説明

研削装置および両面研磨装置

【課題】ウェーハ等のワークの両面の表面形状プロファイルを個々に緻密に制御できる研削装置および該研削装置を備える研磨装置を提供する。
【解決手段】本発明の研削装置は、研磨布を貼り付けた上定盤および下定盤の回転によりワークの表裏面を研磨する両面研磨装置における、研磨布をドレッシングするための研削装置であって、離間させた上下定盤間に挿通され、研磨布の研磨面に対して水平方向に走査かつ垂直方向に昇降可能な移動アームと、移動アームの先端部に研磨布面に対して水平方向に回動可能に取り付けられ、研磨布の表面をドレッシングする研磨布より小径の研削プレートと、移動アームの先端部に取り付けられ、移動アームの走査方向に前記研磨布の表面形状プロファイルを測定する測定部と、測定部の測定結果に基づきドレッシング量を制御する研削制御部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表裏面を研磨する両面研磨装置に対して、該ワークの研磨を担う研磨布にドレッシングを行う研削装置および両面研磨装置に関するものである。特に、両面研磨装置の回転定盤に貼り付けられた研磨布の表面形状プロファイルを個々に緻密に制御することができる研削装置および両面研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のワークの典型例として、表面に鏡面処理が要求される、半導体デバイスの基板となるシリコンウェーハがある。シリコンウェーハは、シリコン単結晶のインゴットから切り出された後にラッピング加工が施され、更にポリッシング加工と称される研磨処理が施されて鏡面状態に仕上げられる。この鏡面仕上げは、従前、デバイス形成面のみに実施されていたが、300mmを超える大口径のウェーハにおいては、デバイスが形成されない裏面についても鏡面状態に仕上げるのが通例である。
【0003】
そのため、ウェーハの両面を研磨する装置において、ウェーハを保持するキャリアを、フェルトなどの研磨布を備える上下一対の回転定盤間に挟み、微粒子シリカなどの砥粒入りアルカリ溶液を定盤間に供給しながら該上下の回転定盤を回転させることにより、ウェーハの両面が鏡面状態になるようにウェーハの表面を研磨することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、研磨回数を重ねると、研磨剤とウェーハから研磨されて離脱した粒子とのスラリー状の生成物が研磨布に染み込んで研磨布が目詰まりし、研磨布の研磨能力が低下するため、研磨布の表面にドレッシング処理を施すのが一般的である。
例えば、特許文献2には、ダイヤモンドやセラミックのペレットを塗布した研削プレートを研磨布に押し当てて回転させて研磨布の表面をドレッシングすることにより、研磨布の表面に目詰まりした生成物を除去した後に、残りの生成物を研磨布の研磨面にノズルから高圧の純水を研磨作業中に研磨布に向けて吹き付け、その衝撃で研磨布の深層に滞留した生成物をたたき出して除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−169365号公報
【特許文献2】特開平07−09342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、ウェーハの表面形状プロファイルの緻密な制御が要求されている。即ち、ウェーハの表面形状に要求されるプロファイルは、用途によって異なり、ウェーハ表面全体に亘って平坦な表面が要求される場合ばかりではなく、エピタキシャルウェーハの基板のように、中心部にて下に凸形状を有する表面形状プロファイルが要求される場合もある。こうした様々な表面形状プロファイルの要求に応えるためには、ウェーハの表面形状プロファイルに大きな影響を与える研磨布の表面形状プロファイルを緻密に制御することが必要となる。
