説明

着色硬化性組成物、カラーフィルタ及びその製造方法、並びに、キノフタロン色素

【課題】色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性が高く、経時安定性及び硬化後の耐溶剤性に優れた着色硬化性組成物、並びに色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性及び耐溶剤性に優れ、高精細化に対応したカラーフィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】式(1)で表されるキノフタロン色素を少なくとも1種類含有することを特徴とする着色硬化性組成物、該着色硬化性組成物を用いたカラーフィルタ及びその製造方法、並びに、式(2)で表されるキノフタロン色素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子(LCD)や固体撮像素子(例えばCCD、CMOS等)に用いられるカラーフィルタを形成するのに好適な着色硬化性組成物、該着色硬化性組成物を用いたカラーフィルタ及びその製造方法、並びに、特定の構造のキノフタロン色素に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子や液晶表示素子をカラー化するために素子上に形成されるカラーフィルタとして、基板上に同一平面に隣接して形成された黄色フィルタ層、マゼンタフィルタ層、及びシアンフィルタ層で構成されたカラーフィルタや、赤色フィルタ層、緑色フィルタ層、青色フィルタ層から構成されるカラーフィルタが知られている。そしてこれらのフィルタ層においては、帯状のパターン、若しくはモザイク状のパターンが形成されている。
上記のようなカラーフィルタの製造方法としては種々の方法が提案されている。中でも、色素を含有する感光性樹脂組成物を露光し、現像することによってパターニングする工程を所要の回数繰り返し行う、いわゆるカラーレジスト法は広く実用化されている。
【0003】
カラーレジスト法は、顔料を種々の感光性組成物に分散させた着色感放射線性組成物を用いてフォトリソ法によりカラーフィルタを作製する方法であり、この方法は、顔料を使用しているために光や熱等に安定であると共にフォトリソ法によってパターニングするために位置精度も充分であり、大画面、高精細カラーディスプレー用カラーフィルタの作製に好適な方法とされている。
【0004】
上記のように顔料を分散する顔料分散法によってカラーフィルタを作製する場合、ガラス基板上に感放射線性組成物をスピンコーターやロールコーター等を用いて塗布して塗膜を形成し、この塗膜をパターン露光して現像することによって着色した画素を得、この操作を所望の色相数にあわせて行なうことでカラーフィルタを得ている。顔料分散法としては、アルカリ可溶性樹脂に光重合性モノマーと光重合開始剤とを用いるネガ型感光性組成物が開示されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0005】
一方、近年、固体撮像素子用のカラーフィルタにおいては、更なる高精細化が望まれている。しかし、上記のような従来の顔料分散系においては解像度が向上せず、また、顔料の粗大粒子による色ムラが発生する等の問題点を有しているために、固体撮像素子のような微細パターンが要求される用途には適さなかった。このような問題点を解決するために従来から染料の使用が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。また、ポジ型感光性組成物も開示されている(例えば、特許文献3〜4参照)。
【0006】
また、特許文献6には、着色剤を含んでなる着色剤含有硬化性組成物であって、前記着色剤が下記一般式(1)で表される化合物および/またはこの互変異性体を含むことを特徴とする着色剤含有硬化性組成物が開示されている。
【0007】
【化1】

〔一般式(1)中、R1〜R4は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、−S−R5または−S−R6を表す。Sは硫黄原子を表し、R5は酸素原子をエーテル結合の形で含むアルキル基を表し、更に置換基としてヒドロキシ基を有してもよい。R6はヒドロキシ基を有するアルキル基を表す。ただしR1〜R4のうち少なくとも1つは−S−R5を表す。〕
【0008】
特許文献7には、ポリマー染料を含有し、ポリマー染料は、下記一般式(P)で表される少なくとも1種の染料単量体と少なくとも1個のエチレン性二重結合を有する無色単量体の少なくとも1種との共重合体、及び下記一般式(P)で表される少なくとも1種の染料単量体より誘導される重合体、からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする着色硬化性組成物が開示されている。
【0009】
【化2】

〔一般式(P)中、Ra1及びRa2は各々独立に水素原子、脂肪族基、アリール基又はヘテロ環基を表し、L1は下記(L−1)、(L−2)、(L−3)及び(L−4)の何れか一つを表し、iは0又は1を表す。Qは下記一般式(1)で表される染料の任意の可能な位置から水素原子を除いた色素残基を表す。〕
【0010】
【化3】

〔(L−1)〜(L−4)中、Ra3及びRa4は各々独立に水素原子、脂肪族基、アリール基又はヘテロ環基を表す。(L−1)〜(L−4)において、色素残基及びエチレン性二重結合を有する基は、どちら側に結合してもよい。〕
【0011】
【化4】

〔一般式(1)中、R301〜R306は各々独立に、水素原子、置換基を表わす。R301〜R306の少なくとも2つが隣接位にある場合は、互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよく、該環が更に置換基を有していてもよい。〕
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−75375号公報
【特許文献2】特開2002−14221号公報
【特許文献3】特公平7−111485号公報
【特許文献4】特開2002−14223号公報
【特許文献5】特開平5−271567号公報
【特許文献6】特開2006−91768号公報
【特許文献7】特開2007−147784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、染料含有の着色硬化性組成物は以下の課題を有しており、更なる改良が求められていた。すなわち、
(1)染料は、一般的に顔料に比べて熱堅牢性、光堅牢性等に劣る。
(2)染料のモル吸光係数が低い場合には、多量の染料を添加しなければならず、着色硬化性組成物中の重合性化合物やバインダー、光重合開始剤等の他の成分を相対的に減らさざるを得ない。その結果、硬化された硬化部の熱堅牢性、次層塗布時の耐溶剤性が不十分である。
(3)染料のモル吸光係数が高いものであっても、溶解性の悪い染料は液状調製物への溶解性向上又は液状調製物の安定性向上のために分子量を大きくする必要がある。その結果、多量(重量)の染料を添加しなければならず、着色硬化性組成物中の重合性化合物やバインダー、光重合開始剤等の他の成分を相対的に減らさざるを得ない。従って、硬化された硬化部の熱堅牢性、次層塗布時の耐溶剤性が不十分である。
【0014】
そこで、特に上記課題(2)、(3)の課題を改善するために、特定の置換基を持つキノフタロン色素に関する検討がなされている(例えば、特許文献6〜7参照)。しかしながら、近年のカラーフィルタのさらなる薄層化への要望に伴い、着色硬化性組成物中の重合性化合物やバインダー、光重合開始剤等の他の成分をさらに相対的に減らさざるを得なく、これらで提案されている色素では、その改善効果は十分なものではなく改良が求められていた。
また、上記課題(2)、(3)の課題を改善するために、キノフタロン色素のポリマー染料に関する検討がなされている(特許文献7)。しかしながら、近年のカラーフィルタにおけるパターンの高精細化の点で、提案されているポリマー染料では十分ではなくさらなる改良が求められていた。
【0015】
このように光、熱堅牢性を満足し、溶解性が良く、着色硬化性組成物を調製したときの経時安定性に優れ、硬化後の耐溶剤性を十分に満足し、高精細化に対応可能な染料は見出されておらず、更なる改良が望まれている。
【0016】
また、特に高精細さや均一色が要求される固体撮像素子等の用途では、染料含有の着色硬化性組成物が有用であるものの、光や熱に対する堅牢性や液状調製物としたときの経時安定性を改善する必要があった。さらには、有機溶剤可溶性染料を用いた場合には、着色パターンの有機溶剤耐性が不十分なため、既設のパターンに次色を重ね塗りしたときに既設の着色パターン中の染料が溶出する耐溶剤性についての改善も望まれていた。
【0017】
本発明は、上記に鑑みて成されたものであり、色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性が高く、経時安定性及び硬化後の耐溶剤性に優れた着色硬化性組成物、並びに、色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性及び耐溶剤性に優れ、高精細化に対応したカラーフィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の官能基を有するキノフタロン色素を使用することにより、光堅牢性、熱堅牢性が高く、経時安定性に優れ、耐溶剤性が改善するとの知見を得ることに成功し、本発明はかかる知見に基づいて達成されたものである。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
【0019】
〔1〕下記式(1)で表されるキノフタロン色素を少なくとも1種類含有することを特徴とする着色硬化性組成物、
【0020】
【化5】

〔式(1)中、R11及びR12は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Mは水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムを表し、Yは下記(Y−1)又は(Y−2)で表される3価の連結基を表し、Qは下記式(Q)で表される染料の任意の可能な位置から水素原子を1つ取り除いた色素残基を表す。〕
【0021】
【化6】

〔(Y−1)及び(Y−2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33及びR34は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、n21及びn22は各々独立に、0〜3の整数を表し、n31及びn32は各々独立に、1〜6の整数を表し、n33は0又は1を表し、L21及びL31は、下記(L−1)〜(L−4)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、L22及びL32は単結合又は下記(L−4)〜(L−7)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、(a)は色素残基(Q)に結合したカルボニル基との連結位を表し、(b)はエチレン性不飽和基(CR11=CHR12)との連結位を表し、(c)はカルボキシル基(CO2M)との連結位を表す。〕
【0022】
【化7】

