説明

真空中の保護用ライナー

本発明の装置は、真空室内の面上に配置されたライナーを有する。この面は、真空室内の構成素子により規定されている。このライナーは、ワークピースを汚染から保護するか、又は原子又はイオンを面内に注入することにより生じる面のブリスタリング現象を阻止するように構成されている。ライナーは、ある実施例では、使い捨てしうるようにでき、真空室内の面から除去して、新たなライナーと交換するようにしうる。このライナーは、ある実施例では、粗面を有するポリマとするか、炭素を基とするか、又はカーボンナノチューブを以て構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナーに関するものであり、特にワークピース又はワークピース加工用具の面を保護するように構成したライナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、導電率を変更する不純物を例えば、半導体ウエハのようなワークピース中に導入する標準的な技術である。イオン注入又はその他のワークピース処理中、粒子が発生するおそれがある。例えば、イオン注入処理は、イオン注入装置又はプラズマ処理装置の内部に被着するおそれのある不所望な物質を発生させる。第1に、加速されたイオンが何らかの表面に衝突すると、この表面から物質がスパッタリングされる。スパッタリングされたこれらの物質が、ワークピースを含む周囲の表面上に堆積される。これらの物質がワークピースを汚染するおそれがある。第2に、イオン注入装置又はプラズマ処理装置中に存在するホトレジスト脱ガス粒子又はその他の粒子のような、イオン注入の副生成物も周囲の表面上に堆積され、薄膜を形成し、最終的には剥離するおそれがある。これにより、イオン注入装置又はプラズマ処理装置内に更なる粒子汚染を生ぜしめ、ワークピースを汚染させるおそれがある。第3に、水素、ヘリウム、窒素又は酸素のような原子又はイオンが表面に注入されてブリスタリング現象を生ぜしめるおそれがある。第4に、イオン注入装置又はプラズマ処理装置の内部には、これが例え真空状態にあっても、依然としてある粒子が含まれている。これらの粒子に、加速されたイオンが衝突してこれらの粒子がイオン化されるおそれがある。イオン化されたばかりの粒子は、イオン注入装置又はプラズマ処理装置内の表面に衝突してスパッタリングを生ぜしめ、従って、金属汚染を生ぜしめるおそれがある。これらの粒子が増加して堆積し且つ剥離して更なる汚染を生ぜしめるおそれがある。
【0003】
イオン注入装置又はプラズマ処理装置内のこのような不所望な物質は、内壁のスクレーピング処理や、部品又はユニット全体の清浄処理のような予防的なメインテナンスを要求するようになる。イオン注入装置を保護する従来の一方法は、シリコンが被覆されたアルミニウムインサートを用いる方法であった。これらのインサートのあるものはプラズマ溶射も行われている。これらのインサートは、可撓性ではなく、高価であり、清浄にするのが困難であり、イオン注入装置内の適所に配置するのが困難である。
【0004】
他の従来の方法では、可撓性ベローズを可撓性ライナーにより不所望な物質から保護している。これらの可撓性ベローズライナーは代表的に、高い温度抵抗を有する必要があり、これは室の壁部に適用しにくく、可撓性ベローズライナーの費用は高価である。
【0005】
更なる他の従来の方法では、温度制御インサートをイオン注入装置の壁部に装着している。この方法の場合、温度を制御する手段を必要とするとともに、ヒーターをインサートに接着する必要がある。この種類のインサートは高価であり、望ましいものではない。この場合、ワークピース又は他のワークピース操作素子に対する熱負荷をも高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、上述した欠点を解決するライナーが当該技術分野において必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、装置を提供する。この装置は、イオンを発生するように構成されたイオン発生装置と、真空室と、この真空室内で面を規定する構成素子と、ワークピースと、前記イオンによる処理のために前記ワークピースを支持するように構成されたプラテンとを具える。前記ワークピースを汚染から保護するために前記面上にはライナーが配置されている。このライナーは粗面を有するとともに、KAPTON(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ、ペルフルオロアルコキシエチレン、パリレン、VESPEL(登録商標)及びUPILEX(登録商標)より成る群から選択されている。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、装置を提供する。この装置は、イオンを発生するように構成されたイオン発生装置と、真空室と、この真空室内で面を規定する構成素子と、ワークピースと、前記イオンによる処理のために前記ワークピースを支持するように構成されたプラテンとを具える。前記面上にはライナーが配置されている。このライナーは、炭素より成り、前記面内へのイオンの注入による前記面のブリスタリング現象を阻止するように構成されている。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、方法を提供する。この方法は、イオンを発生させるように構成された装置内の面上にライナーを配置するステップを有する。前記イオンはワークピースに向けて指向させる。前記イオンにより粒子が発生され、これら粒子を前記ライナーに衝突させる。これら粒子を前記ライナー上に保持させるか、又はこれら粒子の注入による前記面のブリスタリング現象を阻止する。
