説明

相乗混合物

本発明は、酸素原子および窒素原子上の自由原子価が一緒になって5員環、6員環または7員環を形成することができ、ベンゼン核が自由位置の少なくとも1つに置換基をさらに有することができる構造要素(I)を有する1〜99.9質量%の化合物と、抗酸化作用を有する0.1〜99質量%の硫黄有機化合物とを含む相乗混合物に関する。該相乗混合物は、無生物有機材料、特に鉱油製品および燃料を光、酸素および熱の影響に対して安定化させるための安定剤として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)式(I)
【化1】

の構造要素を有する少なくとも1つの化合物と、(B)抗酸化作用を有する少なくとも1つの硫黄含有有機化合物とを含む相乗混合物に関する。本発明は、さらに、特にタービン燃料(ジェット燃料)および潤滑剤組成物において無生物有機材料を光、酸素および熱の作用に対して安定化させるための安定剤としてのこの相乗混合物の使用に関する。本発明は、さらに、無生物有機材料、タービン燃料組成物、タービン燃料のための添加剤濃縮物、およびこの相乗混合物を含む潤滑剤組成物に関する。
【0002】
無生物有機材料、例えば、プラスチックおよび塗料ならびに、鉱油製品および燃料の機械特性、化学特性および/または美的特性は、光、酸素および熱の作用によって悪化することが知られている。この悪化は、典型的には、材料の黄色化、脱色、亀裂形成または脆化として示される。光、酸素および熱による有機材料の当該劣化に対する保護の向上を達成することができる安定剤または安定剤組成物が既知である。
【0003】
例えば、WO05/073152(1)には、光、酸素および熱の作用に対して無生物有機材料を安定化させるための抗酸化剤としての2−アルキルポリイソブテニルフェノールおよびそれらのマンニッヒ付加物が記載されている。安定化させるべき材料としては、ガソリン燃料、ディーゼル燃料およびタービン燃料などの燃料、ならびに潤滑剤組成物も含まれる。タービン燃料において、これらの2−アルキルポリイソブテニルフェノールおよびマンニッヒ付加物は、熱安定性の向上、ならびにタービンの燃料回路および燃焼系における堆積物の低減をもたらす。
【0004】
ベンゼン環を有するテトラヒドロベンゾオキサジンおよびそれらと開鎖マンニッヒ付加物との混合物が、燃料および潤滑剤組成物のための添加剤として知られる。例えば、WO01/25293(2)およびWO01/25294(3)には、バルブを清浄に保つバルブ洗浄ガソリン燃料洗剤として、ポリイソブテニル置換フェノール、ホルムアルデヒドおよびアミンから形成された開鎖マンニッヒ付加物、ならびにベンゼン環上の置換基として存在するポリイソブテニル基などの比較的長鎖の基を有するテトラヒドロベンゾオキサジンが開示されている。これらのテトラヒドロベンゾオキサジンは、親フェノールの対応する開鎖マンニッヒ付加物との混合物として(2)および(3)に示されている製造方法によって得られ、ガソリン燃料にも使用される。
【0005】
WO07/12580(4)には、無生物有機材料、特に鉱油製品およびタービン燃料などの燃料のための光、酸素および熱に対する保護のための安定剤、特に抗酸化剤としてのテトラヒドロベンゾオキサジンの使用が開示されている。
【0006】
同様に、WO07/099048(5)には、無生物有機材料、特に鉱油製品およびタービン燃料などの燃料のための光、酸素および熱に対する保護のための安定剤、特に抗酸化剤として、分子毎に20個までのベンゼン環を有し、テトラヒドロベンゾオキサジンに基づく多環式フェノール化合物の使用が開示されている。
【0007】
特に鉱油製品および燃料セクターでは、光、酸素および熱による材料特性の劣化に対する保護作用が向上した組成物の必要性が存在する。特に、タービン、例えば航空機タービンにおける燃焼プロセスの過程または燃焼プロセス前に極端な熱応力を受けるタービン燃料(ジェット燃料)のために、新規の改良型安定剤が求められている。循環タービン燃料は、タービン航空機における冷却系の一部であり、220℃までの温度を呈することが可能である。航空機タービンにおける実際の燃焼の直前は、タービン燃料が595℃までの温度に達する。新規の改良型安定剤は、タービンにおいて、抗酸化剤および/または分散剤としてのそれらの作用形態を通じて、燃料回路および燃焼系における堆積物を同時に低減すべきである。さらに、特に、酸化および老化挙動に対する保護の向上および/または剪断安定性の向上をもたらす潤滑剤組成物のための新規の改良型安定剤が求められている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、光、酸素および熱に対する無生物有機材料、特に鉱油製品および燃料、特にタービン燃料および潤滑剤組成物の安定化作用が向上した安定剤を提供することであった。
【0009】
よって、
(A)酸素原子および窒素原子上の自由原子価が一緒になって、必要であればヒドロカルビレン架橋構成要素を介して5員、6員または7員環を形成することができ、ベンゼン環が自由位置の少なくとも1つに置換基を有することもできる式(I)
【化2】

の少なくとも1つの構造要素を有する1〜99.9質量%の少なくとも1つの化合物と、
(B)抗酸化作用を有する0.1〜99質量%の少なくとも1つの硫黄含有有機化合物と、を含む相乗混合物であって、成分(A)と成分(B)の総和が100質量%になる相乗混合物を見いだした。
【0010】
構造要素(I)における酸素原子の自由原子価は、好ましくは、自由フェノール構造が存在するように水素によって飽和される。しかし、酸素原子の自由原子価は、例えば、場合によって置換されたヒドロカルビル基またはアルキルカルボニル基によっても飽和され得る。構造要素(I)における窒素原子の2つの自由原子価は、典型的には、水素および/または場合によって置換されたヒドロカルビル基によって飽和される。
【0011】
構造要素(I)は、ベンゾ縮環した5員、6員または7員の複素環式環として存在することができる。この場合、構造要素(I)は、例えば、ジヒドロベンゾイソキサゾール、テトラヒドロベンゾオキサジンまたはテトラヒドロベンゾ−1,4−オキサゼピンの構造を有する。
【0012】
発明の相乗混合物は、1つの成分(A)および1つの成分(B)、以上の成分(A)および1つの成分(B)、以上の成分(A)および複数の成分(B)から構成され得る。発明の相乗混合物を単独で、または安定剤作用および/または抗酸化作用を有するさらなる化合物との混合物で使用することができる。
【0013】
発明の混合物は、混合物の所望の作用が、成分(A)および(B)の個々の作用の総和より予想外に強いため、本発明の意味において相乗的に作用する。
【0014】
発明の相乗混合物は、好ましくは、10〜99質量%、特に50〜95質量%、特に65〜90質量%の成分(A)または成分(A)の総和と、1〜90質量%、特に5〜50質量%、特に10〜35質量%の成分(B)または成分(B)の総和とを含む。発明の相乗混合物が、安定剤作用および/または抗酸化作用を有するさらなる化合物と併用される場合は、安定剤作用および/または抗酸化作用を有する全ての化合物の混合物全体における発明の相乗混合物の割合は、好ましくは、少なくとも20質量%、特に少なくとも50質量%、特に少なくとも70質量%である。
【0015】
成分(A)の式(I)の少なくとも1つの構造要素を有する化合物は、典型的には、一般に100000を超えない、特に50000を超えない、特に25000を超えない数平均分子量Mnを有する低分子量のオリゴマーまたはポリマー有機化合物である。
【0016】
好適な実施形態において、発明の相乗混合物は、ベンゼン環が、1つ以上の自由位置に置換基を有することもでき、窒素原子上の自由原子価が上記のように飽和されている式(Ia)または(Ib)
【化3】

の少なくとも1つの構造要素を有する少なくとも1つの化合物を成分(A)として含む。
【0017】
成分(A)のオルト(アミノメチル)フェノール構造要素(Ia)は、典型的には、フェノールまたはフェノール誘導体とホルムアルデヒドおよびアンモニア、一級アミンまたは二級アミンとのマンニッヒ反応によって生成される。しかし、他の製造方法も可能である。
【0018】
テトラヒドロベンゾオキサジン構造要素(Ib)は、典型的には、化学量論的に必要な少なくとも2倍のモル量のホルムアルデヒドを使用し、好適な反応条件下で、フェノールまたはフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドおよびアンモニア、一級アミンまたは二級アミンとを反応させることによって形成される。しかし、他の製造方法も可能である。
【0019】
窒素原子またはベンゼン環が、少なくとも4個、好ましくは少なくとも13個、少なくとも16個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも23個、少なくとも25個、少なくとも26個または少なくとも30個の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有する式(I)、(Ia)または(Ib)の少なくとも1つの構造要素を有する少なくとも1つの化合物を成分(A)として含む相乗混合物が特に好ましい。当該ヒドロカルビル基は、例えば、ポリイソブテン基であってよい。
【0020】
特に好適な実施形態において、発明の相乗混合物は、一般式II
【化4】

[式中、
置換基R1は、NR67成分であり、R6およびR7は、水素、窒素および酸素から選択されるヘテロ原子によって中断され、かつ/または置換されていてよいC1−〜C20−アルキル、C3−〜C8−シクロアルキル、C6−〜C14−アリールおよびC1−〜C20−アルコキシ基、ならびに式III
【化5】

のフェノール基からそれぞれ独立に選択され、
6およびR7が、ともに式IIIのフェノール基でないことを条件として、
6およびR7は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、窒素および酸素から選択される1個または2個のヘテロ原子を有することができ、かつ/または1つ、2つもしくは3つのC1−〜C6−アルキル基で置換されていてよい5員、6員または7員環を形成することもでき、
さらに、式IIおよびIIIにおける置換基R4は、13〜3000個、特に20〜2000個、23〜1150個の炭素原子を有する末端結合ポリイソブテン基であり、
さらに、式IIおよびIIIにおける置換基R2、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素、C1−〜C20−アルキル基、C1−〜C20−アルコキシ、1つ以上の酸素原子、硫黄原子もしくはNR8成分によって中断されるC2−〜C4000−アルキル基、ヒドロキシル基、ポリアルケニル基、または式−CH2NR67の成分であり、R6およびR7は、それぞれ以上に定義されている通りであり、R8は、水素、C1−〜C6−アルキル、C3−〜C8−シクロアルキルまたはC6−〜C14−アリールである]の少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物を成分(A)として含む。
【0021】
一般式IIの当該マンニッヒ反応生成物およびそれらの製造は、例えば、本明細書に明示的に引用される文献(1)、(2)および(3)に記載されている。
【0022】
記載のマンニッヒ反応生成物IIIは、好ましくは、フェノールを高反応性ポリイソブテンでアルキル化することによって得られるポリイソブテン置換フェノールと、(i)ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドのオリゴマーもしくはポリマーと二級アミンの存在下で反応させ、あるいは(II)ホルムアルデヒド、別のホルムアルデヒド源またはホルムアルデヒド同等物に対する少なくとも1つのアミンの付加物と反応させることによって製造される。記載の方法(i)および(ii)によって、R6およびR7が、ともに水素でないマンニッヒ反応生成物IIを製造することが好ましい。
【0023】
高反応性ポリイソブテンは、本明細書において、α−およびβ−ビニリデン二重結合の割合が、ポリイソブテン高分子に対して少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、特に少なくとも80モル%、特に少なくとも85%であるものを指すものと理解される。これらの高反応性ポリイソブテンは、通常、300〜15000の数平均分子量および3.0未満の多分散性を有する。
【0024】
出発材料として使用されるフェノールは、非置換のフェノールまたは置換フェノール、特にオルト−アルキル置換フェノールであってよい。モノフェノールが好ましいが、ベンゼン環に2つまたは3つのヒドロキシル基を有するフェノールも基本的に好適である。フェノール環上に存在する置換基は、特にC1−〜C20−アルキル基、特にC1−〜C4−アルキル基、C1−〜C20−アルコキシ基、特にC1−〜C4−アルコキシ基、またはさらなるポリアルケニル基、特に上記の種類のポリイソブテン基であってよい。当該置換フェノールの典型的な例は、2−メチルフェノール、2−エチルフェノールおよび2−tert−ブチルフェノールである。
【0025】
これらの高反応性ポリイソブテンを用いたフェノールのアルキル化は、好ましくは、慣例のアルキル化触媒の存在下で約50℃未満の温度にて実施される。
【0026】
方法(i)によるマンニッヒ反応生成物への変換または方法(ii)によるアミン付加物への変換に好適なホルムアルデヒド源は、ホルマリン溶液、トリオキサンなどのホルムアルデヒドオリゴマー、およびパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒドポリマーである。ホルマリン溶液およびパラホルムアルデヒドは、取り扱いが特に容易である。気体のホルムアルデヒドを使用することも当然可能である。
【0027】
方法(i)によるマンニッヒ反応生成物への変換に好適なアミンは、一級アミンとの反応では比較的大量の望ましくないオリゴマーか生成物が発生し得るため、通常、二級アミノ官能基を有し、一級アミノ官能基を有さず、1つ以上の三級アミノ官能基を場合によって有する。方法(ii)によるアミン付加物の形成に好適なアミンは、通常、少なくとも1つの一級アミン官能基または少なくとも1つの二級アミン官能基を有するアミンである。
【0028】
窒素原子上の置換基R6およびR7に対する好適な基は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルまたは2−エチルヘキシルなどのC1−〜C8−アルキル、メトキシまたはエトキシなどのC1−〜C4−アルコキシ、ならびにシクロヘキシルおよびフェニルである。置換基R6およびR7は、一緒になって、NR67成分からの窒素原子とともに、さらなる窒素および/または酸素原子を含むことができる5員、6員または7員の飽和または部分不飽和複素環式環を形成することができる。当該環の典型的な例は、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンである。
【0029】
一般式IIのマンニッヒ反応生成物の典型的な代表例は、文献(1)の教示によれば、R6=R7の定義が水素、メチル、β−ヒドロキシエチル、n−ブチル、2−エチルヘキシルおよびフェニルであり、ポリイソブチル基の数平均分子量が500〜2300であり、R2の定義がメチル、イソプロピルおよびtert−ブチルである2−アミノメチル−4−ポリイソブチル−6−アルキルフェノールである(それぞれの場合において、2−アルキルフェノールをポリイソブテンでアルキル化し、続いてホルムアルデヒドおよびアンモニアまたは対応するアミンと反応させることによって製造可能である)。
【0030】
一般式IIのマンニッヒ反応生成物のさらなる典型的な代表例は、文献(2)および(3)の教示によれば、ポリイソブチル基の数平均分子量が500〜2300である4−ポリイソブチルフェノールから、(方法iの)ホルムアルデヒドおよびモルホリン、ジ[3−(ジメチルアミノ)−n−プロピル]アミン、テトラメチルメチレンジアミンまたはジメチルアミンを用いて形成された、または(方法iiの)ホルムアルデヒドの付加物および3−(ジメチルアミノ)−n−プロピルアミンまたはtert−ブチルアミンを用いて形成されたマンニッヒ反応生成物である。
【0031】
さらなる特に好適な実施形態において、発明の相乗混合物は、一般式IV
【化6】

