得つつ、リニアモータ12を容量が小さく、安価なものとすることができる。コアレスのリニアモータはコアを有さない分、軽いことからも、可動子16の質量の増大を抑えることができる。なお、装着ヘッド昇降装置318の駆動源としてリニアモータ12を使用し、その冷却のためにリニアモータ冷却装置10を設けてもよい。
【0035】
別の実施例を図6ないし図8に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置110においては、複数のファンが可動子に支持されて可動子と一緒に移動し、フィンに沿った方向の冷却風を生じさせるようにされている。そのため、本実施例では、2枚の放熱板112の各集熱部114からそれぞれ延び出させられた放熱部116の可動子16の外側面から片持ち状に突出させられた突出部120は、図7および図8に概略的に示すように、可動子16の移動方向における中間部が切り欠かれて切欠部124が設けられ、突出部120の基端部122を除く部分には、切欠部124に対して可動子16の移動方向における一方の側の第1面たる上面126と第2面たる下面128とにそれぞれ、フィン130が複数ずつ、可動子16の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられている。突出部120の切欠部124の他方の側についても同様に、上面126と下面128とにそれぞれ、フィン132が複数ずつ設けられている。フィン130,132はそれぞれ、可動子16の移動方向における中間部から両端の各々に向かって延びているのであり、それらの間であって、切欠部124に対応する部分にスペース134が設けられている。
【0036】
上記フィン130,132はそれぞれ、ダクト136,138によって覆われている。ダクト136は、図6に示すように、放熱部116の上下両面126,128にそれぞれ固定のフィン130を覆って、可動子16の移動方向に平行に延びる状態で放熱板112に固定されている。ダクト138は、放熱部116の上下両面126,128にそれぞれ固定のフィン132を覆って放熱板112に固定されており、これらダクト136,138はそれぞれ、前記スペース134と、スペース134とは反対側であって、フィン132,130より外側とに開口させられている。ダクト136,138のスペース134とは反対側の開口部にはそれぞれ、ファン140,142がフィン130,132に対応し、フィン130とフィン132との可動子16の移動方向における中間部側とは反対側の端に近接する状態で、可動子16の移動方向に平行な軸線まわりに回転可能に設けられている。ファン140,142は、ダクト136,138および放熱板112を介して可動子16により支持され、可動子16と一緒に移動する。
【0037】
本リニアモータ冷却装置110においては、電流供給によりコイル32に発生させられた熱は、放熱板112の集熱部114により集められるとともに放熱部116に伝達され、放熱部116およびフィン130,132から放熱される。可動子16と共にダクト136,138およびファン140,142が移動させられる。この際、ファン140,142は、図7および図8に矢印で示すように、いずれもダクト136,138から空気を外へ吸い出す方向に回転させられる。そのため、2つのダクト136,138の間の空間およびスペース134から外気がダクト136,138内に吸い込まれ、フィン130,132の熱を奪い取り、冷却しつつ、ダクト136,138のスペース134側とは反対側であって、互いに逆向きの外側の開口から排出される。
【0038】
更に別の実施例を図9および図10に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置160においては、図9および図10に概略的に示すように、上記リニアモータ冷却装置110と同様にフィン130,132,ダクト136,138およびファン140,142が設けられ、可動子16と共に移動させられるが、フィン130,132から熱を奪った空気が、フィン130とフィン132との間のスペース134から排出されるようにされている。可動子16の移動方向の中間部から排気されるようにされているのである。
【0039】
そのため、スペース134内に導風部材としての導風板164が設けられている。導風板164は、本実施例では、放熱板166と同様に伝熱性が高く、かつ単位質量あたりの放熱特性に優れた金属材料の一種であるアルミニウム合金により作られ、図10に示すように、フィン130,132からそれぞれ遠ざかるほど上方へ(テーブル180に接近する方向へ)傾斜させられた案内部ないし導風部168,170を備え、放熱板166に固定されている。放熱板166は、前記放熱板112と同様に、放熱部172の可動子16の移動方向の中間部に切欠部174が設けられるとともに、その切欠部174に設けられた取付部176に導風板164が固定されている。導風板164は、放熱部172の第1面たる上面に固定されたフィン130,132に対しても、放熱部172の第2面たる下面に固定されたフィン130,132に対しても対向するように設けられている。また、テーブル180の導風板164に対応する部分には、図10に示すように、開口182が、テーブル180を厚さ方向である上下方向に貫通して設けられている。
【0040】
本リニアモータ冷却装置160においてファン140,142は、ダクト136,138の、可動子16の移動方向における中間部側とは反対側である外側の開口からダクト136,138内に外気を送り込むように回転させられ、可動子16の移動方向における中間部に向かって流れる冷却風が生じさせられる。この冷却風は、フィン130,132の熱を奪いつつ、ダクト136,138内においてそれぞれ、可動子16の移動方向における中間部側へ向かって流れるとともに、導風板164の導風部168,170に当たって上方へ導かれ、可動子16から離れてテーブル180の開口182を通り、上方ないし外へ排出される。導風板164は伝熱性の高い金属により作られており、放熱部172から伝達された熱を放出する作用も成す。
【0041】
図6ないし図8に示すリニアモータ冷却装置110におけるように、ダクト136,138内に外気を、可動子16の移動方向における中間部側の開口から取り込み、外側の開口から排出する場合、可動子16の移動方向において下流側に開口するダクトについては、可動子16の移動により生じる風が向かい風となってダクト内の空気のダクト外への排出を妨げ易い。それに対し、図9,図10に示すリニアモータ冷却装置160におけるように、ダクト136,138内に外気を、外側の開口から吸い込み、可動子16の移動方向における中間部側の開口から排出するようにすれば、可動子16の移動方向に関係なく、ダクト136,138内に容易に空気を取り込み、排出することができ、フィン130,132等から熱を奪って温度の上昇した空気を確実にダクト136,138外へ排出することができる。
【0042】
更に別の実施例を図11および図12に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置200においては、図11および図12に概略的に示すように、前記リニアモータ冷却装置160と同様にフィン130,132,ダクト136,138および導風板164が設けられ、可動子16と共に移動させられるが、ファン202,204が、フィン130,132の、可動子16の移動方向における中間部側の端に近接して設けられている。ファン202,204は、ダクト136,138の、可動子16の移動方向の中間部側の開口に設けられ、それぞれ、導風板164とフィン130,132との間に位置させられている。また、ファン202,204は、図12に示すように、その回転軸線が、可動子16の移動方向に平行な鉛直面内(テーブル180の板面に直角な方向)において、可動子16の移動方向に対して、フィン130,132から遠ざかるほど上方へ(テーブル180側へ)向かう向きに、すなわち排気方向に傾斜させられている。さらに、ダクト136,138の、可動子16の移動方向において中間部側とは反対側の開口部はそれぞれ、中間部から遠ざかるほど横断面積が大きくされ、テーパ状の案内部ないし導入部206,208が設けられている。図11においては、導入部206,208の図示は省略されている。
【0043】
本リニアモータ冷却装置200においてファン202,204は、ダクト136,138の、可動子16の移動方向における中間部とは反対側の開口からダクト136,138内に外気を吸い込むように回転させられるが、その回転軸線が傾斜させられているため、ダクト136,138内に取り入れられた空気は、フィン130,132を冷却するとともに、ダクト136,138から斜めに上方ないしテーブル18側へ排出させられ、導風板164の導風部168,170に沿って上方へスムーズに排出される。また、導入部206,208の案内により、ダクト136,138内には良好に外気が吸い込まれ、フィン130,132の冷却が効率良く行われる。
【0044】
更に別の実施例を図13に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置220は、図13に概略的に示すように、固定子に沿って延び、可動子の移動に伴って放熱部が移動する空間を覆い、ベースに固定して設けられた主ダクト222の一端部に接続された接続ダクト224と、その接続ダクト224の先端部に設けられた送風機の一種であるブロア226とを含む換気装置228を有する。リニアモータ冷却装置220は、例えば、前記リニアモータ冷却装置10と同様に、電子回路部品装着機に設けられ、X軸移動装置の駆動源であるリニアモータを冷却する。リニアモータ冷却装置220は、2枚の放熱板の各放熱部およびフィンを覆う2つのダクトを備え、それらダクトがそれぞれ主ダクト222を構成し、それら2つの主ダクト222の各一端部にそれぞれ接続ダクト224が接続される。なお、図13においては、主ダクトとしての2つの主ダクト222とそれらに接続された接続ダクト224とがそれぞれ、1つにまとめて図示されている。
【0045】
