説明

研磨用定盤の面修正方法及びそれに用いる面修正材

【課題】主として無機粒子からなる研磨用成形体を用いた研磨用定盤により被研磨材料を研磨するにあたり、その面状態を適正に修正する方法及びそのための面修正材を提供する。
【解決の手段】面修正に用いられる修正材の修正に携わる面の一部または全面に、所定の材質からなる部材を配し、かつ当該研磨用定盤及び/または面修正材を互いに摺擦運動させながら修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正する方法及びそのための面修正材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨用定盤を面修正する方法及びそれに用いる面修正材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、スライスした基板の片面あるいは両面を研磨加工するために研磨加工装置が用いられている。以下に仕上げ工程前の加工(ラッピング工程)を両面同時に研磨加工する装置を例に説明する。
【0003】
この装置は、太陽ギアとインターナルギアの間にあって自転するとともに公転するキャリアを使用し、キャリアに基板を保持して上下の定盤により挟み込み、前記2つのギアによるキャリアの動き及び上下定盤の動きの各々を変化させて研磨加工するものである。なお、定盤としては一般に黒鉛鋳鉄定盤が用いられている。しかしながら、キャリアを継続して同一方向に自転及び公転させるときはキャリアの公転方向と定盤の回転方向の組み合わせにより、定盤の周辺部と中心部との間等に摩耗差が発生していた。この摩耗差の発生は基板平面度の悪化等、基板品質に悪影響を及ぼすものであるので適宜修正する必要がある。このため、従来は鋳鉄製修正リングと遊離砥粒を含む修正液を用いて定盤面を修正していた。しかしながら、被研磨材料の形状精度(平板形状の場合は、平面度と平行度)や表面粗さに対する要求の高度化は顕著であり、その要求への対応は必須であるため、定盤面の管理の重要性が高まる中で前記修正方法では耐摩耗性、硬度が劣るため、定盤の被修正面の摩耗差による変形が面修正材に転写され易く、修正効果が低下し、高精度の基板平面度を得ることは容易ではなく、また修正に多大な時間を要していた。
【0004】
このような課題に対し、実開平6−074259にはセラミックスからなる円板にリング状の遊星歯車を嵌装固定して成る修正キャリアが開示されている。これによれば、セラミックス円板にはアルミナ、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン、ジルコニアが使用され、迅速に高精度な基板平面度に修正できるとされている。
【0005】
また、特開2000−190199号公報には、鋳鉄、銅、錫、軟鉄等から成る定盤の修正を効率的に行うために複数個のダイヤモンドペレットを貼付した面修正材が開示されている。
【0006】
本発明者らは主として無機粒子からなる研磨用成形体及びそれを用いた研磨用定盤が被研磨材料を高精度に高効率で研磨加工すことが可能であることを見い出してきており、前記したラッピング工程のみならず、その後工程や被研磨材料への要求特性によっては仕上げ工程まで適用可能であることを既に開示してきた。この研磨用成形体やそれを用いた研磨用定盤の特徴の1つに、例えば通常ポリッシング工程で用いられている研磨布とは異なり、少なからず摩耗による形状変化が生じることが挙げられる。例えば、前記したような両面研磨加工装置の場合には定盤の内外周周辺部と中心部の摩耗差が少なからず発生するため、同様に修正の必要が発生することになる。
【0007】
しかしながら、主として無機粒子からなる研磨用成形体を用いた研磨用定盤の修正方法は確立されておらず、従来と同様の方法の適用が可能であるかも不明であった。特に通常ポリッシング工程では研磨布が用いられており、研磨布の目詰まり等を改善するためのドレッシングは行われても、研磨用成形体と被研磨材料との接触面を平坦化するといったような研磨用定盤の面形状を管理するための面修正はほとんど行われていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、主として無機粒子からなる研磨用成形体を用いた研磨用定盤の面状態を適正に修正する方法及びそのための面修正材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に大別される3つの修正方法とそれに用いられる修正材が好ましいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
