説明

真空、乾燥・濃縮システム

【課題】 処理液の濃縮及び乾燥に好適な真空、乾燥・濃縮装置の提供。
【解決手段】 処理液を収容する収容槽と、処理液を乾燥・濃縮処理する真空、乾燥・濃縮装置と、真空ポンプを備える真空、乾燥・濃縮システムであって、真空、乾燥・濃縮装置は、タンク外殻体と、蓋体と、処理液が流入する流入口と、処理液が排出される排出口と、真空ポンプに接続する排気口と、タンク外殻体に接続する導波管と、導波管を介してタンク外殻体と接続する少なくとも1つのマグネトロンと、真空、乾燥・濃縮装置内に配される反射板からなり、導波管とタンク外殻体外周面との接続位置は、真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の液面より下方に位置し、反射板は、導波管とタンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、複数の開口部が形成されることを特徴とする真空、乾燥・濃縮システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の水成分を蒸発させる真空、乾燥・濃縮システムに関し、より詳しくは、熱効率を最大限化し、効率よく液体中の水成分を除去可能な真空、乾燥・濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、産業上に利用される濃縮技術の多くは、液体に熱を加え、液体中の水分を蒸発させることをその基本原理としている。濃縮処理を施される液体が、熱により変質しやすい性質を有する場合には、濃縮処理を減圧下で行うといったことも行われる。
特許文献1は、熱により変質しやすい可食性処理液を好適に濃縮する技術を提案している。
図16は、特許文献1に提案される濃縮装置を示す。
【0003】
特許文献1の濃縮装置(C)は、濃縮処理される処理液を収容する収容槽(R)と、供給ポンプ(S)を介して収容槽(R)に接続する濃縮処理容器(E)と、濃縮処理容器(E)と接続するとともに濃縮処理容器(E)内を減圧する減圧装置(V)を備える。濃縮処理容器(E)を取り囲むように金属製のマイクロ波オーブン(O)が配され、導波管(G)を介して、マイクロ波オーブン(O)にマイクロ波発振器(W)が接続する。濃縮処理容器(E)の底部には排出口(D)が設けられ、排出口(D)に、濃縮処理容器(E)内で濃縮処理された濃縮液収容器(A)が接続する。
濃縮液収容器(A)は、昇降装置(J)を介して上下に移動可能とされている。
【0004】
特許文献1の濃縮装置(C)によれば、減圧下でマイクロ波を利用して処理液を直接加熱することにより、水分を速やかに蒸発させることが可能となるとともに、熱伝達等により熱源に直接処理液を接触させる加熱方式による濃縮と較べて、品質のよい濃縮処理液を得ることが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開平9−70501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の濃縮装置(C)は、上述のような優れた効果をもたらすものであるが、マイクロ波による加熱領域は、マイクロ波オーブン(O)で囲まれた領域全体にわたるものであり、蒸発作用を直接的に生じない濃縮処理容器(E)底部に存する処理液までもが加熱処理を受けることとなる。
このことは、マイクロ波発振エネルギの無駄を生じさせ、蒸発工程にかかるコストの増大を招来する。また、適正な蒸発管理を行なわなければ、温度変化、圧力変化、濃度変化等による品質劣化を生み出す結果となる。
【0007】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、高い濃縮効率を有するとともに濃縮処理を施される処理液の劣化を最小限化する真空、乾燥・濃縮システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、処理液を収容する収容槽と、該収容槽から供給された処理液を乾燥・濃縮処理する真空、乾燥・濃縮装置と、該真空、乾燥・濃縮装置内を減圧する真空ポンプを備える真空、乾燥・濃縮システムであって、前記真空、乾燥・濃縮装置は、一端有底筒状に形成されたタンク外殻体と、該タンク外殻体上端開口部を気密に閉塞する蓋体と、前記タンク外殻体に形成されるとともに前記収容槽から送られた処理液が流入する流入口と、前記タンク外殻体底部に接続するとともに処理液が排出される排出口と、前記タンク外殻体上部に配されるとともに前記真空ポンプに接続する排気口と、前記タンク外殻体に接続する導波管と、該導波管を介して前記タンク外殻体と接続する少なくとも1つのマグネトロンと、前記真空、乾燥・濃縮装置内に配される反射板からなり、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置は、前記真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の液面より下方に位置し、該反射板は、前記導波管と前記タンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、前記真空、乾燥・濃縮装置内部の液中に広がる面を備えるとともに、複数の開口部が形成されることを特徴とする真空、乾燥・濃縮システムである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体底部若しくは底部近傍に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項3記載の発明は、前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体外周面に接続し、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項4記載の発明は、前記マグネトロンが複数であり、該マグネトロンが前記タンク外殻体周方向に等間隔に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記真空、乾燥・濃縮装置内部に空気供給パイプが挿入され、該空気供給パイプから、前記タンク外殻体上方に向けて空気が供給可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項6記載の発明は、前記蓋体上面に載置固定されるモータを更に備え、前記反射板が前記蓋体上面に載置固定されるモータと接続し、前記真空、乾燥・濃縮装置内部で回転可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項7記載の発明は、前記反射板の上面若しくは下面に凸部若しくは凹部が形成されることを特徴とする請求項6記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項8記載の発明は、前記反射板が、高周波振動発生装置に接続し、該高周波振動発生装置が前記反射板を振動させることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項9記載の発明は、前記真空、乾燥・濃縮装置内部の処理液の液位を計測する液位計と、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