説明

研磨パッド

【課題】高硬度であって、しかも、ドレス性が良好な研磨パッドを提供する。
【解決手段】発泡ポリウレタンの研磨層を有する研磨パッドであって、前記発泡ポリウレタンが、エポキシ樹脂を添加して、イソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物とを発泡硬化させてなるものであり、硬く、しかも、引っ張り破断しやすく、伸びが小さいという特性を有するエポキシ樹脂を添加しているので、高硬度を維持しながら、ドレス性を高めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関し、更に詳しくは、シリコンウェハなどの半導体ウェハの研磨に好適なポリウレタン系の研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどの平坦化処理には、化学機械研磨(CMP)技術が用いられており、従来からCMP技術を用いた種々のCMP装置が提案されている。
【0003】
図2は、従来のCMP装置の概略構成図である。定盤1の表面に取付けられた研磨パッド2には、研磨用のスラリー3がスラリー供給装置4から供給される。被研磨物として例えば、半導体ウェハ5は、研磨ヘッド6に、バッキングフィルム7を介して保持される。研磨ヘッド6に荷重が加えられることによって、半導体ウェハ5は、研磨パッド2に押し付けられる。
【0004】
研磨パッド2上に供給されるスラリー3は、研磨パッド2上を広がって半導体ウェハ5に到達する。定盤1と研磨ヘッド6とは、矢符Aで示すように同方向に回転して相対的に移動し、研磨パッド2と半導体ウェハ5との間にスラリー3が侵入して研磨が行われる。なお、8は研磨パッド2の表面を目立てするためのダイヤモンドドレッサーである。
【0005】
研磨パッド2として、耐摩耗性等に優れた発泡ポリウレタンを使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−236200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、シリコンウェハ等の被研磨物の平坦度の要求が益々厳しくなっており、かかる平坦度を向上させるには、高硬度の研磨パッドを用いるのが有効である。
【0007】
研磨パッドでは、研磨工程に先立って、あるいは、研磨工程中に、ダイヤモンドドレッサーによって、その表面のドレッシングを行なうのであるが、高硬度の研磨パッドを使用すると、硬いために、ドレスがかかりにくく、ドッシングに長時間時間を要したり、局所的にドレッシングされてむらが生じ、研磨レートが安定しないといった難点がある。
【0008】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、高硬度であって、しかも、ドレス性が良好な研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の研磨パッドは、発泡ポリウレタンの研磨層を有する研磨パッドであって、前記発泡ポリウレタンが、エポキシ樹脂を添加して、イソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物とを発泡硬化させてなるものである。
【0010】
イソシアネート基含有化合物は、芳香族イソシアネート系のイソシアネート末端プレポリマーであるのが好ましい。
【0011】
前記発泡ポリウレタンは、密度が0.4〜0.9g/cmであって、ショアA硬度が80〜97であるのが好ましい。
【0012】
本発明の研磨パッドは、研磨層のみであってもよく、研磨層と他の層(例えばクッション層など)との積層体であってもよい。
【0013】
本発明の研磨パッドによると、硬く、しかも、引っ張り破断しやすく、伸びが小さいという特性を有するエポキシ樹脂を添加しているので、高硬度を維持しながら、ドレッシングの際の当該研磨パッドの磨耗量、すなわち、カットレートを増やしてドレス性を高めることが可能となり、これによって、ドレッシングに長時間を要することなく、また、ドレッシングが局所的に行われてむらが生じることがなく、研磨レートが安定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硬く、しかも、引っ張り破断しやすく、伸びが小さいという特性を有するエポキシ樹脂を添加しているので、高硬度を維持しながら、ドレッシングの際の当該研磨パッドの磨耗量を増やしてドレス性を高めることが可能となり、これによって、ドレッシングに長時間を要することなく、また、ドレッシングが局所的に行われることなく、全面に行われることになり、研磨レートが安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面によって本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
この実施形態の研磨パッドは、イソシアネート基(NCO基)を有するイソシアネート末端プレポリマーと、活性水素含有化合物とを、エポキシ樹脂および発泡剤(水)と共に混合攪拌し、所定の型に注型し、反応硬化させて発泡ポリウレタンの成型体を得る。得られた発泡ポリウレタンの成型体を、所定の厚さのシート状に裁断し、それを打ち抜いて研磨パッドを得る。
【0017】
イソシアネート基(NCO基)を有するイソシアネート末端プレポリマーは、アルコール系活性水素含有化合物とイソシアネート化合物とよりなるのが好ましく、アルコール系活性水素含有化合物は、ポリオールおよび鎖伸張剤からなるのが好ましい。
【0018】
このイソシアネート末端プレポリマーは、2価以上のアルコール系活性水素を有するポリオールおよび/または鎖伸張剤と、2価以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とにより作成されるのが好ましい。
【0019】
また、研磨用であるので、加水分解を起こさないエーテル系のポリオールが好ましく、エーテル系のポリオールとして、PPG(ポリプロピレングリコール)、PTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、PEG(ポリエチレングリコール)等の−O−結合を有するものが好ましく、その中でも一般的には、物性(引張り特性)の良好なPTMG系が好ましく、平均分子量が500〜2000のPTMGが好ましい。
【0020】
鎖伸張剤としては、分子量MWが500以下のEG(エチレングリコール)、PG(プロピレングリコール)、BG(ブタンジオール)、DEG(ジエチレングリコール)、トリメチロールポロパン等を用いることができる。
【0021】
イソシアネート化合物としては、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、水添MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI(ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート)等および、これらのイソシアネートから作成されるプレポリマーが使用されるが、TDI等の芳香族イソシアネートが好ましい。
【0022】
活性水素含有化合物としては、アミノ基(NH基)を有する芳香族アミンなどを使用することができ、この芳香族アミンとしては、少なくともMOCA(4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン))およびMOCA類似物の少なくとも一方を使用するのが好ましい。
【0023】
MOCA類似物としては、メチレン-ビス(2,3ジクロロアニリン)、4’,4メチレン-ビス(2-メチルエステルアニリン)などを使用することができる。
【0024】
この実施形態の研磨パッドは、高硬度でありながら、ドレス性を高めるために、上述のようにエポキシ樹脂を添加している。エポキシ樹脂は、硬くて、しかも、引っ張り破断しやすく、伸びが小さいという特性を有している。
【0025】
かかる特性を有するエポキシ樹脂を添加することによって、得られる発泡ポリウレタンからなる研磨パッドは、高硬度を維持しながら、磨耗し易くなり、ドレッシングの際の磨耗量が増加してドレス性が向上することになる。
【0026】
エポキシ樹脂の添加量は、樹脂全量に対して、5重量%以上15重量%以下であるのが好ましい。5重量%未満では、ドレス性の向上が認められず、15重量%以上では、研磨パッドが脆くなる。
【0027】
発泡ポリウレタンの平均気泡径は、直径30μm〜3mm程度であるのが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0029】
各種特性を評価するために、表1に示す配合で、実施例1,2および従来例の発泡ポリウレタンの成型品を製造した。なお、表1には、得られた各成型品の密度および硬度の測定結果を併せて示している。
【0030】
【表1】

