説明

眼血管新生疾患の治療のための併用療法

本発明は、血管新生疾患と診断された又は血管新生疾患を発症する危険度の高い患者を、PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを患者に投与することによって治療するための方法に関する。本発明はまた、血管新生疾患の治療又は予防のためのPDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを含有する医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、眼科学及び医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、血小板由来増殖因子(PDGF)及び血管内皮増殖因子(VEGF)の両方を阻害する薬剤の組合せを使用した眼の血管新生疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
新生血管形成とも呼ばれる血管新生は、既存血管からの発芽形成及び周辺組織へのこれらの侵入を含む。関連過程である血管形成(vasculogenesis)は、既に組織全体に存在する内皮細胞及び血管芽細胞の分化、及び続いて血管を形成するためにこれらが共に結合することを含む。
【0003】
血管新生は発生の間広汎に起こり、また損傷又は傷害後に組織への血流を回復するために創傷治癒の間健常身体においても起こる。血管新生は、しかしながら、癌及び腫瘍形成にも関係付けられてきた。実際に、腫瘍組織中の血管の量は、乳癌(Weidnerら(1992)J.Natl.Cancer Inst.84:1875−1887)、前立腺癌(Weidnerら(1993)Am.J.Pathol.143:401−409)、脳腫瘍(Liら(1994)Lancet 344:82−86)、及び黒色腫(Fossら(1996)Cancer Res.56:2900−2903)における強力な負の予後指標である。血管新生はまた、最近になってリウマチ病学、皮膚科学、心臓病学及び眼科学を含む医学の多くの領域において他の疾患状態にも関係付けられた。特に、望ましくない又は病的な組織特異的血管新生は、慢性関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症及び乾癬を含むある種の特定疾患状態に結びついてきた(例えばFanら(1995)Trends Pharmacol.Sci.16:57;及びFolkman(1995)Nature Med.1:27)。さらに、血管透過性の変化は、正常及び病的な生理的過程の両方において役割を果たすと思われる(Cullinan−Boveら(1993)Endocrinol.133:829;Sengerら(1993)Cancer and Metastasis Reviews 12:303)。これらの疾患の各々における血管新生過程は、発生的血管新生及び腫瘍血管新生と多くの特徴を共有すると考えられるが、各々はまた、周辺細胞の影響によって与えられるユニークな側面も有し得る。
【0004】
いくつかの眼疾患は血管新生の変化を含む。例えば成人失明の主要原因の第3位である(米国では失明のほぼ7%を占める)糖尿病性網膜症は、広汎な血管新生事象に関連する。非増殖性網膜症は網膜内の血管周囲細胞の選択的喪失を伴い、これらの喪失は、関連毛細血管の拡張及び血流の増加をもたらす。拡張した毛細血管では、内皮細胞が増殖してアウトパウチング(outpouchings)を形成し、これが微細動脈瘤となって、隣接毛細血管は、これらの微細動脈瘤の周囲の網膜の領域が灌流されないようにブロックされる。最終的に、微細動脈瘤の隣接領域の間に短絡血管が出現し、微細動脈瘤及び非灌流網膜の領域を伴う初期糖尿病性網膜症の臨床像が見られる。微細動脈瘤が漏出し、毛細血管が出血して、滲出物及び出血を引き起こし得る。ひとたびバックグラウンド糖尿病性網膜症の初期段階が確立されると、この状態が何年にもわたって進行し、増殖性糖尿病性網膜症及び症例の約5%では失明へと進む。増殖性糖尿病性網膜症は、網膜の一部の領域が継続してこれらの毛細血管を失い続け、非灌流状態となった時に起こり、円板上及び網膜の他の場所で新しい血管の出現を導く。これらの新生血管は硝子体へと発育し、容易に出血して、網膜前出血を導く。進行した増殖性糖尿病性網膜症では、大量の硝子体出血が硝子体腔の主要部分を満たすことがある。加えて、新生血管は、牽引網膜剥離を導き得る線維組織増殖を伴う。
【0005】
糖尿病性網膜症は、主として真性糖尿病の持続を伴う;従って、個体群が加齢すると共に及び糖尿病患者がより長く生存すると共に、糖尿病性網膜症の発生率は上昇する。レーザー療法は、現在、非増殖性及び増殖性糖尿病性網膜症の両方において使用される。黄斑領域の周囲の漏出微細動脈瘤のフォーカルレーザー治療は、臨床的に重要な黄斑浮腫を有する患者の50%において視力喪失を低下させる。増殖性糖尿病性網膜症において、汎網膜光凝固は、網膜全体(黄斑領域を除く)に散らばる数千のごく小さな熱傷を生じさせる;この治療は失明率を60%低下させる。黄斑浮腫及び増殖性糖尿病性網膜症の早期治療は患者の95%において5年間失明を予防するが、後期治療はわずかに50%においてしか失明を予防しない。従って、早期診断と治療が極めて重要である。
【0006】
血管新生を含むもう1つの眼疾患は、65歳以上のアメリカ人のおよそ10人に1人が罹患する疾患である、加齢性黄斑変性(AMD)である。AMDは、網膜の中心領域である黄斑の一連の病的変化によって特徴付けられ、視力の低下を伴い、特に中心視力に影響を及ぼす。AMDは、感覚網膜のすぐ下にある網膜色素上皮と呼ばれる細胞の単層を含む。これらの細胞は、これらと接触している網膜の部分、すなわち視覚色素を含む光受容細胞に栄養を与え、支持する。網膜色素上皮は、AMDでは薄くなり、硬化している、基底膜複合体であるブルーフ膜上にある。新しい血管は、豊富な血管床を含む、この下にある脈絡膜からブルーフ膜を突破し得る。これらの血管は、次に、網膜色素上皮の下で及び網膜色素上皮と感覚網膜の間でも液体を漏出させ得る又は出血させ得る。この後の線維性瘢痕形成は、光受容細胞の栄養供給を断ってこれらの死滅を導き、中心視力の喪失を生じさせる。この種の加齢性黄斑症は、漏出血管及び網膜下の浮腫又は血液の故に「滲出」型と呼ばれる。滲出型は加齢性黄斑症の10%を占めるに過ぎないが、高齢者における黄斑変性からの法的盲の症例の90%を生じさせる。「萎縮」型の加齢性黄斑症は、この上にある光受容細胞喪失と共に網膜色素上皮の崩壊を含む。萎縮型は視力を低下させるが、通常は20/50−20/100のレベルに過ぎない。
【0007】
AMDは、対象がより大きく又はより小さく見える又は直線がゆがむ、曲がる又は中心部分がない、中心視力の歪曲を伴う。滲出型AMDでは、黄斑領域に感覚網膜の小さな剥離が認められることがあるが、網膜下新生血管膜の決定的な診断は蛍光眼底血管造影を必要とする。萎縮型では、ドルーゼが黄斑領域の色素沈着パターンを乱すことがある。ドルーゼは、細胞内に突き出した網膜色素上皮の基底膜の突出であり、これらを前方へと膨らませる。加齢性黄斑症における危険因子としてのこれらの役割は明らかでない。萎縮型の加齢性黄斑症については現在のところ治療法が存在しない。レーザー治療は滲出型加齢性黄斑症において使用され、最初に血管新生膜を消失させ、18ヶ月で約50%の患者においてさらなる視力喪失を防ぐ。60ヶ月までになると、しかしながら、20%だけがまだ実質的な恩恵を受ける。
【0008】
塩基性及び酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF、bFGF)、トランスフォーミング増殖因子α及びβ(TGFα、TGFβ)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アンギオゲニン、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、インターロイキン−8(IL−8)及び血管内皮増殖因子(VEGF)を含む、血管新生の多数の分子メディエイターが特定されている。血管新生に関わる他の刺激因子は、アンギオポエチン−1、Del−1、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)、レプチン、ミッドカイン、胎盤成長因子、プレイオトロフィン(PTN)、プログラヌリン、プロリフェリン及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を含む。加えて、血管新生の制御は、アンギオアレスチン、アンギオスタチン(プラスミノーゲンフラグメント)、抗血管新生アンチトロンビンIII、軟骨由来阻害因子(CDI)、CD59補体フラグメント、エンドスタチン(コラーゲンXVIIIフラグメント)、フィブロネクチンフラグメント、gro−β、ヘパリナーゼ、ヘパリン六糖類フラグメント、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、インターフェロンα/β/γ、インターフェロン誘導性タンパク質(IP−10)、インターロイキン−12、クリングル5(プラスミノーゲンフラグメント)、メタロプロテイナーゼ阻害因子(TIMP)、2−メトキシエストラジオール、胎盤リボヌクレアーゼ阻害因子、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子、血小板因子−4(PF4)、プロラクチン16kDフラグメント、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、レチノイド、テトラヒドロコルチゾール−S、トロンボスポンジン−1(TSP−1)、バスキュロスタチン及びバソスタチン(カルレティキュリンフラグメント)を含む、身体によって生産される多くの血管新生の負の調節因子によってさらに仲介される。
【0009】
これらの血管新生調節因子の中で、VEGFは、腫瘍成長を伴う異常血管新生の正の調節因子として鍵となる役割を果たすと思われる(Brownら(1996)Control of Angiogenesis(GoldbergとRosen編集)Birkhauser,Basel,及びThomas(1996)J.Biol.Chem.271:603−606において総説されている)。さらに、最近、シグナル伝達分子のPDGFファミリーのPDGF−B成員の役割が検討されている。これが、時として壁細胞とも称される、血管周囲細胞、例えば血管平滑筋、血管間膜細胞及び血管周囲細胞、の形成、増殖及び適切な機能において役割を果たすと思われるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発生、創傷治癒及び腫瘍形成を伴う、血管新生又は新生血管形成について多くが知られるようになってきたが、これらの形態の血管新生と眼血管新生の間に相違があるのかどうかはまだ決定されないままである。重要な点として、例えば心臓における側副血管形成を伴う血管新生は有益であり、生物に適合し得るが、例えばAMDを伴う、病的眼血管新生は公知の恩恵がなく、しばしば失明を導く(総説についてはCampochiaro(2000)J.Cell.Physiol.184:301−10参照)。従って、血管新生を伴う分子事象の理解は進歩したが、この理解を利用して、AMDと共に起こる脈絡膜血管新生及び糖尿病性網膜症などの眼血管新生疾患及び障害を含む、血管新生疾患及び障害を治療するためのさらなる方法を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
抗VEGF及び抗PDGF薬の組合せが、意外にも、眼血管新生疾患を治療するために相乗的な治療上の恩恵を与えることが発見された。
【0012】
従って、本発明は、血管新生疾患と診断された又は血管新生疾患を発症する危険度の高い患者を治療するための方法を特徴とする。この方法は、一次又は補助治療として抗VEGF薬及び抗PDGF薬を患者に投与することを含む。
【0013】
1つの側面では、本発明は、PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを、同時に又は互いに約90日以内に、患者において血管新生疾患を抑制するために十分な量で投与することにより、この必要のある患者において血管新生疾患を抑制するための方法を提供する。
【0014】
もう1つの側面では、本発明は、PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを、同時に又は互いに90日以内に、患者を治療するために十分な量で投与することにより、血管新生疾患と診断された又は血管新生疾患を発症する危険度の高い患者を治療するための方法を提供する。
【0015】
これらの側面の特定実施態様では、本発明の方法は、PDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストを互いに約10日以内に投与することを含む。本発明の方法のもう1つの実施態様では、PDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストを互いに5日以内に投与する。本発明の方法のさらにもう1つの実施態様では、PDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストを互いに約24時間以内に投与する。本発明の方法の1つの特定実施態様では、前記PDGFアンタゴニストと前記VEGFアンタゴニストを同時に投与する。
【0016】
もう1つの実施態様では、本発明の方法は、PDGF−BアンタゴニストであるPDGFアンタゴニストの投与を含む。さらにもう1つの実施態様では、本発明の方法は、VEGF−AアンタゴニストであるVEGFアンタゴニストの投与を含む。
【0017】
一部の実施態様では、本発明の方法は、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体、抗体フラグメントの結合フラグメント、糖、ポリマー又は小有機化合物であるPDGFアンタゴニストの投与を含む。もう1つの実施態様では、本発明の方法は、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体、抗体フラグメントの結合フラグメント、糖、ポリマー又は小有機化合物であるVEGFアンタゴニストの投与を含む。
【0018】
1つの特定実施態様では、本発明の方法は、EYE001アプタマーなどの、アプタマーであるVEGFアンタゴニストの投与を含む。もう1つの実施態様では、本発明の方法は、抗体又はこの結合フラグメントであるVEGFアンタゴニストの投与を含む。
【0019】
1つの特定実施態様では、本発明の方法は、アプタマー、抗体又はこの結合フラグメントであるPDGFアンタゴニストの投与を含む。もう1つの特定実施態様では、本発明の方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるPDGFアンタゴニストの投与を含む。
【0020】
本発明のこの側面のさらにもう1つの実施態様では、PDGFアンタゴニスト及び/又はVEGFアンタゴニストはプロドラッグである。
【0021】
1つの実施態様では、本発明の方法は、眼血管新生疾患を抑制する又は治療するための手段を提供する。一部の実施態様では、本発明の方法による治療又は抑制を受け入れやすい眼血管新生疾患は、虚血性網膜症、虹彩血管新生、眼内血管新生、加齢性黄斑変性、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜虚血又は増殖性糖尿病性網膜症を含む。さらにもう1つの実施態様では、本発明の方法は、この必要のある患者、又は乾癬もしくは慢性関節リウマチと診断された又はこのような疾患を発症する危険度の高い患者において、乾癬又は慢性関節リウマチを抑制する又は治療するための手段を提供する。
【0022】
本発明はまた、PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストの両剤並びに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。この側面では、PDGF及びVEGFアンタゴニストは、どちらも、患者において血管新生疾患を抑制するために十分な量で存在する。
【0023】
この側面の1つの実施態様では、前記医薬組成物は、PDGF−BアンタゴニストであるPDGFアンタゴニストを含む。もう1つの実施態様では、前記医薬組成物は、VEGF−AアンタゴニストであるVEGFアンタゴニストを含む。
【0024】
一部の実施態様では、本発明の医薬組成物は、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体、抗体フラグメントの結合フラグメント、糖、ポリマー又は小有機化合物であるPDGFアンタゴニストを含む。もう1つの実施態様では、本発明の医薬組成物は、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体、抗体フラグメントの結合フラグメント、糖、ポリマー又は小有機化合物であるVEGFアンタゴニストを含む。
【0025】
他の特定実施態様では、本発明の医薬組成物は、EYE001アプタマーなどの、アプタマーであるVEGFアンタゴニストを含む。1つの実施態様では、本発明の医薬組成物は、抗体又はこの結合フラグメントであるVEGFアンタゴニストを含む。
【0026】
1つの特定実施態様では、本発明の医薬組成物は、抗体又はこの結合フラグメントであるPDGFアンタゴニストを含む。もう1つの特定実施態様では、本発明の医薬組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるPDGFアンタゴニストを含む。
【0027】
本発明の医薬組成物は、ミクロスフェア又はヒドロゲル製剤を含む、医薬的に許容される担体を含み得る。
【0028】
さらにもう1つの実施態様では、PDGFアンタゴニスト及び/又はVEGFアンタゴニストはプロドラッグである。
【0029】
もう1つの実施態様では、本発明の医薬組成物は、眼血管新生疾患を抑制する又は治療するための手段を提供する。一部の実施態様では、本発明の医薬組成物による治療又は抑制を受け入れやすい眼血管新生疾患は、虚血性網膜症、虹彩血管新生、眼内血管新生、加齢性黄斑変性、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜虚血又は増殖性糖尿病性網膜症を含む。さらに他の実施態様では、本発明の医薬組成物は、この必要のある患者、又は乾癬もしくは慢性関節リウマチと診断された又はこのような疾患を発症する危険度の高い患者において、乾癬又は慢性関節リウマチを抑制する又は治療するための手段を提供する。
【0030】
本発明はまた、PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストの両方を含む医薬パックを提供する。この側面の1つの実施態様では、前記医薬パックは、PDGF−BアンタゴニストであるPDGFアンタゴニストを含む。この側面のもう1つの実施態様では、前記医薬パックは、VEGF−AアンタゴニストであるVEGFアンタゴニストを含む。
【0031】
もう1つの実施態様では、医薬パックのPDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストは、別々に及び個別投与量で製剤される。さらにもう1つの実施態様では、医薬パックのPDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストは一緒に製剤される。
【0032】
一部の特定実施態様では、本発明の医薬パックは、EYE001アプタマーなどの、アプタマーであるVEGFアンタゴニストを含む。他の実施態様では、本発明の医薬パックは、抗体又はこの結合フラグメントであるVEGFアンタゴニストを含む。
【0033】
一部の実施態様では、本発明の医薬パックは、抗体又はこの結合フラグメントであるPDGFアンタゴニストを含む。他の特定実施態様では、本発明の医薬パックは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるPDGFアンタゴニストを含む。この側面のさらにもう1つの実施態様では、PDGFアンタゴニスト及び/又はVEGFアンタゴニストはプロドラッグである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本明細書において言及する全ての公開文献、特許及び特許出願は、参照によりここに組み込まれる。
【0035】
(定義)
ここで使用する、以下の用語及び語句は以下で述べる意味を有するものとする。異なる定義がない限り、ここで使用する全ての技術及び学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0036】
「アンタゴニスト」とは、標的分子の活性又は産生を部分的に又は完全に阻害する物質を意味する。特に、ここで選択的に適用される「アンタゴニスト」という用語は、PDGF、PDGFR、VEGF又はVEGFR遺伝子発現のレベル、mRNAレベル、タンパク質レベル又はタンパク質活性を低下させることができる物質を意味する。アンタゴニストの例示的な形態は、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド(環状ペプチドなど)、抗体又は抗体フラグメント、ペプチドミメティック、核酸分子、アンチセンス分子、リボザイム、アプタマー、RNAi分子及び低分子量有機分子を含む。VEGF/VEGFR及びPDGF/PDGFRリガンド/受容体標的のアンタゴニスト阻害の例示的な非限定的機構は、リガンドの合成及び/又は安定性の抑制(例えばリガンド遺伝子/核酸を標的するアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物を使用して)、リガンドのこのコグネイト受容体への結合のブロッキング(例えば抗リガンドアプタマー、抗体又は可溶性のおとりコグネイト受容体を使用して)、受容体の合成及び/又は安定性の抑制(例えばリガンド受容体遺伝子/核酸を標的するアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物を使用して)、受容体のこのコグネイト受容体への結合のブロッキング(例えば受容体抗体を使用して)、及びコグネイトリガンドによる受容体の活性化のブロッキング(例えば受容体チロシンキナーゼ阻害剤を使用して)を含む。加えて、アンタゴニストは標的分子を直接又は間接的に阻害し得る。
【0037】
ここで使用する「抗体」という用語は、例えばいかなるアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgE等)であっても、全抗体を包含することを意図しており、及び脊椎動物(例えば哺乳動物)タンパク質、炭水化物等を認識し、同時にこれらと特異的に反応する抗体のフラグメントを包含する。抗体は従来の手法を用いて断片化することができ、フラグメントは、全抗体に関して上述したのと同じように有用性に関してスクリーニングすることができる。従って、前記用語は、一定のタンパク質と選択的に反応することができる抗体分子のタンパク質分解切断された又は組換え生産された部分のセグメントを含む。このようなタンパク質分解及び/又は組換えフラグメントの非限定的な例は、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv及びペプチドリンカーによって連結されたV[L]及び/又はV[H]ドメインを含む一本鎖抗体(scFv)を含む。scFvは、共有結合又は非共有結合によって2又はそれ以上の結合部位を有する抗体を形成し得る。本発明は、ポリクローナル、モノクローナル、又は抗体及び組換え抗体の他の精製製剤を包含する。
【0038】
ここでは「核酸リガンド」と交換可能に使用される、「アプタマー」という用語は、特定三次元立体配座をとるこの能力を通して、標的に結合し、及び標的に拮抗(すなわち阻害)作用を及ぼす核酸を意味する。本発明の標的はPDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体PDGFR又はVEGFR)であり、従って、PDGFアプタマー又は核酸リガンド又はVEGFアプタマー又は核酸リガンド(又はPDGFRアプタマー又は核酸リガンド又はVEGFRアプタマー又は核酸リガンド)という用語を使用する。アプタマーによる標的の阻害は、標的の結合によって、標的を触媒的に変化させることによって、標的又は標的の機能活性を修飾する/変化させるように標的と反応することによって、自殺阻害因子におけるように標的に共有結合することによって、標的ともう1つ別の分子の間の反応を促進することによって起こり得る。アプタマーは、多数のリボヌクレオチド単位、デオキシリボヌクレオチド単位、又は両方のタイプのヌクレオチド残基の混合物で構成され得る。アプタマーは、以下でさらに詳述するように1又はそれ以上の修飾塩基、糖又はリン酸骨格単位をさらに含み得る。
【0039】
「抗体アンタゴニスト」とは、標的PDGF又はVEGFの1又はそれ以上の活性をブロックする又は有意に低下させることができる、ここで定義するような抗体分子を意味する。例えばVEGF阻害抗体は、血管新生を刺激するVEGFの能力を阻害し得る又は低下させ得る。
【0040】
ヌクレオチド配列は、2つの配列の塩基の各々がマッチする、すなわちワトソン−クリック型塩基対を形成することができる場合、もう1つのヌクレオチド配列に「相補的」である。「相補鎖」という用語は、ここでは「相補物」という用語と交換可能に使用される。核酸鎖の相補物は、コード鎖の相補物又は非コード鎖の相補物であり得る。
【0041】
「保存された残基」又は「保存的アミノ酸置換」という語句は、一定の共通特性に基づくアミノ酸のグループを指す。個々のアミノ酸の間の共通特性を定義するための機能的方法は、相同生物の対応タンパク質の間のアミノ酸変化の規格化頻度を分析することである。このような分析によれば、アミノ酸のグループは、グループ内のアミノ酸が互いと選択的に交換され、従って全体的タンパク質構造への影響において互いに最も類似している場合に定義され得る(Schulz,G.E.とR.H.Schirmer,Principles of Protein Structure,Springer−Verlag)。このようにして定義されるアミノ酸群の例は:
(i)Glu及びAsp、Lys、Arg及びHisから成る、電荷を有する群、
(ii)Lys、Arg及びHisから成る、正電荷を有する群、
(iii)Glu及びAspから成る、負電荷を有する群、
(iv)Phe、Tyr及びTrpから成る、芳香族群、
(v)His及びTrpから成る、窒素環群、
(vi)Val、Leu及びIleから成る、大きな脂肪族非極性群、
(vii)Met及びCysから成る、わずかに極性の群、
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln及びProから成る、小残基群、
(ix)Val、Leu、Ile、Met及びCysから成る、脂肪族群、及び
(x)Ser及びThrから成る、小ヒドロキシル群
を含む。
【0042】
上記に示した群に加えて、各々のアミノ酸残基はこれ自体の群を形成することができ、個々のアミノ酸によって形成される群は、単に、当技術分野において一般的に使用されるこのアミノ酸についての1文字及び/又は3文字略語によって称され得る。
【0043】
ここで使用する「相互作用する」という用語は、本来、タンパク質−タンパク質、タンパク質−核酸、核酸−核酸、及びタンパク質−小分子又は核酸−小分子などの、分子間の検出可能な関係又は関連性(例えば生化学的相互作用)を含むことが意図されている。
【0044】
「相互作用タンパク質」という用語は、例えばPDGF又はVEGFタンパク質、又はこれらの対応するコグネイト受容体などの、対象とするタンパク質と相互作用する、結合する及び/又はさもなければ関連することができるタンパク質を指す。
【0045】
DNA又はRNAなどの、核酸に関してここで使用する「単離」という用語は、それぞれ、巨大分子の天然ソース中に存在する他のDNA又はRNAから分離された分子を指す。同様に、ポリペプチドに関してここで使用する「単離」という用語は、ポリペプチドのソース中に存在する他のタンパク質から分離されたタンパク質分子を指す。ここで使用する単離という用語はまた、細胞物質、ウイルス物質、又は組換えDNA手法によって生産されるときは培地、又は化学合成されるときは化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない核酸又はペプチドを指す。
【0046】
「単離核酸」は、天然ではフラグメントとして生じず、天然状態では認められない核酸フラグメントを含むことが意図されている。「単離」という用語はまた、ここでは他の細胞タンパク質から単離されたポリペプチドを指すために使用され、精製及び組換えポリペプチドの両方を包含することが意図されている。
【0047】
