説明

研磨装置

【課題】ウエハへの研磨の際、安定したウエハの研磨を行うだけではなく、ウエハの研磨精度も高める。
【解決手段】研磨装置1は、対向配置された上定盤13と下定盤11の定盤間にウエハ5を配して上定盤13と下定盤11とでウエハ5を挟持し、上定盤13によってウエハ5に荷重をかけ、下定盤11を回転させることによりウエハ5を回転させてウエハ5を研磨する。この研磨装置1では、ウエハ5への研磨時間あるいはウエハの累積回転をパラメータとして、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを可変制御し、かつ、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを同期制御する制御部4が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを研磨する研磨装置に関し、特に、ウエハを研磨する際の制御部に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器には、周波数などの電気的特性に優れている水晶振動子が多用されている。この水晶振動子の電気的な特性は、その内部に備えられた水晶振動片の電気的特性に左右される。
【0003】
ここでいう水晶振動片は、大面積の矩形状のウエハから多数個分割形成される。このウエハの表面は平坦に成形されず、微小な凹凸が成形されている。この微量な表面の凹凸が電気的特性に大きく影響するために、ウエハの両主面を研磨加工することにより、ウエハの両主面が平坦に成形される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
下記する特許文献1に記載の研磨装置では、上面が水平に配された下定盤と、この下定盤の上方に位置し、下定盤の上面と対向配置された下面を有する上定盤とが設けられ、これら下定盤の上面と上定盤の下面とでウエハを挟持してウエハの両主面を研磨加工する。
【0005】
下定盤では、上面の中心点を中心軸として上面が時計回りに回転する。また、上定盤では、下面の中心点を中心軸として下面が反時計回りに回転する。
【0006】
また、この研磨装置には、ウエハの研磨の間、経時的に変化する上定盤の荷重に基づき上定盤の荷重を加減制御する圧力制御部が設けられ、ウエハに一定の上定盤の荷重をかけて研磨を行なっている。
【0007】
上記した構成からなる特許文献1に記載の研磨装置によれば、ウエハの研磨の間、上定盤の荷重が変化した場合であっても、常に安定した荷重状態でウエハの研磨を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−138419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した特許文献1に記載の研磨装置では、上定盤の荷重が一定になるよう制御した状態でウエハへの研磨を行なっているので、常に一定の荷重によるウエハの研磨を行うことができる。そのため、上定盤の荷重が一定となる安定したウエハの研磨を行うことができるが、ウエハの研磨精度を高めることを目的とした発明ではなく、ウエハの研磨精度が高いものとはいえない。
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ウエハへの研磨の際、安定したウエハの研磨を行うだけではなく、ウエハの研磨精度も高めた研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる研磨装置は、対向配置された一方の定盤と他方の定盤との定盤間にウエハを配して前記一方の定盤と前記他方の定盤とでウエハを挟持し、前記一方の定盤によってウエハに荷重をかけ、前記他方の定盤を回転させることによりウエハを回転させてウエハを研磨する研磨装置において、ウエハへの研磨時間あるいはウエハの累積回転数をパラメータとして、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを可変制御し、かつ、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを同期制御する制御部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ウエハへの研磨時間あるいはウエハの累積回転数をパラメータとして、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを可変制御し、かつ、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを同期制御する制御部が設けられているので、ウエハへの研磨を行うにつれてウエハへの研磨状態が変化した場合であっても、前記一方の定盤のウエハへの荷重と、前記他方の定盤の回転数とが関係付けられ、研磨精度が高く、安定した滑らかなウエハの研磨を行うことが可能となり、その結果、ウエハへの研磨の際、安定したウエハの研磨を行うだけではなく、ウエハの研磨精度も高めることが可能となる。
【0013】