置の上下動作を制御する制御部を更に備え、前記液位計が、前記真空、乾燥・濃縮装置内部の処理液の液位の信号を前記制御部へ送信し、該制御部は、前記液位計からの信号に基づき、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータに作動信号を送信し、該アクチュエータを作動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置が前記真空、乾燥・濃縮装置内部の処理液の液面よりも下方に位置することを特徴とする請求項3記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項10記載の発明は、前記反射板を上下動させるアクチュエータを更に備え、前記制御部が、前記液位計からの信号に基づき、前記アクチュエータを動作させ、前記反射板が、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項9記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
【0011】
請求項11記載の発明は、前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配されるサイクロンを更に備え、該サイクロンが、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の不純物を除去することを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項12記載の発明は、前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配される凝集器を更に備え、該凝集器が、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の水分を除去することを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項13記載の発明は、前記収容槽、前記真空、乾燥・濃縮装置及び前記真空ポンプが車載可能な基板上に配されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項14記載の発明は、前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配されるサイクロンが更に、前記車載可能な基板上に配され、前記サイクロンが、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の不純物を除去することを特徴とする請求項13記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項15記載の発明は、前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配される凝集器が更に、前記車載可能な基板上に配され、前記凝集器が、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の水分を除去することを特徴とする請求項13記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
請求項16記載の発明は、前記処理液が、液状食品、塩水、薬液からなる群から選択されるいずれかの液体であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、液面によりマイクロ波が反射されることがなく、マグネトロンから生じたエネルギ全てを真空、乾燥・濃縮装置内部の処理液の加熱に用いることが可能となる。
また、処理液中を進行するマイクロ波の一部は、反射板によって上方に向け反射され、この反射されたマイクロ波も最終的には処理液に熱となって吸収される。
更に、反射板により加熱された処理液の熱対流を反射板より上方で行なわせることにより、熱の拡散を防ぎ、集中的に処理液を加熱することが可能となり、一層高い効率で、水分の蒸発を行うことが可能となる。
したがって、高いエネルギ効率で真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の水分の蒸発を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、高濃縮率を達成するのに好適な真空、乾燥・濃縮システムとなる。
請求項3記載の発明によれば、所望位置の処理液の加熱を行うことが可能となる。したがって、処理液の蒸発に伴う液位の変動に追従させて、処理液の加熱を行うことが可能となる。
請求項4記載の発明によれば、短時間でタンク加熱部内の処理液を一様に加熱することが可能となる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、タンク加熱部内の処理液を撹拌することが可能となり、タンク加熱部内の処理液全体の温度を一様にすることができる。
請求項6記載の発明によれば、タンク加熱部内の処理液を撹拌することが可能となり、タンク加熱部内の処理液全体の温度を一様にすることができる。
請求項7記載の発明によれば、反射板の回転による撹拌効率を高めることができる。
請求項8記載の発明によれば、反射板近傍の処理液に振動を伝達することが可能となる。したがって、加熱対象位置にある処理液の撹拌を促すことが可能となる。更には、反射板上への処理液中の固体成分の堆積を防止することができる。
【0015】
請求項9記載の発明によれば、水分蒸発に伴うタンク内の処理液の液位変動に追従して、加熱位置を調整可能となる。
請求項10記載の発明によれば、真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の液面と、反射板上面の間の加熱対象区画の厚さを一定にすることができ、水分蒸発工程の安定化を図ることが可能となる。
【0016】
請求項11記載の発明によれば、濃縮処理によって生ずる排気の清浄化を図ることが可能となる。
請求項12記載の発明によれば、濃縮処理によって生ずる排水の清浄化を図ることが可能となる。
請求項13乃至15記載の発明によれば、車載可能な真空、乾燥・濃縮システムとなる。
請求項16記載の発明によれば、可食性処理液の濃縮処理に好適な真空、乾燥・濃縮システムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムについて、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る真空、乾燥・濃縮システム(100)を示す概略図である。
真空、乾燥・濃縮システム(100)は、乾燥・濃縮処理を施される処理液を収容する収容槽(9)を備える。収容槽(9)に収容される処理液としては、例えば、液状食品、海水などの塩水や、薬品又は薬剤が溶解された薬液或いは薬品又は薬剤が懸濁された薬液を挙げることができる。
【0018】
