説明

研磨材

【課題】吸液性、平滑性が良好であり、高精度かつ高効率な研磨加工が可能な研磨材を提供する。
【解決手段】断面直径が0.5〜10μmの繊維よりなる織物、編物、乾式不織布、あるいは湿式不織布からなる基材群のうちいずれか1つの上に、繊維軸方向に直行する断面直径が10〜500nmの全芳香族ポリアミドナノファイバーが積層され、該全芳香族ポリアミドナノファイバーが研磨加工に使用する研磨加工面に配されなる研磨材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリアミドナノファイバーを加工表面に配置させた研磨材に関するものであって、高精度の仕上げを要求される磁気ディスクなどの磁気記録媒体や半導体基板などの研磨加工に好適に使用することが可能な研磨材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理技術の発達に伴い、磁気記録媒体やシリコンウェハに対する高精度な表面仕上げが要求されている。長手磁気記録方式に用いられるディスク表面にはテクスチャ加工を施すことが広く用いられ、表面に形成させる溝が微細であるほど好ましいとされ、一方で、垂直記録方式に用いられるディスク表面においては、平坦でかつランダムな粗さを有する表面であることが好ましいとされている。
【0003】
このような中で、繊維直径がナノオーダーであるナノファイバーを用いた研磨材の開発が多くなされており、例えば、ポリマーアロイ繊維を用いた研磨材(特許文献1)や、海島型複合繊維を用いた研磨材(特許文献2)が開示されている。しかし、研磨材を構成するナノファイバーは集束した状態にあり、表面が粗く、ナノレベルの断面直径の優位性が充分に発現できる構造となっていなかった。また、静電紡糸法にて成形した研磨布(特許文献3)があり、Ny6を用いたものが開示されている。前者2つと比較し、ナノファイバーの優位性が発現できる構造にあるものの、加工性を高速化させて加工効率を上げようとすると、十分な研磨性能が得られないため、更なる研磨材の改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−79472号公報
【特許文献2】特開2009−751号公報
【特許文献3】特開2008−254136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、吸液性、平滑性が良好であり、高精度かつ高効率な研磨加工が可能な研磨材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意検討したところ、上記課題は、以下に記載する研磨材の構成とすることにより解決可能であることを見出した。
すなわち本発明は、断面直径が0.5〜10μmの繊維よりなる織物、編物、乾式不織布、あるいは湿式不織布のうち少なくとも1種からなる基材上に、繊維軸方向に直行する断面直径が10〜500nmの全芳香族ポリアミドナノファイバーが積層され、該全芳香族ポリアミドナノファイバーが研磨加工に使用する研磨加工面に配されなる研磨材である。
【0007】
さらに本発明においては、上記全芳香族ポリアミドナノファイバーが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミド反復構造の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させた全芳香族ポリアミドならなる請求項1記載の研磨材であることが好ましい。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は並行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ナノファイバーの優位性を充分に発現できるため、高精度かつ高効率性が得られ、さらには強度、耐熱性に優れる全芳香族アラミドポリマーからなるナノファイバーを使用することにより、寿命の長い研磨材が提供することができる。また、上記ナノファイバーが、特定の全芳香族アラミドポリマー特定の芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として共重合した全芳香族ポリアミドからなるときビーズの発生をなくし、高精度、高効率の研磨加工が実現できる研磨材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例3により得られた研磨材の全芳香族ポリアミドナノファイバーが積層された面(研磨加工面)の走査型電子顕微鏡(200倍)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における研磨材は、繊維からなる基材上に、全芳香族ポリアミドナノファイバーが積層され、該全芳香族ポリアミドナノファイバーが研磨加工に使用する研磨加工面に配されなることを特徴とする。
【0011】
本発明で使用する基材は、断面直径が0.5〜10μmの繊維よりなる織物、編物、乾式不織布、あるいは湿式不織布のうち少なくとも1種からなる。該基材を構成する繊維の断面直径を0.5μm以上とすることにより、研磨材にクッション性を付与することが可能となるが、該断面直径が10μmを超えると、研磨材が柔軟性に欠け、表面平滑性を悪化させるため好ましくない。上記繊維を構成するポリマーは、それぞれの使用用途に合わせて選択することが可能であり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系、ナイロン、アラミドなどのポリアミド系、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系などを使用することができる。
【0012】
上記基材の目付けは、10〜200g/mが好ましく、50〜100g/mがより好ましい。該目付けが、10g/m未満ではクッション性が低下し、一方、200g/mを超えると使用の際に、基材自体にひずみが生じ易く、力が均一にかかり難くなり好ましくない。