[式中、
置換基R9は、1〜3000の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR14成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、
14は、水素原子またはC1−〜C4−アルキル基であり、
置換基R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、あるいはそれぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR14成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R14は、以上に定義されている通りであり、
置換基R12は、式Y
【化7】

の基であってもよく、
置換基R9、R10、R11およびR13は、それぞれ以上に定義されている通りであり、置換基Xは、1つ以上のイソブテン単位からなり、または1つ以上のイソブテン単位を含む炭化水素架橋構成要素であり、あるいは
置換基R12は、式ZまたはZ’
【化8】

の基であってもよく、
置換基R9、R10、R11およびR13は、それぞれ以上に定義されている通りであり、置換基R17およびR18は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素またはC1−〜C10−アルキル基であり、
置換基R10およびR11またはR11およびR12またはR12およびR13は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR15−CH2−副構造と第2のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、あるいは置換基R10およびR11ならびにR12およびR13は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR15−CH2−およびベンゼン環に結合した−O−CH2−NR16−CH2−副構造と第2および第3のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、
15およびR16は、それぞれ独立して、それぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子、および/または1つ以上のNR14成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、
ただし、R9、R10、R11、R12、R13、R15またはR16は、4〜3000個の炭素原子を有し、R9、R10、R11、R12、R13、R15またはR16の群からの残りの置換基は、それらがヒドロカルビル基である場合は、それぞれ1〜20個の炭素原子を有することを条件とする]の少なくとも1つのテトラヒドロベンゾオキサジンを成分(A)として含む。
【0032】
一般式IVの当該テトラヒドロベンゾオキサジンおよびそれらの製造は、本明細書に明示的に引用される文献(4)に記載されている。
【0033】
一般式IVのテトラヒドロベンゾオキサジンの構造的特異性は、それらが、ベンゼン環またはオキサジン環上の置換基R9、R10、R11、R12、R13、R15またはR16の1つとして、4〜3000個の炭素原子を有する少なくとも1つの比較的長鎖のヒドロカルビル基を含むことである。好適な実施形態において、4〜3000個の炭素原子を有するこの比較的長鎖のヒドロカルビル基は、ポリイソブテニル基である。記載の比較的長鎖のヒドロキシカルビルは、さらなる好適な実施形態において、C16−〜C20−アルキルまたは−アルケニル基であってもよい。特に、好ましくはポリイソブテニル基またはC16−〜C20−アルキルもしくは−アルケニル基であるこの比較的長鎖のヒドロカルビル基は、オキサジン環上に存在する。すなわち、それは、置換基R9またはR15またはR16として存在する。好ましくはポリイソブテニル基またはC16−〜C20−アルキルもしくは−アルケニル基であるこの比較的長鎖のヒドロカルビル基は、好ましくは、置換基R10またはR12としてベンゼン環上に存在する。好ましくはポリイソブテニル基またはC16−〜C20−アルキルもしくは−アルケニル基であるこの比較的長鎖のヒドロカルビル基は、好ましくは16〜3000個、特に20〜1000個、特に25〜500個、最も好ましくは30〜250個の炭素原子を含む。ポリイソブテニル基の場合は、それらは、200〜40000、好ましくは500〜15000、特に700〜7000、特に900〜3000、最も好ましくは900〜1100の数平均分子量Mnを有する。
【0034】
好適なC16−〜C20−アルキルまたは−アルケニル基は、適切には、16〜20個の炭素原子を有する対応する飽和または不飽和脂肪アルコールの基である。本明細書では特に、通常、それらの自然の起源に応じて互いの技術的混合物として存在するn−ヘキサデシル(パルミチル)、n−オクタデシル(ステアリル)、n−エイコシル、オレイル、リノリルおよびリノレニルを挙げるべきである。
【0035】
4〜3000個の炭素原子を有する前記比較的長鎖のヒドロカルビル基は、テトラヒドロベンゾオキサジンIVに2つ以上、例えば2つまたは3つ存在してもよい。好ましくはポリイソブテニル基および/またはC16−〜C20−アルキルもしくは−アルケニル基であるこの比較的長鎖のヒドロカルビル基は、2つ存在する場合は、例えば置換基R9およびR12またはR9およびR13として存在する。
【0036】
好適な実施形態において、200〜40000の数平均分子量Mnを有する1つまたは2つのポリイソブテニル基が、置換基R9および/またはR10および/またはR12およびR15および/またはR16として分子内に存在する。
【0037】
4〜3000個の炭素原子を有する置換基または200〜40000の数平均分子量Mnを有するポリイソブテニル基でないR9、R10、R11、R12、R13、R15およびR16の群からの残りの置換基は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、またはそれらがヒドロカルビル基である場合は、通常、1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有する比較的短鎖のヒドロカルビル基、最も好ましくは直鎖状もしくは分枝状C1−〜C4−アルキル基である。後者の典型的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルである。メチル基およびtert−ブチル基は、これに関して特に好適である。
【0038】
好適なテトラヒドロベンゾオキサジンIVは、また、置換基R10および/またはR12が、比較的短鎖のヒドロカルビル基である場合は、直鎖状または分枝状C1−〜C4−アルキル基、特にメチル基および/またはtert−ブチル基であるものである。当該置換パターンは、当然、全部で1つまたは2つのテトラヒドロオキサジン環系を有するテトラヒドロベンゾオキサジンIについてのみ可能である。
【0039】
式Yの基において、置換基Xは、1個以上、好ましくは4〜800個、特に10〜300個、特に12〜100個のイソブテン単位からなり、または1個以上、好ましくは4〜800個、特に10〜300個、特に12〜100個のイソブテン単位を含む炭化水素架橋構成要素である。Xがイソブテン単位からなる場合、結合は、一般にはα−およびω−炭素原子による。Xがさらなる炭化水素構造単位を含む場合、それらは、好ましくは、芳香族環系などの、内部に配列された開始分子構造単位、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン単位、および/または両末端における鎖の末尾として、結合のための官能基、例えば、o−、m−もしくはp−ヒドロキシフェニル基を有する炭化水素構造単位である。置換基Xの基礎を成す当該テレケリックポリイソブテン系およびそれらの製造は、例えば、US−A4429099に記載されている。
【0040】
式ZまたはZ’の基において、置換基R17およびR18は、好ましくは、それぞれ水素、および/または直鎖状もしくは分枝状C1−〜C4−アルキル基、特にメチル基である。R17=R18=メチルであるZまたはZ’基を有する化合物IVは、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]に由来する。製造の結果として、Z基を有する化合物Iおよび対応するZ’基を有する化合物Iは、混合物として存在することもできる。
【0041】
置換基R9、R10、R11、R12、R13、R15およびR16について1〜3000個または4〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビルは、本明細書において、定義により、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子、および/または1つ以上のNR6成分によって中断されていてもよい任意の構造の純粋の炭化水素基を指すものと理解される。特に、ヒドロカルビル基は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアリールアルキル基である。
【0042】
NR14成分によってヒドロカルビル基が中断される場合は、末端において、NR14成分がC−H結合に形式的に挿入された基、すなわち例えばNH2末端基を有する置換基R9、R10、R11、R12、R13、R15またはR16をも指す。当該ヒドロカルビル基は、例えば、末端窒素原子の1つがオキサジン環における窒素原子であるエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン等のポリアミンに由来する。
【0043】
ベンゼン環上にテトラヒドロオキサジン環を有し、本発明に関して典型的であるテトラヒドロベンゾオキサジンIVの例を以下に示す(ただし、「PIB」は、高反応性ポリイソブテン(Mn1000)に由来するポリイソブテニル基を表し、「PIB*」は、高反応性ポリイソブテン(Mn870)に由来するポリイソブテニレン架橋構成要素を表す)。
【0044】
【化9】

(Va)R9=メチル、R10=メチル、R12=PIB
(Vb)R9=メチル、R10=H、R12=PIB
(Vc)R9=メチル、R10=tert−ブチル、R12=PIB
(Vd)R9=メチル、R10=OH、R12=PIB
(Ve)R9=メチル、R10=R12=tert−ブチル
(Vf)R9=PIB、R10=tert−ブチル、R12=メチル
(Vg)R9=メチル、R10=tert−ブチル、R12=メチル
【化10】

(VIa)R10=メチル、R12=メチル
(VIb)R10=H、R12=tert−ブチル
(VIc)R10=メチル、R12=tert−ブチル
(VId)R10=メチル、R12=OH
(VIe)R10=OH、R12=tert−ブチル
(VIf)R10=H、R12
【化11】

(VIg)R10=H、R12
【化12】

【0045】
【化13】

(VIIa)R9=n−ヘキシル、R10=R11=R13=メチル
(VIIb)R9=n−ヘキサデシル、R10=R11=R13=メチル
(VIIc)R9=n−オクタデシル、R10=R11=R13=メチル
(VIId)R9=PIB、R10=R11=R13=メチル
【化14】

(VIIIa)R9=n−ヘキサデシル
(VIIIb)R9=n−オクタデシル
【化15】

(IXa)R9=メチル
(IXb)R9=n−オクタデシル
【化16】

(X)
【化17】

(XIa)R9=n−ヘキサデシル
(XIb)R9=n−オクタデシル
【化18】

(XIIa)R9=メチル
(XIIb)R9=n−オクタデシル
【化19】

(XIII)
【化20】

(XIVa)R9=n−ヘキサデシル
(XIVb)R9=n−オクタデシル
【化21】

(XVa)R9=n−メチル
(XVb)R9=n−オクタデシル
【化22】

(XVI)
【化23】

(XVIIa)R9=n−ヘキサデシル
(XVIIb)R1=n−オクタデシル
【化24】

(XVIIIa)R9=メチル
(XVIIIb)R9=n−オクタデシル
【化25】

(XIX)
【化26】

(XXa)R9=n−ヘキサデシル
(XXb)R9=n−オクタデシル
【化27】

(XXIa)R9=メチル
(XXIb)R9=n−オクタデシル
【化28】

(XXII)
【化29】

(XXIIIa)R9=メチル
(XXIIIb)R9=n−オクタデシル
【化30】

(XXIVa)R9=メチル
(XXIVb)R9=n−オクタデシル
【化31】

(XXVa)R9=メチル
【0046】
製造の結果として、それぞれの場合において化合物VIIIa+XVIIa、VIIIb+XVIIb、IXa+XVIIIa、IXb+XVIIIb、X+XIX、XIa+XXa、XIb+XXb、XIIa+XXIa、XIIb+XXIbまたはXIII+XXIIの混合物が存在してもよく、本発明に応じた形で使用され得る。
【0047】
−O−CH2−NR15−CH2−副構造が置換基R12を介して酸素結合された置換基R11およびR12またはR12およびR13が第2のテトラヒドロオキサジン環を形成するテトラヒドロベンゾオキサジンIVを使用することも好ましい。その例は、以上に挙げた化合物VIIIからXXIIである。
【0048】
一般式IIのマンニッヒ反応生成物と成分(A)としての一般式IVのテトラヒドロベンゾオキサジンとの混合物を使用することも可能である。製造により得られる当該混合物は、例えば、文献(2)および(3)に記載されている。
【0049】
さらなる特に好適な実施形態において、発明の相乗混合物は、分子毎に20個までのベンゼン環を有する少なくとも1つの多環式フェノール化合物を成分(A)として含み、一般式XXVI
【化32】

[式中、
置換基R19は、1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、
24は、水素原子またはC1−〜C4−アルキル基であり、
置換基R20、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、またはそれぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R24は、以上に定義されている通りである]のテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式XXVII
【化33】

[式中、
置換基R25、R26、R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、またはそれぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R24は、以上に定義されている通りである]の1つ以上の同一または異なるフェノール、および/または一般式XXVI
[式中、
置換基R22は、式Z"の基であってもよく、置換基R27は、式Z"’の基であってもよく、
【化34】