真空、乾燥・濃縮システム(100)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)を備える。収容槽(9)に貯められた処理液は、真空、乾燥・濃縮装置(1)と収容槽(9)を接続する管路途中に配されたポンプ(69)の作動により、収容槽(9)から真空、乾燥・濃縮装置(1)に送られる。尚、必要に応じて、真空、乾燥・濃縮装置(1)と収容槽(9)を接続する管路途中に濾過装置(91)を配してもよい。これにより、望ましくない処理液中の不純物を除去可能となる。図1に示す例においては、濾過装置(91)はポンプ(69)の上流側に配されている。
【0019】
真空、乾燥・濃縮システム(100)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)と接続するサイクロンと、サイクロン(71)に接続する凝集器(72)と、凝集器(72)に冷却水を供給するとともに内部の冷却水を冷却する貯水タンク・冷却塔(73)と、凝集器(72)、サイクロン(71)並びに真空、乾燥・濃縮装置(1)中の空気を吸引する真空ポンプ(74)を備える。
【0020】
図2は、本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置(1)の主要構成を示す。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、タンク外殻体(21)と蓋体(22)を備える。
タンク外殻体(21)は、一端有底円筒形状であり、下方で閉塞し、上方で開口している。蓋体(22)は、タンク外殻体(21)の上部の開口部を気密に閉塞する。タンク外殻体(21)の形状は、円筒状に限らず、三角筒状、四角筒状或いは多角筒状などの形状を適宜採用可能である。
タンク外殻体(21)の底部(211)は、下方に狭まるテーパ形状をしており、テーパ状の底部(211)中央には排出口(212)が設けられる。排出口(212)からは、収容槽(9)から供給され、真空、乾燥・濃縮装置(1)内で乾燥・濃縮処理がなされた処理液が排出される。
【0021】
真空、乾燥・濃縮装置(1)内部には、反射板(3)が配される。反射板(3)が、反射板支持棒(31)上端を蓋体(22)の上面に載置固定されるモータ(222)の回転シャフトに接続する場合は、反射板(3)が回転するため、タンク外殻体(21)の形状(円筒状、三角筒状、四角筒状或いは多角筒状など)に関係なく、円板状に形成される。反射板(3)の上面並びに下面は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に収容される処理液の液面に対して平行である。反射板(3)は例えば、パンチングメタルで形成され、上面から下面に向けて貫通する多数の貫通穴を備える。
これにより、反射板(3)は真空、乾燥・濃縮装置(1)内部で安定的に固定されることとなるとともに、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部で回転可能となる。
尚、反射板(3)が、高周波振動発生装置に接続する場合、円板形状を採用してもよいが、外殻体(21)の形状によって定まる液面と略等しい形状の板体を採用し、液面に対し、反射板(3)上面を平行に配する構造を採用することも可能である。
【0022】
タンク外殻体(21)の外周面には、複数のレール(23)が据付けられる。レール(23)は、タンク外殻体(21)上下方向に延びる。
導波管(41)が、レール(23)を介して、タンク外殻体(21)に上下移動可能に取付けられる。導波管(41)の他端部には、マグネトロン(4)が接続する。また、マグネトロン(4)は、マグネトロン(4)に電力を供給する電源(43)に電気的に接続する。
導波管(41)或いはマグネトロン(4)には、導波管(41)及びマグネトロン(4)を上下に移動させるためのアクチュエータが接続し、図2に示す例においては、アクチュエータとして油圧シリンダ(42)が用いられており、油圧シリンダ(42)は導波管(41)に接続する。
【0023】
再度、図1を参照する。
サイクロン(71)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)の排気口(214)と接続する。収容槽(9)から供給され、真空、乾燥・濃縮装置(1)内に収容された処理液の液面と蓋体(22)下面との間に形成される空気層中には、マグネトロン(4)からのマイクロ波放射により加熱された処理液から蒸発した水蒸気が多量に含まれることとなる。真空ポンプ(74)からの空気吸引によって、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の水蒸気を多量に含んだ空気はサイクロン(71)に流れることとなる。
水蒸気中には、真空、乾燥・濃縮装置(1)内に供給された処理液が含有する微細な固体成分も含まれる場合がある。サイクロン(71)は、この微細な固体成分を水蒸気から分離する。分離された固体成分はサイクロン(71)下部に配される貯蔵部(711)に蓄積される。
【0024】
サイクロン(71)により微細な固体成分を除去された水蒸気を含有する空気は、凝集器(72)に至る。凝集器(72)には、貯水タンク・冷却塔(73)に蓄えられた冷却水がポンプ(731)を通じて供給される。凝集器(72)内には多数のプレート(721)が配され、パイプ(722)がプレート(721)を横切って蛇行する。パイプ(722)内には、貯水タンク・冷却塔(73)から供給される冷却水が流れ、これによりプレート(721)が冷却される。
プレート(721)に接触した空気は、冷却され、空気が含有する水成分がプレート(721)上で結露する。プレート(721)上で結露した水成分は滴下し、凝集器(72)下部に配される貯水部(723)に蓄えられる。
【0025】
凝集器(72)によって、水成分を除去された空気は更に真空ポンプ(74)により吸引され、真空ポンプ(74)下流側へと排出される。
真空ポンプ(74)下流側において、排出された空気に対して脱臭処理などの後処理を施してもよい。
また、貯水部(723)に蓄えられた水成分に対してPh処理などを施してもよい。
このような後処理を施した後、環境内に空気や水を放出することで、環境に負荷をかけない処理システムが構築可能となる。
尚、真空、乾燥・濃縮システム(100)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)、サイクロン(71)、凝集器(72)、貯水タンク(73)及び真空ポンプ(74)が1つの基板上に配され、該基板ごと車載可能とされることが好ましい。
【0026】
再度、真空、乾燥・濃縮装置(1)の詳細部分について説明する。
図3は、導波管(41)とレール(23)との接続形態の一例を示す詳細図である。図3(a)は、導波管(41)とレール(23)の組立部分の展開斜視図であり、図3(b)は、導波管(41)とレール(23)の組立部分の部分断面図である。
レール(23)は、取付プレート(231)の面上に固定される。取付プレート(231)は、平板状の部材であり、レール(23)は直方体状の部材である。取付プレート(231)のレール(23)が取付けられた側の面には、Oリング用溝(232)が形成される。Oリング用溝(232)は、レール(23)の周囲を取り囲む。
取付プレート(231)のレール(23)が取付けられる面と反対側の面には、当て板(233)が配される。当て板(233)は正面視ロ字状に形成され、その外形輪郭は、取付プレート(231)と一致する。
