説明

真空脱脂洗浄装置

【課題】2個の開閉扉を有し、いずれの開閉扉からも搬入・搬出が可能で、装置が小型かつ設置スペースを節約でき、スペース的・コスト的に簡素なシステムを構築でき、かつワークが大きい場合にも、ワークの搬入・搬出時に溶剤蒸気が大気中に飛散することがない炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置を提供。
【解決手段】真空脱脂洗浄装置本体10は、それぞれ密閉された、両端に開閉扉 3を有する洗浄室 1と、洗浄室 1を取り囲む中空の清浄液タンク 4と、を有し、いずれの開閉扉 3からもワーク14の搬入・搬出を可能とし、洗浄室 1内で、シャワー洗浄、浸漬洗浄、高温噴射洗浄及び真空乾燥を同一室内で行うようにした。両端の開閉扉 3上部に洗浄剤17の蒸気を吸入する排気フード 25、27を設けかつ各排気フード 25、27上端に排気ポンプである蒸気吸入装置28を配管29を介して接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理工程における前後洗浄、小物金属部品プレス工程における後洗浄にフロンやトリクロロエタン等の代替洗浄剤として炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱処理工程における前後洗浄、小物金属部品プレス工程における後洗浄にフロンやトリクロロエタン等の洗浄剤を用いて洗浄することが行われてきたが、近年、これらの洗浄剤が地球大気のオゾン層を破壊する環境破壊物質であるとして使用できなくなってきた為、代替洗浄剤として石油等の炭化水素系洗浄剤を用いるようにした真空脱脂洗浄設備の開発が進められている。かかる炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄する技術としては、例えば特許文献1〜3が公開されている。
【特許文献1】特開2003-236479 号公報
【特許文献2】特開平8−209371号公報
【特許文献3】特許第3491082 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の特許文献1のものでは、その図2、図5に示すように、一方向に搬入・搬出を行うようにされた搬入扉と搬出扉を有する浸漬洗浄室と、浸漬洗浄室の下に設置された蒸気洗浄室とからなり、2室は中間扉で仕切られている。特許文献2のものでは、塩基系有機溶剤の代替洗浄剤を高圧で使用するストレートスルー型洗浄装置で、扉を開いたとき洗浄室の洗浄剤が蒸気化し外部に流出させない方法が記載されている。そのため、搬入室と搬出室に溶剤蒸気が外部に流出しないようカーテンを設けてあり、かつ搬入室・搬出室を排気装置により排気している。バッチ型1室構成の洗浄装置として、例えば特許文献3のものでは、1室内で、浸漬洗浄、シャワー洗浄、蒸気洗浄の各洗浄目的と洗浄効果とを1段階の洗浄工程で実施するエンドレスシャワー洗浄装置を提案する。
【0004】
しかしながら従来の特許文献1〜3のものでは、いずれも搬入側、搬出側が決まっており搬入側からしかワークを入れることができない。ストレートスルー型洗浄装置を熱処理炉の洗浄に使用する場合、ラインの構成により両側の口どちらからでも搬入が可能にすると、洗浄装置のローデング装置が簡単になる場合が多い。
【0005】
さらに特許文献2のものでは、搬入室と搬出室に溶剤蒸気が外部に流出しないようカーテンを設けてあるが、ワークが大きい場合には、ワークの搬入・搬出時に、溶剤蒸気が大きく移動するため、溶剤蒸気が大気中に飛散することは避けられなかった。
【0006】
本発明の課題は、かかる従来の課題を解決した、2個の開閉扉を有し、いずれの開閉扉からも搬入・搬出が可能で、装置が小型かつ設置スペースを節約でき、スペース的・コスト的に簡素なシステムを構築でき、かつワークが大きい場合にも、ワークの搬入・搬出時に溶剤蒸気が大気中に飛散することがない炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置において、それぞれ密閉された、両端に開閉扉を有する洗浄室と、前記洗浄室を取り囲む中空の清浄液タンクと、を有し、いずれの開閉扉からもワークの搬入・搬出を可能とし、前記洗浄室内で、シャワー洗浄、浸漬洗浄、高温噴射洗浄及び真空乾燥を同一室内で行うようにし、かつ前記両端の開閉扉上部に洗浄剤の蒸気を吸入する