説明

真空処理装置

【課題】磁界によって感度が変化する真空計の測定子を、磁界中の最適位置に配するように構成された真空処理装置を提供する。
【解決手段】真空処理装置100は、真空ポンプ36により内部が減圧された真空処理室30と、真空処理室30内に磁界を形成する一対の磁界形成手段32、33と、真空処理室30内の圧力を測定できる真空計50と、を備え、真空計50の測定子は、磁界形成手段の対32、33の一方による磁界の強度が、磁界形成手段の対32、33の他方による磁界の強度によって相殺される取り付け空間に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空処理装置に関する。特に、本発明は、真空処理装置に用いられる真空計の好適な取り付け位置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中の荷電粒子(例えば、Arイオン)がターゲットに衝突すると、ターゲットの原子が飛び出して、ターゲットに対置された基板に、この原子を付着できる。このようなスパッタリング技術は、従来から良く知られており、半導体素子やLCD等の製造プロセスに使用される基盤技術になっている。
【0003】
一方、強力な反発磁界の作用により、円柱状のプラズマ流を大面積のシート状のプラズマ流(以下、「シートプラズマ」という)に形成できる技術がある(特許文献1参照)。例えば、このシートプラズマをターゲットや基板が配された真空成膜室に導くと、シートプラズマ中のArイオンを用いてスパッタリング技術による大面積の成膜が行えるとされている(特許文献2参照)。
【0004】
このようなスパッタリング装置において、真空成膜室の真空度は、スパッタリング性能をモニターするうえで重要なパラメータである。よって、真空計が、スパッタリング装置の適所に標準配置されている。例えば、高真空から超高真空に亘るワイドレンジの圧力を正確に測定でき、定量性に優れる熱陰極型の電離真空計を用いることが従来から多い(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−23400号公報
【特許文献2】特開2005−179767号公報
【特許文献3】特開2006−343304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱陰極型の電離真空計をシートプラズマ方式の装置に配設すると、磁界の向きによって電離真空計の測定子の感度が大きく変動して、正確な真空度測定を行えない場合がある。
【0007】
詳しくは、シートプラズマ方式の真空処理室の両側には、中心軸が共通する一対の電磁コイルが所望の間隙で対置されており、これにより、大面積のシートプラズマの面内の拡がりが適切に整えられている。
【0008】
このため、本件発明者等は、電離真空計の測定子の感度に相関する気体分子の電離で生じたイオンの電流が、電磁コイルの対が作る磁界の変化によって影響されると考えている。よって、この場合、電離真空計の測定の信頼性を担保できない。
【0009】
なお、電離真空計の測定原理に基づいた電離真空計の測定子の感度と磁界との間の関係の詳細は、後述する。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、磁界によって感度が変化する真空計の測定子を、磁界中の最適位置に配するように構成された真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、真空計(例えば、電離真空計)の測定子の感度と磁界との関係を基にして案出できたものであり、この真空計の測定子が、以下に述べる取り付け空間に配置されていることを特徴とする。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、真空ポンプにより内部が減圧された真空処理室と、
前記真空処理室内に磁界を形成する一対の第1磁界形成手段と、
前記真空処理室内の圧力を測定できる真空計と、
を備え、
前記真空計の測定子は、前記第1磁界形成手段の対の一方による磁界の強度が、前記第1磁界形成手段の対の他方による磁界の強度によって相殺される取り付け空間に配されている真空処理装置を提供する。
【0013】
以上の構成により、第1磁界形成手段の対による取り付け空間での磁界の強度が互いに相殺されて弱まるので、磁界によって感度が変化する真空計の測定子を、このような取り付け空間に配することにより、当該真空計は、磁界の影響に曝され難くなり、真空計の測定の信頼性を担保できる。
【0014】
本発明の真空処理装置に用いる前記真空計の一例は、電離真空計である。
【0015】
電離真空計の測定子は、磁界によって感度が変化し易いので、電離真空計を用いて真空成膜室の真空度を測定する場合に、本発明を適用すると有益である。
【0016】
また、前記電離真空計の測定子は、熱電子を放出するフィラメントと、前記熱電子の衝突によって電離された前記真空処理室内の気体分子のイオンを捕集するコレクタと、を備える熱陰極型に構成されていることが好ましい。