1)主として無機粒子からなる研磨用成形体と付帯部品からなる研磨用定盤を研磨加工に用いる際に当該研磨用定盤の面修正を行う方法において、当該面修正材の修正に携わる面の一部または全面にダイヤモンド粒子を含む部材を配し、かつ当該研磨用定盤及び/または面修正材を互いに摺擦運動させながら修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正する方法。
【0011】
2)主として無機粒子からなる研磨用成形体と付帯部品からなる研磨用定盤を研磨加工に用いる際に当該研磨用定盤の面修正を行う方法において、当該面修正材の修正に携わる面の一部または全面に当該研磨用定盤を構成する素材と同一素材から主としてなる部材を配し、かつ当該研磨用定盤及び/または面修正材を互いに摺擦運動させながら修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正する方法。
【0012】
3)主として無機粒子からなる研磨用成形体と付帯部品からなる研磨用定盤を研磨加工に用いる際に当該研磨用定盤の面修正を行う方法において、当該面修正材の修正に携わる面の一部または全面に当該研磨用定盤を構成する素材の全てに対して高硬度である素材から主としてなる部材を配し、かつ当該研磨用定盤及び/または面修正材を互いに摺擦運動させながら修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正する方法。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
尚、本明細書において面修正材とは、定盤面修正を行う構造物を意味し、当該面修正材は、面修正部材と面修正基材、あるいは面修正部材と面修正キャリア、あるいは面修正部材単独、で構成されるものをいう。
【0015】
本発明の研磨用定盤の面修正方法は、本発明者らの提案した主として無機粒子からなる研磨用成形体と付帯部品から構成される研磨用定盤に対して適用されるものである。なお、研磨用定盤は研磨用成形体と付帯部品により構成されるものであるので、研磨加工に携わる面は実質的に研磨用成形体の表面になるが、以下では単に「研磨用定盤」と記載することにするが、研磨用成形体を排除するものではない。
【0016】
本発明に係る研磨用定盤は、その研磨に携わる面が大小さまざまの細孔や脱落した粒子の痕跡による凹凸が存在し、粗面となっている。そのため、研磨用定盤は所謂研磨布と比較して剛性が高いことを考慮して、従来と同様の面修正方法の一つ、すなわち鋳鉄等の金属製の面修正材と遊離砥粒を含有した修正液を用いた面修正方法を用いたところ、このような金属製の面修正材を用いると研磨用定盤の表面に面修正材である金属が所謂目詰まりを起こし、研磨速度の低下の一因となってしまうことが判明した。
【0017】
本発明者らはこの課題に対し、前記した3手法をもって当該課題を回避できることを見い出した。
【0018】
1)の研磨用定盤の面修正方法において、面修正材の修正に携わる面の一部または全面はダイヤモンド粒子を含む部材で構成されていなければならない。ここでダイヤモンド粒子を含む部材とは、例えばダイヤモンド粒子を金属や樹脂で結合したペレット状、板状等の部材や、金属等の基材上に電着などによりダイヤモンドを固定したもの、ダイヤモンドをシート状の部材に塗布・固定化したもの等を挙げることができる。
【0019】
ダイヤモンド粒子はいかなる物質よりも高硬度であることが知られており、このような構成をとることで、本発明に係わる研磨用定盤を構成するいかなる無機粒子よりも、それがダイヤモンドでない限り高硬度となり、研磨用定盤の表面に目詰まりを生じさせることなく適正に修正を行うことが可能となる。また、本発明に係わる研磨用定盤に対して高硬度であるダイヤモンド粒子を含む部材を使用することで、修正作業の効率化が図れる。
【0020】