また、両面研磨装置においては、装置特性等に起因して、ウェーハの表面形状プロファイルは、主面と裏面とでは異なる場合が多く、要求される表面形状プロファイルも異なるのが一般的である。従って、ウェーハの主面と裏面のそれぞれの表面形状プロファイルに合わせて、上下一対の回転定盤のそれぞれに貼り付けられた各研磨布の表面形状プロファイルを緻密に制御できることも必要である。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、回転定盤と同径または回転定盤よりも大径の研削プレートを用いて研磨布をドレッシングするため、研磨布の表面形状プロファイルを緻密に制御することができない問題がある。また、主面と裏面の個々の表面形状プロファイルに合わせて、表面形状プロファイルを個別に制御することも不可能である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、両面研磨装置の上下回転定盤にそれぞれ貼り付けられた研磨布の表面形状プロファイルを、個々に緻密に制御することができる研削装置および両面研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討した結果、両面研磨装置の上下回転定盤間に挿通する移動アームに、研磨布の表面形状プロファイルを測定するための測定部と、研磨布の表面をドレッシングする回転定盤よりも小径の研削プレートとを設けた研削装置を用いることによって、得られた表面形状プロファイルと所望のプロファイルとの差が許容範囲を超える場合には研磨布の表面に対してドレッシングすることにより、研磨布の表面形状プロファイルを所望のプロファイルに維持することが可能であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明の研削装置は、研磨布を貼り付けた上定盤および下定盤の回転によりワークの表裏面を研磨する両面研磨装置における、前記研磨布をドレッシングするための研削装置であって、離間させた前記上下定盤間に挿通され、前記研磨布の研磨面に対して水平方向に走査かつ垂直方向に昇降可能な移動アームと、前記移動アームの先端部に研磨布面に対して水平方向に回動可能に取り付けられ、前記研磨布の表面をドレッシングする前記研磨布より小径の研削プレートと、前記移動アームの先端部に取り付けられ、前記移動アームの走査方向に前記研磨布の表面形状プロファイルを測定する測定部と、前記測定部の測定結果に基づきドレッシング量を制御する研削制御部とを備えることを特徴とするものである。
本発明においては、「目標プロファイル」とは、所望とするワークの表面形状プロファイルを得るための研磨布の表面形状プロファイルを意味し、研磨布の表面の形状とともに、研磨布の表面を研削する際の研磨布上の各領域におけるドレッシング量を規定するものである。
【0011】
また、本発明の研削装置において、前記移動アームは上下に反転可能であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の研磨装置は、研磨に供するワークWを保持するキャリアと、該キャリアを挟みワークの表裏面を回転して研磨する、対向する上定盤および下定盤とを備え、該上下定盤の対向面にワークを研磨するための研磨布をそれぞれ有する両面研磨装置であって、上記の研削装置を付帯して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、両面研磨装置の上下定盤間に挿通する移動アームに、測定部および研削プレートを設け、研磨布の表面形状プロファイルの測定と、これに基づくドレッシングを容易に行うことができるため、研磨布の表面形状プロファイルを常に目標プロファイルに維持できる。従って、両面研磨装置の上下定盤の対向面に貼り付けられた研磨布の表面形状プロファイル、ひいてはウェーハ等のワークの両面の表面形状プロファイルを個々に緻密に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による研削装置および両面研磨装置の(a)側面図、および(b)上面図である。
【図2】本発明による研削装置における測定部、研削プレートおよび洗浄部を示す図である。
【図3】研磨布の表面形状プロファイルを測定する方法を説明する図である。
【図4】上定盤と下定盤の目標プロファイルが同一の場合の目標プロファイルと、ドレッシング後の研磨布の表面形状プロファイルを示す図である。
【図5】上定盤と下定盤の目標プロファイルが異なる場合の目標プロファイルと、研削後の研磨布の表面形状プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