ここで使用する、「標識」及び「検出可能標識」という用語は、放射性同位体、蛍光因子、化学発光成分、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害因子、染料、金属イオン、リガンド(例えばビオチン又はハプテン)等を含むが、これらに限定されない、検出することができる分子を指す。「フルオレッサー」という用語は、検出可能範囲内の蛍光を発することができる物質又はこの部分を指す。本発明の下で使用し得る標識の特定例は、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、ウンベリフェロン、テキサスレッド、ルミノール、NADPH、α−、β−ガラクトシダーゼ及びホースラデイッシュペルオキシダーゼを含む。
【0048】
「細胞内の遺伝子の発現のレベル」は、細胞内の遺伝子によってコードされる、mRNA、並びにmRNA前駆体新生転写産物、転写産物プロセシング中間体、成熟mRNA及び分解産物のレベル、並びにこの遺伝子から翻訳されるタンパク質のレベルを指す。
【0049】
ここで使用する、「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)及び、適切な場合は、リボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを指す。この用語はまた、等価物として、ヌクレオチド類似体から作られるRNA又はDNAのいずれかの類似体を包含すると理解されるべきであり、記述される実施態様に該当するときは、一本鎖(センス又はアンチセンス)及び二本鎖ポリヌクレオチド、EST、染色体、cDNA、mRNA及びrRNAは、核酸と称し得る分子の代表的な例である。
【0050】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に生じる塩基、糖及び糖間(骨格)結合から成るヌクレオチド又はヌクレオシド単量体のオリゴマー又はポリマーを指す。この用語はまた、同様に機能する、非天然に生じる単量体又はこの部分を含む修飾又は置換オリゴマーを包含する。置換オリゴマーの組込みは、細胞取込みの強化又はヌクレアーゼ抵抗性上昇を含む因子に基づき、当技術分野において公知のように選択される。オリゴヌクレオチド全体又はこの一部だけが、置換オリゴマーを含み得る。
【0051】
「パーセント同一性」という用語は、2つのアミノ酸配列又は2つのヌクレオチド配列の間の配列同一性を指す。同一性は、各々、比較のために整列し得る、各々の配列内の位置を比較することによって決定できる。比較する配列内の等しい位置が同じ塩基又はアミノ酸によって占められているとき、これらの分子はこの位置において同一である;等しい部位が同じか又は類似アミノ酸残基(例えば立体化学的及び/又は電子特性において類似の)によって占められているとき、これらの分子はこの位置において相同(類似)と称することができる。相同性、類似性又は同一性のパーセンテージとしての表示は、比較配列によって共有される位置における同一又は類似アミノ酸の数の関数を表わす。Hidden Markov Model(HMM)、FASTA及びBLASTを含む、様々な整列アルゴリズム及び/又はプログラムが使用できる。HNiM、FASTA及びBLASTは、the National Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine,National Institutes of Health,Bethesda,Md.及びthe European Bioinformatic Institute EBIを通して入手し得る。1つの実施態様では、2つの配列のパーセント同一性は、1のギャップ加重でこれらのGCGプログラムによって決定することができ、例えば各々のアミノ酸ギャップは、2つの配列の間に1個のアミノ酸又はヌクレオチドミスマッチが存在するかのように加重される。整列のための他の手法は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996),ed.Doolittle、Academic Press,Inc.,a division of Harcourt Brace & Co.,San Diego,California,USAに述べられている。望ましい場合は、配列内のギャップを許容する整列プログラムを使用して配列を整列する。Smith Watermanは、配列アラインメントにおいてギャップを許容する1つのタイプのアルゴリズムである((1997)Meth.Mol.Biol.70:173−187参照)。また、NeedlemanとWunsch整列法を用いるGAPプログラムも、配列を整列するために利用できる。HMMの使用を含むより多くの手法及びアルゴリズムは、Sequence,Structure,and Databanks:A Practical Approach(2000),ed.Oxford University Press,Incorporated及びBioinformatics:Databases and Systems(1999)ed.Kluwer Academic Publishersに述べられている。代替的な検索方法はMPSRCHソフトウエアを使用するものであり、これをMASPARコンピュータで実施する。MPSRCHは、Smith−Watermanアルゴリズムを使用して超並列コンピュータで配列を評価する。このアプローチは、遠い類縁の対合(distantly related matches)を取り上げる能力を改善し、特に小さなギャップ及びヌクレオチド配列エラーを許容する。核酸がコードするアミノ酸配列を使用して、タンパク質及びDNAデータベースの両方を検索することができる。ここの配列に関するデータベースは、Methods in Enzymology,ed.Doolittle,前出に述べられている。データベースは、Genbank、EMBL、及びDNA Database of Japan(DDBJ)を含む。
【0052】
二重鎖に関して「完全にマッチする」は、二重鎖を構成するポリ又はオリゴヌクレオチド鎖が、各々の鎖のあらゆるヌクレオチドが他方の鎖のヌクレオチドとワトソン−クリック型塩基対合を受けるように互いに二本鎖構造を形成することを意味する。この用語はまた、使用し得る、デオキシイノシン、2−アミノプリン塩基を有するヌクレオシド等のような、ヌクレオシド類似体の対合も包含する。標的ポリヌクレオチドとオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの間の二重鎖におけるミスマッチは、二重鎖中のヌクレオチドの対がワトソン−クリック型結合を受けることができないことを意味する。三重鎖に関しては、この用語は、三重鎖が、完全にマッチする二重鎖と、あらゆるヌクレオチドが完全にマッチする二重鎖の塩基対とフーグスティーン型又は逆フーグスティーン型結合を生じる3番目の鎖から成ることを意味する。
【0053】
「RNA干渉」、「RNAi」又は「siRNA」という用語は全て、対象遺伝子に相同な(特に対象遺伝子、例えばPDGF又はVEGFのメッセンジャーRNAに相同な)、1又はそれ以上の二本鎖RNAを標的細胞に導入することによって遺伝子又は遺伝子産物の発現を低下させる方法を指す。
【0054】
多型変異体は、ポリヌクレオチド配列が1個の塩基によって異なる(例えばPDGF又はVEGFにおける一塩基変異)「一塩基多型」(SNP)も包含し得る。SNPの存在は、例えばある種の個体群、疾患状態又は疾患状態についての傾向の指標であり得る。
【0055】
異常細胞、例えば腫瘍細胞の生物学的状態の「プロフィール」は、疾患状態に応答して変化する細胞の様々な成分のレベルを指す。細胞の成分は、RNAのレベル、タンパク質存在量のレベル又はタンパク質活性レベルを含む。
【0056】
「タンパク質」という用語は、ここでは「ペプチド」及び「ポリペプチド」という用語と交換可能に使用される。「組換えタンパク質」という用語は、一般に、発現されるタンパク質をコードするDNA又はRNAを適切な発現ベクターに挿入し、次にこれを用いて宿主細胞を形質転換して、異種タンパク質又はRNAを発現させる、組換えDNA手法によって生産される本発明のタンパク質を指す。さらに、組換えタンパク質をコードする組換え遺伝子に関して、「由来する」という語句は、天然タンパク質のアミノ酸配列又は、置換及び欠失を含む、天然に生じるタンパク質の突然変異によって生成される前記と類似のアミノ酸配列を有するタンパク質を、「組換えタンパク質」の意味に包含することが意図されている。
【0057】
ここで使用する、「導入遺伝子」という用語は、細胞に導入された核酸配列(例えば標的核酸の1つ又はこのアンチセンス転写産物をコードする)を意味する。導入遺伝子は、トランスジェニック動物又はこれが導入される細胞に部分的又は全面的に非相同、すなわち外来性であり得るか、又はトランスジェニック動物又はこれが導入される細胞の内在性遺伝子に相同であるが、これが挿入される細胞のゲノムを変化させるように(例えば天然遺伝子とは異なる位置に挿入されるか又はこの挿入がノックアウトを生じさせる)動物のゲノムに挿入される又は挿入するように設計される。導入遺伝子はまた、エピソームの形態で細胞内に存在し得る。導入遺伝子は、1又はそれ以上の転写調節配列及び選択核酸の最適発現のために必要であり得る、イントロンなどの他の何からの核酸を含み得る。
【0058】
「血管新生疾患」とは、腫瘍形成又は新生物形成性形質転換、すなわち癌を伴うもの以外の変化した又は調節不全の血管新生によって特徴付けられる疾患を意味する。血管新生疾患の例は、乾癬、慢性関節リウマチ、及び糖尿病性網膜症及び加齢性黄斑変性を含む眼血管新生疾患を含む。
【0059】
ここで使用する、「新生血管形成」及び「血管新生」という用語は、交換可能に使用される。新生血管形成及び血管新生は、細胞、組織又は器官への新しい血管の生成を指す。血管新生の制御は、典型的にはある種の疾患において変化し、多くの場合、疾患に結びつく病的損傷は、変化した、調節不全の又は制御されない血管新生に関係する。持続的な、調節不全の血管新生は、内皮細胞の異常増殖によって特徴付けられるものを含む、多くの疾患状態で起こり、血管の漏出及び透過性を含む、これらの状態で見られる病的損傷を支持する。
【0060】
「眼血管新生疾患」とは、患者の眼における変化した又は調節不全の血管新生によって特徴付けられる疾患を意味する。例示的な眼血管新生疾患は、視神経円板血管新生、虹彩血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、角膜血管新生、硝子体血管新生、緑内障、パンヌス、翼状片、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、血管網膜症、網膜変性、ブドウ膜炎、網膜の炎症性疾患及び増殖性硝子体網膜症を含む。
【0061】
被験者において血管新生疾患を「治療する」又は血管新生疾患を有する被験者を「治療する」という用語は、血管新生疾患の少なくとも1つの症状を低下させるように、被験者を医薬治療、例えば薬剤の投与に供することを指す。従って、ここで使用する「治療する」という用語は、血管新生状態又は疾患の少なくとも1つの症状を治癒すること並びに改善することを包含することが意図されている。従って、ここで使用する「治療する」は、眼血管新生疾患の治療又は予防のための医薬組成物を投与すること又は処方することを含む。
【0062】
「患者」とは、何らかの動物を意味する。「動物」という用語は、ヒト及び他の霊長動物を含むが、これらに限定されない、哺乳動物を含む。この用語はまた、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ及びネコなどの家畜化動物を含む。
【0063】
「PDGF」又は「血小板由来増殖因子」とは、血管新生又は血管新生過程に影響を及ぼす哺乳動物血小板由来増殖因子を意味する。ここで使用する、「PDGF」という用語は、PDGF−B(図1(A)及び(B)参照)及びPDGF−A(図1(C)及び(D)参照)を含むPDGFの様々なサブタイプを包含する。さらに、ここで使用する、「PDGF」という用語は、コグネイトPDGF受容体を通して血管新生又は血管新生過程を刺激するように働く、PDGF−C及びPDGF−DなどのPDGF関連血管新生因子を指す。特に、「PDGF」という用語は、(i)PDGFR−B(図3(A)及び(B)参照)又はPDGFR−A(図3(C)及び(D)参照)などのPDGF受容体に結合する;(ii)VEGF受容体に関連するチロシンキナーゼ活性を活性化する;及び(iii)これによって血管新生又は血管新生過程に影響を及ぼす、増殖因子のクラスの成員を意味する。ここで使用する、「PDGF」という用語は、一般に、応答性細胞型上の血小板由来増殖因子細胞表面受容体(すなわちPDGFR)の結合及び活性化を通してDNA合成及び有糸分裂誘発を誘導する増殖因子のクラスの成員を指す。PDGFは、例えば:定方向細胞遊走(走化性)及び細胞活性化;ホスホリパーゼ活性化;ホスファチジルイノシトール代謝回転及びプロスタグランジン代謝の上昇;応答性細胞によるコラーゲン及びコラゲナーゼ合成の刺激;マトリックス合成、サイトカイン産生及びリポタンパク質取込みを含む細胞代謝活性の変調;間接的に、PDGF受容体を持たない細胞における増殖応答の誘導;及び強力な血管収縮剤作用を含む、特異的生物作用を生じさせる。「PDGF」という用語は、「PDGF」ポリペプチド及びこの対応する「PDGF」コード遺伝子又は核酸の両方を包含することが意図されている。
【0064】
「PDGF−A」とは、PDGF及びこの対応するコード遺伝子又は核酸のA鎖ポリペプチドを意味する。
【0065】
「PDGF−B」とは、PDGF及びこの対応するコード遺伝子又は核酸のB鎖ポリペプチドを意味する。
【0066】
「VEGF」又は「血管内皮増殖因子」とは、血管新生又は血管新生過程に影響を及ぼす哺乳動物血管内皮増殖因子を意味する。ここで使用する、「VEGF」という用語は、例えばVEGF121、VEGF165及びVEGF189を含むVEGF−A/VPF遺伝子の選択的スプライシングによって生じるVEGF(血管透過性因子(VPF)及びVEGF−Aとしても知られる)の様々なサブタイプ(図2(A)及び(B)参照)を包含する。さらに、ここで使用する、「VEGF」という用語は、コグネイトVEGF受容体を通して血管新生又は血管新生過程を刺激するように働く、PIGF(胎盤成長因子)、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D及びVEGF−EなどのVEGF関連血管新生因子を指す。特に、「VEGF」という用語は、(i)VEGFR−1(Flt−1)(図4(A)及び(B)参照)、VEGFR−2(KDR/Flk−1)(図4(C)及び(D)参照)又はVEGFR−3(FLT−4)などのVEGF受容体に結合する;(ii)VEGF受容体に関連するチロシンキナーゼ活性を活性化する;及び(iii)これによって血管新生又は血管新生過程に影響を及ぼす、増殖因子のクラスの成員を意味する。「VEGF」という用語は、「VEGF」ポリペプチド及びこの対応する「VEGF」コード遺伝子又は核酸の両方を包含することが意図されている。
【0067】
「PDGFアンタゴニスト」とは、PDGFの活性又は産生を部分的に又は完全に低下させる又は阻害する物質を意味する。PDGFアンタゴニストは、PDGF−Bなどの特定PDGFを直接又は間接的に低下させ得る又は阻害し得る。さらに、「アンタゴニスト」の上記定義に一致する「PDGFアンタゴニスト」は、PDGF関連受容体シグナルを低下させる又は阻害するようにPDGFリガンド又はこのコグネイト受容体のいずれかに作用する物質を包含し得る。このような「PDGFアンタゴニスト」の例は、従って、例えば:PDGF核酸を標的するアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物;PDGFがこのコグネイト受容体に結合するのを妨げる抗PDGFアプタマー、抗PDGF抗体又は可溶性PDGFおとり受容体;コグネイトPDGF受容体(PDGFR)核酸を標的するアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物;コグネイトPDGFR受容体に結合する抗PDGFRアプタマー又は抗PDGFR抗体;及びPDGFRチロシンキナーゼ阻害因子、を含む。
【0068】
「VEGFアンタゴニスト」とは、VEGFの活性又は産生を部分的に又は完全に低下させる又は阻害する物質を意味する。VEGFアンタゴニストは、VEGF165などの特定PDGFを直接又は間接的に低下させ得る又は阻害し得る。さらに、「アンタゴニスト」の上記定義に一致する「VEGFアンタゴニスト」は、VEGF関連受容体シグナルを低下させる又は阻害するようにVEGFリガンド又はこのコグネイト受容体のいずれかに作用する物質を包含し得る。このような「VEGFアンタゴニスト」の例は、従って、例えば:VEGF核酸を標的するアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物;VEGFがこのコグネイト受容体に結合するのを妨げる抗VEGFアプタマー、抗VEGF抗体又は可溶性VEGFおとり受容体;コグネイトVEGF受容体(VEGFR)核酸を標的するアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物;コグネイトVEGFR受容体に結合する抗VEGFRアプタマー又は抗VEGFR抗体;及びVEGFRチロシンキナーゼ阻害因子、を含む。
【0069】
「血管新生疾患を抑制するために十分な量」とは、血管新生疾患又はこの症状を治療する又は予防するために必要な、本発明の組合せにおけるアンタゴニストの有効量を意味する。血管新生疾患によって引き起こされる又は血管新生疾患に寄与する状態の治療のために本発明を実施するのに使用される活性アンタゴニストの「有効量」は、投与方法、血管新生疾患の解剖学的位置、患者の年齢、体重及び全般的健康状態に依存して異なる。最終的には、医師又は獣医が適切な量と投与レジメンを決定する。このような量を、血管新生疾患を抑制するために十分な量と称する。
【0070】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0071】
ポリペプチドXの「変異体」は、1又はそれ以上のアミノ酸残基が変化しているペプチドXのアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。変異体は、置換アミノ酸が類似の構造又は化学特性を持つ、「保存的」変化(例えばイソロイシンによるロイシンの置換)を有し得る。よりまれに、変異体は「非保存的」変化(例えばトリプトファンによるグリシンの置換)を有し得る。同様の重要でない変異はまた、アミノ酸欠失又は挿入又はこの両方を含み得る。生物学的又は免疫学的活性を失わずにいずれのアミノ酸残基を置換、挿入又は欠失し得るかを決定する手引きは、当技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えばLASERGENEソフトウエア(DNASTAR)を用いて見出し得る。
【0072】
ポリヌクレオチド配列に関して使用するときの「変異体」という用語は、遺伝子のポリヌクレオチド配列又はこのコード配列に関連するポリヌクレオチド配列を包含し得る。この定義はまた、例えば「対立遺伝子」、「スプライス」、「種」又は「多型」変異体も含み得る。スプライス変異体は、標準分子に有意の同一性を有し得るが、一般にmRNAプロセシングの間のエクソンの選択的スプライシングを原因とする、より多い又はより少ない数のポリヌクレオチドを有する。対応するポリペプチドは、付加的な機能的ドメイン又はドメインの不在を有し得る。種変異体は、ある種ともう1つ別の種で異なるポリヌクレオチド配列である。生じるポリペプチドは一般に、互いに対して有意のアミノ酸同一性を有する。多型変異体は、所与の種の個体間での特定遺伝子のポリヌクレオチド配列における変異である。
【0073】
「ベクター」という用語は、これが連結されているもう1つ別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。有用なベクターの1つのタイプは、エピソーム、すなわち染色体外複製することができる核酸である。有用なベクターは、これらが連結されている核酸を自律複製及び/又は発現することができるものである。これらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指令することができるベクターを、ここでは「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは、しばしば、一般にベクター形態では染色体に結合していない環状二本鎖でループを指す、「プラスミド」の形態である。本明細書では、プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、「プラスミド」と「ベクター」は交換可能に使用される。しかし、本発明は、等しい機能を果たし、今後当技術分野において公知となるこのような他の形態の発現ベクターを含むことが意図されている。
【0074】
(併用療法)
本発明は、一部には、血管新生疾患を有する患者のための強力な治療法として適切な増殖因子アンタゴニストを使用する、VEGF及びPDGF活性の両方の特異的阻害に基づく。PDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストの組合せの投与は、いずれかのアンタゴニストを単独で投与するよりも、眼血管新生疾患を治療するためにより大きな治療的恩恵を与える。抗VEGF薬と抗PDGF薬の結合作用は、網膜内皮細胞系において血管新生を刺激する上で2つの因子の間に明らかな協力が存在しないことを示す試験に照らすと予想外である(Castellonら(2001)Exp.Eye Res.74:523−35参照)。
【0075】
PDGF及びVEGFは、身体全体にわたって、特に眼において、新しい血管の成長のための重要な刺激である。PDGFとVEGFの両方の生物活性を阻害することを目指す併用療法は、血管新生疾患を治療する又は予防するための方法を提供する。
【0076】
従って、本発明は、併用療法を用いて血管新生疾患を抑制するための方法及び組成物を特徴とする。特に、本発明は、血管細胞において働く2つの異なる細胞間連絡シグナル伝達経路、すなわちPDGF及びVEGFシグナル伝達を、眼血管新生疾患などの血管新生疾患の治療における治療標的として利用する。この併用方法は、視神経円板血管新生、虹彩血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、角膜血管新生、硝子体血管新生、緑内障、パンヌス、翼状片、黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、血管網膜症、網膜変性、黄斑変性、ブドウ膜炎、網膜の炎症性疾患及び増殖性硝子体網膜症を含むが、これらに限定されない、眼血管新生の発現によって示される多くの眼疾患及び障害を治療するために特に有用である。PDGF(PDGF−Bなど)及びVEGF(VEGF−Aなど)シグナル伝達を阻害するアンタゴニストから成る併用療法は、2つの治療のいずれかを独立して使用するのに比べて高い治療効果をもたらす。以下で論じる例は、単一PDGFアンタゴニストと単一VEGFアンタゴニストの組合せを述べるが、多数のアンタゴニスト薬の組合せが望ましい場合があることは了解される。
【0077】
本発明に従った抗PDGF及び抗VEGF併用療法は、単独で又は別の両方と共に実施ししてもよく、在宅で、医師の診察室、診療所、病院の外来科又は病院で提供され得る。治療は一般に、医師が治療効果を詳細に観察し、必要に応じて調整を行うことができるように病院で開始される。併用療法の期間は、治療する血管新生疾患の種類、患者の年齢及び状態、患者の疾患の病期及び種類、及び患者がどのように治療に応答するかに依存する。加えて、血管新生疾患を発症する危険度が大きい人(例えば糖尿病患者)は、症状の発現を阻止する又は遅延させるために治療を受けてもよい。本発明によって提供される1つの重要な利点は、血管新生疾患の治療のためのPDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストの併用は、各々のアンタゴニストの低用量及びより少ない総活性アンタゴニストの投与を可能にし、従って、より低い毒性と副作用での同様の効果及びコストの低減を提供することである。
【0078】
併用療法の各々の成分の投与の用量及び頻度は独立して管理することができる。例えば1つのアンタゴニストを1日3回投与し、2番目のアンタゴニストを1日1回投与してもよい。併用療法は、患者の身体が現在まだ予知しない何らかの副作用から回復する期間を得られるように休止期間を含む断続的周期で実施し得る。アンタゴニストはまた、1つの投与が両方のアンタゴニストを送達するように一緒に製剤し得る。
【0079】
(PDGF及びVEGFアンタゴニスト標的)
PDGFは、最初は血小板溶解産物から単離され、血清中には存在するが血漿中には存在しない主要増殖促進作用と特定された。PDGFのマイトジェン作用は、最初、線維芽細胞及び平滑筋細胞などの結合組織細胞及び培養中のグリア細胞に作用することが示された。別々の遺伝子(染色体7番及び22番)によってコードされる2つの相同なPDGFアイソフォーム、PDGF A及びBが特定された。3つの可能な二量体全てが(AA、AB及びBB)天然に生じるが、血小板からの最も豊富な種はABへテロ二量体である。翻訳後、PDGF二量体は約30kDa分泌タンパク質へとプロセシングされる。
【0080】
高親和性でPDGFに結合する2つの細胞表面タンパク質、αとβが特定された(Heldinら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:3664;Williamsら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79:5867)。どちらの種も、5つの免疫グロブリン様細胞外ドメイン、1つの膜貫通ドメイン及びキナーゼインサートドメインによって分けられた細胞内チロシンキナーゼドメインを含む。この数年間に、3つの受容体二量体(α/α、α/β及びβ/β)についての3つのPDGFアイソフォームの特異性が明らかにされた。α受容体ホモ二量体は、3つのPDGFアイソフォーム全てと高い親和性で結合し、β受容体ホモ二量体は、PDGF BBだけと高親和性で結合し、PDGF ABとは約10倍低い親和性で結合し、α/β受容体へテロ二量体は、PDGF BB及びPDGF ABと高親和性で結合する(Westermark & Heldin(1993)Acta Oncologica 32:101)。特異性パターンは、A鎖がα受容体だけに及びB鎖がαとβ受容体サブユニットの両方に高親和性で結合する能力から生じると思われる。
【0081】
一般に、本発明は、1又はそれ以上のPDGF活性を阻害する物質を提供する。これらのPDGF阻害剤又はPDGFアンタゴニストは、1又はそれ以上の形態のPDGFリガンドに作用し得る。血小板由来増殖因子は、2つの関連受容体チロシンキナーゼ、[α]受容体(PDGFR−[α])及び[β]受容体(PDGFR−[β])への結合及び二量体化を通してこれらの作用を及ぼす、A鎖(PDGF−A)及びB鎖(PDGF−B)のホモ又はヘテロ二量体を含む。加えて、PDGF複合体についての2つの新しいプロテアーゼ活性化リガンド、PDGF−C及びPDGF−Dが特定された(Liら(2000)Nat.Cell.Biol.2:302−9;Bergstenら(2001)Nat.Cell.Biol.3:512−6;及びUuteleら(2001)Circulation 103:2242−47参照)。PDGFRの異なるリガンド結合特異性の故に、PDGFR−[α][α]はPDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB及びPDGF−CCに結合し;PDGFR−[β][β]はPDGF−BB及びPDGF−DDに結合し;一方PDGFR−[α][β]はPDGF−AB、PDGF−BB、PDGF−CC及びPDGF−DDに結合することが知られている(Betsholtzら(2001)BioEssays 23:494−507参照)。
【0082】
