短波長X線回折測定装置及びその方法
【課題】原子番号の低い結晶材料或いはワークに用いられる短波長X線回折測定装置及びその方法を提供する。
【解決手段】その装置はX線管1と、入射絞り2と、テーブル4と、サンプルまたはワーク3の位置制限部分に用いられる位置制限受光スリット5、測角器7と、検出器6と、エネルギー分析器9とを備えており、X線管1と検出器6はサンプルまたはワーク3が置かれるテーブル4の両側に位置し、検出器6は回折透過X線の受光に用いられる。本発明の短波長X線回折透過方法によれば、サンプルまたはワーク3を破壊せずに、より厚い結晶材料サンプルまたはワーク3の異なる深さと異なる箇所のX線回折スペクトルを測定し、コンピュータ10でデータ処理を行い、サンプル又はワーク3における各点の位相、残留応力等のパラメーター及びその分布を得ることができる。本発明は、操作が簡単で、測定時間が短いという利点を有し、正確で、かつ信頼できるX線回折スペクトルを得ることができる。
【解決手段】その装置はX線管1と、入射絞り2と、テーブル4と、サンプルまたはワーク3の位置制限部分に用いられる位置制限受光スリット5、測角器7と、検出器6と、エネルギー分析器9とを備えており、X線管1と検出器6はサンプルまたはワーク3が置かれるテーブル4の両側に位置し、検出器6は回折透過X線の受光に用いられる。本発明の短波長X線回折透過方法によれば、サンプルまたはワーク3を破壊せずに、より厚い結晶材料サンプルまたはワーク3の異なる深さと異なる箇所のX線回折スペクトルを測定し、コンピュータ10でデータ処理を行い、サンプル又はワーク3における各点の位相、残留応力等のパラメーター及びその分布を得ることができる。本発明は、操作が簡単で、測定時間が短いという利点を有し、正確で、かつ信頼できるX線回折スペクトルを得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線回折の測定、特に原子番号の低い結晶材料サンプル或いはワークに用いられる短波長X線回折スキャン測定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今、多くの分野において、物質のX線回折分析は広く利用されている。例えば、結晶体物質の構造(例えば、位相分析)や結晶体物質の構造変化(例えば、残留応力の測定)等に利用することができる。従来技術では、X線回折分析を行う際に、Cu、Cr、Fe、Mo材料をアノードターゲットのX線管としていたが、そのようなX線管から放射された特性X線の波長は長い。マグネシウム、アルミニウム、シリコン等の材料における透過深さは10−4mより小さいため、そのような材料のサンプルやワークの表面に対してしかX線回折分析できない。
【0003】
波長の長いX線によってその透過能力の低下を起こす欠点に対して、特許CN1049496Cは、「X線残留応力測定装置及びその方法」を開示した。その開示された装置は、従来のX線残留応力測定装置を基に、そのX線管を短波長X線管に変え、管の電圧を高くし、受光スリットを位置制限受光スリットとしたものである。当該特許のX線回折測定方法は、従来装置の測定方法を基に、短波長特性X線を採用し、被測定点を測角器の円の中心に位置させ、位置制限受光スリットによって被測定点からの回折線だけを放射検出器に入らせ、ワークの他の部分からの回折線と散乱線を遮蔽することにより、X線の透過深さの範囲内の被測定ワーク内部の任意点の残留応力を測定することができるものである。また、ワークを平行移動することにより、X線応力分析器はワークの他の点の残留応力を測定することができるため、ベリリウム合金等の材料のワークにおける残留応力の三次元分布の測定ができる。また、当該方法に採用されるX線の波長は短く、かつ被照射ワークに使われる材料の原子番号は低くなるほど、入射X線の透過深さは深くなるため、より厚いワークの異なる深さと箇所からの回折線を探知することができる。
【0004】
しかし、X線応力分析器は、X線回折背面反射法を利用して回折スペクトルを収集しているため、そのX線は、ワークの中での伝播経路が長くなる。また、ワークからの出射光の強さは、そのワークの中での伝播経路が長くなるにつれ、弱くなる。つまり、図1に示すように、入射光の強さをI0とするX線は、線吸収係数がαで、その厚さがtであるワークを通過した後、出射光の強さをIとすると、I=I0×e−αtとなる。前記式から分かるように、X線の出射光の強度はワーク自身の属性と入射光の強さによって決まる以外に、光のワークの中で伝播する距離に伴い変化し、伝播距離が長くなると(つまり、入射X線と回折線とのワークにおける伝播距離の合計が長くなると)、光強さの損失が大きくなり、出射光の強度(回折光の強度)が小さくなる。回折光の強度低下によって、測定SN比が低下してしまったため、X線回折の測定に悪影響をもたらした。従って、前記特許技術は短波長X線の強い透過能力を十分に利用できないため、被測定ワークの測定可能深さを浅くしてしまった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、主に、アルミニウム、マグネシウムまたはシリコン等の低い原子番号をもつ結晶体材料のサンプルやワークに用いられ、ワークの測定可能の深さと厚さを約10倍に高められる短波長X線回折分析の断層スキャン装置の提供を目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は上記装置を利用した、操作が簡単かつ測定時間の短い短波長X線回折測定方法を提供するのである。
【0007】
周知のように、X線の波長が短く、被放射ワークに使われる材料の原子番号が小さいほど、入射X線がワークを透過する厚さが大きくなる。本発明はその原理に基づいて、X線回折背面反射法を利用するのではなく、X線回折透過法を利用して入射X線と回折線とのワークにおける通過距離の合計を大幅に減少させることで、回折線の被測定ワークにおけるエネルギー損失を減少し、出射光の強さを増加させ、検出器受光信号のSN比を高め、さらに回折測定装置全体の感度を増加させる。従って、より厚いワークの異なる深さと箇所からのX線の回折線が収集できるので、ワーク内部全体に対して非破壊でX線回折分析が実現できることで、位相や応力等の三次元分布を測定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例は、短波長X線回折測定装置はX線管と、入射絞りと、テーブルと、受光スリットと、測角器と、検出器と、エネルギー分析器とを備え、前記X線管と前記検出器とはテーブルの両側に位置している。
【0009】
前記受光スリットと検出器とは測角器に固定され、かつテーブルに置かれた被測定ワークの被測定点を中心として同期的に回転し、その被測定点は測角器の回転軸に位置する。測角器は定盤に固定され、テーブルは測角器或いは定盤に固定される。X線管は測角器或いは定盤に固定される。入射絞りは測角器、定盤或いはX線管のために設置された治具に固定される。入射絞りの出口は測角器の円周上或いはその円周内に設置される。テーブルに置かれたワークはテーブルに伴ってX、Y、Z三次元方向のそれぞれにおける平行移動を、或いは測角器の回転軸の周りでのΨ度の回転を、或いはX、Y、Z、Ψの連動を行う。また、本発明の受光スリットは、ワークの被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、散乱線とワークの他の箇所からの回折線を遮蔽する役割を果たしている。
【0010】
前記X線管は、そのアノードターゲットの材質がタングステン、金、銀等の重金属材料であり、透過能力が強く、かつ波長が0.01mm〜0.07mmである短波長特性X線を出させることができる。そのX線は原子番号比較的低い(Z<20)金属、非金属材料及びセラミック材料等(アルミニウム、マグネシウム、シリコン等)に対して、センチ〜数十センチオーダーの深さを透過することができる。管の電圧は120〜350KV、管の電流は2〜10mAであり、かつ連続的に調節可能である。前記検出器は放射検出器、位置高感度検出器或いは一次元半導体検出器アレイである。前記入射絞りは入射視準絞りである。前記受光スリットは、検出器に入射する散乱X線とワークの他の部分からの回折線を遮蔽するための平行位置制限受光スリットか或いはテーパ位置制限受光スリットである。前記エネルギー分析器は、シングルチャンネルエネルギー分析器或いはマルチチャンネルエネルギー分析器であり、かつその出力信号がコンピュータに入力される。前記テーブルはコンピュータによって制御され、X、Y、Z三次元方向における平行移動を、或いは測角器の回転軸の周りでの回転を行う。
【0011】
前記X線管から測角器の円の中心までの距離と検出器から測角器の円の中心までの距離は等しいか或いは異なるかであり、かつ調節可能である。測角器の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離は200〜800mmである。本発明の前記測角器の円の中心は測角器の回転軸と放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面との交差点であり、入射するX線は放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面にあり、かつ測角器の円の中心を通る。測角器の円の中心に位置する被測定ワークの箇所は被測定箇所である。