このとき、ダイヤモンド粒子を含む部材の面修正基材への配置の態様は、当該面修正基材の修正に関わる面の一部または全面に配置されていればよいが、円環状に配置されていることが好ましい。このような部材を2個以上面修正基材へ配置する場合には配置された部材の修正に携わる面を目的とする被研磨材料の形状から要求される研磨用定盤の研磨面の形状に修正できるように整えることが望ましい。例えば、被研磨材料が平坦な基板材料の場合にはその研磨用成形体の被研磨材料との接触面を平坦化することが望ましく、曲面状の場合にはそれに合った曲面状とすることが望ましい。このとき、面修正材や研磨用定盤の運動機構を基礎とした面形状の創製を考慮することが肝要である。したがって、被研磨材料が平坦な基板材料の場合には配置された部材の修正に携わる面も平坦化することが望ましい。これは、得られた研磨用定盤を用いて研磨加工する際に、被研磨材料と研磨用定盤が直接接触できるようになっており、その接触面を多く取ることができるようにするためと、その面形状に被研磨材料の形状が倣いやすいからである。
【0021】
このようなダイヤモンド粒子を含む部材を配置した面修正材を用いて本発明に係る研磨用定盤の修正を実施する場合、遊離砥粒を含まない修正液を用いて行うことが好ましい。
【0022】
もちろん、遊離砥粒としては通常用いられている、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化イットリウム、酸化錫等の酸化物や、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素等の非酸化物の中から少なくとも1種類以上を用いることができ、また、酸化ジルコニウムについては、安定化剤として酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化インジウム、酸化セリウム等の希土類酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等を固溶させた酸化ジルコニウムなどを含む修正液を用いて修正することも可能であるが、研磨廃液中の遊離砥粒濃度が増加して廃液処理の問題が生じるので、遊離砥粒を含まない研磨液を用いて行うことがより好ましい。
【0023】
遊離砥粒を含まない研磨液を使用する場合には、従来より用いられてきた研磨液を用いることでよく、例えば水、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アミンや有機酸を含む水溶液などの中性、アルカリ性、酸性の水溶液、場合によっては有機系溶液を用いることができるが、面修正材の材質や研磨加工装置の各部材の材質等によっては制約が生じることがあるため、水を用いることがより好ましい。
【0024】
2)の研磨用定盤の面修正方法において、面修正材の修正に携わる面の一部または全面は研磨用定盤と同一素材から主としてなる部材で構成されていることが好ましい。ここで研磨用成形体と同一素材からなる部材は、研磨用成形体を構成している素材を考慮して選定されるものであり、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化イットリウム、酸化錫等の酸化物や、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、窒化チタン等の炭化物、ホウ化物、窒化物等の非酸化物の中から少なくとも1種類以上を用いることができ、また、酸化ジルコニウムについては、安定化剤として酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化インジウム、酸化セリウム等の希土類酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等を固溶させた酸化ジルコニウムなどの1種類以上から構成されることになる。そして、その形態は使用において適宜選択されるものであるが、好ましくは部材としての機械的特性に優れる方が部材の摩耗の観点から好ましい。具体的一例としては当該部材の相対密度が100%に近いほど面修正材の摩耗を考慮すれば好ましいことになる。
【0025】
また、本発明に係る研磨用成形体と同一素材もしくは高硬度の無機粒子から構成される面修正材であることから、従来用いられてきている金属系材料のように延性、展性の大きい材料を用いた場合と異なり、研磨用成形体の表面に目詰まりを生じさせることなく修正を行うことが可能となる。さらに、ダイヤモンドを含む部材と修正液を用いて修正を行った場合に比して、研磨性能の安定化が図りやすくなる。
【0026】