VEGFは、全て新しい血管の形成に必要な過程である、増殖し、遊走して、マトリックス分解酵素を生産するように内皮細胞を選択的に刺激する、分泌性ジスルフィド結合ホモ二量体である(Connら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:1323−1327);FerraraとHenzel(1989)Biochem.Biophys.Res.Commun.161:851−858);Pepperら(1991)Biochem.Biophys.Res.Commun.181:902−906;Unemoriら(1992)J.Cell.Physiol.153:557−562)。VEGFは、VEGF遺伝子の選択的スプライシングの結果として4つの形態(VEGF−121、VEGF−165、VEGF−189、VEGF−206)で生じる(Houckら(1991)Mol.Endocrinol.5:1806−1814;Tischerら(1991)J.Biol.Chem.266:11947−11954)。2つのより小さな形態は拡散し得るが、より大きな2つの形態は、ヘパリンに対する高親和性の結果として、主としてこのまま細胞膜に局在する。VEGF−165もヘパリンに結合し、最も豊富な形態である。ヘパリンに結合しない唯一の形態であるVEGF−121は、VEGF受容体に対するより低い親和性(Gitay−Gorenら(1996)J.Biol.Chem.271:5519−5523)並びにより低い有糸分裂誘発能(Keytら(1996)J.Biol.Chem.271:7788−7795)を有すると思われる。VEGFの生物学的作用は、この発現が内皮起源の細胞に高度に限定される2つのチロシンキナーゼ受容体(Flt−1及びFlk−1/KDR)によって仲介される(de Vriesら(1992)Science 255:989−991;Millauerら(1993)Cell 72:835−846;Terman ら(1991)Oncogene 6:519−524)。2つの機能的受容体の発現は高親和性結合を必要とするが、内皮細胞における走化性及びマイトジェンシグナル伝達は主としてKDR受容体を通して起こると思われる(Parkら(1994)J.Biol.Chem.269:25646−25654;Seetharamら(1995)Oncogene 10:135−147;Waltenbergerら(1994)J.Biol.Chem.26988−26995)。血管の発達にとってのVEGF及びVEGF受容体の重要性は、最近、VEGF遺伝子についての1個の対立遺伝子を欠くマウス(Carmelietら(1996)Nature 380:435−439;Ferraraら(1996)Nature 380:439−442)又はFlt−1の両方対立遺伝(Fongら(1995)Nature 376:66−70)又はFlk−1遺伝子(Shalabyら(1995)Nature 376:62−66)を欠くマウスにおいて明らかにされた。各々の場合に、胚の死亡を生じさせる血管形成の異なる異常が認められた。
【0083】
組織低酸素症によって誘導される代償性血管新生は、現在では、VEGFによって仲介されることが知られている(Levyら(1996)J.Biol.Chem.2746−2753);Shweikiら(1992)Nature 359:843−845)。ヒトにおける試験は、血管新生網膜疾患では高濃度のVEGFが硝子体中に存在するが、不活性又は非血管新生疾患状態では存在しないことを示した。実験的黄斑下手術後に切除したヒト脈絡膜組織も高いVEGFレベルを示した。
【0084】
唯一の公知の内皮細胞特異的マイトジェンであることに加えて、VEGFは、巨大分子に対する血管透過性の一過性上昇を誘導するこの能力において血管新生増殖因子の中でユニークである(従って、この最初の及び代替的な名称は血管透過性因子、VPFである)(Dvorakら(1979)J.Immunol.122:166−174;Senger ら(1983)Science 219:983−985;Sengerら(1986)Cancer Res.46:5629−5632参照)。血管透過性上昇及びこの結果としての細胞外空隙における血漿タンパク質の沈着は、内皮細胞に遊走のための仮マトリックスを提供することによって新血管形成を助ける(Dvorakら(1995)Am.J.Pathol.146:1029−1039)。高透過性は、実際に、腫瘍に関連するものを含む、新しい血管の特徴である。
【0085】
(PDGF及びVEGFアンタゴニスト)
総論
本発明は、血管新生疾患のための併用療法において一緒に使用するためのPDGF及びVEGFのアンタゴニスト(すなわち阻害因子)を提供する。特異的PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストは当技術分野において公知であり、以下の章で簡単に述べる。現在当業者に入手可能な又は今後入手可能となるさらなる他のPDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストは、以下でさらに提供する章を含む、本明細書の教示及び手引きと共に当技術分野において常套的な慣用技術を用いて特定及び生産し得る抗体、アプタマー、アンチセンスオリゴマー、リボザイム及びRNAi組成物を含む。
【0086】
PDGFアンタゴニスト
一般に、PDGF(例えばPDGF−B)の阻害は様々な方法で達成し得る。例えばPDGFの活性又は産生を阻害する様々なPDGFアンタゴニストが入手可能であり、本発明の方法において使用することができる。例示的なPDGFアンタゴニストは、以下で述べるもののようなPDGFの核酸リガンド又はアプタマーを含む。また、PDGFアンタゴニストは、例えば抗PDGF抗体又は抗体フラグメントであり得る。従って、PDGF分子は、受容体へのこの結合を阻害することによって不活性となる。加えて、核酸レベルでPDGF発現を阻害するアンチセンスRNA、リボザイム及びRNAi分子などの核酸分子は、本発明におけるアンタゴニストとして有用である。他のPDGFアンタゴニストは、ペプチド、タンパク質、環状ペプチド又は小有機化合物を含む。さらに、PDGFのシグナル伝達作用は、例えば以下で述べるような低分子チロシンキナーゼ阻害性アンタゴニストを使用することにより、この下流シグナル伝達を断つことによって阻害し得る。化合物又は物質がPDGFアンタゴニストとして働く能力は、当技術分野において公知の方法に従って及び、さらに、Daiら(2001)Genes & Dev.15: 1913−25;Zippelら(1989)Eur.J.Cell Biol.50 (2): 428−34;及びZwillerら(1991)Oncogene 6:219−21に述べられているように判定し得る。
【0087】
本発明はさらに、当技術分野において公知のPDGFアンタゴニスト並びに以下で裏付けられるもの及び通常技術範囲内で創造されるあらゆる等価物を包含する。例えばPDGFに対する阻害抗体は当技術分野において公知であり、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,976,534号、同第5,833,986号、同第5,817,310号、同第5,882,644号、同第5,662,904号、同第5,620,687号、同第5,468,468号及び国際公開公報第PCT WO2003/025019号に述べられているものがある。加えて、本発明は、この全体が参照によりここに組み込まれる米国特許第5,521,184号並びに国際公開公報第W02003/013541号、同第W02003/078404号、同第W02003/099771号、同第W02003/015282号及び同第W02004/05282号に開示されているもののような、PDGFアンタゴニストであるN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体を含む。
【0088】
PDGFの作用をブロックする小分子は当技術分野において公知であり、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,528,526号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、同第6,524,347号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、同第6,482,834号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、同第6,472,391号(PDGFRチロシンキナーゼ阻害剤)、同第6,696,434号、同第6,331,555号、同第6,251,905号、同第6,245,760号、同第6,207,667号、同第5,990,141号、同第5,700,822号、同第5,618,837号及び同第5,731,326号に述べられているものがある。
【0089】
PDGFの作用をブロックするタンパク質及びポリペプチドは、当技術分野において公知であり、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,350,731号(PDGFペプチド類似体)、同第5,952,304号に述べられているものがある。
【0090】
EGF及び/又はPDGF受容体チロシンキナーゼを阻害するビス単環式及び二環式アリール及びヘテロアリール化合物は、当技術分野において公知であり、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,476,851号、同第5,480,883号、同第5,656,643号、同第5,795,889号及び同第6,057, 320号に述べられているものがある。
【0091】
PDGFの阻害のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野において公知であり、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,869,462号及び同第5,821,234号に述べられているものがある。
【0092】
PDGFの阻害のためのアプタマー(核酸リガンドとしても知られる)は、当技術分野において公知であり、例えばこの各々の内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,582,918号、同第6,229,002号、同第6,207,816号、同第5,668,264号、同第5,674,685号、及び同第5,723,594号に述べられているものがある。
【0093】
当技術分野において公知の、PDGFを阻害するための他の化合物は、この各々の内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,238,950号、同第5,418,135号、同第5,674,892号、同第5,693,610号、同第5,700,822号、同第5,700,823号、同第5,728,726号、同第5,795,910号、同第5,817,310号、同第5,872,218号、同第5,932,580号、同第5,932,602号、同第5,958,959号、同第5,990,141号、同第6,358,954号、同第6,537,988号及び同第6,673,798号に述べられているものを含む。
【0094】
VEGFアンタゴニスト
VEGF(例えばVEGF−A)の阻害は様々な方法で達成される。例えばアプタマー、アンチセンスRNA、リボザイム、RNAi分子及びVEGF抗体などの核酸分子を含む、VEGFの活性又は産生を阻害する様々なVEGFアンタゴニストが入手可能であり、本発明の方法において使用することができる。例示的なVEGFアンタゴニストは、以下で述べるもののようなVEGFの核酸リガンド又はアプタマーを含む。VEGF−Aに対する特に有用なアンタゴニストは、高く、特異的な親和性で主要な可溶性ヒトVEGFアイソフォームに結合する修飾ペグ化アプタマー、EYE001(以前はNX1838と称されていた)である(米国特許第6,011,020号;同第6,051,698号;及び同第6,147,204号参照)。前記アプタマーは、VEGFに対する高親和性抗体と同様にVEGFに結合して、VEGFを不活性化する。もう1つの有用なVEGFアプタマーは、この非ペグ化形態のEYE001である。また、VEGFアンタゴニストは、例えば抗VEGF抗体又は抗体フラグメントであり得る。従って、VEGF分子は、受容体へのこの結合を阻害することによって不活性となる。加えて、核酸レベルでVEGF発現又はRNA安定性を阻害するアンチセンスRNA、リボザイム及びRNAi分子などの核酸分子は、本発明の方法及び組成物における有用なアンタゴニストである。他のVEGFアンタゴニストは、ペプチド、タンパク質、環状ペプチド及び小有機化合物を含む。
【0095】
例えば付随するシグナル伝達作用を伴わずにVEGF受容体に結合する可溶性トランケート形態のVEGFも、アンタゴニストとして働く。さらに、VEGFのシグナル伝達作用は、例えば以下でさらに述べるような、VEGF受容体チロシンキナーゼ活性の低分子阻害剤を含む多くのアンタゴニストを使用することにより、この下流シグナル伝達を断つことによって阻害し得る。
【0096】
化合物又は物質がVEGFアンタゴニストとして働く能力は、当技術分野において周知の多くの標準方法に従って判定し得る。例えばVEGFの生物活性の1つは、血管内皮細胞上の受容体への特異的結合を通して血管透過性を上昇させることである。この相互作用は、この後の血管液の漏出を伴う、緊密な内皮連結の弛緩を生じさせる。VEGFによって誘導される血管漏出は、VEGFの皮内注射の結果としての、モルモットの血管系からのエバンスブルー染料の漏出を追跡することによってインビボで測定できる(Dvorakら、Vascular Permeability Factor/Vascular Endothelial Growth Factor,Microvascular Hyperpermeability,and Angiogenesisより;及び(1995)Am.J.Pathol.146:1029)。同様に、VEGFのこの生物活性をブロックするアンタゴニストの能力を測定するアッセイが使用できる。
【0097】
血管透過性アッセイの1つの有用な例では、VEGF165(20−30nM)をあらかじめ半ビボ(ex vivo)でEYE001(30nM−1μM)又は候補VEGFアンタゴニストと混合し、この後皮内注射によってモルモットの背の毛刈りした皮膚に投与する。注射の30分後、注射部位の周囲のエバンスブルー染料漏出を、コンピュータ形態計測分析システムを使用して標準方法に従って定量する。血管系からの指示薬染料のVEGF誘導性漏出を阻害する化合物は、本発明の方法及び組成物における有効なアンタゴニストとみなされる。
【0098】
化合物がVEGFアンタゴニストであるかどうかを判定するためのもう1つのアッセイは、いわゆる角膜血管新生アッセイである。このアッセイでは、VEGF165(3pmol)を含むメタクリル酸ポリマーペレットをラットの角膜支質に移植して、正常無血管角膜内への血管増殖を誘導する。次に、候補VEGFアンタゴニストを1mg/kg、3mg/kg及び10mg/kgの用量で1日1回又は2回、5日間にわたってラットに静脈内投与する。治療期間の終了時に、個々の角膜を全て顕微鏡写真撮影する。新しい血管が角膜組織において発達する程度及び候補化合物によるこれらの阻害を、顕微鏡写真の標準化形態計測分析によって定量する。リン酸緩衝食塩水(PBS)による処置と比較したとき角膜におけるVEGF依存性血管新生を阻害する化合物は、本発明の方法及び組成物における有用なアンタゴニストとみなされる。
【0099】
候補VEGFアンタゴニストはまた、未熟児網膜症のマウスモデルを用いて特定される。1つの有用な例では、それぞれ9、8、8、7及び7匹のマウスの同腹子を室内空気中に放置するか又は高酸素状態にして、リン酸緩衝食塩水(PBS)又は候補VEGFアンタゴニスト(例えば1mg/kg、3mg/kg又は10mg/kg/日で)で腹腔内処置する。次に、アッセイのエンドポイントである、網膜の内境界膜を通しての硝子体液への新しい毛細血管の成長を、全ての処置及び対照マウスからの各々の眼の20の組織切片において、新生血管芽の顕微鏡特定及び計数によって評価する。未処置対照に比べて処置マウスにおける網膜新生血管系の減少は、有用なVEGFアンタゴニストを特定するとみなされる。
【0100】
さらにもう1つの例示的スクリーニングアッセイでは、インビボでのヒト腫瘍異種移植片アッセイを用いて候補VEGFアンタゴニストを特定する。このスクリーニングアッセイでは、候補VEGFアンタゴニストのインビボでの効果を、ヌードマウスに移植したヒト腫瘍異種移植片(A673横紋筋肉腫及びウィルムス腫瘍)において試験する。マウスを候補VEGFアンタゴニストで処置する(例えば確認された腫瘍(200mg)の発現後1日1回10mg/kgを腹腔内投与する)。対照群を対照薬で処置する。対照に比べてA673横紋筋肉腫の腫瘍増殖及びウィルムス腫瘍を阻害すると特定された候補化合物は、本発明の方法及び組成物における有用なアンタゴニストとみなされる。
【0101】
VEGFアンタゴニスト活性を検定するさらなる方法は、当技術分野において公知であり、以下でさらに詳述する。
【0102】
本発明はさらに、当技術分野において公知のVEGFアンタゴニスト並びに以下で裏付けられるもの及び通常技術範囲内で創造されるあらゆる等価物を包含する。例えばVEGFに対する阻害抗体は当技術分野において公知であり、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,524,583号、同第6,451,764号(VRP抗体)、同第6,448,077号、同第6,416,758号、同第6,403,088号(VEGF−Cに対する)、同第6,383,484号(VEGF−Dに対する)、同第6,342,221号(抗−VEGF抗体)、同第6,342,219号、同第6,331,301号(VEGF−B抗体)、及び同第5,730,977号、及びPCT国際公開公報第W096/30046号、同第WO97/44453号、及び同第WO98/45331号に述べられているものがある。
【0103】
VEGF受容体に対する抗体も、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,840,301号、同第5,874,542号、同第5,955,311号、同第6,365,157号、及びPCT国際公開公報第WO04/003211号に述べられているもののように、当技術分野において公知である。
【0104】
例えばVEGFR関連チロシンキナーゼ活性を阻害することによって、VEGFの作用をブロックする小分子は、当技術分野において公知であり、例えばこの各々の内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,514,971号、同第6,448,277号、同第6,414,148号、同第6,362,336号、同第6,291,455号、同第6,284,751号、同第6,177,401号、同第6071,921号、及び同第6001,885号(VEGF発現のレチノイド阻害剤)に述べられているものがある。
【0105】
VEGFの作用をブロックするタンパク質及びポリペプチドは、当技術分野において公知であり、例えばこの各々の内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,576,608号、同第6,559,126号、同第6,541,008号、同第6,515,105号、同第6,383,486号(VEGFおとり受容体)、同第6,375,929号(VEGFおとり受容体)、同第6,361,946号(VEFGペプチド類似体阻害剤)、同第6,348,333号(VEGFおとり受容体)、同第6,559,126号(VEGFに結合して、VEGFRへの結合をブロックするポリペプチド)、同第6,100,071号(VEGFおとり受容体)、及び同第5,952,199号に述べられているものがある。
【0106】
VEGF及び/又はVEGFR遺伝子発現及び/又は活性に対するRNA干渉(RNAi)を仲介することができる短い干渉性核酸(siNA)、短い干渉性RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、ミクロRNA(miRNA)及び短いヘアピンRNA(shRNA)は、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、PCT国際公開公報第WO03/070910号に開示されているように、当技術分野において公知である。
【0107】
VEGFの阻害のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは当技術分野において公知であり、例えばこの各々の内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,611,135号、同第5,814,620号、同第6,399,586号、同第6,410,322号、及び同第6,291,667号に述べられているものがある。
【0108】
VEGF阻害のためのアプタマー(核酸リガンドとしても知られる)は、当技術分野において公知であり、例えばこの各々の内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,762,290号、同第6,426,335号、同第6,168,778号、同第6,051,698号、及び同第5,859,228号に述べられているものがある。
【0109】
抗体アンタゴニスト
本発明は、PDGF及びVEGFに対するアンタゴニスト抗体並びにこれらのコグネイト受容体PDGFR及びVEGFRを含む。本発明の抗体アンタゴニストは、リガンドとこのコグネイト受容体の結合をブロックする。従って、本発明のPDGFアンタゴニスト抗体は、PDGF並びにPDGFR標的に対する抗体を含む。
【0110】
本発明のアンタゴニスト抗体は、モノクローナル阻害抗体を含む。モノクローナル抗体又はこのフラグメントは、IgM、IgG、IgD、IgE、IgAなどの全ての免疫グロブリンクラス、又はIgGサブクラスなどのこれらのサブクラス又はこれらの混合物を包含する。IgG及びIgG、IgG、IgG2a、IgG2b、IgG、又はIgGなどのこのサブクラスは有用である。IgGサブタイプ、IgG1/κ及びIgG2b/κは、有用な実施態様として包含される。挙げられるフラグメントは全て、抗体に対応し、Fv、Fab又はF(ab’)フラグメントなどの軽鎖及び重鎖によって形成される結合部位を有する抗体の部分などの、哺乳動物PDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)に対して高い結合及び中和活性を示す1又は2個の抗原補体結合部位を有するトランケート又は修飾された抗体フラグメントである。Fv、Fab又はF(ab’)などのトランケート型二本鎖フラグメントは特に有用である。これらのフラグメントは、例えば抗体のFc部分をパパイン又はペプシンなどの酵素で取り除くことによる酵素的手段によって、化学的酸化によって又は抗体遺伝子の遺伝子操作によって入手できる。また、遺伝子操作された非トランケート型フラグメントを使用することも可能であり、好都合である。抗PDGF又はVEGF抗体又はこのフラグメントは、単独で又は混合物中で使用することができる。
【0111】
新規抗体、抗体フラグメント、この混合物又は誘導体は、好都合には1×10−7Mから1×10−12M、又は1×10−8Mから1×10−11M、又は1×10−9Mから5×10−10Mの範囲内のPDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)に対する結合親和性を有する。
【0112】
遺伝子操作のための抗体遺伝子は、例えばハイブリドーマ細胞から、当業者に公知の方法で単離することができる。このために、抗体産生細胞を培養し、細胞の光学密度が十分になったとき、細胞をグアニジニウムチオシアネートで溶解し、酢酸ナトリウムで酸性化して、フェノール、クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出し、イソプロパノールで沈殿させて、エタノールで洗浄することにより、公知の方法でmRNAを細胞から単離する。次に逆転写酵素を用いてmRNAからcDNAを合成する。合成したcDNAを、直接又は遺伝子操作後、例えば部位指定突然変異誘発、挿入、逆位、欠失又は塩基交換の導入によって、適切な動物、真菌、細菌又はウイルスベクターに挿入し、適切な宿主生物において発現することができる。有用な細菌又は酵母ベクターは、大腸菌などの細菌又はSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母における遺伝子のクローニング及び発現のためのpBR322、pUC18/19pACYC184、λ又は酵母μベクターである。
【0113】
本発明はさらに、PDGF又はVEGF抗体を合成する細胞に関する。これらは、叙述したような形質転換後の動物、真菌、細菌細胞又は酵母細胞である。これらは、好都合にはハイブリドーマ細胞又はトリオーマ細胞であり、典型的にはハイブリドーマ細胞である。これらのハイブリドーマ細胞は、例えばPDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)で免疫した動物から公知の方法で生産することができ、これらの抗体産生B細胞を単離し、これらの細胞をPDGF又はVEGF結合抗体に関して選択して、続いてこれらの細胞を、例えばヒト又は動物、例えばマウス骨髄腫細胞、ヒトリンパ芽球細胞又はヘテロハイブリドーマ細胞に融合することによって(例えばKoehlerら(1975) Nature 256:496)又はこれらの細胞を適切なウイルスで感染させて不死化細胞系を樹立することによって生産できる。融合によって生産されるハイブリドーマ細胞系は有用であり、マウスハイブリドーマ細胞系は特に有用である。本発明のハイブリドーマ細胞系は、IgG型の有用な抗体を分泌する。本発明のmAb抗体の結合は、高親和性で結合し、PDGF又はVEGFの生物活性(例えば血管新生活性)を低下させるか又は中和する。
【0114】
本発明はさらに、PDGF又はVEGF阻害活性を保持するが、薬剤としてのこれらの使用に関連する1又はそれ以上の他の特性、例えば血清安定性又は生産効率が変化している、これらの抗PDGF又はVEGF抗体の誘導体を含む。このような抗PDGF又はVEGF抗体誘導体の例は、抗体の抗原結合領域に由来するペプチド、ペプチドミメティック、及びポリエチレングリコール、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成ポリマー又はセルロース、セファロース又はアガロースなどの天然ポリマーのような固体又は液体担体に結合した抗体、抗体フラグメント又はペプチド、又は酵素、毒素又はH、123I、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、55Fe、90Y、90mTc、75Seなどの放射性又は非放射性マーカーとの複合体、又はローダミン、フルオレセイン、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、フルオレスカミン、金属キレート、アビジン、ストレプトアビジン又はビオチンなどの蛍光/化学発光標識に共有結合した抗体、フラグメント又はペプチドを含む。
【0115】
新規抗体、抗体フラグメント、この混合物及び誘導体は、直接、乾燥後、例えば凍結乾燥後、上記担体への結合後、又は医薬製剤を生産するための他の医薬活性物質又は補助物質との製剤後に使用することができる。挙げられる活性及び補助物質の例は、他の抗体、一般的な抗生物質又はスルホンアミドなどの殺菌又は静菌作用を有する抗菌作用物質、抗腫瘍薬、水、緩衝剤、塩類溶液、アルコール、脂肪、ろう、不活性賦形剤、又はアミノ酸、増粘剤又は糖類などの非経口製品のための慣例的な他の物質である。これらの医薬製剤は疾患を制御するために使用され、AMD及び糖尿病性網膜症を含む眼血管新生疾患及び障害を制御するために有用である。
【0116】
新規抗体、抗体フラグメント、この混合物及び誘導体は、直接、又は上述したような固体又は液体担体、酵素、毒素、放射性又は非放射性標識又は蛍光/化学発光標識に結合した後、治療又は診断において使用することができる。
【0117】
本発明のヒトPDGF又はVEGFモノクローナル抗体は、当技術分野において公知の何らかの手段によって入手し得る。例えば哺乳動物をヒトPDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)で免疫する。精製ヒトPDGF及びVEGFは市販されている(例えばCell Sciences,Norwood,MA並びに他の商業販売者から)。また、ヒトPDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)は、ヒト胎盤組織から容易に精製し得る。抗ヒトPDGF又はVEGF抗体を惹起するために使用される哺乳動物は限定されず、霊長動物、げっ歯動物(マウス、ラット又はウサギなど)、ウシ、ヒツジ、ヤギ又はイヌであり得る。
【0118】
次に、脾細胞などの抗体産生細胞を免疫動物から取り出し、骨髄腫細胞と融合する。骨髄腫細胞は当技術分野において周知である(例えばp3x63−Ag8−653、NS−0、NS−1又はP3U1細胞が使用し得る)。細胞融合操作は、当技術分野で公知の慣例的な方法によって実施し得る。
【0119】
細胞融合操作に供した後の細胞を、次に、ハイブリドーマを選択するためにHAT選択培地で培養する。この後、抗ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングする。このスクリーニングは、例えば産生されたモノクローナル抗体を、ヒトPDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)を固定した壁に結合させる、サンドイッチ酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)等によって実施し得る。この場合、二次抗体として、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等のような酵素で標識した、免疫動物の免疫グロブリンに特異的な抗体を使用し得る。標識酵素をこの基質と反応させ、生じた色を測定することによって標識を検出し得る。基質として、3,3−ジアミノベンジジン、2,2−ジアミノビス−o−ジアニシジン、4−クロロナフトール、4−アミノアンチピリン、o−フェニレンジアミン等を生成し得る。