【0012】
前記入射視準絞りは円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りである。入射視準絞りの遮断材料は、鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属で、例えば、金等である。シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合、平行位置制限受光スリットとして円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りを用い、かつ平行位置制限受光スリットは放射検出器と連動する。
【0013】
前記円形孔の入射視準絞りは、その内径が0.1〜2mmで、その長さが50〜200mmである。前記矩形孔の入射視準絞りは2個以上の絞りからなり、各絞りは互いに同方向、平行であり、かつ中心線が一致している。各絞りの遮断材料は、その厚さが4mm以上であり、そのピッチが20〜200mmであり、各絞りの内孔のサイズは(1〜4)×(0.1〜0.8)mmであり、矩形孔の入射視準絞りの遮断材料全体の総厚さは15mmより小さくならない。
【0014】
前記放射検出器は、受光スリットと対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽する。
【0015】
前記テーパ位置制限受光スリットは、そのテーパ度が位置高感度検出器で検知可能の有限角度によって決められ、外ケースが2mmより厚い鉛板で覆われ、テーパ位置制限受光スリットのテーパを均等に分けるように、3〜10枚のタングステンシート或いはモリブデンシートを内部に嵌め込み、当該スリットは、その大開口のサイズが位置高感度検出器の有効サイズと合致し、かつ位置高感度検出器と固定連結され、テーパ位置制限受光スリットのテーパ面の延長線及び内部に嵌め込まれたタングステンシート或いはモリブデンシートの延長線がすべて測角器の回転軸で交差する。テーパ位置制限受光スリットと位置高感度検出器とは連動する。位置高感度検出器で回折スペクトルを収集する場合、受光スリットとしてはテーパ位置制限受光スリットを用いる。本発明の実施例に係る位置高感度検出器は一次元検出器アレイでもよい。
【0016】
本発明の他の目的は次のように達成されている。つまり、前記装置を利用した短波長X線回折測定方法であって、採用した方法は短波長X線回折透過法であり、(1)管の電圧、管の電流、絞りとスリットシステム、及び測角器の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離等を含む放射と回折の測定パラメーターを選択する。(2)コンピュータ制御により、ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。(3)コンピュータで制御して回折スペクトルを測定する。(4)必要に応じ、コンピュータ制御によって、テーブルをX、Y、Z三次元方向に移動させるか、或いは測角器の回転軸の周りを回転させ、それによりワーク内の任意点及び任意回転角の回折スペクトルを測定することができる。(5)コンピュータによってデータ処理を行い、各測定点の位相、残留応力パラメーター及びその分布を算出する。
【0017】
放射と回折の測定パラメーターの選択は、WKα、AuKα、AgKα短波長X線放射を用いる。X線回折透過法を利用する。被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、残りの放射線を遮蔽するように、平行位置制限受光スリット或いはテーパ位置制限受光スリットを利用する。
【0018】
コンピュータ制御によって、ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。被測定点とはワークの厚さが測定可能な厚さ範囲内にあるワークの表面或いはワーク内部の任意点である。
【0019】
回折スペクトルを測定する際に、必要に応じ、コンピュータ制御によって、被測定ワークの置かれたテーブルをX、Y、Z三次元方向に0.1〜2mmのステップで移動し、かつ測角器の回転軸の周りを回転し、ワーク内の任意点及び測角器の回転軸の周りを回転する任意角度の回折スペクトルを測定できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の装置は、原子番号の低いアルミニウム、マグネシウム、シリコン、炭素、窒素、酸素等の元素からなる結晶体材料のワークを破壊せずに、より厚いワークの異なる深さと異なる箇所のX線回折スペクトルを測定することができる。本発明は、短波長X線がX線回折分析分野に適しないとの固有の考え方の束縛を克服し、短波長X線放射+X線回折透過法を利用し、測定可能なワーク厚さを従来技術であるCN1049496Cに記載の装置と方法で測定可能なワーク厚さの約10倍にした。特に、シリコン、アルミニウム、マグネシウム等の材料のワークに対する測定可能の厚さはセンチ〜数十センチオーダーの厚さに達し、ワークの異なる深さと異なる箇所のX線回折スペクトルを測定することができ、さらに位相、残留応力等のパラメーター及びその分布を得ることができる。また、本発明は、既存のX線回折器及びその方法がサンプルを破壊しなければ、サンプル表面から数十ミクロンの深さに対してしかX線回折分析できないという制限を突破した。かつ、操作が簡単で、測定時間が短く、正確で、かつ信頼できるX線回折スペクトルを測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、次のことにつき、予め言っておく。本発明において使われた技術用語、単語と請求項の意味はただその文面的と通常な意味で理解してはいけない。本発明の技術と符合する意味と概念も含む。それは、発明者として、発明を適切に記述するために、技術用語を適切に定義する必要があるからである。従って、本実施例と図面に記載されたものはただ本発明の好ましい実施の形態であり、本発明のすべての技術特性を例挙したものではない。ここに提供する実施例の代わりに、また各種の同等技術案と修正案があると認識すべきである。
【実施例1】
【0022】
図面に示すように、短波長X線回折測定装置はX線管1と、入射絞り2と、テーブル4と、受光スリット5と、測角器7と、検出器6と、エネルギー分析器9とを備え、前記X線管1と前記検出器6は前記テーブル4の両側、即ち被測定ワークの両側に位置する。
【0023】
前記受光スリット5と検出器6は測角器7に固定され、テーブル4に置かれた被測定ワーク3の被測定点を中心として同期的に回転し、その被測定点は測角器7の回転軸に位置する。測角器7は定盤13に固定される。テーブル4は測角器7或いは定盤13に固定される。X線管1は測角器7或いは定盤13に固定される。入射絞り2は測角器7、或いは定盤13、或いはX線管1のために設置した治具に固定される。入射絞り2の出口は測角器7の円周上或いは測角器7の円周内にある。テーブル4に置かれた被測定ワーク3はテーブル4に伴い、X、Y、Z三次元方向のそれぞれに平行移動するか、或いは測角器7の回転軸の周りをΨ度回転するか、或いはX、Y、Z、Ψの連動をする。
【0024】
本発明において、前記X線管1のアノードターゲットの材質はタングステン、金、銀等の重金属材料であり、管の電圧は320KV、管の電流は5mAであり、かつ連続的に調節可能であり、そしてX線管1には、透過能力が強く、かつ波長が0.01mm〜0.07mmである短波長特性X線を放射可能である。そのX線は原子番号の比較的低い(Z<20)金属材料、非金属材料及びセラミック材料等、例えば、アルミニウム、マグネシウム、シリコン等に対して、数十センチオーダーの深さを透過することができる。前記検出器6は位置高感度検出器である。前記入射絞り2は入射視準絞りである。前記受光スリット5はテーパ位置制限受光スリットであり、検出器6に入射する散乱X線とワークの他の箇所からの回折線を遮蔽し、即ち被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、残りの放射線を遮蔽する。前記エネルギー分析器9はマルチチャンネルエネルギー分析器である。前記テーブル4はコンピュータ10による制御によって、X、Y、Z三次元方向に移動し、測角器7の回転軸の周りを回転し、マルチチャンネルエネルギー分析器9の信号はコンピュータ10に入力される。
【0025】
前記X線管1から測角器7の円の中心までの距離と検出器6から測角器7の円の中心までの距離は等しいか或いは異なるかであり、かつ調節可能である。測角器7の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離は600mmである。
【0026】