【0013】
本発明においては、全芳香族ポリアミドナノファイバーが、上記基材上に積層され、研磨加工に使用する研磨加工面に配されていることが肝要である。これにより、該ナノファイバーが被研磨物に対して高精度で効率的に接触しながら研磨加工することが可能となるだけでなく、研磨加工時に砥粒を含む加工液やスラリー液を使用する場合は、それらの吸液性にも優れている。また、該全芳香族ポリアミドナノファイバーは強度や耐熱性の面で優れているため長時間の使用においても破損や変形がなく優れた耐久性も発揮する。
【0014】
上記ナノファイバーの断面直径は、10〜500nmであり、好ましくは30〜300nmである。断面直径が10nm未満であると研磨材の強力が著しく低下し破損しやすくなり、一方、断面直径が500nmを越えると、高精度かつ高効率の研磨が難しくなり、また、砥粒を含む加工液やスラリー液を使用する場合、それらの吸液性や砥粒の把持性が低下する。
【0015】
本発明においては、ナノファイバーを構成するポリマーが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる、芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミド反復構造の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させた芳香族ポリアミドであることが特に好ましい。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は並行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0016】
また、本発明においては、芳香族ジアミン成分が式(2)または(3)、芳香族ジカルボン酸ハライド成分が式(4)または(5)で示される化合物であることが特に好ましい。
N−Ar2−NH ・・・式(2)
N−Ar2−Y−Ar2−NH ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる郡から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0017】
上記のように第3成分を共重合することにより、紡糸溶液の安定性が向上し、成形されるナノファイバーはビーズと呼ばれる節糸状のポリマー塊の発現が少なく、さらに長繊維のナノファイバーが得られやすくなる。このため、上記の芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドでは、研磨加工に使用した際に、ナノファイバーの断糸の発生がなく、被研磨物に切断したナノファイバーやビーズが付着することがないため、極めて好ましい。また、紡糸溶液を安定化させるためにアルカリ金属塩などの添加をする方法もあるが、ナノファイバー中に塩の残存することが好ましくない場合もあり、上記のように特定の第3成分を共重合させて均一で断糸の発生のないナノファイバーを用いることの方がより効果的である。
【0018】
第3成分の含有率が1mol%未満であると、紡糸溶液にゲル化が生じるため好ましくなく、また、10mol%を超えると、紡糸溶液の粘度が上昇し、目的の断面直径を有するナノファイバーを得にくく、好ましくない。
【0019】
上記ナノファーバーの目付けは、0.5〜10.0g/mが好ましく、0.8〜3.0g/mがより好ましい。上記目付けが、0.5g/m未満では砥粒の分散性にムラが出る傾向にあり、一方、10.0g/mを超えると吸液性が低下する傾向にあるため好ましくない。
【0020】
本発明の研磨材においては、芳香族ポリアミドナノファイバーの一部が溶融または軟化してフィルム状となって基材と接合していてもよい。このような形態を有する研磨材は、芳香族ポリアミドナノファイバーを基材に積層した後、これに加熱加圧処理を施すことによって得られ、該研磨材は、芳香族ポリアミドナノファイバーと基材がより密着し芳香族ポリアミドナノファイバー積層面の強度が向上しているため、研磨加工性に優れ、使用寿命が向上することが分かった。
【0021】
以上に説明した本発明の研磨材は、例えば以下の方法により製造することができる。つまり、全芳香族ポリアミド溶液を、高電圧を印加して基材上にスプレーしてナノファイバーを形成する方法を好ましく例示することができる。また、得られるナノファイバーの断面直径は印加電圧、溶液濃度、スプレーの飛散距離等に依存し、これらの条件を調整することで任意の断面直径とすることができる。全芳香族ポリアミド溶液に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0022】
具体的には、全芳香族ポリアミドポリマーと溶媒とを1:99〜16:84の重量比で溶解させたポリマー溶液を調製し、5〜70kVの電圧下で、紡糸距離を5.0〜50cmとし、単位距離あたりの電圧に換算すると0.5〜7.0kv/cmとして電界紡糸を行うことにより前述した断面直径を有する全芳香族ポリアミドナノファイバーを作製することができる。
【0023】
紡糸溶液の供給は、ノズルや口金から押し出す方法や、紡糸溶液中に浸した円盤やドラムに、必要量となるように紡糸溶液を付着させ、連続回転させることにより供給する方法が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記のような電界紡糸法によって得られる全芳香族ナノファイバーを用いることで、目的とする、吸液性、平滑性に優れ、高精度、高効率な研磨加工が行える研磨材を容易に得ることができ、好ましい。電界紡糸法によりナノファイバーを成形できる高分子には、ポリビニルアルコール等が知られているが、こうした従来のナノファイバーは、実用においては、研磨加工液等に溶解し易かったり、強度が不十分であったりしたため研磨材に用いることは困難であったが、上記製造方法により、特に前述した特定の第3成分を共重合した全芳香族ポリアミドを用いたとき、均一で断糸のない全芳香族ポリアミドナノファイバーが得られ、かかる目的を容易に実現できる。
