砥石工具による加工方法および加工装置
【課題】研削砥石による研削加工や砥石ブレードによる切削加工を効率良く実施することができる砥石工具による加工方法および加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物に砥石工具を作用せしめて被加工物に加工を施す砥石工具による加工方法であって、被加工物保持部材は透明体によって形成されており、被加工物保持部材の保持面の反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することによる砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す。
【解決手段】被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物に砥石工具を作用せしめて被加工物に加工を施す砥石工具による加工方法であって、被加工物保持部材は透明体によって形成されており、被加工物保持部材の保持面の反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することによる砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア基板や炭化珪素基板等を砥石工具としての研削砥石によって研削したりシリコン基板等からなるウエーハを砥石工具としての砥石ブレードによって切削する砥石工具による加工方法および加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイス製造工程においては、略円板形状であるサファイア基板や炭化珪素基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って切断することにより光デバイスが形成された領域を分割して個々の光デバイスを製造している。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
サファイア基板や炭化珪素基板は、表面に光デバイスが形成される前に研削装置によって表面および裏面を研削することによりうねりを除去するとともに所定の厚みに形成される。
【0004】
また、シリコン基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画された複数の矩形領域にIC、LSI等のデバイスが形成されたウエーハは、一般に砥石ブレードからなる切削ブレードを備えた切削装置によってストリートに沿って切断され、個々のデバイスに形成される。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2859478号
【特許文献2】特開2004−303855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、サファイア基板や炭化珪素基板はモース硬度が高いため、表面および裏面を研削して所定の厚みに仕上げるには相当の加工時間を要し生産性が悪いという問題がある。
また、ウエーハを砥石ブレードからなる切削ブレードによって切断して個々のデバイスに形成すると、デバイスの周縁に欠けが生じてデバイスの抗折強度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、研削砥石による研削加工や砥石ブレードによる切削加工を効率良く実施することができる砥石工具による加工方法および加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術課題を解決するために、本発明によれば、被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物に砥石工具を作用せしめて被加工物に加工を施す砥石工具による加工方法であって、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有する被加工物保持部材を備えた被加工物保持手段と、該被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物を加工する砥石工具を備えた加工手段と、を具備する加工装置において、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振するレーザー光線照射手段を具備し、
該レーザー光線照射手段によって照射されたレーザー光線を該被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明による砥石工具による加工方法および加工装置においては、被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施すので、被加工物を効率よく効果的に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成された加工装置としての研削装置の斜視図。
【図2】図1に示す研削装置に装備される被加工物保持機構を示す斜視図。
【図3】図2に示す被加工物保持機構の構成部材を分解して示す斜視図。
【図4】図2に示す被加工物保持機構の要部断面図。
【図5】図1に示す研削装置によって研削加工される被加工物としてのサファイア基板を保護部材に貼着する保護部材貼着工程の説明図。
【図6】図1に示す研削装置によって図5に示すサファイア基板を研削加工する研削工程の説明図。
【図7】図6に示す研削工程におけるサファイア基板と研削砥石との関係を示す説明図。
【図8】本発明に従って構成された加工装置としての切削装置の斜視図。
【図9】図8に示す切削装置に装備される被加工物保持機構の構成部材を分解して示す斜視図。
【図10】図9に示す被加工物保持機構の要部断面図。
【図11】図8に示す切削装置によって切削加工される被加工物としてウエーハを環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの上面に貼着した状態を示す斜視図。