【0017】
このような熱陰極型の電離真空計は、高真空から超高真空に亘るワイドレンジの圧力を正確に測定でき、定量性に優れているが、コレクタに流れ込んだイオン電流が、磁界の有無によって変動するという不都合がある。
【0018】
よって、このような熱陰極型の電離真空計を、真空処理装置に組み込む場合に、以上に述べた電離真空計の配置の構成を取ることが特に有益である。
【0019】
また、本発明の真空処理装置では、前記第1磁界形成手段の対として、前記真空処理室を挟み、互いの中心軸を共通にして対置された同一構造の電磁コイルの対を用いており、前記電磁コイルのそれぞれに、同じ量のコイル電流を同じ向きに流す場合においては、前記取り付け空間は、前記電磁コイル間の前記中心軸上の中点を含み前記電磁コイルのコイル面に平行な平面上に位置していると解される。
【0020】
また、本発明の真空処理装置では、前記第1磁界形成手段の対として、前記真空処理室を挟み、互いの中心軸を共通にして対置された同一構造の電磁コイルの対を用いており、前記電磁コイルのそれぞれに、異なる量のコイル電流を同じ向きに流す場合においては、前記取り付け空間は、前記コイル電流が大きい前記電磁コイルよりも、前記コイル電流が小さい前記電磁コイル側に位置していると解される。
【0021】
なお、以上のような取り付け空間の具体的な位置は、後述の静磁場シミュレーション技術を用いて容易かつ適切に特定できる。
【0022】
また、本発明の真空処理装置では、プラズマ流を形成できるプラズマガンと、前記プラズマ流を反発磁界によってシート状に変形できる第2磁界形成手段の対と、前記シート状のプラズマ流を回収するアノードと、を備えてもよく、前記シート状のプラズマ流が、前記電磁コイルの対の空芯部を通過して前記真空処理室から前記アノードに向かい、前記シート状のプラズマ流の広がり方向の拡散が、前記電磁コイルの対の磁界により整えられてもよい。
【0023】
このように、シートプラズマ方式の真空処理装置では、磁界の発生源が多く用いられているので、この真空処理装置に真空計を組み込む場合に、以上に述べた真空計の配置の構成を取ることが特に有益である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、磁界によって感度が変化する真空計の測定子を、磁界中の最適位置に配するように構成された真空処理装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態によるシートプラズマ方式のスパッタリング装置(真空処理装置)の一構成例を示した概略図である。
【図2】電離真空計の構成の説明に用いる図である。(a)では、電離真空計の構成が、三極真空管に擬して描かれており、図中の円内が電離真空計の測定子の部分に相当する。また、(b)では、測定子の空間電位が模式的に図示されている。
【図3】本発明の実施形態のスパッタリング装置に用いる電離真空計の測定子の取り付け空間の一例を模式的に示した図である。(a)は、シートプラズマを側面視した場合の模式図であり、(b)は、シートプラズマを平面視した場合の模式図である。
【図4】第2および第3電磁コイルの対のそれぞれに、同じ量のコイル電流を同じ向きに流した場合の、静磁界シミュレーション結果の一例を示した図である。
【図5】本発明の変形例1のスパッタリング装置に用いる電離真空計の測定子の取り付け空間の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態によるシートプラズマ方式のスパッタリング装置(真空処理装置)の一構成例を示した概略図である。
【0028】
なお、ここでは、便宜上、図1(後述の図3、図4および図5でも同じ)に示す如く、プラズマ輸送の方向をZ方向にとり、このZ方向に直交し、かつ棒磁石24A、24B(後述)の磁化方向をY方向にとり、これらのZ方向およびY方向の両方に直交する方向をX方向にとって、本スパッタリング装置100の構成を述べる。
【0029】
本実施形態のスパッタリング装置100(真空処理装置)は、図1に示す如く、カソードC(後述)およびアノードA(後述)間の放電により、放電プラズマ流(荷電粒子流)を高密度に形成するプラズマガン40(荷電粒子流形成器)と、このプラズマガン40に放電発生用の電力を供給できるプラズマガン電源(図示せず)とを備える。
【0030】
上述のプラズマガン40は、図1に示すように、カソードユニット41と、一対の中間電極G1、G2とを備える。
【0031】
そして、カソードユニット41は、耐熱ガラス製の円筒状のガラス管41Aと、円板状の蓋部材41Bとを備えており、カソードユニット41の内部は、放電空間として機能している。このガラス管41Aは、適宜の固定手段(締結ボルトなど;図示せず)により、中間電極G1および蓋部材41Bとの間で気密に配されている。このため、中間電極G1の通孔(図示せず)を介して、放電空間で生成されたプラズマをカソードユニット41から外部に引き出すことができる。
【0032】