【0025】
さらに、前述した芳香族ポリアミドナノファイバーの一部が溶融または軟化してフィルム形状となり基材と接合している部分が存在する研磨材は、上記方法で得られた、断面直径が10〜500nmの芳香族ポリアミドナノファイバーと基材との積層体を、カレンダー加工装置、エンボス加工装置等により、温度30〜350℃、線圧50〜300kgf/cmとして加熱加圧処理を施すことにより製造することができる。
【0026】
本発明の研磨材は、JIS L1907 7.1に準拠し、精製水を使用して測定した研磨加工面における吸液時間が、600sec./15μl以上であることが好ましい。研磨加工に使用される加工液やスラリーの液滴は低表面張力のものが多いが、上記吸液時間とすることで、該加工液やスラリーを十分に吸液し良好な研磨加工を行うことができる。
【0027】
本発明においては、研磨加工面の構成する繊維の断面直径がナノメートルオーダーと極めて細く、比表面積が極めて高いため、吸液性のみならず良好な液体保持性をも発揮する。これにより、加工液等が非加工面へ抜けが少なく、被研磨体表面上にとどまるため、加工効率をより向上させることが可能となる。
【0028】
また、本発明においては、加工使用面の表面粗さが10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下である。ここで、表面粗さは後述の実施例中に記載の測定方法により、加工使用面を測定して求める。表面粗さが小さいと研磨加工性が向上するだけでなく、スクラッチの発生を抑制することができる。また、ナノファイバーを用いているため、立毛させずとも砥粒を均一に把持することが可能となり、リントの発生も抑制することができる。
【0029】
本発明の研磨材を用いる加工方法は、精度と加工速度に優れた被研磨物を得ることができる方法である。加工としては、特に磁気記録媒体のテクスチャ加工やクリーニング加工において好ましく用いられる。テクスチャ加工には砥粒スラリーと共に使用され、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化セリウム、単結晶または多結晶ダイアモンドなどであり、それぞれ粒径は0.05〜0.5μm程度のものが好ましく使用される。クリーニング加工には、本発明の研磨加工面に、必要に応じて水、薬剤等を加えて実施するものであり、被研磨物表面に残存した砥粒や破片を有効に除去することが可能となり、生産効率を大きく改善することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の測定は以下の方法を用いた。
【0031】
(1)断面直径
全芳香族ナノファイバーを任意に100本サンプリングし、走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて測定し、断面直径の平均値を求めた。なお測定は、30,000倍の倍率で行った。
【0032】
(2)吸液時間
JIS L1907 7.1に準拠して実施した。研磨材を200mm×200mmにカットし、任意に測定用サンプルを5枚選んだ。研磨材表面から10mm高さに固定したビュレットから水を1滴滴下させ、水滴が試験片の表面に達したときから水滴の全量がしみこむまでの時間を測定した。数値は5回の平均値とした。この数値が高いほど、緻密な構造を反映しているため好ましい。
【0033】
(3)表面粗さ
研磨材を任意に10枚選び、それぞれ1ヶ所づつをカラー3Dレーザー顕微鏡(KEYENCE社製)にて1,000倍の倍率で測定の後、JIS B0601−2001に準拠して、形状解析アプリケーションVK−H1A1(KEYENCE社製)にて表面粗さを解析した。数値は10ヶ所の平均値とした。この数値が低いほど、平滑性が高く好ましい。
【0034】
(4)砥粒分散状態の評価
JIS L0849 5.1b)の装置を使用して実施した。幅30mm、長さ220mmの被研磨物を試験台上に設置固定し、精製水にAl粉末(粒径60nm)を添加したスラリーを含浸させた50mm×50mmの研磨材を摩擦子の先端にかぶせた。荷重を200gfとし、被研磨物上100mmの間を毎分30回往復の速度で50往復させ、任意の10ヶ所について走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて砥粒の分散状態を350倍、および5000倍の倍率にて観察した。分散が凝集せず、広範囲に均一に分散しているものを○、分散の程度が低く、凝集が著しいものを×とした。
【0035】
(5)ビーズ数
全芳香族ナノファイバー積層面を任意に10ヶ所サンプリングし、走査型電子顕微鏡JSM6330F(JEOL社製)にて測定し、ビーズの長軸方向について1μmを超えるビーズ数を数え、平均値を算出した。なお測定は、1,000倍の倍率で行い、約90×120μmの視野であった。
【0036】
[実施例1]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により本発明の芳香族ポリアミドポリマーを下記のように製造した。
イソフタル酸ジクロライド25.25g(100mol%)を水分含有率2mg/100mlのテトラヒドロフラン125mlに溶解し、−25℃に冷却した。これを撹拌しながらメタフェニレンジアミン13.52g(100mol%)を、上記テトラヒドロフラン125mlに溶解した溶液を細流として約15分間にわたって添加し、白色の乳濁液(A)を作製した。これとは別に無水炭酸ナトリウム13.25gを水250mlに室温で溶かし、これを撹拌しながら5℃まで冷却して炭酸ナトリウム水和物結晶を析出させ分散液(B)を作製した。上記乳濁液(A)と分散液(B)とを激しく混合した。更に2分間混合を続けた後、200mlの水を加えて希釈し、生成重合体を白色粉末として沈殿させた。重合終了系からろ過、水洗、乾燥して目的とするポリマーを得た。得られたポリマーについて測定した固有粘度IVは1.68であった。