〔(L−1)〜(L−7)中、n41、n51、n61及びn62は各々独立に、1〜3の整数を表し、R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94の少なくとも2つが同じ炭素上にあるか、又は、隣接位にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。(L−1)〜(L−4)において、(Y−1)からL21を取り除いた残基、又は、(Y−2)からL31を取り除いた残基と、カルボキシル基(CO2M)とはどちら側に結合していてもよく、また、(L−4)〜(L−7)において、(Y−1)からL22を取り除いた残基、又は、(Y−2)からL32を取り除いた残基と、エチレン性不飽和基(CR11=CHR12)とはどちら側に結合していてもよい。〕
【0023】
【化8】

〔式(Q)中、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R101、R102、R103、R104、R105及びR106の少なくとも2つが隣接位にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。〕
【0024】
〔2〕さらに、重合性モノマーを含有する上記〔1〕に記載の着色硬化性組成物、
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の着色硬化性組成物を支持体上に塗布後、画像露光し、現像して、パターン像を形成する工程を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法、
〔4〕上記〔3〕に記載の製造方法によって得られるカラーフィルタ、
〔5〕式(2)で表されるキノフタロン色素。
【0025】
【化9】

〔式(2)中、X201は水素原子又はハロゲン原子を表し、R201は水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、R202及びR203は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Mは水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムを表し、L201は下記(L−1)〜(L−4)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、L202は下記(L−4)〜(L−7)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、n201は0〜2の整数を表し、n202は1又は2を表す。〕
【0026】
【化10】

〔(L−1)〜(L−7)中、n41、n51、n61及びn62は各々独立に、1〜3の整数を表し、R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94の少なくとも2つが同じ炭素上にあるか、又は、隣接位にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。(L−1)〜(L−4)において、式(2)からL201−CO2Mを取り除いた残基と、カルボキシル基(CO2M)とはどちら側に結合していてもよく、また(L−4)〜(L−7)において、式(2)からL202−CR202=CHR203を取り除いた残基と、エチレン性不飽和基(CR11=CHR12)とはどちら側に結合していてもよい。〕
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性が高く、経時安定性及び硬化後の耐溶剤性に優れた着色硬化性組成物、並びに、色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性及び耐溶剤性に優れ、高精細化に対応したカラーフィルタ及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1で合成したキノフタロン色素(1)(例示化合物(1))の溶液透過スペクトルを示す。
【図2】実施例2で作製したカラーフィルタの透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の着色硬化性組成物、並びに、カラーフィルタ及びその製造方法、特定のキノフタロン色素について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0030】
<着色硬化性組成物>
本発明の着色硬化性組成物は、後述する式(1)で表されるキノフタロン色素を少なくとも1種類含有することを特徴とする。
本発明の着色硬化性組成物は、光又は熱により硬化するものであればいずれであってもよく、感放射線性化合物や、重合性モノマーを更に含有することが好ましい。また、一般には更に溶剤を用いて構成することができ、必要に応じて更にバインダーや架橋剤など他の成分を用いて構成することができる。また、レジスト溶液とは、硬化性組成物と同義である。
【0031】
<式(1)で表されるキノフタロン色素>
本発明で用いられるキノフタロン色素について詳細に説明する。
キノフタロン色素は、イエロー色素として種々の用途で使用されており、例えば昇華転写用途としては、特開昭63−189289号公報、特開平5−229268号公報等に、インクジェット印刷用途としては特開2001−311016号公報に開示されている。硬化性組成物としても上述の特許文献5及び6などに開示されている。
また、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する置換基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有するキノフタロン色素は、例えば、特許文献7に記載されている例示化合物22及び39が挙げられる。
【0032】
一方、本発明に用いられるキノフタロン色素は、下記式(1)で表されるキノフタロン色素である。式(1)で表されるキノフタロン色素は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する置換基と、少なくとも1つのカルボキシル基とを特定の置換基として有し、かつ特定の構造を有することを特徴とする色素である。下記式(1)で表される色素の特徴を有している色素はこれまで全く知られておらず、有機溶剤に対する溶解性、光堅牢性、熱堅牢性が高く経時安定性及び硬化後の耐溶剤性に優れた着色硬化性組成物、並びに色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性及び耐溶剤性に優れ、高精細化に対応したカラーフィルタ用途に特に優れた性能を示すことは想像できないものであった。
【0033】
【化11】

【0034】
式(1)中、R11及びR12は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。
11又はR12で表される置換又は無置換のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよく、総炭素数は1〜15が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
11又はR12で表される置換又は無置換のアリール基としては、単環及び縮合環のいずれでもよく、総炭素数は6〜15が好ましい。例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0035】
11及びR12に置換していてもよい置換基は特に制限はないが、代表例として、ハロゲン原子、脂肪族基〔飽和脂肪基(アルキル基、又は、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、架橋環式飽和炭化水素基若しくはスピロ飽和炭化水素基を含む環状飽和脂肪族基を意味する。)、不飽和脂肪族基(二重結合若しくは三重結合を有する、アルケニル基若しくはアルケニル基のような鎖状不飽和脂肪族基、又は、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、架橋環式不飽和炭化水素基若しくはスピロ不飽和炭化水素基を含む環状不飽和脂肪族基を意味する。)〕、アリール基(好ましくは、置換基を有してもよいフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは、環構成原子が酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含む5〜8員環で、脂環、芳香環やヘテロ環で縮環していてもよい。)、シアノ基、脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基〔脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アニリノ基及びヘテロ環アミノ基を含む。〕、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基、脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)、アリールチオ基、スルファモイル基、脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルフィニル基、脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、脂肪族オキシスルホニル基(代表としてアルコキシスルホニル基)、アリールオキシスルホニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、及び、スルホ基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基(例えばここで挙げた置換基)を有していてもよい。
【0036】
以下に置換してもよい置換基をさらに詳しく説明する。
【0037】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0038】
脂肪族基は、直鎖、分枝又は環状の脂肪族基であり、前述のように、飽和脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基が含まれ、置換基を有してもよい。これらの炭素数は1〜30が好ましい。例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基及び2−エチルヘキシル基を挙げることができる。ここで、シクロアルキル基としては置換又は無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換又は無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基を挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0039】
不飽和脂肪族基としては、直鎖、分枝又は環状の不飽和脂肪族基であり、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、置換又は無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル基を挙げることができる。アルキニル基は、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、及び、プロパルギル基が挙げられる。
【0040】
アリール基は、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
【0041】
ヘテロ環基は、置換若しくは無置換の芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5又は6員のヘテロ環基であり、また環構成のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環が挙げられる。
【0042】
脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)は、置換又は無置換の脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)が含まれ、炭素数は1〜30が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基及び3−カルボキシプロポキシ基などを挙げることができる。
【0043】
アリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基などを挙げることができる。好ましくは、置換基を有してもよいフェニルオキシ基である。
【0044】
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0045】
カルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基などを挙げることができる。
【0046】
脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0047】
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニルオキシ基である。
【0048】
アミノ基は、アミノ基、脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アリールアミノ基及びヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基、4−キノリルアミノ基などを挙げることができる。
【0049】
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0050】
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基などを挙げることができる。なお、この基における「アミノ」の用語は、前述のアミノ基における「アミノ」と同じ意味である。
【0051】
脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルメトキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。
【0052】
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。
【0053】
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0054】
脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族スルホニルアミノ基(代表としてアルキルスルホニルアミノ基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基)が好ましい。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0055】
脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)は、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基などを挙げることができる。
【0056】
アリールチオ基は、炭素数6〜12の置換又は無置換のアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基などを挙げることができる。
【0057】
スルファモイル基は、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)基などを挙げることができる。
【0058】
脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族スルフィニル基(代表としてアルキルスルフィニル基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルフィニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基)が好ましい。例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基などを挙げることができる。
【0059】
脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族スルホニル基(代表としてアルキルスルホニル基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニル基)が好ましい。例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基などを挙げることができる。
【0060】
アシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換若しくは無置換の脂肪族カルボニル基(代表としてアルキルカルボニル基)、炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルカルボニル基)、又は、炭素数4〜30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基などを挙げることができる。
【0061】
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニル基である。
【0062】
脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0063】
カルバモイル基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基などを挙げることができる。
【0064】
アリールもしくはヘテロ環アゾ基として、例えば、フェニルアゾ基、4−メトキシフェニルアゾ基、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ基、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基などを挙げることができる。
【0065】
イミド基として、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基などを挙げることができる。
【0066】
脂肪族オキシスルホニル基(代表としてアルコキシスルホニル基)は、炭素数1〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、n−ブトキシスルホニル基などを挙げることができる。
【0067】
アリールオキシスルホニル基は、炭素数6〜12が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、フェノキシスルホニル基、2−ナフトキシフェニル基などを挙げることができる。
【0068】
これらに加え、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、前述の解離性基(例えばスルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基)やエチレン性不飽和基を有する置換基が挙げられる。
【0069】
これらの各基はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、上述の置換基が挙げられる。
【0070】
式(1)中、Mは水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、1〜3級アミン又は4級アンモニウムを表す。
【0071】
Mで表されるアンモニウムは、無置換のアンモニウム(NH4+)、第1級〜第3級アミンのアンモニウム、及び、第4級アンモニウムが例示でき、総炭素数1〜15であるアンモニウムが好ましく、例えば、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジイソプロピルエチルアンモニウムなどが挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよく、このような置換基としては、上述のR11及びR12に置換していてもよい置換基が、例として挙げられる。
【0072】
Yは、(Y−1)又は(Y−2)で表される3価の連結基を表す。
【0073】
【化12】