また、蓋部材41Bには、放電誘発用の熱電子放出が可能な六ホウ化ランタン(LaB6)製のカソードCが配置されている。また、蓋部材41Bには、放電電離用の放電ガス(例えば、アルゴンガス)を供給する手段(図示せず)が設けられている。
【0033】
上述のプラズマガン電源は、プラズマガン40に電力を供給できる電力発生部(図示せず)と、各中間電極G1、G2のそれぞれに対応して配され、中間電極G1、G2を流れる電流を制限する抵抗素子(図示せず)と、を備える。
【0034】
なお、ここでは、プラズマガン40の電源系の回路図の図示を省略しているが、中間電極G1および中間電極G2はそれぞれ、プラズマガン40の放電空間においてカソードCとの間で補助放電(グロー放電)を適切に維持できるよう、中間電極G1および中間電極G2のそれぞれに対応する抵抗素子を介して電力発生部と接続されている。
【0035】
このグロー放電においては、プラズマガン40の放電空間への荷電粒子(ここではAr+と電子)の供給が、Ar+のカソードCへの衝突時に起こる二次電子放出および電子によるアルゴン電離によりなされ、これにより、プラズマガン40の放電空間には、荷電粒子の集合体としての放電プラズマが形成される。その後、プラズマガン40では、カソードCの加熱で起こる熱電子放出に基づいた主放電(アーク放電)に遷移する。このように、プラズマガン40は、プラズマガン電源(図示せず)に基づく低電圧かつ大電流のアーク放電により、カソードCとアノードAとの間に高密度の放電を可能にする、圧力勾配型ガンである。
【0036】
以上のようにして、Z方向の輸送中心に対して略等密度分布の円柱状のアーク放電プラズマ流(以下、「円柱プラズマ22」という)がシートプラズマ変形室20へ引き出される。
【0037】
次に、スパッタリング装置100のシートプラズマ変形室20の構成およびその周辺構成について述べる。
【0038】
シートプラズマ変形室20(シートプラズマ輸送室)は、図1に示すように、減圧可能なシートプラズマ輸送用の空間21(以下、「シートプラズマ輸送空間21」という)を有している。
【0039】
このようなシートプラズマ変形室20の周囲には、このシートプラズマ変形室20を取り囲み、円柱プラズマ22のZ方向の推進力を発揮する第1電磁コイル23(円形の空心コイル)が配設されている。
【0040】
なお、第1電磁コイル23の巻線には、カソードC側をS極、アノードA側をN極とする向きのコイル電流が通電されている。
【0041】
また、この第1電磁コイル23のZ方向の前方側(アノードAに近い側)には、X方向が軸方向である一対の角形の棒磁石24A、24B(永久磁石;磁界形成手段の対)が、シートプラズマ変形室20(シートプラズマ輸送空間21)を挟むように、Y方向に所定の間隔を隔てて配設されている。ここでは、これらの棒磁石24A、24BのN極同士(同極同士)が対置している。
【0042】
第1電磁コイル23によりシートプラズマ輸送空間21に形成されるコイル磁界と、棒磁石24A、24Bによりシートプラズマ輸送空間21に形成される磁石磁界との相互作用に基づいて、円柱プラズマ22は、その輸送方向(Z方向)の輸送中心を含むXZ平面(以下、「主面S」という)に沿って拡がる、均一なシート状のプラズマ流(以下、「シートプラズマ27」という)に変形される。
【0043】
なお、以上の磁界によるシートプラズマ27の形成法はすでに公知である。よって、この詳細な説明は、ここでは省略する。
【0044】
このようにして、シートプラズマ27は、図1に示す如く、シートプラズマ変形室20と真空成膜室30(真空処理室)との間に形成されるスリット状の通路28を介して真空成膜室30へ引き出される。
【0045】
次に、スパッタリング装置100の真空成膜室30の構成について述べる。
【0046】
真空成膜室30は、シートプラズマ27中のAr+(アルゴン正イオン)の衝突エネルギーによりターゲット35Bの材料(例えば銅)をスパッタ粒子として放出する、導電性(例えば、アルミ合金やステンレスなどの金属製)の成膜チャンバに相当する。この真空成膜室30は、図1に示すように、接地されており、円柱状の成膜空間31を有する。また、この成膜空間31は、バルブ37により開閉可能な排気口からターボポンプなどの真空ポンプ36により真空排気される。これにより、この成膜空間31はスパッタリングプロセス可能なレベルの真空度にまで速やかに減圧される。
【0047】
ここで、本実施形態では、図1に示すように、真空成膜室30内の真空度をワイドレンジに測定可能な電離真空計50(例えば、熱陰極型の電離真空計)の測定子50Aが、真空成膜室30の上壁に配設されている。なお、この電離真空計50の測定子50Aの構成および配設位置については後述する。
【0048】
また、本実施形態では、ターゲット35Bは、図1に示すように、直流のバイアス電源52により適宜の電力(例えば、−1000V程度の負電圧)が印加されている。
【0049】
このような電圧の印加により、シートプラズマ27中のAr+がターゲット35Bに向かって引き付けられ、Ar+がターゲット35Bに衝突する。すると、この衝突エネルギーにより、ターゲット35Bからスパッタ粒子が基板34Bに向かって放出される。