【0010】
本発明をより一層良好に理解しうるようにするために、参考のために導入する添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ビームラインイオン注入装置を示すブロック線図である。
【図2】図2は、プラズマドーピングシステムを示すブロック線図である。
【図3】図3は、ライナーの一実施例を示す断面図である。
【図4】図4は、粒子が衝突している状態の図3のライナーを示す断面図である。
【図5】図5は、ライナーの他の実施例を示す断面図である。
【図6】図6は、真空室内のライナーを示す切断斜視図である。
【図7】図7は、ビームラインイオン注入装置におけるライナーを示すブロック線図である。
【図8】図8は、ワークピース保持装置上のライナーの実施例を示す断面図である。
【図9】図9は、プラズマドーピングシステムにおけるライナーを示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、ビームラインイオン注入装置及びプラズマドーピングシステムと関連させてライナーを説明する。しかし、これらのライナーは、半導体製造で必要とされる他のシステム及び処理や、プラズマ処理で必要とされる他のシステム及び処理や、加速イオンを用いる他のシステム及び処理に対して用いうるものである。従って、本発明は以下に説明する特定の実施例に限定されるものではない。
【0013】
図1を参照するに、この図1には、選択した材料を処理するためのイオンを生じうるビームラインイオン注入装置200のブロック線図を示す。当業者にとって明らかなように、このビームラインイオン注入装置200は、選択した材料にドーピングを行うためのイオンを生じうるビームラインイオン注入装置の多くの例の1つにすぎない。
【0014】
ビームラインイオン注入装置200は一般に、イオンビーム281を形成するイオンを発生するイオン源280を有している。このイオン源280には、イオン室283と、イオン化すべきガスを収容するガスボックスとを含めることができる。ガスはイオン室283に供給され、このイオン室283内でガスがイオン化される。このガスは、ある実施例では、As、B、P、H、O、He、カルボランC2 1012、他の高分子化合物又は他の希ガスとするか、或いはこれらを含むようにすることができる。このようにして形成されたイオンがイオン室283から取り出されてイオンビーム281が形成される。このイオンビーム281は、分解磁石282の磁極間に指向される。電源はイオン源280の抽出電極に接続されており、可調整電圧を生じる。
【0015】
イオンビーム281は、抑制電極284及び接地電極285を通って質量分析器286に至る。この質量分析器286は、分解磁石282と、分解開口289を有するマスキング電極288とを具える。分解磁石282はイオンビーム281のイオンを偏向させ、所望のイオン種のイオンが分解開口289を通過するようにする。不所望なイオン種は分解開口289を通過せずに、マスキング電極288により遮断される。
【0016】
所望のイオン種のイオンは、分解開口289を通過して角度補正磁石294に至る。この角度補正磁石294は、所望のイオン種のイオンを偏向させ、イオンビームを発散イオンビームから、ほぼ平行なイオン軌道を有する帯状イオンビーム212に変換させる。ある実施例では、ビームラインイオン注入装置200が更に、加速又は減速ユニットを有する。
【0017】
最終ステーション211は、帯状イオンビーム212の軌道内でワークピース(被加工片)138のような1つ以上のワークピースを支持し、所望のイオン種のイオンがワークピース138内に注入されるようにする。最終ステーション211は、ワークピース138を支持するプラテン295を有しうる。最終ステーション211は更に、ワークピース138を帯状イオンビーム212の横断面の長手方向に対し垂直な方向に移動させ、これによりワークピース138の全表面に亘ってイオンを分布させるようにするスキャナ(図示せず)を有するようにしうる。図1には帯状イオンビーム212を示してあるが、他の実施例では、スポットビームを生じるようにしうる。
【0018】