導波管(41)の先端には、導波管フランジ(411)が取付けられる。導波管フランジ(411)は、レール(23)と噛合う。導波管フランジ(411)の面は、導波管(41)断面より大きく形成され、導波管(41)は導波管フランジ(411)の面の略中央に接続する。
【0027】
レール(23)が取付けられるタンク外殻体(21)の部分は開口し、レール(23)は、タンク外殻体(21)外周面に対して外方に突出する。また、タンク外殻体(21)のレール取付用の開口部周囲において、タンク外殻体(21)内壁面に凹部が形成され、タンク外殻体(21)の壁面肉厚は薄くなっている。
タンク外殻体(21)内壁面に形成された凹部には、取付プレート(231)が据付けられる。取付プレート(231)は、当て板(233)とともにボルト等の固定具で、タンク外殻体(21)内壁面側に固定される。
Oリング用溝(232)には、Oリング(234)が配され、Oリング(234)はタンク外殻体(21)内壁面と取付プレート(231)との間で圧縮される。
【0028】
図3に示す例において、取付プレート(231)及びレール(23)は、一体に形成されている。
取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波の照射を受けても、マイクロ波を透過させて、加熱せず、熱影響を受けない材質で構成される。このようなマイクロ波を透過させる材質として、石英、テフロン(登録商標)或いはポリスチレン等を例示可能である。
【0029】
図4は、マイクロ波漏れ防止カバーの取付形態を示す。
上述の如く、取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波を透過させる材料からなるので、レール(23)外周面を被覆するように、マイクロ波漏れ防止カバー(235)が取付けられる。
マイクロ波漏れ防止カバー(235)は、金属材料からなる。尚、図4に示すマイクロ波漏れ防止カバー(235)は、金属板を折り曲げ加工して得られた形態であるが、マイクロ波の周波数に応じて、適宜大きさを定められた開口部を有する多孔板や金網から形成される。
【0030】
図5及び図6は、電磁波シールドの取付形態の一例を示す。
上述の如く、取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波を透過させる材料からなるので、マイクロ波の漏れを防止するために、マグネトロン(4)外側を囲むように電磁波シールド(236)が取り付けられてもよい(図5参照)。或いは、真空、乾燥・濃縮装置(1)外側全体を取り囲むように電磁波シールド(236)が設けられてもよい(図6参照)。
電磁波シールド(236)は、多孔板或いは電磁波吸収体により形成される。電磁波シールド(236)が多孔板からなる場合、多孔板上の開口部の径は、使用されるマイクロ波の周波数により適宜定められ、多孔板がマイクロ波に対して壁となり、マイクロ波の漏れを防止可能にする。
【0031】
図7は、真空、乾燥・濃縮装置(1)の概略平面図である。尚、図2に示す断面図は、図7においてA−A線として示される断面を示している。
複数のマグネトロン(4)が上述の如くしてタンク外殻体(21)外周面にレール(23)を介して取付けられる。複数のマグネトロン(4)は、タンク外殻体(21)外周面周方向に等間隔に配されている。尚、マグネトロン(4)の配置は図示例に限られるものではなく、上下に千鳥状にマグネトロン(4)を配することも可能である。或いは、真空、乾燥・濃縮装置(1)の設計に応じて、適宜マグネトロン(4)の配置形態を変更してもよい。
【0032】
蓋体(22)の上面には、リブ(221)が形成され、リブ(221)は蓋体(22)上面で格子状に配される。これにより、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の負圧に対して、蓋体(22)が変形することを防止できる。或いは、蓋体(22)に鏡板を使用することによって、蓋体(22)の変形を防止できる。
【0033】
図8は、図7に示すB−B線における概略断面図である。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、流入口(213)が設けられ、流入口(213)には管路が取り付け可能である。流入口(213)から、収容槽(9)からポンプ(69)により送られた処理液が流入し、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に処理液が収容される。
タンク外殻体(21)周壁面下部を空気供給パイプ(5)が貫通する。空気供給パイプ(5)の先端開口部は上方に向き、空気供給パイプ(5)を通じて真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に供給された空気は、タンク外殻体(21)上方に向けて放出される。
空気供給パイプ(5)からの空気は、タンク外殻体(21)上方に放出されることで、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液内に旋回流等を生じさせる。旋回流等により真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液が撹拌され、処理液濃度並びに処理液温度を均一化させることができる。
【0034】
図9は、図7に示すC−C線における概略断面図である。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、上述したサイクロン(71)と接続する排気口(214)が設けられている。排気口(214)は、真空ポンプ(74)に接続し、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の空気を排気する。これにより、真空、乾燥・濃縮装置(1)は負圧に保たれる。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、真空計(215)が取り付けられ、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の圧力が測定される。
【0035】
図10は、真空、乾燥・濃縮装置(1)が備えるセンサの配置を示す。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、液位計(61)、温度計(62)及び濃度計(63)を更に備える。液位計(61)は、蓋体(22)上面に据付けられ、液位計(61)の検知部は真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液中に延設している。温度計(62)及び濃度計(63)は、タンク外殻体(21)内壁面に据付けられ、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に収容されて処理液の温度や、処理液中の特定成分の濃度を計測する。
制御部(6)は、更に、モータ(222)、マグネトロン(4)と接続する電源(43)、マグネトロン(4)を上下させるアクチュエータ(42)に電気的に接続し、これらに作動信号を送信し、これらの作動を制御する。
以下に、これら制御について詳述する。
【0036】
図11は、真空、乾燥・濃縮システム(100)を用いた水分蒸発工程を行う間の信号の流れを示すブロック線図である。