ところで、前記他方の定盤によりウエハを回転させるウエハの研磨初期段階では、例えば既にウエハを回転させている研磨途中段階と比べて、ウエハにかかる外力の割合のうち、前記一方の定盤によるウエハへの荷重の比率が高くなる。そのため、ウエハの研磨時に前記一方の定盤により常に一定の荷重をウエハにかけた場合、ウエハの研磨初期段階において、ウエハが割れたり、欠けたり、クラックが生じたりするなど、ウエハの外形を損傷させるおそれがある。
【0014】
これに対して、本発明によれば、ウエハへの研磨時間あるいはウエハの累積回転数をパラメータとして、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを可変制御し、かつ、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを同期制御する制御部が設けられるので、ウエハの研磨初期段階においても、ウエハにかかる外力の割合のうち、前記一方の定盤によるウエハへの荷重の比率が高くなるのを抑制することが可能となり、ウエハの研磨時に、ウエハが割れたり、欠けたり、クラックが生じたりするなど、ウエハの外形を損傷させることを抑制することが可能となる。その結果、ウエハへの研磨の際、研磨精度が高く、安定したウエハの研磨を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、前記制御部が、ウエハへの研磨時間あるいはウエハの累積回転数をパラメータとして、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを可変制御し、かつ、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを同期制御するので、ウエハの研磨初期段階だけでなく、ウエハを回転させている研磨途中段階や、ウエハの研磨最終段階においても、前記一方の定盤によるウエハへの荷重や、前記他方の定盤の回転によってかかるウエハへの外力のそれぞれの割合を常に安定させてウエハの研磨を行うことが可能となる。
【0016】
前記構成において、前記制御部は、前記一方の定盤のウエハへの荷重と、前記他方の定盤の回転数を段階的に可変させてもよい。
【0017】
この場合、前記制御部は、前記一方の定盤のウエハへの荷重と、前記他方の定盤の回転数を段階的に可変させるので、ウエハへの研磨時間毎に、前記一方の定盤のウエハへの荷重と、前記他方の定盤の回転数とを設定することが可能となり、ウエハの研磨加工の精度を高めることが可能となる。
【0018】
前記構成において、前記他方の定盤の回転数を制御する前に、前記一方の定盤のウエハへの荷重を制御してもよい。
【0019】
この場合、前記他方の定盤の回転数を制御する前に、前記一方の定盤のウエハへの荷重を制御するので、前記ウエハの研磨開始時における前記他方の定盤によるウエハの回転がし易くなり、前記ウエハの研磨開始時における前記他方の定盤の回転によってウエハが割れたり、欠けたり、クラックが生じたりするなど、ウエハの外形を損傷させることを抑制することが可能となる。
【0020】
前記構成において、前記一方の定盤のウエハへの荷重には、エアシリンダが用いられてもよい。
【0021】
この場合、前記一方の定盤のウエハへの荷重には、エアシリンダが用いられるので、前記一方の定盤の荷重の可変制御を容易にすることが可能となる。
【0022】
前記構成において、前記制御部は、前記一方の定盤のウエハへの荷重を、予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理してもよい。
【0023】
この場合、前記制御部は、前記一方の定盤のウエハへの荷重を予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理するので、前記一方の定盤のウエハへの荷重制御の分解能を上げることが可能となり、前記一方の定盤のウエハへの荷重の可変制御の精度を向上させることが可能となる。
【0024】
前記構成において、前記制御部は、前記他方の定盤の回転数を、予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理してもよい。
【0025】
この場合、前記制御部は、前記他方の定盤の回転数を予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理するので、前記他方の定盤の回転数制御の分解能を上げることが可能となり、前記他方の定盤の回転数の可変制御の精度を向上させることが可能となる。
【0026】
前記構成において、前記制御部は、前記一方の定盤のウエハへの荷重を、PID制御してもよい。
【0027】
この場合、前記制御部は、前記一方の定盤のウエハへの荷重をPID制御するので、前記一方の定盤のウエハへの荷重の可変制御の精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる研磨装置によれば、ウエハへの研磨の際、安定したウエハの研磨を行うだけではなく、ウエハの研磨精度も高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本実施形態にかかる研磨装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施形態にかかるエアシリンダの概略構成図である。