イオン注入装置には、当業者にとって既知の追加の素子を設けることができる。例えば、代表的に最終ステーション211には、ワークピースをビームラインイオン注入装置200内に導入するとともに、イオン注入後にワークピースを除去するワークピース自動取扱装置を設ける。更に、最終ステーション211には、ドーズ量測定システム、電子フラッドガン、又はその他の既知の素子を設けることもできる。又、当業者にとって明らかなように、イオンビームが通る軌道全体を、イオン注入中真空状態にする。ある実施例では、ビームラインイオン注入装置200に、高温又は冷イオン注入手段を設けることができる。
【0019】
図2を参照するに、プラズマドーピングシステム100は、密閉容積103を規定する処理室102を有する。この処理室102内には、ワークピース138を支持するプラテン134を配置しうる。このプラテン134は、DC又はRF電源を用いてバイアス状態としうる。プラテン134、ワークピース138又は処理室102を、温度調整システム(図示せず)により冷却又は加熱するようにしうる。ある場合には、ワークピース138を、ディスク状の半導体ウエハ、例えば、一実施例では直径が300mmのシリコンウエハとすることができる。しかし、ワークピース138はシリコンウエハに限定されるものではない。ワークピース138は例えば、フラットパネル、ソーラーパネル又はポリマ基板とすることもできる。ワークピース138は、静電気力又は機械力によりプラテン134の平坦面に緊締させることができる。一実施例では、プラテン134に、これをワークピース138に接続するための導電性のピン(図示せず)を設けることができる。プラズマドーピングシステム100は更に、プラズマ140を処理室102内に発生させるように構成したイオン源101を有する。このイオン源101は、RFイオン源又は当業者にとって既知の他のイオン源とすることができる。プラズマドーピングシステム100は更に、遮蔽リング、ファラデーセンサ又はその他の素子を有するようにしうる。ある実施例では、プラズマドーピングシステム100をクラスタツールの一部とするか、又は1つのプラズマドーピングシステム100内で複数のプラズマドーピング室を動作的に結合させるようにすることができる。従って、複数のプラズマドーピング室を真空中で結合させるようにしうる。
【0020】
イオン源101は、動作に際し、プラズマ140を処理室102内に発生させるように構成する。一実施例では、イオン源を、少なくとも1つのRFアンテナでRF電流を共振させて振動磁界を生じるRFイオン源とする。振動磁界は、RF電流を処理室102内に誘起する。処理室102内のRF電流は、ガスを励起させるとともにイオン化してプラズマ140を発生させる。プラテン134に、従って、ワークピース138に与えられるバイアスは、周期的なバイアスパルス中に、イオンをプラズマ140からワークピース138に向けて加速させる。パルス状のプラテン信号の周波数と、パルスのデューティサイクルとの双方又は何れか一方は、所望のドーズ量率が得られるように選択することができる。パルス状のプラテン信号の振幅は、所望のエネルギーが得られるように選択しうる。他の全てのパラメータを同じにすれば、エネルギーが大きくなればなる程、注入深さが深くなる。
【0021】
当業者は、半導体製造に用いられる他のシステム及び処理や、プラズマ処理に用いられる他のシステム及び処理や、ビームラインイオン注入装置200及びプラズマドーピングシステム100以外で、ここで開示する実施例を含みうるとともに加速イオンを用いる他のシステム及び処理を認識するであろう。これらの幾つかの例には、例えば、プラズマエッチングツール、CVDツール又はPVDツールがある。
【0022】
図3は、ライナーの一実施例を示す断面図である。このライナー300は、面305上に配置されており、処理済表面301を有している。ライナー300のトポグラフィー302を図3に拡大して示してある。ライナー300は硬質又は可撓性としうる。このライナー300は、完全には平坦でない表面上に適合するように成形されるように構成しうる。又、このライナー300は、可動部分上に配置されるように構成することもできる。ライナー300が曲がるように構成されている場合には、このライナー300を例えば、隅部に配置させることもできる。このような実施例では、ライナー300が特定の半径の曲面を有するようにしうる。
【0023】
ライナー300は多くの異なる材料から形成しうる。幾つかの特定の例には、例えば、(デュポン社製の)KAPTON(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトン(Victrex 社製のPEEK(登録商標))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシ又はペルフルオロアルコキシエチレン(PFA)、パリレン及び(宇部興産製の)UPILEX(登録商標)を含めることができる。ある実施例では、KAPTON(登録商標)に、式C22102 5 を有する分子を含めることができる。KAPTON(登録商標)及びUPILEX(登録商標)の双方は、ポリイミドとすることができる。多くの実施例では、ライナー300を、ワークピース138のようなワークピースを損傷させない材料から形成する。ある実施例では、例えば、ライナー300を、真空中での脱ガスを極めて少なくして、汚染の生成を無くすように構成する。従って、ライナー300を上述していない他のポリマとすることもできる。