【0074】
(Y−1)及び(Y−2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33及びR34は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。
21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33及びR34で表される置換又は無置換のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよく、総炭素数は1〜15のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33及びR34で表される置換又は無置換のアリール基としては、単環及び縮合環のいずれでもよく、総炭素数は6〜16のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基やナフチル基、2−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基などが挙げられる。
21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33及びR34で表される置換又は無置換のヘテロ環基としては、そのヘテロ環部位が環内にヘテロ原子(例えば窒素原子、硫黄原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環であっても不飽和環であってもよく、単環及び縮合環のいずれであってもよく。総炭素数は3〜15のヘテロ環基が好ましい。例えば、3−ピリジル基、2−ピリミジル基、2−ピラジニル基、1−ピペリジニル基などが挙げられる。
【0075】
21及びn22は各々独立に、0〜3の整数を表す。
31及びn32は各々独立に、1〜6の整数を表す。
33は0又は1を表す。
【0076】
21及びL31は、(L−1)〜(L−4)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、L22及びL32は単結合、又は、(L−4)〜(L−7)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、(a)は色素残基(Q)に結合したカルボニル基との連結位を表し、(b)はエチレン性不飽和基(CR11=CHR12)との連結位を表し、(c)はカルボキシル基(CO2M)との連結位を表す。
【0077】
【化13】

【0078】
(L−1)〜(L−7)中、n41、n51、n61及びn62は各々独立に1〜3の整数を表す。
【0079】
(L−1)〜(L−7)中、R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94は、各々独立に水素原子又は1価の置換基を表す。R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94の少なくとも2つが同じ炭素上にあるか、又は、隣接位にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。
【0080】
41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94で表される1価の置換基としては、置換可能な基であればよく、例えば、R11及びR12で挙げた置換基を例として挙げることができる。これらの置換基は、さらに置換基を有していてもよく、このような置換基としては、上述のR11及びR12に置換していてもよい置換基が、例として挙げられる。
【0081】
(L−1)〜(L−4)において、(Y−1)からL21を取り除いた残基、又は、(Y−2)からL31を取り除いた残基と、カルボキシル基(CO2M)とはどちら側に結合していてもよく、また、(L−4)〜(L−7)において、(Y−1)からL22を取り除いた残基、又は、(Y−2)からL32を取り除いた残基と、エチレン性不飽和基(CR11=CHR12)とはどちら側に結合していてもよい。
中でも、Yは(Y−1)で表される3価の連結基であることが好ましく、下記(Y−1’)で表される3価の連結基であることがより好ましい。
【0082】
【化14】

【0083】
Qは、下記式(Q)で表される染料の任意の可能な位置から水素原子を1つ取り除いた色素残基を表す。
【0084】
【化15】

【0085】
式(Q)中、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R101、R102、R103、R104、R105及びR106で表される置換基としては、置換可能な基であればいずれでもよく、既述のR11及びR12に置換していてもよい置換基で述べた置換基であって、好ましくは各々独立に、ハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキル若しくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール若しくはヘテロ環アゾ基、イミド基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、又は、スルホ基を挙げることができ、それぞれの基はさらに置換基(例えばここで挙げた置換基)を有していてもよい。
【0086】
101、R102、R103、R104、R105及びR106の少なくとも2つが隣接位にある場合、すなわちR101、R102、R103、R104、R105及びR106のうち複数の基が例えば隣り合う炭素原子に結合されているなどの位置関係にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。この5〜6員環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、フラン環などが挙げられ、さらに置換基を有していてもよく、該置換基としては既述のR11やR12に置換していてもよい置換基が挙げられる。
【0087】
11は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜3の無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0088】
12は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜3の無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0089】
21、R22、R23、R24、R33、R34、R41、R42、R53、R54、R61、R62、R63及びR64は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜3の無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0090】
51及びR52は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、カルボキシル基、炭素数1〜3の無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子、塩素原子、カルボキシル基、メチル基である。
【0091】
71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、カルボキシル基、炭素数1〜3の無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子、塩素原子、カルボキシル基、メチル基である。
【0092】
101及びR102は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基であり、より好ましくは互いに結合して、R101及びR102と結合する炭素原子とともに6員環を形成しているものである。
103は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、脂肪族スルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、塩素原子又は臭素原子であり、特に好ましくは水素原子又は臭素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
【0093】
104は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、ヒドロキシル基、脂肪族オキシ基であり、より好ましくは水素原子、ヒドロキシル基であり、特に好ましくはヒドロキシル基である。
【0094】
105及びR106は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基であり、より好ましくは互いに結合して、R101及びR102と結合する炭素原子とともに6員環を形成しているものである。
【0095】
Mは、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、リチウム、アンモニウムであり、より好ましくは水素原子、3級アンモニウム又は4級アンモニウムであり、最も好ましくは水素原子である。
【0096】
21は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数であり、最も好ましくは0又は1である。
【0097】
22は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは1〜3の整数であり、最も好ましくは1又は2である。
【0098】
31は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは1〜4の整数であり、最も好ましくは2又は3である。
【0099】
32は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは1〜4の整数であり、最も好ましくは2又は3である。
【0100】
33は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは0又は1である。
【0101】
Yは、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは(Y−1)又は(Y−2)であり、より好ましくは(Y−1)である。
【0102】
21、L31は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは(L−1)、(L−3)、(L−4)であり、より好ましくは(L−1)、(L−3)であり、最も好ましくは(L−1)である。
【0103】
22、L32は各々独立に、は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは(L−4)、(L−5)、(L−7)であり、より好ましくは(L−5)、(L−7)であり、最も好ましくは(L−7)である。
【0104】
前記式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0105】
式(1)で表される化合物は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、式(2)で表される化合物である場合が、特に好ましい。
【0106】
<式(2)で表されるキノフタロン色素>
前記式(1)で表されるキノフタロン色素としては、下記式(2)で表されるキノフタロン色素であることが好ましい。
式(2)で表されるキノフタロン色素は、式(1)で表されるキノフタロン色素と同様に、少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和基を有する置換基と、少なくとも1つ以上のカルボキシル基を特定の置換基として有し、かつ特定の構造を有することを特徴とする色素である。式(1)中でも、式(2)で表されるキノフタロン色素が、特に有機溶剤に対する溶解性、光堅牢性、熱堅牢性が高く、経時安定性及び硬化後の耐溶剤性に優れた着色硬化性組成物、並びに色相が良好で高透過率特性を有すると共に、光堅牢性、熱堅牢性及び耐溶剤性に優れ、高精細化に対応したカラーフィルタ用途に特に優れた性能を示し、式(1)で表されるキノフタロン色素、特に式(2)で表されるキノフタロン色素がこれまでに知られていなかった以上、これらの優れた性能を想像することはできないものであった。
【0107】
【化16】

【0108】
式(2)中、X201は水素原子又はハロゲン原子を表す。X201で表されるハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が挙げられる。中でも、X201は水素原子であることが特に好ましい。
式(2)中、R201は水素原子、置換又は無置換のアルキル基を表す。R201で表される置換又は無置換のアルキル基は、直鎖、分岐鎖、環状鎖のいずれであってもよく、総炭素数は1〜6が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有していてもよく、このような置換基としては、上述のR11及びR12に置換していてもよい置換基が、例として挙げられる。中でも、R201は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はイソプロピル基であることがより好ましく、イソプロピル基であることが特に好ましい。
【0109】
式(2)中、R202及びR203は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表す。
202又はR203で表される置換又は無置換のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよく、総炭素数は1〜15が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
202又はR203で表される置換又は無置換のアリール基としては、単環及び縮合環のいずれでもよく、総炭素数は6〜15が好ましい。例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0110】
式(2)におけるMは、式(1)のMと同義であり、好ましい例も同じである。
【0111】
201は0〜2の整数を表し、n202は1又は2を表す。
【0112】
201は、(L−1)〜(L−4)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、L202は、(L−4)〜(L−7)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表す。
【0113】
【化17】