真空、乾燥・濃縮システム(100)の真空、乾燥・濃縮装置(1)は、上述の如く、制御部(6)によって制御される。制御部(6)は、液体供給ポンプ(69)に信号を送信し、液体供給ポンプ(69)を作動させる。液体供給ポンプ(69)は、流入口(213)に接続し、流入口(213)を介して、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に処理液を供給する。
【0037】
真空、乾燥・濃縮装置(1)内部には、上述の如く、液位計(61)が配される。液位計(61)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液の液位を測定するとともに測定された液位に応じた信号を制御部(6)へ送信する。
制御部(6)には、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に収容可能な処理液の体積の最大値が入力されている。制御部(6)は、液位計(61)からの信号に基づき、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に供給された処理液の体積を算出し、入力された収容可能な処理液の体積の最大値と比較する。処理液体積の算出値が、入力された処理液体積の最大値を超えたとき、制御部(6)は、液体供給ポンプ(69)の作動を停止させる。
【0038】
制御部(6)には、反射板(3)の真空、乾燥・濃縮装置(1)内部における高さ位置が入力されている。
制御部(6)は、マグネトロン(4)を上下動させるアクチュエータ(42)に信号を送信し、アクチュエータ(42)を作動させる。アクチュエータ(42)は、導波管フランジ(411)の上縁が真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液の液面より下方に位置するようにマグネトロン(4)の位置を調整する。また、導波管フランジ(411)の下縁が反射板(3)の上方に位置するようにマグネトロン(4)の位置を調整する。
【0039】
その後、制御部(6)は、マグネトロン(4)を作動させ、マイクロ波を真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液に照射する。マイクロ波は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液中を進行し、マイクロ波のエネルギ全部が処理液に吸収される。この結果、処理液が効率よく加熱されることとなる。
処理液中を進行するマイクロ波の一部は、反射板(3)によって上方に向けて反射される。この反射されたマイクロ波は更に処理液中を進行して、処理液に熱となって吸収される。更に反射板(3)により加熱された処理液の熱対流を反射板(3)より上方で行なわせることによって、加熱対象区画内で熱対流が生ずる結果、熱の拡散が防がれ、集中的な加熱を行なうことが可能となる。
結果として、反射板(3)上面と液面との間の空間として定義される加熱対象区画にある処理液が集中して加熱され、処理液は、加熱対象区画内で熱対流を起こす。この結果、熱の拡散が防がれ、集中的な加熱を行なうことができる。結果として、液面付近の処理液が短時間で昇温されるので、高い効率で水分を蒸発させることが可能である。
【0040】
処理液の蒸発に伴い、液面が下降する。この液面の下降は、液位計(61)により検知される。導波管フランジ(411)の上縁が液面位置より上に位置する前に、制御部(6)はアクチュエータ(42)に信号を送信し、アクチュエータ(42)を作動させる。そして、アクチュエータ(42)は、導波管フランジ(411)を液面より下方に移動させ、マイクロ波の照射位置を調整する。
【0041】
図12は、反射板支持棒(31)途中部に組み込まれる伸縮部材(310)の一例を示す。
伸縮部材(310)は、円筒状の第1筒(311)と、第1筒(311)下端に接続する蛇腹状のベローズ(312)と、ベローズ(312)下端に接続する第2筒(313)を備える。
第1筒(311)内壁面には、環状の第1仕切板(314)が固定され、第2筒(313)内壁面には、環状の第2仕切板(315)が固定される。第1仕切板(314)と第2仕切板(315)の間にはシリンダ(316)が配される。シリンダ(316)の本体部は第2仕切板(315)上面に固定され、シリンダ(316)のロッドは第1仕切板(314)下面に固定される。
シリンダ(316)のロッドを伸縮させることで、伸縮部材(310)の軸長寸法が変化する。
このような伸縮部材(310)を反射板支持棒(31)途中部に組み込むことで、反射板支持棒(31)の軸長寸法が増減し、反射板(3)の真空、乾燥・濃縮装置(1)内部での高さ位置を変化させることができる。
【0042】
液位計(61)が計測する液位に応じて、制御部(6)がシリンダ(316)に信号を送り、シリンダ(316)がロッドをシリンダ本体内に収容する。これにより、反射板(3)が下方に移動することとなる。したがって、反射板(3)の上面位置を常に導波管フランジ(411)下縁よりも下方に位置させることが可能となる。
このような構成を採用すると、例えば、液面から反射板(3)上面までの距離を常に一定にすることができ、水分蒸発工程を安定化させることが可能となる。
【0043】
より簡便な機構を望むならば、マグネトロン(4)や反射板(3)を適当な位置に固定或いは反射板(3)を用いず、マグネトロン(4)のみを適当な位置に固定する構成を採用しても良い。
例えば、制御部(6)が液位計(61)からの信号に応じて、蒸発した水分量を算出し、液体供給ポンプ(69)を作動させ、蒸発した水分量と等しい体積の処理液を真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に供給しても良い。或いは、液体供給ポンプ(69)と真空、乾燥・濃縮装置(1)の間の管路に配されるバルブの開閉を制御部(6)が操作し、蒸発した水分量と等しい体積の処理液を真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に供給しても良い。
このような構成を採用するならば、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液の液位を常に一定に保つことができ、連続的な水分蒸発工程を行い、所望する濃度と体積を得ることが可能となる。
【0044】
図13は、真空、乾燥・濃縮システム(100)の真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液の温度に基づく制御の一例を示すブロック線図である。
上述の如く、本発明においては、反射板(3)上面と液面との間の加熱対象区画が集中的に加熱されることとなるため、高い水分蒸発効率を得ることができる。その一方で、水分蒸発処理を施される処理液が、液状食品やある種の薬剤を含有した薬液である場合には、過度の高温により、濃縮処理後の処理液の品質の劣化が生ずる場合もある。
真空、乾燥・濃縮装置(1)内部には複数の温度計(62)が配される。複数の温度計(62)は、タンク内部上下方向に整列して配される。これにより、液面の変位にかかわらず、加熱対象区画の温度を測定可能となる。温度計(62)は、制御部(6)へ測定した処理液の温度に応じた信号を送信する。
【0045】