前記入射視準絞りは円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りである。入射視準絞りの遮断材料は鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属である。シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合、平行位置制限受光スリットとして円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りを用いる。
【0027】
前記円形孔の入射視準絞りは、その内径サイズが0.1〜2mm、長さが50〜200mmである。前記矩形孔の入射視準絞りは2個以上の絞りからなり、各絞りは互いに同方向、平行であり、かつ中心線が一致している。各絞りの遮断材料は、その厚さが5mm、かつピッチが180mmであり、各絞りの内孔のサイズは(1〜4)×(0.1〜0.8)mmであり、矩形孔の入射視準絞りの遮断材料全体の総厚さは15mmより小さくならない。
【0028】
前記放射検出器或いは位置高感度検出器は、受光スリットと対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽する。
【0029】
前記テーパ位置制限受光スリットは、そのテーパ度が位置高感度検出器で検知可能の有限角度によって決められ、外ケースが2mmより厚い鉛板で覆われ、テーパ位置制限受光スリットのテーパを均等に分けるように、3〜10枚のタングステンシート或いはモリブデンシートを内部に嵌め込む。当該スリットは、その大開口14のサイズが位置高感度検出器の有効サイズと合致し、かつ位置高感度検出器と固定連結され、テーパ位置制限受光スリットのテーパ面の延長線及び内部に嵌め込まれたタングステンシート或いはモリブデンシートの延長線がすべて測角器の回転軸で交差し、その中心線が測角器の円の中心で交差する。テーパ位置制限受光スリットと位置高感度検出器とは連動する。位置高感度検出器で回折スペクトルを収集する場合、受光スリットとしてはテーパ位置制限受光スリットを用いる。
【0030】
前記装置を利用した短波長X線回折測定方法としては、短波長X線回折測定透過法を採用し、次のステップを含む。つまり、(1)管の電圧、管の電流、絞り、スリットシステム及び測角器の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離等を含む放射と回折の測定パラメーターを選択する。(2)コンピュータ制御により、ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。(3)コンピュータで制御して回折スペクトルを測定する。(4)必要に応じ、コンピュータ制御によって、テーブルをX、Y、Z三次元方向に移動させるか、或いは測角器の回転軸の周りを回転させる。それでワーク内の任意点及び任意回転角Ψの回折スペクトルを測定することができる。(5)コンピュータによってデータ処理を行い、各測定点の位相、残留応力パラメーター及びその分布を算出する。
【0031】
放射と回折の測定パラメーターの選択は、WKα、AuKα、AgKα短波長X線放射を利用し、X線回折透過法を利用し、或いは被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、残りの放射線を遮蔽する平行位置制限受光スリット或いはテーパ位置制限受光スリットを利用する。
【0032】
コンピュータでテーブルを制御してその上に置かれたワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。その被測定点はワークの厚さの測定可能な厚さ範囲内のワーク内部の任意点である。断層に対する各点ごとのスキャンを実現するため、コンピュータ制御によって、図9に示すようなワーク4に置かれた被測定ワーク3を、三次元空間で0.1〜2mmのステップで運動させる。被測定箇所の異なる方向の回折スペクトルを測定するため、コンピュータ制御によって、図9に示すようなテーブル4に置かれた被測定ワーク3を測角器の回転軸の周りを一定角度回転させることもできる。コンピュータは測定されたデータを処理し、出力設備によって被測定ワーク内部の各点の位相、残留応力等のパラメーターとその分布を出力する。
【実施例2】
【0033】
図9を参照して、本実施例に採用された装置と方法は、実施例1とほぼ同じであるが、異なるのは各パラメーターの選択である。本実施例では、WKα放射を採用し、管の電圧が280KV、管の電流が3mAであり、測角器の円の中心から放射検出器までの距離が220mm±1.0であり、NaIシンチレーションカウンタ6がマルチチャンネルエネルギー分析器9と接続され、入射視準絞りとして、内径2mm±0.1、長さ120mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、位置制限受光スリットとして、内径0.5mm±0.1、長さ120mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、NaIシンチレーションカウンタ6が厚さ8mm±0.1の鉛板で覆われて遮蔽する。光路を調整した後、厚さ25mm±0.5のマグネシウム合金鋳物3をテーブル4に置き、マグネシウム合金鋳物3の中心が測角器の円の中心に位置するようにテーブル4を調節する。図9に示した点線はマグネシウム合金鋳物3の実際の位置であり、そのとき、測角器の円の中心はマグネシウム合金鋳物3の内部にあり、かつ表面から12.5mm±0.1を離れている。スキャン範囲2θが2〜10°、スキャンのステップが0.05°、ステップごとの測定時間が10sである。このように測定したX線回折スペクトルは図11に示されている。
【実施例3】
【0034】
本実施例に採用された装置と方法は、実施例1とほぼ同じであるが、異なるのは各パラメーターの選択である。本実施例では、WKα放射を採用し、管の電圧が320KV、管の電流が6mAであり、測角器の円の中心から放射検出器までの距離が500mm±1.0であり、NaIシンチレーションカウンタ6がマルチチャンネルエネルギー分析器9と接続され、入射視準絞りとして、内径1mm±0.1、長さ150mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、位置制限受光スリットとして、内径0.8mm±0.1、長さ120mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、NaIシンチレーションカウンタ6は厚さ10mm±0.1の鉛板で覆われて遮蔽する。光路を調整した後、ワーク3をテーブル4に置き、ワーク3の中心が測角器の円の中心に位置するようにテーブル4を調節する。そのとき、測角器の円の中心はワーク3の内部にある。スキャン範囲2θが2〜10°、スキャンのステップが0.05°、ステップごとの測定時間が10sである。
【0035】
以上につき、本発明のいくつかの具体的実施例であって、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。当業者が考えられる変化のすべては本発明の保護範囲に属すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】X線が物質を透過する模式図である。
【図2】本発明の装置のブロック図である
【図3】本発明に採用された円形孔の入射視準絞りの構造の断面図である。
【図4】図3のA方向の矢視図である。
【図5】本発明に採用された矩形孔の入射視準絞りの構造の断面図である。
【図6】図5のA方向の矢視図である。
【図7】本発明に採用されたテーパ位置制限受光スリットの構造の断面図であって、上端14が大開口、下端15が小開口である。
【図8】図7の上面図である。
【図9】本発明に採用された実施例においてワークを移動測定する模式図である。
【図10】本発明に採用された測定及び計算フローチャートである。
【図11】厚さ25mmのマグネシウム合金ワーク内部の中心箇所の回折スペクトルである。
【符号の説明】
【0037】
1…X線管、2…入射視準絞り、3…ワーク、4…テーブル、5…受光スリット、6…検出器、7…測角器、8…X線発生器の電源、9…エネルギー分析器、10…コンピュータ、11…データ出力設備、12…電圧安定化電源、13…測定装置の固定定盤、14…テーパ位置制限受光スリットの上端大開口、15…テーパ位置制限受光スリットの下端小開口。
【技術分野】
【0001】
本発明はX線回折の測定、特に原子番号の低い結晶材料サンプル或いはワークに用いられる短波長X線回折スキャン測定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今、多くの分野において、物質のX線回折分析は広く利用されている。例えば、結晶体物質の構造(例えば、位相分析)や結晶体物質の構造変化(例えば、残留応力の測定)等に利用することができる。従来技術では、X線回折分析を行う際に、Cu、Cr、Fe、Mo材料をアノードターゲットのX線管としていたが、そのようなX線管から放射された特性X線の波長は長い。マグネシウム、アルミニウム、シリコン等の材料における透過深さは10−4mより小さいため、そのような材料のサンプルやワークの表面に対してしかX線回折分析できない。