置換基R19、R20、R21、R23、R25、R26およびR28は、それぞれ以上に定義されている通りであり、置換基R25は、一般式XXVIのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R33は、水素、または一般式XXVIのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であり、置換基R29およびR30は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素またはC1−〜C10−アルキル基であり、
置換基R20およびR21またはR21およびR22またはR22およびR23は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR31−CH2−副構造とともに第2のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、置換基R20およびR21およびR22およびR23は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR31−CH2−および−O−CH2−NR32−CH2−副構造と第2および第3のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、R31およびR32は、それぞれ独立して、それぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R24は、以上に定義されている通りであり、
ただし、置換基R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31またはR32の少なくとも1つが13〜3000個の炭素原子を有し、R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31またはR32の群からの残りの置換基は、ヒドロカルビル基である場合は、それぞれの場合において1〜20個の炭素原子を有することを条件とする]の1つ以上の同一または異なるテトラヒドロベンゾオキサジンと、を反応させることによって得られる少なくとも1つの多環式フェノール化合物を成分(A)として含む。
【0050】
分子毎に20個までのベンゼン環を有する当該多環式フェノール化合物およびそれらの製造は、例えば、本明細書に明示的に引用される文献(5)に記載されている。
【0051】
記載の多環式フェノール化合物の構造的特異性は、それらが、使用されるテトラヒドロオキサジンXXVIまたはフェノールXXVIIに由来する置換基R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31またはR32の1つとして、13〜3000個の炭素原子を有する少なくとも1つの比較的長鎖のヒドロカルビル基を含むことである。好適な実施形態において、13〜3000個の炭素原子を有する比較的長鎖のこのヒドロカルビル基は、ポリイソブテニル基である。さらなる実施形態において、記載の比較的長鎖のヒドロカルビル基は、C16−〜C20−アルキルまたは−アルケニル基であってもよい。特に、好ましくはポリイソブテニル基であるこの比較的長鎖のヒドロカルビル基は、オキサジン環もしくはベンゼン環のオルト位、または好ましくはフェノールヒドロキシル基に対してパラ位に存在する。すなわち、それは、置換基R19またはR20またはR22またはR25またはR27またはR31またはR32として存在する。好ましくはポリイソブテニル基であるこの比較的長鎖のヒドロカルビル基は、好ましくは21〜3000個または好ましくは21〜1000個、特に26〜3000個または特に26〜500個、特に30〜3000個または特に30〜250個の炭素原子を含む。ポリイソブテニル基の場合は、それらは、183〜42000、好ましくは500〜15000、特に700〜70000、特に900〜3000、最も好ましくは900〜1100の数平均分子量Mnを有する。
【0052】
好適なC16−〜C20−アルキルまたは−アルケニル基は、適切には、16〜20個の炭素原子を有する対応する飽和または不飽和脂肪アルコールの基である。本明細書では特に、通常、それらの自然の起源に応じて互いの技術的混合物として存在するn−ヘキサデシル(パルミチル)、n−オクタデシル(ステアリル)、n−エイコシル、オレイル、リノリルおよびリノレニルを挙げるべきである。
【0053】
13〜3000個の炭素原子を有する前記比較的長鎖のヒドロカルビル基は、記載の多環式フェノール化合物に2つ以上、例えば2つまたは3つ存在してもよい。好適な実施形態において、それぞれの数平均分子量Mnが183〜42000である1つまたは2つのポリイソブテニル基が、置換基R19および/またはR20および/またはR22および/またはR25および/またはR27および/またはR31および/またはR32として分子内に存在する。
【0054】
13〜3000個の炭素原子を有する置換基または183〜42000の数平均分子量Mnを有するポリイソブテニル基でないR19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31またはR32のからの残りの置換基は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、またはそれらがヒドロカルビル基である場合は、通常、1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有する比較的短鎖のヒドロカルビル基、最も好ましくは直鎖状もしくは分枝状C1−〜C4−アルキル基である。後者の典型的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルである。メチル基およびtert−ブチル基は、これに関して特に好適である。
【0055】
好適なフェノール化合物は、また、使用されるテトラヒドロベンゾオキサジンXXVIまたはフェノールXXVIIに由来する置換基R20および/またはR22および/またはR25および/またはR27が、比較的短鎖のヒドロカルビル基である場合に直鎖状または分枝状C1−〜C4−アルキル基、特にメチル基および/またはtert−ブチル基であるものである。当該置換パターンは、当然、全部で1つまたは2つのテトラヒドロオキサジン環系を有するテトラヒドロベンゾオキサジンXXVIにおいてのみ可能である。
【0056】
式Z"またはZ"’の基において、置換基R29およびR30は、好ましくは、それぞれ水素および/または直鎖状もしくは分枝状C1−〜C4−アルキル基、特にメチル基である。R29=R30=メチルであるZ"またはZ"’基を有する化合物XXVIおよびXXVIIは、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]に由来する。製造の結果として、Z"基を有する化合物XXVIおよび対応するZ"’基を有する化合物XXVIは、混合物として存在してもよい。
【0057】
置換基R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31およびR32について1〜3000個または13〜3000個の炭素原子を有するヒドロカルビル基は、本明細書において、定義により、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子、および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてもよい任意の構造の純粋の炭化水素基を指すものと理解される。NR6成分によって中断される典型的なヒドロカルビル基は、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミンに由来する。特に、ヒドロカルビル基は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアリールアルキル基である。
【0058】
NR24成分によってヒドロカルビル基中断される場合は、末端において、NR14成分がC−H結合に形式的に挿入された基、すなわち例えばNH2末端基を有する置換基R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31またはR32をも指す。当該ヒドロカルビル基は、例えば、末端窒素原子の1つがオキサジン環における窒素原子であるエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン等のポリアミンに由来する。
【0059】
前記化合物について、「アルキル」という表現は、直鎖状および分枝状アルキル基を含む。アルキル基、ならびに既に以上に挙げたものの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル基、特にn−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル(ミリスチル)、n−ヘキサデシル(パルミチル)、n−オクタデシル(ステアリル)およびn−エイコシルである。
【0060】
前記化合物のためのアルケニル基の例は、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、オレイル、リノリルおよびリノレニルである。
【0061】
前記化合物のためのシクロアルキル基の例は、アルキル基、例えばメチル基で置換されていてもよいシクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルなどのC5−〜C7−シクロアルキル基である。
【0062】
前記化合物についての「アリール」という表現は、一環式、二環式、三環式およびより高次元の多環式芳香族炭化水素基を含む。アルキルアリールまたはアルケニルアリール基を示すための例として以上に挙げたアルキルおよび/またはアルケニル基によって置換する場合には、これらのアリール基は、1、2、3、4または5個、好ましくは1、2または3個の置換基を有することもできる。典型的な例は、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニルおよびスチリルである。アリールアルキル基の典型的な例は、ベンジルである。
【0063】
4〜3000個または13〜3000個の炭素原子を有する比較的長鎖のヒドロカルビル基がポリイソブテニル基である場合は、それは、基本的に、テトラヒドロベンゾオキサジンIVまたは記載の多環式フェノール化合物の合成に好適な方法で導入される任意の一般的かつ市販のポリイソブテンに基づくものであってよい。当該ポリイソブテンは、少なくとも183または200の数平均分子量Mnを有する。200〜40000または183〜42000、より好ましくは500〜15000、特に700〜7000、特に800〜5000、特に900〜3000、最も好ましくは900〜1100の範囲の数平均分子量Mnを有するポリイソブテンが好ましい。本発明に関して、「ポリイソブテン」という用語は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体および七量体イソブテンなどのオリゴマーイソブテンをも含む。
【0064】
前記化合物に含められたポリイソブテニル基は、好ましくは、所謂「反応性」ポリイソブテンに由来する。「高反応性」ポリイソブテンは、末端二重結合の含有量が「低反応性」ポリイソブテンと異なる。例えば、高反応性ポリイソブテンは、ポリイソブテン高分子の総数に対して少なくとも50モル%の末端二重結合を含む。ポリイソブテン高分子の総数に対して少なくとも60モル%、特に少なくとも80モル%、特に少なくとも85モル%末端二重結合を有するポリイソブテンが特に好ましい。末端二重結合は、ビニル二重結合[−CH=C(CH32](β−オレフィン)またはビニリデン二重結合[−CH−C(=CH2)−CH3](α−オレフィン)であってよい。さらに、本質的にホモポリマーのポリイソブテニル基は、均一なポリマー骨格を有する。本発明に関して、これは、少なくとも約85質量%まで、好ましくは少なくとも90質量%まで、より好ましくは少なくとも95質量%までの反復単位[−CH2C(CH32−]のイソブテン単位から形成されるポリイソブテン系を指すものと理解される。
【0065】
テトラヒドロベンゾオキサジンIVまたは記載の多環式フェノール化合物の基礎となり得るポリイソブテンのさらなる好適な特徴は、少なくとも15質量%まで、特に少なくとも50質量%まで、特に少なくとも80質量%までのtert−ブチル基[−CH2C(CH33]を末端とすることである。
【0066】
さらに、好ましくは、テトラヒドロベンゾオキサジンIVまたは記載の多環式フェノール化合物のための出発材料として使用されるテトラヒドロベンゾオキサジンXXVIまたはフェノールXXVIIのための基材として機能するポリイソブテンは、好ましくは、1.05〜10、好ましくは1.05〜3.0、特に1.05〜2.0の多分散性指数(PDI)を有する。多分散性は、質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(PDI=Mw/Mn)を指すものと理解される。好適な実施形態において、記載の多環式フェノール化合物におけるポリイソブテニル基の平均多分散性指数PDIは、親テトラヒドロベンゾオキサジンXXVIおよび/またはフェノールXXVIIにおけるポリイソブテニル基の平均多分散性指数PDIの多くとも5倍、好ましくは多くとも3倍、特に多くとも2倍、特に多くとも1.5倍である。
【0067】
本発明に関して、好ましくは前記化合物の基材として機能するポリイソブテンは、また、カチオン性重合によって得られ、好ましくは少なくとも60質量%のイソブテン、より好ましくは少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%、特に少なくとも95質量%のイソブテンを、共重合された形で含む全てのポリマーを指すものと理解される。加えて、ポリイソブテンは、1−または2−ブテンなどのさらなるブテン異性体、およびカチオン性ポリマー条件下でイソブテンと共重合可能な異なるオレフィン性不飽和モノマーを、共重合された形で含むことができる。
【0068】
したがって、テトラヒドロベンゾオキサジンVIおよび記載の多環式フェノール化合物の基材として機能することができるポリイソブテンの製造のための好適なイソブテン供給原料は、1,3−ブタジエンが実質的にそれらの中に存在しなければ、イソブテンそのものと、イソブテン系C4炭化水素流、例えば、C4ラフィネート、イソブテン脱水素化によるC4留分、蒸気分解物からのC4留分、FCC分解物(FCC:流体触媒分解)との両方である。特に好適なC4炭化水素流は、一般には、500ppm未満、好ましくは200ppm未満のブタジエンを含む。C4留分が出発材料として使用される場合は、イソブテン以外の炭化水素は、不活性溶媒の役割を担う。
【0069】
イソブテンと共重合可能な有用なモノマーとしては、スチレンおよびα−メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物、2−、3−および4−メチルスチレンならびに4−tert−ブチルスチレンなどのC1−C4−アルキルスチレン、2−メチルブテン−1、2−メチルペンテン−1、2−メチルヘキセン−1、2−エチルペンテン−1、2−エチルヘキセン−1および2−プロピルヘプテン−1などの、5〜10個の炭素原子を有するイソオレフィンが挙げられる。
【0070】
前記化合物の基材として機能することができる典型的なポリイソブテンは、例えば、BASF AktiengesellschaftのGlissopal(登録商標)ブランド、例えば、Glissopal550、Glissopal1000およびGlissopal2300、ならびにBASF AktiengesellschaftのOppanol(登録商標)ブランド、例えば、OppanolB10、B12およびB15である。
【0071】
ポリイソブテニル基に加えて、テトラヒドロベンゾオキサジンIVまたは記載の多環式フェノール化合物のために存在する比較的長鎖のヒドロカルビル基は、C2−〜C12−オレフィンのオリゴマーまたはポリマーに由来し、平均の炭素数が13〜3000個であるものであってもよい。ポリマー分布を有する当該通常は多分散性のヒドロカルビル基は、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、スチレン、メチルスチレン、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1またはドデセン−1に由来するものである。それらは、ホモポリマーまたはコポリマー基であってよい。それらの数平均分子量Mnは、少なくとも183であり、それらの多分散性指数PDIは、典型的には1.05〜10である。Mnが183〜約500の低分子量基の場合は、それらは、単分散の形で存在することもできる。
【0072】
好適な実施形態において、記載の多環式フェノール化合物は、411〜25000の平均分子量Mnを有する。例えば、411の分子量Mnは、本発明に関する最も小さい多環式フェノール化合物の代表、具体的にはビス(オルト−またはパラ−ヒドロキシベンジル)トリデシルアミンを示す。Mnの特に好適な範囲は、523〜25000または523〜17000、特に593〜25000または593〜10000、特に649〜25000または649〜5000である。
【0073】
本発明に関して典型的な多環式フェノール化合物の例を以下に示す(ただし、「PIB」は、高反応性ポリイソブテン(Mn1000)に由来するポリイソブテニル基を表す)。
【0074】
【化35】

(XXVIIIa)n=0、R19=PIB、R22=H
(XXVIIIb)n=0、R19=メチル、R22=PIB
(XXVIIIc)n=0、R19=PIB、R22=tert−ブチル
(XXVIIId)n=1、R19=PIB、R22=H
(XXVIIIe)n=1、R19=メチル、R22=PIB
(XXVIIIf)n=1、R19=PIB、R22=tert−ブチル
(XXVIIIg)n=2、R19=PIB、R22=H
(XXVIIIh)n=2、R19=メチル、R22=PIB
(XXVIIIi)n=2、R19=PIB、R22=tert−ブチル
(XXVIIIj)n=3、R19=PIB、R22=H
(XXVIIk)n=3、R19=メチル、R22=PIB
(XXVIIIl)n=3、R19=PIB、R22=tert−ブチル
(XXVIIIm)n=4、R19=PIB、R22=H
(XXVIIIn)n=4、R19=メチル、R22=PIB
(XXVIIIo)n=1、R19=PIB、R22=tert−ブチル
(XXVIIIp)n=5、R19=PIB、R22=H
(XXVIIIq)n=5、R19=メチル、R22=PIB
(XXVIIIr)n=5、R19=PIB、R22=tert−ブチル
(XXVIIIs)n=6、R19=PIB、R22=H
(XXVIIIt)n=6、R19=メチル、R22=PIB
(XXVIIIu)n=6、R19=PIB、R22=tert−ブチル
(XXVIIIv)n=1、R19=メチル、1R22基=PIB、2R22基=tert−ブチル
(XXVIIIw)n=8、R19=メチル、1R22基=PIB、9R22基=tert−ブチル
【化36】

(XXIXa)R19=メチル、R20=H、R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXIXb)R19=メチル、R20=R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXIXc)R19=PIB、R20=R22=tert−ブチル、R27=H
(XXIXd)R19=PIB、R20=R22=R27=H
(XXIXe)R19=PIB、R20=R22=H、R27=tert−ブチル
(XXIXf)R19=PIB、R20=H、R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXIXg)R19=PIB、R20=R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXIXh)R19=PIB、R20=R22=H、R27
【化37】