【0120】
上述した操作により、抗ヒトPDGF又はVEGF抗体を生産するハイブリドーマが選択できる。選択したハイブリドーマを、次に、慣例的な限界希釈法又は軟寒天法によってクローン化する。所望する場合は、クローン化したハイブリドーマを血清含有又は無血清培地を用いて大規模培養するか、又はマウスの腹腔内に接種して、腹水から回収し、これによって多数のクローン化ハイブリドーマを入手してもよい。
【0121】
選択した抗ヒトPDGF又はVEGFモノクローナル抗体の中から、次に、対応するリガンド/受容体対の結合及び活性化を妨げる能力を有するもの(例えば細胞ベースのPDGF又はVEGFアッセイ系において(上記参照))をさらなる分析と操作のために選択する。抗体が受容体/リガンドの結合及び/又は活性化をブロックする場合、これは、試験したモノクローナル抗体がヒトPDGF又はVEGFのPDGF又はVEGF活性を低下させる又は中和する能力を有することを意味する。すなわち、このモノクローナル抗体は、ヒトPDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)の決定的に重要な結合部位を特異的に認識する及び/又は妨げる。
【0122】
モノクローナル抗体は、ここではさらに、これらが所望生物活性を示す限り、起源の種、免疫グロブリンクラス又はサブクラスの名称並びに抗体フラグメント[例えばFab、F(ab)及びFv]に関わりなく、抗PDGF又はVEGF抗体の可変ドメイン(超過変ドメインを含む)を定常ドメインで(例えば「ヒト化」抗体)、又は軽鎖を重鎖で、又は1つの種からの鎖を別の種からの鎖でスプライシングすることによって、又は、異種タンパク質との融合によって生産されるハイブリッド及び組換え抗体を含む。[例えば米国特許第4,816,567号及びMage & Lamoyi,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.79−97より(Marcel Dekker,Inc.),New York(1987)参照]。
【0123】
従って、「モノクローナル」という用語は、得られる抗体の性質が抗体の実質的に均一な個体群からであることを示し、特定方法による抗体の生産を必要すると解釈されるべきではない。例えば本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler & Milstein,Nature 256:495(1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ方法によって作製してもよく、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製してもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えばMcCaffertyら、Nature 348:552−554(1990)に述べられている手法を用いて作製されるファージライブラリーから単離してもよい。
【0124】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はこのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab)又は抗体の他の抗原結合サブ配列など)である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望特異性、親和性及び容量を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒトFR残基で置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又は導入されたCDR又はFR配列のいずれにおいても認められない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改善し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全部又は実質的に全部のCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、及び全部又は実質的に全部のFR残基がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む。
【0125】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、ヒト以外のソースから導入された1又はそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば、典型的には「外来性」可変ドメインからとられる、「外来性」残基と称される。ヒト化は、基本的にはWinterとこの共同研究者達(Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;及びVerhoeyenら(1988) Science 239:1534−1536)の方法に従うが、但し、げっ歯動物CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、実質的に1つの無傷ヒト可変ドメイン未満がヒト以外の種からの対応配列によって置換された、キメラ抗体である。実際上、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基及びおそらくは一部のFR残基が、げっ歯動物抗体における類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0126】
ヒト化抗体を作製するときに使用する、軽鎖及び重鎖の両方の、ヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従って、げっ歯動物抗体の可変ドメインの配列を公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。げっ歯動物のものに最も近いヒト配列を、次に、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受け入れる(Simsら(1993)J.Immunol.,151:2296;及びChothiaとLesk(1987)J. Mol.Biol.,196:901)。もう1つの方法は、軽鎖又は重鎖の特定サブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定フレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体のために使用し得る(Carterら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),89:4285;及びPrestaら(1993)J.Immnol.,151:2623)。
【0127】
抗原に対する高い親和性及び他の好都合な生物学的特性を保持しながら抗体をヒト化することはさらに重要である。この目標を達成するために、1つの有用な方法によれば、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列と様々な概念上のヒト化産物の分析の過程によって作製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者には熟知されている。選択した候補免疫グロブリン配列の確率的三次元配座構造を例証し、表示するコンピュータプログラムが使用可能である。これらの表示の検討は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の想定される役割の分析、すなわち候補免疫グロブリン配列がこの抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、標的抗原に対する高い親和性などの所望抗体特性が達成されるように、コンセンサス及び重要配列からFR残基を選択し、結合することができる。一般に、CDR残基は、直接に及びほとんど実質的に抗原結合への影響に関与する。
【0128】
PDGF又はVEGFに対するヒトモノクローナル抗体も本発明に包含される。このような抗体は、ハイブリドーマ法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の作製のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトへテロ骨髄腫細胞系は、例えばKozbor(1984)J.Immunol.,133,3001;Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoernerら(1991)J.Immunol.,147:86−95によって述べられている。
【0129】
今や、免疫後に、内因性免疫グロブリンの産生なしでヒト抗体の完全なレパートリーを生産することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作製することが可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異型マウスにおける抗体重鎖接合領域(J)のホモ接合欠失が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記述された。このような生殖細胞系突然変異型マウスへのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの転移は、抗原投与後にヒト抗体の産生を生じさせる(例えばJakobovitsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)90:2551;Jakobovitsら(1993)Nature,362:255−258;及びBruggermannら(1993)Year in Immuno.,7:33参照)。
【0130】
また、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体フラグメントを生産するためにファージディスプレイテクノロジー(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−553)が使用できる(総説については、例えばJohnsonら(1993)Current Opinion in Structural Biology,3:564−571)。V遺伝子セグメントのいくつかのソースがファージディスプレイのために使用できる。例えばClacksonら((1991)Nature,352:624−628)は、免疫マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。基本的にMarksら((1991)J.Mol.Biol.,222:581−597、又はGriffithら(1993)EMBO J.,12:725−734)が述べた手法に従って、非免疫ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築し、抗原の多様なアレイ(自己抗原を含む)に対する抗体を単離することができる。
【0131】
自然免疫応答では、抗体遺伝子は高い割合で突然変異を蓄積する(体細胞超突然変異)。導入される変化の一部は、より高い親和性を付与し、この後の抗原投与の間に、高親和性表面免疫グロブリンを提示するB細胞が選択的に複製され、分化する。この自然過程は、「チェーンシャッフリング」として知られる手法を用いることによって模倣できる(Marksら(1992)Bio.Technol.,10:779−783参照)。この方法では、ファージディスプレイによって得た「一次」ヒト抗体の親和性を、この後重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を非免疫ドナーから得たVドメイン遺伝子の天然に生じる変異体レバートリー(レパートリー)で置き換えることによって改善できる。この手法は、nM範囲の親和性を有する抗体及び抗体フラグメントの生産を可能にする。非常に大きなファージ抗体レパートリーを作製するための戦略が、Waterhouseら((1993)Nucl.Acids Res.,21:2265−2266)によって述べられている。
【0132】
遺伝子シャッフリングはまた、げっ歯動物抗体からヒト抗体を誘導するために使用でき、この場合ヒト抗体は出発げっ歯動物抗体に類似の親和性及び特異性を有する。「エピトープ刷込み」とも称される、この方法によれば、ファージディスプレイ手法によって得たげっ歯動物抗体の重鎖又は軽鎖Vドメイン遺伝子をヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換し、げっ歯動物−ヒトキメラを作製する。抗原に関する選択は、機能的抗原結合部位を回復することができるヒト可変ドメインの単離をもたらす、すなわちエピトープがパートナーの選択を支配する(刷込みする)。残りのげっ歯動物Vドメインを置換するためにこの工程を反復して、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT国際公開公報第WO93/06213号参照)。CDR移植による伝統的なげっ歯動物抗体のヒト化と異なり、この手法は、げっ歯動物起源のフレームワーク又はCDR残基を全く持たない、完全なヒト抗体を提供する。
【0133】
アプタマーアンタゴニスト
本発明は、PDGF及び/又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)に対するアプタマーアンタゴニストを提供する。核酸リガンドとしても知られるアプタマーは、あらかじめ選択された標的に結合し、一般に、この標的に拮抗する(すなわち阻害する)非天然に生じる核酸である。
【0134】
アプタマーは、オリゴマー又はオリゴヌクレオチドを生産する公知の何らかの方法によって作製することができる。多くの合成方法が当技術分野において公知である。例えば残留プリンリボヌクレオチドを含み、3’−エキソヌクレアーゼによって起こりうる分解を防ぐために逆方向チミジン残基(Ortigaoら、Antisense Research and Development,2:129−146(1992))又は3’末端の2つのホスホロチオエート結合などの適切な3’末端を担持する2’−O−アリル修飾オリゴマーは、何らかの市販のDNA/RNAシンセサイザーでの固相β−シアノエチルホスホルアミダイト化学(Sinhaら、Nucleic Acids Res.,12:4539−4557(1984))によって合成することができる。1つの方法は、リボヌクレオチドのための2’−O−tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)保護戦略であり(Usmanら、J.Am.Chem.Soc.,109:7845−7854(1987))、必要な全ての3’−O−ホスホルアミダイトが市販されている。加えて、アミノメチルポリスチレンが、この好都合な特性の故に支持体材料として使用し得る(McCollumとAndrus(1991)Tetrahedron Lett.,32:4069−4072)。市販のフルオレセインホスホルアミダイトを使用することにより、合成の間に基質RNAの5’末端にフルオレセインを添加することができる。一般に、アプタマーオリゴマーは標準RNAサイクルを使用して合成できる。構築の完了後、密封バイアルにおいて濃縮水性アンモニア/エタノール(3:1 v/v)によって55℃で8時間処理することにより、全ての塩基不安定保護基を除去する。エタノールは、さもなければ脱保護の塩基性条件下で生じるリボヌクレオチド位置での評価し得る鎖切断を導く、2’−O−TBDMS基の早過ぎる除去を抑制する(Usmanら(1987)J.Am.Chem.Soc.,109:7845−7854)。凍結乾燥後、TBDMS保護されたオリゴマーをトリエチルアミントリヒドロフルオリド/トリエチルアミン/N−メチルピロリジノンの混合物によって60℃で2時間処理することにより、中性条件下でシリル保護基の迅速で効率的な除去が得られる(Wincottら(1995)Nucleic Acids Res.,23:2677−2684参照)。次に、完全に脱保護されたオリゴマーを、CathalaとBrunel((1990)Nucleic Acids Res.,18:201)の手法に従ってブタノールで沈殿させ得る。精製は、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって又はイオン交換HPLC(Sproatら(1995)Nucleosides and Nucleotides,14:255−273)と逆相HPLCの組合せによって実施することができる。細胞における使用のために、合成したオリゴマーを、アセトン中の過塩素酸ナトリウムでの沈殿によってナトリウム塩に転換する。この後、市販されている小さな使い捨てゲルろ過カラムを使用して微量の残留塩を除去し得る。最終段階として、単離したオリゴマーの真正さをマトリックス支援レーザー脱離質量分析法(Pielesら(1993)Nucleic Acids Res.,21:3191−3196)及びヌクレオシド塩基組成物分析によって確認し得る。
【0135】
開示するアプタマーはまた、ヌクレオチドサブユニットが酵素的操作のために使用可能であるときは、酵素的方法を通して生産することもできる。例えばインビトロでのRNAポリメラーゼT7反応を通してRNA分子を作製できる。これらはまた、T7を発現する細菌株又は細胞系によって作製し、この後これらの細胞から単離することもできる。以下で論じるように、開示するアプタマーはまた、ベクター及びプロモーターを使用して直接細胞において発現することもできる。
【0136】
アプタマーは、本発明の他の核酸分子と同様に、化学修飾ヌクレオチドをさらに含み得る。核酸の診断又は治療的使用において考慮すべき1つの問題は、所望効果が発現する前の、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼなどの細胞内及び細胞外酵素による体液中のホスホジエステル形態のオリゴヌクレオチドの潜在的な急速分解である。核酸リガンドのインビボでの安定性を高めるため又は核酸リガンドの送達を増強又は仲介するために、核酸リガンドのある種の化学修飾を行うことができる(参照によりここに組み込まれる、「修飾ヌクレオチドを含む高親和性核酸リガンド(High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides)」と題する米国特許出願第5,660,985号参照)。
【0137】
本発明において考慮される核酸リガンドの修飾は、付加的な電荷、分極性、疎水性、水素結合、静電的相互作用及び流動性(fluxionality)を組み込んだ他の化学基を、核酸リガンド塩基に又は全体としての核酸リガンドに与えるものを含むが、これらに限定されない。このような修飾は、2’位の糖修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモ又は5−ヨードウラシルの置換;骨格修飾、ホスホロチオエート又はアルキルホスフェート修飾、メチル化、イソ塩基イソシチジン及びイソグアニジン等のような異常塩基対合の組合せを含むが、これらに限定されない。修飾はまた、キャップ形成又は糖部分による修飾などの3’及び5’修飾を含み得る。本発明の一部の実施態様では、核酸リガンドは、ピリミジン残基の糖部分で修飾された2’−フルオロ(2’−F)であるRNA分子である。
【0138】
アプタマーの安定性は、このような修飾の導入によって並びにRNAのリン酸骨格に沿った修飾及び置換によって大きく上昇し得る。加えて、ヌクレオ塩基自体に、分解を阻止し、所望ヌクレオチド相互作用を上昇させ得る又は望ましくないヌクレオチド相互作用を低下させ得る様々な修飾を施すことができる。従って、ひとたびアプタマーの配列がわかれば、以下で述べる合成手順によって又は当業者に公知の手順によって、修飾又は置換を行うことができる。
【0139】
他の修飾は、リボ核酸(すなわちA、C、G及びU)及びデオキシリボ核酸(すなわちA、C、G及びT)において生じる標準塩基、糖及び/又はリン酸骨格化学構造の変異である、修飾塩基(又は修飾ヌクレオシド又は修飾ヌクレオチド)の組込みを含む。例えばGm(2’−メトキシグアニル酸)、Am(2’−メトキシアデニル酸)、Cf(2’−フルオロシチジル酸)、Uf(2’−フルオロウリジル酸)、Ar(リボアデニル酸)は、本発明の範囲内に包含される。アプタマーはまた、シトシン又は、5−メチルシトシン、4−アセチルシトシン、3−メチルシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン、2−チオシトシン、5−ハロシトシン(例えば5−フルオロシトシン、5−ブロモシトシン、5−クロロシトシン及び5−ヨードシトシン)、5−プロピルシトシン、6−アゾシトシン、5−トリフルオロメチルシトシン、N4,N4−エタノシトシン、フェノキサジンシチジン、フェノチアジンシチジン、カルバゾールシチジン又はピリリドインドールシチジンを含むシトシン関連塩基を包含し得る。アプタマーはさらに、グアニン又は、6−メチルグアニン、1−メチルグアニン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2−プロピルグアニン、6−プロピルグアニン、8−ハログアニン(例えば8−フルオログアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン及び8−ヨードグアニン)、8−アミノグアニン、8−スルフヒドリルグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルグアニン、7−メチルグアニン、8−アザグアニン、7−デアザグアニン又は3−デアザグアニンを含むグアニン関連塩基を包含し得る。アプタマーはさらに、アデニン又は、6−メチルアデニン、N6−イソペンテニルアデニン、N6−メチルアデニン、1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、8−ハロアデニン(例えば8−フルオロアデニン、8−ブロモアデニン、8−クロロアデニン及び8−ヨードアデニン)、8−アミノアデニン、8−スルフヒドリルアデニン、8−チオアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニン、7−メチルアデニン、2−ハロアデニン(例えば2−フルオロアデニン、2−ブロモアデニン、2−クロロアデニン及び2−ヨードアデニン)、2−アミノアデニン、8−アザアデニン、7−デアザアデニン又は3−デアザアデニンを含むアデニン関連塩基を包含し得る。また、ウラシル又は、5−ハロウラシル(例えば5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル及び5−ヨードウラシル)、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、1−メチルプソイドウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、5−メチルアミノメチルウラシル、5−プロピニルウラシル、6−アゾウラシル又は4−チオウラシルを含むウラシル関連塩基を包含する。
【0140】
当技術分野において公知の他の修飾塩基変異体の例は、限定を伴わずに、37C.F.R.§1.822(p)(1)にリストされているもの、例えば4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、2’−メトキシシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルプソイドウリジン、b−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、b−D−マンノシルクエオシン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−b−D−リボフラノシル−2−メチルチオプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、N−((9−b−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチル−カルバモイル)トレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、クエオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−b−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジンを含む。
【0141】
また、米国特許第3,687,808号、同第3,687,808号、同第4,845,205号、同第5,130,302号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,594,121号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、同第5,645,985号、同第5,830,653号、同第5,763,588号、同第6,005,096号、及び同第5,681,941号に述べられている修飾ヌクレオ塩基も包含される。当技術分野において公知の修飾ヌクレオシド及びヌクレオチド糖骨格変異体は、限定を伴わずに、例えばF、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2、CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、OCH2CH2OCH3、O(CH2)2ON(CH3)2、OCH2OCH2N(CH3)2、O(C1−10アルキル)、O(C2−10アルケニル)、O(C2−10アルキニル)、S(C1−10アルキル)、S(C2−10アルケニル)、S(C2−10アルキニル)、NH(C1−10アルキル)、NH(C2−10アルケニル)、NH(C2−10アルキニル)、及びO−アルキル−O−アルキルなどの2’リボシル置換を有するものを含む。望ましい2’リボシル置換基は、2’−メトキシ(2’−OCH)、2’−アミノプロポキシ、(2’OCH2CH2CH2NH2)、2’−アリル(2’−CH2−CH=CH2)、2’−O−アリル(2’−O−CH2−CH=CH2)、2’−アミノ(2’−NH)、及び2’−フルオロ(2’−F)を含む。2’置換基は、アラビノ(上)位置又はリボ(下)位置に存在し得る。
【0142】
本発明のアプタマーは、上述したようなヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体、又はこの両方の組合せで作られ得るか、又はオリゴヌクレオチド類似体である。本発明のアプタマーは、PDGF又はVEGF(又はこれらのコグネイト受容体)に結合するオリゴマーの機能に影響を及ぼさない位置にヌクレオチド類似体を含み得る。
特定標的分子に結合する核酸リガンドの改善又は強化又は付加的なアプタマーの選択のために適合させ得るいくつかの手法がある。一般に「インビトロ遺伝学」と称される(Szostak(1992)TIBS,19:89参照)1つの手法は、ランダムな配列のプールからの選択によるアプタマーアンタゴニストの単離を含む。開示するアプタマーを単離し得る核酸分子のプールは、約20−40ヌクレオチドの可変配列に隣接する不変配列を含み得る。この方法は、試験管内人工進化法(Selective Evolution of Ligands by EXponential Enrichment)(SELEX)と命名された。SELEX法及び関連方法によって本発明のアプタマーアンタゴニストを作製するための組成物及び方法は、当技術分野において公知であり、例えば、この各々の全体が参照によりここに組み込まれる、「核酸リガンド(Nucleic Acid Ligands)」と題する米国特許第5,475,096号及び「核酸リガンドを特定するための方法(Methods for Identifying Nucleic Acid Ligands)」と題する米国特許第5,270,163号において教示される。全般的なSELEX工程、及び特にVEGF及びPDGFアプタマー及び製剤は、さらに、この各々の内容が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,668,264号、同第5,696,249号、同第5,670,637号、同第5,674,685号、同第5,723,594号、同第5,756,291号、同第5,811,533号、同第5,817,785号、同第5,958,691号、同第6,011,020号、同第6,051,698号、同第6,147,204号、同第6,168,778号、同第6,207,816号、同第6,229,002号、同第6,426,335号、同第6,582,918号に述べられている。
【0143】