【0003】
波長の長いX線によってその透過能力の低下を起こす欠点に対して、特許CN1049496Cは、「X線残留応力測定装置及びその方法」を開示した。その開示された装置は、従来のX線残留応力測定装置を基に、そのX線管を短波長X線管に変え、管の電圧を高くし、受光スリットを位置制限受光スリットとしたものである。当該特許のX線回折測定方法は、従来装置の測定方法を基に、短波長特性X線を採用し、被測定点を測角器の円の中心に位置させ、位置制限受光スリットによって被測定点からの回折線だけを放射検出器に入らせ、ワークの他の部分からの回折線と散乱線を遮蔽することにより、X線の透過深さの範囲内の被測定ワーク内部の任意点の残留応力を測定することができるものである。また、ワークを平行移動することにより、X線応力分析器はワークの他の点の残留応力を測定することができるため、ベリリウム合金等の材料のワークにおける残留応力の三次元分布の測定ができる。また、当該方法に採用されるX線の波長は短く、かつ被照射ワークに使われる材料の原子番号は低くなるほど、入射X線の透過深さは深くなるため、より厚いワークの異なる深さと箇所からの回折線を探知することができる。
【0004】
しかし、X線応力分析器は、X線回折背面反射法を利用して回折スペクトルを収集しているため、そのX線は、ワークの中での伝播経路が長くなる。また、ワークからの出射光の強さは、そのワークの中での伝播経路が長くなるにつれ、弱くなる。つまり、図1に示すように、入射光の強さをI0とするX線は、線吸収係数がαで、その厚さがtであるワークを通過した後、出射光の強さをIとすると、I=I0×e−αtとなる。前記式から分かるように、X線の出射光の強度はワーク自身の属性と入射光の強さによって決まる以外に、光のワークの中で伝播する距離に伴い変化し、伝播距離が長くなると(つまり、入射X線と回折線とのワークにおける伝播距離の合計が長くなると)、光強さの損失が大きくなり、出射光の強度(回折光の強度)が小さくなる。回折光の強度低下によって、測定SN比が低下してしまったため、X線回折の測定に悪影響をもたらした。従って、前記特許技術は短波長X線の強い透過能力を十分に利用できないため、被測定ワークの測定可能深さを浅くしてしまった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、主に、アルミニウム、マグネシウムまたはシリコン等の低い原子番号をもつ結晶体材料のサンプルやワークに用いられ、ワークの測定可能の深さと厚さを約10倍に高められる短波長X線回折分析の断層スキャン装置の提供を目的とする。
【0006】
また、本発明の他の目的は上記装置を利用した、操作が簡単かつ測定時間の短い短波長X線回折測定方法を提供するのである。
【0007】
周知のように、X線の波長が短く、被放射ワークに使われる材料の原子番号が小さいほど、入射X線がワークを透過する厚さが大きくなる。本発明はその原理に基づいて、X線回折背面反射法を利用するのではなく、X線回折透過法を利用して入射X線と回折線とのワークにおける通過距離の合計を大幅に減少させることで、回折線の被測定ワークにおけるエネルギー損失を減少し、出射光の強さを増加させ、検出器受光信号のSN比を高め、さらに回折測定装置全体の感度を増加させる。従って、より厚いワークの異なる深さと箇所からのX線の回折線が収集できるので、ワーク内部全体に対して非破壊でX線回折分析が実現できることで、位相や応力等の三次元分布を測定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例は、短波長X線回折測定装置はX線管と、入射絞りと、テーブルと、受光スリットと、測角器と、検出器と、エネルギー分析器とを備え、前記X線管と前記検出器とはテーブルの両側に位置している。
【0009】
前記受光スリットと検出器とは測角器に固定され、かつテーブルに置かれた被測定ワークの被測定点を中心として同期的に回転し、その被測定点は測角器の回転軸に位置する。測角器は定盤に固定され、テーブルは測角器或いは定盤に固定される。X線管は測角器或いは定盤に固定される。入射絞りは測角器、定盤或いはX線管のために設置された治具に固定される。入射絞りの出口は測角器の円周上或いはその円周内に設置される。テーブルに置かれたワークはテーブルに伴ってX、Y、Z三次元方向のそれぞれにおける平行移動を、或いは測角器の回転軸の周りでのΨ度の回転を、或いはX、Y、Z、Ψの連動を行う。また、本発明の受光スリットは、ワークの被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、散乱線とワークの他の箇所からの回折線を遮蔽する役割を果たしている。
【0010】
前記X線管は、そのアノードターゲットの材質がタングステン、金、銀等の重金属材料であり、透過能力が強く、かつ波長が0.01mm〜0.07mmである短波長特性X線を出させることができる。そのX線は原子番号比較的低い(Z<20)金属、非金属材料及びセラミック材料等(アルミニウム、マグネシウム、シリコン等)に対して、センチ〜数十センチオーダーの深さを透過することができる。管の電圧は120〜350KV、管の電流は2〜10mAであり、かつ連続的に調節可能である。前記検出器は放射検出器、位置高感度検出器或いは一次元半導体検出器アレイである。前記入射絞りは入射視準絞りである。前記受光スリットは、検出器に入射する散乱X線とワークの他の部分からの回折線を遮蔽するための平行位置制限受光スリットか或いはテーパ位置制限受光スリットである。前記エネルギー分析器は、シングルチャンネルエネルギー分析器或いはマルチチャンネルエネルギー分析器であり、かつその出力信号がコンピュータに入力される。前記テーブルはコンピュータによって制御され、X、Y、Z三次元方向における平行移動を、或いは測角器の回転軸の周りでの回転を行う。
【0011】
前記X線管から測角器の円の中心までの距離と検出器から測角器の円の中心までの距離は等しいか或いは異なるかであり、かつ調節可能である。測角器の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離は200〜800mmである。本発明の前記測角器の円の中心は測角器の回転軸と放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面との交差点であり、入射するX線は放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面にあり、かつ測角器の円の中心を通る。測角器の円の中心に位置する被測定ワークの箇所は被測定箇所である。
【0012】
前記入射視準絞りは円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りである。入射視準絞りの遮断材料は、鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属で、例えば、金等である。シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合、平行位置制限受光スリットとして円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りを用い、かつ平行位置制限受光スリットは放射検出器と連動する。
【0013】
前記円形孔の入射視準絞りは、その内径が0.1〜2mmで、その長さが50〜200mmである。前記矩形孔の入射視準絞りは2個以上の絞りからなり、各絞りは互いに同方向、平行であり、かつ中心線が一致している。各絞りの遮断材料は、その厚さが4mm以上であり、そのピッチが20〜200mmであり、各絞りの内孔のサイズは(1〜4)×(0.1〜0.8)mmであり、矩形孔の入射視準絞りの遮断材料全体の総厚さは15mmより小さくならない。
【0014】
前記放射検出器は、受光スリットと対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽する。
【0015】
前記テーパ位置制限受光スリットは、そのテーパ度が位置高感度検出器で検知可能の有限角度によって決められ、外ケースが2mmより厚い鉛板で覆われ、テーパ位置制限受光スリットのテーパを均等に分けるように、3〜10枚のタングステンシート或いはモリブデンシートを内部に嵌め込み、当該スリットは、その大開口のサイズが位置高感度検出器の有効サイズと合致し、かつ位置高感度検出器と固定連結され、テーパ位置制限受光スリットのテーパ面の延長線及び内部に嵌め込まれたタングステンシート或いはモリブデンシートの延長線がすべて測角器の回転軸で交差する。テーパ位置制限受光スリットと位置高感度検出器とは連動する。位置高感度検出器で回折スペクトルを収集する場合、受光スリットとしてはテーパ位置制限受光スリットを用いる。本発明の実施例に係る位置高感度検出器は一次元検出器アレイでもよい。