まず、一般的な両面研磨装置1について、図1を参照して説明する。この両面研磨装置1は、研磨に供するワークWを保持するホール2を有するキャリア3と、該キャリア3を挟みワークWの表裏面を研磨する、対向する一対の回転定盤(上定盤4および下定盤5)と、キャリア3を昇降させる昇降手段13とを備える。上定盤4および下定盤5の対向面には、研磨布6がそれぞれ貼り付けられている。
【0016】
上定盤4は回転軸に連結されており、該回転軸は、上定盤4にワークWの研磨面に正対する動きをさせる、即ち、該上定盤4をワークWに常に押し当て面直なる力が働くようにフローティングさせるためのフローティング機構8を備える。
【0017】
キャリア3は、該キャリア3の外周に設けられた歯と噛合うように配置された、複数の歯付のギア7により、上定盤4と下定盤5との間を円運動するように構成されている。また、キャリア3のホール2は、上定盤4と下定盤5との間に配置される。キャリア3の素材として、ステンレス鋼、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド等の樹脂にガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の強化繊維を複合したFRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)等を挙げることができる。
【0018】
研磨布6としては、発泡ウレタンや不織布を使用することができる。
また、研磨スラリーとして、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液にコロイダルシリカ等の研磨剤を添加したスラリー等を用いることができる。
【0019】
尚、ギア7を介してキャリア3が昇降し、ギア7が昇降手段13を兼ねているが、ギア7が昇降手段13を兼ねる構成とはせずに、キャリア3を昇降可能とするギア7とは別の昇降手段13を備える構成を採用することも可能である。
【0020】
このような両面研磨装置1において、上定盤4と下定盤5との間に挟まれたワークWは、上定盤4および下定盤5の回転とともに、キャリア3が円運動することにより、研磨される。
【0021】
次いで、本発明による研削装置9を、図1を参照して説明する。この研削装置9は、図1および2に示すように、離間させた上定盤4と下定盤5との間に挿通され、研磨布6の研磨面に対して水平方向に走査かつ垂直方向に昇降可能な移動アーム12と、移動アーム12の先端部10に取り付けられ、移動アーム12の走査方向に研磨布6の表面形状プロファイルを測定する測定部11aと、移動アーム12の先端部10に研磨布面に対して水平方向に回動可能に取り付けられ、研磨布6の表面をドレッシングする研磨布6より小径の研削プレート11bと、移動アーム12の先端部10に取り付けられ、研磨布6の表面を洗浄する洗浄部11cと、測定部11aの測定結果に基づきドレッシング量を制御する研削制御部11dとを備える。
ここで、図1(b)に示すように、移動アーム12を矢印のように旋回させることにより、離間した上定盤4と下定盤5との間に挿通し、測定部11a、研削プレート11bおよび洗浄部11cを研磨布6上に配置することが可能となっている。
また、移動アーム12は、上定盤4および下定盤5の双方に貼り付けられた研磨布6の表面をドレッシングできるように、上下に反転可能に構成されている。
【0022】
測定部11aは、上定盤4および下定盤5に貼り付けられた研磨布6の表面形状プロファイルを測定し、表面の変位情報(研磨布6の表面に垂直な方向の変位情報)を取得する。この測定部11aとしては、研磨布6の表面形状プロファイルを十分な分解能で測定可能であれば、構成およびその型式は特に問わない。例えば、研磨布6の表面にプローブを接触させて走査することにより表面形状プロファイルを得る接触式のプローブ測定器や、研磨布6の表面に光を照射し、反射光の強度や干渉を利用した非接触方式の光学測定器等を用いることができる。
例えば接触式のプローブ測定器を用いる場合には、測定部11aの内部に測定プローブを収納し、測定時のみに、空気圧等により測定プローブを突出させるように構成することができる。
【0023】