【図12】図8に示す切削装置によって図11に示すウエーハを切削加工する切削工程の説明図。
【図13】図12に示す切削工程の要部説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る砥石工具による加工方法および加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には本発明に従って構成された加工装置としての研削装置の斜視図が示されている。
図1に示す研削装置2は、全体を番号20で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング20は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ実質上鉛直に上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0014】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0015】
スピンドルユニット32は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための駆動手段としてのサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端には円板形状の工具装着部材324が設けられている。なお、工具装着部材324には、周方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔(図示していない)が形成されている。この工具装着部材324の下面に砥石工具としての研削工具325が装着される。研削工具325は、円環状のホイール基台326と該ホイール基台326の下面に装着される複数の研削砥石327とからなっており、ホイール基台326が工具装着部材324の下面に締結ボルト328によって取付けられる。
【0016】
図示の実施形態における研削装置2は、上記研削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削ユニット送り機構33を備えている。この研削ユニット送り機構33は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びる雄ねじロッド331を具備している。この雄ねじロッド331は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材332および333によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材332には雄ねじロッド331を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ334が配設されており、このパルスモータ334の出力軸が雄ねじロッド331に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ねじ穴が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド331が螺合せしめられている。従って、パルスモータ334が正転すると移動基台31即ち研削ユニット3が下降即ち前進(研削送り)せしめられ、パルスモータ334が逆転すると移動基台31即ち研削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0017】
図示の実施形態における研削装置2は、装置ハウジング20の主部21には被加工物保持機構4が配設されている。この被加工物保持機構4について、図2乃至図4を参照して説明する。
図2乃至図4に示す被加工物保持機構4は、上記装置ハウジング20の主部21上に前後方向(直立壁22の前面に垂直な方向)である矢印23aおよび23bで示す方向に延在する一対の案内レール23、23上に移動可能に配設された移動基台41と、該移動基台41上に配設された被加工物保持手段5とを含んでいる。移動基台41は矩形状に形成され、下面には一対の案内レール23、23に嵌合する一対の被案内溝411、411が設けられており、この被案内溝411、411を案内レール23、23に嵌合することにより、移動基台41は案内レール23、23に沿って移動可能に構成される。このようにして案内レール23、23上に移動可能に配設された移動基台41は、移動手段42によって一対の案内レール23に沿って矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめる。移動手段42は、一対の案内レール23間に配設され案内レール23と平行に延びる雄ねじロッド421と、該雄ねじロッド421を回転駆動するサーボモータ422を具備している。雄ねじロッド421は、上記移動基台41に設けられたねじ穴412と螺合して、その先端部が軸受部材423によって回転自在に支持されている。サーボモータ422は、その駆動軸が雄ねじロッド421の基端と伝動連結されている。従って、サーボモータ422が正転すると移動基台41が矢印23aで示す方向に移動し、サーボモータ422が逆転すると移動基台41が矢印23bで示す方向に移動せしめられる。
【0018】
上述した移動基台41上に配設される被加工物保持手段5は、支持部材51と、該支持部材51に回転可能に支持される回転筒52と、該回転筒52の上端に装着される被加工物保持部材53とを具備している。支持部材51は、図4に示すようにベース部511と、該ベース部511の中心部に形成された開口511dの上方に突出して形成された円筒状の支持部512とからなっている。ベース部511の上壁511aには環状の嵌合凸部511bが設けられている。この環状の嵌合凸部511bが形成された上壁511aには嵌合凸部511bの上面に開口する通路511cが設けられており、この通路511cが図示しない吸引手段に連通されている。