【0016】
本発明の他の目的は次のように達成されている。つまり、前記装置を利用した短波長X線回折測定方法であって、採用した方法は短波長X線回折透過法であり、(1)管の電圧、管の電流、絞りとスリットシステム、及び測角器の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離等を含む放射と回折の測定パラメーターを選択する。(2)コンピュータ制御により、ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。(3)コンピュータで制御して回折スペクトルを測定する。(4)必要に応じ、コンピュータ制御によって、テーブルをX、Y、Z三次元方向に移動させるか、或いは測角器の回転軸の周りを回転させ、それによりワーク内の任意点及び任意回転角の回折スペクトルを測定することができる。(5)コンピュータによってデータ処理を行い、各測定点の位相、残留応力パラメーター及びその分布を算出する。
【0017】
放射と回折の測定パラメーターの選択は、WKα、AuKα、AgKα短波長X線放射を用いる。X線回折透過法を利用する。被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、残りの放射線を遮蔽するように、平行位置制限受光スリット或いはテーパ位置制限受光スリットを利用する。
【0018】
コンピュータ制御によって、ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。被測定点とはワークの厚さが測定可能な厚さ範囲内にあるワークの表面或いはワーク内部の任意点である。
【0019】
回折スペクトルを測定する際に、必要に応じ、コンピュータ制御によって、被測定ワークの置かれたテーブルをX、Y、Z三次元方向に0.1〜2mmのステップで移動し、かつ測角器の回転軸の周りを回転し、ワーク内の任意点及び測角器の回転軸の周りを回転する任意角度の回折スペクトルを測定できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の装置は、原子番号の低いアルミニウム、マグネシウム、シリコン、炭素、窒素、酸素等の元素からなる結晶体材料のワークを破壊せずに、より厚いワークの異なる深さと異なる箇所のX線回折スペクトルを測定することができる。本発明は、短波長X線がX線回折分析分野に適しないとの固有の考え方の束縛を克服し、短波長X線放射+X線回折透過法を利用し、測定可能なワーク厚さを従来技術であるCN1049496Cに記載の装置と方法で測定可能なワーク厚さの約10倍にした。特に、シリコン、アルミニウム、マグネシウム等の材料のワークに対する測定可能の厚さはセンチ〜数十センチオーダーの厚さに達し、ワークの異なる深さと異なる箇所のX線回折スペクトルを測定することができ、さらに位相、残留応力等のパラメーター及びその分布を得ることができる。また、本発明は、既存のX線回折器及びその方法がサンプルを破壊しなければ、サンプル表面から数十ミクロンの深さに対してしかX線回折分析できないという制限を突破した。かつ、操作が簡単で、測定時間が短く、正確で、かつ信頼できるX線回折スペクトルを測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、次のことにつき、予め言っておく。本発明において使われた技術用語、単語と請求項の意味はただその文面的と通常な意味で理解してはいけない。本発明の技術と符合する意味と概念も含む。それは、発明者として、発明を適切に記述するために、技術用語を適切に定義する必要があるからである。従って、本実施例と図面に記載されたものはただ本発明の好ましい実施の形態であり、本発明のすべての技術特性を例挙したものではない。ここに提供する実施例の代わりに、また各種の同等技術案と修正案があると認識すべきである。
【実施例1】
【0022】
図面に示すように、短波長X線回折測定装置はX線管1と、入射絞り2と、テーブル4と、受光スリット5と、測角器7と、検出器6と、エネルギー分析器9とを備え、前記X線管1と前記検出器6は前記テーブル4の両側、即ち被測定ワークの両側に位置する。
【0023】
前記受光スリット5と検出器6は測角器7に固定され、テーブル4に置かれた被測定ワーク3の被測定点を中心として同期的に回転し、その被測定点は測角器7の回転軸に位置する。測角器7は定盤13に固定される。テーブル4は測角器7或いは定盤13に固定される。X線管1は測角器7或いは定盤13に固定される。入射絞り2は測角器7、或いは定盤13、或いはX線管1のために設置した治具に固定される。入射絞り2の出口は測角器7の円周上或いは測角器7の円周内にある。テーブル4に置かれた被測定ワーク3はテーブル4に伴い、X、Y、Z三次元方向のそれぞれに平行移動するか、或いは測角器7の回転軸の周りをΨ度回転するか、或いはX、Y、Z、Ψの連動をする。
【0024】
本発明において、前記X線管1のアノードターゲットの材質はタングステン、金、銀等の重金属材料であり、管の電圧は320KV、管の電流は5mAであり、かつ連続的に調節可能であり、そしてX線管1には、透過能力が強く、かつ波長が0.01mm〜0.07mmである短波長特性X線を放射可能である。そのX線は原子番号の比較的低い(Z<20)金属材料、非金属材料及びセラミック材料等、例えば、アルミニウム、マグネシウム、シリコン等に対して、数十センチオーダーの深さを透過することができる。前記検出器6は位置高感度検出器である。前記入射絞り2は入射視準絞りである。前記受光スリット5はテーパ位置制限受光スリットであり、検出器6に入射する散乱X線とワークの他の箇所からの回折線を遮蔽し、即ち被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、残りの放射線を遮蔽する。前記エネルギー分析器9はマルチチャンネルエネルギー分析器である。前記テーブル4はコンピュータ10による制御によって、X、Y、Z三次元方向に移動し、測角器7の回転軸の周りを回転し、マルチチャンネルエネルギー分析器9の信号はコンピュータ10に入力される。
【0025】
前記X線管1から測角器7の円の中心までの距離と検出器6から測角器7の円の中心までの距離は等しいか或いは異なるかであり、かつ調節可能である。測角器7の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離は600mmである。
【0026】
前記入射視準絞りは円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りである。入射視準絞りの遮断材料は鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属である。シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合、平行位置制限受光スリットとして円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りを用いる。
【0027】
前記円形孔の入射視準絞りは、その内径サイズが0.1〜2mm、長さが50〜200mmである。前記矩形孔の入射視準絞りは2個以上の絞りからなり、各絞りは互いに同方向、平行であり、かつ中心線が一致している。各絞りの遮断材料は、その厚さが5mm、かつピッチが180mmであり、各絞りの内孔のサイズは(1〜4)×(0.1〜0.8)mmであり、矩形孔の入射視準絞りの遮断材料全体の総厚さは15mmより小さくならない。
【0028】
前記放射検出器或いは位置高感度検出器は、受光スリットと対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽する。
【0029】
前記テーパ位置制限受光スリットは、そのテーパ度が位置高感度検出器で検知可能の有限角度によって決められ、外ケースが2mmより厚い鉛板で覆われ、テーパ位置制限受光スリットのテーパを均等に分けるように、3〜10枚のタングステンシート或いはモリブデンシートを内部に嵌め込む。当該スリットは、その大開口14のサイズが位置高感度検出器の有効サイズと合致し、かつ位置高感度検出器と固定連結され、テーパ位置制限受光スリットのテーパ面の延長線及び内部に嵌め込まれたタングステンシート或いはモリブデンシートの延長線がすべて測角器の回転軸で交差し、その中心線が測角器の円の中心で交差する。テーパ位置制限受光スリットと位置高感度検出器とは連動する。位置高感度検出器で回折スペクトルを収集する場合、受光スリットとしてはテーパ位置制限受光スリットを用いる。
【0030】