研削プレート11bは、研磨布面に対して水平方向に回動可能な円盤状のプレートで構成されており、この研削プレート11bの表面には、例えばダイヤモンドやセラミックス等のペレットが塗りつけられている。このペレットの粒度は、#80〜#500が好ましく、特に#100〜#300のものが好ましく。これは、粒度が大きすぎると、研削レートが高くなりすぎてしまい、緻密な表面形状プロファイルの制御が困難になり、また、粒度が小さすぎると、生産性の低下を招くためである。
【0024】
研削プレート11bの径は、研磨布6よりも小さくし、上定盤4および下定盤5のサイズにもよるが、例えば直径50mm〜300mmのものを使用することが好ましい。これは、上定盤4および下定盤5のサイズが大きすぎると、研磨布6の表面形状プロファイルの緻密な制御が困難になり、また小さすぎると生産性の低下を招くためである。
【0025】
研削プレート11bは回転させる必要があるが、回転速度が速すぎると研削レートが高くなり過ぎてしまい、緻密な表面形状プロファイルの制御が困難となるため、最大でも研削プレート11bの回転速度は、50rpm以下とすることが好ましい。
【0026】
移動アーム12を旋回させて研削プレート11bを研磨布6上に配置し、研削プレート11bを研磨布6の表面に接触させて回転させ、移動アーム12を旋回させて研削プレート11bを揺動させることにより、研磨布6の表面全体を研削することができる。
本発明において、研磨布6の表面のドレッシング量は、移動アーム12の旋回速度(即ち、研削プレート11bの揺動速度)と、移動アーム12により研削プレート11bを研磨布6の表面に押し付ける加圧力により調整する。
【0027】
洗浄部11cは、研磨布6の表面形状プロファイルを測定した後に、研磨布6の表面を洗浄する。この洗浄部11cとしては、表面形状プロファイルを測定する際のプローブの接触等による研磨布6表面の汚染を十分に除去できれば特に限定されず、例えばブラシや高圧ジェット洗浄機を使用することができる。
【0028】
研削制御部11dは、測定部11aによる研磨布6の表面形状プロファイルの測定処理と、測定された表面形状プロファイルに基づいて、研磨布6の表面のドレッシング処理の全てを制御する。即ち、研磨布6の表面形状プロファイルを測定する際には、移動アーム12を旋回させて離間した上定盤4と下定盤5との間に挿通し、研磨布6の表面上で測定部11aを走査させる。また、後述するように、測定部11aにより測定された表面形状プロファイルに基づいて目標プロファイルを設定し、研磨布6の各領域(ゾーン)における測定された表面形状プロファイルと目標プロファイルの差であるドレッシング量Gを設定する。そして、研磨布6の表面を研削する際に、研磨布6上の各ゾーンに対するドレッシング量が設定されたドレッシング量Gとなるように、移動アーム12の旋回速度と、研削プレート11bを研磨布6の表面に押し付ける加圧力を調整する。
【0029】
図1および図2において、研削制御部11dは、測定部11a、研削プレート11bおよび洗浄部11cとは別に構成する形態について説明したが、研削制御部11dを移動アーム12の先端部10に構成しても良い。
【0030】
ここで、研削装置9による研磨布6の研削方法、即ち、研磨布6の表面形状プロファイルを目標プロファイルに維持する処理について、図3を参照して説明する。この処理は、研磨布6の表面形状プロファイルを測定する処理と、得られた表面形状プロファイルに基づいて研磨布6をドレッシングする処理に分けることができる。以下、測定部11aとして、接触式のプローブ測定器を用い、下定盤5に貼り付けられた研磨布6をドレッシングする場合を例に説明する。
【0031】
まず、ウェーハの研磨後に、上定盤4および下定盤5を離間させ、昇降手段13によりキャリア3を上昇させた後、移動アーム12を旋回させて、測定部11aを上定盤4と下定盤5との間に挿通する。次いで、測定部11aに収納されている測定プローブを突出させ、移動アーム12を旋回させて測定部11aの測定プローブを研磨布6の中心から外周に向かって走査させる。その際、研磨布6の中心から外周までにおいて、例えば500箇所(ポイント)で研磨布6の表面の変位(研磨布6の表面に垂直な方向の位置)を測定することにより、研磨布6の表面形状プロファイルを測定する。得られた500ポイントでの変位を曲線で近似することにより、研磨布6の表面形状プロファイルを得ることができる。更に、本発明においては、例えば20ポイントを1ゾーンとして、研磨布6の中心から外周までを25のゾーンで近似し、各ゾーンにおける変位の平均値を求め、表面形状プロファイルを目標プロファイルとなるように制御するが、これに限定されない。