【0024】
処理済表面301は、コロナ処理、プラズマエッチング、化学エッチング、ビードブラスティング、機械的処理、化学的処理、これらの任意の組み合わせ、又は他の粗面化処理により形成しうる。分子はしばしば平滑表面から剥離しうるものであり、従って、本例では粗面化が行われているこの処理済表面301は、表面積を増大させるか又は粒子の付着を増長させる。粗面化された表面は、粒子がライナー300を良好に把持しうるようにする。従って、粒子はライナー300から落下しえない。粗面化表面によりライナー300における粒子の把持力をこのように良好にすることにより、処理済表面301から何らかの粒子が剥離するのを低減させる。このライナー300は、水素、ヘリウム、窒素又は酸素のような原子又はイオンの注入による面305のブリスタリング現象を阻止することもできる。これに代え、これらの原子又はイオンをライナー300又は処理済表面301内に埋設させ、場合に応じて、メインテナンスに際しイオン注入装置又はプラズマ処理システムから排出させるか又はライナー300と一緒に除去しうるようにする。
【0025】
ある実施例では、ライナー300を、特定の温度許容度を有するように構成しうる。この温度許容度は、イオン注入装置又はプラズマ処理装置内でライナー300をどこに配置するかに依存させうる。しかし、他の実施例では、この温度許容度は、例えば、ライナー300がどこに配置されているかに関係ないようにしうる。すなわち、ライナー300がイオン注入装置又はプラズマ処理装置内の全動作温度範囲に対する温度許容度を有するようにする。
【0026】
ある実施例では、ライナー300を導電性とすることができる。このライナー300の導電性ポリマはこれに電荷が蓄積されるのを阻止するように構成する。ある実施例では、導電性ポリマに、その導電性を高めるためにドーピングを行うことができる。導電性ポリマの2つの例は、(Victrex 社製のPEEK(登録商標)のような)ポリエーテルエーテルケトン及び(デュポン社製の)VESPEL(登録商標)である。VESPEL(登録商標)はポリイミドとしうる。ある充填ポリマは、調合物に炭素又は金属を加えることにより導電性となる。充填ポリマに加える炭素又は金属の量は、ポリマを導電性とするように設定する。
【0027】
他の実施例では、ライナー300の処理済表面301を親水性として粒子の被着を推進させる。親水性の表面は、粒子又は堆積物を処理済表面上に保持するのを支援しうる。特定の一実施例では、親水性の表面を、例えば、上述したようなポリマのライナー上に形成する。2つの特定の実施例では、ライナー300の全体を親水性材料から構成するか、又はライナー300の全体を親水性となるように処理する。
【0028】
他の実施例では、ライナー300を充填ポリマとする。この充填ポリマには、電荷の蓄積を阻止する繊維、微粒子又はナノ粒子を含めることができる。これらの繊維、微粒子又はナノ粒子は、例えば、炭素又は金属としうる。ライナー300を充填ポリマとすると、これを、アーク放電を阻止するか又はイオンビームのブローアップを減少させるように絶縁体とならないように構成しうる。
【0029】
更に他の実施例では、ライナー300にナノチューブを含める。これは充填ポリマの特定の一実施例としうる。ナノチューブは、ライナー300の強度を高める円柱状の炭素分子とするか、多層カーボンナノチューブ(MWNT又はMWCNT)又は単層カーボンナノチューブ(SWNT又はSWCNT)とすることができる。従って、これらのナノチューブは、ライナーを硬化させるように、すなわち、損傷に耐えるように構成することができる。ナノチューブも導電性にして電荷の蓄積を阻止するか又は熱を伝達するように構成しうる。
【0030】
図4は、粒子が衝突している状態の図3のライナーの実施例を示す断面図である。ライナー300は面305上に配置されており、このライナーに粒子303が衝突している。これらの粒子303がライナー300上に保持されて薄膜304が形成される。粒子303は、種々の粒子源から生じうる。粒子303は、例えば、グラファイト、ワークピースから生じるシリコン、スパッタリングした物質又はホトレジストのような埋め込み副生成物とすることができる。又、粒子303は、ライナー300を囲む真空中に存在する他の粒子又は化合物とすることもできる。粒子303はイオンとすることもできる。
【0031】