ブロア226は、リニアモータ冷却装置220の他、例えば、別のリニアモータ冷却装置230およびモータ冷却装置232,234,236について共通である。リニアモータ冷却装置230はリニアモータ冷却装置220と同様に構成され、主ダクト238に接続ダクト240が接続され、ブロア226と共に換気装置242を構成しているが、例えば、電子回路部品装着機において、装着ヘッド移動装置のX軸方向に移動するX軸移動部材上に設けられたY軸移動装置の駆動源であるリニアモータを冷却する装置であり、接続ダクト240は可撓性を有し、X軸移動部材と共に移動するY軸移動装置のリニアモータについて設けられた主ダクト238の移動に追従するものとされる。また、モータ冷却装置232,234,236は、リニアモータ以外のモータであって、一部は、例えば、回転モータの冷却に用いられ、回転モータについて設けられた主ダクト244と、主ダクト244の一端部に接続された接続ダクト246とを含む。主ダクト244は、回転モータの中と外との少なくとも一方について設けられる。主ダクト244を回転モータの中に設ける場合には、モータハウジングに取り付け、外に設ける場合にはモータハウジングの外周を囲むように設ける。回転モータの中に主ダクト244を設ける場合、モータハウジングを主ダクトとしてもよい。回転モータが装着ヘッドを回転させるヘッド回転装置の駆動源である場合、接続ダクト246は可撓性を有するものとされ、装着ヘッドの移動に追従するようにされる。接続ダクト246をY軸移動装置の接続ダクトに接続し、一部を共有するようにしてもよい。また、モータ冷却装置232,234,236の別の一部は、例えば、回路基板を搬送する基板搬送装置の駆動源であるモータを冷却する装置とされる。
【0046】
これらモータ冷却装置220,230〜236の各接続ダクト224,240,246は一つに合流させられ、合流部の下流側にブロア226が設けられている。ブロア226はモータ冷却装置220,230〜236に共用であり、ブロア226は、例えば、電子回路部品装着機から離れた場所であって、電子回路部品装着機が設置された工場の隅等、熱気を排出しても支障のない場所に設けられている。少なくともモータの作動時にブロア226が回転させられ、複数のモータ冷却装置220等の各主ダクト222,238,244内の空気を接続ダクト224,240,246を介して吸引して空気流を生じさせ、放熱部およびフィンから熱を奪うとともに、回転モータから熱を奪い、冷却させるとともに、加熱された温かい空気を電子回路部品装着機の外へ排出する。ブロア226は、吸気送風機として機能するのである。リニアモータ冷却装置は、上記各実施例におけるように、ダクトによりリニアモータの外へ熱気を排出するようにしても、リニアモータの周辺の部材や装置の温度上昇の防止に効果があるが、本実施例におけるように接続ダクト224,240を設ければ、熱気を電子回路部品装着機全体から外へ排出することができ、電子回路部品装着機の構成部材や装置等の温度上昇がより有効に防止される。モータ冷却装置232〜236についても同様である。
【0047】
図13に示す実施例では、5つのモータ冷却装置の各接続ダクトが合流させられ、合流部の下流側にブロアを設ける例を示したが、これは例示であって、モータ冷却装置は、5つに限らない。モータ冷却装置が複数設けられる場合、全部がリニアモータ冷却装置である場合もある。
【0048】
図14に概略的に示すように、複数の作業機250,252,254,256によって作業ラインが構成される場合、各作業機毎に加熱された空気を主ダクトおよび接続ダクトにより集め、各作業機の少なくとも一つの接続ダクトの合流部に更に別の接続ダクト260を接続するとともに、それら接続ダクト260の合流部の下流側に、全部の作業機250,252,254,256に共通のブロア262を設け、ダクト内の空気をダクト外へ排出させ、熱気を作業ラインの外へ排出させるようにしてもよい。作業機毎に設けられる主ダクトおよび主ダクトに直接接続される接続ダクトが主ダクトを構成し、その主ダクトに接続ダクト260が接続されると考えることもできる。ブロア262は、例えば、作業ラインから離れた場所であって、作業ラインが設置された工場の隅等、熱気を排出しても支障のない場所に設けられる。
【0049】
作業ラインは、例えば、電子回路組立ラインや電子回路生産ラインとされ、複数の作業機は、例えば、回路基板に接着剤を塗布する接着剤塗布機,クリーム状はんだを印刷するスクリーン印刷機,電子回路部品装着機とされる。接着剤塗布機およびスクリーン印刷機は高粘性流体塗布機である。接着剤塗布機においては、例えば、接着剤塗布ヘッドを移動させるヘッド移動装置の駆動源としてリニアモータが用いられ、接続ダクトおよび送風機を含む換気装置を有するリニアモータ冷却装置により冷却される。スクリーン印刷機においては、例えば、印刷ヘッドであるスキージヘッドを移動させるヘッド移動装置の駆動源としてリニアモータが用いられ、リニアモータ冷却装置により冷却される。これら以外の作業機として、例えば、電子回路部品の回路基板への装着状態を検査する装着検査機や高粘性流体の塗布状態を検査する塗布検査機があり、それらにおいては、例えば、検査ヘッドを移動させるヘッド移動装置の駆動源としてリニアモータを用いることができ、リニアモータ冷却装置が設けられる。これら接着剤塗布機等は、対回路基板作業機であり、基板保持装置と、回路基板に作業を施す作業ヘッドと、基板保持装置と作業ヘッドとを相対移動させる相対移動装置と、少なくとも基板保持装置,作業ヘッドおよび相対移動装置を制御する制御装置とを含む。上記接着剤塗布ヘッド等は、作業ヘッドである。
【0050】
電子回路部品装着機としては、装着ヘッドがX軸,Y軸方向に移動させられる装着機に限らず、例えば、特開平6−342998号公報および特開平9−237997号公報に記載されているように、鉛直な回転軸線のまわりに回転可能に保持された少なくとも1つの回転体と、その少なくとも1つの回転体の複数のヘッド保持部の各々に保持された装着ヘッドと、回転体回転装置とを含む装着機でもよい。この装着機においては、例えば、装着ヘッドと基板保持装置と部品供給装置とを相対移動させる相対移動装置が、基板保持装置をX軸方向およびY軸方向に移動させる基板保持装置移動装置および部品供給装置をX軸方向に移動させる部品供給装置移動装置を含み、それら移動装置の駆動源としてリニアモータを用いることができ、リニアモータ冷却装置が設けられる。
電子回路部品装着機は、液晶パネルやプラズマ表示パネル等を構成するガラス基板に電子回路部品を装着する装着機でもよい。ガラス基板は、回路基板と同様に部品装着基板の一種である。
【0051】
また、作業機は対回路基板作業機以外の作業機でもよく、作業ラインは対回路基板作業ライン以外の作業ラインでもよく、それら作業機や作業ラインの作業機に設けられたリニアモータの冷却に請求可能発明に係るリニアモータ冷却装置を用いることができる。対回路基板作業機以外の作業機や作動装置において移動部材を直線移動させる移動装置の駆動源としてリニアモータを用いる場合にも、その冷却に請求可能発明に係るリニアモータ冷却装置を用いることができる。この作業機は、例えば、作業ヘッドと、作業対象部材を保持する保持装置と、それら作業ヘッドと保持装置とを相対移動させる相対移動装置と、それら相対移動装置等を制御する制御装置とを含むように構成される。作動装置も同様である。
【0052】
なお、ダクトが固定子に沿って設けられる場合、ファンあるいはブロアにより、ダクト外の空気をダクトを経て吸い込んで放出するようにしてもよい。例えば、リニアモータおよびリニアモータ冷却装置がハウジングに収容されている場合、ダクトの一端部をハウジング内に開口させるとともに、他端部をハウジング外に開口させ、その外部への開口部にブロアを設け、ダクト内の空気を外へ吸い出すように回転させる。それにより、ダクト外であってハウジング内の空気がダクト内に吸い込まれ、フィンを冷却しつつハウジング外へ排出される。ダクト内の空気がフィンからの放熱によって加熱されることによりダクトの温度が上昇し、それによりダクト周辺の空気も温められるが、ダクト内の空気の温度よりは低く、フィンを冷却するのであり、このハウジング内の空気の吸引,排出により、ハウジング内の空気も換気され、ダクト周辺の温度上昇が抑制される。
【0053】
また、ファンおよびダクトを可動部に支持させ、可動部と一緒に移動させる場合、ファンは1つ設けるのみでもよい。この場合、フィンは可動部の移動方向に平行な方向において一つのものとされ、ファンはダクトの一端部に設けられ、ダクト内に空気を送り込む方向あるいはダクトから空気を吸い出す方向に回転させられる。
可動部の移動方向に平行な方向において一つであるフィンをダクトにより覆い、その両端部にそれぞれファンを設けて可動部と一緒に移動させてもよく、その場合にも、2つのファンは、ダクト内に空気を送り込む方向あるいはダクトから空気を吸い出す方向に回転させる。
これらの場合、ファンの回転により生じさせる冷却風の方向は、可動部の移動方向に応じて変えてもよく、変えなくてもよい。例えば、可動部の一方向において連続して移動する時間が長い場合、可動部の移動方向の下流側から上流側に向かう空気の流れを生じさせるようにファンを回転させる。
【0054】
ダクトが固定子に沿って設けられる場合にも、ファンにより生じさせられる風の方向は、可動子の移動方向に応じて変えてもよい。
さらに、放熱部材が2枚の放熱板を含む場合、それら放熱板の各放熱部の高さ(テーブルの板面に直角な方向の位置)は同じにしてもよい。また、2枚の放熱板の各放熱部の上面(第1面)と下面(第2面)とにそれぞれフィンを設ける場合、全部のフィンの高さ(放熱部からの突出長さ)は同じにしてもよい。
さらに、放熱部材,フィンおよび導風部材は、アルミニウム合金の他、熱伝導率の高い金属材料、例えば、銅合金や鋼により作ってもよい。
また、導風部材を設けて冷却風を可動部から離れる向きに案内させる場合、冷却風を可動部の側方において、あるいは下方において可動部から離れる向きに案内するように導風部材を設けてもよい。
【0055】
さらに、コアレスのリニアモータにおいて、複数のコイルの間に、スペーサに替えて環状、例えば、円環状の集熱部材を設けてもよい。集熱部材は、例えば、アルミニウム等、伝熱性に優れた非磁性材料製とし、放熱部材の集熱部に接続して熱を伝えさせ、放熱部材から放熱されるようにする。このようにすれば、コイルが発する熱は、放熱部材の集熱部によって集熱されるとともに、集熱部材によっても集熱され、集熱、延いては放熱および冷却がより良好に為される。
スペーサ,集熱部材は省略してもよい。また、リニアモータは、コイルがコアにより保持されたコア付きのリニアモータでもよい。
【符号の説明】
【0056】
10:リニアモータ冷却装置 12:リニアモータ 14:固定子 16:可動子 32:コイル 40:樹脂モールド 64:放熱板 66:集熱部 68:放熱部 74:突出部 76:基端部 78:フィン 86:ダクト 100:ファン 110:リニアモータ冷却装置 112:放熱板 114:集熱部 116:放熱部 120:突出部 122:基端部 130,132:フィン 136,138:ダクト 140,142:ファン 160:リニアモータ冷却装置 164:導風板 166:放熱板 172:放熱部 200:リニアモータ冷却装置 202,204:ファン 220:リニアモータ冷却装置 222:主ダクト 224:接続ダクト 226:ブロア 228:換気装置 238:主ダクト 240:接続ダクト 242:換気装置 260:接続ダクト 262:ブロア