【0114】
(L−1)〜(L−7)は、既述の(L−1)〜(L−7)と同義であり、好ましい例も同じである。
【0115】
201は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは水素原子、臭素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
【0116】
201は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、無置換の炭素数1〜5のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子又は無置換の炭素数1〜4のアルキル基である。
【0117】
202は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜3の無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0118】
203は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは水素原子、無置換のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜3の無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0119】
201は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは(L−1)、(L−3)、(L−4)であり、より好ましくは(L−1)、(L−3)であり、最も好ましくは(L−1)である。
【0120】
202は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは(L−4)、(L−5)、(L−7)であり、より好ましくは(L−5)、(L−7)であり、最も好ましくは(L−7)である。
【0121】
前記式(2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0122】
効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、好ましくは、X201が水素原子又は臭素原子であり、R201が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R202が水素原子又はメチル基であり、R203が水素原子であり、L201が(L−1)〔(L−1)の場合、R41及びR42は水素原子であり、n41は2又は3である。〕、(L−3)〔(L−3)の場合、R61、R62、R63及びR64は各々独立に、水素原子又はメチル基であり、n61及びn62は1又は2である。〕、(L−4)〔(L−4)の場合、R71、R73及びR74は水素原子であり、R72は水素原子、メチル基、カルボキシル基である。〕であり、L202が(L−5)〔(L−5)の場合、R81、R82、R83及びR84は水素原子である。〕、(L−7)であり、n201が0又は1であり、n202が1又は2であり、Mが水素原子、トリアルキルアンモニウム、又は、テトラアルキルアンモニウムである組み合わせである。
効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、より好ましくは、X201が水素原子又は臭素原子であり、R201が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R202が水素原子又はメチル基であり、R203が水素原子であり、L201が(L−1)〔(L−1)の場合、R41及びR42は水素原子であり、n41は2又は3である。〕、(L−3)〔(L−3)の場合、R61、R62、R63及びR64は各々独立に、水素原子又はメチル基であり、n61及びn62は1又は2である。〕、(L−4)〔(L−4)の場合、R71、R73及びR74は水素原子であり、R72は水素原子又はカルボキシル基である。〕であり、L202が(L−7)であり、n201が0又は1であり、n202が1又は2であり、Mが水素原子、トリアルキルアンモニウム、又は、テトラアルキルアンモニウムである組み合わせである。
効果的に本発明の効果を奏しうる観点で、もっとも好ましくは、X201が水素原子であり、R201が炭素数3〜4の分岐アルキル基であり、R202が水素原子又はメチル基であり、R203が水素原子であり、L201が(L−1)〔(L−1)の場合、R41及びR42は水素原子であり、n41は2又は3である。〕、(L−3)〔(L−3)の場合、R61、R62、R63及びR64は各々独立に、水素原子又はメチル基であり、n61及びn62は1又は2である。〕、(L−4)〔(L−4)の場合、R71、R73及びR74は水素原子であり、R72は水素原子又はカルボキシル基である。〕であり、L202が(L−7)であり、n201が0又は1であり、n202が1又は2であり、Mが水素原子、又は、総炭素数が6〜12のトリアルキルアンモニウム若しくはテトラメチルアンモニウムである組み合わせである。
【0123】
中でも、前記式(2)で表される化合物は、下記式(2’)で表される化合物であることが好ましい。
【0124】
【化18】

〔式(2’)中、X201は水素原子又はハロゲン原子を表し、R201は水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Mは水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムを表す。〕
【0125】
以下に、前記式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、下記例示化合物(1)〜(56)は前記式(2)の例示化合物でもある。なお、下記表1〜表7のR1、R2及びXはそれぞれ、下記式(3)中に表される基である。
【0126】
【化19】