【0075】
【化38】

(XXXa)R19=メチル、R20=R22=H、R27=PIB
(XXXb)R19=メチル、R20=R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXXc)R19=メチル、R20=tert−ブチル、R22=メチル、R27=PIB
(XXXd)R19=R20=メチル、R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXXe)R19=3−(ジメチルアミノ)プロピル、R20=R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXXf)R19=PIB、R20=R22=R27=H
(XXXg)R19=PIB、R20=R22=H、R27=tert−ブチル
(XXXh)R19=PIB、R20=R22=tert−ブチル、R27=H
(XXXi)R19=PIB、R20=H、R22=R27=tert−ブチル
(XXXj)R19=PIB、R20=R22=R27=tert−ブチル
(XXXk)R19=PIB、R20=R22=H、R27=PIB
(XXXm)R19=PIB、R20=R22=H、R27
【化39】

(XXXn)R19=3−(ジメチルアミノ)プロピル、R20=tert−ブチル、R22=メチル、R27=PIB
【化40】

(XXXIa)R19=メチル、R20=R22=H、R27=PIB
(XXXIb)R19=メチル、R20=R22=tert−ブチル、R27=PIB
(XXXIc)R19=PIB、R20=R22=R27=H
【化41】

(XXXIIa)R19=メチル、R20=tert−ブチル、3R22基=tert−ブチル、1R22基=PIB
(XXXIIb)R19=メチル、R20=tert−ブチル、3R22基=メチル、1R22基=PIB
(XXXIIc)R19=メチル、3R20基=tert−ブチル、1R22基=H、3R22基=tert−ブチル、(R20=Hであるベンゼン環上の)1R22基=PIB
【0076】
成分(B)の抗酸化作用を有する硫黄含有有機化合物は、典型的には、一般に2500を超えない、特に1200を超えない、特に750を超えない数平均分子量Mnを有する低分子量またはオリゴマー有機化合物である。
【0077】
好適な実施形態において、発明の相乗混合物は、xが1〜20、好ましくは1〜10、特に1〜5、特に1または2の整数である少なくとも1つの−(S)−成分、特に1つまたは2つの−(S)−成分を有する少なくとも1つの有機化合物を成分(B)として含む。−(S)−成分は、好ましくは、有機基の炭素原子の両部位および/または有機基の炭素原子および水素原子に結合している。これらの有機化合物は、通常、メルカプタン、硫化物、二硫化物または多硫化物である。それらは、脂肪族もしくは芳香族化合物、または複素環式環系であってよい。分子内の複数の硫黄原子の場合は、硫化物/メルカプタン混合構造が、例えば2−メルカプトベンズチアゾールに存在してもよい。S−O一重結合またはS=O二重結合のみを有する有機硫黄化合物は、典型的には、発明の相乗混合物の成分(B)として好適でない。
【0078】
成分(B)としての抗酸化作用を有する硫黄含有有機化合物の典型的な代表例を以下に示す。
【0079】
・ 2−メルカプトベンズチアゾール
・ 2−メルカプトベンズイミダゾール
・ 2,4,6−トリメルカプトトリアジン−(1,3,5)などのメルカプトトリアジン
・ 比較的長鎖のメルカプタン、特にC4−〜C30−アルカンチオール、特に、n−オクチルチオール、n−デシルチオール、n−ドデシルチオール、n−テトラデシルチオール、n−ヘキサデシルチオールおよびn−オクタデシルチオールなどのC8−〜C18−アルカンチオール
・ モノチオエチレングリコールなどのチオグリコール
・ 比較的長鎖の硫化ジアルキル、特にジ−C4−〜C30−アルキル硫化物、特に、硫化ジ−n−オクチル、硫化ジ−n−デシル、硫化ジ−n−ドデシル、硫化ジ−n−テトラデシル、硫化ジ−n−ヘキサデシルおよび硫化ジ−n−オクタデシルなどのジ−C8−〜C18−アルキル二硫化物
・ 硫化ジベンジルなどの硫化ビス(アラルキル)
・ 二硫化ジベンジルなどの二硫化ビス(アラルキル)
・ 比較的長鎖の二硫化ジアルキル、特にジ−C4−〜C30−アルキル二硫化物、特に、二硫化ジ−n−オクチル、二硫化ジ−n−デシル、二硫化ジ−n−ドデシル、二硫化ジ−n−テトラデシル、二硫化ジ−n−ヘキサデシルおよび二硫化ジ−n−オクタデシルなどのジ−C8−〜C18−アルキル二硫化物
・ ジ(C4−〜C30−アルキル)3,3’−チオプロピオネート、特に、ジ−n−オクチル3,3’−チオプロピオネート、ジ−n−デシル3,3’−チオプロピオネート、ジ−n−ドデシル3,3’−チオプロピオネート、ジ−n−テトラデシル3,3’−チオプロピオネート、ジ−n−ヘキサデシル3,3’−チオプロピオネートおよびジ−n−オクタデシル3,3’−チオプロピオネートなどのジ(C8−〜C18−アルキル)3,3’−チオプロピオネート
・ テトラキス[メチレン−2−(C4−〜C30−アルキルチオ)プロピオネート]メタン、特に、テトラキス[メチレン−2−(ラウリルチオ)プロピオネート]メタンなどのテトラキス[メチレン−2−(C8−〜C18−アルキルチオ)プロピオネート]メタン
・ C4−〜C30−アルキルチオプロピルアミド、特に、ステアリルチオプロピルアミドなどのC8−〜C18−アルキルチオプロピルアミド
・ チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
・ 2,4−ビス(C4−〜C30−アルキルチオメチル)−6−メチルフェノール、特に、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノールなどの2,4−ビス(C8−〜C18−アルキルチオメチル)−6−メチルフェノール
・ ヒドロキシル含有硫化ジアリール、特に、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−5−メチルフェノール)および4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)などのヒドロキシル含有硫化ジフェニル
・ ジメチルジチオカルバミン酸の亜鉛塩などのジアルキルジチオカルバミン酸の亜鉛塩
・ ジ(4−メチルペンチル)−2−ジチオリン酸亜鉛などのジアルキルジチオリン酸亜鉛
・ テルペン(α−ピネン)、樹脂油または低分子量ポリブテンと硫黄またはチオフェノールとの反応生成物、例えば、ポリイソブチル置換硫黄含有5員複素環式環を与えるポリイソブテンと硫黄元素との反応生成物、またはフェニルポリイソブチル硫化物を与えるポリイソブテンとチオフェノールとの反応生成物
【0080】
発明の相乗混合物は、光、酸素および熱の作用に対して無生物有機材料を安定化させる安定剤として好適である。これは、特に、従来の意味の抗酸化剤系としてのその作用形態を指すものと理解されるべきである。「従来の意味の抗酸化剤系」は、遍在的な酸素の存在下、光および/または熱の影響下で無生物有機材料、例えば燃料または鉱油製品を保管する過程において、第一に、材料の分解(自己酸化)により、望ましくない副産物および/または不純物、例えば燃料の場合は、有害な樹脂状もしくは粘着性沈殿物または有害な硬質もしくは塗料状沈殿物(ゴム形成)を招き、第二に、包材、部品またはデバイスなどの周囲の材料の損傷、例えば燃料の場合は、エンジンにおけるシールまたは同様の部品の損傷または脆化をもたらし得る反応性酸化生成物、特に反応性過酸化物の形成を防止すべきである。この目的で、その製造中または製造後に安定化させ、極めて均一に分配させるべき材料に発明の相乗混合物が含められる。安定化させるべき有機材料における発明の相乗混合物の濃度は、それぞれの場合において有機材料に対して、一般には0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜5質量%、特に0.01〜2質量%、特に0.05〜1質量%、または特に0.01〜0.05質量%である。
【0081】
無生物有機材料は、例えば、軟膏およびローションなどの化粧品製剤、丸剤および坐薬などの医薬製剤、写真記録材料、特に写真乳剤、塗料およびプラスチックを指すものと理解される。それらには、特に鉱油製品または燃料、例えば、ディーゼル燃料、ガソリン燃料、タービン燃料、モータ油、潤滑油、トランスミッションオイルおよび潤滑グリースも含められる。
【0082】
発明の相乗混合物によって安定化することができるプラスチックの例としては、
低密度または高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、線状ポリブテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのモノまたはジオレフィンのポリマー、およびモノまたはジオレフィンのコポリマーあるいは記載のポリマーの混合物;
ポリスチレン、およびスチレンまたはメチルスチレンとジエンおよび/またはアクリル誘導体とのコポリマー、例えば、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、スチレン−メタクリル酸エチル、スチレン−ブタジエン−アクリル酸エチル、スチレン−アクリロニトリル−メタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)またはメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)のコポリマー;ハロゲン化ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンおよびそれらのコポリマー;
ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミドおよびポリアクリロニトリルなどの、α,β−不飽和酸およびそれらの誘導体に由来するポリマー:
不飽和アルコールおよびアミン、またはそれらのアシル誘導体またはアセタールから誘導されるポリマー、例えば、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニル;
ポリウレタン、特に、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリ尿素、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびポリエーテルケトンが挙げられる。
【0083】
発明の相乗混合物で安定化することができる塗料としては、アルキル樹脂塗料、分散塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン塗料、アクリル樹脂塗料および硝酸セルロース塗料などの塗料、または木材保護ワニスなどのワニスが挙げられる。
【0084】
本発明は、さらに、少なくとも1つの発明の相乗混合物を含む無生物有機材料を提供する。
【0085】
本発明は、好ましくは、燃料および少なくとも1つの発明の相乗混合物を含む燃料組成物を提供する。
【0086】
発明の相乗混合物は、特に有利には、タービン燃料(ジェット燃料)における安定剤として好適である。これは、また、従来の意味の抗酸化剤系としてのそれらの作用形態を指すものと理解されるべきである。特に、安定剤としてのその作用形態を通じて、それは、タービン燃料の熱安定性を向上させるように機能する。さらに、安定剤としてのその作用形態を通じて、すなわち分散剤としてのその特性において、それは、特に、タービンの燃料系および/または燃焼系における堆積物をも防止する。タービン燃料は、特に活性化タービンの運転に使用される。
【0087】
本発明は、さらに、タービン燃料(ジェット燃料)および少なくとも1つの発明の相乗混合物を含むタービン燃料組成物を提供する。
【0088】
発明のタービン燃料組成物は、例えば、民間または軍用航空機に慣例のタービン燃料であるたいていの液体タービン燃料を含む。例としては、Jet Fuel A、Jet Fuel A−1、Jet Fuel B、Jet Fuel JP−4、JP−5、JP−7、JP−8およびJP−8+100の名称の燃料が挙げられる。Jet AおよびJet A−1は、ケロセンに基づく市販のタービン燃料仕様である。対応する規格は、ASTM D1655およびDEF STAN91−91である。Jet Bは、ナフサおよびケロセン留分に基づく狭小に分級した燃料である。JP−4は、Jet Bと同等である。JP−5、JP−7、JP−8およびJP−8+100は、例えば、海軍および空軍によって使用される軍用タービン燃料である。これらの規格のいくつかは、腐食防止剤、凍結防止剤、帯電防止剤等のさらなる添加剤を既に含む配合物を指定している。
【0089】
発明の相乗混合物を、それ自体既知のさらなる添加剤と組み合わせて、タービン燃料またはタービン燃料組成物に添加することができる。発明のタービン燃料組成物に存在することができる好適な添加剤は、典型的には、洗剤、腐食防止剤、立体阻害tert−ブチルフェノール、N−ブチルフェニレンジアミンおよびN,N’−ジフェニルアミンならびにそれらの誘導体などの無硫黄抗酸化剤、N,N’−ジサリシリデン−1,2−ジアミノプロパンなどの金属不活性化剤、可溶化剤、Stadis 450などの帯電防止剤、殺生剤、ジエチレングリコールメチルエーテルまたはトリエチレングリコールメチルエーテルなどの凍結防止剤、ならびに記載の添加剤の混合物を含む。
【0090】
本発明に関して好適な添加剤は、以下に詳述する具体的な化合物類(C)、(D)および(E)である。
【0091】
好適な添加剤(C)は、無水コハク酸から誘導され、一般には15〜700個、特に30〜200個の炭素原子を有する長鎖炭化水素基を有する化合物である。これらの化合物は、好ましくは、ヒドロキシル、アミノ、アミドおよび/またはイミド基から選択されるさらなる官能基を有することができる。好適な添加剤は、例えば、熱的方法によって、または塩素化炭化水素を介してポリアルケンと無水マレイン酸とを反応させることによって得られるポリアルケニルコハク酸無水物の対応する誘導体である。長鎖炭化水素基の数平均分子量は、好ましくは約200〜10000、より好ましくは400〜5000、特に600〜3000、特に650〜2000の範囲内である。これらの長鎖炭化水素基は、好ましくは、従来のポリイソブテン、特に上記反応性ポリイソブテンに由来する。添加剤(C)として特に興味深いのは、アンモニアを含むポリアルケニルコハク酸無水物、モノアミン、ポリアミン、モノアルコールおよびポリオールの誘導体である。誘導に好適なポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、プロピレンジアミン等を含む。好適なアルコールは、エタノール、アリルアルコール、ドデカノールおよびベンジルアルコールなどの一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、マンニトールおよびソルビトールなどの多価アルコールを含む。添加剤として好適な無水コハク酸誘導体(C)は、例えば、US3522179、US4234435、US4849572、US4904401、US5569644およびUS6165235に記載されている。
【0092】
好適な添加剤(D)は、ポリアルケニルチオホスホネートである。これらのエステルのポリアルケニル基は、好ましくは、約300〜5000、より好ましくは400〜2000、特に500〜1500の範囲の数平均分子量を有する。ポリアルケニル基は、好ましくは、成分(C)についての長鎖炭化水素基として以上に記載したポリオレフィンに由来する。これらは、好ましくは、従来的または反応性ポリイソブテンに由来するポリアルケニル基である。ポリオレフィンとチオホスホリル化剤とを反応させることによって好適なポリアルケニルチオホスホネートを製造するための好適な方法が、例えばUS5725611に記載されている。
【0093】
好適な添加剤(E)は、本発明に関して使用される一般式IIのマンニッヒ反応生成物と異なるさらなるマンニッヒ付加物である。当該付加物は、基本的に、芳香族ヒドロキシル化合物、特にフェノールおよびフェノール誘導体と、アルデヒドおよびモノまたはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られる。それらは、好ましくは、ポリイソブテン置換フェノールと、ホルムアルデヒド、およびエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンまたはジメチルアミノプロピルアミンなどのモノまたはポリアミンとの反応生成物である。
【0094】
発明のタービン燃料組成物は、発明の相乗組成物を、それぞれの場合においてタービン燃料組成物の全量に対して、典型的には0.0001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.5質量%、特に0.01〜0.2質量%、特に0.01〜0.1質量%、さらにより好ましくは0.01〜0.05質量%の量で含む。
【0095】
添加剤(C)から(E)および上記の添加剤のいずれかのさらなる添加剤を、典型的にはそれぞれ、タービン燃料組成物の全量に対して0.0001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.6質量%、特に0.0015〜0.4質量%の量で使用することができる。
【0096】
本発明は、さらに、少なくとも1つの発明の相乗混合物、および場合により少なくとも1つの希釈剤、および場合により、好ましくは上記添加剤から選択される少なくとも1つのさらなる添加剤を含むタービン燃料(ジェット燃料)のための添加剤濃縮物を提供する。好適な実施形態において、発明の添加剤濃縮物も発明のタービン燃料組成物と同様に、グループ(C)、(D)および(E)、特に(C)+(D)、(C)+(E)、(D)+(E)および(C)+(D)+(E)などのそれらの混合物の1つ以上の添加剤を含む。
【0097】
好適な希釈剤は、例えば、ケロセン、ナフサまたは鉱物基油などの原油加工で得られる留分である。さらに好適なのは、Solvent Naphtha重油、Solvesso(登録商標)またはShellsol(登録商標)ならびにこれらの溶媒および希釈剤の混合物などの芳香族および脂肪族炭化水素である。
【0098】
発明の相乗混合物は発明の添加剤濃縮物に、該濃縮物の全質量に対して好ましくは0.1〜100質量%、より好ましくは1〜80質量%、特に10〜70質量%の量で存在する。
【0099】
発明の相乗混合物は、有利には、ガソリン燃料および中間留出燃料、ここでは特にディーゼル燃料および加熱油における安定剤としても好適である。これは、従来の意味の抗酸化剤系としてのそれらの作用形態を指すものと理解されるべきである。特に、安定剤としてのそれらの作用形態を通じて、それらは、ガソリン燃料および中間留出燃料の熱安定性を向上させるように機能する。さらに、安定剤としてのそれらの作用形態を通じて、すなわち分散剤としてのそれらの特性において、それらは、特に、ガソリンまたはディーゼルエンジンの燃料系および/または燃焼系における堆積物をも防止する。
【0100】
有用なガソリン燃料としては、全てのガソリン燃料組成物が挙げられる。本明細書に挙げられる典型的な代表例は、市場において慣例的なEN228によるEurosuperベース燃料である。加えて、WO00/47698による仕様のガソリン燃料組成物も本発明のための使用の可能な分野である。
【0101】
有用な中間留出燃料としては、全ての市販のディーゼル燃料および加熱油組成物が挙げられる。ディーゼル燃料は、典型的には、一般に100〜400℃の沸点範囲を有する鉱油ラフィネートである。これらは、通常、95%の360℃までまたはそれより高い点を有する。それらは、95%の例えば345℃以下の点、および0.005質量%以下の硫黄含有量、あるいは95%の例えば285℃の点、および0.001質量%以下の硫黄含有量によって特徴づけられる所謂「超低硫黄ディーゼル」または「都市ディーゼル」であってもよい。その主な構成成分が比較的長鎖のパラフィンである、精製によって得られるディーゼル燃料に加えて、好適なディーゼル燃料は、石炭ガス化またはガス液化(例えばフィッシャー・トロプシュ合成による)[「ガスから液体」(GTL)燃料]によって、あるいはバイオマス[「バイオマスから液体」(BTL)燃料]から得られる燃料である。前記ディーゼル燃料とバイオディーゼルなどの再生可能燃料との混合物も好適である。現時点で特に興味深いのは、低硫黄含有量のディーゼル燃料、すなわち硫黄含有量が0.05質量%未満、好ましくは0.02質量%未満、特に0.005質量%未満、特に0.001質量%未満のディーゼル燃料である。ディーゼル燃料は、例えば、ディーゼル−水ミクロエマルジョンの形で、または所謂「白色ディーゼルとして」水を例えば20質量%までの量で含むことができる。
【0102】
加熱油は、例えば、低硫黄もしくは硫黄リッチ鉱油ラフィネート、または典型的には150〜400℃の沸点範囲を有する瀝青炭留出液または褐炭留出液である。加熱油は、硫黄含有量が0.005〜2質量%であるDIN 51603−1による規格加熱油であってよく、またはそれらは、硫黄含有量が0〜0.005質量%の低硫黄加熱油である。加熱油の例としては、特に、家庭用重油ボイラー用加熱油またはEL加熱油が挙げられる。
【0103】
発明の相乗混合物を特定のベース燃料、特にガソリン燃料またはディーゼル燃料に単独で、または燃料添加剤パッケージ、例えば所謂ディーゼル性能パッケージの形で添加することができる。当該パッケージは、燃料添加剤濃縮物であり、一般には、溶媒とともに、共添加剤としての一連のさらなる成分、例えば、キャリアオイル、低温流動性向上剤、腐食防止剤、解乳化剤、防曇剤、消泡剤、セタン価向上剤、燃焼向上剤、さらなる抗酸化剤もしくは安定剤、帯電防止剤、メタロセン、金属不活性化剤、可溶化剤、マーカーおよび/または染料を含む。
【0104】
好適な実施形態において、添加剤を加えたガソリンまたはディーゼル燃料、ならびに発明の相乗混合物は、さらなる燃料添加剤として、特に、以降成分(F)と称する少なくとも1つの洗剤を含む。
【0105】
洗剤または洗剤添加剤(F)は、典型的には、燃料のための堆積防止剤を指す。洗剤は、好ましくは、85〜20000、特に300〜5000、特に500〜2500の数平均分子量(Mn)を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素基を有し、
(Fa)少なくとも1つの窒素原子が塩基性を有する6個までの窒素原子を有するモノまたはポリアミノ基;
(Fb)場合によりヒドロキシル基と組み合わせたニトロ基;
(Fc)少なくとも1つの窒素原子が塩基性を有するモノまたはポリアミノ基と組み合わせたヒドロキシル基;
(Fd)カルボキシル基またはそれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩;
(Fe)スルホン酸基またはそれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩;
(Ff)ヒドロキシ基、少なくとも1つの窒素原子が塩基性を有するモノもしくはポリアミノ基、またはカルバメート基を末端とするポリオキシ−C2−C4−アルケン成分;
(Fg)カルボン酸エステル基;
(Fh)無水コハク酸に由来し、ヒドロキシルおよび/またはアミノおよび/またはアミドおよび/またはイミド基を有する成分;および/または
(Fi)本発明に関して使用される一般式IIのマンニッヒ反応生成物と異なる、アルデヒドおよびモノまたはポリアミンを有する置換フェノールのマンニッヒ反応によって得られる成分から選択される少なくとも1つの極性成分を有する両親媒性物質である。
【0106】
燃料油組成物への十分な可溶性を確保する上記洗剤添加剤における疎水性炭化水素基は、85〜20000、特に300〜5000、特に500〜2500の数平均分子量(Mn)を有する。特に極性成分(Fa)、(Fc)、(Fh)および(Fi)と併用される典型的な疎水性炭化水素基としては、それぞれMn=300〜5000、特に500〜2500、特に700〜2300である比較的長鎖のアルキルまたはアルケニル基、特にポリプロペニル、ポリブテニルおよびポリイソブテニル基が挙げられる。
【0107】
洗剤添加剤の上記の基の例としては、以下のものが挙げられる。
【0108】
モノまたはポリアミノ基(Fa)を含む添加剤は、好ましくは、Mn=300〜5000のポリプロペンまたは従来の(すなわち主に内部二重結合を有する)ポリブテンもしくはポリイソブテンに基づくポリアルケンモノアミンまたはポリアルケンポリアミンである。(通常はβおよびγ位に)主に内部二重結合を有するポリブテンまたはポリイソブテンが添加剤の製造において出発材料として使用されるときは、可能な製造方法は、塩素化を行った後にアミノ化を行うこと、または二重結合を空気またはオゾンで酸化してカルボニルまたはカルボキシル化合物を得た後に、還元(水素化)条件下でアミノ化を行うことによる。ここでアミノ化に使用されるアミンは、例えば、アンモニア、モノアミン、またはジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンもしくはテトラエチレンペンタアミンなどのポリアミンであってよい。ポリプロペンに基づく対応する添加剤は、特にWO−A−94/24231に記載されている。
【0109】
モノアミノ基(Fa)を含むさらなる好適な添加剤は、特にWO−A−97/03946に記載されているように、5〜100の平均重合度Pを有するポリイソブテンと、窒素酸化物または窒素酸化物と酸素の混合物との反応生成物の水素化生成物である。
【0110】
モノアミノ基(Fa)を含むさらなる好適な添加剤は、特にDE−A−19620262に記載されているように、アミンとの反応の後に脱水を行い、アミノアルコールを還元することによってポリイソブテンエポキシドから得られる化合物である。
【0111】
場合によりヒドロキシル基と組み合わせたニトロ基(Fb)を含む添加剤は、好ましくは、WO−A−96/03367およびWO−A−96/03479に記載されているように、平均重合度=5〜100または10〜100のポリイソブテンと、窒素酸化物または窒素酸化物と酸素の混合物との反応生成物である。これらの反応生成物は、一般には、純粋のニトロポリイソブテン(例えば、α,β−ジニトロポリイソブテン)と混合ヒドロキシニトロポリイソブテン(例えば、α−ニトロ−β−ヒドロキシポリイソブテン)との混合物である。
【0112】
モノまたはポリアミノ基と組み合わせたヒドロキシル基(Fc)を含む添加剤は、特にEP−A476485に記載されているように、特に、主に末端二重結合を有し、Mn=300〜5000であるポリイソブテンから得られるポリイソブテンエポキシドと、アンモニアまたはモノもしくはポリアミンとの反応生成物である。
【0113】
カルボキシル基またはそれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩(Fd)を含む添加剤は、好ましくは全モル質量が500〜20000であり、そのカルボキシル基の一部または全てがアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩に変換され、カルボキシル基の残りがアルコールまたはアミンと反応した、C2−C40−オレフィンと無水マレイン酸のコポリマーである。当該添加剤は、特にEP−A−307815に記載されている。当該添加剤は、主に、弁座摩耗を防止するように機能し、WO−A−87/01126に記載されているように、有利にはポリ(イソ)ブテンアミンまたはポリエーテルアミンなどの慣例の燃料洗剤と併用され得る。
【0114】
スルホン酸基またはそれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩(Fe)を含む添加剤は、好ましくは、特にEP−A−639632に記載されているように、スルホコハク酸アルキルのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩である。当該添加剤は、主に、弁座摩耗を防止するように機能し、有利にはポリ(イソ)ブテンアミンまたはポリエーテルアミンなどの慣例の燃料洗剤と併用され得る。
【0115】
ポリオキシ−C2−C4−アルキレン成分(Ff)を含む添加剤は、好ましくは、C2−C60−アルカノール、C6−C30−アルカンジオール、モノもしくはジ−C2−C30−アルキルアミン、C1−C30−アルキルシクロヘキサノールまたはC1−C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基またはアミノ基1個あたり1〜30モルの酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンおよび/または酸化ブチレンとを反応させ、ポリエーテルアミンの場合は続いてアンモニア、モノアミンまたはポリアミンで還元性アミノ化を行うことによって得られるポリエーテルまたはポリエーテルアミンである。当該製造物は、特に、EP−A−310875、EP−A−356725、EP−A−700985およびUS−A−4877416に記載されている。ポリエーテルの場合は、当該製造物はキャリアオイル特性をも有する。これらの典型的な例は、トリデカノールブトキシレート、イソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレートおよびポリイソブテノールブトキシレートおよびプロポキシレート、ならびにアンモニアとの対応する反応生成物である。
【0116】
カルボン酸エステル基(Fg)を含む添加剤は、好ましくは、特にDE−A−3838918に記載されているように、モノ、ジまたはトリカルボン酸と長鎖アルカノールまたはポリオールとのエステル、特に、100℃で2mm2/sの最小粘度を有するエステルである。使用されるモノ、ジまたはトリカルボン酸は、脂肪族または芳香族酸であってよく、特に好適なエステルアルコールまたはエステルポリオールは、例えば6〜24個の炭素原子を有する長鎖のエステルアルコールまたはポリオールである。該エステルの典型的な代表例は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノールおよびイソトリデカノールのアジピン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステルおよびトリメリット酸エステルである。当該製造物もキャリアオイル特性を有する。