このとき、研磨用成形体と同一素材もしくは高硬度素材から主としてなる部材の面修正材の修正への配置の態様は、当該面修正材の修正に携わる面の一部または全面に配置されていればよい。このような部材を2個以上面修正材へ配置する場合には配置された部材の修正に携わる面を目的とする被研磨材料の形状から要求される研磨用成形体の研磨面の形状に修正できるように整えることが望ましい。例えば、被研磨材料が平坦な基板材料の場合にはその研磨用成形体の被研磨材料との接触面を平坦化することが望ましく、曲面状の場合にはそれに合った曲面状とすることが望ましい。これには研磨用定盤と面修正材の相互の形状と運動機構を考慮した形状設定が肝要である。
【0027】
したがって、被研磨材料が平坦な基板材料の場合には配置された部材の修正に携わる面も平坦化することが望ましい。これは、得られた研磨用定盤を用いて研磨加工する際に、被研磨材料と研磨用定盤が直接接触できるようになっており、その接触面を多く取ることができるようにするためと、その面形状に被研磨材料の形状が倣いやすいからである。
【0028】
このような研磨用成形体と同一素材もしくは高硬度素材から主としてなる部材を配置した面修正材を用いて本発明に係る研磨用定盤の面修正を実施する場合、遊離砥粒として通常用いられている、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化イットリウム、酸化錫等の酸化物や、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素等の非酸化物を用いることができ、また、酸化ジルコニウムについては、安定化剤として酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化インジウム、酸化セリウム等の希土類酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等を固溶させた酸化ジルコニウムなどを含む修正液を用いて修正することになる。
【0029】
もちろん、遊離砥粒を含まない修正液を用いて修正することも可能であるが、修正速度が遅くなるために効率的でないことがある。なお、前記したように遊離砥粒を含まない研磨液を使用する場合には、従来より用いられてきた修正液を用いることでよく、例えば水、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アミンや有機酸を含む水溶液などの中性、アルカリ性、酸性の水溶液、場合によっては有機系溶液を用いることができるが、面修正材の材質や研磨加工装置の各部材の材質等によっては制約が生じることがあり、水がより好ましい。
【0030】
3)の研磨用定盤の面修正方法において、面修正材の修正に携わる面の一部または全面は研磨用定盤よりも高硬度素材から主としてなる部材で構成されていることが好ましい。この手法に対する留意事項は前記2)の手法に準ずるものである。
【0031】
このような3手法を用いる中でも、1)と2)あるいは1)と3)を組み合わせて面修正することがさらに好ましい。この組み合わせにより面修正をすることにより、ダイヤモンドを含む部材を配置した面修正材を用いて修正を行う場合の作業の効率化と研磨用成形体と同一素材もしくは高硬度素材から主としてなる部材を配置した面修正材を用いて修正を行う場合の研磨性能の安定化が同時に得られることになる。
【0032】
特にダイヤモンドを含む部材を配置した面修正材を用いて修正する方法に続いて研磨用成形体と同一素材もしくは高硬度素材から主としてなる部材を配置した面修正材を用いて修正する方法を行うことにより、最終的に被研磨材の品質に影響する研磨性能の安定化が図られるので望ましい方法となる。
【0033】
なお、修正液の流量や、加工圧力、定盤の修正中の回転速度などの修正加工条件に関しても、特に限定されるものではなく、研磨装置の特徴や目的とする定盤面形状等を考慮して設定すれば良い。
【0034】
2)や3)の手法で用いられる面修正部材の微構造は、相対密度が50%以上であることが好ましい。相対密度が100%に近い程、面修正部材の摩耗量は小さくなるが、定盤面修正速度が遅くなるので、定盤面修正自体は行えるものの効率的でない。
【0035】
さらに、面修正部材の修正に携わる面に1μmを超える細孔で構成される部位の総面積が当該修正に携わる面の全面積に対して20〜60%であることが好ましい。このようにすることにより定盤面修正速度を速くすることが可能となる。特にこのとき1μm以下の細孔と面修正部材を構成する粒子からなる部分の総面積に対する構成粒子部分の面積割合は75%以上であることが好ましい。これにより、面修正部材の摩耗量を抑制しながら、定盤面修正速度を高めることが可能となる。
【0036】