【0037】
電界紡糸は特開2006−336173号公報記載の方法に準じ、ナノファイバーを製造した。得られたポリマーをN,N−ジメチルアセトアミドに、10重量%となるように溶解させ、1kV/cmとなるように電界を作用させて電界紡糸を実施し、ポリエステル湿式不織布(帝人ファイバー(株)製、断面直径9.0μm、目付け50g/m)上にナノファイバーを積層させ、積層体からなる研磨材を得た。ナノファイバーの目付けは1.0g/mであった。得られたナノファイバーを走査型電子顕微鏡にて観察し、上記に従って断面直径、吸液時間、表面粗さ、砥粒分散状態の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
100mol%のイソフタル酸ジクロライドの代わりに、イソフタル酸ジクロライド25.13g(99mol%)とテレフタル酸ジクロライド0.25g(1mol%)を使用した以外は、実施例1記載の方法と同様にして、研磨材を得た。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
加熱式金属製フラットローラと樹脂製フラットローラからなるカレンダー装置を用いて、温度300℃、線圧300kgfにて実施例1で得られた積層体にカレンダー加工を実施した以外は、実施例2記載の方法と同様にして、研磨材を得た。得られた研磨材の表面は図1のように、芳香族ポリアミドナノファイバーの一部が軟化してフィルム状となり基材と強固に接合していた。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例4]
芳香族ポリアミド粉末状体、溶媒N,N−ジメチルアセトアミドを7:93の重量比で溶解させたポリマー溶液を使用した以外は、実施例2と同様にして研磨材を得、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例5]
芳香族ポリアミド粉末状体、溶媒N,N−ジメチルアセトアミドを15:85の重量比で溶解させたポリマー溶液を使用した以外は、実施例2と同様にして研磨材を得、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
(株)クラレ製ポリビニルアルコール、を17:85の重量比で水に溶解させたポリマー溶液を調製して芳香族ポリアミドポリマー溶液の代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして研磨材を得、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
研磨材をポリエステル繊維(帝人ファイバー(株)製)からなる織物(断面直径9.0μm、目付け50g/m)を研磨材として用いた以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
研磨材を断面直径が約700nmのポリエステル繊維(帝人ファイバー(株)製)からなる織物(断面直径0.7μm、目付け15g/m)を研磨材として用いた以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の研磨材は、吸液性、平滑性が良好であり、高精度かつ高効率な研磨加工が可能であり、高精度の仕上げを要求される磁気ディスクなどの磁気記録媒体や半導体基板などの研磨加工に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面直径が0.5〜10μmの繊維よりなる織物、編物、乾式不織布、あるいは湿式不織布のうち少なくとも1種からなる基材上に、繊維軸方向に直行する断面直径が10〜500nmの全芳香族ポリアミドナノファイバーが積層され、該全芳香族ポリアミドナノファイバーが研磨加工に使用する研磨加工面に配されてなる研磨材。
【請求項2】
全芳香族ポリアミドナノファイバーが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミド反復構造の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させた全芳香族ポリアミドならなる請求項1記載の研磨材。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は並行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【請求項3】
第3成分となる芳香族ジアミンが式(2)または(3)、芳香族ジカルボン酸ハライドが、式(4)または(5)である請求項2記載の研磨材。
N−Ar2−NH ・・・式(2)
N−Ar2−Y−Ar2−NH ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項4】
全芳香族ポリアミドの反復構造単位がメタフェニレンイソフタルアミドである請求項1〜3いずれか1項記載の研磨材。
【請求項5】
研磨材加工面における吸液時間が600sec./15μl以上である請求項1〜4いずれか1項記載の研磨材。
【請求項6】
研磨加工面の表面粗さが10μm以下である請求項1〜5いずれか1項記載の研磨材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−247269(P2010−247269A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99149(P2009−99149)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】