【0050】
また、基板34Bは、図1に示すように、高周波のバイアス電源51により適宜の電力(例えば、RF高周波電力)が印加されている。
【0051】
これにより、シートプラズマ27を横切る際にシートプラズマ27の作用により電離されたスパッタ粒子(例えばCu+)を、上述のRF高周波電力のセルフバイアスによって基板34Bに適切に引き込むことができる。
【0052】
次に、真空成膜室30の周辺の構成を説明する。
【0053】
真空成膜室30のプラズマガン40と反対側の側方には、アノードAが配置され、真空成膜室30とアノードAとの間には、シートプラズマ27の通路29が設けられている。
【0054】
アノードAは、プラズマガン40のカソードユニット41に対して所定の基準電位が与えられる。これにより、アノードAは、カソードCおよびアノードAの間のアーク放電に基づくシートプラズマ27中の荷電粒子(特に電子)を回収する役割を有している。
【0055】
また、アノードAの裏面(カソードCに対する対向面の反対側の面)には、アノードA側をS極、その反対側をN極とした永久磁石38が配されている。
【0056】
この永久磁石38のN極から出てS極に入る主面Sに沿った磁力線により、アノードAに向かうシートプラズマ27の幅方向(プラズマの拡がり方向)の拡散を抑えるようにシートプラズマ27が幅方向に収束される。その結果、シートプラズマ27の荷電粒子が、アノードAに適切に回収される。
【0057】
また、図1に示すように、第2電磁コイル32および第3電磁コイル33(いずれも円形の空芯コイル)が、互いの中心軸200(図3参照)を共通にして対をなして設けられている。そして、第2電磁コイル32および第3電磁コイル33は、真空成膜室30の成膜空間31を挟み、異磁極同士(例えば、第2電磁コイル32はN極、第3電磁コイル33はS極)を向かい合わせて対置されている。
【0058】
なお、本実施形態では、第2および第3電磁コイル32、33が作るコイル磁界の相殺現象に基づいて上述の電離真空計50の測定子50Aの取り付け空間が決定されているが、その詳細は後述する。
【0059】
以上の構成により、シートプラズマ27は、第2および第3電磁コイル32、33の空芯部を通過して真空成膜室30からアノードAに向かい、その間に、シートプラズマ27は、第2および第3電磁コイル32、33の対が作るコイル磁界(例えば10G〜300G程度)によって、プラズマの拡がり方向の拡散を適切に抑えるように整形されている。
【0060】
なお、以上に述べたシートプラズマ変形室20と真空成膜室30との間やシートプラズマ変形室20とプラズマガン40との間は、慣用の真空シール(Oリングなど)および締結手段(締結ボルトなど)を用いて気密に連結されているが、このような慣用手段の図示および説明は、ここでは省略する。
【0061】
次に、本発明の実施形態の特徴部である電離真空計50(特にその測定子50A)の構成について図面を参照しながら説明する。
【0062】
本実施形態では、電離真空計50の一例として、高真空から超高真空に亘るワイドレンジの圧力を正確に測定でき、定量性に優れる熱陰極型電離真空計を用いている。よって、ここでは、熱陰極型電離真空計(但し、単に「電離真空計」と略す場合がある)の構成を述べる。
【0063】
図2は、電離真空計の構成の説明に用いる図である。図2(a)では、電離真空計50の構成が、三極真空管に擬して描かれており、図中の円内が電離真空計50の測定子50Aの部分に相当する。図2(b)では、測定子50Aの空間電位が模式的に図示されている。
【0064】
まず、電離真空計50による真空度の測定の原理を概説する。なお、電離真空計50による真空度の測定原理自体は、公知である。
【0065】
よって、ここでは、「エネルギー理工学設計演習・実験2」別冊と題されたインターネット<URL http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/PEOPLE/IKUJI/edu/vac/chap3/ig.html>の資料(高木郁二著)を参考にして、当該測定原理を説明する。
【0066】
図2(a)に示すように、フィラメントFが通電されて、フィラメントFが高温に加熱されると、熱電子がフィラメントFから放出する。すると、熱電子は、正電圧V1(図2(b)参照)が印加されたグリッドGに向かって加速される。グリッドGは、細い金属が網目状に形成されており、グリットGの金属部分の面積が小さいので、熱電子の大部分は、グリッドGに捕集されずに通り抜ける。しかし、グリッドGと対置されたコレクタCOには、負電圧V2が印加されており(図2(b)参照)、熱電子は、クーロン斥力により、コレクタCOに到達できず、図2(a)に示すように、コレクタCOの手前でUターンする。このように、熱電子はフィラメントFとコレクタCOとの間を往復運動し、最終的には、グリッドGに捕集される。
【0067】