面修正材の態様は特に限定されるものではないが、図1〜3に例示する。しかしながら、これらの例示は、本発明をなんら拘束するものではない。
【0037】
図1は両面研磨装置対応の面修正材を例示したものであり、金属素材等から構成されるリング状の形状の面修正基材2にダイヤモンド粒子を含む部材、研磨用成形体と同一素材、研磨用成形体より高硬度素材のいずれかから構成される角柱状の面修正部材1を貼付したタイプのものである。面修正基材の最外周には両面研磨装置に装填して運用できるためにギアが切ってある。
【0038】
図2は両面研磨装置対応の面修正材を例示したものであり、金属素材等から構成される円板状の形状の面修正基材2にダイヤモンド粒子を含む部材、研磨用成形体と同一素材、研磨用成形体より高硬度素材のいずれかから構成される円柱状の面修正部材1を貼付したタイプのものである。面修正基材の最外周には両面研磨装置に装填して運用できるためにギアが切ってある。
【0039】
図3は両面研磨装置対応の面修正材を例示したものであり、ダイヤモンド粒子を含む部材、研磨用成形体と同一素材、研磨用成形体より高硬度素材のいずれかから構成されるリング状の面修正部材1を示している。両面研磨装置に装填して運用するためには最外周にギアが切ってある面修正キャリアに装着して運用する。
【0040】
また、図3において、面修正部材1を完全なリング形状とし、かつ両面研磨装置に装填して運用するために、最外周部分にギアを切ることにより当該面修正部材単独で面修正材として使用できる。
【0041】
片面研磨装置への対応は、例えば図1、図2に記載の面修正材において、外周部分のギア部分をなくして適正な大きさとし、面修正材を面修正基材の片面のみに配することなどにより行うことができる。
【0042】
本発明の面修正方法は、本発明者らの考案した半導体基板、酸化物基板、各種ガラス基板、石英ガラス基板等の基板材料、磁気ヘッド材料、各種ガラス、金属材料、レンズ等の光学材料、建築分野等に使用される石材等の研磨加工に有用である研磨用成形体を用いた研磨用定盤の面修正方法として非常に有用である。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各評価は以下に示した方法によって実施した。
〜研磨用成形体の相対密度〜
100mm×100mm×15mm(厚さ)の平板状試料を作製し、試料とした。この試料を電子天秤で測定した重量と、マイクロメータで測定した形状寸法から研磨用成形体のかさ密度Wを算出した。次に、JIS−R−2205に準じて、研磨用成形体の一部を粉砕し、真密度Wを求め、先に算出した研磨用成形体のかさ密度Wから下式により相対密度を算出した。
【0044】
相対密度(%)=(W/W)×100
〜研磨用成形体の研磨面の微構造〜
研磨用成形体をアクリル樹脂で包埋後、ミクロトームで切断して観察用サンプルを作製した。この観察用サンプルを走査型電子顕微鏡ISI DS−130(明石製作所製)で観察した。各種倍率で撮影した電子顕微鏡写真を無機粒子、細孔それぞれを考慮してインターセプト法により平均径を求めた。また、このときの無機粒子、細孔それぞれを横切る線長をその径とし、その径の和を基に面積の割合を算出した。そして各々の合計から、研磨面の面積に対する非摺擦部分の面積の割合をA、研磨面の面積に対する摺擦部分の面積の割合をBとし、比率A/(A+B)を算出した。
〜研磨用成形体を構成する無機粒子の平均粒子径〜
前記研磨用成形体の研磨面の微構造の観察に準じ、無機粒子部分のみを考慮してインタセプト法により求めた。
〜研磨用成形体の摺擦部分の構成〜
前記研磨用成形体の研磨面の微構造の観察に準じて走査型電子顕微鏡観察を行い、1μm以下の細孔部分と無機粒子部分を考慮してインターセプト法により、無機粒子、1μm以下の細孔部分それぞれを横切る線長の割合から、摺擦部分の面積に対する摺擦部分中の細孔の面積の割合を算出した。
〜研磨用成形体の非摺擦部分の構成〜
前記研磨用成形体の研磨面の微構造の観察に準じて走査型電子顕微鏡観察を行い、1μmより大きい細孔部分を考慮してインターセプト法により、1μmより大きい細孔部分を横切る線長の割合から非摺擦部分の割合を算出した。
〜圧縮強度〜
JIS−R−1608に準拠し、10mm×10mm×7mm(厚さ)の試料を作製し、島津オートグラフIS−10T(島津製作所製)を用い、クロスヘッド速度0.5mm/分で負荷を加えて測定した。
〜定盤面修正試験〜