【0117】
無水コハク酸から誘導され、ヒドロキシルおよび/またはアミノおよび/またはアミドおよび/またはイミド基を有する成分(Fh)を含む添加剤は、好ましくは、アルキルまたはアルケニル置換無水コハク酸の対応する誘導体、特に、Mn=300〜5000の従来的または高反応性ポリイソブテンと無水マレイン酸とを熱的方法によって、または塩素化ポリイソブテンを介して反応させることによって得られるポリイソブテニルコハク酸無水物の対応する誘導体である。特に興味深いのは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンなどの脂肪族ポリアミンを用いた誘導体である。ヒドロキシルおよび/またはアミノおよび/またはアミドおよび/またはイミド基を有する成分は、例えば、カルボン酸基、モノアミンの酸アミド、アミド官能基に加えて、遊離アミン基をも有するジもしくはポリアミンの酸アミド、酸およびアミド官能基を有するコハク酸誘導体、モノアミンを有するカルボキシイミド、イミドイミド官能基に加えて、遊離アミン基をも有するジもしくはポリアミンを有するカルボキシイミド、またはジもしくはポリアミンと2つのコハク酸誘導体との反応によって形成されるジイミドである。当該燃料添加剤は、特にUS−A−4849572に記載されている。
【0118】
基(Fh)による洗剤添加剤は、好ましくは、アルキルまたはアルケニル置換無水コハク酸、特にポリイソブテニルコハク酸無水物とアミンおよび/またはアルコールとの反応生成物である。したがって、これらは、アルキル、アルケニルまたはポリイソブテニルコハク酸無水物から誘導され、アミノおよび/またはアミドおよび/またはイミドおよび/またはヒドロキシル基を有する誘導体である。これらの反応生成物は、置換無水コハク酸を使用する場合だけでなく、ハロゲン化スクシニルまたはコハク酸エステルなどの置換コハク酸または好適な酸誘導体を使用する場合にも得られることが理解されるであろう。添加剤が加えられた燃料は、好ましくは、ポリイソブテニル置換スクシンイミドに基づく少なくとも1つの洗剤を含む。特に興味深いのは、脂肪族ポリアミンを有するイミドである。特に好適なポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサアミン、特にテトラエチレンペンタアミンである。ポリイソブテニル基は、好ましくは500〜5000、より好ましくは500〜2000、特に約1000の数平均分子量Mnを有する。
【0119】
置換フェノールとアルデヒドおよびモノまたはポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られる成分(Fi)を含む添加剤は、好ましくは、ポリイソブテン置換フェノールと、ホルムアルデヒド、およびエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミンまたはジメチルアミノプロピルアミンなどのモノまたはポリアミンとの反応生成物である。ポリイソブテニル置換フェノールは、Mn=300〜5000の従来的または高反応性ポリイソブテンに由来するものであってよい。当該「ポリイソブテン−マンニッヒ塩基」は、特にEP−A−831141に記載されている。
【0120】
記載の洗剤添加剤(F)を発明の相乗混合物とともに少なくとも1つのキャリアオイルと組み合わせて使用することが好ましい。
【0121】
好適な鉱物キャリアオイルは、例えば、SN500〜2000等級の粘度を有するブライトストックまたは基油などの、原油加工で得られる留分であるが、芳香族炭化水素、パラフィン炭化水素およびアルコキシアルカノールでもある。鉱油の精製で得られ、「水素化分解油」として知られる留分(約360〜500℃の沸点範囲を有し、高圧下で触媒水素化され、異性化されるとともに脱パラフィン化された天然鉱油から得られる真空蒸留分)も同様に有用である。上記鉱物キャリアオイルの混合物も同様に有用である。
【0122】
好適な合成キャリアオイルの例は、ポリオレフィン(ポリ−α−オレフィンまたはポリ(内部オレフィン)、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシレート、ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルアミン、アルキルフェノール開始ポリエーテル、アルキルフェノール開始ポリエーテルアミンおよび長鎖アルカノールのカルボン酸エステルから選択される。
【0123】
好適なポリオレフィンの例は、特に、(水素化または非水素化)ポリブテンまたはポリイソブテンに基づくMn=400〜1800のオレフィンポリマーである。
【0124】
好適なポリエーテルまたはポリエーテルアミンの例は、好ましくは、C2−C60−アルカノール、C6−C30−アルカンジオール、モノもしくはジ−C2−C30−アルキルアミン、C1−C30−アルキルシクロヘキサノールまたはC1−C30−アルキルフェノールと、ヒドロキシル基またはアミノ基1個あたり1〜30モルの酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンおよび/または酸化ブチレンとを反応させ、ポリエーテルアミンの場合は続いてアンモニア、モノアミンまたはポリアミンで還元性アミノ化を行うことによって得られるポリオキシ−C2−C4−アルキレン成分を含む化合物である。当該製造物は、特にEP−A−310875、EP−A−356725、EP−A−700985およびUS−A−4,877,416に記載されている。例えば、使用されるポリエーテルアミンは、ポリ−C2−C6−アルキレンオキシドアミンまたはその官能性誘導体であってよい。その典型的な例は、トリデカノールブトキシレートまたはイソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレートおよびポリしオブテノールブトキシレートおよびプロポキシレート、ならびにアンモニアとの対応する反応生成物である。
【0125】
長鎖アルカノールのカルボン酸エステルの例は、特にDE−A―3838918に記載されているように、特に、モノ、ジまたはトリカルボン酸と長鎖アルカノールまたはポリオールとのエステルである。使用されるモノ、ジまたはトリカルボン酸は、脂肪族または芳香族酸であり、好適なエステルアルコールまたはポリオールは、特に、例えば6〜24個の炭素原子を有する長鎖のエステルアルコールまたはポリオールである。該エステルの典型的な代表例は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノールおよびイソトリデカノールのアジピン酸エステル、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステルおよびトリメリット酸エステル、例えばジ(n−またはイソトリデシル)フタル酸エステルである。
【0126】
さらなる好適なキャリアオイル系は、例えば、DE−A−3826608、DE−A―4142241、DE−A―4309074、EP−A−0452328およびEP−A−0548617に記載されている。
【0127】
特に好適な合成キャリアオイルの例は、例えば、酸化プロプレン、酸化n−ブチレンおよび酸化イソブチレン単位またはそれらの混合物から選択される、約5〜35、例えば約5〜30個のC3−C6−アルキレンオキシド単位を有するアルコール開始ポリエーテルである。好適な開始アルコールの非限定的な例は、長鎖アルキル基が特に直鎖状または分枝状C6−C18−アルキル基である長鎖アルキルで置換された長鎖アルカノールまたはフェノールである。好適な例としては、トリデカノールおよびノニルフェノールが挙げられる。
【0128】
さらなる好適な合成キャリアオイルは、DE−A−10102913に記載されているアルコキシ化アルキルフェノールである。
【0129】
好適なキャリアオイルは、合成キャリアオイルであり、ポリエーテルが特に好ましい。
【0130】
洗剤添加剤(F)または当該洗剤添加剤の混合物は、添加剤が加えられた燃料に、好ましくは10〜2000質量ppm、より好ましくは20〜1000質量ppm、さらにより好ましくは50〜500質量ppm、特に50〜200質量ppm、例えば70〜150質量ppmの総量で添加される。
【0131】
キャリアオイルが追加的に使用される場合は、それは、発明の添加剤が加えられた燃料に、好ましくは1〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、特に20〜100質量ppmの量で添加される。
【0132】
さらなる共添加剤として好適な低温流動性向上剤は、例えば、エチレンと少なくとも1つのさらなる不飽和モノマーとのコポリマー、例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマーである。
【0133】
さらなる共添加剤として好適な腐食防止剤は、例えば、特にポリオールとのコハク酸エステル、脂肪酸誘導体、例えば、オレイン酸エステル、オリゴマー化脂肪酸および置換エタノールアミンである。
【0134】
さらなる共添加剤として好適な解乳化剤は、例えば、アルキル置換フェノールおよびナフタレンスルホン酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、および脂肪酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、ならびにアルコールアルコキシレート、例えばアルコールエトキシレート、フェノールアルコキシレート、例えばtert−ブチルフェノールエトキシレートまたはtert−ペンチルフェノールエトキシレート、脂肪酸、アルキルフェノール、酸化エチレンと酸化プロピレンの縮合生成物、例えば酸化エチレン−酸化プロピレンブロックコポリマー、ポリエチレンイミンおよびポリシロキサンである。
【0135】
さらなる共添加剤として好適な防曇剤は、例えば、アルコキシ化フェノール−ホルムアルデヒド縮合体である。
【0136】
さらなる共添加剤として好適な消泡剤は、例えば、ポリエーテル変性ポリシロキサンである。
【0137】
さらなる共添加剤として好適なセタン価および燃焼向上剤は、例えば、アルキル硝酸塩、例えば硝酸シクロヘキシル、特に硝酸2−エチルヘキシル、および過酸化物、例えば過酸化ジ−tert−ブチルである。
【0138】
さらなる共添加剤として好適な無硫黄抗酸化剤は、例えば、置換フェノール、例えば2,6−ジ−tert−ブチルフェノールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−3−メチルフェノール、ならびにフェニレンジアミン、例えばN,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミンである。
【0139】
さらなる共添加剤として好適な金属不活性化剤は、例えば、サリチル酸誘導体、例えばN,N’−ジサリシリデン1,2−プロパンジアミンである。
【0140】
特に燃料添加剤パッケージのための好適な溶媒は、例えば、非極性有機溶媒、特に芳香族および脂肪族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、「ホワイトスピリット」、ならびにShellsol(登録商標)(製造元:Royal Dutch/Shell Group)、Exxol(登録商標)(製造元:ExxonMobil)およびSolvent Naphthaの名称の工業用溶媒混合物である。ここで、極性有機溶媒、特に、2−エチルヘキサノール、2−プロピルヘプタノール、デカノールおよびイソトリデカノールなどのアルコールも非極性有機溶媒とのブレンドに有用である。
【0141】
記載の共添加剤および/または溶媒がガソリン燃料またはディーゼル燃料に追加的に使用される場合は、それらは、それらのための慣例の量で使用される。
【0142】
発明の相乗混合物は、特に有利には、潤滑剤における安定剤としても好適である。潤滑剤または潤滑剤組成物は、本明細書では、モータ油、潤滑油、手動および自動オイルを含むトランスミッションオイル、ならびに通常は金属のような機械運動部品を潤滑させるように機能する関連液体組成物を指すものとする。安定化は、本明細書では特に、潤滑剤組成物の酸化および老化安定性の向上、すなわち特に「従来の意味の抗酸化剤系」としてのそれらの作用形態を指すものと理解されるべきである。追加的または代替的に、発明の相乗混合物は、潤滑剤組成物の剪断安定性を向上させる。すなわち、発明の相乗混合物は、潤滑剤組成物をより効果的に増粘する。場合によっては、発明の相乗混合物は、潤滑剤組成物における分散剤としても作用する。
【0143】
本発明は、さらに、それに慣例的な成分および少なくとも1つの発明の相乗混合物を含む潤滑剤材料組成物を提供する。発明の潤滑剤組成物は、発明の相乗混合物を、潤滑剤組成物の総量に対して、典型的には0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、特に0.05〜8質量%、特に0.1〜5質量%の量で含む。
【0144】
経済的に最も有意な潤滑剤組成物は、モータ油、ならびに手動オイルおよび自動オイルを含むトランスミッションオイルである。モータ油は、典型的には、添加剤の割合が(活性物質含有量に対して)約2〜10質量%である、主にパラフィン構成成分を含む、高コストの不便な処理および精製方法により精油所で製造される鉱物基油からなる。具体的な用途、例えば高温用途に対応して、鉱物基油を、有機エステル、オレフィンオリゴマー、ポリ−α−オレフィンもしくはポリオレフィンなどの合成炭化水素または水素化分解油などの合成成分と部分的または全面的に交換することができる。モータ油は、完璧な潤滑効果およびシリンダとピストンの良好なシールを確保するために高温で十分に高い粘度を有さなければならない。さらに、モータ油の流動特性は、低温で問題なくエンジンを始動させることができなければならない。モータ油は、酸化安定性を有していなければならず、困難な仕事環境下であっても液体または固体の形の分解生成物および堆積物の生成がわずかな量でなければならない。モータ油は、固体を分散させ(分散挙動)、堆積物を防止し(洗剤挙動)、酸性反応生成物を中和させ、エンジンにおける金属表面に摩耗防止膜を形成する。モータ油は、典型的には、粘度の等級(SAE等級)によって特徴づけられる。
【0145】
それらの基本成分および添加剤に関して、手動オイルおよび自動オイルを含むトランスミッションオイルは、モータ油と類似の組成を有する。力が、歯の間のトランスミッションオイルにおける液圧を介して、ギヤボックスの歯車系内で高度に伝達される。よって、トランスミッションオイルは、分解することなく長時間にわたって高圧に耐えるものでなければならない。粘度特性に加えて、ここでは、磨耗、耐圧性、摩擦、剪断安定性、牽引性および運転性能が重要なパラメータである。
【0146】
発明の相乗混合物に加えて、モータ油ならびに手動オイルおよび自動オイルを含むトランスミッションオイルは、一般には、以下に挙げる添加剤の少なくとも1つ、通常はいくつかまたは全てを一般にそのために慣例の量(潤滑剤組成物の全量に対する質量%を括弧に示す)で含む。
(a)本発明に関して使用される成分(B)の硫黄含有抗酸化剤と異なる硫黄含有抗酸化剤、および/または無硫黄抗酸化剤(0.1〜5%);
リン化合物、例えば、トリアリールおよびトリアルキル亜リン酸塩、ジアルキル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートまたはホスホン酸ピペラジド;
硫黄−リン化合物、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ジアルキルジチオリン酸金属塩は、潤滑油における腐食防止剤および高圧添加剤としても作用する)、五硫化リンとテルペン(α−ピネン、ジペンテン)、ポリブテン、オレフィンまたは不飽和エステルとの反応生成物;
フェノール誘導体、例えば、立体阻害モノ、ビスまたはトリフェノール、立体阻害多環式フェノール、ポリアルキルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールまたはメチレン−4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)(フェノール誘導体は、硫黄系またはアミン系抗酸化剤としばしば併用される);
アミン、例えば、ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンまたは4,4’−テトラメチルジアミノジフェニルメタンなどのアリールアミン;
狭義の金属不活性化剤、例えば、N−サリシリデンエチルアミン、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ジサリシリデン−1,2−プロパンジアミン、トリエチレンジアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸、リン酸、クエン酸、グリコール酸、レシチン、チアジアゾール、イミダゾールまたはピラゾール誘導体。
(b)粘度指数向上剤(0.05〜10%)、例えば、典型的には10000〜45000の分子量を有するポリイソブテン、典型的には15000〜100000の分子量を有するポリメタクリレート、典型的には80000〜100000の分子量を有するブタジエンまたはイソプレンなどの1,3−ジエンのホモポリマーおよびコポリマー、典型的には80000〜100000の分子量を有する1,3−ジエン−スチレンコポリマー、典型的には60000〜120000の分子量を有するエステル化された形の無水マレイン酸−スチレンポリマー、典型的には200000〜500000の分子量を有する、共役ジエンおよび芳香族モノマーで構成された単位によりブロック状構造を有する星形ポリマー、典型的には80000〜150000の分子量を有するポリアルキルスチレン、エチレンおよびプロピレンで構成されたポリオレフィン、または典型的には60000〜140000の分子量を有するスチレン−シクロペンタジエン−ノルボルネンターポリマー。
(c)流動点降下剤(低温流動性向上剤)(0.03〜1%)、例えば、異なる長鎖アルキル基を有するナフタレンなどの二環式芳香族化合物、12〜18個の炭素原子をアルコール基に有し、10〜30モル%の枝分れ度を有し、5000〜500000の平均分子量を有するポリメタクリレート、長鎖アルキルフェノールおよびジアルキルフタレート、または異なるオレフィンのコポリマー。
(d)洗剤(HD添加剤)(0.2〜4%)、例えば、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛およびナフテン酸マグネシウム、ジクロロステアリン酸カルシウム、フェニルステアリン酸カルシウム、クロロフェニルステアリン酸カルシウム、ドデシルベンゼンなどのアルキル芳香族化合物のスルホン化生成物、石油スルホン酸塩、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カルシウム、スルホン酸バリウムまたはスルホン酸マグネシウム、中性、塩基性および過塩基性スルホン酸塩、フェナートおよびカルボン酸塩、サリチル酸塩、アルキルフェノールの金属塩およびアルキルフェノール硫化物、リン酸塩、チオリン酸塩またはアルケニルリン酸誘導体。
(e)無灰分散剤(0.5〜10%)、例えば、本発明に関して使用される一般式IIのマンニッヒ反応生成物と異なるアルキルフェノール、ホルムアルデヒドおよびポリアルキレンポリアミンのマンニッヒ縮合体、ポリイソブテニルコハク酸無水物とポリヒドロキシ化合物またはポリアミンとの反応生成物、メタクリル酸アルキルとメタクリル酸ジエチルアミノエチル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジンもしくはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとのコポリマー、または酢酸ビニル−フマレートコポリマー。
(f)高圧添加剤(極圧添加剤)(0.2〜2.5%)、例えば、塩素含有量が40〜70質量%の塩素化パラフィン、(特にトリクロロメチル末端基を有する)塩素化脂肪酸、亜リン酸水素ジアルキル、亜リン酸トリアリール、リン酸トリクレシルなどのリン酸アリール、リン酸ジアルキル、リン酸トリブチルなどのリン酸トリアルキル、トリアルキルホスフィン、ジホスホン酸エステル、ニトロ芳香族化合物、ナフテン酸のアミノフェノール誘導体、カルバミン酸エステル、ジチオカルバミン酸誘導体、置換1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾールとアルキルコハク酸無水物またはアルキルマレイン酸無水物との混合物、1,2,4−チアジアゾールポリマー、二硫化モルホリノベンゾチアジアゾール、塩素化アルキル硫化物、硫化オレフィン、硫化クロロナフタレン、塩素化アルキルチオカルボネート、ビス(4−クロロベンジル)二硫化物およびテトラクロロジフェニル硫化物などの有機硫化物および多硫化物、トリクロロアクロレインメルカプタール、または特にジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)。
(g)摩擦調節剤(0.05〜1%)、特に、吸着によって摩擦表面に薄層を生成する極性油溶性化合物、例えば、脂肪アルコール、脂肪アミド、脂肪酸塩、脂肪酸アルキルエステルまたは脂肪酸グリセリド。
(h)消泡添加剤(0.0001〜0.2%)、例えば、ポリジメチルシロキサンなどの液体シリコーン、またはポリエチレングリコールエーテルおよび硫化物。
(i)解乳化剤(0.1から1%)、例えば、それらのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩の形のジノニルナフタレンスルホン酸塩。
(j)腐食防止剤(金属不活性化剤としても知られる)(0.01〜2%)、例えば、三級アミンおよびそれらの塩、イミノエステル、アミドオキシム、ジアミノエタン、アルカノールアミンを有する飽和または不飽和脂肪酸の誘導体、アルキルアミン、サクロシン、イミダゾリン、アルキルベンゾトリアゾール、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、リン酸ジアリール、チオリン酸エステル、分枝状C5−C12−アルキル基を有するリン酸ジアルキルを有する一級n−C8−C18−アルキルアミンまたはシクロアルキルアミンの中性塩、中性または塩基性アルカリ土類金属スルホン酸塩、ナフテン酸亜鉛、モノおよびジアルキルスルホン酸塩、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム、ラノリン(羊毛脂)、ナフテン酸の重金属塩、ジカルボン酸、不飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、モノオレイン酸ペンタエリスリチルおよびモノオレイン酸ソルビタン、O−ステアロイルアルカノールアミン、ポリイソブテニルコハク酸誘導体またはジアルキルジチオリン酸亜鉛およびジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛。
(k)乳化剤(0.01〜1%)、例えば、長鎖不飽和天然カルボン酸、ナフテン酸、合成カルボン酸、スルホンアミド、N−オレイルサルコシン、アルカンスルファミド酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、塩化ジメチルドデシルベンジルアンモニウムなどの長鎖アルキル化アンモニウム塩、イミダゾリニウム塩、アルキル、アルキルアリール、アシル、アルキルアミノおよびアシルアミノポリグリコール、または長鎖アシル化モノおよびジエタノールアミン。
(l)染料および蛍光添加剤(0.001〜0.2%)。
(m)防腐剤(0.001〜0.5%)。
(n)臭気改良剤(0.001〜0.2%)。
【0147】
本発明に関する典型的な既製のモータ油組成物、ならびに手動オイルおよび自動オイルを含むトランスミッションオイル組成物は、以下の組成を有し、添加剤についてのデータは、活性成分含有量に関し、全ての成分の総和は、常に100質量%になる。
【0148】
・ 添加剤のための溶媒および希釈剤の留分を含む80〜99.3質量%、特に90〜98質量%のモータ油ベースまたは手動オイルおよび自動オイルを含むトランスミッションオイルベース(鉱物基油および/または合成成分)
・ 0.1〜8質量%の発明の相乗混合物
・ 0.2〜4質量%、特に1.3〜2.5質量%のグループ(d)の洗剤
・ 0.5〜10質量%、特に1.3〜6.5質量%のグループ(e)の分散剤
・ 0.1〜5質量%、特に0.4〜2.0質量%のグループ(a)の抗酸化剤および/またはグループ(f)の高圧添加剤および/またはグループ(g)の摩擦調節剤
・ 0.05〜10質量%、特に0.2〜1.0質量%のグループ(b)の粘度指数向上剤
・ 0〜2質量%のグループ(c)および(h)から(n)の他の添加剤
以下に示す非限定的な実施例を参照し、本発明を詳細に説明する。
【0149】
製造実施例
発明の相乗混合物における成分(A)として以下の化合物を使用した。
【0150】
(A1)2−tert−ブチルフェノールをポリイソブテンでアルキル化した後、ホルムアルデヒドおよびアンモニアと反応させることにより文献(1)の教示に従って製造された一般式IIの2−アミノメチル−4−ポリイソブチル−6−tert−ブチルフェノール(R2=tert−ブチル、R6=R7=水素、ポリイソブチル基のMn=1000);2−アミノメチル−4−ポリイソブチル−6−tert−ブチルフェノールの代わりに、2−tert−ブチルフェノールをポリイソブテンでアルキル化した後、ホルムアルデヒドおよびジメチルアミンと反応させることにより同様にして得られる2−(N,N−ジメチルアミノメチル)−4−ポリイソブチル−6−tert−ブチルフェノール(R2=tert−ブチル、R6=R7=メチル、ポリイソブチル基のMn=1000)を使用しても、以下に挙げる応用例において同じ結果が達成される。
【0151】
(A2)文献(4)の教示に従って製造された式Vbのポリイソブチル置換テトラヒドロベンゾオキサジン。
【0152】
(A3)以下に挙げる製造実施例に従って製造された、式XXXcの3つのベンゼン環を有する多環式フェノール化合物。
【0153】
A3の製造実施例
最初に、数平均分子量Mnが1000であり、末端ビニリデン二重結合の含有量が80モル%であるポリイソブテン(BASF AktiengesellschaftのGlissopal(登録商標)1000)から製造された120gの4−ポリイソブテニルフェノールを100mlのトルエン中室温で500ml四口フラスコに充填し、48gの一般式Vgのテトラヒドロベンゾオキサジンを15分以内に添加した。フラスコ内容物を加熱して還流させ、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、該混合物をメタノールで洗浄し、トルエン相を150℃にて減圧(5mbar)下で濃縮した。113gの透明な淡色の粘性油を得た。
【0154】
1H−NMR(400MHz、16スキャン、CDCl3):
δ=3.8―3.5ppm(ベンジルプロトン)、δ=2.6−2.0ppm(メチルアミンプロトン)、δ=6.9−7.2ppm(芳香族プロトン)
【0155】
発明の相乗混合物における成分(B)として以下の硫黄含有化合物を使用した。
【0156】
(B1)市販の製品である4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール);4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)の代わりに同様に市販の構造異性体である4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)を使用しても、以下に挙げる応用例において同じ結果が得られる。
【0157】
(B2)B2について以下に示される製造実施例によって製造されたフェニルポリイソブチル硫化物。
【0158】
(B3)B3について以下に示される製造実施例によって製造された、ポリイソブチル置換硫黄含有5員複素環式環を得るためのポリイソブテンと硫黄元素との反応生成物。
【0159】
B2の製造実施例
最初に、2リットルの四口フラスコにアルゴン保護ガス雰囲気下で90gのチオフェノールを充填した。三フッ化ホウ素フェノレートを室温で迅速に添加した。数平均分子量Mnが1000であり、末端ビニリデン二重結合の含有量が80モル%である800gのポリイソブテン(BASF AktiengesellschaftのGlissopal(登録商標)1000)を400mlのヘキサンに溶解させた溶液を24時間以内に冷却しながら20℃で一滴ずつ添加した。添加終了後、該混合物を室温でさらに3時間撹拌した。処理のために、250mlのメタノールを添加し、ヘキサン相をさらなるヘキサンで希釈し、さらにそれぞれ500mlのメタノールで2回洗浄した。ヘキサンを120℃にて減圧(5mbar)下で蒸留した後、846gのフェニルポリイソブチル硫化物を淡色油の形で得た。
【0160】
1H−NMR(400MHz、16スキャン、CDCl3):
δ=7.51ppm、2H、芳香族プロトン;δ=7.32ppm、2H、芳香族プロトン;δ=1.78ppm、2H、ポリイソブチルプロトン;さらなるポリイソブチルプロトン
【0161】
B3の製造実施例
数平均分子量Mnが1000であり、末端ビニリデン二重結合の含有量が80モル%である700gのポリイソブテン(BASF AktiengesellschaftのGlissopal(登録商標)1000)を100℃の2リットル実験用オートクレー部にて窒素で3回洗浄した。その後、金属浴を利用して、該混合物を1時間にわたって220℃に加熱し、次いで1時間にわたって240℃に加熱した。ニードル弁を使用して、内圧を5バールに維持した。反応で形成し、ニードル弁を介して流出する硫化水素を塩素漂白剤で洗浄塔に吸収させ、分解させた。処理のために、該混合物を1000mlのヘプタンで希釈し、固体を濾別し、溶液を140℃および5mbarにてロータリーエバポレータにより濃縮した。1H−NMR分析によれば、主成分として、以下に示す2つのポリイソブチル置換5員硫黄複素環B3/1およびB3/IIを含む褐色油の形で750gの製造物を得た。
【0162】
【化42】