【技術分野】
【0001】
本発明はリニアモータ冷却装置に関するものであり、特に、可動部がコイルを備えたリニアモータの冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リニアモータにおいては、コイルへの電流供給に基づいて可動部を移動させる移動推力が生じさせられるのであるが、それと共にコイルが発熱し、可動部の温度が上昇する。そのため、下記の特許文献1に記載のリニアモータは、可動部にフィンおよびファンが設けられ、冷却が行われるようにされている。可動部は、コイルおよび電磁鋼板が樹脂モールドにより直方体状に形成されて成り、その上面と下面とにそれぞれ、複数のフィンが可動部の移動方向に平行に設けられるとともに、ファンが可動部の移動方向に直角な軸線まわりに回転可能に設けられて可動部に送風するようにされている。それにより、コイルに発生した熱は樹脂モールドからフィンに伝達され、放熱されて可動部が冷却される。また、ファンの送風により可動部が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−309963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のリニアモータ冷却装置においては、未だ冷却が十分であるとは言えない問題があった。フィンは可動部の外面である上面および下面に設けられるため、コイルから熱が伝わり難く、十分に放熱が為されないのである。
本発明は、上記の事情を背景として為されたものであり、可動部がコイルを備えたリニアモータを冷却する装置の冷却性能の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置を、(A)前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、(B)その放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンとを含むものとすることにより解決される。
【0006】
上記課題はまた、直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置を、(a)前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、(b)前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部が移動する空間を覆うダクトと、(c)そのダクト内の空気を換気する換気装置とを含むものとすることによっても解決される。
【発明の効果】
【0007】
「可動部の外部」とは、コイルの外であることは勿論、コイルがカバーや樹脂モールド等のコイル保護部材により覆われている場合には、コイル保護部材の外であり、放熱部は、例えば、可動部の外側面に沿って延び出させてもよく、可動部から離れる状態で延び出させてもよい。
放熱部材として、例えば、熱伝導率の高い材料製の部材が用いられ、例えば、熱伝導率の高い金属材料製の部材やヒートパイプを使用することができる。
放熱部材およびフィンを含むリニアモータ冷却装置においては、コイルへの電流供給により発生した熱は、その多くがコイルに近接した集熱部により集められるとともに、放熱部によって可動部の外部へ放出される。放熱部に伝達された熱はまた、フィンからも放出され、放熱面積が大きく、放熱が十分に為され、可動部が効果的に冷却される。フィンは可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられており、フィンを可動部の移動方向と交差する方向に設ける場合のように、可動部の移動に抵抗を与えることがなく、しかも、可動部の移動に伴って生じる可動部周辺の空気の流れによってフィンから熱が効果的に奪われ、より良好に冷却が為される。
また、冷却が十分に為されるため、可動部の温度上昇を抑えつつコイルへの供給電流を増大させ、推力を増大させることができ、リニアモータにより駆動される部材の熱膨張による歪の発生を抑え、制御精度を確保しつつ、リニアモータを必要な推力が得られ、容積が小さく、安価なものとすることができる。
【0008】
放熱部材,ダクトおよび換気装置を含むリニアモータ冷却装置において換気装置は、ダクト内に空気を押し込む空気押込装置でもよく、ダクト内の空気を吸い出す空気吸引装置でもよく、その両方でもよい。ただし、ダクト内の温められた空気がダクト壁の隙間から外部に漏れることを回避する観点からすれば、少なくとも空気吸引装置を設けることが望ましい。空気押込装置として、例えば、コンプレッサ,ブロア,ファンを使用することができ、空気吸引装置として、例えば、バキュームポンプ,アスピレータ(流体として液体を使用するものでも気体を使用するものでもよい),ブロア,ファンを使用することができる。
本リニアモータ冷却装置においては、放熱部材の集熱および放熱作用によって可動部の冷却が十分に為されるとともに、放熱によって温められた放熱部周辺の空気がリニアモータ周辺に拡散し、周辺部材の温度を上昇させることがダクトにより防止される。また、ダクト内の空気は換気装置により換気され、ダクト内にダクト外から空気が取り入れられるとともに、放熱により温められた空気がダクトを通って、リニアモータが設けられた機械の外や、その機械から離れた場所等、機械に影響を与えず、熱気が排出されても支障のない場所へ強制的に排気され、作業環境の悪化やリニアモータ周辺部材,装置の温度上昇およびそれによる機械的熱変形等を抑制することができる。さらに、ダクト内の空気が換気装置によって換気される際にダクト内に生じさせられる空気の流れによって放熱部が冷却される効果も得られる。
さらにまた、ダクトおよび換気装置が固定部側に設けられており、可動部に設けられる場合に比較して可動部を軽くすることができ、可動部の加,減速時の振動が低減させられる。また、可動部を移動させる推力が小さくて済み、コイルへの供給電流を減少させ、消費電力量および発熱量を低減させることができる。冷却性能の向上によるリニアモータの小形化と合わせて、リニアモータを更に容積が小さく、安価なものとすることもできる。
なお、ダクトは放熱部が移動する空間を覆うが、放熱部のダクト内を移動する部分と、ダクト外を移動する部分との間の部分に対応する部分は空けられ、放熱部の移動を許容するようにされる。ダクトは、放熱部の移動方向の全体にわたって外に開かれる開口部を有することとなるのであるが、この開口部は放熱部の通過時以外は閉じられていることが望ましく、例えば、ダクトに開閉可能な遮蔽部材を設け、放熱部の通過時には開口部を開いて放熱部の移動を許容し、通過後は閉じてダクト内からの空気の漏れを防止するようにすることが望ましい。
【発明の態様】
【0009】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0010】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(7)項が請求項5に、(8)項と(9)項とを合わせた項が請求項6に、(12)項が請求項7に、(14)項が請求項8に、(16)項が請求項9に、(17)項が請求項10にそれぞれ相当する。
【0011】
(1)直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
その放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンと
を含むリニアモータ冷却装置。
リニアモータは、可動部が筒状を成し、固定部を囲む状態で配置されて固定部に沿って移動する筒形リニアモータでもよく、可動部が概して平板状を成し、固定部と対向して配置されて固定部に沿って移動する平板形リニアモータでもよい。また、直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータであればよく、請求可能発明は、リニア同期モータ,リニア誘導モータ,リニアステッピングモータ,リニア直流モータ等、種々のリニアモータの冷却装置に適用可能である。(14)項に記載のリニアモータ冷却装置についても同様である。
(2)前記可動部が前記コイルの外側を覆う樹脂モールドを備え、前記放熱部材の前記集熱部が、それらコイルと樹脂モールドとの間に配設され、前記放熱部が樹脂モールドの一部を貫通して外部に延びさせられた(1)項に記載のリニアモータ冷却装置。
コイルは線材同士の隙間に樹脂が充填されたものであっても、充填されていないものであってもよい。前者の場合には集熱部が充填樹脂の表面に密着し、後者の場合には集熱部がコイルの外側面に密着する状態で配設されることが望ましい。コイルの線材同士の隙間に樹脂が充填される場合、樹脂は空気に比較して熱伝導率が高いため、コイル内周部から外周部への熱伝達が促進される。リニアモータがコイルがコアにより保持されず、コアを有さないコアレスリニアモータである場合には、集熱部は充填樹脂の表面あるいはコイルの外側面に密着する状態で配設される。リニアモータがコイルがコアにより保持されるコア付きモータであり、コアを有する場合、集熱部を充填樹脂の表面あるいはコイルの外側面に密着させることができないのであれば、集熱部を直接コアに密着させればよい。
コイルは樹脂モールドにより覆われて、保護されているが、集熱部は樹脂モールドを介することなく、コイルに直接接触させられ、あるいは直接接触させられているに等しく(線材同士の隙間に樹脂が充填される場合)、あるいはコアを介してではあるがコイルに極く近接して配設され、十分に熱を集めて放熱部から放熱することができる。樹脂モールドは放熱部材より熱伝導率が低く、集められた熱が樹脂モールドに伝達されることは少なく、可動部の外において放熱部から効果的に放出される。
(3)前記コイルが筒状を成し、前記集熱部がその筒状コイルの外周の80%以上を覆う状態で配設された(1)項または(2)項に記載のリニアモータ冷却装置。
放熱部材はコイルのほぼ全体から熱を集めて外部に放出することができる。コイルが筒状を成し、その内周側に固定子が配設されて磁界が形成される場合、磁気回路を遮断することなくコイルの外周全体を集熱部によって覆うことができ、集熱を効果的に行うことができる。
コイルは、例えば、円筒状を成すものでもよく、中心線に直角な断面形状が長方形,正方形等の四角形等、多角形状を成すものでもよい。
(4)前記放熱部が、前記筒状コイルの中心線に対してほぼ対称の2つの位置から互いに逆向きに延び出させられた(3)項に記載のリニアモータ冷却装置。