排気フードを設けかつ各前記排気フード上端に蒸気吸入装置を接続したことを特徴とする真空脱脂洗浄装置を提供することで上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、それぞれ密閉された、両端に開閉扉を有する洗浄室と、前記洗浄室を取り囲む中空の清浄液タンクと、を有し、いずれの開閉扉からもワークの搬入・搬出を可能とし、前記洗浄室内で、シャワー洗浄、浸漬洗浄、高温噴射洗浄及び真空乾燥を同一室内で行うようにし、前記両端の開閉扉上部に洗浄剤の蒸気を吸入する排気フードを設けかつ各前記排気フード上端に蒸気吸入装置を接続したので、2個の開閉扉を有し、いずれの開閉扉からも搬入・搬出が可能で、装置が小型かつ設置スペースを節約でき、スペース的・コスト的に簡素なシステムを構築でき、併せてフレキシブルなライン構成が可能となり、かつワークが大きい場合にも、ワークの搬入・搬出時に溶剤蒸気が大気中に飛散することがない炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置を提供するものとなった。例えば図3(b)のようにバッチ型イン&アウト熱処理炉を想定し、熱処理前洗浄し油冷却熱処理を行った後ワークを洗浄するシステムの場合、図3(a)に示すように、洗浄装置の両側どちらからでもワークを洗浄装置に搬入が可能であれば、熱処理炉の前に洗浄装置を設置し熱処理前後工程をひとつの洗浄装置で洗浄ができる。多くの熱処理炉のあるラインでは熱処理工程のサイクルタイムに対し洗浄工程のサイクルタイムが通常短いため、複数の熱処理炉の前後工程として両側扉どちらからでもワークを搬入できる真空脱脂洗浄装置であれば、スペース的・コスト的に簡素なシステムを構築できる。例えば図3(a)に示すシステムにおいて、真空脱脂洗浄装置の手前に追加して熱処理炉を置き、2台の熱処理炉を1台の本発明の真空脱脂洗浄装置で洗浄処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を図1、図2を参照して説明する。図1は本発明の実施形態を示す真空脱脂洗浄装置本体の概略側面断面図と全体システムの要部を示すブロック図、図2は図1の装置本体10のほぼ中央の断面図を示す。本発明の実施形態を示す炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置本体10は、それぞれ密閉された、両端に開閉扉 3を有する洗浄室 1と、洗浄室 1を取り囲む中空の清浄液タンク 4と、を有し、いずれの開閉扉 3からもワーク14の搬入・搬出を可能とし、洗浄室 1内で、シャワー洗浄、浸漬洗浄、高温噴射洗浄及び真空乾燥を同一室内で行うようにした。両端の開閉扉 3上部に洗浄剤17の蒸気を吸入する排気フード 25、27を設けかつ各排気フード 25、27上端に排気ポンプである蒸気吸入装置28を配管29を介して接続した。26、28 は開閉扉 3の開閉シリンダである。
【0010】
洗浄室 1上部は配管34を介して真空ポンプ7 と連通可能にされ、洗浄室 1上部にはシャワー洗浄用ノズル 5が配置され、洗浄室 1下部にはN2 ガス供給装置16と連結されたバブリング用ノズル 6、が配置され、洗浄室 1底面にはワーク置き台20が設けられワーク14が開閉扉 3のいずれかからリフト&キャリー等のワーク搬入装置21により搬入され載置される。図2で示すように真空脱脂洗浄装置本体10は、洗浄室 1の周囲を取り囲む中空の清浄液タンク 4を有し、洗浄剤17が入っている。清浄液タンク 4は図示しない配管、蒸留再生器、再生タンクなどを介してシャワーライン15でシャワー洗浄用ノズル 5と連通する。清浄液タンク 4は配管 30、31を介して洗浄室 1下部に連通可能にされている。
【0011】
洗浄プロセスを図1を参照して説明する。
ステップ1で、ワーク14がいずれかの開閉扉 3から洗浄室 1に搬入され、開閉扉 3が閉められ、洗浄室 1は真空ポンプ 7で真空排気される。
ステップ2で、上部シャワーノズル 5からシャワーライン15を介して清浄液タンク 4内の洗浄剤17が噴射されワーク14を粗洗浄する。
ステップ3で、配管 30、31を介して洗浄室 1下部と清浄液タンク 4とを連通させ、減圧された洗浄室 1内に洗浄剤17を急速に図2の点線40で示す水準まで充満させ、ワーク14を浸漬し、次に、N2 ガス供給装置16と連結されたバブリング用ノズル 6を作動させて、バブリングノズルから 6噴射するN2 ガスの気泡で洗浄剤を17攪拌しワーク14を所定時間浸漬バブリング洗浄を行う。