図5は、ライナーの他の実施例を示す断面図である。本例は図3の実施例に代わるものとしうる。本例では、ライナー300が炭素(カーボン)のナノチューブ306より成っている。このライナー300は面305上に配置されており、図5に拡大して示してあるように炭素のナノチューブ306を有している。炭素のこれらのナノチューブ306は、多層カーボンナノチューブ(MWNT又はMWCNT)又は単層カーボンナノチューブ(SWNT又はSWCNT)とすることができる。炭素のこれらのナノチューブ306は、“ナノシート”で形成しうる。ライナー300は、一実施例では、フェルト状の材料のカーボンナノチューブで構成する。他の実施例では、ライナー300をカーボンナノワイヤー又は他のナノ寸法の物体で構成する。他の実施例では、ライナー300を他の層上に装着し、次いでこの他の層を面305上に配置する。
【0032】
図5の例のライナー300は、プラズマ処理装置の一部に対する遮蔽体として機能する。このライナー300は、水素、ヘリウム、窒素又は酸素のような原子又はイオンの注入による面305のブリスタリング現象を阻止することができる。これらの原子又はイオンが面305の表面下に注入されると、小さな気泡が形成されるおそれがある。これにより面305のブリスタリング現象を生ぜしめる。これに代え、これらの原子又はイオンをライナー300内に埋設させ、場合に応じて、メインテナンスに際しイオン注入装置又はプラズマ処理システムから排出させるか又はライナー300と一緒に除去しうるようにする。本例のライナー300は粒子の被着を助長させることもできる。
【0033】
他の実施例では、ライナー300を、炭素を基とする材料から構成する。この特定の実施例におけるライナー300は多孔性にでき、シート又はブロックの形態の布、フェルト又は発泡体としうる。本例のライナー300は処理済表面を有するようにしうる。この炭素を基とする材料の幾つかの特定例は、炭素織材料、炭素布、炭素‐炭素結合材料、炭素発泡体、炭素繊維又は炭素フェルトである。ある実施例では、炭素繊維又は炭素フェルトにSiCを被覆させることができる。更に他の実施例では、炭素を基とする材料をグラファイトとする。この実施例におけるライナー300でも、水素、ヘリウム、窒素又は酸素のような原子又はイオンの注入による面305のブリスタリング現象を阻止することができる。これに代え、これらの原子又はイオンをライナー300内に流入させ、場合に応じて、メインテナンスに際しイオン注入装置又はプラズマ処理システムから排出させるか又はライナー300と一緒に除去しうるようにする。ライナー300の表面積を増大させて粒子の被着を助長させることができる。粒子の被着を助長させるこの表面積の増大により更に、如何なる粒子も処理済表面301から剥離するのを低減させる。
【0034】
状況に応じ又は予防的なメインテナンスに際し、ライナー300を面305から除去することができる。この状況は、経過時間、イオン種の交換、ライナー300の状態としうる。特定の一実施例では、ライナー300を面305から除去した際に、このライナー300を巻き取り、この除去又は予防的なメインテナンスに際しイオン注入装置を汚染する粒子の量が低減されるようにこのライナー300を構成する。
【0035】
他の実施例では、ライナー300を面上に配置されたままにする。予防的なメインテナンスに際し、ライナー300を清浄処理して薄膜304を除去する。この処理は、例えば、クリーニングワイプス、薬品又はスクレーピングにより行うことができる。
【0036】
ある実施例では、ライナー300のようなライナーを、予防的なメインテナンスに際し面305から除去して清浄処理を行うように構成する。この処理は、例えば、クリーニングワイプス、薬品又はスクレーピングにより行うことができる。この清浄処理後に、このライナーを面305に再び取り付けることができる。
【0037】
他の実施例では、ライナー300のようなライナーを、使い捨てしうるように構成する。従って、ライナー300が一旦面305から除去されると、これを処分して新たなライナーと交換する。これらの実施例の何れにおいても、ライナーは迅速に除去しうるとともに容易に処理しうるように設計しうる。
【0038】
図6は、真空室内のライナーを示すように部分的に切断した状態の斜視図である。この図は、壁面400及び床面401を有する真空室405の三次元図である。ライナー402、403及び404は、例えば、真空室405の壁面400及び床面401のような面上に配置されている。図6に示すように、ライナー402は真空室405の隅部に接し、ライナー403はこの隅部にまたがるように広げるようにすることができる。ライナーは真空室405内の他の面上に配置するか、又は当業者にとって既知のように図6に示すのとは異なる形状又は寸法にすることができる。図6は、ライナー402、403及び404の可能な配置の一例を示しているにすぎない。ライナーの他の可能な幾つかの配置例を図7〜9に示す。他の実施例では、ライナーを当業者にとって既知の他のプラズマ処理装置内の面上に、例えば、壁面上に又はワークピース保持手段を囲むように配置する。
【0039】