【0019】
上記支持部材51に回転可能に支持される回転筒52は、下面に支持部材51を構成するベース部511の上壁511aに設けられた環状の嵌合凸部511bに嵌合する環状溝521が設けられている。また、回転筒52には、環状溝521に開口するとともに上面に開口する吸引通路522が形成されている。なお、回転筒52の下部外周には、環状の歯車523が設けられている。このように構成された回転筒52は円筒状の支持部512を囲繞して配設され、環状溝521を支持部材51を構成するベース部511の上壁511aに設けられた環状の嵌合凸部511bに嵌合するとともに、支持部材51を構成する支持部512に軸受け54によって回転可能に支持される。このように回転筒52が支持部材51を構成する支持部512に回転可能に支持された状態で、図2に示すように環状の歯車523がベース部511内に配設されたサーボモータ55の駆動軸に装着された駆動歯車56に噛み合うようになっている。
【0020】
上記回転筒52の上端に装着される被加工物保持部材53は、ガラス板等の透明部材によって円板状に形成されており、回転筒52の上面に適宜の接着剤によって装着されている。この被加工物保持部材53の上面には、外周部に環状の吸引溝531が形成されている。また、被加工物保持部材53には、環状の吸引溝531と上記回転筒52に設けられた吸引通路522と連通する通路532が設けられている。従って、図示しない吸引手段を作動すると、上記支持部材51を構成するベース部511の上壁511aに設けられた通路511c、回転筒52に設けられた環状溝521および吸引通路522、通路532を介して環状の吸引溝531に負圧が作用せしめられる。
【0021】
図4を参照して説明を続けると、上記支持部材51内には、レーザー光線照射手段57が配設されている。このレーザー光線照射手段57は、後述する被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射部571から発振する。レーザー光線照射手段57の照射部571から発振されたパルスレーザー光線は、上記支持部材51を構成する円筒状の支持部512を通して後述するように研削砥石327に照射される。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、上記被加工物保持機構4を構成する被加工物保持手段5の移動方向両側には、横断面形状が逆チャンネル形状であって、上記一対の案内レール23、23や雄ねじロッド421およびサーボモータ422等を覆っている蛇腹手段43および44が付設されている。蛇腹手段43および44はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段43の前端は主部21の前面壁に固定され、後端は被加工物保持機構4の被加工物保持手段5を構成する支持部材51の前端面に固定されている。蛇腹手段44の前端は被加工物保持手段5を構成する支持部材51の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。被加工物保持手段5が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段43が伸張されて蛇腹手段44が収縮され、被加工物保持手段5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段43が収縮されて蛇腹手段44が伸張せしめられる。
【0023】
図示の実施形態における研削装置2は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図5の(a)および(b)には、上記研削装置2によって研削加工されるサファイア基板10の斜視図が示されている。サファイア基板10は、裏面10bがガラス板等の透明部材によって円板状に形成され保護部材11の表面にボンド剤を介して貼着される(保護部材貼着工程)。従って、サファイア基板10は、表面10aが上側となる。
【0024】
次に、図1に示す研削装置2における被加工物載置域24に位置付けられている被加工物保持手段5を構成する被加工物保持部材53の保持面(上面)上に、上述したようにサファイア基板10が貼着された保護部材11側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、上述したように被加工物保持部材53に形成された環状の吸引溝531に負圧を作用せしめ、被加工物保持部材53の保持面(上面)上に載置されサファイア基板10が貼着された保護部材11を吸引保持する。
【0025】
被加工物保持部材53の保持面(上面)上にサファイア基板10が貼着された保護部材11を吸引保持したならば、移動手段42(図2および図3参照)を作動して被加工物保持機構4を矢印23aで示す方向に移動し、被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10を研削砥石327の下方の研削域25に位置付ける。なお、この状態においては被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10は、図6および図7に示すようにその中心(P)が研削砥石327が通過する位置に位置付けられる。なお、被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10を研削砥石327の下方の研削域25に位置付けられた状態においては、レーザー光線照射手段57の照射部571が研削砥石327と対向する位置に位置付けられる。