ステップ4で、配管15を介して図示しない再生タンク内の高温高純度の洗浄剤をシャワー洗浄用ノズル 5から噴射し、ワーク14を仕上洗浄する高温噴射洗浄を行う。
ステップ5で、洗浄剤の付着したワーク14及び洗浄室内 1を真空ポンプ 7で真空排気させて真空乾燥を行い、1サイクルを終了する。
両端の開閉扉 3が開いたとき開いた開閉扉側の排気フード 25、27で洗浄剤の蒸気を拘束し排気ポンプである蒸気吸入装置28で図示しない処理装置に吸引し、ワークが大きい場合にも、ワークの搬入・搬出時に溶剤蒸気が大気中に飛散することがない。
〔本発明の実施形態の効果〕
【0012】
本発明では、それぞれ密閉された、両端に開閉扉を有する洗浄室と、前記洗浄室を取り囲む中空の清浄液タンクと、を有し、いずれの開閉扉からもワークの搬入・搬出を可能とし、前記洗浄室内で、シャワー洗浄、浸漬洗浄、高温噴射洗浄及び真空乾燥を同一室内で行うようにし、前記両端の開閉扉上部に洗浄剤の蒸気を吸入する排気フードを設けかつ各前記排気フード上端に蒸気吸入装置を接続したので、2個の開閉扉を有し、いずれの開閉扉からも搬入・搬出が可能で、装置が小型かつ設置スペースを節約でき、スペース的・コスト的に簡素なシステムを構築でき、かつワークが大きい場合にも、ワークの搬入・搬出時に溶剤蒸気が大気中に飛散することがない炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置を提供するものとなった。本発明により省スペース、低イニシャル・ランニングコストな熱処理工程における洗浄ラインが構築でき、併せてフレキシブルなライン構成が可能となった。例えば図3(b)のようにバッチ型イン&アウト熱処理炉を想定し、熱処理前洗浄し油冷却熱処理を行った後ワークを洗浄するシステムの場合、図3(a)に示すように、洗浄装置の両側どちらからでもワークを洗浄装置に搬入が可能であれば、熱処理炉の前に洗浄装置を設置し熱処理前後工程をひとつの洗浄装置で洗浄ができる。多くの熱処理炉のあるラインでは熱処理工程のサイクルタイムに対し洗浄工程のサイクルタイムが通常短いため、複数の熱処理炉の前後工程として両側扉どちらからでもワークを搬入できる真空脱脂洗浄装置であれば、スペース的・コスト的に簡素なシステムを構築できる。例えば図3(a)に示すシステムにおいて、真空脱脂洗浄装置の手前に追加して熱処理炉を置き、2台の熱処理炉を1台の本発明の真空脱脂洗浄装置で洗浄処理できる。また洗浄室から流出する可能性のある気化した洗浄剤を回収可能になり人体えの影響の回避、危険回避ができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示す真空脱脂洗浄装置本体の概略側面断面図と全体システムの要部を示すブロック図。
【図2】図1の装置本体10のほぼ中央の断面図を示す。
【図3】(a)は本発明の実施形態の真空脱脂洗浄装置と熱処理炉の配置を示すシステム図、(b)は従来の真空脱脂洗浄装置と熱処理炉の配置を示すシステム図を示す。
【符号の説明】
【0014】
1:洗浄室 3:開閉扉 4:清浄液タンク
10:真空脱脂洗浄装置本体 14:ワーク 17:清浄液
25、27 :排気フード 28:蒸気吸入装置(排気ポンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系洗浄剤を用いた真空脱脂洗浄装置において、それぞれ密閉された、両端に開閉扉を有する洗浄室と、前記洗浄室を取り囲む中空の清浄液タンクと、を有し、いずれの開閉扉からもワークの搬入・搬出を可能とし、前記洗浄室内で、シャワー洗浄、浸漬洗浄、高温噴射洗浄及び真空乾燥を同一室内で行うようにし、かつ前記両端の開閉扉上部に洗浄剤の蒸気を吸入する排気フードを設けかつ各前記排気フード上端に蒸気吸入装置を接続したことを特徴とする真空脱脂洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−231273(P2006−231273A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52939(P2005−52939)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】