前記装置を利用した短波長X線回折測定方法としては、短波長X線回折測定透過法を採用し、次のステップを含む。つまり、(1)管の電圧、管の電流、絞り、スリットシステム及び測角器の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離等を含む放射と回折の測定パラメーターを選択する。(2)コンピュータ制御により、ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。(3)コンピュータで制御して回折スペクトルを測定する。(4)必要に応じ、コンピュータ制御によって、テーブルをX、Y、Z三次元方向に移動させるか、或いは測角器の回転軸の周りを回転させる。それでワーク内の任意点及び任意回転角Ψの回折スペクトルを測定することができる。(5)コンピュータによってデータ処理を行い、各測定点の位相、残留応力パラメーター及びその分布を算出する。
【0031】
放射と回折の測定パラメーターの選択は、WKα、AuKα、AgKα短波長X線放射を利用し、X線回折透過法を利用し、或いは被測定点の回折線だけを検出器に入らせ、残りの放射線を遮蔽する平行位置制限受光スリット或いはテーパ位置制限受光スリットを利用する。
【0032】
コンピュータでテーブルを制御してその上に置かれたワークの被測定点を測角器の円の中心に設置する。その被測定点はワークの厚さの測定可能な厚さ範囲内のワーク内部の任意点である。断層に対する各点ごとのスキャンを実現するため、コンピュータ制御によって、図9に示すようなワーク4に置かれた被測定ワーク3を、三次元空間で0.1〜2mmのステップで運動させる。被測定箇所の異なる方向の回折スペクトルを測定するため、コンピュータ制御によって、図9に示すようなテーブル4に置かれた被測定ワーク3を測角器の回転軸の周りを一定角度回転させることもできる。コンピュータは測定されたデータを処理し、出力設備によって被測定ワーク内部の各点の位相、残留応力等のパラメーターとその分布を出力する。
【実施例2】
【0033】
図9を参照して、本実施例に採用された装置と方法は、実施例1とほぼ同じであるが、異なるのは各パラメーターの選択である。本実施例では、WKα放射を採用し、管の電圧が280KV、管の電流が3mAであり、測角器の円の中心から放射検出器までの距離が220mm±1.0であり、NaIシンチレーションカウンタ6がマルチチャンネルエネルギー分析器9と接続され、入射視準絞りとして、内径2mm±0.1、長さ120mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、位置制限受光スリットとして、内径0.5mm±0.1、長さ120mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、NaIシンチレーションカウンタ6が厚さ8mm±0.1の鉛板で覆われて遮蔽する。光路を調整した後、厚さ25mm±0.5のマグネシウム合金鋳物3をテーブル4に置き、マグネシウム合金鋳物3の中心が測角器の円の中心に位置するようにテーブル4を調節する。図9に示した点線はマグネシウム合金鋳物3の実際の位置であり、そのとき、測角器の円の中心はマグネシウム合金鋳物3の内部にあり、かつ表面から12.5mm±0.1を離れている。スキャン範囲2θが2〜10°、スキャンのステップが0.05°、ステップごとの測定時間が10sである。このように測定したX線回折スペクトルは図11に示されている。
【実施例3】
【0034】
本実施例に採用された装置と方法は、実施例1とほぼ同じであるが、異なるのは各パラメーターの選択である。本実施例では、WKα放射を採用し、管の電圧が320KV、管の電流が6mAであり、測角器の円の中心から放射検出器までの距離が500mm±1.0であり、NaIシンチレーションカウンタ6がマルチチャンネルエネルギー分析器9と接続され、入射視準絞りとして、内径1mm±0.1、長さ150mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、位置制限受光スリットとして、内径0.8mm±0.1、長さ120mm±0.5である円形孔の入射視準絞りを採用し、NaIシンチレーションカウンタ6は厚さ10mm±0.1の鉛板で覆われて遮蔽する。光路を調整した後、ワーク3をテーブル4に置き、ワーク3の中心が測角器の円の中心に位置するようにテーブル4を調節する。そのとき、測角器の円の中心はワーク3の内部にある。スキャン範囲2θが2〜10°、スキャンのステップが0.05°、ステップごとの測定時間が10sである。
【0035】
以上につき、本発明のいくつかの具体的実施例であって、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。当業者が考えられる変化のすべては本発明の保護範囲に属すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】X線が物質を透過する模式図である。
【図2】本発明の装置のブロック図である
【図3】本発明に採用された円形孔の入射視準絞りの構造の断面図である。
【図4】図3のA方向の矢視図である。
【図5】本発明に採用された矩形孔の入射視準絞りの構造の断面図である。
【図6】図5のA方向の矢視図である。
【図7】本発明に採用されたテーパ位置制限受光スリットの構造の断面図であって、上端14が大開口、下端15が小開口である。
【図8】図7の上面図である。
【図9】本発明に採用された実施例においてワークを移動測定する模式図である。
【図10】本発明に採用された測定及び計算フローチャートである。
【図11】厚さ25mmのマグネシウム合金ワーク内部の中心箇所の回折スペクトルである。
【符号の説明】
【0037】
1…X線管、2…入射視準絞り、3…ワーク、4…テーブル、5…受光スリット、6…検出器、7…測角器、8…X線発生器の電源、9…エネルギー分析器、10…コンピュータ、11…データ出力設備、12…電圧安定化電源、13…測定装置の固定定盤、14…テーパ位置制限受光スリットの上端大開口、15…テーパ位置制限受光スリットの下端小開口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管(1)と、入射絞り(2)と、テーブル(4)と、測角器(7)と、検出器(6)と、エネルギー分析器(9)とを備える短波長X線回折測定装置であって、前記X線管(1)と検出器(6)とはテーブル(4)の両側に位置し、前記検出器(6)は回折透過X線を受光することを特徴とする短波長X線回折測定装置。
【請求項2】
前記入射絞り(2)は円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りであることを特徴とする請求項1に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項3】
前記入射絞りは主に、鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属を含む遮断材料で加工されてなることを特徴とする請求項2に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項4】
前記テーブル(4)と前記検出器(6)の間に位置する受光スリット(5)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項5】
前記受光スリット(5)は、平行位置制限受光スリット或いはテーパ位置制限受光スリットであり、検出器(6)に入射する散乱X線とワークの他の箇所からの回折線を遮蔽することを特徴とする請求項4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項6】
前記受光スリット(5)は主に、鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属を含む遮断材料で加工されてなることを特徴とする請求項5に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項7】
前記テーパ位置制限受光スリットは、そのテーパ度が位置高感度検出器で検知可能の有限角度によって決められ、外ケースが2mmより厚い鉛板で覆われ、テーパ位置制限受光スリットを均等に分けるように、3〜10枚のタングステンシート或いはモリブデンシートがその内部に嵌め込まれ、当該スリットは、その大開口(14)のサイズが位置高感度検出器の有効サイズと合致し、かつ位置高感度検出器と固定連結され、テーパ位置制限受光スリットのテーパ面の延長線及び内部に嵌め込まれたタングステンシート或いはモリブデンシートの延長線がすべて測角器(7)の回転軸で交差し、その中心線が前記測角器(7)の円の中心で交差し、テーパ位置制限受光スリットと位置高感度検出器とは連動し、位置高感度検出器で回折スペクトルを収集する場合、受光スリットとしてテーパ位置制限受光スリットを用いることを特徴とする請求項5に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項8】