表1に示した特性の研磨用成形体を、16B両面研磨装置(スピードファム社製)の上下定盤に装着し、定盤における研磨用成形体の表面を平坦に整えた。これを表2に示した面修正材を用い、研磨液を流通させながら定盤面修正試験を行った。なお、用いた研磨液は面修正材にダイヤモンドを含む部材を用いている場合は水とし、それ以外の面修正材の場合は平均粒径8.3μmのアルミナ砥粒を20重量%含有する水系スラリーとした。
〜定盤面修正速度〜
定盤面修正前後の定盤厚さの変化をもとに算出した。実施例1の定盤面修正速度を1.0として他の実施例、比較例は相対値として算出した。
〜研磨速度の安定性〜
所定の形状まで定盤面修正後、6インチ角の石英ガラス基板を被研磨材料として研磨試験を行った。所定研磨量毎に砥粒交換を行い、定盤面修正直後の研磨速度とその後砥粒交換を行ったときの研磨速度の相対関係を比較した。定盤面修正直後の研磨速度に対する砥粒交換1回目後の研磨速度の相対値を研磨速度の安定性と定義した。この値が1.0に近いほど安定していることを示す。
<研磨用成形体の製造>
表1に記載のアルミナ粉末を原料とし、有機物粉末(例えば、ポリビニルアルコール粉末、馬鈴薯でんぷん、メタクリル酸ブチル粉末、パラフィンワックス粉末などの1種類以上)を混合し、その粉末を成形した後、1600℃で焼成して研磨用成形体1を得た。これらの研磨用成形体を前記記載の方法により評価し、その結果を、表2には得られた研磨用成形体の研磨面の微構造の特性を原料の成分と共に示す。
【0045】
【表1】



【表2】



実施例1
番手#200、集中度20のダイヤモンドを含む部材を図2の配置の形態でSUS製のリング形状の修正材基材に貼付して定盤面修正材として前記記載の方法により定盤面修正試験を行った。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】



実施例2
表1に記載のアルミナ粉末を原料とし、有機物粉末(例えば、ポリビニルアルコール粉末、馬鈴薯でんぷん、メタクリル酸ブチル粉末、パラフィンワックス粉末などの1種類以上)を混合し、その粉末を成形した後、1600℃で焼成してアルミナ面修正材を得た。これらを研磨用成形体の評価方法と同様に評価し、その結果を表4に示した。得られたアルミナ面修正材を所定の形状に加工し、図1の配置の形態でSUS製のリング形状の修正材基材に貼付して定盤面修正材として前記記載の方法により定盤面修正試験を行った。結果を表3に示す。
【0047】
【表4】



実施例3
市販の炭化珪素部材(相対密度85%)を炭化珪素面修正材として所定形状に加工し、図1R>1の配置の形態でSUS製のリング形状の修正材基材に貼付して定盤面修正材として前記記載の方法により定盤面修正試験を行った。結果を表3に示す。
【0048】
実施例4
実施例1記載のダイヤモンド面修正材による定盤面修正時間と実施例2に記載のアルミナ面修正材による定盤面修正時間を1:1の配分とし、定盤面修正総時間を実施例2の定盤面修正時間と同一として前記記載の定盤面修正試験をダイヤモンド面修正材による定盤面修正、アルミナ面修正材による定盤面修正の順で実施した。結果を表3に示す。
【0049】
比較例1
定盤面修正材として市販のリング形状の黒鉛鋳鉄製面修正材(内径200φ)を用いて前記記載の定盤面修正試験を実施した。結果を表3に示す。
【0050】
以上、実施例では比較例に比べて研磨速度の安定性を維持したまま面修正速度を高めることが可能である。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体基板、酸化物基板、各種ガラス基板、石英ガラス基板等の基板材料、磁気ヘッド材料、各種ガラス、金属材料、レンズ等の光学材料、建築分野等に使用される石材等の研磨加工に適用できる研磨用成形体及びそれを用いた研磨用定盤の面修正を高速化でき、その後の研磨性能も安定化することができるため有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】両面研磨装置対応の面修正材を例示したものであり、図1中、面修正基材はリング形状となっている。
【図2】両面研磨装置対応の面修正材を例示したものであり、図2中、面修正基材は円板形状となっている。
【図3】両面研磨装置対応の面修正材を例示したものである。
【符号の説明】
1:面修正部材