(PIB**は、ポリイソブテン単位1つ分短縮された、使用されるGlissopal(登録商標)1000〜の基を表す)
【0163】
1H−NMR(400MHz、16スキャン、CDCl3):
B3/I:δ=8.21ppm、1H;δ=2.77ppm、2H
B3/II:δ=2.44ppm、3H;δ=2.00ppm、2H;δ=1.58ppm、6H
【0164】
発明の相乗混合物を成分A1〜A3から、それぞれの場合において成分B1〜B3と混合することによって製造し、その一部を以下の使用実施例で使用した。
【0165】
使用実施例
実施例1:形成された粒子の量を測定することによるタービン燃料(ジェット燃料)の熱安定性の試験
それぞれの場合において、ASTM D1655によるJet A仕様の市販のタービン燃料を使用した。以上に示されている成分A1〜A3および/またはB1〜B2を含む以下に示される量の以下に示される混合物または配合物M1〜M7を用いてそれぞれの場合において添加を実施した。
【0166】
M1(比較用)
40質量%のA3、
10質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)(無硫黄抗酸化剤)、
4質量%の市販の金属不活性化剤および
46質量%のSolvent Naphtha Heavy(溶媒)
M2(本発明)
40質量%のA3、
8質量%のB1、
10質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)(無硫黄抗酸化剤)、
4質量%の市販の金属不活性化剤および
38質量%のSolvent Naphtha Heavy(溶媒)
M3(比較用)
100質量%のA1
M4(比較用)
100質量%のB2
M5(本発明)
50質量%のA1および50質量%のB2
M6(本発明)
30質量%のA2、
10質量%のB1、
10質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)(無硫黄抗酸化剤)、
5質量%の市販の金属不活性化剤、
30質量%のSolvent Naphtha Heavy(溶媒)および
15質量%の2−エチレンヘキサノール(溶媒)
M7(比較用)
30質量%のA2、
10質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)(無硫黄抗酸化剤)、
5質量%の市販の金属不活性化剤、
30質量%のSolvent Naphtha Heavy(溶媒)および
25質量%の2−エチレンヘキサノール(溶媒)
【0167】
攪拌機、還流凝縮器および温度計を備えた三口ガラスフラスコにおいて、最初に、分析する150mlの燃料に室温で5lの空気を1時間以内に通した。続いて、油浴を用いて燃料を160℃に加熱し、室温でさらに5時間撹拌した。室温まで冷却した後、全量の燃料を0.45μmのメンブレンフィルタで濾過した。続いて、フィルタ残留物を115℃の乾燥箱で45分間乾燥させ、続いて減圧下で2時間乾燥させた後、デシケータにて質量測定した。
【0168】
以下の第1表は、質量測定の結果を示す。
【0169】
第1表:
【表1】