前記受光スリット(5)と検出器(6)は測角器(7)に固定され、テーブル(4)に置かれた被測定ワーク(3)の被測定点を中心として同期的に回転し、当該被測定点は測角器(7)の回転軸に位置し、測角器(7)は定盤(13)に固定され、テーブル(4)は測角器(7)或いは定盤(13)に固定され、X線管(1)は測角器(7)、或いは定盤(13)に固定され、入射絞り(2)は測角器(7)、定盤(13)、及びX線管(1)のために設置された治具のいずれかに固定され、入射絞り(2)の出口は測角器(7)の円周上或いは測角器(7)の円周内に設置され、テーブル(4)に置かれた被測定ワーク(3)は、テーブル(4)に伴ってX、Y、Z三次元方向のそれぞれにおける平行移動、測角器(7)の回転軸の周りでのΨ角度の回転、及びX、Y、Z、Ψの連動のいずれかを行うことを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項9】
前記検出器(6)は、放射検出器、位置高感度検出器或いは一次元半導体検出器アレイであることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項10】
前記検出器(6)は、その受光スリット(5)と対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽することを特徴とする請求項9に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項11】
前記エネルギー分析器(9)はシングルチャンネルエネルギー分析器或いはマルチチャンネルエネルギー分析器であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項12】
前記X線管(1)は、そのアノードターゲットの材質がタングステン、金、銀の重金属であり、その電圧が120〜350KV、その電流が2〜10mAであると同時に、連続的に調整可能であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項13】
前記テーブル(4)は、X、Y、Z三次元方向における平行移動或いは測角器(7)の回転軸の周りでの回転を行うようにコンピュータ(10)で制御されており、前記エネルギー分析器(9)はコンピュータ(10)に信号を出力することを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項14】
前記X線管(1)から測角器(7)の円の中心までの距離と検出器(6)から測角器(7)の円の中心までの距離は等しいか或いは異なるかであり、かつ調節可能であり、測角器(7)の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離は200〜800mmであり、前記測角器の円の中心は測角器の回転軸と放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面との交差点であり、入射するX線は、放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面にあって、かつ測角器の円の中心を通り、測角器の円の中心に位置する被測定ワークの箇所は被測定箇所であり、シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合、平行位置制限受光スリットとして円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りを用いることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項15】
前記円形孔の入射視準絞りは、その内径が0.1〜2mm、長さが50〜200mmであり、前記矩形孔の入射視準絞りは2個以上の絞りからなり、各絞りは互いに同方向、平行であり、かつ中心線が一致し、各絞りの遮断材料は、その厚さが4mm以上、かつピッチが20〜200mmであり、各絞りの内孔のサイズは(1〜4)×(0.1〜0.8)mmであり、矩形孔の入射視準絞りの遮断材料全体の総厚さは15mmより小さくならないことを特徴とする請求項2又は14に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項16】
1)検出器(6)が、X線管(1)からテーブル(4)に置かれたワークの被測定箇所まで放射することによって出された回折透過線を受光するように、検出器(6)とX線管(1)をそれぞれテーブル(4)の両側に設置するステップと、
2)管の電圧、管の電流、入射絞り、受光スリットシステム及び測角器の円の中心から検出器までの距離を含む放射と回折の測定パラメーターを選択するステップと、
3)ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置するステップと、
4)回折スペクトルを測定するステップと、
5)コンピュータでデータ処理を行い、各点の位相、残留応力のパラメーターとその分布を算出するステップとを含むことを特徴とする短波長X線回折測定方法。
【請求項17】
放射と回折の測定パラメーターの選択は、WKα、AuKα、AgKα短波長X線放射を用いることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項18】
前記受光スリットは、被測定点の回折線しか検出器に入らせず、その他の射線を遮断し、シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合に用いられた平行位置制限受光スリット、或いは位置高感度検出器を使って回折スペクトルを収集する場合に用いられたテーパ位置制限受光スリットであることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項19】
前記入射絞りは入射視準絞りであり、円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りであることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項20】
前記検出器は、その受光スリット(5)と対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽することを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項21】
コンピュータ制御によって、測定可能な厚さ範囲内にあるワークの表面或いは内部の任意点である被測定点を測角器の円の中心に設置することを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項22】
回折スペクトルを測定する際に、ワーク内部の任意点及びその任意の測角器(7)の回転軸の周りでの任意回転角度における回折スペクトルを得るため、必要に応じて、コンピュータ制御によって、被測定ワーク(3)をテーブル(4)と一緒にX、Y、Z三次元方向に0.1〜2mmのステップで移動させ、及び/又は測角器の回転軸の周りを回転させることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項1】
X線管(1)と、入射絞り(2)と、テーブル(4)と、測角器(7)と、検出器(6)と、エネルギー分析器(9)とを備える短波長X線回折測定装置であって、前記X線管(1)と検出器(6)とはテーブル(4)の両側に位置し、前記検出器(6)は回折透過X線を受光することを特徴とする短波長X線回折測定装置。
【請求項2】
前記入射絞り(2)は円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りであることを特徴とする請求項1に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項3】
前記入射絞りは主に、鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属を含む遮断材料で加工されてなることを特徴とする請求項2に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項4】
前記テーブル(4)と前記検出器(6)の間に位置する受光スリット(5)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項5】
前記受光スリット(5)は、平行位置制限受光スリット或いはテーパ位置制限受光スリットであり、検出器(6)に入射する散乱X線とワークの他の箇所からの回折線を遮蔽することを特徴とする請求項4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項6】
前記受光スリット(5)は主に、鉛或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属を含む遮断材料で加工されてなることを特徴とする請求項5に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項7】