フィラメントFとコレクタCOとの間の空間に気体分子が存在すると、往復運動している熱電子が気体分子に衝突し、これにより、気体分子がイオンと熱電子とに電離する場合がある。この電離現象によって生じた熱電子は、フィラメントFから放出された熱電子と同様に往復運動し、最終的にはグリッドGに捕集される。一方、フィラメントFとグリッドGとの間の空間において、電離現象によって生じたイオンは、フィラメントFに捕集される。また、図2(a)に示すように、グリッドGとコレクタCOとの間の空間において、電離現象によって生じたイオンはコレクタCOに捕集される。この場合、コレクタCOへの捕集効率をa、熱電子と気体分子との間の電離断面積をσ、気体分子の密度をn、フィラメントFから放出される熱電子の電流をIe、熱電子がグリッドGに捕集されるまでに空間を飛行する平均距離を L とすると、コレクタCOに流れる電流(イオン電流)Iion は、下記式(1)で表される。

Iion = Ie×n×σ×L×a ・・・ (1)

式(1)において、平均距離L、捕集効率a、電離断面積σは定数である。また、熱電子の電流Ieを一定に制御すると、式(1)により、イオン電流Iionは、気体分子の密度nに比例する。理想気体を考えると、p=n×k×T(P:気体圧力、k:ボルツマン定数、T:気体の絶対温度)なので、結局、Iionは、圧力P(真空度)に比例し、イオン電流Iionを測定ことにより、気体分子の圧力P(真空度)を知ることができる。具体的には、下記式(2)により、両者の関係が表される。

Iion=W×Ie×P ・・・(2)

なお、ここで、比例定数Wが、電離真空計50の測定子50Aの感度(電離真空計係数)と呼ばれ、圧力の逆数の次元を持っている。
【0068】
ここで、本件発明者等は、このような電離真空計50の測定子50Aの感度が、磁界中において変動する場合があると考えている。つまり、電離真空計50の近傍に磁界が形成されると、コレクタCOに流れ込むイオン電流Iionの変化が起こり、ひいては、電離真空計50の測定子50Aの感度を一定に保てず、電離真空計50の測定値の信頼性が損なわれると考えている。
【0069】
例えば、図2(a)に示すように、イオンのドリフト方向と垂直に磁界Hが存在する場合、この磁界Hのローレンツ力によって、イオンのドリフトが、この磁界Hの方向に曲げられ、これにより、イオンの一部をコレクタCOに捕集できなくなる。よって、コレクタCOに流れ込んだイオン電流Iionが、磁界Hの有無によって変動する。
【0070】
そこで、本実施形態では、以上の知見を基にして、スパッタリング装置100に用いる電離真空計50の測定の信頼性を担保できる構成が案出されており、具体的には、この電離真空計50の測定子50Aが、以下に述べる取り付け空間301(図3参照)に配置されていることを特徴とする。
【0071】
図3は、本発明の実施形態のスパッタリング装置に用いる電離真空計の測定子の取り付け空間の一例を模式的に示した図である。
【0072】
図3(a)は、シートプラズマを側面視した場合の模式図であり、図3(b)は、シートプラズマを平面視した場合の模式図である。
【0073】
また、図3では、シートプラズマ27の側面視および平面視において、中心軸200を共通にして対置された同一構造の第2および第3電磁コイル32、33の対のそれぞれに、同じ量のコイル電流を同じ向きに流した場合の、第2電磁コイル32によるコイル磁界の磁力線32B、および、第3電磁コイル33によるコイル磁界の磁力線33Bが描かれている。ここでは、円形の第2および第3電磁コイル32、33をZ方向から見た場合、第2および第3電磁コイル32、33のそれぞれに、時計周りとなる同じ向きのコイル電流が流れており、これにより、第2電磁コイル32のN極と、第3電磁コイルのS極と、が互いに対向する形態の磁力線32B、33Bが示されている。
【0074】
図3に示すように、磁力線32B、33Bによって、中心軸200上に磁界HAが形成されている。これにより、真空成膜室30(図1参照)内のシートプラズマ27の広がり方向の拡散が整えられている。
【0075】
また、本実施形態では、第2電磁コイル32によるコイル磁界と、第3電磁コイル33によるコイル磁界と、が互いに相殺される環状の取り付け空間301が、第2および第3電磁コイル32、33が作る磁界中に存在しており、電離真空計50の測定子50A(図1参照)は、このような取り付け空間301に位置するように配されている。
【0076】
本実施形態では、第2および第3電磁コイル32、33のコイル磁界の強度が同じであるので、第2および第3電磁コイル32、33間の中心軸200上の中点を含み、第2および第3電磁コイル32、33のコイル面32A、33Aと平行な平面300において、両者のコイル磁界が互いに打ち消し合い、上述の取り付け空間301は、この平面300上に位置していると解される。
【0077】
つまり、この平面300において、図3(a)に示すように、取り付け空間301のYZ平面内では、磁力線32Bの磁束密度のY方向成分は、磁力線33Bの磁束密度のY方向成分と相殺され、これらの磁力線32B、33Bの磁束密度のY方向成分が、ほぼゼロになると考えられる。なお、この場合、磁力線32Bの磁束密度のX方向成分およびZ方向成分、および、磁力線33Bの磁束密度のX方向成分およびZ方向成分は何れも、ほぼゼロであると考えられる。