【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
【表5】

【0132】
【表6】

【0133】
【表7】

【0134】
【化20】

【0135】
【化21】

【0136】
本発明における前記式(1)で表されるキノフタロン色素の合成方法は、特公平7−49583号公報記載の式(1)の染料、特公平5−5257号公報記載の式(1)の染料の合成方法に準じて合成することができる。具体的には後述する実施例で説明する。
【0137】
前記式(1)で表されるキノフタロン色素の着色硬化性組成物中における総濃度は、分子量及びモル吸光係数によって異なるが、該組成物の全固形成分に対して、0.5〜80質量%が好ましく、0.5〜70質量%がより好ましく、1〜70質量%が特に好ましい。
【0138】
〔バインダー〕
本発明の着色硬化性組成物は、バインダーを必要に応じて含有することができる。
本発明に用いることができるバインダーとしては、アルカリ可溶性であれば特に限定されないが、熱堅牢性、現像性、入手性等の観点から選ばれることが好ましい。
アルカリ可溶性のバインダーとしては、線状有機高分子重合体で、有機溶剤に可溶性で、弱アルカリ水溶液で現像できるものが好ましい。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号等の各公報の明細書に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等があり、また、同様に、側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体が有用である。この他に水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等やポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等も有用である。
また、親水性基を有するモノマーを共重合してもよく、この例としては、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2級及び3級のアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、分岐又は直鎖のプロピル(メタ)アクリレート、分岐又は直鎖のブチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記以外に親水性基を有するモノマーとして、テトラヒドロフルフリル基、燐酸部位、燐酸エステル部位、4級アンモニウム塩の部位、エチレンオキシ鎖、プロピレンオキシ鎖、スルホン酸又はその塩の部位、モルホニルエチル基等を含んだモノマー等も有用である。
【0139】
また、架橋効率を向上させる観点からは、重合性基を側鎖に有してもよく、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有したポリマー等も有用である。
これらの重合性基を有するポリマーの例としては、KSレジスト−106(大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーPシリーズ(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、硬化被膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロルヒドリンとのポリエーテル等も有用である。
上記の各種バインダーのうち、熱堅牢性の観点で、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、また、現像性制御の観点では、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。上記アクリル系樹脂としては、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等から選ばれるモノマーからなる共重合体、及びKS−レジスト−106(大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーP−シリーズ(ダイセル化学工業(株)製)などが好ましい。
また、本発明に用いることができるバインダーとして、アルカリ可溶性フェノール樹脂を用いることができる。該アルカリ可溶性フェノール樹脂は、本発明の着色硬化性組成物をポジ型に構成する場合に好適に用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、又はビニル重合体等が挙げられる。
【0140】
前記ノボラック樹脂としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に縮合させて得られるものが挙げられる。フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、キシレノール、フェニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ナフトール、又はビスフェノールA等が挙げられる。フェノール類は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、又はベンズアルデヒド等が挙げられる。
前記ノボラック樹脂の具体例としては、例えば、メタクレゾール、パラクレゾール又はこれらの混合物とホルマリンとの縮合生成物が挙げられる。ノボラック樹脂は、分別等の手段を用いて分子量分布を調節してもよい。また、ビスフェノールCやビスフェノールA等のフェノール系水酸基を有する低分子量成分を前記ノボラック樹脂に混合してもよい。
前記バインダーは、重量平均分子量(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)が1×103〜2×105の重合体が好ましく、2×103〜1×105の重合体が更に好ましく、5×103〜5×104の重合体が特に好ましい。
【0141】
バインダーの本発明の着色硬化性組成物中における含有量としては、該組成物中の全固形分に対して、0〜90質量%が好ましく、0〜70質量%が更に好ましく、0〜60質量%が特に好ましい。
【0142】
〔架橋剤〕
本発明の着色硬化性組成物は、架橋剤を必要に応じて含有することができる。前述の本発明に係る染料とともに使用すると、従来に比して膜の硬化反応がより高度に進行し、硬化性の良好な膜が得られるものであるが、補足的に架橋剤を用いて更に高度に硬化させた膜を得るようにすることも可能である。本発明の着色硬化性組成物の高解像度化を達成する観点からは有用である。
本発明において使用可能な架橋剤は、架橋反応によって膜硬化を行えるものであれば特に限定はなく、例えば、(a)エポキシ樹脂、(b)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、又はウレア化合物、(c)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれた少なくとも一つの基で置換されたフェノール化合物、ナフトール化合物又はヒドロキシアントラセン化合物が挙げられる。中でも特に、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0143】
前記(a)エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有し、かつ架橋性を有するものであればいずれでもよく、例えば、ビスフェノールA−グリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、へキサンジオールジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、N,N−ジグリシジルアニリン等の2価のグリシジル基含有低分子化合物、同様に、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールフェノールトリグリシジルエーテル、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ−α,α−ジメチルベンジル)エチルベンゼン(TrisP−PA)トリグリシジルエーテル等に代表される3価のグリシジル基含有低分子化合物、同様に、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラメチロールビスフェノール−A−テトラグリシジルエーテル等に代表される4価のグリシジル基含有低分子化合物、同様に、ジペンタエリスリトールペンタグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル等の多価グリシジル基含有低分子化合物、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等に代表されるグリシジル基含有高分子化合物等が挙げられる。
【0144】
前記架橋剤(b)に含まれるメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基が置換している数としては、メラミン化合物の場合2〜6、グリコールウリル化合物、グアナミン化合物、ウレア化合物の場合は2〜4であるが、好ましくはメラミン化合物の場合5〜6、グリコールウリル化合物、グアナミン化合物、ウレア化合物の場合は3〜4である。
以下、前記(b)のメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物及びウレア化合物を総じて、(b)に係る化合物(メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、又はアシロキシメチル基含有化合物)ということがある。
【0145】
前記(b)に係るメチロール基含有化合物は、(b)に係るアルコキシメチル基含有化合物をアルコール中で塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸等の酸触媒存在下、加熱することにより得られる。前記(b)に係るアシロキシメチル基含有化合物は(b)に係るメチロール基含有化合物を塩基性触媒存在下、アシルクロリドと混合撹拌することにより得られる。
【0146】
以下、前記置換基を有する(b)に係る化合物の具体例を挙げる。
前記メラミン化合物として、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1〜5個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1〜5個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物などが挙げられる。
【0147】
前記グアナミン化合物として、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜3個のメチロール基をメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜3個のメチロール基をアシロキシメチル化した化合物又はその混合物などが挙げられる。
【0148】
前記グリコールウリル化合物としては、例えば、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜3個をメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜3個をアシロキシメチル化した化合物又はその混合物などが挙げられる。
【0149】
前記ウレア化合物としては、例えば、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1〜3個のメチロール基をメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。(b)に係る化合物は、単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0150】
前記架橋剤(c)、すなわち、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたフェノール化合物、ナフトール合物又はヒドロキシアントラセン化合物は、前記架橋剤(b)の場合と同様、熱架橋により上塗りフォトレジストとのインターミキシングを抑制するとともに、膜強度を更に高めるものである。
以下、これらの化合物を総じて、(c)に係る化合物(メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、又はアシロキシメチル化合物)ということがある。
【0151】
前記架橋剤(c)成分に含まれるメチロール基、アシロキシメチル基又はアルコキシメチル基の数としては、一分子あたり最低2個必要であり、熱架橋性及び保存安定性の観点からフェノール性化合物の2位,4位が全て置換されている化合物が好ましい。また、骨格となるナフトール化合物、ヒドロキシアントラセン化合物も、OH基のオルト位、パラ位が全て置換されている化合物が好ましい。
【0152】
骨格となるフェノール化合物の3位又は5位は未置換であってもよいし、置換基を有していてもよい。またナフトール化合物においても、OH基のオルト位以外は未置換であってもよいし、置換基を有していてもよい。
【0153】
前記(c)に係るメチロール基含有化合物は、フェノール性OH基のオルト位又はパラ位(2位又は4位)が水素原子である化合物を原料に用い、これを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド等の、塩基性触媒の存在下でホルマリンと反応させることにより得られる。前記(c)に係るアルコキシメチル基含有化合物は、(c)に係るメチロール基含有化合物をアルコール中で塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸等の酸触媒の存在下で加熱する事により得られる。前記(c)に係るアシロキシメチル基含有化合物は、(c)に係るメチロール基含有化合物を塩基性触媒の存在下アシルクロリドと反応させることにより得られる。
【0154】
架橋剤(c)における骨格化合物としては、フェノール性OH基のオルト位又はパラ位が未置換のフェノール化合物、ナフトール、ヒドロキシアントラセン化合物、等が挙げられ、例えば、フェノール、クレゾールの各異性体、2,3−キシレノ−ル、2,5−キシレノ−ル、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、ビスフェノール−Aなどのビスフェノール類、4,4’−ビスヒドロキシビフェニル、TrisP−PA(本州化学工業(株)製)、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシアントラセン等が使用される。
【0155】
前記架橋剤(c)の具体例としては、例えば、トリメチロールフェノール、トリ(メトキシメチル)フェノール、トリメチロールフェノールの1〜2個のメチロール基をメトキシメチル化した化合物、トリメチロール−3−クレゾール、トリ(メトキシメチル)−3−クレゾール、トリメチロール−3−クレゾールの1〜2個のメチロール基をメトキシメチル化した化合物、2,6−ジメチロール−4−クレゾール等のジメチロールクレゾール、テトラメチロールビスフェノール−A、テトラメトキシメチルビスフェノール−A、テトラメチロールビスフェノール−Aの1〜3個のメチロール基をメトキシメチル化した化合物、テトラメチロール−4,4’−ビスヒドロキシビフェニル、テトラメトキシメチル−4,4’−ビスヒドロキシビフェニル、TrisP−PAのヘキサメチロール体、TrisP−PAのヘキサメトキシメチル体、TrisP−PAのヘキサメチロール体の1〜5個のメチロール基をメトキシメチル化した化合物、ビスヒドロキシメチルナフタレンジオール等がある。
【0156】
また、ヒドロキシアントラセン化合物としては、例えば、1,6−ジヒドロキシメチル−2,7−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
また、アシロキシメチル基含有化合物としては、例えば、上記メチロール基含有化合物のメチロール基を、一部又は全部アシロキシメチル化した化合物が挙げられる。
【0157】
これらの化合物の中で好ましいものは、トリメチロールフェノール、ビスヒドロキシメチル−p−クレゾール、テトラメチロールビスフェノールA、TrisP−PA(本州化学工業(株)製)のヘキサメチロール体又はそれらのメチロール基がアルコキシメチル基及びメチロール基とアルコキシメチル基の両方で置換されたフェノール化合物が挙げられる。これら(c)に係る化合物は単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0158】
本発明において架橋剤を含有する場合、硬化性組成物(a)〜(c)の着色硬化性組成物中における総含有量としては、素材により異なるが、該組成物の固形分に対して1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、7〜30質量%が特に好ましい。
【0159】
〔重合性モノマー〕
本発明の着色硬化性組成物は、重合性モノマーの少なくとも1種を含有することによって好適に構成することができる。重合性モノマーは着色硬化性組成物をネガ型に構成する場合に主として含有される。なお、後述のナフトキノンジアジド化合物を含有するポジ型の系に後述の光重合開始剤と共に更に含有でき、この場合には形成されるパターンの硬化度をより促進させることができる。
この重合性モノマーは、後述の光重合開始剤と共に用いることで本発明の着色硬化性組成物の高感度化、高解像度化を達成しえる点で有用である。以下、重合性モノマーについて説明する。
前記重合性モノマーとしては、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物が好ましく、その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0160】
また更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものが挙げられる。
前記重合性モノマーの着色硬化性組成物中における含有量としては、該組成物の固形分に対して、0.1〜90質量%が好ましく、1.0〜80質量%がさらに好ましく、2.0〜70質量%が特に好ましい。
【0161】
〔感放射線性化合物〕
本発明の着色硬化性組成物は、感放射線性化合物の少なくとも1種を含有することにより好適に構成することができる。
本発明に用いることができる感放射線性化合物は、UV、Deep UV、可視光、赤外光、電子線などの放射線に対し、ラジカル発生、酸発生、塩基発生などの化学反応を起こし得る化合物であるが、上記のアルカリ可溶性樹脂を架橋、重合、酸性基の分解などの反応により不溶化させたり、塗膜中に共存する重合性モノマーやオリゴマーの重合、架橋剤の架橋などを起こすことで塗膜をアルカリ現像液に対して不溶化させる目的で用いられる。
この感放射線性化合物は、本発明の着色硬化性組成物の高感度化、高解像度を達成する観点から有用である。
着色硬化性組成物が、ネガ型に構成される場合には光重合開始剤を、ポジ型に構成される場合にはナフトキノンジアジド化合物を、それぞれ含有することが好ましい。
【0162】
(光重合開始剤等)
まず、ネガ型に構成する場合に用いる光重合開始剤について説明する。光重合開始剤は、前記重合性モノマー(重合性基を有するモノマー)を重合反応させ得るものであれば特に限定されないが、特性、開始効率、吸収波長、入手性、コスト等の観点で選ばれることが好ましい。なお、ナフトキノンジアジド化合物を含有するポジ型の系に更に含有してもよく、この場合には形成されるパターンの硬化度をより促進させることができる。
前記光重合開始剤としては、ハロメチルオキサジアゾール化合物及びハロメチル−s−トリアジン化合物から選択された少なくとも一つの活性ハロゲン化合物、3−アリール置換クマリン化合物、ロフィン2量体、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、オキシム系化合物等が挙げられる。
【0163】
活性ハロゲン化合物であるハロメチルオキサジアゾール化合物としては、特公昭57−6096号公報に記載の2−ハロメチル−5−ビニル−1,3,4−オキサジアゾール化合物等や、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
【0164】
活性ハロゲン化合物であるハロメチル−s−トリアジン化合物としては、特公昭59−1281号公報に記載のビニル−ハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭53−133428号公報に記載の2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−ハロメチル−s−トリアジン化合物及び4−(p−アミノフェニル)−2,6−ジ−ハロメチル−s−トリアジン化合物等が挙げられる。
【0165】
その他の具体例としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−s−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ブトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(2−メトキシエチル)ナフト−1−イル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)ナフト−1−イル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(2−ブトキシエチル)ナフト−1−イル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(6−メトキシ−5−メチルナフト−2−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(6−メトキシナフト−2−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(5−メトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(6−エトキシ−ナフト−2−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4,5−ジメトキシナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−メチル−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−メチル−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔p−N,N−ジ(フェニル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N−クロロエチルカルボニルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔p−N−(p−メトキシフェニル)カルボニルアミノフェニル〕2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
【0166】
4−〔m−クロロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−フルオロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−クロロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−フルオロ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−ブロモ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−クロロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔o−フルオロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−ブロモ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−クロロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−〔m−フルオロ−p−N,N−ジ(クロロエチル)アミノフェニル〕−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−ブロモ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−クロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−フルオロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−クロロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−フルオロ−p−N−エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−ブロモ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−クロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(m−フルオロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−クロロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−フルオロ−p−N−クロロエチルアミノフェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0167】
その他、みどり化学(株)製TAZシリーズ、TAZ−107、TAZ−110、TAZ−104、TAZ−109、TAZ−140、TAZ−204、TAZ−113、TAZ−123、TAZ−104、PANCHIM社製Tシリーズ、T−OMS、T−BMP、T−R、T−B、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアシリーズ、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア500、イルガキュア1000、イルガキュア149、イルガキュア819、イルガキュア261、ダロキュアシリーズ、ダロキュア1173、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルホリノブチロフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−(o−クロルフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(p−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(p−メチルメルカプトフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、ベンゾインイソプロピルエーテル等も有用に用いられる。
【0168】
本発明の着色硬化性組成物には、前記光重合開始剤以外の他の公知の光重合開始剤を使用することができる。具体的には、米国特許第2,367,660号明細書記載のビシナールポリケトルアルドニル化合物、米国特許第2,367,661号及び第2,367,670号明細書に記載のα−カルボニル化合物、米国特許第2,448,828号明細書に記載のアシロインエーテル、米国特許第2,722,512号明細書のα−炭化水素で置換されたアリールアシロイン化合物、米国特許第3,046,127号及び第2,951,758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3,549,367号明細書に記載のトリアリルイミダゾールダイマー/P−アミノフェニルケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチール−s−トリアジン系化合物等を挙げることができる。
【0169】
光重合開始剤の着色硬化性組成物中における含有量は、前記重合性モノマーの固形分(質量)に対して、0.01〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。該含有量が0.01質量%以上であると、重合性に優れ、また、50質量%以下であると、分子量が大きく、膜強度に優れる。
【0170】
上記の光重合開始剤には増感剤や光安定剤を併用することができる。
その具体例として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、9−フルオレノン、2−クロロ−9−フルオレノン、2−メチル−9−フルオレノン、9−アントロン、2−ブロモ−9−アントロン、2−エチル−9−アントロン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−t−ブチル−9,10−アントラキノン、2,6−ジクロロ−9,10−アントラキノン、キサントン、2−メチルキサントン、2−メトキシキサントン、2−エトキシキサントン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、ベンジル、ジベンザルアセトン、p−(ジメチルアミノ)フェニルスチリルケトン、p−(ジメチルアミノ)フェニル−p−メチルスチリルケトン、ベンゾフェノン、p−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(又はミヒラーケトン)、p−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾアントロン等や特公昭51−48516号公報記載のベンゾチアゾール系化合物等や、チヌビン1130、同400等が挙げられる。
【0171】
また、上記のほかに更に、熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0172】
(ナフトキノンジアジド化合物)
次に、ポジ型に構成する場合に用いるナフトキノンジアジド化合物について説明する。
ナフトキノンジアジド化合物は、少なくとも1つのo−キノンジアジド記を有する化合物であり、例えば、o−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、o−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸アミド、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸アミド等が挙げられる。これらのエステルやアミド化合物は、例えば、特開平2−84650号公報、特開平3−49437号公報に式(I)で記載されているフェノール化合物等を用いて公知の方法により製造することができる。
【0173】
また、着色硬化性組成物をポジ型に構成する場合には、前記バインダー、前記架橋剤は、通常、有機溶剤中にそれぞれ2〜50質量%、2〜30質量%程度の割合で溶解させるのが好ましい。また、前記ナフトキノンジアジド化合物、前記色素の各含有量は通常、前記バインダー及び架橋剤を溶解した溶液の質量に対して、それぞれ2〜30質量%、2〜50質量%程度の割合で添加するのが好ましい。
【0174】
〔溶剤〕
本発明の着色硬化性組成物の調製の際には、一般に溶剤を含有することができる。溶剤は各成分の溶解性、着色硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的に特に限定されないが、特に、バインダーの溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
溶剤の具体例としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等、オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等の3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等の2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;
【0175】
エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン等が好ましい。
【0176】
上記の中でも、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等がより好ましい。
【0177】
〔各種添加物〕
本発明の着色硬化性組成物には、必要に応じて各種添加物、例えば充填剤、上記以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することかできる。これらの例としては、特開2008−292970号公報の段落0274〜0276に記載の添加剤を挙げることができる。
【0178】
前記各種添加物の具体例としては、ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフルオロアルキルアクリレート等の結着樹脂以外の高分子化合物;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の界面活性剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤:2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;及びポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤を挙げることができる。
【0179】
また、非硬化部のアルカリ溶解性を促進し、本発明の着色硬化性組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、該組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1,000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行なうことができる。
具体的には、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバリン酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0180】
本発明の着色硬化性組成物は、液晶表示装置(LCD)や固体撮像素子(例えばCCD,CMOS)等に用いられるカラーフィルタなどの着色画素形成用として、また、印刷用インキ、インクジェット用インキ及び塗料などの作製用途として、好適に用いることができる。
【0181】
<カラーフィルタ及びその製造方法>
次に、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法を通じて詳述する。
本発明のカラーフィルタは、本発明の着色硬化性組成物を硬化して得られるカラーフィルタであり、下記の製造方法により製造されたカラーフィルタであることが好ましい。
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、既述の本発明の着色硬化性組成物が用いられる。本発明のカラーフィルタは、既述の本発明の着色硬化性組成物を用い、この着色硬化性組成物を支持体上に回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布方法により塗布して感放射線性組成物層を形成し、該層を、例えば、所定のマスクパターンを介して画像露光し、現像液で現像して、ネガ型又はポジ型の着色パターンを形成することによって、最も好適に作製することができる(画像形成工程)。このとき必要に応じて、形成された着色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を設けることができる。この際に使用される光又は放射線としては、特にg線、h線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。また、着色硬化性組成物がポジ型に構成されている時には、画像形成工程後に着色パターンをポストベークする工程を設けることができる。
カラーフィルタの作製においてはネガ型の場合は、前記画像形成工程(及び必要により硬化工程)を所望の色相数に合わせて繰り返すことにより、ポジ型の場合は、前記画像形成工程及びポストベークを所望の色相に合わせて繰り返すことにより、所望数の色相に構成されたカラーフィルタを作製することができる。
また、レーザー光をスキャニングする画像露光も使用できる。
【0182】
前記支持体としては、例えば液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
【0183】
また、これらの支持体上に必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止あるいは基板表面の平坦化のために、下塗り層を設けてもよい。
【0184】
上記本発明のカラーフィルタの製造方法に用いる現像液としては、本発明の着色硬化性組成物の現像除去しようとする部分(例えばネガ型の場合は未硬化部)を溶解する一方、フィルタをなす硬化部は溶解しない組成よりなるものであればいかなるものでも用いることができる。具体的には種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0185】
前記有機溶剤としては、本発明の着色硬化性組成物を調製する際に使用される前述の溶剤が挙げられる。
【0186】
アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム,硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解してなるアルカリ性水溶液が好適である。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に、現像後、水で洗浄する。
【0187】
また、本発明のカラーフィルタは、液晶表示素子やCCD等の固体撮像素子に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS素子等に好適である。本発明のカラーフィルタは、例えば、CCDを構成する各画素の受光部と集光するためのマイクロレンズとの間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【実施例】
【0188】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0189】
(実施例1)
【0190】
【化22】