制御部(6)には、水分蒸発処理を施される処理液に対して定められる許容最大温度が入力されている。制御部(6)は、温度計(62)から送信される信号に基づき、液体温度を算出するとともに算出された処理液温度と入力された許容最大温度を比較する。
そして、処理液温度が許容最大温度を超える前に、制御部(6)は、空気供給パイプ(5)に設けられたバルブ(51)に信号を送信し、バルブ(51)を開く。バルブ(51)が開くと、圧縮空気を貯蔵する空気貯蔵タンク(59)に接続する空気供給パイプ(5)から空気が真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に流入し、上述の如く、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液に旋回流等を生じせしめる。これにより、真空、乾燥・濃縮装置(1)底部付近にある比較的低い温度の処理液と、液面付近の高い温度の処理液とが混合し、液面付近の処理液温度が低減する。
尚、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に空気を流入させる方法としては、空気貯蔵タンク(59)を用いる以外にも、空気供給パイプ(5)を大気と直結させてもよい。
【0046】
尚、空気供給パイプ(5)の代わりに、蓋体(22)上面のモータ(222)を作動させてもよい。制御部(6)がバルブ(51)へ信号を送る代わりに、モータ(222)へ作動信号を送信することにより、反射板(3)が回転し、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液に旋回流を生じせしめ、上述のような上層と下層の処理液間の混合作用を得ることができる。尚、この場合には、反射板(3)の上面及び/又は下面に突条、隆起部或いは溝部などを形成することが好ましい。反射板(3)の上面及び/又は下面にこのような三次元形状の凸部或いは凹部を設けることにより、反射板(3)の回転動作により得られる撹拌効果を高めることができる。尚、反射板(3)上面及び/又は下面の突起部や突条の形成は、反射板(3)と一体的に形成して行われてもよく、突起片や突条片を反射板(3)と別体に形成し、ボルト等の固定手段で突起片や突条片を反射板(3)に取付ける形態を採用してもよい。
【0047】
尚、加熱対象区画内の液温を測定する温度計(62)の温度に応じて、制御部(6)がマグネトロン(4)に接続する電源(43)へ信号を送り、マグネトロン(4)の出力を増減させる構成を採用してもよい。
例えば、加熱対象区画内の液温が高い場合には、マグネトロン(4)の出力を下げ、液温の低減を図ることができる。これにより、加熱対象区画内の液温調整を精度よく行うことが可能となる。
【0048】
尚、加熱対象区画内の液温を測定する温度計(62)の温度に応じて制御部(6)が真空、乾燥・濃縮装置(1)内部を減圧する真空ポンプ(74)へ信号を送り、真空ポンプの回転数を上げることによって、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の圧力を更に減圧させる構成を採用してもよい。例えば、加熱対象区画内の液温が高い場合には、タンク(2)内部を減圧し、沸点を下げることによって液温の低減を図ることができる。
これにより、加熱対象区画内の液温調整を精度よく行うことが可能な図13に示す制御を行ってもよい。
【0049】
上述のように空気供給パイプ(5)から空気を供給すると、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧が増加する。
真空計(215)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧を測定し、制御部(6)へ測定した気圧に応じた信号を送信する。真空計(215)からの信号に応じて、制御部(6)は、真空ポンプ(74)の回転数を上げることにより、真空ポンプ(74)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内に進入してきた空気を吸引し、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の負圧が一定に保たれる。
【0050】
温度計(62)が液面付近の液温が十分に降下したことを示す信号を制御部(6)に送信すると、制御部(6)は空気供給用バルブ(51)を閉じる。同時に真空ポンプ(74)の回転数を下げ、規定の回転数とすることによって、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の気圧を元の状態に戻すことができる。
このようにして真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧を一定にすることで、水分蒸発工程の安定化を図ることが可能となる。
【0051】
図14は、真空、乾燥・濃縮システム(100)の真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液内に含まれる成分の濃度に基づく制御の一例を示すブロック線図である。
濃度計(63)は、加熱対象区画内部の処理液内に含まれる成分の濃度を測定する第1濃度計と、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の処理液の下層の成分濃度を測定する第2濃度計からなる。真空、乾燥・濃縮装置(1)内部へ供給される処理液の体積は、液体供給ポンプ(69)の回転数並びに容量から算出され、蒸発した水分体積は液位計(61)から算出されるので、制御部(6)は真空、乾燥・濃縮装置(1)で水分蒸発処理を施された後の処理液内に含まれる成分の濃度を理論的には算出可能である。
しかしながら、高い精度で濃度を求める場合には、算出される処理液内の成分濃度の理論値ではなく、実際の水分蒸発処理後の処理液内の成分濃度の測定が必要である。
【0052】
図14に示す例においては、水分蒸発処理後の処理液内の成分濃度が所望の濃度となっているか否かを確認することが可能である。
液位計(61)からの信号に基づき、制御部(6)は、所定の水分量を蒸発させたことを認識する。その後、制御部(6)は、空気供給バルブ(51)を開き、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の処理液を撹拌する。
第1濃度計と第2濃度計は、処理液の上層と下層の処理液内に含まれる成分の濃度を測定するとともに、濃度に応じた信号を制御部(6)へ送信する。第1濃度計と第2濃度計からの信号が等しくなったとき、制御部(6)は空気供給バルブ(51)を閉じる。
【0053】
制御部(6)には、所望の成分濃度の値が入力されている。
第1濃度計と第2濃度計により示される成分濃度の値が、制御部(6)に入力された所望の成分濃度の値よりも低い場合には、制御部(6)はマグネトロン(4)へ作動信号を送り、マグネトロン(4)を作動させ、水分蒸発工程を続行させる。そして、所望の成分濃度が得られるまで、水分蒸発工程を続ける。
第1濃度計と第2濃度計により示される成分濃度の値が、制御部(6)に入力された所望の成分濃度の値よりも高い場合には、制御部(6)は液体供給ポンプ(69)を作動させ、水分蒸発処理後の処理液よりも低い成分濃度の処理液を真空、乾燥・濃縮装置(1)内に供給し、処理液の成分濃度を所望の成分濃度と等しくさせる。