【0078】
一方、取り付け空間301のXZ平面(主面S;図1参照)内では、図3(b)に示すように、磁力線32Bの磁束密度のX方向成分は、磁力線33Bの磁束密度のX方向成分と相殺され、これらの磁力線32B、33Bの磁束密度のX方向成分が、ほぼゼロになると考えられる。なお、この場合、磁力線32Bの磁束密度のY方向成分およびZ方向成分、および、磁力線33Bの磁束密度のY方向成分およびZ方向成分は何れも、ほぼゼロであると考えられる。
【0079】
このように、環状の取り付け空間301では、第2および第3電磁コイル32、33が作るコイル磁界の強度が、コイル磁界の強度の相殺現象により非常に弱まり、その結果、この取り付け空間301が、電離真空計50の測定子50Aを配設するのに好適な空間となると考えられる。
【0080】
よって、電離真空計50の測定子50Aを取り付け空間301近傍に配することができると、電離真空計50は、コイル磁界の影響に曝され難くなり、電離真空計50の測定の信頼性を担保できる。
【0081】
次に、静磁場シミュレーション技術を用いて、取り付け空間301におけるコイル磁界の強度の相殺現象を確認的に検証した。
【0082】
図4は、第2および第3電磁コイルの対のそれぞれに、同じ量のコイル電流を同じ向きに流した場合の、静磁界シミュレーション結果の一例を示した図である。
【0083】
図4では、図1に示した第1、第2および第3電磁コイル23、32、33の形状(ここでは、円形の空芯コイル)、および、棒磁石24A、24Bの形状と略同一形の解析モデルが、数値計算用の単位解析領域にメッシュ分割してコンピュータ上に再現されている。
【0084】
また、図4の解析領域に相当するメッシュには、第2および第3電磁コイル32、33の対のそれぞれに、同じ量のコイル電流が同じ向きに流れる状態を解析モデル上で再現できるように、適宜のデータが入力されている。
【0085】
なお、本解析では、飽くまで、取り付け空間301の位置を検証することに主眼が置かれているので、このような検証の結果に影響を与えない構成要素(例えば、アノードAの裏面に配された永久磁石38など)のモデル化は省略されている。
【0086】
また、本解析では、汎用の磁場解析ソフト(INFOLYTICA社製の「MagNet」)が解析ツールとして用いられている。
【0087】
更に、図4では、上述のコイル磁界の強度(磁束密度)の大小を、グレイスケールで表しており、詳しくは、濃いグレイ領域は、高磁界強度領域H、或いは、低磁界強度領域Lを表し、淡いグレイ領域は、高磁界強度領域Hと低磁界強度領域Lとの間の中間磁界強度領域Mを表している。
【0088】
図4に示すように、低磁界強度領域Lが、第2および第3電磁コイル32、33間の中心軸上の中点を含み、第2および第3電磁コイル32、33のコイル面と平行な平面上に存在していることが可視化できた。つまり、低磁界強度領域Lが、図3の取り付け空間301の領域とほぼ対応している。よって、電離真空計50の測定子50Aの取り付け空間301でのコイル磁界の強度の相殺現象の妥当性が、静磁場の解析シミュレーションの結果により裏付けられた。
【0089】
この点を換言すると、このような静磁場シミュレーション技術を用いて、様々な条件において電離真空計50の測定子50Aの取り付け空間の位置を容易かつ適切に特定可能であると判断できる。
【0090】
以上のとおり、本実施形態のシートプラズマ方式のスパッタリング装置100(真空処理装置)は、真空ポンプ36により内部が減圧された真空成膜室30(真空処理室)と、真空成膜室30内の中心軸200上に磁界HAを形成する第2および第3電磁コイル32、33の対と、真空成膜室30内の圧力を測定できる電離真空計50と、を備える。
【0091】
そして、本実施形態のスパッタリング装置100では、電離真空計50の測定子50Aは、第2電磁コイル32によるコイル磁界の強度が、第3電磁コイル33によるコイル磁界の強度によって相殺される取り付け空間301に配されている。
【0092】
このような第2および第3電磁コイル32、33の対が作る磁界HAにより、シートプラズマ27の広がり方向の拡散を適切に整えることができる。また、第2および第3電磁コイル32、33の対による取り付け空間301でのコイル磁界の強度が互いに相殺されて弱まるので、電離真空計50の測定子50Aを取り付け空間301に配することにより、電離真空計50は、磁界の影響に曝され難くなり、電離真空計50の測定の信頼性を担保できる。
【0093】
そして、本実施形態では、電離真空計50の測定子50Aが、熱電子を放出するフィラメントFと、熱電子の衝突によって電離された真空成膜室30内の気体分子のイオンを捕集するコレクタCOと、を備える。
【0094】
このような熱陰極型の電離真空計50は、高真空から超高真空に亘るワイドレンジの圧力を正確に測定でき、定量性に優れているが、上述のとおり、コレクタCOに流れ込んだイオン電流Iionが、磁界Hの有無によって変動するという不都合がある。