簡単に述べると、SELEX法は、結合親和性及び選択性の実質的にあらゆる所望判定基準を達成するための、同じ一般的選択スキームを使用する、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択及び選択標的への結合、分離及び増幅の逐次反復を含む。典型的にはランダム化配列のセグメントを含む、核酸の混合物から出発して、SELEX法は、結合のために好都合な条件下で混合物を標的に接触させること、標的分子に特異的に結合した核酸から非結合核酸を分離すること、核酸−標的複合体を解離すること、核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅して核酸のリガンド濃縮混合物を生産すること、この後、所望に応じた回数のサイクルを通して結合、分離、解離及び増幅の工程を反復し、標的分子に高度特異的な高親和性核酸リガンドを生産することの工程を含む。
【0144】
基本的SELEX法は、多くの特定目的を達成するために改変されてきた。例えば「構造に基づいて核酸を選択するための方法(Method for Selecting Nucleic Acids on the Basis of Structure)」と題する米国特許第5,707,796号は、折れ曲がりDNAなどの特定構造特徴を有する核酸分子を選択するための、ゲル電気泳動と組み合わせたSELEX工程の使用を述べている。「SELEX;核酸リガンドの光選択及び溶液SELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment:Photoselection of Nucleic Acid Ligands and Solution SELEX)」と題する米国特許第5,763,177号は、標的分子と結合する及び/又は光架橋する及び/又は光不活化することができる光反応基を含む核酸リガンドを選択するためのSELEXに基づく方法を述べている。「テオフィリンとカフェインを識別する高親和性核酸リガンド(High−Affinity Nucleic Acid Ligands That Discriminate Between Theophylline and Caffeine)」と題する米国特許第5,580,737号は、Counter−SELEXと称される、非ペプチド性であり得る密接に関連する分子を識別することができる高度特異的核酸リガンドを特定するための方法を述べている。「SELEX:溶液SELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment:Solution SELEX)」と題する米国特許第5,567,588号は、標的分子に対して高親和性と低親和性を有するオリゴヌクレオチドの間の分離を極めて効率的に達成する、SELEXに基づく方法を述べている。
【0145】
SELEX法は、改善されたインビボでの安定性又は改善された送達特性などの、改善された特徴をリガンドに付与する修飾ヌクレオチドを含む高親和性核酸リガンドの特定を包含する。このような修飾の例は、リボース及び/又はリン酸及び/又は塩基位置での化学的置換を含む。SELEX法によって特定された、修飾ヌクレオチドを含む核酸リガンドが、「修飾ヌクレオチドを含む高親和性核酸リガンド(High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides)」と題する米国特許第5,660,985号に記述されており、前記特許は、ピリミジンの5位及び2’位で化学修飾されたヌクレオチド誘導体を含むオリゴヌクレオチドを述べている。米国特許第5,580,737号、前出は、2’−アミノ(2’−NH)、2’−フルオロ(2’−F)及び/又は2’−O−メチル(2’−OMe)で修飾された1又はそれ以上のヌクレオチドを含む高度特異的核酸リガンドを述べている。現在は放棄された、「分子内求核置換による公知及び新規2’修飾ヌクレオシドの調製の新規方法(Novel Method of Preparation of Known and Novel 2’Modified Nucleosides by Intramolecular Nucleophilic Displacement)」と題する、1994年6月22日出願の米国特許出願第08/264,029号は、様々な2’修飾ピリミジンを含むオリゴヌクレオチドを述べている。
【0146】
SELEX法は、それぞれ、「SELEX:キメラSELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment:Chimeric SELEX)」と題する米国特許第5,637,459号、及び「SELEX:混合SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment:Blended SELEX)」と題する米国特許第5,683,867号に述べられているように、選択オリゴヌクレオチドを他の選択オリゴヌクレオチド及び非オリゴヌクレオチド機能性単位と組み合わせることを包含する。これらの特許は、他の分子の望ましい特性と、オリゴヌクレオチドの広い範囲の形状及び他の特性、及び効率的な増幅及び複製特性の組み合わせを可能にする。
【0147】
SELEX法はさらに、この全体が参照によりここに組み込まれる、「核酸リガンド複合体(Nucleic Acid Ligand Complexes)」と題する米国特許第6,011,020号に述べられているように、診断又は治療複合体において選択核酸リガンドと脂質親和性化合物又は非免疫原性高分子量化合物を組み合わせることを包含する。
【0148】
アプタマーアンタゴニストはまた、コンピュータモデリング手法の使用を通して改善することができる。分子モデリングシステムの例は、CHARMm及びQUANTAプログラム、Polygen Corporation(Waltham,Mass.)である。CHARMmは、エネルギー最小化及び分子動力学機能を達成する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリング及び解析を実施する。QUANTAは、分子の相互間の、相互反応性構築、修飾、視覚化及び挙動の分析を可能にする。これらの適用は、RNA及びDNA分子の二次構造を定義し、表示するように適合させ得る。
【0149】
これらの様々な修飾を有するアプタマーを、次に、PDGF細胞に基づく増殖活性アッセイなどの、対象とするPDGF又はVEGF機能のための何らかの適切なアッセイを用いて機能に関して試験することができる。
【0150】
前記修飾は、SELEX工程前又はSELEX工程後修飾であり得る。SELEX工程前修飾は、SELEX標的に対する特異性と改善されたインビボ安定性の両方を備えた核酸リガンドを生じる。2’−OH核酸リガンドに対して為されるSELEX工程後修飾は、核酸リガンドの結合能力に有害な影響を及ぼすことなく改善されたインビボでの安定性をもたらすことができる。
【0151】
本発明のアプタマーを生産するために有用な他の修飾は当業者に公知である。このような修飾は、SELEX工程後に(これまでに特定された非修飾リガンドの修飾)又はSELEX工程への組込みによって実施し得る。
【0152】
アプタマー又は核酸リガンドは一般に、及び特にVEGFアプタマーは、非常に安定であり、従ってエキソヌクレアーゼに対する感受性を低下させ、全体的安定性を上昇させるように5’キャップ及び3’キャップ形成するときに有効である。従って、本発明は、1つの実施態様では、5’末端に5’−5’逆ヌクレオシドキャップ構造及び3’末端の3’−3’逆ヌクレオドシキャップ構造を有する、一般的なアプタマー及び特に抗VEGFアプタマーのキャップ形成に基づく。従って、本発明は、5’末端では5’−5’逆ヌクレオシドキャップで及び3’末端では3’−3’逆ヌクレオドシキャップでキャップ形成されている抗VEGF及び/又は抗PDGFアプタマー、すなわち核酸リガンドを提供する。
【0153】
本発明のある種の特に有用なアプタマーは、これらの末端に5’−5’及び3’−3’逆ヌクレオドシキャップ構造を有するものを含むが、これらに限定されない、抗VEGFアプタマー組成物である。このような抗VEGFキャップアプタマーは、RNAアプタマー、DNAアプタマー又は混合(すなわちRNAとDNAの両方)組成物を有するアプタマーであり得る。本発明の適切な抗VEGFアプタマー配列は、ヌクレオチド配列GAAGAAUUGG(配列番号15);又はヌクレオチド配列UUGGACGC(配列番号16);又はヌクレオチド配列GUGAAUGC(配列番号17)を含む。特に有用なのは、配列:X−5’−5’−CGGAAUCAGUGAAUGCUUAUACAUCCG−3’−3’−X(配列番号18)
[配列中、各々のC、G、A及びUは、それぞれ、天然に生じるヌクレオチド、シチジン、グアニジン、アデニン及びウリジン、又はこれに対応する修飾ヌクレオチドを表わし;X−5’−5’は、アプタマーの5’末端をキャップする逆ヌクレオチドであり、3’−3’−Xは、アプタマーの3’末端をキャップする逆ヌクレオチドであり;及び残りのヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドは、5’−3’ホスホジエステル結合によって連続的に結合している]
を有する本発明のキャップ形成された抗VEGFアプタマーである。一部の実施態様では、キャップされた抗VEGFアプタマーのヌクレオチドの各々は、個々に、−OH(リボ核酸(RNA)について標準的である)又は−H(デオキシリボ核酸(DNA)について標準的である)などの2’リボシル置換を担持する。他の実施態様では、2’リボシル位置が、O(C1−10アルキル)、O(C1−10アルケニル)、F、N又はNH置換基で置換されている。
【0154】
さらなる特定の非限定的な例では、5’−5’キャップされた抗VEGFアプタマーは、構造:T−5’−5’−C3’−3’−T(配列番号19)
[配列中、「G」は2’−メトキシグアニル酸を表わし、「A」は2’−メトキシアデニル酸を表わし、「C」は2’−フルオロシチジル酸を表わし、「U」は2’−フルオロウリジル酸を表わし、「A」は2’−リボアデニル酸を表わし、及び「T」はデオキシリボチミジル酸を表わす]
を有する。
【0155】
(アンチセンス、リボザイム、及びDNA酵素アンタゴニスト)
PDGF及びVEGFを標的するアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、これらのメッセンジャーRNAからのタンパク質翻訳を阻害することによって又はそれぞれ対応するPDGF又はVEGF mRNAの分解を標的することによってPDGF/VEGF阻害を生じさせる。上述したこれらのPDGF及びVEGF標的核酸は、これらのPDGF及びVEGFリボザイム及びアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計及び合成のために有用な配列を提供する。アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムの設計及び合成の方法は当技術分野において公知である。付加的な手引きをここで提供する。
【0156】
特異的で有効なmRNA標的オリゴヌクレオチド(アンチセンスODN)及びリボザイム及びアンチセンスを設計する上での1つの問題は、標的mRNA(これ自体が部分的自己対合二次構造に折りたたまれている)におけるアンチセンス対合のアクセス可能部位を特定するという問題である。RNA対合のアクセス可能性を予測するためのコンピュータ支援アルゴリズムと分子スクリーニングの組合せは、大部分のmRNA標的に対する特異的で有効なリボザイム及び/又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの作製を可能にする。実際に、アンチセンス又はリボザイム阻害剤に対する標的RNA分子のアクセス可能性を判定するためのいくつかのアプローチが記述されている。1つのアプローチは、できるだけ多くのアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドを適用するインビトロスクリーニングアッセイを使用する(Moniaら(1996)Nature Med.,2:668−675; 及びMilnerら(1997)Nature Biotechnol.,15:537−541参照)。もう1つは、ODNのランダムなライブラリーを利用する(Hoら(1996)Nucleic Acids Res.,24:1901−1907;Birikhら(1997)RNA 3:429−437;及びLimaら(1997)J.Biol.Chem.,272:626−638)。アクセス可能な部位は、RNアーゼH切断によって観測することができる(Birikhら、前出;及びHoら(1998)Nature Biotechnol.,16:59−63参照)。RNアーゼHは、DNA−RNA二重鎖のRNA鎖のホスホジエステル骨格の加水分解切断を触媒する。
【0157】
もう1つのアプローチでは、半ランダムな、キメラ化学合成ODNのプールを使用して、インビトロ合成したRNA標的上のRNアーゼHによって切断されるアクセス可能部位を特定する。次にプライマー延長分析を使用して、標的分子においてこれらの部位を特定する(Limaら、前出)。RNAにおいてアンチセンス標的を設計するための他のアプローチは、RNAに関するコンピュータ支援折りたたみモデルに基づく。有効な切断をスクリーニングするためのランダムなリボザイムライブラリーの使用に関して、いくつかの報告が公開されている(Campbellら(1995)RNA 1:598−609;Lieberら(1995)Mol.Cell Biol.,15:540−551;及びVaishら(1997)Biochem.,36:6459−6501参照)。
【0158】
ODN及びRNアーゼHのランダムな又は半ランダムなライブラリーを利用する、他のインビトロアプローチは、コンピュータシミュレーションより有用であると考えられる(Limaら、前出)。しかし、最近の所見は、ポリヌクレオチドのアニーリング相互作用がRNA結合タンパク質によって影響されることを示唆しているので、インビトロ合成したRNAの使用はインビボでのアンチセンスODNのアクセス可能性を予測しない(Tsuchihashiら(1993)Science,267:99−102;Portmanら(1994)EMBO J.,13:213−221;及びBertrandとRossi(1994)EMBO J.,13:2904−2912参照)。この内容が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,562,570号は、インビボでの状態を模倣する、細胞抽出物の存在下でmRNA内のアクセス可能部位を判定するための組成物及び方法を提供する。
【0159】
簡単に述べると、この方法は、内因性RNA結合タンパク質を含有する細胞抽出物を含む、又は1もしくはそれ以上のRNA結合タンパク質の存在によって細胞抽出物を模倣する反応媒質中でのハイブリダイゼーション条件下で、天然又はインビトロ合成RNAを、定義されたアンチセンスODN、リボザイム又はDNA酵素と共に、又はランダムな又は半ランダムなODN、リボザイム又はDNA酵素ライブラリーと共にインキュベートすることを含む。標的RNA内のアクセス可能部位に相補的ないかなるアンチセンスODN、リボザイム又はDNA酵素も、この部位にハイブリダイズする。定義されたODN又はODNライブラリーを使用するときは、ハイブリダイゼーションが起こったRNAを切断するために、ハイブリダイゼーションの間にRNアーゼHが存在するか又はハイブリダイゼーション後にRNアーゼHを添加する。リボザイム又はDNA酵素を使用するときは、リボザイム及びDNA酵素がハイブリダイゼーションの生じたRNAを切断するので、RNアーゼHは存在し得るが、必要ではない。一部の場合は、内因性mRNA、RNA結合タンパク質及びRNアーゼHを含有する細胞抽出物におけるランダムな又は半ランダムなODNライブラリーを使用する。
【0160】
次に、様々な方法を使用して、アンチセンスODN、リボザイム又はDNA酵素が結合し、切断が起こった標的RNA上の部位を特定することができる。例えばターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ依存性ポリメラーゼ連鎖反応(TDPCR)がこのために使用し得る(KomuraとRiggs(1998)Nucleic Acids Res.,26:1807−11)。逆転写工程を使用してRNA鋳型をDNAに変換し、続いてTDPCRを実施する。本発明では、TDPCR法のために必要な3’末端を、対象とする標的RNAを何らかの適切なRNA依存性DNAポリメラーゼ(例えば逆転写酵素)で逆転写することによって創造する。これは、試験下にある標的RNA分子の部分から下流(すなわちRNA分子の5’→3’方向)の領域において第一ODNプライマー(P1)をRNAにハイブリダイズすることによって達成される。dNTPの存在下でポリメラーゼは、RNAをP1の3’末端からDNAにコピーし、アンチセンスODN/RNアーゼH、リボザイム又はDNA酵素のいずれかによって創造される切断部位でコピーを終結する。新しいDNA分子(第一鎖DNAと称する)は、TDPCR法のPCR部分のための第一鋳型として働き、これを使用して、RNA上に存在する、対応するアクセス可能な標的配列を特定する。
【0161】
例えば、TDPCR手順をこの後使用し得る、すなわちグアノシン三リン酸(rGTP)と逆転写したDNAをターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)の存在下で反応させて、DNA分子の3’末端に(rG)2−4尾部を付加する。次に、(rG)2−4尾部と塩基対合する一本鎖に、3’2−4突出部を有する二本鎖ODNリンカーを連結する。次に2つのPCRプライマーを付加する。最初のプライマーは、(rG)2−4尾部に連結するTDPCRリンカーの鎖(時として低級鎖(lower strand)と称する)に相補的なリンカープライマー(LP)である。他方のプライマー(P2)は、P1と同じであり得るが、P1に関して入れ子され得る、すなわちP1によって結合される領域から少なくとも部分的に上流(すなわちRNA分子の3’→5’方向)であるが、試験下にある標的RNA分子の部分の下流である領域において標的RNAに相補的である。すなわち、アクセス可能な結合部位を有するかどうかを判定するための試験下にある標的RNAの部分は、P2に相補的な領域の上流にある部分である。この後、DNAポリメラーゼ及びdNTPの存在下で公知のようにPCRを実施して、プライマーLP及びP2によって規定されるDNAセグメントを増幅する。増幅産物を、次に、様々な公知の方法のいずれかによって捕獲し、続いて自動DNAシーケンサーで塩基配列決定して、切断部位の正確な特定を提供する。ひとたびこの同一性が決定されれば、規定された配列のアンチセンスDNA又はリボザイムを、インビトロ又はインビボでの使用のために合成することができる。
【0162】
特定遺伝子の発現におけるアンチセンス介在は、合成アンチセンスオリゴヌクレオチド配列の使用によって達成できる(例えばLefebvre−d’Hellencourtら(1995)Eur.Cyokine Netw.,6:7;Agrawal(1996) TIBTECH,14:376;及びLev−Lehmanら(1997)Antisense Therap.CohenとSmicek編集(Plenum Press,New York)参照)。簡単に述べると、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、対象とする標的mRNAを相補し、RNA:AS二重鎖を形成するように設計されたDNAの短い配列、典型的には15−30量体であり得るが、7量体程度に小さくてもよい(Wagnerら(1994)Nature 372:333)。この二重鎖形成は、関連mRNAのプロセシング、スプライシング、輸送又は翻訳を妨げ得る。さらに、一部のASヌクレオチド配列は、これらの標的mRNAとハイブリダイズしたとき細胞RNアーゼH活性を惹起することができ、mRNA分解を生じさせる(Calabrettaら(1996) Semin.Oncol.,23:78参照)。この場合、RNアーゼHは二重鎖のRNA成分を切断し、潜在的にASを遊離させて、標的RNAの付加的な分子とさらにハイブリダイズすることができる。付加的な作用機構は、転写的に不活性であると考えられる三重らせんを形成する、ASとゲノムDNAの相互作用から生じる。
【0163】
上記で論じたようなアンチセンス配列の非限定的な例として、これに加えて又はこれに代わるものとして、リボザイムが遺伝子機能の抑制のために使用できる。これは、アンチセンス療法が化学量論的理由によって制限される場合に特に必要である。同じ配列を標的するリボザイムが使用できる。リボザイムは、標的RNA内の特定部位を切断するRNA触媒能力を有するRNA分子である。リボザイムによって切断されるRNA分子の数は、1:1化学量論によって予測される数よりも多い(HampelとTritz(1989) Biochem.,28:4929−33;及びUhlenbeck(1987)Nature,328:596−600参照)。従って、本発明はまた、PDGF又はVEGF mRNA種のアクセス可能ドメインを標的し、適切な触媒中心を含むリボザイム配列の使用を可能にする。リボザイムは、当技術分野において公知のように及び以下でさらに論じるように作製され、送達される。リボザイムはアンチセンス配列と組み合わせて使用し得る。
【0164】
リボザイムはRNAのホスホジエステル結合切断を触媒する。グループI型イントロン、RNアーゼP、デルタ型肝炎ウイルスリボザイム、ハンマーヘッドリボザイム及びもともとはタバコリングスポットウイルスサテライトRNA(sTRSV)のマイナス鎖に由来するヘアピンリボザイムを含む、いくつかのリボザイム構造ファミリーが特定されている(Sullivan(1994)Investig.Dermatolog.,(Suppl.)103:95S;及び米国特許第5,225,347号参照)。後者の2つのファミリーは、リボザイムが、ローリングサークル型複製の間に作られるオリゴマーからモノマーを分離すると考えられている、ウイロイド及びウイルソイドに由来する(Symons (1989)TIBS,14:445−50;Symons(1992)Ann.Rev.Biochem.,61:641−71)。ハンマーヘッド及びヘアピンリボザイムモチーフは、最も一般的には遺伝子治療のためのmRNAのトランス切断に適合される。本発明において使用するリボザイムの種類は、当技術分野において公知のように選択される。ヘアピンリボザイムは現在臨床試験中であり、特に有用な種類である。一般にリボザイムは30−100ヌクレオチドの長さである。
【0165】
標的mRNA転写産物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子は当技術分野において公知であり(例えばPDGF(配列番号1)又はVEGF(配列番号3))、mRNAの翻訳を妨げるためにも使用できる(例えばPCT国際公開公報第W090/11364号; Sarverら(1990)Science,247:1222−1225及び米国特許第5,093,246号参照)。部位特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムは特定mRNAを破壊するために使用できるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用は特に有用である。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域によって指定される位置でmRNAを切断する。唯一の必要条件は、標的mRNAが2個の塩基の以下の配列:5’−UG−3’を有することである。ハンマーヘッドリボザイムの構築と生産は当技術分野において周知であり、HaseloffとGerlach((1988)Nature,334:585)の中でより詳細に説明されている。
【0166】
本発明のリボザイムはまた、テトラヒメナ(Tetrahymena thermophila)において天然に生じ(IVS又はL−19 IVS RNAとして知られる)、
Thomas Cechと共同研究者達によって広汎に記述されているようなRNAエンドリボヌクレアーゼ(以下「チェック(Cech)型リボザイム」と称する)を包含する(Zaugら(1984)Science,224:574−578;ZaugとCech(1986)Science,231:470−475;Zaugら(1986)Nature,324:429−433;国際公開公報第W088/04300号;BeenとCech(1986)Cell,47:207−216参照)。チェック型リボザイムは、標的RNAの切断を起こった後、標的RNA配列にハイブリダイズする、8塩基対活性部位を有する。本発明は、8塩基対活性部位配列を標的するチェック型リボザイムを含む。本発明は特定理論の操作機序に限定されないが、最近の報告は、ハンマーヘッドリボザイムがRNA翻訳及び/又はmRNA標的の特異的切断をブロックすることによって機能することを指示しているので、本発明におけるハンマーヘッドリボザイムの使用は、PDGF/VEGFに対するアンチセンスの使用よりも有利であると考えられる。
【0167】
アンチセンスアプローチにおけるように、リボザイムは修飾オリゴヌクレオチドで構成することができ(例えば改善された安定性、標的性等のため)、標的mRNAを発現する細胞に送達される。送達の有用な方法は、トランスフェクトされた細胞が、標的メッセージを破壊して翻訳を阻害するために十分な量のリボザイムを生産するように、強力な構成的pol III又はpol IIプロモーターの制御下でリボザイムを「コードする」DNA構築物を使用することを含む。リボザイムは、アンチセンス分子と異なって、触媒的であるので、効率のためにより低い細胞内濃度を必要とする。
【0168】
上述したように、必要な場合は、使用方法及び送達のための必要に応じてアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド又はリボザイムの生物活性を実質的に妨げない当技術分野において公知の何らかの方法によって、ヌクレアーゼ抵抗性を与えることができる(Iyerら(1990)J.Org.Chem.,55:4693−99;Eckstein(1985)Ann.Rev.Biochem.,54:367−402;SpitzerとEckstein(1988)Nucleic Acids Res.,18:11691−704;Woolfら(1990)Nucleic Acids Res.,18:1763−69;及びShawら(1991)Nucleic Acids Res.,18: 11691−704)。アプタマーについて上述したように、ヌクレアーゼ抵抗性を高めるためにアンチセンスオリゴヌクレオチド又はリボザイムに施すことができる非限定的な代表的修飾は、リン酸骨格内のリン又は酸素へテロ原子、短鎖アルキル又はシクロアルキル糖間結合又は短鎖へテロ原子又はヘテロ環式糖間結合を修飾することを含む。これらは、例えば2’フッ化、O−メチル化、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート及びモルホリノオリゴマーを調製することを含む。例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド又はリボザイムは、4−6個の3’末端ヌクレオチド塩基間にホスホロチオエート結合を有し得る。また、ホスホロチオエート結合は全てのヌクレオチド塩基を連結し得る。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常は、有効な濃度で有意の毒性を示さず、動物において十分な薬力学的半減期を示し(Agarwalら(1996)TIBTECH,14:376)、ヌクレアーゼ抵抗性である。またAS−ODNのためのヌクレアーゼ抵抗性は、ヌクレオチド配列CGCGAAGCGを有する3’末端の9ヌクレオチドループ形成配列を有することによって提供され得る。アビジン−ビオチン複合反応の使用も、血清ヌクレアーゼ分解に対するAS−ODNの改善された保護のために使用できる(BoadoとPardridge(1992)Bioconj.Chem.,3:519−23参照)。この概念によれば、AS−ODN薬はこれらの3’末端でモノビオチニル化される。アビジンと反応させたとき、これらは、非複合ODNに比べて6倍改善された安定性を有する緊密なヌクレアーゼ抵抗性複合体を形成する。
【0169】
他の試験は、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドのインビボでの延長を示した(Agarwalら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:7595)。おそらく循環からの外来AS−オリゴヌクレオチドを取り除く排除機構として有用な、この過程は、延長が起こる結合オリゴヌクレオチドにおける遊離3’末端の存在に依存する。従って、この重要な位置の部分的ホスホロチオエート、ループ保護又はビオチン−アビジンは、これらのAS−オリゴデオキシヌクレオチドの安定性を確実にするために十分なはずである。
【0170】