尚、上述と同様に、空気供給バルブ(51)の開閉動作の代わりに、モータ(222)の作動に対するオン・オフ制御によって、図14に示す制御を行ってもよい。
【0054】
上記のように、水分蒸発処理の後、成分濃度確認のために処理液を撹拌することは、処理液内の成分濃度に応じて処理液の粘度が変化するような処理液に対して好ましい結果をもたらす。
処理液の粘度が高すぎると、排出口(212)からの処理液排出に不具合を生ずることがある。上述のように、水分蒸発処理後、処理液排出前に処理液の撹拌を行うことで、処理液中において局所的に粘度の高い部分を生ずることがなくなり、円滑な処理液排出工程を実行可能となる。
【0055】
また、処理液が、例えば、液状食品であり、収容槽(9)から真空、乾燥・濃縮装置(1)へ至る経路において濾過処理が行われていないならば、液状食品中の固体成分(例えば、果汁中に含まれる果肉片など)が時間経過とともに真空、乾燥・濃縮装置(1)の底部(211)上に堆積することとなる。この堆積した固体成分が排出口(212)を閉塞し、処理液の排出を妨げる可能性を生ずる。
上述の如く、処理液排出前に撹拌を行うことで、処理液中の固体成分による排出口(212)の閉塞を防止可能となる。
【0056】
尚、濾過処理を行っていない液状食品のように、固体成分が堆積するような処理液に対して水分蒸発処理を行う場合には、反射板(3)に高振動発生装置を接続することが好ましい。反射板(3)に高振動を生じさせることにより、反射板(3)上に堆積した固体成分を、反射板(3)に多数形成された開口部を介して下方に落下させることが可能となるためである。
【0057】
尚、制御部(6)に対して、処理液上層の濃度と処理液下層の濃度の差異に対する閾値が入力され、第1濃度計が測定する成分濃度と第2濃度計が測定する成分濃度の差異を、第1濃度計及び第2濃度計から送信される信号に基づき、制御部(6)が算出し、算出された成分濃度の差異が入力された閾値を超えるときに、上記の撹拌作用を生じさせる形態を採用してもよい。
【0058】
尚、上記に示す例は、単に本発明を説明するためのものにすぎず、何ら本発明を限定するものではない。
また、上記において、反射板(3)を用いて、液面と反射板(3)上面との間の加熱対象区画を集中して加熱する例を示したが、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の処理液全体を加熱したい場合には、反射板(3)なしで、マグネトロン(4)を真空、乾燥・濃縮装置(1)の下端部の適当な位置に固定して加熱を行ってもよい。例えば、マグネトロン(4)をタンク外殻体(21)下端縁より僅かに上方に固定し、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部底部領域を加熱するといった形態である。或いは、マグネトロン(4)をタンク外殻体(21)の底部(211)に固定し、底部(211)からマイクロ波を出力してもよい。
或いは、反射板(3)の裏面に断熱性を有する材料をライニングしてもよい。これにより、一層、加熱対象区画を集中して加熱可能となる。
【0059】
(試験例)
図15は、反射板(3)の効果に対する試験結果を示すグラフである。図15のグラフの横軸は、マグネトロン(4)による加熱時間を示す。図15のグラフの縦軸は、反射板(3)を真空、乾燥・濃縮装置(1)内に配した時と、反射板(3)を真空、乾燥・濃縮装置(1)から取り除いたときの真空、乾燥・濃縮装置(1)内の無次元化された液温である。真空、乾燥・濃縮装置(1)へ供給された処理液の初期の液温が異なったため、補正するために試験結果の温度を、処理液の初期の液温で無次元化したものである。
【0060】
図15に示すグラフから明らかなように、真空、乾燥・濃縮装置(1)内に反射板(3)を配したほうが、液面と反射板(3)で区切られた領域と反射板(3)を取り除いて同領域を昇温させた場合と比較すると効率よく昇温できることがわかる。10%程度昇温効率を向上させる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、処理液の乾燥濃縮工程に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムの概略構成図である。
【図2】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置の主要部を示す図である。
【図3】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置の導波管とタンク外殻体との接続構造を示す詳細図である。
【図4】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置のマイクロ波漏れ防止カバーの取り付け例を示す図である。
【図5】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置の電磁波シールドの取り付け例を示す図である。
【図6】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置の電磁波シールドの取り付け例を示す図である。
【図7】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置の概略平面図である。
【図8】図7に示すB−B線における真空、乾燥・濃縮装置の概略縦断面図である。
【図9】図7に示すC−C線における真空、乾燥・濃縮装置の概略縦断面図である。
【図10】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置が備える液位計、温度計並びに濃度計の配置を概略的に示す図である。
【図11】真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の液位に基づく制御を示すブロック線図である。
【図12】本発明に係る真空、乾燥・濃縮システムに用いられる真空、乾燥・濃縮装置の反射板支持棒に組み込まれる伸縮部材の縦断面図である。
【図13】真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の温度に基づく制御を示すブロック線図である。
【図14】真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の成分濃度に基づく制御を示すブロック線図である。
【図15】反射板の有無による昇温効果の差異を示すグラフである。
【図16】従来の濃縮装置を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
100・・・・真空、乾燥・濃縮システム
1・・・・・・真空、乾燥・濃縮装置
21・・・・・タンク外殻体
22・・・・・蓋体
3・・・・・・反射板
4・・・・・・マグネトロン
41・・・・・導波管
5・・・・・・空気供給パイプ
6・・・・・・制御部
61・・・・・液位計
62・・・・・温度計
63・・・・・濃度計
71・・・・・サイクロン
72・・・・・凝集器
73・・・・・貯水タンク
74・・・・・真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を収容する収容槽と、