【0191】
<中間体Bの調製>
アルカリトラップを備えた5Lの三ツ口フラスコに4−イソプロピルアニリン64.8g(0.479モル)、濃塩酸48mL、水360mLを加え室温で撹拌した。ここへ抱水クロラール95.0g(0.574モル)と硫酸ナトリウム500gを水1,500mLに溶解させた溶液を滴下し、さらにヒドロキシルアミン一水和物を水500mLに溶解させた溶液を滴下した。窒素雰囲気下100℃で12時間反応させ、室温まで冷却した。結晶を濾別し、中間体Bの薄茶色固体を98.0g得た(収率99%)。MS(m/z)=207([M+1]+,100%)。
【0192】
<中間体Cの調製>
2,000mLの三ツ口フラスコに800mLの濃硫酸を加え、水冷したところに中間体B200g(0.97モル)を60分かけて分割添加した。70〜80℃で30分間反応させた後、水冷した反応液を、氷水6,000gの中へ撹拌しながら、注意深く15℃以下で滴下した。内温15℃で30分間撹拌した後に、析出している固体を濾別、水洗し中間体Cの固体170gを得た(収率90%)。MS(m/z)=189(M+,100%)。
【0193】
<中間体Dの調製>
1,000mLの三ツ口フラスコに中間体Cを46g(0.243モル)、水97mL、水酸化カリウム97gを加え、室温で30分間撹拌した。さらにトルエン242mL、臭化テトラエチルアンモニウム1g、ブロモアセトン50g(0.364モル)を加え、60℃で2時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、トルエン層を除いた後、水層を酢酸エチルで洗浄した。洗浄した水層を15℃以下に冷却し、ここへ適当量の濃塩酸を加え、結晶を析出させた。結晶を濾別し、イソプロピルアルコールで再結晶し、中間体Dの黄色結晶12.3gを得た(収率21%)。MS(m/z)=246([M+1]+,100%)。
【0194】
<中間体Eの調製>
1,000mLの三ツ口フラスコに無水トリメリット酸84.5g(0.44モル)、スルホラン400mLを加え、内温を185℃まで加温した。ここへ中間体D98.0g(0.40モル)を発生する炭酸ガスに注意しながらゆっくりと分割添加した。200℃で2時間反応させた後、反応液を室温に冷却しメタノール200mLを加えた。室温で撹拌し、結晶を濾別し、メタノールで掛け洗いして、中間体Fの橙色結晶91gを得た(収率55%)。MS(m/z)=375(M+,100%)。
【0195】
<中間体Fの調製>
1,000mLの三ツ口フラスコに中間体E50g(0.133モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)500mL、臭化テトラエチルアンモニウム5.6g、4−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラメチルピペリジン−N−オキシド100mg、メタクリル酸グリシジル19g(0.133モル)を加え、130℃で2時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、水3,000mLに滴下し、一晩静置した。析出した結晶を濾別し、水で十分に洗浄し、得られた粗結晶をアセトニトリル450mLで再結晶し、異性体を含む中間体F46.1gを得た(収率67%)。
【0196】
<例示化合物(1)及び(2)の合成>
200mLの三ツ口フラスコに異性体を含む中間体F10g(0.0193モル)、トルエン100mL、無水コハク酸5.0g、ピリジン2.06g、ニトロベンゼン1mLを加え、80℃で6時間反応させた。反応液を冷却し、結晶を濾別し、n−ヘキサンで洗浄した。得られた粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて例示化合物(1)を3.3g(収率27%)と例示化合物(2)を0.9g(収率8%)をそれぞれ単離した。
例示化合物(1):MS(m/z)=617(M+,100%)。例示化合物の酢酸エチル中の吸収スペクトルは444nmであった。
例示化合物(2):MS(m/z)=617(M+,100%)。例示化合物の酢酸エチル中の吸収スペクトルは444.2nmであった。
【0197】
<例示化合物(3)、(4)、(9)、(10)、(29)及び(30)の合成>
例示化合物(3)、(4)、(9)、(10)、(29)及び(30)は、上記合成例に準じた方法で合成した。
また、例示化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(9)、(10)、(29)及び(30)以外の例示化合物に関しても、化学的な見地から、上記合成例に準じた方法で合成することができる。
【0198】
<評価>
得られた例示化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(9)、(10)、(29)及び(30)(色素(1)、(2)、(3)、(4)、(9)、(10)、(29)及び(30))の酢酸エチル溶液中(濃度1×10-6mol/L、光路長10mm)における吸収スペクトルの極大吸収波長を、下記表8に示す。
また図1に、実施例1で合成した例示化合物(1)(色素(1))の溶液透過スペクトルを示す。
【0199】
【表8】