【0170】
いずれの場合においても、発明の混合物または配合物は、対応する比較サンプルより有意に良好な結果、すなわち少量のフィルタ残留物をもたらす。発明の相乗混合物を使用した結果として、タービン燃料に対する熱応力を介して形成される粒子の量を有意に減少させることが可能であった。
【0171】
例えば、サンプルM3、M4およびM5の結果によって成分(A)と(B)の相乗作用が明確に認められる。M4におけるB2は、抗酸化作用を全く発揮しない(粒子の量は、ブランク値と比較しても多くなっている)。それ自体効果のないB2をM3において既に適度に効果的なA1と混合すると、活性が再び予想外に向上する。
【0172】
実施例2:燃料相の不透明性を測定することによるタービン燃料からの除水特性の試験
DEF STAN91−91によるJet A−1仕様の市販のタービン燃料(ジェット燃料)を使用した。それらの除水特性に関するタービン燃料の傾向をASTM D3948(「MSEP」試験)に準じて試験した。これらの測定の特徴は、燃料相の最終的な不透明性の測定に標準的な凝集フィルタを使用することである。その測定において、以上に示されている成分A1〜A3およびB1を2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)および金属不活性化剤N、N’−ジサリシリデン−1,2−ジアミノプロパンと組み合わせて含む、以下に示す混合物M8〜M10を試験した。混合物の使用量は、それぞれの場合において500mg/lであった。第2表に報告されている不透明性挙動に対する評点を求めた[相対的評価スケールは0(最低点)〜100(最高点)]。
【0173】
M8(本発明)
30質量%のA1、
10質量%B1、
10質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)、
5質量%のN,N’−ジサリシリデン−1,2−ジアミノプロパン、
30質量%のSolvent Naphtha Heavy(溶媒)および
15質量%の2−エチレンヘキサノール(溶媒)
M9(本発明)
30質量%のA2、
10質量%B1、
10質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)、
5質量%のN,N’−ジサリシリデン−1,2−ジアミノプロパン、
30質量%のSolvent Naphtha Heavy(溶媒)および
15質量%の2−エチレンヘキサノール(溶媒)
M10(本発明)
30質量%のA3、
10質量%B1、
10質量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)、
5質量%のN,N’−ジサリシリデン−1,2−ジアミノプロパン、
30質量%のSolvent Naphtha Heavy(溶媒)および
15質量%の2−エチレンヘキサノール(溶媒)
【0174】
第2表:
サンプル 評点
ブランク値 100
M8 83
M9 100
M10 97
【0175】
混合物M9およびM10を用いた場合は、添加剤が加えられていないタービン燃料と比較してタービン燃料からの除水特性の低下があったとしても実質的になく、混合物M8を用いた場合はわずかな低下があったが、不利なものではなかった。
【0176】
実施例3:破過点を測定することによるタービン燃料(ジェット燃料)の熱安定性の試験
MIL−DTL−83133Eによる市販のJP−8タービン燃料を使用した。熱安定性をASTM D3241に準拠してJFTOT破過点法により試験した。発明の相乗混合物が添加されていないタービン燃料では、290℃の値が測定された。250mg/lのサンプルM10が添加された同じ燃料では、340℃の破過点が測定され、1000mg/mlのサンプルM10が添加された同じ燃料では、350℃の破過点が測定された。
【0177】
実施例4:燃料における残留水含有量を測定することによるタービン燃料の除水特性の試験
MIL−DTL−83133Eによる市販のJP−8タービン燃料を使用した。除水後の燃料における残留水含有量を測定するために、内蔵凝集フィルタエレメントを備えた5リットルの容器を使用した。除水のために液溜にて1質量%の水とともに激しく撹拌することによってエマルジョンに変換された燃料を22℃で凝集フィルタに通し、燃料相の残留水含有量をカールフィッシャー滴定によって測定した。燃料における残留水が少ないほど、除水特性が良好になる。これは、典型的には、例えば凝集フィルタを使用する場合にタービン燃料に使用される添加剤が除水特性を悪化させるためである。
【0178】
慣例の量の慣例の帯電防止剤、腐食防止剤および耐摩耗剤および氷結防止剤が添加されたMIL−DTL−83133Eによる市販のJP−8タービン燃料は、上記試験方法による乳化および除水後に、残留水含有量が564質量ppmであった(「比較値」)。上記添加剤を除去するために予めアルミナで処理された、添加剤が加えられていないMIL−DTL−83133Eによる市販のJP−8タービン燃料は、上記試験方法による乳化および除水後に、残留水含有量が83質量ppmであった(「ブランク値」)。慣例の量の慣例の帯電防止剤、腐食防止剤または耐摩耗剤および氷結防止剤が添加された同じタービン燃料を、乳化および除水の前に、さらに250mg/lのサンプルM10と混合したところ、最終的に、残留水含有量が、564質量ppmでなく91質量ppmになった。したがって、本発明により達成された91質量ppmの値は、83質量ppmの「ブランク値」のオーダの範囲内にある。
【0179】
タービン燃料における添加剤の存在は、除水特性の有意な低下、すなわち残留水含有量の増加をもたらすが、発明の相乗混合物を使用すると、残留水含有量が、添加剤が加えられていないタービン燃料のオーダになる。発明の相乗混合物を添加すると、既に存在する添加剤の除水特性に対する悪影響も排除される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸素原子および窒素原子上の自由原子価が一緒になって、必要であればヒドロカルビレン架橋構成要素を介して5員、6員または7員環を形成することができ、ベンゼン環が自由位置の少なくとも1つに置換基を有することもできる式(I)
【化1】