【図3】図3は、本実施形態にかかる下定盤の回転数と研磨時間との関係を示したグラフ図である。
【図4】図4は、本実施形態にかかる上定盤のウエハへの荷重と研磨時間との関係を示したグラフ図である。
【図5】図5は、本実施形態の他の形態にかかる研磨装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態では、ウエハとして厚みで周波数が決定されるATカット水晶ウエハに本発明を適用した場合を示す。
【0031】
本実施形態にかかる研磨装置1では、図1に示すように、水平に配された上面12を有する下定盤11(本発明でいう他方の定盤)と、この下定盤11の上方に位置し、水平に配された下面14を有する上定盤13(本発明でいう一方の定盤)とが設けられている。なお、上定盤13と下定盤11とから一対の定盤が構成され、上定盤13と下定盤11とが垂直方向に対向配置され、これら上定盤13の下面14と下定盤11の上面12とは対面する。
【0032】
上定盤13は、厚肉の円盤状に形成され、その下面14は、一対の定盤(上定盤13と下定盤11)によりウエハ5を挟持した際にウエハ5と直に接する平坦な研磨面として形成されている。また、上定盤13は、回転機構(図示省略)によりその下面14の径の中心点を中心軸にして下面14が面方向(反時計回り)に回転するよう自転する。
【0033】
下定盤11は、厚肉の円盤状に形成され、その上面12は、一対の定盤によりウエハ5を挟持した際にウエハ5と直に接する平坦な研磨面として形成されている。また、下定盤11は、モータ31を含む回転機構(図示省略)によりその上面12の径の中心点を中心軸にして上面12が面方向(反時計回り)に回転するよう自転する。
【0034】
また、下定盤11の厚さ(高さ)は上定盤13の厚さより厚く、下定盤11の径は上定盤13の径より長く設定されている。さらに、下定盤11の研磨面である上面12には、ウエハ5を保持する複数のキャリア15が設けられ、この上面12の外周上部にキャリア15を自転させるためのギア部(図示省略)が設けられている。ギア部は、下定盤11の研磨面である上面12の外周端に形成されたインターナルギア(図示省略)と、下定盤11の径の中心点領域に設けられた中心ギアとから構成されている。中心ギアは、インターナルギアと中心ギアとは異なる方向(時計回りと反時計回り)に回転する。
【0035】
また、研磨装置1には、図1に示すように、上定盤13に荷重をかける圧力機構2と、下定盤11を回転させる回転機構3と、これら圧力機構2および回転機構3を同期制御する制御部4と、が設けられている。
【0036】
圧力機構2には、上定盤13に荷重をかけるエアシリンダ211と、エアシリンダ211の圧力を検出する圧力センサ215と、圧力センサ215で検出した空気圧力を電気信号にA/D変換して制御部4に出力するA/D変換部216と、制御部4からの圧力に関する電気信号にD/A変換するD/A変換部219と、D/A変換部219によってD/A変換した電気信号を空気圧力に変換する電空レギュレータ217とが設けられている。なお、エアー源から空気が、電空レギュレータ217の制御弁218を介して圧力調整されて圧力機構2に供給される。圧力の制御に関して、圧力センサ215から得られる電気信号をフィードバックして、圧力センサ215の電気信号が、予め測定された実際の圧力値になるように電空レギュレータ217の制御圧力をPID制御する。このPID制御により、上定盤13のウエハ5への荷重を制御する。
【0037】
エアシリンダ211には、図1,2に示すように、他端が上定盤13に係合され、一端にピストン213が設けられたロッド212が設けられ、エアー源から供給される空気によりピストンが垂直方向に変位移動する。
【0038】
ところで、研磨装置1では、ウエハ5の研磨前に、上定盤13の自重を測定する。この測定では、図2に示すように、ピストン213をエアシリンダ211の筐体214の上限位置に配置し、この上限位置からエアシリンダ211内の空気圧を下げて(空気を抜いて)筐体214の下限位置までピストン213を下ろす。その後、エアシリンダ211へ空気を供給して、空気圧を上げ、ピストン213を徐々に上げていく。そして、ピストン213を筐体214の中間位置を越えたぐらいまで上げて、その後、エアシリンダ211内の空気圧を下げて筐体214の中間位置を越えたぐらいまで下げる。このピストン213が筐体214の中間位置を越える移動(変位)をした時、図示しない中間位置センサーをON/OFFし、このON/OFFによりピストン213の位置を検出する。そして、このピストン213を筐体214の中間位置を跨って往復する工程を複数回行うことで、この筐体214の中間位置における上定盤13の荷重に対する圧力を計測し、この計測した上定盤13の荷重を上定盤13の自重とする。
【0039】
なお、この上定盤13の自重のデータを計測するために、予め圧力センサ215の圧力に対する電圧値と、上定盤13の荷重のデータを計測および算出し保存する。具体的に、この圧力センサ215の電圧値のデータをn次曲線で近似し、この近似したデータから逆算して荷重のデータを得て、これらデータをデータテーブルに保存する。