上述したような修飾塩基を使用することに加えて、ヌクレオチドの構造が根本的に変化しており、治療又は実験試薬としてより良好に適するヌクレオチドの類似体を製造することができる。ヌクレオチド類似体の一例は、DNA(又はRNA)におけるデオキシリボース(又はリボース)リン酸骨格が、ペプチドで認められるものに類似する、ポリアミド骨格に置き換えられているペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素による分解に対して抵抗性であり、インビボ及びインビトロで長い寿命を有することが示された。さらに、PNAは、相補的DNA配列に対してDNA分子よりも強く結合することが示された。この所見は、PNA鎖とDNA鎖の間に電荷反発がないことに帰せられる。オリゴヌクレオチドに施すことができる他の修飾は、ポリマー骨格、モルホリノポリマー骨格(例えばこの内容が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,034,506号参照)、環式骨格又は悲環式骨格、糖ミメティック又はオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善することができる他の何らかの修飾を含む。
【0171】
本発明のさらなる側面は、例えばPDGF又はVEGFなどの標的mRNAの発現を低下させるDNA酵素の使用に関する。DNA酵素は、アンチセンス及びリボザイムテクノロジーの両方の機械論的特徴の一部を組み込んでいる。DNA酵素は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと非常に類似して、特定標的核酸配列を認識するが、リボザイムに極めて類似して、触媒的であり、標的核酸を特異的に切断する。
【0172】
現在2つの基本的なタイプのDNA酵素が存在し、これらの両方がSantoroとJoyce(例えば米国特許第6,110,462号参照)によって特定された。10−23DNA酵素は、2本の腕をつなぐループ構造を含む。2本の腕は、特定標的核酸を認識することによって特異性を与え、一方ループ構造は、生理的条件下で触媒機能を提供する。
【0173】
簡単に述べると、標的核酸を特異的に認識し、切断するDNA酵素を設計するためには、当業者は最初にユニーク標的配列を特定しなければならない。これは、アンチセンスオリゴヌクレオチドについて概説したのと同じアプローチを用いて実施することができる。一部の場合には、ユニーク又は実質的にユニークな配列は、約18−22ヌクレオチドのG/Cに富む配列である。高いG/C含量は、DNA酵素と標的核酸の間のより強力な相互作用を確実にするのを助ける。
【0174】
DNA酵素を合成するとき、この酵素にメッセージを標的する特異的アンチセンス認識配列を、DNA酵素の2本の腕を含み、DNA酵素ループが2本の特定腕の間に置かれるように分割する。
【0175】
DNA酵素を作製し、投与する方法は、例えば米国特許第6110462号に見出される。同様に、インビトロ又はインビボでDNAリボザイムを送達する方法は、ここで概説するようなRNAリボザイムを送達する方法を含む。加えて、当業者は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様に、DNA酵素が、場合により安定性を改善し、分解に対する抵抗性を高めるように修飾できることを認識する。
【0176】
RNAiアンタゴニスト
本発明の一部の実施態様は、RNA干渉(RNAi)によってVEGF及びPDGFの抑制を実施するための材料及び方法を利用する。RNAiは、真核細胞において起こり得る配列特異的転写後遺伝子抑制の過程である。一般に、この過程は、この配列に相同な二本鎖RNA(dsRNA)によって誘導される特定配列のmRNAの分解を含む。例えば特定一本鎖mRNA(ss mRNA)の配列に対応する長いdsRNAの発現は、このメッセージを不安定化し、これによって対応する遺伝子の発現に「干渉する」。従って、何らかの選択遺伝子を、この遺伝子についてのmRNAの全部又は実質的部分に対応するdsRNAを導入することによって抑制し得る。長いdsRNAが発現されるときは、最初にリボヌクレアーゼIIIによって21−22塩基対程度の長さのより短いdsRNAオリゴヌクレオチドにプロセシングされると思われる。従って、RNAiは、比較的短い相同なdsRNAの導入又は発現によって実施され得る。実際に、比較的短い相同dsRNAの使用は、以下で論じるようなある種の利点を有すると考えられる。
【0177】
哺乳動物細胞は、二本鎖RNA(dsRNA)によって影響される少なくとも2つの経路を有する。RNAi(配列特異的)経路では、開始dsRNAを、上述したようにまず短い干渉(si)RNAに分割する。siRNAは、各々の3’末端に2ヌクレオチドの突出部を備えた約19ヌクレオチドsiRNAを形成する、約21ヌクレオチドのセンス及びアンチセンス鎖を有する。短い干渉RNAは、特定メッセンジャーRNAを分解のために標的することを可能にする配列情報を提供すると考えられる。これに対し、非特異的経路は、これが少なくとも約30塩基対の長さである限り、いかなる配列のdsRNAによっても引き金を引かれる。非特異的作用は、dsRNAが2つの酵素:この活性形態で翻訳開始因子eIF2をリン酸化して、全てのタンパク質合成を停止させるPKR(二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ)、及び全てのmRNAを標的する非特異的酵素、RNアーゼLを活性化する分子を合成する、2’,5’オリゴアデニレートシンテターゼ(2’,5’−AS)、を活性化するために起こる。非特異的経路はストレス又はウイルス感染に対する宿主応答であると考えられ、一般に、非特異的経路の作用は、本発明の特に有用な方法では最小限に抑えられる。重要な点として、非特異的経路を誘導するにはより長いdsRNAが必要であると思われ、従って、約30塩基対より短いdsRNAは、RNAiによる遺伝子抑制を実施するために特に有用である(Hunterら(1975)J.Biol.Chem.,250:409−17;Mancheら(1992)Mol.Cell Biol.,12:5239−48;Minksら(1979)J.Biol.Chem.,254:10180−3;及びElbashirら(2001)Nature,411: 494−8参照)。
【0178】
RNAiを実施するために使用する一部の二本鎖オリゴヌクレオチドは、30塩基対未満の長さであり、約25、24、23、22、21、20、19、18又は17塩基対のリボ核酸を含み得る。場合により、本発明のdsRNAオリゴヌクレオチドは3’突出末端を含み得る。非限定的な例示的2−ヌクレオチド3’突出部はいかなる種類のリボヌクレオチド残基で構成されてもよく、さらには、RNA合成のコストを低下させ、細胞培地において及びトランスフェクト細胞内でsiRNAのヌクレアーゼ抵抗性を上昇させ得る、2’−デオキシチミジン残基で構成され得る(Elbashiら(2001)Nature,411:494−8参照)。
【0179】
50、75、100又はさらに500塩基対又はそれ以上のより長いdsRNAsも、本発明の一部の実施態様において使用し得る。RNAiを実施するためのdsRNAの例示的濃度は、約0.05nM、0.1nM、0.5nM、1.0nM、1.5nM、25nM又は100nMであるが、処理する細胞の性質、遺伝子標的及び当業者には容易に認識できる他の因子に依存して他の濃度も使用し得る。例示的なdsRNAは、化学合成し得るか又は適切な発現ベクターを用いてインビトロ又はインビボで生産し得る。例示的な合成RNAは、当技術分野で公知の方法を用いて(例えばExpedite RNAホスホルアミダイト及びチミジンホスホルアミダイト(Proligo,Germany))化学合成される21ヌクレオチドRNAを含む。合成オリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の方法を用いて(例えばElbashirら(2001)Genes Dev.,15:188−200参照)脱保護し、ゲル精製し得る。より長いRNAは、当技術分野で公知の、T7RNAポリメラーゼプロモーターなどのプロモーターから転写し得る。インビトロプロモーターの下流の可能な両方向に置かれた単一RNA標的は、標的の両方の鎖を転写して、所望標的配列のdsRNAオリゴヌクレオチドヌクレオチドを生産する。
【0180】
オリゴヌクレオチドの設計に使用される特定配列は、標的(例えばPDGF(例えば配列番号2)又はVEGF(例えば配列番号4))の発現される遺伝子メッセージに含まれるヌクレオチドの隣接配列であり得る。適切な標的配列を選択するために、当技術分野で公知のプログラム及びアルゴリズムを使用し得る。加えて、規定された一本鎖核酸配列の二次構造を予測し、折りたたまれたmRNAの露出一本鎖領域において生じる可能性が高い配列の選択を可能にするように設計されたプログラムを用いて、上記で付加的に述べたように最適配列を選択し得る。適切なオリゴヌクレオチドを設計するための方法及び組成物は、例えばこの内容が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,251,588号に認められる。mRNAは、一般にリボヌクレオチドの配列内にタンパク質合成を指令するための情報を含む線状分子と考えられている。しかし、試験は、大部分のmRNAには多くの二次及び三次構造が存在することを明らかにした。RNAにおける二次構造エレメントは、主として、同じRNA分子の異なる領域の間のワトソン−クリック型相互作用によって形成される。重要な二次構造エレメントは、分子内二本鎖領域、ヘアピンループ、二重鎖RNAのバルジ及び内部ループを含む。三次構造エレメントは、二次構造エレメントが互いに又は一本鎖領域と接触してより複雑な三次元構造を生じるときに形成される。多くの研究者が、数多くのRNA二重鎖構造の結合エネルギーを測定し、RNAの二次構造を予測するために使用できる一組の規則を導き出した(例えばJaegerら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)86:7706(1989);及びTurnerら(1988)Ann.Rev.Biophys.Biophys.Chem.,17:167参照)。前記規則は、RNA構造エレメントの特定において、特に、沈黙化RNAi、リボザイム又はアンチセンステクノロジーのために標的するmRNAの特に有用なセグメントであり得る、一本鎖RNA領域を特定する上で有用である。従って、RNAiを仲介するdsRNAオリゴヌクレオチドの設計のため並びに本発明の適切なリボザイム及びハンマーヘッドリボザイム組成物の設計のために、mRNA標的の特定セグメントを特定することができる。
【0181】
dsオリゴヌクレオチドは、リポソーム、例えばLipofectamine 2000(Life Technologies,Rockville MD)などの、当技術分野において公知の担体組成物を用いて、接着細胞系に関して前記製造者によって記述されているように異種標的遺伝子でのトランスフェクションによって細胞に導入し得る。内因性遺伝子を標的するためのdsRNAオリゴヌクレオチドのトランスフェクションは、Oligofectamine(Life Technologies)を用いて実施し得る。トランスフェクション効率は、pAD3をコードするhGFPのコトランスフェクション後に哺乳動物細胞系に関して蛍光顕微鏡を用いて確認し得る(Kehlenbackら(1998)J.Cell.Biol.,141:863−74)。RNAiの有効性は、dsRNAの導入後、多くのアッセイのいずれかによって評価し得る。これらは、新しいタンパク質合成が抑制された後の内因性プールの代謝回転のために十分な時間をおいた後、標的遺伝子産物を認識する抗体を用いるウエスタンブロット分析、及び存在する標的mRNAのレベルを測定するためのノーザンブロット分析を含むが、これらに限定されない。
【0182】
本発明における使用のためのRNAiテクノロジーのさらなる組成物、方法及び適用は、参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,278,039号、同第5,723,750号及び同第5,244,805号に示されている。
【0183】
受容体チロシンキナーゼ阻害剤アンタゴニスト
当技術分野において公知のチロシンキナーゼアンタゴニスト及び当技術分野の常用技術及び参照によりここに組み込まれる当技術分野の教示を用いて入手し得るこの変異体及び代替物も本発明に包含される。PDGF(及びVEGF)の細胞外シグナルは、PDGF受容体(及びVEGF受容体)によって実施され、細胞膜結合シグナル伝達複合体の下流の基質タンパク質に影響を及ぼす、チロシンキナーゼを介したリン酸化事象によって細胞の他の部分と連絡している。従って、PDGF(及び/又はVEGF)シグナル伝達の受容体キナーゼ段階で働くアンタゴニストも、本発明の方法において有効である。
【0184】
PDGFR又はVEGFRなどのチロシンキナーゼ受容体酵素に対して選択的な多くの種類のチロシンキナーゼ阻害剤が公知である(SpadaとMyers((1995)Exp.Opin.Ther.Patents,5:805)及びBridges((1995) Exp.Opin.Ther.Patents,5:1245)。加えて、LawとLydonは、チロシンキナーゼ阻害剤の潜在的抗癌作用を要約した((1996)Emerging Drugs: The Prospect For Improved Medicines,241−260)。例えば米国特許第6,528,526号は、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)チロシンキナーゼ活性の選択的阻害を示す置換キノキサリン化合物を述べている。PDGFRチロシンキナーゼ活性の公知の阻害剤は、Maguireら((1994)J.Med.Chem.,37:2129)及びDolleら((1994)J.Med.Chem.,37:2627)によって報告されたキノリンベースの阻害剤を含む。フェニルアミノ−ピリミジンベースの阻害剤のクラスが、最近、欧州特許第564409号の中でTraxlerらによって、及びZimmermanら((1996)Biorg.Med.Chem.Lett.,6:1221−1226)によって、及びBuchdungerら((1995)Proc.Nat.Acad.Sci.(USA),92:2558)によって報告された。PDGF受容体チロシンキナーゼ活性を阻害する上で有用なキナゾリン誘導体は、ビスモノ及び二環式アリール化合物及びヘテロアリール化合物(例えば国際公開公報第WO92/20642号参照)、キノキサリン誘導体((1994)Cancer Res.,54:6106−6114参照)、ピリミジン誘導体(日本特許出願公開第87834/94号)及びジメトキシキノリン誘導体(Abstracts of the 116th Annual Meeting of the Pharmaceutical Society of Japan(Kanazawa)(1996),2,p.275,29(C2)15−2参照)を含む。
【0185】
VEGFチロシンキナーゼ阻害剤の例は、シンノリン誘導体、例えばこの内容全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,514,971号に述べられているものを含む。他のこのようなシンノリン誘導体も公知である。例えば(1995)J.Med Chem.,38:3482−7は、4−(3−ブロモアニリノ)シンノリンを開示している;(1968)J.Chem.Soc.C,(9):1152−5は、6−クロロ−4−フェノキシシンノリンを開示している;(1984)J.Karnatak Univ.,Sci.,29:82−6は、ある種の4−アニリノシンノリンを開示している;及び(1973)Indian J.Chem.,11:211−13は、ある種の4−フェニルチオシンノリンを開示している。さらに、(1973)J.Karnatak Univ.,18: 25−30は、ある種の4−フェノキシシンノリンを開示し、(1984)J.Karnatak Univ.,Sci.,29:82−6は、2つの化合物:4−(4−メトキシアニリノ)−6,7−ジメトキシシンノリン及び4−(3−クロロアニリノ)−6,7−ジメトキシシンノリンを開示している。さらに、4位で−−O−−、−−S−−、−−NH−−及び−−CH−−から選択される基によって連結されたフェニル環を有するある種のシンノリンが、米国特許第5,017,579号、米国特許第4,957,925号、米国特許第4,994,474号、及び欧州特許第EP 0302793 A2号に述べられている。
【0186】
VEGFR及び/又はPDGFRの阻害のためのさらなる他の関連化合物は、新規化合物を、従来のアッセイを用いて対象とする受容体チロシンキナーゼ活性へのこれらの作用に関してスクリーニングすることによって入手可能である。候補PDGFR又はVEGFR低分子有機阻害剤による有効な阻害は、細胞ベースのアッセイ系並びに当技術分野において公知の他のアッセイ系を用いて観測することができる。
【0187】
例えばVEGF受容体チロシンキナーゼに対する活性についての1つの試験は以下の通りである。試験は、Flt−1VEGF受容体チロシンキナーゼを用いて実施する。詳細な手順は次の通りである:20mMトリスHCl pH7.5、3mM二塩化マンガン(MnCl)、3mM塩化マグネシウム(MgCl)、10uMバナジン酸ナトリウム、0.25mg/mlポリエチレングリコール(PEG)20000、1mMジチオトレイトール及び3ug/.mu.lポリ(Glu,Tyr)4:1(Sigma,Buchs,Switzerland)中のキナーゼ溶液30μl(Flt−1のキナーゼドメイン10ng(Shibuyaら(1990)Oncogene,5:519−24参照)、8uM[33P]−ATP(0.2μCi)、1%ジメチルスルホキシド及び試験する化合物0−100μMを一緒に室温で10分間インキュベートする。次に0.25Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)pH7 10μlを添加して反応を終了させる。多チャンネルディスペンサー(LAB SYSTEMS,USA)を使用して、20μlのアリコートをPVDF(=ポリ二フッ化ビニル)Immobilon P膜(Millipore,USA)に適用し、マイクロタイターフィルター多岐管を通して、真空に接続する。液体を完全に除去した後、0.5%リン酸(HPO)を含む浴中で連続4回及びエタノールで1回洗浄して、毎回10分間振とうしながらインキュベートし、この後Hewlett Packard TopCount Manifoldにのせて、Microscint.RTM.(βシンチレーションカウンター液)10μlの添加後に放射能を測定する。3つの濃度(一般に0.01μmol、0.1μmol及び1μmol)の各化合物の阻害に関するパーセンテージの線形回帰分析によってIC50値を決定する。活性チロシン阻害剤化合物のIC50値は、0.01μMから100μMの範囲内であり得る。
【0188】
さらに、VEGF誘導性VEGFRチロシンキナーゼ/自己リン酸化活性の阻害を、細胞に関するさらなる実験で確認することができる。簡単に述べると、ヒトVEGF受容体(VEGFR/KDR)を恒久的に発現するトランスフェクトCHO細胞を、6穴細微培養プレート中の完全培地(10%ウシ胎児血清(FCS)添加)に接種し、約80%の集密度を示すまで37℃、5%COの下でインキュベートする。試験する化合物を培地(FCSなし、0.1%ウシ血清アルブミン添加)に希釈し、細胞に添加する(対照は、試験化合物なしの培地を含む)。37℃で2時間のインキュベーション後、組換えVEGFを加える;最終VEGF濃度は20ng/mlである。37℃でさらに5分間インキュベートした後、細胞を氷冷PBSで2回洗い、直ちに溶解緩衝液100μl/穴に溶解する。次に溶解産物を遠心分離して細胞核を除去し、市販のタンパク質アッセイ(BIORAD)を用いて上清のタンパク質濃度を測定する。この後、溶解産物を直ちに使用するか又は、必要に応じて、−200℃で保存することができる。
【0189】
次にKDR受容体のリン酸化を測定するためにサンドイッチELISAを実施する:KDRに対するモノクローナル抗体を黒色ELISAプレート(OptiPlate(商標)、PackardからのHTRF−96)に固定する。プレートを洗って、残りの遊離タンパク質結合部位をPBS中1%BSAで飽和する。次に細胞溶解産物(タンパク質20μg/ウエル)を、アルカリホスファターゼ(例えばTransduction Laboratories,Lexington,KYからのPY20:AP)と結合した抗ホスホチロシン抗体と共に、これらのプレートにおいて4℃で一晩インキュベートする。再びプレートを洗い、次に捕獲したリン酸化受容体への抗ホスホチロシン抗体の結合を、発光AP基質(Emerald IIと共に即時使用のCDP−Star;Applied−Biosystems TROPIX Bedford,MA)を用いて明らかにする。発光は、Packard Top Count Microplate Scintillation Counterで測定する。陽性対照(VEGF又はPDGFで刺激した)のシグナルと陰性対照(VEGF又はPDGFで刺激せず)のシグナルの間の差は、VEGF誘導性KDR受容体リン酸化(=100%)に対応する。試験物質の活性を、VEGF誘導性KDR受容体リン酸化の阻害%として算定し、最大阻害の2分の1を誘導する物質の濃度をED50(50%阻害のための有効用量)と定義する。活性チロシン阻害剤化合物は、0.001μM−6μM、典型的には0.005μM−0.5μMの範囲内のED50値を有する。
【0190】
(医薬製剤及び治療投与)
抗VEGF及び抗PDGF薬は、乾癬、慢性関節リウマチ及び眼血管新生疾患を含む、血管新生疾患の治療において有用である。特に重要であるのは、黄斑変性又は糖尿病性網膜症などの眼血管新生疾患を抑制するための、VEGF−Aアンタゴニストと組み合わせてPDGF−Bアンタゴニスト化合物を使用する療法である。従って、ひとたび患者が血管新生疾患を有する又は発症する危険度が高いと診断されれば、それぞれPDGF及びVEGFのマイナス作用をブロックするためにVEGFアンタゴニストと組み合わせたPDGFアンタゴニストの投与によって患者を治療し、これによって血管新生疾患の発症を抑制して、血管新生に関連する有害作用を軽減する。本発明に従った方法の実施は角膜浮腫を生じさせない。上記で論じたように、様々なPDGF及びVEGFアンタゴニストが本発明において使用し得る。
【0191】
本発明に従った抗PDGF及び抗VEGF併用療法は、単独で又は別の治療と組み合わせて使用でき、在宅で、医師の診察室、診療所、病院の外来科又は病院で提供され得る。治療は一般に、医師が治療効果を詳細に観察し、必要に応じて調整を行うことができるように病院で開始される。併用療法の期間は、治療する血管新生疾患の種類、患者の年齢及び状態、患者の疾患の病期及び種類、及び患者がどのように治療に応答するかに依存する。加えて、血管新生疾患を発症する危険度が大きい人(例えば糖尿病患者)は、症状の発現を阻止する又は遅延させるために治療を受けてもよい。本発明によって提供される1つの重要な利点は、血管新生疾患の治療のためのPDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストの併用は、各々のアンタゴニストの低用量及びより少ない総活性アンタゴニストの投与を可能にし、従って、より低い毒性と副作用での同様の効果及びコストの低減を提供することである。
【0192】
併用療法の各々のアンタゴニストの投与は、他方のアンタゴニストと合わせて、血管新生疾患の治療のために有効なアンタゴニスト濃度を生じさせる何らかの適切な手段によって実施し得る。各々のアンタゴニストは、例えば適切な担体物質と混合してもよく、一般に組成物の総重量の1−95重量%の量で存在する。組成物は、眼、経口、非経口(例えば静脈内、筋肉内、皮下)、直腸、経皮、鼻、又は吸入投与に適する投与形態で提供され得る。従って、組成物は、例えば錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、懸濁液、乳剤、溶液、ヒドロゲルを含むゲル、ペースト、軟膏、クリーム、硬膏、供給送達装置、坐薬、浣腸、注射剤、移植片、スプレー又はエーロゾルの形態であり得る。単一アンタゴニスト又は2もしくはそれ以上のアンタゴニストを含有する医薬組成物は、従来の製薬慣例に従って製剤し得る(例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,(第20版)A.R.Gennaro編集、2000,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA.及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,J.SwarbrickとJ.C.Boylan編集、1988−2002,Marcel Dekker,New York参照)。
【0193】
PDGFとVEGFアンタゴニストの組合せを、1つの有用な側面では、非経口的に(例えば筋肉内、腹腔内、静脈内、眼内、硝子体内、眼球後、結膜下、トノン嚢下又は皮下注射又は移植によって)又は全身的に投与する。非経口的又は全身投与のための製剤は、無菌水性又は非水性溶液、懸濁液又は乳剤を含む。様々な水性担体、例えば水、緩衝水、食塩水等、が使用できる。他の適切な賦形剤の例は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、ヒドロゲル、水素化ナフタレン、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。このような製剤はまた、防腐剤、湿潤剤、緩衝剤、乳化剤及び/又は分散剤などの補助物質を含み得る。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーは、有効成分の放出を制御するために使用し得る。
【0194】
また、PDGF及びVEGFアンタゴニストの組合せは経口摂取によって投与することができる。経口使用を意図する組成物は、医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の何らかの方法に従って、固体又は液体形態で製造することができる。
【0195】
経口投与のための固体投与形態は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末及び顆粒を含む。一般に、これらの医薬製剤は、非毒性の医薬的に許容される賦形剤と混合した有効成分(PDGF有機低分子アンタゴニスト及びVEGF有機低分子アンタゴニストなど)を含有する。これらは、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、カオリン等のような不活性希釈剤を含み得る。結合剤、緩衝剤及び/又は潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)も使用し得る。錠剤及び丸剤は、付加的に腸溶剤皮と共に製剤することができる。組成物は、場合によって、より口当たりのよい製剤を提供するために甘味料、香味料、着色料、香料及び防腐剤を含み得る。
【0196】
例えばPDGF及びVEGFアンタゴニストは、眼への硝子体内注射並びに結膜下及びトノン嚢下注射によって眼内投与し得る。他の投与経路は、経強膜、眼球後、腹腔内、筋肉内及び静脈内を含む。また、薬剤送達装置又は眼内移植(以下参照)を用いてアンタゴニストの組合せを送達し得る。
【0197】
経口投与のための液体投与形態は、医薬的に許容される乳剤、溶液、懸濁液、シロップ及び軟ゼラチンカプセルを含む。これらの形態は、水及び油性媒質などの当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤などの佐剤を含有し得る。
【0198】
一部の場合には、PDGF及びVEGFアンタゴニストの組合せはまた、例えばパッチによって、又は血管新生疾患に罹患しやすい又は罹患している、表皮又は眼などの領域への直接適用によって、又はイオン導入によって、局所的に投与することができる。
【0199】
眼用途のための製剤は、非毒性の医薬的に許容される賦形剤と混合した有効成分を含有する錠剤を含む。これらの賦形剤は、例えば不活性希釈剤又は充填剤(例えばスクロース及びソルビトール)、潤滑剤、流動促進剤及び接着防止剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油又は滑石)であり得る。
【0200】
PDGF及びVEGFアンタゴニストは、錠剤又は他の賦形剤中で一緒に混合し得るか、又は分配し得る。一例では、第一アンタゴニストは錠剤の内側に含まれ、第二アンタゴニストは、第一アンタゴニストの放出の前に第二アンタゴニストの実質的な部分が放出されるように外側に存在する。所望する場合は、薬剤送達装置(以下参照)を使用して錠剤形態のアンタゴニストを送達し得る。
【0201】
一般に、各々のアンタゴニストを、血管新生疾患の有害作用又は症状を抑制する、軽減する又は排除するのに十分な量で投与すべきである。単一投与製剤を生産するために担体物質と組み合わせる活性アンタゴニスト成分の量は、治療する被験者及び個々の投与様式に依存して異なる。
【0202】