コイルのほぼ全体から集められた熱がコイルの両側においてそれぞれ放出され、放熱が均等にかつ効果的に行われる。
「ほぼ対称」とは、2つの位置が対称である場合および対称からやや外れた位置であっても、対称と言い得る場合を含む。
(5)前記放熱部材が、前記筒状コイルの周方向においてほぼ半分の部分を覆う半筒状を成す集熱部とその集熱部の一端から筒状コイル中心線から遠ざかる向きに延び出す放熱部とを備えた放熱板を2枚含み、放熱部が互いに反対向きに延び出す状態で配設された(4)項に記載のリニアモータ冷却装置。
集熱部および放熱部を有する放熱部材の板材からの成形、および筒状コイルへの装着が容易になる。
(6)前記放熱部が前記可動部の外側面から片持ち状に突出させられ、その突出部に前記フィンが設けられた(1)項ないし(5)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
放熱部は可動部の外側面に沿って延びるようにすることも可能であるが、外側面から片持ち状に突出する状態とすればフィンを突出部の両面に設けることが可能となる。また、次項に記載のとおり、突出部の基端部を除く部分にフィンを設ければ、放熱部およびフィンが移動する空間をダクトによりほぼ完全に覆うことが可能となる。
(7)前記突出部の基端部を除く部分に前記フィンが設けられ、そのフィンと放熱部の基端部を除く部分とを覆うダクトが、前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部および前記フィンが移動する空間を覆う状態で静止して設けられた(6)項に記載のリニアモータ冷却装置。
フィンから放出された熱により温められた空気が周辺に拡散し、周辺部材,装置の温度を上昇させることがダクトにより防止される。ダクトは、放熱部が移動する空間を覆う状態で静止して設けられており、可動部の移動領域全体にわたって加熱空気拡散防止効果が得られる。また、可動部の移動に伴って生じるフィンと周辺の空気との相対移動がダクトにより確保され、フィンが確実に冷却される。
(8)前記可動部に支持されて可動部と一緒に移動し、前記フィンに沿った方向の冷却風を生じさせるファンを含む (1)項ないし(6)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
フィンは、可動部の移動により生ずる空気の相対移動によって冷却される上、ファンによって強制的に生じさせられる風によっても冷却され、放熱が十分に為される。
(9)前記フィンが、前記可動部の移動方向における中間部から両端の各々に向かって延びている第一フィンと第二フィンとを含み、前記ファンがそれら第一フィンと第二フィンとの各々に対して設けられた第一ファンと第二ファンとを含む(8)項に記載のリニアモータ冷却装置。
第一,第二ファンにより、第一,第二フィンのそれぞれについて、可動部の移動方向に平行な方向において正逆いずれかの方向に冷却風を生じさせることができる。
フィンを第一,第二フィンを含むものとすれば、第一フィンと第二フィンとの間にスペースが設けられ、風の取り入れ口あるいは排出口として利用することができ、ファンによる送風に基づいて種々の態様で冷却を行うことができる。
(10)前記第一ファンと前記第二ファンとが前記第一フィンと前記第二フィンとの前記中間部側の端に近接して設けられた(9)項に記載のリニアモータ冷却装置。
(11)前記第一ファンと前記第二ファンとが前記第一フィンと前記第二フィンとの前記中間部側とは反対側の端に近接して設けられた(9)項に記載のリニアモータ冷却装置。
(12)前記第一ファンと前記第二ファンとが前記中間部に向かって流れる冷却風を生じさせるものであり、前記中間部に、第一ファン側から中間部に流れる冷却風と第二ファン側から中間部に流れる冷却風とを前記可動部から離れる向きに流れるように案内する導風部材が設けられた(9)項ないし(11)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
第一,第二ファンにより生じさせられた冷却風は、いずれも可動部の移動方向における中間部に向かって流れるが、導風部材の案内により可動部から離れる向きに流れさせられるため、上記中間部においてぶつかり合って中間部近傍における流速が低下することが回避される。
(13)前記フィンを覆って前記可動部の移動方向に平行に延びるダクトを含む(1)項ないし(6)項および(8)項ないし(12)項のいずれかに記載のリニアモータ冷却装置。
ダクトは可動部と共に移動し、可動部の移動に伴って生じる風をフィンに沿って流れさせ、冷却を促進する。
また、ファンを備えたリニアモータ冷却装置においては、ファンによりダクト内に冷却風が生じさせられ、フィンが確実に冷却風に晒されて冷却が効率良く行われる。
(14)直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部が移動する空間を覆うダクトと、
そのダクト内の空気を換気する換気装置と
を含むリニアモータ冷却装置。
(15)前記放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンを含む(14)項に記載のリニアモータ冷却装置。
コイルに発生した熱は放熱部から放出されるとともに、フィンからも放出され、コイルが良好に冷却される。
(16)前記換気装置が、前記ダクトの長手方向の少なくとも一端部に設けられた送風機を含む(14)項または(15)項に記載のリニアモータ冷却装置。
送風機として、例えば、ファン,ブロアが使用される。
換気装置をダクトの長手方向の一端部に設ける場合、送風機はダクトに空気を送り込む送り込み送風機としてもよく、ダクトから空気を吸い出す吸気送風機としてもよい。送風機をダクトの長手方向の両端部に設ける場合、一方が送り込み送風機、他方が吸気送風機とされ、ダクト内の空気が確実に換気される。
(17)前記換気装置が、主ダクトとしての前記ダクトの一端部に接続された接続ダクトと、その接続ダクトの先端部に設けられた送風機とを含む(14)項または(15)項に記載のリニアモータ冷却装置。
接続ダクトの先端部に設けられる送風機を送り込み送風機とすることも可能であるが、吸気送風機とすれば、主ダクトの一端にのみ接続ダクトを設ければよく、また、ダクト壁の隙間等から温かい空気が周辺へ漏れることを容易に防止し得る。接続ダクトの先端部に設けられる送風機は、複数の発熱部に対して共通に設けることも可能である。例えば、1台の機械に複数の電動モータ(リニアモータを含む)のような発熱部が設けられることが多く、その場合に、それら複数の発熱部の各々に設けられた主ダクトにそれぞれ接続ダクトを接続するとともにそれら接続ダクトを合流させ、合流部の下流側にブロア等の送風機を設けるのである。この態様にすれば、暖かい空気を完全に機械外へ排出することが容易となる。
作業ラインを構成する複数の機械の各々における少なくとも1つの接続ダクトの合流部に更に接続ダクトを接続するとともに合流させ、その合流部の下流側に送風機を設けてもよい。
さらに、複数の作業ラインについて、各ラインの最下流の接続ダクト合流部に接続ダクトを接続するとともに合流させ、その合流部の下流側に送風機を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】請求可能発明の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示す正面断面図である。
【図2】上記リニアモータ冷却装置およびリニアモータを、リニアモータにより移動させられるテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図3】上記リニアモータ冷却装置のダクトの開口を覆う遮蔽幕を放熱板の放熱部と共に示す側面図(一部断面)である。
【図4】上記リニアモータ冷却装置およびリニアモータを備えた電子回路部品装着機を概略的に示す平面図である。
【図5】上記電子回路部品装着機のY軸移動装置を示す正面図である。
【図6】別の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示す正面断面図である。
【図7】図6に示すリニアモータ冷却装置およびリニアモータをテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図8】図6に示すリニアモータ冷却装置のフィン,ファンおよびダクトを概略的に示す側面図である。
【図9】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示すテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図10】図9に示すリニアモータ冷却装置のフィン,ファンおよびダクト等を概略的に示す側面図である。
【図11】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置およびリニアモータを示すテーブル等を除いて概略的に示す平面図である。
【図12】図11に示すリニアモータ冷却装置のフィン,ファンおよびダクト等を概略的に示す側面図である。
【図13】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置を概略的に示す平面図である。
【図14】更に別の実施例であるリニアモータ冷却装置を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0014】
図1に、請求可能発明の一実施例であるリニアモータ冷却装置10およびそれにより冷却されるリニアモータ12が図示されている。本実施例のリニアモータ冷却装置10およびリニアモータ12は、電子回路部品装着機に設けられている。電子回路部品装着機は、作業機の一種であって、回路基板に作業を施す対回路基板作業機の一種であり、回路基板に電子回路部品を装着する。回路基板は部品装着基板の一種であり、プリント基板はその一例である。電子回路部品装着機は、例えば、図4および図5に概略的に示すように、電子回路部品を供給する部品供給装置300と、回路基板を保持する基板保持装置302と、部品供給装置300から電子回路部品を受け取って回路基板304に装着する作業ヘッドとしての装着ヘッド306と、部品供給装置300と基板保持装置302と装着ヘッド306とを相対移動させる相対移動装置308と、少なくとも基板保持装置302,装着ヘッド306および相対移動装置308を制御する制御装置310とを含むように構成される。制御装置310はコンピュータを主体として構成され、部品供給装置300等は、位置を固定して設けられたベッド312上に設けられている。ベッド312は電子回路部品装着機の本体を構成する。本電子回路部品装着機は、他に、回路基板304に設けられた基準マークを撮像するマーク撮像装置および装着ヘッド306に保持された電子回路部品を撮像する部品撮像装置を含む。