【0031】
上記配合では、イソシアネート末端プレポリマーとして、ハイプレンL−213(三井武田ケミカル社製)を使用し、エポキシ樹脂として、タケネートL−2980D(三井武田ケミカル社製)を使用し、活性水素含有化合物として、3,3−ジクロロー4,4−ジアミノフェニルメタン(MOCA)を使用した。
【0032】
実施例1では、成型品の密度を0.6g/cmに設定し、表1に示すように、イソシアネート末端プレポリマー270重量部に対して、エポキシ樹脂30重量部を添加し、MOCAを100重量部、発泡剤としての水を0.45重量部、触媒(ET)を0.15重量部添加し、攪拌混合した。これを、100℃のオーブンにて4時間キュアし、発泡ポリウレタンの成型品を得た。
【0033】
実施例2では、成型品の密度を0.9g/cmに設定し、表1に示すように、イソシアネート末端プレポリマー270重量部に対して、エポキシ樹脂30重量部を添加し、MOCAを100重量部、発泡剤としての水を0.15重量部、触媒を0.15重量部添加し、攪拌混合した。これを、100℃のオーブンにて4時間キュアし、発泡ポリウレタンの成型品を得た。
【0034】
従来例では、成型品の密度を0.6g/cmに設定し、表1に示すように、イソシアネート末端プレポリマー300重量部に対して、MOCAを79.81重量部、発泡剤としての水を0.4重量部、触媒を0.15重量部添加し、攪拌混合した。これを、100℃のオーブンにて4時間キュアし、発泡ポリウレタンの成型品を得た。
【0035】
各実施例および従来例のカットレートを次の条件で測定した。
【0036】
研磨機:G&P社製Poli500、時間:4min、圧力:100g/cm、ドレッサー:ダイヤモンドペレット(直径:150μm、突き出し:70μm)
図1にカットレートを示す。
【0037】
この図1に示すように、従来例と密度および硬度が略等しい実施例1は、従来例に比べて、カットレートが大幅に向上している。また、従来例に比べて、密度および硬度が高い実施例2でも、従来例に比べてカットレートが向上していることが分る。
【0038】
このように実施例1,2では、従来例に比べてカットレートが高く、ドレス性が向上するので、従来例のように局所的にドレッシングされることなく、全面に均一にドレッシングされ、これによって、研磨レートが安定する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、シリコンウェハ等の研磨に用いる研磨パッドとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例および従来例のカットレートを示す図である。
【図2】CMP装置の概略構成図
【符号の説明】
【0041】
2 研磨パッド
3 スラリー
5 半導体ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリウレタンの研磨層を有する研磨パッドであって、
前記発泡ポリウレタンが、エポキシ樹脂を添加して、イソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物とを発泡硬化させてなることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
イソシアネート基含有化合物が、芳香族イソシアネート系のイソシアネート末端プレポリマーである請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記発泡ポリウレタンは、密度が0.4〜0.9g/cmであって、ショアA硬度が80〜97である請求項1または2に記載の研磨パッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−149260(P2010−149260A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332478(P2008−332478)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000116127)ニッタ・ハース株式会社 (150)
【Fターム(参考)】