の少なくとも1つの構造要素を有する1〜99.9質量%の少なくとも1つの化合物と、
(B)抗酸化作用を有する0.1〜99質量%の少なくとも1つの硫黄含有有機化合物を含み、成分(A)と成分(B)の総和が100質量%になる相乗混合物。
【請求項2】
ベンゼン環が、1つ以上の自由位置に置換基を有することもできる式(Ia)または(Ib)
【化2】

の少なくとも1つの構造要素を有する少なくとも1つの化合物を成分(A)として含む、請求項1に記載の相乗混合物。
【請求項3】
窒素原子またはベンゼン環が、少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有する式(I)、(Ia)または(Ib)の少なくとも1つの構造要素を有する少なくとも1つの化合物を成分(A)として含む、請求項1または2に記載の相乗混合物。
【請求項4】
一般式II
【化3】

[式中、
置換基R1は、NR67であり、R6およびR7は、水素、窒素および酸素から選択されるヘテロ原子によって中断され、かつ/または置換されていてよいC1−〜C20−アルキル、C3−〜C8−シクロアルキル、C6−〜C14−アリールおよびC1−〜C20−アルコキシ基、ならびに式III
【化4】

のフェノール基からそれぞれ独立に選択され、
6およびR7が、ともに式IIIのフェノール基でないことを条件として、
6およびR7は、それらが結合した窒素原子と一緒になって、窒素および酸素から選択される1個または2個のヘテロ原子を有することができ、かつ/または1つ、2つもしくは3つのC1−〜C6−アルキル基で置換されていてよい5員、6員または7員環を形成することもでき、
さらに、式IIおよびIIIにおける置換基R4は、13〜3000個の炭素原子を有する末端結合ポリイソブテン基であり、
さらに、式IIおよびIIIにおける置換基R2、R3およびR5は、それぞれ独立して、水素、C1−〜C20−アルキル基、C1−〜C20−アルコキシ、1つ以上の酸素原子、硫黄原子もしくはNR8成分によって中断されるC2−〜C4000−アルキル基、ヒドロキシル基、ポリアルケニル基、または式−CH2NR67の成分であり、R6およびR7は、それぞれ以上に定義されている通りであり、R8は、水素、C1−〜C6−アルキル、C3−〜C8−シクロアルキルまたはC6−〜C14−アリールである]の少なくとも1つのマンニッヒ反応生成物を成分(A)として含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の相乗混合物。
【請求項5】
一般式IV
【化5】

[式中、
置換基R9は、1〜3000の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR14成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、
14は、水素原子またはC1−〜C4−アルキル基であり、
置換基R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、あるいはそれぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR14成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R14は、以上に定義されている通りであり、
置換基R12は、式Y
【化6】

の基であってもよく、
置換基R9、R10、R11およびR13は、それぞれ以上に定義されている通りであり、置換基Xは、1つ以上のイソブテン単位からなり、または1つ以上のイソブテン単位を含む炭化水素架橋構成要素であり、あるいは
置換基R12は、式ZまたはZ’
【化7】

の基であってもよく、
置換基R9、R10、R11およびR13は、それぞれ以上に定義されている通りであり、置換基R17およびR18は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素またはC1−〜C10−アルキル基であり、
置換基R10およびR11またはR11およびR12またはR12およびR13は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR15−CH2−副構造と第2のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、あるいはR10およびR11ならびにR12およびR13は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR15−CH2−およびベンゼン環に結合した−O−CH2−NR16−CH2−副構造と第2および第3のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、
15およびR16は、それぞれ独立して、それぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子、および/または1つ以上のNR14成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、
ただし、R9、R10、R11、R12、R13、R15またはR16の少なくとも1つは、4〜3000個の炭素原子を有し、R9、R10、R11、R12、R13、R15またはR16の群からの残りの置換基は、それらがヒドロカルビル基である場合は、それぞれ1〜20個の炭素原子を有することを条件とする]の少なくとも1つのテトラヒドロベンゾオキサジンを成分(A)として含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の相乗混合物。
【請求項6】
分子毎に20個までのベンゼン環を有する少なくとも1つの多環式フェノール化合物を成分(A)として含み、一般式XXVI
【化8】

[式中、
置換基R19は、1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、
24は、水素原子またはC1−〜C4−アルキル基であり、
置換基R20、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、またはそれぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R24は、以上に定義されている通りである]のテトラヒドロベンゾオキサジンと、一般式XXVII
【化9】

[式中、
置換基R25、R26、R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、またはそれぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R24は、以上に定義されている通りである]の1つ以上の同一または異なるフェノール、および/または一般式XXVI
[式中、
置換基R22は、式Z"の基であってもよく、置換基R27は、式Z"’の基であってもよく、
【化10】

置換基R19、R20、R21、R23、R25、R26およびR28は、それぞれ以上に定義されている通りであり、置換基R25は、一般式XXVIのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であってもよく、置換基R33は、水素、または一般式XXVIのテトラヒドロベンゾオキサジンから誘導される基であり、置換基R29およびR30は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素またはC1−〜C10−アルキル基であり、
置換基R20およびR21またはR21およびR22またはR22およびR23は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR31−CH2−副構造とともに第2のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、置換基R20およびR21およびR22およびR23は、ベンゼン環に結合した−O−CH2−NR31−CH2−および−O−CH2−NR32−CH2−副構造と第2および第3のテトラヒドロオキサジン環を形成することもでき、R31およびR32は、それぞれ独立して、それぞれの場合において1〜3000個の炭素原子を有し、OおよびSの群からの1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上のNR24成分によって中断されていてよいヒドロカルビル基であり、R24は、以上に定義されている通りであり、
ただし、置換基R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31またはR32の少なくとも1つが13〜3000個の炭素原子を有し、R19、R20、R21、R22、R23、R25、R26、R27、R28、R31またはR32の群からの残りの置換基は、ヒドロカルビル基である場合は、それぞれの場合において1〜20個の炭素原子を有することを条件とする]の1つ以上の同一または異なるテトラヒドロベンゾオキサジンと、を反応させることによって得られる少なくとも1つの多環式フェノール化合物を成分(A)として含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の相乗混合物。
【請求項7】
xが1〜20の整数である少なくとも1つの−(S)−成分を有する少なくとも1つの有機化合物を成分(B)として含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の相乗混合物。
【請求項8】
無生物有機材料を光、酸素および熱の作用に対して安定化させるための安定剤としての、請求項1から7までのいずれか1項に記載の相乗混合物の使用。
【請求項9】
鉱油製品および燃料における安定剤としての、請求項1から7までのいずれか1項に記載の相乗混合物の使用。
【請求項10】
タービン燃料(ジェット燃料)における安定剤としての、請求項1から7までのいずれか1項に記載の相乗混合物の使用。
【請求項11】
タービン燃料の熱安定性を向上させるための安定剤としての、請求項10に記載の相乗混合物の使用。
【請求項12】
タービンの燃料系および/または燃焼系における堆積物を低減するためのタービン燃料における安定剤としての、請求項10に記載の相乗混合物の使用。
【請求項13】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの相乗混合物を含む無生物有機材料。
【請求項14】
燃料および請求項1から7までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの相乗混合物を含む燃料組成物。
【請求項15】
タービン燃料(ジェット燃料)および請求項1から7までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの相乗混合物を含むタービン燃料組成物。
【請求項16】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの相乗混合物、および場合により少なくとも1つの希釈剤、および場合により少なくとも1つの添加剤を含むタービン燃料(ジェット燃料)用添加剤濃縮物。
【請求項17】
酸化および老化安定性を向上させ、および/または潤滑剤組成物の剪断安定性を向上させるための安定剤としての、請求項1から7までのいずれか1項に記載の相乗混合物の使用。
【請求項18】
そのための慣例の成分および請求項1から7までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの相乗混合物を含む潤滑剤組成物。

【公表番号】特表2010−533752(P2010−533752A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516467(P2010−516467)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058978
【国際公開番号】WO2009/010441
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】