【0015】
相対移動装置308は、例えば、特開平6−291490号公報に記載されているように、装着ヘッド306を、基板保持装置302により保持された回路基板304の部品装着面に平行な一平面たる水平面内において互いに直交する2方向であるX軸方向およびY軸方向に移動させる装着ヘッド平行方向移動装置たる装着ヘッド水平方向移動装置316と、装着ヘッド306を、上記2方向と直交する方向である鉛直方向(Z軸方向)に移動させる装着ヘッド直交方向移動装置たる装着ヘッド昇降装置318とを含む。相対移動装置308は、装着ヘッド306を、位置を固定して設けられた部品供給装置300へ移動させて部品供給装置300から電子回路部品を受け取らせ、基板保持装置302へ移動させて、基板保持装置302に保持された回路基板304に電子回路部品を装着させる。
【0016】
基板保持装置302は、例えば、基板搬送装置320により搬入された回路基板304を下方から支持するとともに、縁部をクランプする装置とされる。装着ヘッド水平方向移動装置316は、装着ヘッド306をX軸方向に移動させるX軸移動装置322と、Y軸方向に移動させるY軸移動装置324とを含み、リニアモータ12は、例えば、それらX軸移動装置322およびY軸移動装置324の各駆動源として用いられ、X軸移動部材326およびY軸移動部材328をそれぞれX軸方向およびY軸方向に移動させる。本電子回路部品装着機のX軸移動装置322は、図4に示すようにリニアモータ12を一対備え、これらリニアモータ12は制御装置310により同時に共通して制御され、X軸移動部材326を移動させる。これらX軸移動装置322の2つのリニアモータ12およびY軸移動装置324の1つのリニアモータ12についてそれぞれ、リニアモータ冷却装置10が設けられている。電子回路部品装着機はまた、装着ヘッド306をその軸線まわりに回転させて部品保持具330に保持された電子回路部品を回転させるヘッド回転装置等を含む。ヘッド回転装置および前記装着ヘッド昇降装置318は、例えば、特開平4−372199号公報に記載の装置と同様に構成される。これら装着ヘッド306,相対移動装置308および回転装置を含む装着装置により電子回路部品が回路基板304に装着される。X軸移動装置322およびY軸移動装置324の各々のリニアモータ12およびリニアモータ冷却装置10は同様に構成されており、以下、X軸移動装置322の一対ずつのリニアモータ12およびリニアモータ冷却装置10の各一方を取り出し、図1ないし図3に基づいて代表的に説明する。
【0017】
リニアモータ12は、本実施例では円筒形のリニアモータであって、三相のコアレスリニアモータであり、図1に示すように、固定部としての固定子14および可動部としての可動子16を含み、被駆動部材たる移動部材としてのテーブル18を予め設定された経路に沿って移動させる。このテーブル18に上記X軸移動部材326が設けられている。固定子14は、本実施例においては、複数の永久磁石22および磁性材製の磁石保持部材としてのロッド24を含む。ロッド24は、横断面形状が円形を成し、一直線状を成す。複数の永久磁石22はそれぞれ、例えば、リング状を成し、その外周側がN極とされ、内周側がS極とされたものと、外周側がS極とされ、内周側がN極とされたものとがあり、ロッド24の表面に、軸方向において磁極が交互に変わるように等ピッチで、かつ隣接する永久磁石22との間に非磁性材製のスペーサ(図示省略)を挟んで設けられている。固定子14は、可動子16の移動に必要な長さを備え、ベース26に、支持部材28(図2参照)により軸方向の両端部を支持されて水平に配設されている。ベース26は、前記ベッド312上に設けられ、固定子14は、その長手方向がX軸方向に平行に設けられている。
【0018】
可動子16は、複数のコイル32(図1には1つのみ図示されている)を含む。これらコイル32はそれぞれ、本リニアモータ12では、線材が巻回されて円筒状を成すとともに、線材同士の隙間に樹脂34が充填され、その外周側も樹脂によって覆われており、非磁性材製のリング状のスペーサ(図示省略)を間に挟んで同心状に一体的に、かつ等間隔に設けられている。可動子16は、固定子14の外側に半径方向の隙間36を有して嵌合されており、固定子14の軸方向に沿って移動可能であり、コイル32の外側を樹脂モールド40により覆われて前記テーブル18の裏面ないしベース26あるいは固定子14側の面である下面に固定されている。樹脂モールド40の樹脂は、本実施例では、上記充填された樹脂34と同じ樹脂とされている。
【0019】
テーブル18は、ベース26上にリニアガイド48により案内されて、固定子14の長手方向に平行な方向に一直線状に移動可能に設けられている。リニアガイド48は、ベース26上に設けられた1対の案内部材としてのガイドレール50と、テーブル18に設けられてガイドレール50に相対移動可能に嵌合された1対のスライダ52と、スライダ52に循環可能に保持された転動体(例えば、ボール。図示省略)とを含む。また、リニアエンコーダ54が設けられ、テーブル18の移動方向の位置ないしX軸移動部材326の位置が検出されるようにされている。リニアエンコーダ54は位置検出装置の一種であり、ベース26に、テーブル18の移動方向に平行に設けられたリニアスケール56と、テーブル18に設けられ、リニアスケール56に沿って移動させられる移動検出ヘッド58とを含む。なお、リニアエンコーダ54は、本X軸移動装置322においては、2つのリニアモータ12のうちの一方について設けられる。2つのリニアモータ12についてそれぞれリニアスケール56を設け、それらリニアスケール56による位置検出結果に基づいて2つのリニアモータ12が制御され、X軸移動部材326の移動が制御されてもよい。X軸移動装置は、リニアモータおよびリニアモータ冷却装置を1つずつ含む装置としてもよい。
【0020】
リニアモータ冷却装置10を説明する。電流供給により前記コイル32に発生する熱は、少なくとも1枚、本実施例では2枚の放熱板64により放熱される。これら放熱板64は、本実施例においてはそれぞれ、伝熱性に優れた金属材料の一種であり、かつ単位質量あたりの放熱特性(放熱量/質量)に優れた材料、例えば、アルミニウム合金により作られ、半円筒状を成し、複数の円筒状のコイル32全部について、そのほぼ半周を覆う集熱部66と、その集熱部66の一端からコイル32の中心線から遠ざかる向きに延び出す板状の放熱部68とを備えている。2枚の放熱板64の各集熱部66は、樹脂34の表面に密着させられた状態で複数のコイル32と共に樹脂モールド40によって覆われている。集熱部66は、複数のコイル32と樹脂モールド40との間に配設され、コイル32に近接し、直接接触させられたに等しい状態で設けられているのであり、2つの集熱部66はコイル32の外周のほぼ全体を覆っている。なお、コイル32の線材同士の隙間への樹脂34の充填と、コイル32および集熱部66の樹脂によるモールドとは、同時に行ってもよい。
【0021】
2枚の放熱板64の各放熱部68は、図1に示すように、コイル32のほぼ直径方向に隔たった2部分であり、コイル32の中心線に対して対称の2つの位置であって、テーブル18の板面ないしテーブル18の移動平面に直角な方向ないしテーブル18とベース26とが隔たった方向である上下方向にずれた位置において集熱部66からテーブル18の板面に平行な方向であって水平に、かつ互いに逆向きに真っ直ぐに延び出させられ、樹脂モールド40の一部を貫通して外部に延び出させられている。放熱部68の突出端部は自由であり、放熱部68は樹脂モールド40の外側面(本実施例では樹脂の外表面)から片持ち状に突出させられ、集熱部66から可動子16の外部まで延び出させられている。なお、図3に示すように、放熱部68の、可動子16の移動方向に隔たった両端部はそれぞれ、端側ほど厚さが薄くされて案内部72が設けられている。案内部72の先端は丸くされている。案内部72を設ける理由は、後に説明する。
【0022】
放熱部68のコイル32から外部へ突出させられた突出部74には、その基端部76を除く部分に複数のフィン78が設けられている。フィン78は、本リニアモータ冷却装置10では、放熱板64と同様に、伝熱性に優れた金属材料の一種であり、かつ単位質量あたりの放熱特性に優れた金属材料の一種であるアルミニウム合金製の薄い板材が凹凸状に曲げられることにより形成され、突出部74の第1面たるテーブル18側の面である上面80と第2面たるベース26側の面である下面82とにそれぞれフィン78が複数ずつ、可動子16の移動方向と平行な方向に延びる状態で固定されている。
【0023】
前述のように、2枚の放熱板64の各放熱部68は上下方向の位置が異ならされており、上面80に固定されたフィン78と下面82に固定されたフィン78とは高さ(放熱部68からの突出長さ)が異ならされている。上下方向の位置が高い方の放熱部68の上面80に固定のフィン78と、低い方の放熱部68の下面82に固定のフィン78とは高さが同じにされており、高い方の放熱部68の下面82に固定のフィン78と、低い方の放熱部68の上面80に固定のフィン78とは高さが同じにされており、後者の方が前者より高くされている。したがって、2枚の放熱板64の各々について、上面80に固定のフィン78の先端から下面82に固定のフィン78の先端までの距離は同じであり、2枚の放熱板64の各上面80に固定のフィン78の先端面は水平な同一平面内に位置させられ、各下面82に固定のフィン78の先端面も水平な同一平面内に位置させられている。なお、フィンは、放熱板64と一体に形成してもよい。
【0024】
前記ベース26には、図1に示すように、固定子14に沿って1対のダクト86が設けられている。これらダクト86はそれぞれ、固定子14の両側に設けられ、それぞれ、2枚の放熱板64の各放熱部68の基端部76を除く部分と、上面80および下面82にそれぞれ固定のフィン78とを覆うとともに、可動子16の移動に伴って放熱部68およびフィン78が移動する空間を覆う状態で静止して設けられている。ダクト86は、その長手方向であって、可動子16の移動方向に隔たった両端部がそれぞれ、リニアモータ12の外に開口させられた管状を成し、図1および図3に示すように、その固定子14側の側壁には、突出部74の基端部76に隣接する部分であって、フィン78が設けられていない部分の移動経路に対応する部分に開口88が固定子14に沿って設けられ、放熱部68の基端部76を除く部分およびフィン78がダクト86により覆われた状態で可動子16の移動に伴ってダクト86内を移動することを許容するようにされている。なお、図2はリニアモータ冷却装置10およびリニアモータ12を概略的に示す図であり、ダクト86等、構成部材は概略的に図示されており、ダクト86は上壁が略されて可動子16が見える状態で図示されている。