【0095】
よって、熱陰極型の電離真空計50を、シートプラズマ方式のスパッタリング装置100に組み込む場合に、以上に述べた電離真空計50の配置の構成を取ることが特に有益である。
【0096】
また、本実施形態では、第2および第3電磁コイル32、33のそれぞれに、同じ量のコイル電流を同じ向きに流しているので、上述の取り付け空間301は、図4に示すように、第2および第3電磁コイル32、33間の中心軸200上の中点を含み、第2および第3電磁コイル32、33のコイル面32A、33Aに平行な平面300上に位置している。
(変形例1)
本実施形態では、第2および第3電磁コイル32、33のそれぞれに、同じ量のコイル電流を同じ向きに流す場合の電離真空計50の測定子50Aの取り付け空間301について述べた。
【0097】
そこで、本変形例では、第2および第3電磁コイル32、33のそれぞれに、異なる量のコイル電流を同じ向きに流す場合の電離真空計50の測定子50Aの取り付け空間302について説明する。
【0098】
図5は、本発明の変形例1のスパッタリング装置に用いる電離真空計の測定子の取り付け空間の一例を模式的に示した図である。
【0099】
なお、図5は、シートプラズマを側面視した場合の模式図であり、シートプラズマを平面視した場合の模式図の図示は省略する。
【0100】
また、図5では、シートプラズマ27の側面視において、中心軸200を共通にして対置された同一構造の第2および第3電磁コイル32、33の対のそれぞれに、異なる量のコイル電流を同じ向きに流した場合の、第2電磁コイル32によるコイル磁界の磁力線32B’、および、第3電磁コイル33によるコイル磁界の磁力線33B’が描かれている。ここでは、円形の第2および第3電磁コイル32、33をZ方向から見た場合、第2および第3電磁コイル32、33のそれぞれに、時計周りとなる同じ向きのコイル電流が流れており、かつ、第3電磁コイル33でのコイル電流が、第2電磁コイル32でのコイル電流よりも大きくなっている。
【0101】
本変形例では、図5に示すように、磁力線32B’、33B’によって、真空成膜室30内の中心軸200上に磁界HBが形成されている。これにより、シートプラズマ27の広がり方向の拡散が整えられている。
【0102】
また、第2電磁コイル32によるコイル磁界と、第3電磁コイル33によるコイル磁界と、が互いに相殺される環状の取り付け空間302が、第2および第3電磁コイル32、33が作る磁界中に存在しており、電離真空計50の測定子50Aは、取り付け空間302に位置するように配されている。
【0103】
本変形例では、第3電磁コイル33のコイル磁界の強度が第2電磁コイル32のコイル磁界の強度よりも強いので、コイル電流が大きい第3電磁コイル33よりも、コイル電流が小さい第2電磁コイル32の近傍において、両者のコイル磁界が打ち消し合い、取り付け空間302は、コイル電流が小さい第2電磁コイル32側に位置していると解される。なお、図5に示すように、第2および第3電磁コイル32、33間の中心軸200上の中点を含み、第2および第3電磁コイル32、33のコイル面32A、33Aと平行な平面300を基準にすると、この取り付け空間302は、平面300と第2電磁コイル32のコイル面32Aとの間の領域に位置していると解される。
【0104】
つまり、取り付け空間302のYZ平面では、図5に示すように、磁力線32B’による磁束密度のY方向成分は、磁力線33B’による磁束密度のY方向成分と相殺され、磁束密度のY方向成分が、ほぼゼロになると考えられる。なお、この場合、磁力線32B’による磁束密度のX方向成分およびZ方向成分、および、磁力線33B’による磁束密度のX方向成分およびZ方向成分は何れも、ほぼゼロである。
【0105】
なお、実施形態で述べたとおり、以上の取り付け空間302の具体的な位置は、上述の静磁場シミュレーション技術を用いて容易かつ適切に特定できる。
(変形例2)
本実施形態では、シートプラズマ方式の装置を例示した。シートプラズマ方式の装置では、磁界の発生源が多く用いられているので、この装置に電離真空計50を組み込む場合に、以上に述べた真空計の配置の構成を取ることが特に有益である。
【0106】
しかしながら、磁界の発生源が存在する真空処理装置は、これに限らない。例えば、マグネトロン方式のスパッタリング装置においても、本技術を適用することができる。
【0107】
また、本実施形態では、真空処理装置の一例として、スパッタリング装置を示したが、スパッタリング以外の他の真空処理装置(例えば、基板のプラズマクリーニング装置など)にも本技術を応用することができる。
(変形例3)
本実施形態では、真空計の一例として、熱陰極型の電離真空計50を例示している。熱陰極型の電離真空計50は、上述のとおり、高真空から超高真空に亘るワイドレンジの圧力を正確に測定でき、定量性に優れるので、スパッタリング装置100の真空度測定において好都合である。
【0108】