【0032】
次いで、続く研磨布6のドレッシング処理における、研磨布6の所望の表面形状プロファイルである目標プロファイルを設定する。この「目標プロファイル」は、研磨布6の表面の形状を規定するとともに、各ゾーンでのドレッシング量Gを規定するものである。この目標プロファイルにおいて、研磨布6の表面の形状は特に限定されず、研磨布6の中心から外周までを完全に平坦とするものでなくてもよい。
また、ドレッシング量Gについては、研磨処理において発生した研磨カスが研磨布6の表面に堆積している虞があるため、最低ドレッシング量を設定し、各ゾーンにおけるドレッシング量Gが最低ドレッシング量を下回らないようにする。
【0033】
上記目標プロファイルは、上定盤4に貼り付けられた研磨布6と、下定盤5に貼り付けられた研磨布6とで相違させることができる。即ち、実際にウェーハに対して両面研磨処理を施すと、上定盤4、下定盤5およびキャリア3の間の相対的な回転方向の相違や、装置固有の特性等により、上定盤4と下定盤5とでは、貼り付けられた研磨布6の研磨後の表面形状プロファイルは相違するのが一般的である。本発明は、こうした両面研磨装置固有の事情に合わせて、研磨布6の表面のドレッシング処理を適切に実行することができる。
【0034】
続いて、研削制御部11dにより、各ゾーンにおける表面形状プロファイルと目標プロファイルとの差から、移動アーム12の旋回速度(即ち、研削プレート11bの揺動速度)および研削プレート11bを研磨布6の表面に押し当てる加圧力を決定する。
【0035】
その後、研削制御部11dは、移動アーム12を制御して、決定された加圧力で研磨部12を研磨布6の表面に押し当て、研磨部11bを回転させるとともに、下定盤5を回転させ、決定された旋回速度で移動アーム12を旋回させることにより、研磨布6の表面形状プロファイルが目標プロファイルとなるようにドレッシングする。その際、上述のように、ドレッシング量の制御(即ち、移動アームの旋回速度と研削プレート11bの加圧力の制御)はゾーン毎に行うようにする。また、下定盤5の回転速度、移動アーム12の旋回速度(即ち、研削プレート11bの揺動速度)および研削プレート11bの回転速度は、研磨布6を効率的にドレッシングする観点から、装置構成に応じて適宜決定される。
【0036】
続いて、ドレッシング後の研磨布6の表面形状プロファイルを再度測定し、各ゾーンにおいて、得られた表面形状プロファイルと目標プロファイルとの差を求め、得られた差が許容範囲内にある場合には、洗浄部11cにより、研磨布6の表面を洗浄し、ドレッシング処理を終了する。一方、得られた表面形状プロファイルと目標プロファイルとの差が許容範囲を超えているゾーンが存在する場合には、該ゾーンに対して、得られた表面形状プロファイルに基づいて研磨布6の表面を再ドレッシングする。この研磨布6の表面形状プロファイルの測定とドレッシング処理を、得られた表面形状プロファイルと目標プロファイルとの差が許容範囲内となるまで繰り返す。
【0037】
尚、上記実施形態においては、研削プレート11bを強制的に回転させて、研磨布6をドレッシングするように構成しているが、研削プレート11bを強制的に回転させずに自由に回動可能に構成し、上定盤4および下定盤5を回転させるようにしてもよい。研削プレート11bが自由に回動可能であれば、上定盤4および下定盤5の回転により研削プレート11bが自転して、研磨布6をドレッシングすることができる。
【0038】
また、研磨布6の表面形状プロファイルを測定する際に、各定盤の回転を停止させた状態で行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上定盤4または下定盤5を回転させた状態で測定プローブを研磨布6の径方向に走査させて測定することにより、研磨布6全体の表面形状プロファイルを取得するようにしても良い。
【0039】
また、移動アーム12の先端部10に取り付けられた測定部11a、研削プレート11bおよび洗浄部11cの配置は特に限定されないが、研磨布6の表面のドレッシング処理と、表面形状プロファイルの測定処理とを同時に行うように構成する場合には、移動アーム12を旋回して研削プレート11bを研磨布6の表面上で揺動する際の軌跡上に測定部11a(または、測定部11aの軌跡上に研削プレート11b)を構成する。