【0025】
上記開口88は、図3に示すように、ダクト86に設けられた遮蔽部材としての遮蔽幕90により塞がれている。遮蔽幕90は、可撓性を有する材料、例えば、合成樹脂製の薄いシートにより作られて帯状を成し、長手方向に平行な一方の側縁部においてダクト86の開口88の上側の部分に固定され、開口88全体を塞いでいる。遮蔽幕90の他方の側縁部であって下端部は自由であり、開口88を開放することができる。
【0026】
上記1対のダクト86の各長手方向の両端開口部にはそれぞれ、図2に示すように、換気装置の一種である送風機としてのファン100が設けられている。本リニアモータ冷却装置10においては、ダクト86およびファン100は、固定子14側に設けられているのである。これらファン100は、図2に示すように、ダクト86の長手方向に平行であって、可動子16の移動方向に平行な軸線まわりに回転可能に設けられている。1対のダクト86はそれぞれ、放熱板64の突出部74の上面80と下面82とにそれぞれ固定のフィン78を覆うように設けられており、ファン100は上面80に固定のフィン78に対しても下面80に固定のフィン78に対しても風を作用させる。
【0027】
なお、前記Y軸移動装置324は、図5に示すように、X軸移動部材326上に設けられている。Y軸移動装置324においてリニアモータ12およびリニアモータ冷却装置10は、テーブル18の板面ないし移動平面が鉛直であって、基板保持装置302に保持された回路基板304の部品装着面に直角となり、放熱板64の放熱部68が集熱部66から鉛直(上下)方向に延び出す状態で設けられる。Y軸移動装置324においてはY軸移動部材328がテーブル18を構成し、あるいはテーブル18上にY軸移動部材328が設けられる。また、X軸移動部材326がベース26を構成し、あるいはX軸移動部材326上にベース26が設けられる。Y軸移動装置324のリニアモータ12を冷却するリニアモータ冷却装置10の一対のダクト86は、X軸移動部材326上にY軸方向に平行に設けられた固定子14に沿って設けられている。
【0028】
以上のように構成されたリニアモータ12においては、コイル32への駆動電流の供給により、コイル32に移動磁界が発生させられるとともに、永久磁石22が発生させている界磁磁束との相互作用により軸方向の移動推力が発生させられ、可動子16が固定子14の軸線に平行な方向に移動させられ、テーブル18がリニアガイド48により案内されつつ移動させられる。この際、コイル32が発熱するが、その熱は、放熱板64のコイル32を覆う集熱部66により集熱され、放熱部68およびフィン78から放熱され、可動子16外へ放出される。
【0029】
また、少なくとも可動子16の移動時にはファン100が回転させられる。この際、図2に矢印で示すように、ダクト86の長手方向の一端部に設けられたファン100は、ダクト86内に空気を送り込むように回転させられ、他端部に設けられたファン100は、ダクト86内の空気を外へ吸い出すように回転させられ、ダクト86内にはその長手方向において一方向に流れる空気の流れが生じさせられる。可動子16は、固定子14に沿って往復移動させられるが、本実施例では、可動子16の移動方向に関係なく、ファン100により生じさせられる空気の流れの方向は一定である。
【0030】
ダクト86は、その両端部がリニアモータ12の外に開口させられており、一方のファン100により、リニアモータ12の外からダクト86内に空気が送り込まれ、他方のファン100によってダクト86内の空気が、ダクト86の外であってリニアモータ12の外へ排出されて、ダクト86内の空気が強制的に換気される。ダクト86内に送り込まれる空気の温度はフィン78の温度より低く、可動子16の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィン78は、ファン100によりダクト86内に生じさせられた冷却風によって良好に冷却される。放熱部68およびフィン78はダクト86により覆われているため、確実に冷却風の中に位置することとなり、冷却が確実に為されるとともに、熱を奪って温度の上昇した空気はダクト86内を流れ、リニアモータ12の周辺部材,装置の温度を上昇させることなく、リニアモータ12外へ排気される。フィン78は、可動子16の移動に伴って生ずる空気の相対移動により冷却される上、ファン100によって強制的に生じさせられる風によっても冷却され、放熱が十分に為される。可動子16の移動に伴う空気の相対移動はダクト86により確保され、フィン78が確実に冷却される。
【0031】
可動子16が移動するとき、放熱部68は遮蔽幕90をめくり上げつつ移動する。前述のように、放熱部68の、可動子16の移動方向に隔たった両端部にはそれぞれ、案内部72が設けられており、この案内部72によって遮蔽幕90を容易にめくり上げることができる。遮蔽幕90は、放熱部68の通過後、ダクト86内の空気の流れにより生ずる負圧によってダクト86に密着した状態に戻り、開口88を塞ぐ。そのため、開口88はほぼ全体が閉じられた状態に保たれ、ダクト86内の空気がその長手方向両端の開口以外の部分から漏れることが良好に回避され、空気の送り込みと吸気とによる換気が良好に為される。
【0032】
このようにコイル32から発せられる熱が良好に放熱され、リニアモータ12が良好に冷却される。本リニアモータ12はコアレスのリニアモータであり、コア付きのリニアモータに比較して、同一のトルクを得るために必要な供給電流量が多く、発熱量が多いが、良好に冷却される。2枚の放熱板64およびそれらに設けられた複数のフィン78はアルミニウム合金により作られており、質量に対する放熱量が大きいため、放熱板64等を設けることによる質量の増大を抑えつつ、優れた放熱性を得ることができる。
【0033】
リニアモータ12の冷却が良好に為されることにより、テーブル18やベース26への熱の伝達が抑制されてそれらの熱変形が低減させられ、リニアエンコーダ54の変形も低減させられてテーブル18の位置検出が精度良く行われ、テーブル18が精度良く所定の位置へ移動させられる。
また、リニアモータ12が駆動源とされ、リニアエンコーダ54の位置検出に基づいてテーブル18の位置が制御されることにより、高い制御精度が得られる。回転モータが駆動源とされる場合、被駆動部材である移動部材との間にねじ軸およびナットを含む運動変換機構が設けられるため、移動部材の移動量は回転モータの作動量と厳密には対応せず、運動変換機構の弾性変形に起因する不確定な変動成分を含むこととなる。そのため、たとえ移動部材の位置がリニアエンコーダにより検出され、その検出結果に基づいて回転モータの作動が制御されても、移動部材の位置が上記変動成分の変化の影響を受けることを避け得ず、位置決め精度の向上に限界がある。それに対し、リニアモータの場合、ねじ軸を介することなく、移動部材が直接駆動されるため、リニアエンコーダによる位置の検出結果に基づいてリニアモータが制御されれば、上記弾性変形に起因する不確定な変動成分が排除され、移動部材の位置が精度良く制御されるのである。
このように、リニアモータ12が良好に冷却されて各部の熱変形が低減させられることと、移動部材の位置制御がリニアモータ12とリニアエンコーダ54との組合わせにより運動変換機構の不確定な弾性変形の影響が排除されて行われることとの両方によって、X軸移動部材326およびY軸移動部材328が精度良く所定の位置へ移動させられ、装着ヘッド306が部品供給装置300から電子回路部品を取り出す部品取出位置や回路基板304に電子回路部品を装着する部品装着位置等の作業位置へ精度良く移動させられて、装着作業等が精度良く行われる。
【0034】
また、ダクト86およびファン100が位置を固定して設けられており、それらを可動子16に設ける場合に比較して可動子16の質量が小さく、また、冷却が効率良く行われることから、コイル32への供給電流を増大させ、可動子16の駆動に必要な推力を得つつ、リニアモータ12を容量が小さく、安価なものとすることができる。コアレスのリニアモータはコアを有さない分、軽いことからも、可動子16の質量の増大を抑えることができる。なお、装着ヘッド昇降装置318の駆動源としてリニアモータ12を使用し、その冷却のためにリニアモータ冷却装置10を設けてもよい。
【0035】
別の実施例を図6ないし図8に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置110においては、複数のファンが可動子に支持されて可動子と一緒に移動し、フィンに沿った方向の冷却風を生じさせるようにされている。そのため、本実施例では、2枚の放熱板112の各集熱部114からそれぞれ延び出させられた放熱部116の可動子16の外側面から片持ち状に突出させられた突出部120は、図7および図8に概略的に示すように、可動子16の移動方向における中間部が切り欠かれて切欠部124が設けられ、突出部120の基端部122を除く部分には、切欠部124に対して可動子16の移動方向における一方の側の第1面たる上面126と第2面たる下面128とにそれぞれ、フィン130が複数ずつ、可動子16の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられている。突出部120の切欠部124の他方の側についても同様に、上面126と下面128とにそれぞれ、フィン132が複数ずつ設けられている。フィン130,132はそれぞれ、可動子16の移動方向における中間部から両端の各々に向かって延びているのであり、それらの間であって、切欠部124に対応する部分にスペース134が設けられている。
【0036】
上記フィン130,132はそれぞれ、ダクト136,138によって覆われている。ダクト136は、図6に示すように、放熱部116の上下両面126,128にそれぞれ固定のフィン130を覆って、可動子16の移動方向に平行に延びる状態で放熱板112に固定されている。ダクト138は、放熱部116の上下両面126,128にそれぞれ固定のフィン132を覆って放熱板112に固定されており、これらダクト136,138はそれぞれ、前記スペース134と、スペース134とは反対側であって、フィン132,130より外側とに開口させられている。ダクト136,138のスペース134とは反対側の開口部にはそれぞれ、ファン140,142がフィン130,132に対応し、フィン130とフィン132との可動子16の移動方向における中間部側とは反対側の端に近接する状態で、可動子16の移動方向に平行な軸線まわりに回転可能に設けられている。ファン140,142は、ダクト136,138および放熱板112を介して可動子16により支持され、可動子16と一緒に移動する。