【0200】
(実施例2)
(1)レジスト溶液Aの調製(ネガ型)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)・・・5.20部
・シクロヘキサノン・・・52.6部
・バインダー・・・30.5部
(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル)共重合体(モル比=60:20:20)41%シクロヘキサノン溶液
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート・・・10.2部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール)・・・0.006部
・フッ素系界面活性剤・・・0.80部
(商品名:F−475、大日本インキ化学工業(株)製)
・光重合開始剤TAZ−107(みどり化学(株)製)・・・0.58部
を混合して溶解し、レジスト溶液Aを調製した。
【0201】
(2)下塗り層付ガラス基板の作製
ガラス基板(コーニング1737)を0.5%NaOH水で超音波洗浄した後、水洗、脱水ベーク(200℃/20分)を行った。ついで上記(1)で得たレジスト溶液Aを洗浄したガラス基板上に膜厚2μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、220℃で1時間加熱乾燥させて、硬化膜(下塗り層)を調製した。
【0202】
(3)レジスト溶液Bの調製(ネガ型)
・シクロヘキサノン・・・80部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート・・・14.0部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール)・・・0.006部
・フッ素系界面活性剤・・・0.80部
(商品名:F−475、大日本インキ化学工業(株)製)
・光重合開始剤TAZ−107(みどり化学(株)製)・・・2.0部
・本発明の例示化合物(1)・・・4.0部
を混合して溶解し、染料レジスト溶液(着色硬化性組成物[ネガ型]の溶液)を調製した。
【0203】
(4)レジストの露光・現像(画像形成)
上記(3)で得られた染料レジスト溶液を、上記(2)で得た下塗り層付ガラス基板の下塗り層の上に膜厚が0.6μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークした。
次いで、露光装置を使用して、塗布膜に365nmの波長で線幅2μmのマスクを通して、200mJ/cm2の露光量で照射した。露光後、現像液CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を使用して、25℃40秒間の条件で現像した。その後、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥した。その後、200℃で15分間ポストベークを行った。
以上のようにしてカラーフィルタを構成するイエロー色として好適なパターンが得られた。
また図2に、実施例2で作製したカラーフィルタの透過スペクトルを示す。
【0204】
(5)評価
上記で調製した染料レジスト溶液の経時での保存安定性、及び、染料レジスト溶液を用いてガラス基板上に塗設された塗布膜の熱堅牢性、光堅牢性、耐溶剤性、パターン形状を下記のようにして評価した。評価結果は下記表9に示す。
【0205】
〔経時での保存安定性〕
染料レジスト溶液を室温で1ケ月保存した後、溶液中における異物の析出度合いを目視により下記判定基準に従って評価した。
−判定基準−
・○:析出は認められなかった。
・△:僅かに析出が認められた。
・×:析出が認められた。
【0206】
〔熱堅牢性〕
染料レジスト溶液が塗布されたガラス基板を、該基板面で接するように200℃のホットプレートに載置して1時間加熱した後、色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)にて、加熱前後での色差(ΔEab値)を測定して熱堅牢性を評価する指標とし、下記判定基準に従って評価した。
ΔEab値は、値の小さい方が、熱堅牢性が良好なことを示す。
−判定基準−
・○:ΔEab値<5
・△:5≦ΔEab値≦10
・×:ΔEab値>10
【0207】
〔光堅牢性〕
染料レジスト溶液が塗布されたガラス基板に対し、キセノンランプを10万luxで20時間照射(200万lux・h相当)した後、照射前後での色差(ΔEab値)を測定して光堅牢性を評価する指標とし、下記判定基準に従って評価した。
ΔEab値は、値の小さい方が、光堅牢性が良好なことを示す。
−判定基準−
・○:ΔEab値<3
・△:3≦ΔEab値≦10
・×:ΔEab値>10
【0208】
〔耐溶剤性〕
上記(4)で得られたポストベーク後の各種塗膜の分光を測定した(分光A)。この塗膜に対し、この上に上記(1)で得られたレジスト溶液Aを膜厚1μmとなるように塗布しプリベークを行った後、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して23℃・120秒間の条件で現像を行い、再度分光を測定した(分光B)。この分光A、Bの差より染料残存率(%)を算出し、これを耐溶剤性を評価する指標とした。この数値は100%に近いほど耐溶剤性に優れていることを示す。
【0209】
〔パターン形状〕
上記(4)で得られたポストベーク後の各種塗膜の現像パターンを光学顕微鏡(オリンパス(株)製デジタルマイクロスコープRX−20)で観察し、精細なパターンが作成できているかを以下判定基準に従って評価した。
−判定基準−
・○:精細なパターンが作製できている。
・△:パターンは作製できているが、パターンの淵が精細でない。
・×:パターンが作製できない。
【0210】
(実施例3〜10)
実施例2の(3)染料レジスト溶液の調製において、本発明に係る染料に変更(但し等重量)した以外、実施例2と同様にしてパターンを形成し、更に同様の評価を行った。評価結果は下記表9に示す。
【0211】
(比較例1〜6)
実施例1の(4)染料レジスト溶液の調製において、本発明に係る染料を下記比較色素1〜6(比較例1〜6)に変更したこと以外(但し等重量)、実施例2と同様にしてパターンを形成し、更に同様の評価を行った。評価結果は実施例の結果と共に下記表9に示す。
【0212】
【表9】