【0040】
回転機構3には、下定盤11を回転させるモータ31と、制御部4からの回転に関する電気信号を回転信号に自動制御し、モータ31に回転信号を出力するインバータ32とが、設けられている。
【0041】
制御部4は、ウエハ5への研磨時間をパラメータとして、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを可変制御し、かつ、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを同期制御する。具体的に、制御部4は、圧力センサ215が検出してA/D変換部216を介して入力する電気信号に基づいて、電空レギュレータ217への圧力に関する電気信号と、インバータ32に出力する回転に関する電気信号とを決定(可変制御)し、これら電気信号を同期させた状態で電空レギュレータ217とインバータ32に出力(同期制御)する。なお、本実施形態における制御部4での同期制御により、図3,4に示すように、ウエハ5への研磨工程において、上定盤13のウエハ5への荷重と、下定盤11の回転数を段階的に可変させる。
【0042】
また、圧力機構2および制御部4は、上定盤13のウエハ5への荷重(エアシリンダ211にかける圧力)を、予め設定したスケールに基づいて構築された一次関数(y1=a11+b1)に従ってスケーリング処理(スケールアップまたはスケールダウン)している。具体的に、圧力センサ215で検出した圧力に対する電圧値をスケールアップ(増幅)させて(例えば、0〜2Vのレンジを0〜10V)、圧力センサ215のセンシングの精度の向上を図る。電圧値をスケールアップした電圧値を制御部4を介して電空レギュレータ217で空気圧力に変換する際、圧力が高くなり、その結果、荷重がかかりすぎるといった問題がある。そこで、制御弁218における最大電圧をスケールダウンさせて電圧値のボリュームを絞り(例えば、0〜10Vのレンジを0〜5V)、制御部4において0〜10Vで4096ステップになるのを、電空レギュレータ217において0〜5Vで4096ステップにし、上定盤13のウエハ5への実際の荷重の制御分解能を上げる。
【0043】
また、回転機構3および制御部4は、下定盤11の回転数を予め設定したスケールに基づいて構築された一次関数(y2=cx2+d)に従ってスケーリング処理(スケールアップまたはスケールダウン)している(モータ31の回転数)。具体的に、圧力センサ215で検出した圧力に対する電圧値をスケールアップ(増幅)させて(例えば、0〜2Vのレンジを0〜10V)、圧力センサ215のセンシングの精度の向上を図る。電圧値をスケールアップした電圧値を制御部4を介してインバータ32で回転信号に自動制御する際、回転数が大きくなりすぎるといった問題がある。そこで、インバータ32における最大電圧をスケールダウンさせて電圧値のボリュームを絞り(例えば、0〜10Vのレンジを0〜5V)、制御部4において0〜10Vで4096ステップになるのを、インバータ32において0〜5Vで4096ステップにし、下定盤11を回転させるモータ31へ出力する回転信号の実際の回転数(回転速度)の制御分解能を上げる。
【0044】
上記した構成の研磨装置1では、下定盤11の上面12と上定盤13の下面14との定盤間でキャリア15に保持されたウエハ5を挟持し、研磨材である砥粒をその定盤間に注入する。そして、図1に示すように、制御部4により圧力機構2と回転機構3とを可変制御し、かつ、同期制御して、上定盤13によってウエハ5に荷重をかけながら、下定盤11を回転させることによりウエハ5を回転させて、ウエハ5の両主面51を研磨する。
【0045】
なお、本実施形態では、図3,4に示すように、ウエハ5への研磨工程において、上定盤13のウエハ5への荷重と、下定盤11の回転数を4段階に分けて可変させている。
【0046】
詳説すると、下定盤11の上面12と上定盤13の下面14との間でウエハ5を挟持した後、上定盤13の予め設定した初期加重(本実施形態では自重の3kg)をウエハ5にかけた状態で、予め設定した時間(本実施形態では約120sec)で、下定盤11の回転を加速させて回転数を上げていき2回転で10rpmに回転数を上げる。その際、上定盤13のウエハ5への荷重を、3kgから20kgに加重する。
【0047】
約120sec後、20kgになった上定盤13のウエハ5への荷重と、10rpmになった下定盤11の回転数とを一定にして、下定盤11を10回転させる。なお、この工程を第1工程とする。
【0048】
第1工程後、予め設定した時間(本実施形態では約120sec)で、下定盤11の回転数を10rpmから15rpmに上げる。その際、上定盤13のウエハ5への荷重を、20kgから25kgに加重する。
【0049】
約120sec後、25kgになった上定盤13のウエハ5への荷重と、15prmになった下定盤11の回転数とを一定にして、下定盤11を20回転させる。なお、この工程を第2工程とする。
【0050】