前記テーパ位置制限受光スリットは、そのテーパ度が位置高感度検出器で検知可能の有限角度によって決められ、外ケースが2mmより厚い鉛板で覆われ、テーパ位置制限受光スリットを均等に分けるように、3〜10枚のタングステンシート或いはモリブデンシートがその内部に嵌め込まれ、当該スリットは、その大開口(14)のサイズが位置高感度検出器の有効サイズと合致し、かつ位置高感度検出器と固定連結され、テーパ位置制限受光スリットのテーパ面の延長線及び内部に嵌め込まれたタングステンシート或いはモリブデンシートの延長線がすべて測角器(7)の回転軸で交差し、その中心線が前記測角器(7)の円の中心で交差し、テーパ位置制限受光スリットと位置高感度検出器とは連動し、位置高感度検出器で回折スペクトルを収集する場合、受光スリットとしてテーパ位置制限受光スリットを用いることを特徴とする請求項5に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項8】
前記受光スリット(5)と検出器(6)は測角器(7)に固定され、テーブル(4)に置かれた被測定ワーク(3)の被測定点を中心として同期的に回転し、当該被測定点は測角器(7)の回転軸に位置し、測角器(7)は定盤(13)に固定され、テーブル(4)は測角器(7)或いは定盤(13)に固定され、X線管(1)は測角器(7)、或いは定盤(13)に固定され、入射絞り(2)は測角器(7)、定盤(13)、及びX線管(1)のために設置された治具のいずれかに固定され、入射絞り(2)の出口は測角器(7)の円周上或いは測角器(7)の円周内に設置され、テーブル(4)に置かれた被測定ワーク(3)は、テーブル(4)に伴ってX、Y、Z三次元方向のそれぞれにおける平行移動、測角器(7)の回転軸の周りでのΨ角度の回転、及びX、Y、Z、Ψの連動のいずれかを行うことを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項9】
前記検出器(6)は、放射検出器、位置高感度検出器或いは一次元半導体検出器アレイであることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項10】
前記検出器(6)は、その受光スリット(5)と対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽することを特徴とする請求項9に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項11】
前記エネルギー分析器(9)はシングルチャンネルエネルギー分析器或いはマルチチャンネルエネルギー分析器であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項12】
前記X線管(1)は、そのアノードターゲットの材質がタングステン、金、銀の重金属であり、その電圧が120〜350KV、その電流が2〜10mAであると同時に、連続的に調整可能であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項13】
前記テーブル(4)は、X、Y、Z三次元方向における平行移動或いは測角器(7)の回転軸の周りでの回転を行うようにコンピュータ(10)で制御されており、前記エネルギー分析器(9)はコンピュータ(10)に信号を出力することを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項14】
前記X線管(1)から測角器(7)の円の中心までの距離と検出器(6)から測角器(7)の円の中心までの距離は等しいか或いは異なるかであり、かつ調節可能であり、測角器(7)の円の中心から放射検出器或いは位置高感度検出器までの距離は200〜800mmであり、前記測角器の円の中心は測角器の回転軸と放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面との交差点であり、入射するX線は、放射検出器或いは位置高感度検出器の回転平面にあって、かつ測角器の円の中心を通り、測角器の円の中心に位置する被測定ワークの箇所は被測定箇所であり、シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合、平行位置制限受光スリットとして円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りを用いることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項15】
前記円形孔の入射視準絞りは、その内径が0.1〜2mm、長さが50〜200mmであり、前記矩形孔の入射視準絞りは2個以上の絞りからなり、各絞りは互いに同方向、平行であり、かつ中心線が一致し、各絞りの遮断材料は、その厚さが4mm以上、かつピッチが20〜200mmであり、各絞りの内孔のサイズは(1〜4)×(0.1〜0.8)mmであり、矩形孔の入射視準絞りの遮断材料全体の総厚さは15mmより小さくならないことを特徴とする請求項2又は14に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項16】
1)検出器(6)が、X線管(1)からテーブル(4)に置かれたワークの被測定箇所まで放射することによって出された回折透過線を受光するように、検出器(6)とX線管(1)をそれぞれテーブル(4)の両側に設置するステップと、
2)管の電圧、管の電流、入射絞り、受光スリットシステム及び測角器の円の中心から検出器までの距離を含む放射と回折の測定パラメーターを選択するステップと、
3)ワークの被測定点を測角器の円の中心に設置するステップと、
4)回折スペクトルを測定するステップと、
5)コンピュータでデータ処理を行い、各点の位相、残留応力のパラメーターとその分布を算出するステップとを含むことを特徴とする短波長X線回折測定方法。
【請求項17】
放射と回折の測定パラメーターの選択は、WKα、AuKα、AgKα短波長X線放射を用いることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項18】
前記受光スリットは、被測定点の回折線しか検出器に入らせず、その他の射線を遮断し、シンチレーションカウンタ等の一点放射検出器を使って回折スペクトルをスキャンして収集する場合に用いられた平行位置制限受光スリット、或いは位置高感度検出器を使って回折スペクトルを収集する場合に用いられたテーパ位置制限受光スリットであることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項19】
前記入射絞りは入射視準絞りであり、円形孔或いは矩形孔の入射視準絞りであることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定装置。
【請求項20】
前記検出器は、その受光スリット(5)と対向する窓口及びワイヤーを通す小孔を除くすべての部分が、2mmより厚い鉛板或いは鉛よりX線の吸収力の強い重金属板で密封されてX線を遮蔽することを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項21】
コンピュータ制御によって、測定可能な厚さ範囲内にあるワークの表面或いは内部の任意点である被測定点を測角器の円の中心に設置することを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【請求項22】
回折スペクトルを測定する際に、ワーク内部の任意点及びその任意の測角器(7)の回転軸の周りでの任意回転角度における回折スペクトルを得るため、必要に応じて、コンピュータ制御によって、被測定ワーク(3)をテーブル(4)と一緒にX、Y、Z三次元方向に0.1〜2mmのステップで移動させ、及び/又は測角器の回転軸の周りを回転させることを特徴とする請求項16に記載の短波長X線回折測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−506127(P2008−506127A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520648(P2007−520648)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000950
【国際公開番号】WO2006/005246
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507012641)サウスウエスト テクノロジー アンド エンジニアリングインスティテュート オブ チャイナ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000950
【国際公開番号】WO2006/005246
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507012641)サウスウエスト テクノロジー アンド エンジニアリングインスティテュート オブ チャイナ (1)
【Fターム(参考)】
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