【0037】
本リニアモータ冷却装置110においては、電流供給によりコイル32に発生させられた熱は、放熱板112の集熱部114により集められるとともに放熱部116に伝達され、放熱部116およびフィン130,132から放熱される。可動子16と共にダクト136,138およびファン140,142が移動させられる。この際、ファン140,142は、図7および図8に矢印で示すように、いずれもダクト136,138から空気を外へ吸い出す方向に回転させられる。そのため、2つのダクト136,138の間の空間およびスペース134から外気がダクト136,138内に吸い込まれ、フィン130,132の熱を奪い取り、冷却しつつ、ダクト136,138のスペース134側とは反対側であって、互いに逆向きの外側の開口から排出される。
【0038】
更に別の実施例を図9および図10に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置160においては、図9および図10に概略的に示すように、上記リニアモータ冷却装置110と同様にフィン130,132,ダクト136,138およびファン140,142が設けられ、可動子16と共に移動させられるが、フィン130,132から熱を奪った空気が、フィン130とフィン132との間のスペース134から排出されるようにされている。可動子16の移動方向の中間部から排気されるようにされているのである。
【0039】
そのため、スペース134内に導風部材としての導風板164が設けられている。導風板164は、本実施例では、放熱板166と同様に伝熱性が高く、かつ単位質量あたりの放熱特性に優れた金属材料の一種であるアルミニウム合金により作られ、図10に示すように、フィン130,132からそれぞれ遠ざかるほど上方へ(テーブル180に接近する方向へ)傾斜させられた案内部ないし導風部168,170を備え、放熱板166に固定されている。放熱板166は、前記放熱板112と同様に、放熱部172の可動子16の移動方向の中間部に切欠部174が設けられるとともに、その切欠部174に設けられた取付部176に導風板164が固定されている。導風板164は、放熱部172の第1面たる上面に固定されたフィン130,132に対しても、放熱部172の第2面たる下面に固定されたフィン130,132に対しても対向するように設けられている。また、テーブル180の導風板164に対応する部分には、図10に示すように、開口182が、テーブル180を厚さ方向である上下方向に貫通して設けられている。
【0040】
本リニアモータ冷却装置160においてファン140,142は、ダクト136,138の、可動子16の移動方向における中間部側とは反対側である外側の開口からダクト136,138内に外気を送り込むように回転させられ、可動子16の移動方向における中間部に向かって流れる冷却風が生じさせられる。この冷却風は、フィン130,132の熱を奪いつつ、ダクト136,138内においてそれぞれ、可動子16の移動方向における中間部側へ向かって流れるとともに、導風板164の導風部168,170に当たって上方へ導かれ、可動子16から離れてテーブル180の開口182を通り、上方ないし外へ排出される。導風板164は伝熱性の高い金属により作られており、放熱部172から伝達された熱を放出する作用も成す。
【0041】
図6ないし図8に示すリニアモータ冷却装置110におけるように、ダクト136,138内に外気を、可動子16の移動方向における中間部側の開口から取り込み、外側の開口から排出する場合、可動子16の移動方向において下流側に開口するダクトについては、可動子16の移動により生じる風が向かい風となってダクト内の空気のダクト外への排出を妨げ易い。それに対し、図9,図10に示すリニアモータ冷却装置160におけるように、ダクト136,138内に外気を、外側の開口から吸い込み、可動子16の移動方向における中間部側の開口から排出するようにすれば、可動子16の移動方向に関係なく、ダクト136,138内に容易に空気を取り込み、排出することができ、フィン130,132等から熱を奪って温度の上昇した空気を確実にダクト136,138外へ排出することができる。
【0042】
更に別の実施例を図11および図12に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置200においては、図11および図12に概略的に示すように、前記リニアモータ冷却装置160と同様にフィン130,132,ダクト136,138および導風板164が設けられ、可動子16と共に移動させられるが、ファン202,204が、フィン130,132の、可動子16の移動方向における中間部側の端に近接して設けられている。ファン202,204は、ダクト136,138の、可動子16の移動方向の中間部側の開口に設けられ、それぞれ、導風板164とフィン130,132との間に位置させられている。また、ファン202,204は、図12に示すように、その回転軸線が、可動子16の移動方向に平行な鉛直面内(テーブル180の板面に直角な方向)において、可動子16の移動方向に対して、フィン130,132から遠ざかるほど上方へ(テーブル180側へ)向かう向きに、すなわち排気方向に傾斜させられている。さらに、ダクト136,138の、可動子16の移動方向において中間部側とは反対側の開口部はそれぞれ、中間部から遠ざかるほど横断面積が大きくされ、テーパ状の案内部ないし導入部206,208が設けられている。図11においては、導入部206,208の図示は省略されている。
【0043】
本リニアモータ冷却装置200においてファン202,204は、ダクト136,138の、可動子16の移動方向における中間部とは反対側の開口からダクト136,138内に外気を吸い込むように回転させられるが、その回転軸線が傾斜させられているため、ダクト136,138内に取り入れられた空気は、フィン130,132を冷却するとともに、ダクト136,138から斜めに上方ないしテーブル18側へ排出させられ、導風板164の導風部168,170に沿って上方へスムーズに排出される。また、導入部206,208の案内により、ダクト136,138内には良好に外気が吸い込まれ、フィン130,132の冷却が効率良く行われる。
【0044】
更に別の実施例を図13に基づいて説明する。
本実施例のリニアモータ冷却装置220は、図13に概略的に示すように、固定子に沿って延び、可動子の移動に伴って放熱部が移動する空間を覆い、ベースに固定して設けられた主ダクト222の一端部に接続された接続ダクト224と、その接続ダクト224の先端部に設けられた送風機の一種であるブロア226とを含む換気装置228を有する。リニアモータ冷却装置220は、例えば、前記リニアモータ冷却装置10と同様に、電子回路部品装着機に設けられ、X軸移動装置の駆動源であるリニアモータを冷却する。リニアモータ冷却装置220は、2枚の放熱板の各放熱部およびフィンを覆う2つのダクトを備え、それらダクトがそれぞれ主ダクト222を構成し、それら2つの主ダクト222の各一端部にそれぞれ接続ダクト224が接続される。なお、図13においては、主ダクトとしての2つの主ダクト222とそれらに接続された接続ダクト224とがそれぞれ、1つにまとめて図示されている。
【0045】
ブロア226は、リニアモータ冷却装置220の他、例えば、別のリニアモータ冷却装置230およびモータ冷却装置232,234,236について共通である。リニアモータ冷却装置230はリニアモータ冷却装置220と同様に構成され、主ダクト238に接続ダクト240が接続され、ブロア226と共に換気装置242を構成しているが、例えば、電子回路部品装着機において、装着ヘッド移動装置のX軸方向に移動するX軸移動部材上に設けられたY軸移動装置の駆動源であるリニアモータを冷却する装置であり、接続ダクト240は可撓性を有し、X軸移動部材と共に移動するY軸移動装置のリニアモータについて設けられた主ダクト238の移動に追従するものとされる。また、モータ冷却装置232,234,236は、リニアモータ以外のモータであって、一部は、例えば、回転モータの冷却に用いられ、回転モータについて設けられた主ダクト244と、主ダクト244の一端部に接続された接続ダクト246とを含む。主ダクト244は、回転モータの中と外との少なくとも一方について設けられる。主ダクト244を回転モータの中に設ける場合には、モータハウジングに取り付け、外に設ける場合にはモータハウジングの外周を囲むように設ける。回転モータの中に主ダクト244を設ける場合、モータハウジングを主ダクトとしてもよい。回転モータが装着ヘッドを回転させるヘッド回転装置の駆動源である場合、接続ダクト246は可撓性を有するものとされ、装着ヘッドの移動に追従するようにされる。接続ダクト246をY軸移動装置の接続ダクトに接続し、一部を共有するようにしてもよい。また、モータ冷却装置232,234,236の別の一部は、例えば、回路基板を搬送する基板搬送装置の駆動源であるモータを冷却する装置とされる。
【0046】
これらモータ冷却装置220,230〜236の各接続ダクト224,240,246は一つに合流させられ、合流部の下流側にブロア226が設けられている。ブロア226はモータ冷却装置220,230〜236に共用であり、ブロア226は、例えば、電子回路部品装着機から離れた場所であって、電子回路部品装着機が設置された工場の隅等、熱気を排出しても支障のない場所に設けられている。少なくともモータの作動時にブロア226が回転させられ、複数のモータ冷却装置220等の各主ダクト222,238,244内の空気を接続ダクト224,240,246を介して吸引して空気流を生じさせ、放熱部およびフィンから熱を奪うとともに、回転モータから熱を奪い、冷却させるとともに、加熱された温かい空気を電子回路部品装着機の外へ排出する。ブロア226は、吸気送風機として機能するのである。リニアモータ冷却装置は、上記各実施例におけるように、ダクトによりリニアモータの外へ熱気を排出するようにしても、リニアモータの周辺の部材や装置の温度上昇の防止に効果があるが、本実施例におけるように接続ダクト224,240を設ければ、熱気を電子回路部品装着機全体から外へ排出することができ、電子回路部品装着機の構成部材や装置等の温度上昇がより有効に防止される。モータ冷却装置232〜236についても同様である。
【0047】