第2工程後、予め設定した時間(本実施形態では約120sec)で、下定盤11の回転数を15rpmから20rpmに上げる。その際、上定盤13のウエハ5への荷重を、25kgから30kgに加重する。
【0051】
約120sec後、30kgになった上定盤13のウエハ5への荷重と、20prmになった下定盤11の回転数とを一定にして、下定盤11を500回転させる。なお、この工程を第3工程とする。
【0052】
第3工程後、予め設定した時間(本実施形態では約120sec)で、下定盤11の回転数を20rpmから10rpmに下げる。その際、上定盤13のウエハ5への荷重を、30kgから20kgに減らす。
【0053】
約120sec後、20kgになった上定盤13のウエハ5への荷重と、10rpmになった下定盤11の回転数とを一定にして、下定盤11を10回転させる。なお、この工程を第4工程とする。
【0054】
第4工程後、予め設定した時間(本実施形態では約120sec)で、下定盤11の回転数を10rpmから0rpmに下げる。つまり、下定盤11の回転を止める。その際、上定盤13のウエハ5への荷重を、20kgから、上定盤13の自重である3kgに減らす。
【0055】
約120sec後、下定盤11の回転が止まり、上定盤13と下定盤11によるウエハ5の挟持を止めて、ウエハ5の研磨を終了する。
【0056】
なお、研磨工程における研磨時間(下記参照)や、上定盤13の自重の値や、上定盤13のウエハ5への荷重や、下定盤11の回転数などの各数値に関して、これら数値は好適な一例であり、これに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0057】
上記したように、本実施形態にかかる研磨装置1によれば、ウエハ5がキャリア15に保持され、ウエハ5の両主面が上定盤13と下定盤11とによって挟持される。ウエハ5の両主面が上定盤13と下定盤11とによって挟持された状態で砥粒が上定盤13と下定盤11との間に注入される。そして、下定盤11が回転し、この回転にともなってキャリア15を回転させることで、ウエハ5の両主面51に一対の定盤の研磨面(上定盤13の下面14と、下定盤11の上面12)が砥粒を介在させてすりあわされ、ウエハ5の両主面51が研磨される。そして、図3,4に示す第1工程〜第4工程、およびその間の工程に示すように、ウエハ5への研磨時間をパラメータとして、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを可変制御し、かつ、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤の回転数とを同期制御する。その結果、ウエハ5への研磨の際、安定したウエハ5の研磨を行うだけではなく、ウエハ5の研磨精度も高めることができる。
【0058】
すなわち、本実施形態にかかる研磨装置1によれば、ウエハ5への研磨時間をパラメータとして、上定盤13のウエハへの荷重と下定盤11の回転数とを可変制御し、かつ、上定盤13のウエハへの荷重と下定盤11の回転数とを同期制御する制御部4が設けられているので、ウエハ5への研磨を行うにつれてウエハ5への研磨状態が変化した場合であっても、上定盤13のウエハ5への荷重と、下定盤11の回転数とが関係付けられ、研磨精度が高く、安定したウエハ5の研磨を行うことができ、その結果、滑らかなウエハ5の研磨を行うことができる。
【0059】
また、下定盤11によりウエハ5を回転させるウエハ5の研磨初期段階(図3,4に示す第1工程前)では、例えば既にウエハ5を回転させている研磨途中段階と比べて、ウエハ5にかかる外力の割合のうち、上定盤13によるウエハ5への荷重の比率が高くなる。そのため、ウエハ5の研磨時に上定盤13により常に一定の荷重をウエハ5にかけた場合、ウエハ5の研磨初期段階において、ウエハ5が割れたり、欠けたり、クラックが生じたりするなど、ウエハ5の外形を損傷させるおそれがある。
【0060】
これに対して、本実施形態にかかる研磨装置1によれば、ウエハ5への研磨時間をパラメータとして、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを可変制御し、かつ、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを同期制御する制御部4が設けられるので、ウエハ5の研磨初期段階においても、ウエハ5にかかる外力の割合のうち、上定盤13によるウエハ5への荷重の比率が高くなるのを抑制することができ、ウエハ5の研磨時に、ウエハ5が割れたり、欠けたり、クラックが生じたりするなど、ウエハ5の外形を損傷させることを抑制することができる。その結果、ウエハ5への研磨の際、研磨精度が高く、安定したウエハ5の研磨を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態にかかる研磨装置1によれば、制御部4により、ウエハ5への研磨時間をパラメータとして、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを可変制御し、かつ、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを同期制御するので、ウエハ5の研磨初期段階だけでなく、ウエハ5を回転させている研磨途中段階や、ウエハ5の研磨最終段階においても、上定盤13によるウエハ5への荷重や、下定盤11の回転によってかかるウエハ5への外力を安定させてウエハ5の研磨を行うことができる。