ある実施例では、ねじを用いてライナー402、403及び404を壁面400及び床面401上に取り付ける。他の実施例では、ピンを用いてライナー402、403及び404を壁面400及び床面401上に配置する。ある実施例では、これらのピンをナイロンとしうる。更に他の実施例では、クリップ、脱ガス性の低い耐真空性の接着剤、両面粘着テープ、重力又は当業者にとって既知の他の固定方法を用いて、ライナー402、403及び404を壁面400及び床面401上に配置する。
【0040】
図7は、ビームラインイオン注入装置におけるライナーを示すブロック線図である。この場合、ライナー300のようなライナーが、ビームラインイオン注入装置500内に配置されている。ビームラインイオン注入装置500は図1のビームラインイオン注入装置200に一致させることができる。ある実施例では、ライナー503が分解ハウジング501内の面上に配置されている。他の実施例では、ライナー504が注入室502内の面上に配置されている。注入室502は、最終ステーション211に対応させるか又はこの最終ステーション211内に配置することができる。
【0041】
図8は、ワークピース保持装置上のライナーの実施例を示す断面図である。ワークピース保持装置600は、プラテン支持部601を用いてプラテン295を支持している。プラテン295は、ワークピース138を保持するように構成されている。この特定の実施例では、プラテン295は矢印603で示すように傾けられるように構成されているが、このプラテン295は他の方向に傾けるようにしうる。この特定の実施例では、プラテン支持部601も軸線602を中心に回転するように構成されている。ワークピース保持装置600の面上には、ライナー610、611、612、613、614、615、616及び617の1つ又は全てを設けることができる。当業者にとって明らかなように、他の個所でライナーをワークピース保持装置600又はプラテン295の面上に配置でき、ライナーは図8に示す位置又は寸法のみに限定されるものではない。ある実施例では、ワークピース保持装置600又はプラテン295上に配置されたライナーを特に、イオン注入中にワークピース138からスパッタリングされたシリコンを収集するように構成しうる。
【0042】
ライナー611及び614のような幾つかのライナーは、互いに異なる平面に配置されるように構成しうる。1つ以上のライナーを隅部内又は隅部上に適合させるか、或いは互いに異なる平面上に角度を付して適合させることができる。ライナー612のようなあるライナーは、屈曲するように構成するか、又は可動部分上に配置することができる。例えば、矢印603で示すようにプラテン295が傾斜させると、ライナー612が屈曲して、プラテン支持部601の可動部分上でこのプラテン支持部601の表面上に配置されたままに維持される。本例では、如何なる屈曲にも順応するように、ライナーが追加の材料を有するようにしうる。このようにすることにより、プラテン支持部601の内側部、可動部又は内面を如何なる粒子からも保護するようにすることができる。
【0043】
図9は、プラズマドーピングシステム中のライナーを示すブロック線図である。プラズマドーピングシステム100中の処理室102の面上にライナー900及び901が配置されている。これらのライナー900及び901の配置位置は図9に示すのに限定されず、これらのライナーをプラズマドーピングシステム100内で当業者にとって既知の如何なる個所にも、例えば、プラテン134上又はその周囲に配置しうること勿論である。
【0044】
本発明の範囲は、上述した実施例に限定されるものではない。当業者にとっては、上述した実施例に加えて、本発明の他の種々の実施例や変形例が、上述した説明及び添付図面から明らかとなるであろう。従って、このような他の実施例や変形例も本発明の範囲内に入るものである。更に、特定な目的に対し特定な環境で特定な実施状況で本発明を前述したが、当業者にとって明らかなように、本発明の有効性はこれらに限定されるものではなく、種々の如何なる目的に対する種々の如何なる環境に対しても本発明を有効に実施しうるものである。従って、本発明の特許請求の範囲は、上述した本発明の開示の全範囲及び精神を考慮して解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを発生するように構成されたイオン発生装置と、
真空室と、
この真空室内で面を規定する構成素子と、
ワークピースと、
前記イオンによる処理のために前記ワークピースを支持するように構成されたプラテンと、
前記ワークピースを汚染から保護するために前記面上に配置されたライナーと