該収容槽から供給された処理液を乾燥・濃縮処理する真空、乾燥・濃縮装置と、
該真空、乾燥・濃縮装置内を減圧する真空ポンプを備える真空、乾燥・濃縮システムであって、
前記真空、乾燥・濃縮装置は、一端有底筒状に形成されたタンク外殻体と、
該タンク外殻体上端開口部を気密に閉塞する蓋体と、
前記タンク外殻体に形成されるとともに前記収容槽から送られた処理液が流入する流入口と、
前記タンク外殻体底部に接続するとともに処理液が排出される排出口と、
前記タンク外殻体上部に配されるとともに前記真空ポンプに接続する排気口と、
前記タンク外殻体に接続する導波管と、
該導波管を介して前記タンク外殻体と接続する少なくとも1つのマグネトロンと、
前記真空、乾燥・濃縮装置内に配される反射板からなり、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置は、前記真空、乾燥・濃縮装置内の処理液の液面より下方に位置し、
該反射板は、前記導波管と前記タンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、前記真空、乾燥・濃縮装置内部の液中に広がる面を備えるとともに、複数の開口部が形成されることを特徴とする真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項2】
前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体底部若しくは底部近傍に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項3】
前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体外周面に接続し、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項4】
前記マグネトロンが複数であり、
該マグネトロンが前記タンク外殻体周方向に等間隔に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項5】
前記真空、乾燥・濃縮装置内部に空気供給パイプが挿入され、
該空気供給パイプから、前記タンク外殻体上方に向けて空気が供給可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項6】
前記蓋体上面に載置固定されるモータを更に備え、
前記反射板が前記蓋体上面に載置固定されるモータと接続し、前記真空、乾燥・濃縮装置内部で回転可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項7】
前記反射板の上面若しくは下面に凸部若しくは凹部が形成されることを特徴とする請求項6記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項8】
前記反射板が、高周波振動発生装置に接続し、
該高周波振動発生装置が前記反射板を振動させることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項9】
前記真空、乾燥・濃縮装置内部の処理液の液位を計測する液位計と、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置の上下動作を制御する制御部を更に備え、
前記液位計が、前記真空、乾燥・濃縮装置内部の処理液の液位の信号を前記制御部へ送信し、
該制御部は、前記液位計からの信号に基づき、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータに作動信号を送信し、該アクチュエータを作動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下動させ、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置が前記真空、乾燥・濃縮装置内部の処理液の液面よりも下方に位置することを特徴とする請求項3記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項10】
前記反射板を上下動させるアクチュエータを更に備え、
前記制御部が、前記液位計からの信号に基づき、前記アクチュエータを動作させ、
前記反射板が、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項9記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項11】
前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配されるサイクロンを更に備え、
該サイクロンが、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の不純物を除去することを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項12】
前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配される凝集器を更に備え、
該凝集器が、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の水分を除去することを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項13】
前記収容槽、前記真空、乾燥・濃縮装置及び前記真空ポンプが車載可能な基板上に配されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項14】
前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配されるサイクロンが更に、前記車載可能な基板上に配され、
前記サイクロンが、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の不純物を除去することを特徴とする請求項13記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項15】
前記真空ポンプと前記排気口の接続経路に配される凝集器が更に、前記車載可能な基板上に配され、
前記凝集器が、前記真空、乾燥・濃縮装置内から吸引された空気中の水分を除去することを特徴とする請求項13記載の真空、乾燥・濃縮システム。
【請求項16】
前記処理液が、液状食品、塩水、薬液からなる群から選択されるいずれかの液体であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−36471(P2009−36471A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202294(P2007−202294)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000165343)兼松エンジニアリング株式会社 (23)
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【Fターム(参考)】