【0062】
また、制御部4は、上定盤13のウエハ5への荷重と、下定盤11の回転数を段階的に(本実施形態では第1工程〜第4工程)可変させるので、ウエハ5への研磨時間毎に、上定盤13のウエハ5への荷重と、下定盤11の回転数とを設定することができ、ウエハ5の研磨加工の精度を高めることができる。
【0063】
また、上定盤13のウエハ5への荷重には、エアシリンダ211が用いられるので、上定盤13の荷重の可変制御を容易にすることができる。
【0064】
また、制御部4は、上定盤13のウエハ5への荷重を予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理するので、上定盤13のウエハ5への荷重制御の分解能を上げることができ、上定盤13のウエハ5への荷重の可変制御の精度を向上させることが可能となる。
【0065】
また、制御部4は、下定盤11の回転数を予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理するので、下定盤11の回転数制御の分解能を上げることができ、下定盤11の回転数の可変制御の精度を向上させることが可能となる。
【0066】
また、制御部4は、上定盤13のウエハ5への荷重をPID制御するので、上定盤13のウエハ5への荷重の可変制御の精度を向上させることが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態では、ウエハ5にATカット水晶ウエハを用いているが、これに限定されるものではなく、他の圧電単結晶や圧電セラミック等の圧電材料や、半導体材料等の他の電子部品材料であってもよい。
【0068】
また、本実施形態では、ウエハ5の両主面の研磨を行っているが、これに限定されるものではなく、ウエハ5の任意の部位の研磨を行うことが可能である。
【0069】
また、本実施形態では、制御部4は、ウエハ5への研磨時間をパラメータとして、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを可変制御し、かつ、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを同期制御しているが、パラメータはウエハ5への研磨時間に限定されるものではなく、制御対象となっている定盤(本実施形態では下定盤13)の累積回転数であってもよい。
【0070】
また、本実施形態では、ウエハ5に荷重をかける上定盤13を上定盤13とし、ウエハ5を回転させる下定盤11を下定盤11とし、これら上定盤13と下定盤11とを垂直方向に対向配置された上定盤13と下定盤11としているが、これは好適な形態であり、これに限定されるものではなく、これら上定盤13と下定盤11とが対向配置されていれば、他の形態であってもよい。例えば、水平方向に対向配置された例えば右定盤と左定盤であってもよい。
【0071】
また、本実施形態では、上定盤13と下定盤11とを回転させる構成としているが、これに限定されるものではなく、下定盤11のみを回転させる構成としてもよい。
【0072】
また、本実施例では、制御部4により、ウエハ5への研磨初期段階において(図3,4に示す第1工程参照)、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転とを同時に開始しているが、これに限定されるものではなく、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転数とを同期制御していれば、上定盤13のウエハ5への荷重と下定盤11の回転とを同時に開始しなくてもよく、下定盤11の回転を開始する前に、上定盤13のウエハ5への荷重を制御してもよい。この場合、下定盤11の回転数を制御する前に、上定盤13のウエハ5への荷重を制御するので、ウエハ5の研磨初期段階における下定盤11によるウエハ5の回転がし易くなり、ウエハ5の研磨開始時における下定盤11の回転によってウエハ5が割れたり、欠けたり、クラックが生じたりするなど、ウエハ5の外形を損傷させることを抑制することができる。
【0073】
また、本実施例では、圧力機構2としてエアシリンダを用いた構成としているが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、モータ222を用いた圧力機構2であってもよい。
【0074】
図5に示す圧力機構2は、上定盤13を支える支持部221と、上定盤13を昇降させるモータ222と、モータ222の昇降機能を制御するためのストッパ部223と、上定盤13の加重を制御する圧力制御部224とから構成されている。支持部221とモータ222と圧力制御部224とが、ワイヤやチェーンなどの連結部225により連結されている。
【0075】