を具える装置であって、前記ライナーが粗面を有し、このライナーは、KAPTON、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ、ペルフルオロアルコキシエチレン、パリレン、VESPEL及びUPILEXより成る群から選択されている装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記ライナーの前記粗面は、コロナ処理、プラズマエッチング、化学エッチング、ビードブラスティング、機械的処理及び化学的処理の少なくとも1つにより形成されている装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記ライナーは親水性とした装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、この装置が更に、質量分析器と分解開口とを具えており、前記真空室が前記分解開口を有し、前記面は前記真空室の表面とした装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、この装置が質量分析器と分解開口とを具えており、前記真空室が、前記プラテンを収容している注入室であり、前記面をこの注入室の表面とした装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記面を、前記プラテンにより規定された表面とした装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記プラテンはワークピース保持装置上に配置され、前記面はこのワークピース保持装置により規定されている表面とした装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記イオン発生装置は、前記イオンをイオンビームとして発生させるように構成したイオン源とした装置。
【請求項9】
イオンを発生するように構成されたイオン発生装置と、
真空室と、
この真空室内で面を規定する構成素子と、
ワークピースと、
前記イオンによる処理のために前記ワークピースを支持するように構成されたプラテンと、
前記面上に配置された炭素より成るライナーであって、前記面内へのイオンの注入による前記面のブリスタリング現象を阻止する当該ライナーと
を具える装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、前記ライナーがカーボンナノチューブより成っている装置。
【請求項11】
請求項9に記載の装置において、この装置が更に、質量分析器と分解開口とを具えており、前記真空室が前記分解開口を有し、前記面をこの真空室の表面とした装置。
【請求項12】
請求項9に記載の装置において、この装置が質量分析器と分解開口とを具えており、前記真空室が、前記プラテンを収容している注入室であり、前記面をこの注入室の表面とした装置。
【請求項13】
請求項9に記載の装置において、前記面を、前記プラテンにより規定された表面とした装置。
【請求項14】
請求項9に記載の装置において、前記プラテンはワークピース保持装置上に配置され、前記面はこのワークピース保持装置により規定されている表面とした装置。
【請求項15】
請求項9に記載の装置において、前記イオン発生装置は、前記イオンをイオンビームとして発生させるように構成したイオン源とした装置。
【請求項16】
イオンを発生させるように構成された装置内の面上にライナーを配置するステップと、
前記イオンをワークピースに向けて指向させるステップと、
前記イオンにより粒子を発生させるステップと、
これら粒子を前記ライナーに衝突させるステップと、
これら粒子を前記ライナー上に保持させるのと、これら粒子の注入による前記面のブリスタリング現象を阻止するのとの少なくとも一方を実行するステップと
を具える方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記ライナーは粗面を有するようにし、このライナーは、KAPTON、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ、ペルフルオロアルコキシエチレン、パリレン、VESPEL及びUPILEXより成る群から選択する方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、前記ライナーはカーボンナノチューブを以て構成する方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法において、前記ライナーは炭素から構成する方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法において、この方法は更に、状況に応じ前記ライナーを除去し、前記面上に他のライナーを配置するステップを有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−512027(P2011−512027A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543266(P2010−543266)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031192
【国際公開番号】WO2009/091943
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】