【0040】
更に、測定部11a、研削プレート11bおよび洗浄部11cは移動アーム12の先端10に取り付けられているが、上定盤4および下定盤5の間に進退および昇降し、研磨布6(即ち、上定盤4および下定盤5)の径方向に直線揺動することが可能な移動機構(図示せず)に取り付けることもできる。
【0041】
こうして、本発明による研削装置9により、両面研磨装置の上下定盤間に挿通する移動アームに、測定部および研削プレートを設け、研磨布の表面形状プロファイルの測定と、これに基づくドレッシングを容易に行うことができるため、上定盤4および下定盤5に貼り付けられた研磨布6の表面形状プロファイルを、常に目標プロファイルに維持することができる。
【0042】
以上の本発明による研削装置9を、図1に示した一般的な両面研磨装置1に付帯させた両面研磨装置100を用いることにより、研磨布6の表面形状プロファイルを常に目標プロファイルに維持することができるため、ウェーハ等のワークの両面の表面形状プロファイルを個々に緻密に制御することができる。
【0043】
以上、具体例を挙げて本発明を詳細に説明してきたが、本発明の特許請求の範囲から逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能であることは当業者に明らかである。例えば、複数枚のキャリア3を使用して、複数枚のワークWを同時に両面研磨するマルチキャリア方式の研磨機構とすることも可能である。従って、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
(発明例1)
図1に示す両面研磨装置100を用いて、直径300mmのシリコンウェーハに対してドレッシング処理を施した。ここで、研磨布6をドレッシングする際の目標プロファイルは、上定盤4および下定盤5の双方において平坦で同一とした。
まず、下定盤5に載置されたキャリア3のホール2にシリコンウェーハをはめ込み、このウェーハに対して両面研磨処理を施して、ウェーハ表裏面の片側それぞれを5μm除去する研磨処理を行った。ここで、研磨布6は、一般的な発泡ウレタンを使用した。また、スラリーは、コロイダルシリカ、水酸化カリウムおよび水を主成分とするものを使用した。ウェーハの両面研磨処理が終了した後、ウェーハを取り外して搬出し、ギア7によりキャリア3を上昇させ、ウェーハ研磨処理を終了した。
【0045】
次いで、研削装置9の移動アーム12を旋回して離間させた上定盤4と下定盤5との間に測定部11aを挿入し、移動アーム12を水平方向に走査させながら、下定盤5に貼り付けられた研磨布6の表面形状プロファイルを測定した。その際、測定部11aとしては、接触方式のプローブ測定器を使用し、パッドの中心から外周までの間の500ポイントについて変位を測定し、更にパッドの中心から外周までを25ゾーンに分割し、ゾーン毎の変位の平均値を求めた。
その後、研削制御部11dにより、得られた表面形状プロファイルに基づいて、研磨布6のドレッシング処理の目標プロファイルを設定し、各ゾーンに対するドレッシング量Gを決定した。
【0046】
続いて、測定部11aのプローブを収納した後、研磨部11bを研磨布6の表面に接触して回転させ、移動アーム12を旋回させて研削プレート11bを揺動させ、研磨布6の表面全体をドレッシングした。その際、研削制御部11dにより、各ゾーンに対して設定されたドレッシング量Gに基づいて、移動アーム12の旋回速度および研削プレート11bを研磨布に押し当てる加圧力を調整した。ここで、下定盤5の径に対する研削プレート11bの径は、150mmである。また、研削プレート11bの回転速度は10rpm、上定盤4および下定盤5の回転速度は、30rpmとした。ドレッシング処理の終了後、測定部11aにより、ドレッシング後の研磨布6の表面形状プロファイルを再度測定し、目標プロファイルとの差が±5μmを超えたゾーンが存在する場合には、目標プロファイルとの差が±5μm以内となるまで、研磨布6表面のドレッシング処理および表面形状プロファイルの測定処理を繰り返し、全てのゾーンにおいて、測定された表面形状プロファイルと目標プロファイルとの差が±5μm以内となった時、洗浄部11cにより研磨布6の表面を洗浄し、研磨布6のドレッシング処理を終了した。同様に、上定盤4に貼り付けられた研磨布6についても、上記表面形状プロファイルの測定処理および研磨布6の表面のドレッシング処理を行った。