特許請求する組合せの各々のアンタゴニストの用量は、状態の重症度、状態を治療するか又は予防するか、及び治療する人の年齢、体重及び健康状態を含む、いくつかの因子に依存する。加えて、個々の患者についての薬理ゲノム学(治療薬の薬物動態、薬力学又は効果プロフィールへの遺伝子型の影響)情報が、使用する用量に影響を及ぼし得る。さらに、当業者は、正確な個々の用量は、投与するPDGF及びVEGFアンタゴニストの特定の組合せ、投与時間、投与経路、製剤の性質、排出経路、治療する特定の血管新生疾患、疾患の重症度、及び血管新生疾患の解剖学的位置(例えば眼対体腔)を含む、様々な因子に依存して幾分調整され得ることを認識する。様々な投与経路の異なる効率を考慮して、必要用量の幅広い変動を予測すべきである。例えば経口投与は、一般に静脈内又は硝子体内注射による投与よりも高い用量レベルを必要とすると予想される。これらの用量レベルの変動は、当技術分野において周知である、最適化のための標準的な経験的常用手順を用いて調整することができる。正確な治療有効用量レベル及びパターンは、典型的には、上記で特定した因子を考慮して眼科医などの主治医によって決定される。
【0203】
一般に、ヒトに経口投与するとき、PDGFアンタゴニスト又はVEGFアンタゴニストの用量は、通常約0.001mg−約200mg/日、望ましくは約1mg−100mg/日、より望ましくは約5mg−約50mg/日である。約200mg/日までの用量が必要なことがある。注射によるPDGFアンタゴニスト又はVEGFアンタゴニストの投与については、用量は、通常約0.1mg−約250mg/日、望ましくは約1mg−約20mg/日、又は約3mg−約5mg/日である。注射は1日約4回まで実施し得る。一般に、ヒトに非経口的に又は全身的に投与するとき、PDGFアンタゴニストと組み合わせた使用のためのVEGFアンタゴニストの用量は、通常約0.1mg−約1500mg/日、又は約0.5mg−約10mg/日、又は約0.5mg−約5mg/日である。約3000mg/日までの用量が必要であり得る。
【0204】
ヒトに眼科的に投与するとき、PDGFアンタゴニストと組み合わせた使用のためのVEGFアンタゴニストの用量は、通常約0.15mg−約3.0mg/日、又は約0.3mg−約3.0mg/日、又は約0.1mg−約1.0mg/日である。
【0205】
例えば眼用途のためには、PDGF−B及びVEGF−Aアプタマー薬剤物質をpH5−7のリン酸緩衝食塩水に製剤する。pH調整のために水酸化ナトリウム又は塩酸を添加してもよい。1つの作業製剤(WORKING FORMULATION)では、PDGF−Bアプタマー及びEYE001などのVEGF−Aアプタマーを個々に3つの異なる濃度:3mg/100μl、2mg/100μl及び1mg/100μlで製剤し、滅菌27ゲージ針を取り付けた滅菌1ml、USPI型目盛り付きガラス製注射器に充填する。併用薬剤製品は防腐剤不含であり、硝子体内注射のみによる単回使用を意図する。有効成分は、30mg/ml、20mg/ml及び10mg/ml濃度のPDGF−B及びVEGF−A薬剤物質である。賦形剤は、塩化ナトリウム、USP;一塩基リン酸ナトリウム、一水和物、USP;二塩基リン酸ナトリウム、七水和物、USP;水酸化ナトリウム、USP;塩酸、USP;及び注射用蒸留水、USPである。この形態では、PDGF−B及びVEGF−Aアプタマー薬剤製品は、単回使用ガラス製注射器内で提供される即時使用無菌溶液中に存在する。注射器は、溶液が室温に達するように使用の少なくとも30分前(但し4時間以内)に冷蔵保存から取り出す。注射器内容物の投与は、ねじ付きプランジャーロッドを注射器の円筒内部のゴム栓に取り付けることを含む。製品が投与できるようにゴム製先端キャップを取り外す。PDGF−B及びVEGF−Aアプタマーを、28日間隔で3回、100μl硝子体内注射として投与する。患者は、来院ごとに3mg/注射を摂取する。必要に応じて用量を2mg又は1mgに、さらに0.1mgまで低減する。
【0206】
投与する薬剤の詳細な量は、成分の特定の組合せに依存する。所望用量の組合せでは、PDGFアンタゴニスト対VEGFアンタゴニストの比率は、重量比で約50:1、重量比で約20:1、重量比で約10:1、又は重量比で約4:1、約2:1又は約1:1である。
【0207】
有用な併用療法は、PDGF−Bアプタマーアンタゴニスト及びVEGF−Aアプタマーアンタゴニストを含む。アンタゴニストは、約0.1:約5.0から約5.0:0.1のPDGF−Bアプタマーアンタゴニスト対VEGF−Aアプタマーアンタゴニストの重量比範囲内で組み合わせて使用する。これらの2つのアンタゴニスト(PDGF−B対VEGF−Aアンタゴニスト)の有用な範囲は約0.5:約2.0、又は約2.0:0.5であるが、もう1つの有用な比率は約1.0:約1.0であり、最終的にはPDGF−Bアプタマーアンタゴニスト及びVEGF−Aアプタマーアンタゴニストの選択に依存する。
【0208】
併用療法における各々の薬剤の投与は、独立して、1日1−4回を1日から1年間であり得、さらには患者の寿命の間であり得る。多くの症例では慢性の長期的投与が指示される。用量は、単回用量として又は多回用量に分けて投与し得る。一般に、所望用量を定められた間隔で長期間にわたって、通常は少なくとも数週間以上投与すべきであるが、数ヶ月又はそれ以上の長い投与期間が必要なこともある。
【0209】
既存の血管新生疾患を治療することに加えて、PDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストを含む併用療法は、これらの疾患の発症を予防する又は遅らせるために予防的に投与することができる。予防適用では、特定血管新生疾患に感受性である又はさもなければ危険度が高い患者にPDGF及びVEGFアンタゴニストを投与する。やはり、投与の正確な時期及び投与する量は、患者の健康状態、体重等のような様々な因子に依存する。
【0210】
1つの実動例では、PDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストの組合せを、典型的には注射用医薬組成物の形態で、これによる治療を必要とする哺乳動物に投与する。併用側面では、例えばPDGF−BアプタマーとVEGF−Aアプタマーを別々に又は両方を含有する医薬組成物中で投与し得る。一般に、このような投与は、注射によるか又は薬剤送達装置を用いることが好ましい。非経口、全身又は経皮投与も許容される。
【0211】
上記で論じたように、PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを一緒に投与するとき、このような投与は、時間的に連続するか又は同時であり得、連続的方法は1つの投与様式である。PDGF及びVEGFアンタゴニストを連続的に投与するとき、各々の投与は同じか又は異なる方法であり得る。連続投与のためには、しかしながら、約5秒間でのPDGFアンタゴニストの投与(約3回までの注射)及びこれに続く、6週間ごとに年間約9回までの注射によるVEGFアンタゴニストの持続的投与を用いることが有用である。PDGFアンタゴニストは、医師によって決定されるように、各々のVEGFアンタゴニスト注射のときに投与するか又はより少ない頻度で投与し得る。連続的投与はまた、個々のアンタゴニストを異なる時点で又は異なる投与経路で又はこの両方で投与し得るが、但し併用によって有益な作用を提供する、例えば血管新生疾患を抑制するように働く組合せを含む。また、注射による投与は特に有用であることが認められる。
【0212】
本発明に従った医薬組成物は、制御放出製剤を使用して、実質的に投与直後に又は投与後あらかじめ定められた時間に活性PDGF及びVEGFアンタゴニストを放出するように製剤し得る。例えばPDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストの少なくとも1つを含有する医薬組成物は、持続放出性組成物として提供され得る。即時又は持続放出性組成物の使用は、治療する状態の性質に依存する。前記状態が急性又は超急性疾患から成る場合は、典型的には持続放出性組成物よりも即時放出形態による治療が使用される。一部の予防的又は長期的治療のためには、持続放出性組成物も適切であり得る。
【0213】
制御放出性組成物における各々のアンタゴニストの投与は、アンタゴニストが、単独で又は組合せとして、(i)狭い治療指数(例えば有害副作用又は毒性反応を導く血漿濃度と治療効果を導く血漿濃度の差が小さい);一般に、治療指数TIは、中央致死量(LD50)対中央有効量(ED50)の比と定義される;(ii)胃腸管における狭い吸収ウインドウ;又は(iii)血漿濃度を治療レベルに維持するために1日の間に頻繁な投与を必要とするような、短い生物学的半減期を有する。
【0214】
放出速度が治療アンタゴニストの分解又は代謝の速度を上回る制御放出を得るために、多くの戦略が利用できる。例えば制御放出は、例えば適切な制御放出性組成物及び被覆物を含む、製剤パラメータ及び成分の適切な選択によって得られる。この例は、単一又は多数単位錠剤又はカプセル組成物、油性溶液、懸濁液、乳剤、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ナノ粒子、パッチ及びリポソームを含む。このような持続又は制御放出製剤を製造するための方法は、当技術分野において周知である。
【0215】
PDGFアンタゴニスト及び/又はVEGFアンタゴニスト又はこの両方を含有する医薬組成物はまた、移植片などの薬剤送達装置を用いて送達し得る。このような移植片は、生分解性及び/又は生体適合性移植片であるか、又は非生分解性移植片であり得る。移植片は、活性物質に対して透過性又は不透過性であり得る。眼薬剤送達装置は、前眼房又は後眼房などの眼房に挿入し得るか、又は強膜、脈絡膜腔又は硝子体の外側の無血管領域に移植し得る。1つの実施態様では、移植片を、薬剤が所望治療部位、例えば眼内腔及び眼の黄斑へと経強膜拡散するように、強膜上などの無血管領域に位置づけ得る。さらに、経強膜拡散の部位は、黄斑に近位の部位などの新生血管形成部位の近くであり得る。
【0216】
上述したように、本発明は、別々の医薬組成物を医薬パックにおいて組み合わせることに関する。本発明の組合せは、従って、医薬パックの成分として提供される。少なくとも2つのアンタゴニストを一緒に又は別々に、個々の投与量で製剤することができる。本発明のアンタゴニストはまた、塩として製剤するときにも有用である。
【0217】
医薬パックは、一般に、(1)第一単位投与形態中に、一定量のPDGFアンタゴニスト及び医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤;(2)第二単位投与形態中に、一定量のVEGFアンタゴニスト及び医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤;及び(3)容器を含む。容器は成分を分離するために使用され、例えば分割ボトル又は分割ホイルパケットを含み得る。別々のアンタゴニスト組成物を、所望する場合は、単一の非分割容器内に含めてもよい。医薬パックはまた、別々のPDGF及びVEGFアンタゴニストの投与のための指示を含み得る。医薬パックは、別々の成分を異なる投与形態で投与するとき、異なる投与レベルで投与するとき、又は処方する医師が組合せの個々の成分の滴定を所望するとき、特に好都合である。1つの実施態様では、医薬パックを、PDGF及びVEGFアンタゴニストを意図する使用順序で一つずつ配薬するように設計する。もう1つの例では、パック内に並んで配置されたPDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストの列を含むように医薬パックを設計し、1対のアンタゴニストを投与しなければならないことを使用者に伝える指示書をパック上に添付する。例示的な医薬パックは、医薬包装産業において周知の、いわゆるブリスターパックである。
【0218】
(有効性)
血管新生疾患の抑制は、血管新生が緩慢化又は減少しているかどうかを測定する何らかの許容される方法によって評価される。これは、直接観察及び主観的症状又は客観的生理的指標を評価することなどの間接評価を含む。治療効果は、例えば新生血管形成の予防又は逆転、細小血管症、血管漏出又は血管浮腫又はこれらの何らかの組合せに基づいて評価し得る。眼血管新生疾患の抑制を評価するための治療効果はまた、視力の安定化又は改善の見地から定義され得る。
【0219】
眼血管新生疾患を治療する又は予防する上での特定併用療法の有効性を判定する場合、注射の数日後及び少なくとも1ヵ月後に次の注射の直前に眼科医が患者を臨床的に評価してもよい。ETDRS視力、コダクローム写真撮影及び蛍光眼底血管造影も、眼科医に要請に応じて最初の4ヶ月間毎月1回実施される。
【0220】
例えば眼血管新生を治療するためのPDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニスト併用療法の有効性を評価するために、眼科分野において周知の標準方法に従って、加齢性黄斑変性に続発する眼窩下脈絡膜血管新生に罹患している患者におけるVEGF−Aアプタマー(例えばペグ化形態のEYE001)と組み合わせたPDGF−Bアプタマーの単回又は多回硝子体内注射の投与を含む試験を実施する。1つの作業試験では、加齢性黄斑変性(AMD)に続発する眼窩下脈絡膜血管新生(CNV)を有する患者に、PDGF−BアプタマーとVEGF−Aアプタマーの単回硝子体内注射を実施する。組合せの有効性を、例えば眼評価によって観測する。治療の3ヵ月後に安定な又は改善した視力を示す、例えばEDTRSチャートで3ライン又はそれ以上の視力改善を示す患者は、眼血管新生疾患を抑制するPDGF−Bアプタマー及びVEGF−Aアプタマーの有効用量の組合せを摂取したとみなされる。
【0221】
作業試験例では、加齢性黄斑変性に続発する眼窩下CNVを有し、ETDRSチャートで20/200より劣悪な視力を有する患者に、PDGF−BアプタマーとVEGF−Aアプタマーの単回硝子体内注射を実施する。開始用量は各々のアンタゴニスト0.25mgで、これらを硝子体内に1回注射する。各々のアンタゴニスト0.5mg、1mg、2mg及び3mgの用量も試験する。眼底写真撮影及び蛍光眼底血管造影を含む完全な眼検査も実施する。併用薬剤製品は、プラスチック製プランジャーに取り付けられた被覆栓及びあらかじめ取り付けられた27ゲージ針上のゴム製先端キャップを伴う、無菌・発熱物質不含1ccガラス製注射器円筒中の、10mMリン酸ナトリウム及び0.9%塩化ナトリウムに溶解したPDGF−Bアプタマー及びVEGF−Aアプタマーから成る即時使用無菌溶液である。PDGF−Bアプタマー及びVEGF−Aアプタマーは、100μlの送達容量を与えるために、各々のアプタマーについて(オリゴヌクレオチド含量として表わした)1mg/ml、2.5mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml又は30mg/mlの薬剤濃度で供給される。PDGF−Bアプタマー及びVEGF−Aアプタマーの注射の約3ヶ月後に、治療の有効性を評価するために視力試験を実施する。治療後に安定な又は改善した視力を示す患者、例えばEDTRSチャートで3ライン又はそれ以上の視力上昇を示す患者は、眼血管新生疾患を抑制するPDGF−Bアプタマー及びVEGF−Aアプタマーの有効用量の組合せを摂取したとみなされる。
【0222】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の一部の製造及び実施方法を例示するが、同様の結果を得るために代替的な方法を使用し得るので、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例1】
【0223】
角膜血管新生(角膜NV)
角膜血管新生は、眼における異常血管増殖を明瞭に視覚化することを可能にする、広く使用される動物モデルである。正常な無血管角膜へと成長する血管は良好に確認できるようになり、これを、血管後退を検討するための魅力的なモデルにしている。実験的角膜NVを誘導するために、雄性C57BL/6マウス(18−20g;Charles River,Wilmington,MA)を筋肉内塩酸ケタミン(25mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔した。NaOH(0.2mM、2μl)を局所適用した。No.21の刃(Feather,Osaka,Japan)を使用して角膜縁に平行な回転運動を適用することによって角膜及び縁上皮を切除した。7日後、マウスを、約25mg/kgのペガプタニブナトリウム(Macugen(商標)(Eyetech Pharmaceuticals,New York,NY)、EYE001としても知られる抗VEGFアプタマー薬)の1日2回の筋肉内注射、又は50mg/kgのGleevec(登録商標)/STI57((CGP57148Bとしても知られる)Novartis Pharma AG,Basel Switzerlandからの2−フェニルアミノピリミジン関連チロシンキナーゼ阻害性抗PDGF薬)の1日2回の食餌による経口投与、又はこの両方によって7日間処置した。角膜NV誘導後14日目に、塩酸キシラジン及び塩酸ケタミンによる深い麻酔下で、マウスに20μg/gのフルオレセイン−イソチオシアネート結合コンカナバリンAレクチン(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を静脈内投与した。30分後、マウスの眼を摘出し、角膜を扁平封入した(flat−mounted)。蛍光顕微鏡を用いて角膜NVを視覚化し、Openlabソフトウエアを用いて定量した。血管で覆われた角膜のパーセントを、総角膜面積のパーセンテージとして算定した。
【0224】
NaOH適用及び縁の上皮と角膜に対する損傷後の、角膜の血管新生へのペガプタニブナトリウムとGleevecの作用を検討した。ペガプタニブナトリウム(Macugen)で処置した動物は、未処置及びGleevec処置眼の両方と比較して血管増殖の19.6%(p=0.0014)の低下を示した。ペガプタニブナトリウムとGleevec(Mac+Glee)で処置した動物は、対照及びGleevec単独で処置した動物と比較して有意に低い角膜での新生血管増殖を示した(35.6%、p<0.0001)(図5)。併用治療はまた、血管増殖を低下させる上でペガプタニブナトリウム(Macugen)単独よりも有効であった(16%、p<0.0145)。
【0225】
代表的角膜血管新生実験の結果を図6及び7にも示している。図6(D)は、Macugen(図6(C))又はGleevec(図6(B))による個別処置と比較したときの、併用(Mac+Glee)処置角膜における新血管形成の有効な阻害を示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。図6(A)は、対照(PEG処置)角膜における血管新生の程度を示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。図7は、個別(図7(A)(APB5処置)及び図7(B)(Gleevec処置))及び併用処置(図7(C))が新血管増殖だけを阻害し、確立された血管には影響を及ぼさないことを示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。図7(D)は、対照(PEG処置)角膜における血管新生の程度を示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。
【実施例2】
【0226】
脈絡膜血管新生(CNV)
実験的CNVは、加齢性黄斑変性(AMD)についてのモデルとしてしばしば使用される。このモデルでは、AMD患者で認められるのと同様に、脈絡膜の血管が増殖してブルーフ膜及び網膜内へと入り込む。実験的CNVを誘導するために、雄性C57BL/6マウス(18−20g;Charles River,Wilmington,MA)を筋肉内塩酸ケタミン(25mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔し、1%トロピカミドで瞳孔を開かせた。ダイオードレーザー光凝固(75μmスポットサイズ、0.1秒間、90mW、Oculight SLレーザー、IRIDEX,Mountain View,CA)及び手持ちカバーガラスをコンタクトレンズとして使用して4つの熱傷を生じさせた。熱傷は、網膜の後極の3、6、9及び12時の位置に局在した。ブルーフ膜の断裂を示す、レーザーの時点での水泡の生成は脈絡膜血管新生を得る上で重要な因子であり、従って4つの熱傷全てについて水泡を生じたマウスだけを試験に含めた。7日後、マウスを、約25mg/kgのペガプタニブナトリウムの1日2回の腹腔内注射、又は50mg/kgのGleevec(登録商標)/STI57(Novartis Pharma AG,Basel Switzerland)の1日2回の食餌による投与、又はこの両方によって7日間処置した。APB5(eBioscience,San Diego,CAからの抗マウスPDGFRb(CD140b)抗体(抗PDGF薬))を用いた実験では、5mg/kgの抗体を1日2回の腹腔内注射を用いて投与した。脈絡膜NV病変の面積を、PECAMで染色した扁平封入脈絡膜において測定した。扁平封入を蛍光顕微鏡によって検査し、Openlabソフトウエアを用いて定量した。
【0227】
ペガプタニブナトリウム(Macugen(商標))で処置した眼は、未処置対照と比較してCNV面積の24%(p=0.007)の低下を示した(図8)。これに対し、APB5処置眼は対照と有意に異ならなかった(対照と比較してCNV面積の6.5%低下)。ペガプタニブナトリウムとAPB5の両方で処置した眼は、対照眼又はペガプタニブナトリウム(22%、p=0.011)又はAPB5(39.5%、p<0.0001)のいずれか単独で処置した眼と比較して有意に少ない(46%、p=0.001)CNV面積を示した(図8)。
【0228】
PDGFRβ阻害剤を使用したとき同様の傾向が認められた。Gleevec(登録商標)処置眼は、対照眼と有意差を示さなかった(4.2%)(図9)。ペガプタニブナトリウム(Macugen(商標))で処置眼におけるCNVの面積は、しかしながら、対照と有意に異なった(27%低い、p=0.0034)。重要な点として、ペガプタニブナトリウムとGleevecの両方(Macugen+Gleevec)で処置した動物は、対照眼と比較して最小量のCNV(46%、p<0.0001)を示し、ペガプタニブナトリウム単独処置眼と比較してCNV面積の19%低下(p=0.0407)を示した(図9)。
【実施例3】
【0229】
新生児マウスモデル
ペガプタニブナトリウム(Macugen(商標))、及び6、20及び30位に2’−フルオロ−2’−デオキシウリジン、8、21、28及び29位に2’−フルオロ−2’−デオキシシチジン、9、15、17及び31位に2’−O−メチル−2’−デオキシグアノシン、22位に2’−O−メチル−2’−デオキシアデノシン、10及び23位の「N」にヘキサエチレン−グリコールホスホルアミダイト及び32位に逆方向T(すなわち3’−3’−結合)を有する配列CAGGCUACGN CGTAGAGCAU CANTGATCCU GT(この全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,582,918号からの配列番号146参照)を有するペグ化抗PDGFアプタマー、ARC−127(Archemix Corp.,Cambridge,MA)又はこの両方を投与することの、網膜の血管発達への作用を検討した。新生児C57BL/6マウスに、生後0日目(P0)から開始して、ARC−127 100μg又はMacugen 100μg又はこの両方を毎日注射した(腹腔内に)。P4にマウスの眼を摘出した。網膜血管系を、PECAM及びNG−2で染色することによって又はConA−FITCで灌流することによって扁平封入網膜において視覚化し、蛍光顕微鏡で分析した。
【0230】
ARC−127の注射は、網膜の発達中の血管への壁細胞集積を完全にブロックした。加えて、P4に対照未処置網膜と比較してより少ない血管増殖が認められた。これに対し、Macugenは正常な血管発達を妨げなかった。しかし、MacugenとARC−127の両方で処置したマウスは、同様であるが、ARC−127単独で処置したマウスよりも有意に重篤な欠陥を示した。
【0231】
これらの結果は、図10に示すように、Macugenが発達中の網膜の血管に作用を及ぼさないことを示す。PDGFR−Bアンタゴニスト、ARC−127は、血管の成長及び形態に影響を及ぼす。しかし、ARC−127と組み合わせたMacugenは、これらのいずれか単独よりも強く血管に影響する。
【実施例4】
【0232】
抗PDGFアプタマー及び抗VEGF抗体による併用療法
この実施例では、抗PDGFアプタマーと抗VEGF抗体を使用する併用療法の有効性を、上述した角膜血管新生モデルを用いて明らかにする。実験的角膜NVを誘導するために、雄性C57BL/6マウス(18−20g;Charles River,Wilmington,MA)を筋肉内塩酸ケタミン(25mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔する。NaOH(0.2mM、2μl)を局所適用する。No.21の刃(Feather,Osaka,Japan)を使用して角膜縁に平行な回転運動を適用することによって角膜及び縁上皮を切除する。7日後、マウスを、米国特許第6,342,221号(参照によりここに組み込まれる)に述べられている抗VEGF抗体2C3 100μgと組み合わせた、構造40Kd PEG−5’−CAGGCTACGCGTAG−AGCATCATGATCCTG(iT)−3’(iTは、最後のヌクレオチドが逆方向(3’−3’結合)であることを表わす)を有する抗PDGFアプタマー25mg/kgの腹腔内注射で処置する。角膜NV誘導後14日目に、塩酸キシラジン及び塩酸ケタミンによる深い麻酔下で、マウスに20μg/gのフルオレセイン−イソチオシアネート結合コンカナバリンAレクチン(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を静脈内投与する。30分後、マウスの眼を摘出し、角膜を扁平封入する。蛍光顕微鏡を用いて角膜NVを視覚化し、Openlabソフトウエアを用いて定量する。血管で覆われた角膜のパーセントを、総角膜面積のパーセンテージとして算定する。結果は、抗PDGFアプタマー又は抗VEGF抗体単独での個別治療に比べて併用療法の効果を明らかにする。
【0233】
別々の実験において、2つの関連抗PDGFアプタマーの作用を、米国特許第6,342,221号に述べられている抗VEGF抗体2C3 100μgと組み合わせて試験する。以下の2つの抗PDGFアプタマーのペグ化及び非ペグ化形態を試験する:(i)6、20及び30位に2’−フルオロ−2’−デオキシウリジン、8、21、28及び29位に2’−フルオロ−2’−デオキシシチジン、9、15、17及び31位に2’−O−メチル−2’−デオキシグアノシン、22位に2’−O−メチル−2’−デオキシアデノシン、10及び23位の「N」にヘキサエチレン−グリコールホスホルアミダイト及び32位に逆方向T(すなわち3’−3’−結合)を有するCAGGCUACGN CGTAGAGCAU CANTGATCCU GT(この全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,582,918号からの配列番号146参照);及び(ii)8位のCにO−メチル−2−デオキシシチジン、9、17及び31位のGに2−O−メチル−2−デオキシグアノシン、22位のAに2−O−メチル−2−デオキシアデニン、30位に2−O−メチル−2−デオキシウリジン、6及び20位のUに2−フルオロ−2−デオキシウリジン、21、28及び29位のCに2−フルオロ−2−デオキシシチジン、10及び23位のNにペンタエチレングリコールホスホルアミダイトスペーサー及び32位に逆方向T(すなわち3’−3’−結合)を有するCAGGCUACGN CGTAGAGCAU CANTGATCCU GT(この全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,723,594号からの配列番号87参照)。個別の抗PDGFアプタマー又は抗VEGF抗体治療と比較して、併用療法の改善された抗血管新生作用を検出するために適切な対照を提供する。結果は、抗PDGFアプタマー又は抗VEGF抗体単独での個別治療に比べて併用療法の効果を明らかにする。
【実施例5】
【0234】
抗PDGFアプタマーと抗VEGFアプタマーの併用、脈絡膜血管新生(CNV)ブロック