図13に示す実施例では、5つのモータ冷却装置の各接続ダクトが合流させられ、合流部の下流側にブロアを設ける例を示したが、これは例示であって、モータ冷却装置は、5つに限らない。モータ冷却装置が複数設けられる場合、全部がリニアモータ冷却装置である場合もある。
【0048】
図14に概略的に示すように、複数の作業機250,252,254,256によって作業ラインが構成される場合、各作業機毎に加熱された空気を主ダクトおよび接続ダクトにより集め、各作業機の少なくとも一つの接続ダクトの合流部に更に別の接続ダクト260を接続するとともに、それら接続ダクト260の合流部の下流側に、全部の作業機250,252,254,256に共通のブロア262を設け、ダクト内の空気をダクト外へ排出させ、熱気を作業ラインの外へ排出させるようにしてもよい。作業機毎に設けられる主ダクトおよび主ダクトに直接接続される接続ダクトが主ダクトを構成し、その主ダクトに接続ダクト260が接続されると考えることもできる。ブロア262は、例えば、作業ラインから離れた場所であって、作業ラインが設置された工場の隅等、熱気を排出しても支障のない場所に設けられる。
【0049】
作業ラインは、例えば、電子回路組立ラインや電子回路生産ラインとされ、複数の作業機は、例えば、回路基板に接着剤を塗布する接着剤塗布機,クリーム状はんだを印刷するスクリーン印刷機,電子回路部品装着機とされる。接着剤塗布機およびスクリーン印刷機は高粘性流体塗布機である。接着剤塗布機においては、例えば、接着剤塗布ヘッドを移動させるヘッド移動装置の駆動源としてリニアモータが用いられ、接続ダクトおよび送風機を含む換気装置を有するリニアモータ冷却装置により冷却される。スクリーン印刷機においては、例えば、印刷ヘッドであるスキージヘッドを移動させるヘッド移動装置の駆動源としてリニアモータが用いられ、リニアモータ冷却装置により冷却される。これら以外の作業機として、例えば、電子回路部品の回路基板への装着状態を検査する装着検査機や高粘性流体の塗布状態を検査する塗布検査機があり、それらにおいては、例えば、検査ヘッドを移動させるヘッド移動装置の駆動源としてリニアモータを用いることができ、リニアモータ冷却装置が設けられる。これら接着剤塗布機等は、対回路基板作業機であり、基板保持装置と、回路基板に作業を施す作業ヘッドと、基板保持装置と作業ヘッドとを相対移動させる相対移動装置と、少なくとも基板保持装置,作業ヘッドおよび相対移動装置を制御する制御装置とを含む。上記接着剤塗布ヘッド等は、作業ヘッドである。
【0050】
電子回路部品装着機としては、装着ヘッドがX軸,Y軸方向に移動させられる装着機に限らず、例えば、特開平6−342998号公報および特開平9−237997号公報に記載されているように、鉛直な回転軸線のまわりに回転可能に保持された少なくとも1つの回転体と、その少なくとも1つの回転体の複数のヘッド保持部の各々に保持された装着ヘッドと、回転体回転装置とを含む装着機でもよい。この装着機においては、例えば、装着ヘッドと基板保持装置と部品供給装置とを相対移動させる相対移動装置が、基板保持装置をX軸方向およびY軸方向に移動させる基板保持装置移動装置および部品供給装置をX軸方向に移動させる部品供給装置移動装置を含み、それら移動装置の駆動源としてリニアモータを用いることができ、リニアモータ冷却装置が設けられる。
電子回路部品装着機は、液晶パネルやプラズマ表示パネル等を構成するガラス基板に電子回路部品を装着する装着機でもよい。ガラス基板は、回路基板と同様に部品装着基板の一種である。
【0051】
また、作業機は対回路基板作業機以外の作業機でもよく、作業ラインは対回路基板作業ライン以外の作業ラインでもよく、それら作業機や作業ラインの作業機に設けられたリニアモータの冷却に請求可能発明に係るリニアモータ冷却装置を用いることができる。対回路基板作業機以外の作業機や作動装置において移動部材を直線移動させる移動装置の駆動源としてリニアモータを用いる場合にも、その冷却に請求可能発明に係るリニアモータ冷却装置を用いることができる。この作業機は、例えば、作業ヘッドと、作業対象部材を保持する保持装置と、それら作業ヘッドと保持装置とを相対移動させる相対移動装置と、それら相対移動装置等を制御する制御装置とを含むように構成される。作動装置も同様である。
【0052】
なお、ダクトが固定子に沿って設けられる場合、ファンあるいはブロアにより、ダクト外の空気をダクトを経て吸い込んで放出するようにしてもよい。例えば、リニアモータおよびリニアモータ冷却装置がハウジングに収容されている場合、ダクトの一端部をハウジング内に開口させるとともに、他端部をハウジング外に開口させ、その外部への開口部にブロアを設け、ダクト内の空気を外へ吸い出すように回転させる。それにより、ダクト外であってハウジング内の空気がダクト内に吸い込まれ、フィンを冷却しつつハウジング外へ排出される。ダクト内の空気がフィンからの放熱によって加熱されることによりダクトの温度が上昇し、それによりダクト周辺の空気も温められるが、ダクト内の空気の温度よりは低く、フィンを冷却するのであり、このハウジング内の空気の吸引,排出により、ハウジング内の空気も換気され、ダクト周辺の温度上昇が抑制される。
【0053】
また、ファンおよびダクトを可動部に支持させ、可動部と一緒に移動させる場合、ファンは1つ設けるのみでもよい。この場合、フィンは可動部の移動方向に平行な方向において一つのものとされ、ファンはダクトの一端部に設けられ、ダクト内に空気を送り込む方向あるいはダクトから空気を吸い出す方向に回転させられる。
可動部の移動方向に平行な方向において一つであるフィンをダクトにより覆い、その両端部にそれぞれファンを設けて可動部と一緒に移動させてもよく、その場合にも、2つのファンは、ダクト内に空気を送り込む方向あるいはダクトから空気を吸い出す方向に回転させる。
これらの場合、ファンの回転により生じさせる冷却風の方向は、可動部の移動方向に応じて変えてもよく、変えなくてもよい。例えば、可動部の一方向において連続して移動する時間が長い場合、可動部の移動方向の下流側から上流側に向かう空気の流れを生じさせるようにファンを回転させる。
【0054】
ダクトが固定子に沿って設けられる場合にも、ファンにより生じさせられる風の方向は、可動子の移動方向に応じて変えてもよい。
さらに、放熱部材が2枚の放熱板を含む場合、それら放熱板の各放熱部の高さ(テーブルの板面に直角な方向の位置)は同じにしてもよい。また、2枚の放熱板の各放熱部の上面(第1面)と下面(第2面)とにそれぞれフィンを設ける場合、全部のフィンの高さ(放熱部からの突出長さ)は同じにしてもよい。
さらに、放熱部材,フィンおよび導風部材は、アルミニウム合金の他、熱伝導率の高い金属材料、例えば、銅合金や鋼により作ってもよい。
また、導風部材を設けて冷却風を可動部から離れる向きに案内させる場合、冷却風を可動部の側方において、あるいは下方において可動部から離れる向きに案内するように導風部材を設けてもよい。
【0055】
さらに、コアレスのリニアモータにおいて、複数のコイルの間に、スペーサに替えて環状、例えば、円環状の集熱部材を設けてもよい。集熱部材は、例えば、アルミニウム等、伝熱性に優れた非磁性材料製とし、放熱部材の集熱部に接続して熱を伝えさせ、放熱部材から放熱されるようにする。このようにすれば、コイルが発する熱は、放熱部材の集熱部によって集熱されるとともに、集熱部材によっても集熱され、集熱、延いては放熱および冷却がより良好に為される。
スペーサ,集熱部材は省略してもよい。また、リニアモータは、コイルがコアにより保持されたコア付きのリニアモータでもよい。
【符号の説明】
【0056】
10:リニアモータ冷却装置 12:リニアモータ 14:固定子 16:可動子 32:コイル 40:樹脂モールド 64:放熱板 66:集熱部 68:放熱部 74:突出部 76:基端部 78:フィン 86:ダクト 100:ファン 110:リニアモータ冷却装置 112:放熱板 114:集熱部 116:放熱部 120:突出部 122:基端部 130,132:フィン 136,138:ダクト 140,142:ファン 160:リニアモータ冷却装置 164:導風板 166:放熱板 172:放熱部 200:リニアモータ冷却装置 202,204:ファン 220:リニアモータ冷却装置 222:主ダクト 224:接続ダクト 226:ブロア 228:換気装置 238:主ダクト 240:接続ダクト 242:換気装置 260:接続ダクト 262:ブロア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
その放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンと
を含むリニアモータ冷却装置。
【請求項2】
直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部が移動する空間を覆うダクトと、
そのダクト内の空気を換気する換気装置と
を含むリニアモータ冷却装置。
【請求項1】
直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
その放熱部材の前記放熱部に前記可動部の移動方向と平行な方向に延びる状態で設けられたフィンと
を含むリニアモータ冷却装置。
【請求項2】
直線的な固定部と、コイルを備えて固定部に沿って移動可能な可動部とを含むリニアモータの冷却装置であって、
前記コイルに近接した集熱部とその集熱部から前記可動部の外部まで延び出し、集熱部により集熱された熱を可動部外へ放出する放熱部とを備えた放熱部材と、
前記固定部に沿って延び、前記可動部の移動に伴って前記放熱部が移動する空間を覆うダクトと、
そのダクト内の空気を換気する換気装置と
を含むリニアモータ冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−44867(P2012−44867A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263983(P2011−263983)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2006−540862(P2006−540862)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2006−540862(P2006−540862)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
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