【0047】
(発明例2)
発明例1と同様に、本発明による両面研磨装置100を用いて、直径300mmのシリコンウェーハに対して研磨処理を施した。ここで、研磨布6をドレッシングする際の目標プロファイルは、上定盤4と下定盤5とで異なり、上定盤4については、研磨布6の中心から外周の間において下に凸形状を有して平坦ではないのに対し、下定盤5に貼り付けられた研磨布6については平坦とした。他の研磨条件は、発明例1と全て同一である。
【0048】
発明例1における、上定盤4および下定盤5に貼り付けられた研磨布6の目標プロファイルを、図4(a)および(c)にそれぞれ示し、研磨布のドレッシング処理後の研磨布6の表面形状プロファイルを図4(b)および(d)にそれぞれ示す。
この図から明らかなように、上定盤4(図4(a))および下定盤5(図4(c))の双方が平坦な目標プロファイルである場合に対して、研磨布のドレッシング処理後の研磨布6の表面形状プロファイルは、ほぼ平坦な表面形状プロファイルが得られていることが分かる。
これに対して、発明例2における、上定盤4および下定盤5に貼り付けられた研磨布6の目標プロファイルを、図5(a)および(c)にそれぞれ示し、研磨布のドレッシング処理後の研磨布6の表面形状プロファイルを図5(b)および(d)にそれぞれ示す。図5(a)および(b)から明らかなように、従来技術では困難であった、目標プロファイルが研磨布の中心と外周との間において下に凸形状を有して平坦ではない場合についても、表面形状プロファイルを緻密に制御できていることが分かる。また、上定盤4と下定盤5とで目標プロファイルが異なる場合にも、上定盤4と下定盤5に貼り付けられた研磨布6の個々の目標プロファイルに対して適切に対応できていることが分かる。
このように、本発明による両面研磨装置により、研磨布の表面形状プロファイルを常に目標プロファイルに緻密に制御できることが分かる。
【符号の説明】
【0049】
1,100 両面研磨装置
2 ホール
3 キャリア
4 上定盤
5 下定盤
6 研磨布
7 ギア
8 フローティング機構
9 研削装置
10 先端部
11a 測定部
11b 研削プレート
11c 洗浄部
11d 研削制御部
12 移動アーム
13 昇降手段
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨布を貼り付けた上定盤および下定盤の回転によりワークの表裏面を研磨する両面研磨装置における、前記研磨布をドレッシングするための研削装置であって、
離間させた前記上下定盤間に挿通され、前記研磨布の研磨面に対して水平方向に走査かつ垂直方向に昇降可能な移動アームと、
前記移動アームの先端部に研磨布面に対して水平方向に回動可能に取り付けられ、前記研磨布の表面をドレッシングする前記研磨布より小径の研削プレートと、
前記移動アームの先端部に取り付けられ、前記移動アームの走査方向に前記研磨布の表面形状プロファイルを測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づきドレッシング量を制御する研削制御部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
前記移動アームは上下に反転可能であることを特徴とする、請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
研磨に供するワークWを保持するキャリアと、
該キャリアを挟みワークの表裏面を回転して研磨する、対向する上定盤および下定盤と、
を備え、該上下定盤の対向面にワークを研磨するための研磨布をそれぞれ有する両面研磨装置であって、請求項1または2に記載された研削装置を付帯して成る研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135857(P2012−135857A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291746(P2010−291746)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】