この実施例では、脈絡膜血管新生をブロックする上での、抗PDGFアプタマーと抗VEGFアプタマーを使用した併用療法の有効性を、上述した脈絡膜血管新生モデルを用いて明らかにする。実験的CNVは、加齢性黄斑変性(AMD)についてのモデルとしてしばしば使用される。このモデルでは、AMD患者で認められるのと同様に、脈絡膜の血管が増殖してブルーフ膜及び網膜内へと入り込む。実験的CNVを誘導するために、雄性C57BL/6マウス(18−20g;Charles River,Wilmington,MA)を筋肉内塩酸ケタミン(25mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔し、1%トロピカミドで瞳孔を開かせる。ダイオードレーザー光凝固(75μmスポットサイズ、0.1秒間、90mW、Oculight SLレーザー、IRIDEX,Mountain View,CA)及び手持ちカバーガラスをコンタクトレンズとして使用して4つの熱傷を生じさせる。熱傷は、網膜の後極の3、6、9及び12時の位置に局在した。ブルーフ膜の断裂を示す、レーザーの時点での水泡の生成は脈絡膜血管新生を得る上で重要な因子であり、従って4つの熱傷全てについて水泡を生じたマウスだけを試験に含める。7日後、マウスを25mg/kgのペガプタニブナトリウムの1日2回の腹腔内注射によって処置する。抗PDGFアプタマーを用いる実験では、構造40Kd PEG−5’−CAGGCTACGCGTAGAGCATCATGA−TCCTG(iT)−3’(iTは、最後のヌクレオチドが逆方向(3’−3’結合)であることを表わす)を有する抗PDGFアプタマー25mg/kgをペガプタニブナトリウムと同時投与する。脈絡膜NV病変の面積を、PECAMで染色した扁平封入脈絡膜において測定する。扁平封入を蛍光顕微鏡によって検査し、Openlabソフトウエアを用いて定量する。結果は、対照眼又はペガプタニブナトリウム又は抗PDGFアプタマー単独で処置した眼と比較して、併用療法で処置した眼は有意に低いCNV面積を示すことを明らかにする。
【0235】
別々の実験において、2つの関連抗PDGFアプタマーの作用を、25mg/kgのペガプタニブナトリウムの1日2回の腹腔内注射による抗VEGF治療と組み合わせて試験する。以下の2つの抗PDGFアプタマーのペグ化及び非ペグ化形態を試験する:(i)6、20及び30位に2’−フルオロ−2’−デオキシウリジン、8、21、28及び29位に2’−フルオロ−2’−デオキシシチジン、9、15、17及び31位に2’−O−メチル−2’−デオキシグアノシン、22位に2’−O−メチル−2’−デオキシアデノシン、10及び23位の「N」にヘキサエチレン−グリコールホスホルアミダイト及び32位に逆方向T(すなわち3’−3’−結合)を有するCAGGCUACGN CGTAGAGCAU CANTGATCCU GT(この全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第6,582,918号からの配列番号146参照);及び(ii)8位のCにO−メチル−2−デオキシシチジン、9、17及び31位のGに2−O−メチル−2−デオキシグアノシン、22位のAに2−O−メチル−2−デオキシアデニン、30位に2−O−メチル−2−デオキシウリジン、6及び20位のUに2−フルオロ−2−デオキシウリジン、21、28及び29位のCに2−フルオロ−2−デオキシシチジン、10及び23位のNにペンタエチレングリコールホスホルアミダイトスペーサー及び32位に逆方向T(すなわち3’−3’−結合)を有するCAGGCUACGN CGTAGAGCAU CANTGATCCU GT(この全体が参照によりここに組み込まれる、米国特許第5,723,594号からの配列番号87参照)。個別の抗PDGFアプタマー又は抗VEGFアプタマー治療と比較して、併用療法の改善された抗血管新生作用を検出するために適切な対照を提供する。結果は、抗PDGFアプタマー又は抗VEGFアプタマー単独での個別治療に比べて、脈絡膜血管新生をブロックする上での併用療法の効果を明らかにする。
【実施例6】
【0236】
角膜血管新生(角膜NV)−後退
実施例1の角膜NVモデルを使用して、抗VEGFアプタマーと抗PDGFアプタマーの組合せを検討した。10日後、マウスを、1日2回の25mg/kgのペガプタニブナトリウム(Macugen(商標)、Eyetech Pharmaceuticals,New York,NY、抗VEGFアプタマー薬)、及び/又は1日1回の50mg/kgのARC−127(Archemix Corp.,Cambridge,MA、構造40Kd PEG−5’−CAGGCTACGCGTAGAGCATCATGA−TCCTG(iT)−3’(iTは、最後のヌクレオチドが逆方向(3’−3’結合)であることを表わす)を有する抗PDGFアプタマー)の10日間の腹腔内注射によって処置した。角膜NV誘導後20日目に、眼を摘出し、角膜を扁平封入した。CD31染色(BD Biosciences Pharmingen,San Diego,CA)を用いて角膜NVを視覚化し、Metamorphソフトウエアを用いて定量した。血管で覆われた角膜のパーセントを、総角膜面積のパーセンテージとして算定した。
【0237】
NaOH適用及び縁の上皮と角膜に対する損傷後の、角膜の血管新生後退へのペガプタニブナトリウム及び/又はARC−127の作用を図11及び12に示す。ARC−127で処置した動物は、20日目の対照と比較して血管増殖の有意の低下を示さなかった。20日目の対照は、10日目の対照と比較したとき角膜血管新生の12.92%の上昇を示した。ペガプタニブナトリウム(Macugen)単独で処置した動物は、20日目の対照と比較して血管増殖の13.81%(p≦0.16)の低下を示した。ペガプタニブナトリウムとARC−127で処置した動物は、対照と比較して有意に低い角膜で新生血管増殖(26.85%、p≦0.02)を示した。
【実施例7】
【0238】
角膜血管新生(角膜NV)−後退
実施例1の角膜NVモデルを使用して、抗VEGFアプタマーとPDGFB受容体に対する抗体の組合せを検討した。14日後、マウスを、25mg/kgのペガプタニブナトリウム(Macugen、抗VEGFアプタマー薬)の1日2回の腹腔内注射によって、及び/又は50mg/kgのAPB5(PDGFB受容体に対するポリクローナル抗体)の1日2回の食餌による経口投与によって、14日間処置した。角膜NV誘導後28日目に、塩酸キシラジン及び塩酸ケタミンによる深い麻酔下で、マウスに20μg/gのフルオレセイン−イソチオシアネート結合コンカナバリンAレクチン(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を静脈内投与した。30分後、マウスの眼を摘出し、角膜を扁平封入した。蛍光顕微鏡を用いて角膜NVを視覚化し、Openlabソフトウエアを用いて定量した。血管で覆われた角膜のパーセントを、総角膜面積のパーセンテージとして算定した。
【0239】
NaOH適用及び縁の上皮と角膜に対する損傷後の、角膜の血管新生後退へのペガプタニブナトリウム及び/又はAPB5の作用を図13に示す。ペガプタニブナトリウム(Macugen)で処置した動物は、対照と比較して血管増殖の8.3%の低下を示した。ペガプタニブナトリウムとAPB5で処置した動物は、対照と比較して有意に低い角膜で新生血管増殖(21.4%)を示した。
【実施例8】
【0240】
角膜血管新生(角膜NV)−後退(治療薬の投与の順序)
実施例1の角膜NVモデルを使用して、抗VEGFアプタマーとPDGFB受容体に対する抗体を用いた併用療法の投与の順序の影響を検討した。14日後、マウスを、25mg/kgのペガプタニブナトリウム(Macugen、抗VEGFアプタマー薬)の1日2回の腹腔内注射によって及び/又は50mg/kgのPDGFB受容体に対するポリクローナル抗体、APB5(eBioscience,San Diego,CA)の1日2回の食餌による経口投与によって、異なる時点で7日間処置した。角膜NV誘導後28日目に、塩酸キシラジン及び塩酸ケタミンによる深い麻酔下で、マウスに20μg/gのフルオレセイン−イソチオシアネート結合コンカナバリンAレクチン(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を静脈内投与した。30分後、マウスの眼を摘出し、角膜を扁平封入した。蛍光顕微鏡を用いて角膜NVを視覚化し、Openlabソフトウエアを用いて定量した。血管で覆われた角膜のパーセントを総角膜面積のパーセンテージとして算定し、この結果を図14に示している。
【0241】
21−28日目のペガプタニブナトリウム単独又は14−21日目のAPB5単独及びこれに続く処置なしの作用は、NaOH適用及び縁の上皮と角膜に対する損傷後の角膜の血管新生後退に関して、対照と比較してほとんど作用を示さなかった。14−21日目のAPB5及び21−28日目のペガプタニブナトリウムで処置した動物は、対照と比較して角膜でより少ない新生血管増殖を示した(13.4%)。
【0242】
(等価物)
本発明の上述した方法及びシステムの様々な修正及び変法は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明白である。本発明を特定所望実施態様に関して説明したが、特許請求する本発明がこのような特定実施態様に不当に限定されるべきでないことは了解されねばならない。当業者は、単に常套的実験だけを用いて、ここで述べる本発明の特定実施態様に対する多くの等価物を認識する又は確認することができる。このような等価物は、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1(A)】ヒトPDGF−Bの核酸配列(GenBankアクセッション番号X02811)(配列番号1)の図式的表示である。
【図1(A)−1】ヒトPDGF−Bの核酸配列(GenBankアクセッション番号X02811)(配列番号1)の図式的表示である。
【図1(B)】ヒトPDGF−Bのアミノ酸配列(GenBankアクセッション番号CAA26579)(配列番号2)の図式的表示である。
【図1(C)】ヒトPDGF−Aの核酸配列(GenBankアクセッション番号X06374)(配列番号11)の図式的表示である。
【図1(C)−1】ヒトPDGF−Aの核酸配列(GenBankアクセッション番号X06374)(配列番号11)の図式的表示である。
【図1(D)】ヒトPDGF−Aのポリペプチド配列(GenBankアクセッション番号CAA29677)(配列番号12)の図式的表示である。
【図2(A)】ヒトVEGFの核酸配列(GenBankアクセッション番号NM_003376)(配列番号3)の図式的表示である。
【図2(A)−1】ヒトVEGFの核酸配列(GenBankアクセッション番号NM_003376)(配列番号3)の図式的表示である。
【図2(B)】ヒトVEGFポリペプチドのアミノ酸配列(GenBankアクセッション番号NP_003367)(配列番号4)の図式的表示である。
【図3(A)】ヒトPDGFR−Bの核酸配列(GenBankアクセッション番号NM_002609)(配列番号5)の図式的表示である。
【図3(A)−1】ヒトPDGFR−Bの核酸配列(GenBankアクセッション番号NM_002609)(配列番号5)の図式的表示である。
【図3(A)−2】ヒトPDGFR−Bの核酸配列(GenBankアクセッション番号NM_002609)(配列番号5)の図式的表示である。
【図3(A)−3】ヒトPDGFR−Bの核酸配列(GenBankアクセッション番号NM_002609)(配列番号5)の図式的表示である。
【図3(B)】ヒトPDGFR−Bのポリペプチド配列(GenBankアクセッション番号NP_002600)(配列番号6)の図式的表示である。
【図3(C)】ヒトPDGFR−Aの核酸配列(GenBankアクセッション番号NP_006206)(配列番号13)の図式的表示である。
【図3(C)−1】ヒトPDGFR−Aの核酸配列(GenBankアクセッション番号NP_006206)(配列番号13)の図式的表示である。
【図3(C)−2】ヒトPDGFR−Aの核酸配列(GenBankアクセッション番号NP_006206)(配列番号13)の図式的表示である。
【図3(C)−3】ヒトPDGFR−Aの核酸配列(GenBankアクセッション番号NP_006206)(配列番号13)の図式的表示である。
【図3(C)−4】ヒトPDGFR−Aの核酸配列(GenBankアクセッション番号NP_006206)(配列番号13)の図式的表示である。
【図3(D)】ヒトPDGFR−Aのポリペプチド配列(GenBankアクセッション番号NP_006197)(配列番号14)の図式的表示である。
【図4(A)】ヒトVEGFR−1(Flt−1)の核酸配列(GenBankアクセッション番号AF063657)(配列番号7)の図式的表示である。
【図4(A)−1】ヒトVEGFR−1(Flt−1)の核酸配列(GenBankアクセッション番号AF063657)(配列番号7)の図式的表示である。
【図4(A)−2】ヒトVEGFR−1(Flt−1)の核酸配列(GenBankアクセッション番号AF063657)(配列番号7)の図式的表示である。
【図4(B)】ヒトVEGFR−1(Flt−1)のポリペプチド配列(GenBankアクセッション番号)(配列番号8)の図式的表示である。
【図4(C)】ヒトVEGFR−2(KDR/Flk−1)の核酸配列(GenBankアクセッション番号AF035121)(配列番号9)の図式的表示である。
【図4(C)−1】ヒトVEGFR−2(KDR/Flk−1)の核酸配列(GenBankアクセッション番号AF035121)(配列番号9)の図式的表示である。
【図4(C)−2】ヒトVEGFR−2(KDR/Flk−1)の核酸配列(GenBankアクセッション番号AF035121)(配列番号9)の図式的表示である。
【図4(C)−3】ヒトVEGFR−2(KDR/Flk−1)の核酸配列(GenBankアクセッション番号AF035121)(配列番号9)の図式的表示である。
【図4(D)】ヒトVEGFR−2(KDR/Flk−1)のポリペプチド配列(GenBankアクセッション番号AAB88005)(配列番号10)の図式的表示である。
【図5】対照治療(cont)、Gleevec治療(抗PDGF薬)及びMacugen(商標)治療(すなわちペガプタニブ治療、抗VEGF薬)を、Macugen(商標)とGleevecによる併用治療(抗PDGF/抗VEGF併用療法)の結果と比較した角膜血管新生アッセイの結果のグラフ表示である。
【図6】(A)は、対照(PEG処置)マウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(B)は、Gleevec処置マウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(C)は、Macugen(商標)処置マウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(D)は、Macugen(商標)及びGleevecの両方で処置したマウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。
【図7】(A)は、正常角膜血管系がAPB5(PDGFR抗体、抗PDGF薬)の投与によって影響を受けないことを示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(B)は、正常角膜血管系がGleevecの投与によって影響を受けないことを示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(C)は、正常角膜血管系がMacugen(商標)(Mac)及びGleevecの併用投与によって影響を受けないことを示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(D)は、正常角膜血管系がPEGの投与によって影響を受けないことを示す蛍光顕微鏡画像の写真表示である。
【図8】対照治療(cont)、Gleevec治療(抗PDGF薬)及びMacugen(商標)治療(すなわちペガプタニブ治療、抗VEGF薬)を、Macugen(商標)とGleevecによる併用治療(抗PDGF/抗VEGF併用療法)の結果と比較したレーザー誘導脈絡膜血管新生アッセイの結果のグラフ表示である。
【図9】対照治療(cont)、APB5治療(抗PDGF薬として働く、抗PDGFR抗体)及びMacugen(商標)治療(すなわちペガプタニブ治療、抗VEGFアプタマー)を、MacugenとAPB5による併用治療(Mac+APB5)の結果と比較したレーザー誘導脈絡膜血管新生アッセイの結果のグラフ表示である。
【図10】対照治療(cont)、ARC−127治療(抗PDGF薬)及びMacugen治療(すなわちペガプタニブ治療、抗VEGF薬)を、MacugenとARC−127による併用治療(抗PDGF/抗VEGF併用療法)の結果と比較した網膜発育モデルの結果のグラフ表示である。
【図11】対照治療(cont)、ARC−127治療(抗PDGF薬)及びMacugen治療(すなわちペガプタニブ治療、抗VEGF薬)を、MacugenとARC−127による併用治療(抗PDGF/抗VEGF併用療法)の結果と比較した角膜血管新生アッセイの結果のグラフ表示である。
【図12】(A)は、対照マウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(B)は、ARC−127処置マウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(C)は、Macugen処置マウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。(D)は、MacugenとARC−127の両方で処置したマウス角膜において生じた角膜血管新生の蛍光顕微鏡画像の写真表示である。
【図13】対照治療(cont)、APB−5治療(抗PDGF薬)及びMacugen治療(すなわちペガプタニブ治療、抗VEGF薬)を、MacugenとAPB−5による併用治療(抗PDGF/抗VEGF併用療法)の結果と比較した角膜血管新生アッセイの結果のグラフ表示である。
【図14】対照治療(cont)、APB−5治療(抗PDGF薬)及びMacugen治療(すなわちペガプタニブ治療、抗VEGF薬)を、MacugenとAPB−5による併用治療(抗PDGF/抗VEGF併用療法)の結果と比較した角膜血管新生アッセイの結果のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)PDGFアンタゴニスト、及び
(ii)VEGFアンタゴニスト
を患者に投与することを含み、前記PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを、同時に又は互いに90日以内に、患者において血管新生疾患を抑制するために十分な量で投与する、この必要のある患者において血管新生疾患を抑制するための方法。
【請求項2】
(i)PDGFアンタゴニスト、及び
(ii)VEGFアンタゴニスト
を患者に投与することを含み、前記PDGFアンタゴニストとVEGFアンタゴニストを、同時に又は互いに90日以内に、患者を治療するために十分な量で投与する、血管新生疾患と診断された又は血管新生疾患を発症する危険度の高い患者を治療するための方法。
【請求項3】
前記PDGFアンタゴニストと前記VEGFアンタゴニストを互いに10日以内に投与する、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
PDGFアンタゴニストと前記VEGFアンタゴニストを互いに5日以内に投与する、請求項3の方法。
【請求項5】
PDGFアンタゴニストと前記VEGFアンタゴニストを互いに24時間以内に投与する、請求項4の方法。
【請求項6】
PDGFアンタゴニストと前記VEGFアンタゴニストを同時に投与する、請求項5の方法。
【請求項7】
PDGFアンタゴニストがPDGF−Bアンタゴニストである、請求項1又は2の方法。
【請求項8】
VEGFアンタゴニストがVEGF−Aアンタゴニストである、請求項1又は2の方法。
【請求項9】
PDGFアンタゴニストが、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体、抗体の結合フラグメント又は小有機化合物である、請求項1又は2の方法。
【請求項10】
VEGFアンタゴニストが、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体又は抗体フラグメント、糖、ポリマー又は小有機化合物である、請求項1又は2の方法。
【請求項11】
VEGFアンタゴニストがアプタマーである、請求項10の方法。
【請求項12】
アプタマーがEYE001である、請求項11の方法。
【請求項13】
VEGFアンタゴニストが抗体又はこの結合フラグメントである、請求項10の方法。
【請求項14】
PDGFアンタゴニストが、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体又は抗体フラグメント、糖、ポリマー又は小有機化合物である、請求項1又は2の方法。
【請求項15】
PDGFアンタゴニストが抗体又はこの結合フラグメントである、請求項14の方法。
【請求項16】
PDGFアンタゴニストがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項14の方法。
【請求項17】
前記血管新生疾患が眼血管新生疾患である、請求項1又は2の方法。
【請求項18】
眼血管新生疾患が、虚血性網膜症、虹彩血管新生、眼内血管新生、加齢性黄斑変性、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜虚血及び増殖性糖尿病性網膜症である、請求項17の方法。
【請求項19】
前記血管新生疾患が乾癬又は慢性関節リウマチである、請求項1又は2の方法。
【請求項20】
(i)PDGFアンタゴニスト、
(ii)VEGFアンタゴニスト、及び
(iii)医薬的に許容される担体
を含有し、前記PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストが、患者において血管新生疾患を抑制するために十分な量で存在する、医薬組成物。
【請求項21】
PDGFアンタゴニストがPDGF−Bアンタゴニストである、請求項20の組成物。
【請求項22】
VEGFアンタゴニストがVEGF−Aアンタゴニストである、請求項20の組成物。
【請求項23】
PDGFアンタゴニストが、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体又は抗体フラグメント、糖、ポリマー又は小有機化合物である、請求項20の組成物。
【請求項24】
VEGFアンタゴニストが、核酸分子、アプタマー、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAi分子、タンパク質、ペプチド、環状ペプチド、抗体、抗体の結合フラグメント又は小有機化合物である、請求項20の組成物。
【請求項25】
PDGFアンタゴニストが抗体又はこの結合フラグメントである、請求項23の組成物。
【請求項26】
PDGFアンタゴニストがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項23の組成物。
【請求項27】
VEGFアンタゴニストがアプタマーである、請求項24の組成物。
【請求項28】
アプタマーがEYE001である、請求項27の方法。
【請求項29】
VEGFアンタゴニストが抗体又はこの結合フラグメントである、請求項24の組成物。
【請求項30】
(i)PDGFアンタゴニスト、及び
(ii)VEGFアンタゴニスト
を含む医薬パック。
【請求項31】
PDGFアンタゴニストがPDGF−Bアンタゴニストである、請求項30の医薬パック。
【請求項32】
前記VEGFアンタゴニストがVEGF−Aアンタゴニストである、請求項30の医薬パック。
【請求項33】
PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを別々に及び個別投与量で製剤する、請求項30の医薬パック。
【請求項34】
PDGFアンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストを一緒に製剤する、請求項31の医薬パック。
【請求項35】
VEGFアンタゴニストがアプタマーである、請求項30の医薬パック。
【請求項36】
アプタマーがEYE001である、請求項35の医薬パック。
【請求項37】
VEGFアンタゴニストが抗体又はこの結合フラグメントである、請求項30の医薬パック。
【請求項38】
VEGFアンタゴニストがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項30の医薬パック。
【請求項39】
PDGFアンタゴニストが抗体又はこの結合フラグメントである、請求項30の医薬パック。
【請求項40】
PDGFアンタゴニストがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項30の医薬パック。
【請求項41】
前記医薬的に許容される担体がミクロスフェア又はヒドロゲルを含む、請求項20の医薬組成物。
【請求項42】
ミクロスフェア及びヒドロゲルから選択される送達媒体をさらに含む、請求項30の医薬パック。
【請求項43】
前記PDGFアンタゴニストがプロドラッグである、請求項1、2又は18のいずれかの方法。
【請求項44】
前記VEGFアンタゴニストがプロドラッグである、請求項1、2又は18のいずれかの方法。
【請求項45】
前記PDGFアンタゴニストがプロドラッグである、請求項20の医薬組成物。
【請求項46】
前記VEGFアンタゴニストがプロドラッグである、請求項20の医薬組成物。
【請求項47】
前記PDGFアンタゴニストがプロドラッグである、請求項30の医薬パック。
【請求項48】
前記VEGFアンタゴニストがプロドラッグである、請求項30の医薬パック。

【図1(A)】
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【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図1(C)】
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【図1(C)】
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【図1(D)】
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【図2(A)】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3(A)】
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【図3(A)】
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【図3(A)】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図3(C)】
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【図3(C)】
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【図3(C)】
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【図3(C)】
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【図3(C)】
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【図3(D)】
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【図4(A)】
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【図4(A)】
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【図4(A)】
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【図4(B)】
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【図4(C)】
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【図4(C)】
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【図4(C)】
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【図4(C)】
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【図4(D)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−503451(P2007−503451A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524824(P2006−524824)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/027612
【国際公開番号】WO2005/020972
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506064913)(オーエスアイ)アイテツク・インコーポレーテツド (10)
【Fターム(参考)】