しかし、真空計の測定子の感度が磁場の影響を受ける限りは、熱陰極型の電離真空計50に限らず、他のタイプの真空計を使用する場合でも本技術を適用することができる。例えば、真空処理装置の真空度の測定に、冷陰極型のぺニング真空計を用いる場合でも、質量分析計を真空計の用途に用いる場合でも、本技術が適用されると有益な場合がある。
(変形例4)
本実施形態では、磁界形成手段として、電磁コイルを例示しているが、これに限らない。このような電磁コイルに代えて、円環状の板磁石(永久磁石)を使用してもよい。
【0109】
また、本実施形態では、第2および第3電磁コイル32、33の形態として、円形の空芯コイルを例示しているが、これに限らない。電磁コイルの形状は、例えば、矩形の空芯コイルであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、磁界によって感度が変化する真空計の測定子を、磁界中の最適位置に配するように構成された真空処理装置が得られる。
【0111】
よって、本発明は、真空計を備える様々な真空処理装置(例えば、スパッタリング装置)に利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
20 シートプラズマ変形室
21 シートプラズマ輸送空間
22 円柱プラズマ
23 第1電磁コイル
24A、24B 棒磁石
27 シートプラズマ
28、29 通路
30 真空成膜室
31 成膜空間
32 第2電磁コイル
32A 第2電磁コイルのコイル面
32B、32B’ 第2電磁コイルの磁力線
33 第3電磁コイル
33A 第3電磁コイルのコイル面
33B、33B’ 第3電磁コイルの磁力線
34A 基板ホルダ
34B 基板
35A ターゲットホルダ
35B ターゲット
36 真空ポンプ
37 バルブ
38 永久磁石
40 プラズマガン
41 カソードユニット
41A ガラス管
41B 蓋部材
50 電離真空計
50A 電離真空計の測定子
51、52 バイアス電源
100 スパッタリング装置
200 中心軸
300 平面
301、302 取り付け空間
A アノード
CO コレクタ
F フィラメント
G グリッド
1、G2 中間電極
HA、HB 磁界
C カソード
S 主面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプにより内部が減圧された真空処理室と、
前記真空処理室内に磁界を形成する一対の第1磁界形成手段と、
前記真空処理室内の圧力を測定できる真空計と、
を備え、
前記真空計の測定子は、前記第1磁界形成手段の対の一方による磁界の強度が、前記第1磁界形成手段の対の他方による磁界の強度によって相殺される取り付け空間に配されている真空処理装置。
【請求項2】
前記真空計は、電離真空計である請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記電離真空計の測定子は、熱電子を放出するフィラメントと、前記熱電子の衝突によって電離された前記真空処理室内の気体分子のイオンを捕集するコレクタと、を備える熱陰極型に構成されている請求項2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記第1磁界形成手段の対として、前記真空処理室を挟み、互いの中心軸を共通にして対置された同一構造の電磁コイルの対を用いており、前記電磁コイルのそれぞれに、同じ量のコイル電流を同じ向きに流す場合、
前記取り付け空間は、前記電磁コイル間の前記中心軸上の中点を含み前記電磁コイルのコイル面に平行な平面上に位置している請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記第1磁界形成手段の対として、前記真空処理室を挟み、互いの中心軸を共通にして対置された同一構造の電磁コイルの対を用いており、前記電磁コイルのそれぞれに、異なる量のコイル電流を同じ向きに流す場合、
前記取り付け空間は、前記コイル電流が大きい前記電磁コイルよりも、前記コイル電流が小さい前記電磁コイル側に位置している請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項6】
プラズマ流を形成できるプラズマガンと、
前記プラズマ流を反発磁界によってシート状に変形できる第2磁界形成手段の対と、
前記シート状のプラズマ流を回収するアノードと、
を備え、
前記シート状のプラズマ流が、前記電磁コイルの対の空芯部を通過して前記真空処理室から前記アノードに向かい、
前記シート状のプラズマ流の広がり方向の拡散が、前記電磁コイルの対の磁界により整えられている、請求項4または5に記載の真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−190694(P2010−190694A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34835(P2009−34835)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】