ストッパ部223は、支持部221を挿通可能な形状に形成され、ストッパ部223を挿通する支持部221の挿通量、すなわち支持部221の昇降移動量によりモータ222による上定盤13の昇降を制御する。詳しくは、ストッパ部223には、支持部221の昇降移動量の上限及び下限のリミットスイッチがあり、これら上限および下限のリミットスイッチのON/OFFによりストッパ部223による上定盤13の昇降移動量が制限される。
【0076】
また、圧力制御部224には、上定盤13のウエハ5への荷重を測定する測定部226と、上定盤側の荷重が付勢力に対する抗力となる弾性部227と、が設けられている。この圧力制御部224では、測定部226による上定盤13の自重の測定値に基づいて、ウエハ5の研磨の間の上定盤13側の荷重が算出され、制御部4による圧力制御により荷重に変動があった場合にその過不足分の荷重が上定盤13側の荷重に加減される。なお、測定部226には、デジタルフォースゲージが用いられ、弾性部227には、スプリングが用いられている。
【0077】
また、圧力制御部224には、弾性部227における調整機能を制御するロック部228が設けられている。このロック部228には、エアシリンダが用いられている。ロック部228により、弾性部227の付勢力に対する抗力が無い状態の位置において弾性部227の付勢力に対する抗力が遮断される。なお、ここでいう弾性部227の付勢力に対する抗力が無い状態の位置とは、上定盤13の荷重を測定部226により図ることができない位置のことをいう。本実施形態では、上定盤13を下定盤11上に配した最下位の位置を、弾性部227の付勢力に対する抗力が無い状態の位置とする。
【0078】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、ウエハを研磨する研磨装置に適用できる。特に、電子部品で用いられるウエハに有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 研磨装置
11 下定盤(他方の定盤)
13 上定盤(一方の定盤)
15 キャリア
2 圧力機構
211 エアシリンダ
212 ロッド
213 ピストン
214 エアシリンダの筐体
215 圧力センサ
216 A/D変換部
217 電空レギュレータ
218 制御弁
219 D/A変換部
221 支持部
222 モータ
223 ストッパ部
224 圧力制御部
225 連結部
226 測定部
227 弾性部
228 ロック部
3 回転機構
31 モータ
32 インバータ
4 制御部
5 ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一方の定盤と他方の定盤との定盤間にウエハを配して前記一方の定盤と前記他方の定盤とでウエハを挟持し、前記一方の定盤によってウエハに荷重をかけ、前記他方の定盤を回転させることによりウエハを回転させてウエハを研磨する研磨装置において、
ウエハへの研磨時間あるいはウエハの累積回転数をパラメータとして、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを可変制御し、かつ、前記一方の定盤のウエハへの荷重と前記他方の定盤の回転数とを同期制御する制御部が設けられたことを特徴とする研磨装置。

【請求項2】
請求項1に記載の研磨装置において、
前記制御部は、前記一方の定盤のウエハへの荷重と、前記他方の定盤の回転数を段階的に可変させることを特徴とする研磨装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の研磨装置において、
前記他方の定盤の回転数を制御する前に、前記一方の定盤のウエハへの荷重を制御することを特徴とする研磨装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の研磨装置において、
前記一方の定盤のウエハへの荷重には、エアシリンダが用いられたことを特徴とする研磨装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の研磨装置において、
前記一方の定盤のウエハへの荷重を、予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理することを特徴とする研磨装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の研磨装置において、
前記他方の定盤の回転数を、予め設定したスケールに基づいてスケーリング処理することを特徴とする研磨装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の研磨装置において、
前記一方の定盤のウエハへの荷重を、PID制御することを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−41996(P2011−41996A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190350(P2009−190350)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】