2:面修正基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として無機粒子からなる研磨用成形体と付帯部品からなる研磨用定盤を研磨加工に用いる際に当該研磨用定盤の面修正を行う方法において、当該面修正に用いられる面修正材の修正に携わる面の一部または全面に、ダイヤモンド粒子を含む部材を配し、かつ当該研磨用定盤及び/または面修正材を互いに摺擦運動させながら修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正する方法。
【請求項2】
面修正に用いられる修正液が遊離砥粒を含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
面修正材の形状がリング状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
主として無機粒子からなる研磨用成形体と付帯部品からなる研磨用定盤を研磨加工に用いる際に当該研磨用定盤の面修正を行う方法において、当該面修正に用いられる面修正材の修正に携わる面の一部または全面に、当該研磨用成形体と同一素材から主としてなる部材を配し、かつ当該研磨用定盤及び/または面修正材を互いに摺擦運動させながら修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正する方法。
【請求項5】
主として無機粒子からなる研磨用成形体と付帯部品からなる研磨用定盤を研磨加工に用いる際に当該研磨用定盤の面修正を行う方法において、当該面修正に用いられる面修正材の修正に携わる面の一部または全面に、当該研磨用成形体を構成する素材の全てに対して高硬度である素材から主としてなる部材を配し、かつ当該研磨用定盤及び/または面修正材を互いに摺擦運動させながら修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正する方法。
【請求項6】
面修正に用いられる修正液が研磨加工プロセスで実使用される遊離砥粒を含む修正液を加えつつ研磨用定盤を面修正することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
面修正材の形状がリング状であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法と請求項4〜7のいずれかに記載の方法とを組み合わせて行うことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法に続いて請求項4〜7のいずれかに記載の方法を行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項4〜7のいずれかに記載の面修正方法に用いられる面修正材であって、当該面修正材の修正に携わる部位となり得る構成物が当該研磨用定盤と同一素材から主としてなることを特徴とする研磨用定盤の面修正材。
【請求項11】
請求項4〜7のいずれかに記載の面修正方法に用いられる面修正材であって、当該面修正材の修正に携わる部位となり得る構成物が当該研磨用定盤を構成する素材の全てに対して高硬度である素材から主としてなることを特徴とする研磨用定盤の面修正材。
【請求項12】
面修正材の修正に携わる部位となり得る構成物の相対密度が50%以上であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の研磨用定盤の面修正材。
【請求項13】
請求項12に記載の面修正材において、当該面修正材の修正に携わる面に1μmを超える細孔で構成される部位の総面積が当該修正に携わる面の全面積に対して20〜60%であることを特徴とする研磨用定盤の面修正材。
【請求項14】
請求項13に記載の面修正材において、当該面修正材の修正に携わる面の1μm以下の細孔と面修正材を構成する粒子からなる部分の総面積に対する構成粒子部分の面積割合が75%以上であることを特徴とする研磨用定盤の面修正材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2004−25412(P2004−25412A)
【公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−189150(P2002−189150)
【出願日】平成14年6月28日(2002.6.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(390005072)東ソー・クォーツ株式会社 (46)
【Fターム(参考)】