【0213】
表9に示すように、本発明に係る染料を用いた実施例では、比較例1及び2に比較し、溶液状に調製された染料レジスト溶液(着色硬化性組成物)は、いずれも経時での保存安定性に優れており、しかもこの着色硬化性組成物を用いて形成されたパターンは良好な熱堅牢性、光堅牢性、及び耐溶剤性を示した。
表9に示すように、エチレン性不飽和基を有するが、カルボキシル基を有さないキノフタロン色素である比較例3は、微細なパターンが形成できなかった。
表9に示すように、エチレン性不飽和基を有さないが、カルボキシル基を有するキノフタロン色素である比較例6は、耐溶剤性が不十分であった。
表9に示すように、エチレン性不飽和基を有し、カルボキシル基を有するキノフタロン色素である比較例4及び5は、相対的に優れた性能を有するがパターン形成性可能なものの、やや不十分であった。
表9に示すように、エチレン性不飽和基を有し、カルボキシル基を有するキノフタロン色素の中でも特に式(1)で表されるキノフタロン色素を含有する着色硬化性組成物を使用した実施例1〜10が、すべての項目において優れた性能を示していることがわかる。また、本発明のうち、特に式(2)で表されるキノフタロン色素は、実施例で用いたシクロヘキサンを含めさまざまな有機溶剤への溶解性(例えば、より安全性の高い乳酸エチルなど)が非常に高く、作業安全性の観点、作業負荷軽減にも効果的である。
【0214】
(比較色素1)
シー・アイ・ソルベント・イエロー162
【0215】
(比較色素2)
シー・アイ・ソルベント・イエロー82
【0216】
(比較色素3)
特開平5−271567号公報記載の例示化合物64
【0217】
【化23】

【0218】
(比較色素4)
特開2007−147784号公報記載の染料単量体具体例22
【0219】
【化24】

【0220】
(比較色素5)
特開2007−147784号公報記載の染料単量体具体例39
【0221】
【化25】

【0222】
(比較色素6)
エチレン性不飽和基を有する置換基がなく、カルボキシル基を有する下記キノフタロン色素
【0223】
【化26】

【0224】
(実施例11)
−着色硬化性組成物[ポジ型]の調製−
下記組成を混合、溶解して溶液状の着色硬化性組成物[ポジ型]を調製した。
・乳酸エチル(EL)・・・30部
・下記樹脂P−1・・・3.0部
・下記ナフトキノンジアジド化合物N−1・・・1.8部
・ヘキサメトキシメチロール化メラミン(架橋剤)・・・0.6部
・TAZ−107(みどり化学(株)製;光酸発生剤)・・・1.2部
・F−475・・・0.0005部
(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系界面活性剤)
・本発明に係る染料の例示化合物(1)・・・1.5部
【0225】
−樹脂P−1の合成−
ベンジルメタクリレート70.0g、メタクリル酸13.0g、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル17.0g、及び、2−メトキシプロパノール600gを三口フラスコに仕込み、撹拌装置と還流冷却管、温度計を取り付け窒素気流下65℃にて重合開始剤V−65(和光純薬工業(株)製)を触媒量添加して10時間撹拌した。得られた樹脂溶液を20Lのイオン交換水に激しく撹拌しながら滴下し、白色粉体を得た。この白色粉体を40℃で24時間真空乾燥し、樹脂PXを145g得た。この分子量をGPCにて測定したところ、重量平均分子量Mw=28,000、数平均分子量Mn=11,000であった。
【0226】
−ナフトキノンジアジド化合物N−1の合成−
TrisP−PA(本州化学工業(株)製)42.45g、o−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド61.80g及びアセトン300mlを三口フラスコに仕込み、室温下トリエチルアミン24.44gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間撹拌した後、大量の水を撹拌下に反応液を注いだ。沈殿したナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを、吸引ろ過により集め、40℃で24時間真空乾燥し、感光性のナフトキノンアジド化合物N−1を得た。
【0227】
−着色硬化性組成物の露光、現像(画像形成)−
実施例2と同様に下塗り層付ガラス基板を用意し、上記のようにして調製した着色硬化性組成物を実施例1と同様にして、下塗り層付ガラス基板の上に塗布、プリベーク、照射、現像及びリンス、スプレー乾燥を行ってパターンを得、その後このパターンを180℃で5分間加熱した(ポストベーク)。形成されたシアンパターンは矩形状の良好なプロファイルを示した。
続いて、上記で調製した染料レジスト溶液の保存安定性、及び、染料レジスト溶液を用いてガラス基板上に塗設された塗布膜の熱堅牢性、光堅牢性を実施例1と同様にして評価したところ、上記ネガ型の場合と同様に、保存安定性、並びに、光堅牢性及び熱堅牢性のいずれにおいても良好であった。
【0228】
(実施例12〜18)
実施例1〜10のガラス基板をシリコンウエハー基板に変えた他は、実施例1〜10と全て同様の操作を行ってシリコンウエハー基板の上に塗布膜を塗設した。次いで、i−線縮小投影露光装置を使用して1.2μmの正方形パターンに200mJ/cm2の露光量で露光し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を60%に希釈した現像液を用いて、23℃で60秒間現像した。次いで、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥した。以上により、正方形パターンの断面が略矩形でプロファイルの良好なCCD用カラーフィルタとして好適なパターンが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明によれば、特定のキノフタロン色素を含有する着色硬化性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、微細・薄層化に対応したカラーフィルタ及びその製造方法を提供することもできる。このため、本発明は高画質のフルカラー記録等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるキノフタロン色素を少なくとも1種類含有することを特徴とする
着色硬化性組成物。
【化1】

〔式(1)中、R11及びR12は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Mは水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムを表し、Yは下記(Y−1)又は(Y−2)で表される3価の連結基を表し、Qは下記式(Q)で表される染料の任意の可能な位置から水素原子を1つ取り除いた色素残基を表す。〕
【化2】

〔(Y−1)及び(Y−2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33及びR34は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、n21及びn22は各々独立に、0〜3の整数を表し、n31及びn32は各々独立に、1〜6の整数を表し、n33は0又は1を表し、L21及びL31は、下記(L−1)〜(L−4)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、L22及びL32は単結合又は下記(L−4)〜(L−7)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、(a)は色素残基(Q)に結合したカルボニル基との連結位を表し、(b)はエチレン性不飽和基(CR11=CHR12)との連結位を表し、(c)はカルボキシル基(CO2M)との連結位を表す。〕
【化3】

〔(L−1)〜(L−7)中、n41、n51、n61及びn62は各々独立に、1〜3の整数を表し、R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94の少なくとも2つが同じ炭素上にあるか、又は、隣接位にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。(L−1)〜(L−4)において、(Y−1)からL21を取り除いた残基、又は、(Y−2)からL31を取り除いた残基と、カルボキシル基(CO2M)とはどちら側に結合していてもよく、また、(L−4)〜(L−7)において、(Y−1)からL22を取り除いた残基、又は、(Y−2)からL32を取り除いた残基と、エチレン性不飽和基(CR11=CHR12)とはどちら側に結合していてもよい。〕
【化4】

〔式(Q)中、R101、R102、R103、R104、R105及びR106は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R101、R102、R103、R104、R105及びR106の少なくとも2つが隣接位にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。〕
【請求項2】
さらに、重合性モノマーを含有する請求項1に記載の着色硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の着色硬化性組成物を支持体上に塗布後、画像露光し、現像して、パターン像を形成する工程を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法によって得られるカラーフィルタ。
【請求項5】
式(2)で表されるキノフタロン色素。
【化5】

〔式(2)中、X201は水素原子又はハロゲン原子を表し、R201は水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表し、R202及びR203は各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Mは水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムを表し、L201は下記(L−1)〜(L−4)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、L202は下記(L−4)〜(L−7)よりなる群から選ばれた2価の連結基を表し、n201は0〜2の整数を表し、n202は1又は2の整数を表す。〕
【化6】

〔(L−1)〜(L−7)中、n41、n51、n61及びn62は各々独立に、1〜3の整数を表し、R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R41、R42、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63、R64、R71、R72、R73、R74、R81、R82、R83、R84、R91、R92、R93及びR94の少なくとも2つが同じ炭素上にあるか、又は、隣接位にある場合は、互いに結合して5〜6員環を形成していてもよく、該環がさらに置換基を有していてもよい。(L−1)〜(L−4)において、式(2)からL201−CO2Mを取り除いた残基と、カルボキシル基(CO2M)とはどちら側に結合していてもよく、また(L−4)〜(L−7)において、式(2)からL202−CR202=CHR203を取り除いた残基と、エチレン性不飽和基(CR11=CHR12)とはどちら側に結合していてもよい。〕

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−250291(P2010−250291A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50687(P2010−50687)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】