このようにして、サファイア基板10が研削域25に位置付けられたならば、上記サーボモータ55を駆動して被加工物保持手段5を矢印5aで示す方向に300rpmで回転し、上記サーボモータ323を駆動して研削工具325を矢印325aで示す方向に6000rpmで回転するとともに、上記研削ユニット送り機構33のパルスモータ334を正転駆動して研削ユニット3を下降せしめて(研削送り)、研削砥石327の研削面である下端面を被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10の上面(表面10a)に押圧せしめる。そして、研削工具325を所定量下降せしめて(研削送り)、サファイア基板10を所定の厚みに研削する(研削工程)。この研削工程においては、レーザー光線照射手段57を作動して被加工物保持部材53、保護部材11およびサファイア基板10に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射部571から発振する。レーザー光線照射手段57から発振されたパルスレーザー光線は、透明部材によって形成された被加工物保持部材53、透明部材によって形成された保護部材11およびサファイア基板10を通して研削砥石327の研削面に研削砥石327の幅に相当する直径を有するスポットSで照射される。なお、研削砥石327の研削面に照射されるパルスレーザー光線は、波長が532nm、平均出力は2.5W、繰り返し周波数が10Hz、スポット径が10mmに設定されている。このようにサファイア基板10を通して研削砥石327における加工部にパルスレーザー光線を照射することにより研削砥石327が加熱され、加熱された研削砥石327による熱加工と機械加工の複合加工が施されるので、サファイア基板10を効率よく効果的に研削することができる。
【0026】
次に、本発明に従って構成された加工装置としての切削装置について、図8乃至図10を参照して説明する。
図8には本発明に従って構成された加工装置としての切削装置の斜視図が示されている。図8に示された切削装置6は、静止基台60と、該静止基台60に切削送り方向(X軸方向)である矢印Xで示す方向に移動可能に配設され被加工物を保持する被加工物保持機構7と、静止基台60に切削送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)である矢印Yで示す方向に移動可能に配設されたスピンドル支持機構9と、該スピンドル支持機構9に後述する被加工物保持手段を構成する被加工物保持部材の保持面に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)である矢印Zで示す方向に移動可能に配設された切削手段としてのスピンドルユニット15が配設されている。
【0027】
上記被加工物保持機構7は、静止基台60上に矢印Xで示す切削送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール61、61と、該一対の案内レール61、61上に矢印Xで示す切削送り方向に移動可能に配設された移動基台71と、該移動基台71上に配設された支持基台72と、該支持基台72上に配設された被加工物保持手段8とを含んでいる。移動基台71は矩形状に形成され、下面には一対の案内レール61、61に嵌合する一対の被案内溝711、711が設けられており、この被案内溝711、711を案内レール61、61に嵌合することにより、移動基台71は案内レール61、61に沿って移動可能に構成される。このようにして案内レール61、61上に移動可能に配設された移動基台71は、切削送り手段73によって一対の案内レール61に沿って移動せしめられる。切削送り手段73は、一対の案内レール61、61間に配設され案内レール61、61と平行に延びる雄ねじロッド731と、該雄ねじロッド731を回転駆動するサーボモータ732を具備している。雄ねじロッド731は、上記移動基台71に設けられたねじ穴712と螺合して、その先端部が軸受部材733によって回転自在に支持されている。従って、サーボモータ732によって雄ねじロッド731を正転および逆転駆動することにより、移動基台71は案内レール61、61に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0028】
上記移動基台71上に配設された支持基台72は、下板721と上板722および下板721と上板722の一端を連結する連結板723とからなり、他方が開放されている。支持基台72を構成する上板722には、図10に示すように円形の穴722aが設けられている。このように構成された支持基台72は、図8に示すように開放部がスピンドルユニット15側に向けて下板721が上記移動基台71上に配設される。
【0029】
上述した支持基台72を構成する上板722上に被加工物保持手段8が配設される。被加工物保持手段8は、図9に示すように支持部材81と、該支持部材81に回転可能に支持される回転筒82と、該回転筒82の上端に装着される被加工物保持部材83とを具備している。支持部材81は、図10に示すようにベース部811と、該ベース部811の中心部に上方に突出して形成された円筒状の支持部812とからなっている。ベース部811は、上記支持基台72を構成する上板722に設けられた円形の穴722aと同径の穴を備えた環状に形成されている。このベース部811の上面には環状の嵌合凸部811bが設けられている。この環状の嵌合凸部811bが形成されたベース部811には嵌合凸部811bの上面に開口する通路811cが設けられており、この通路811cが支持基台72を構成する上板722に形成された通路722bを介して図示しない吸引手段に連通されている。
【0030】
上記支持部材81に回転可能に支持される回転筒82は、下面に支持部材81を構成するベース部811に設けられた環状の嵌合凸部811bに嵌合する環状溝821が設けられている。また、回転筒82には、環状溝821に開口するとともに上面に開口する吸引通路822が形成されている。なお、回転筒82の下部外周には、環状の歯車823が設けられている。このように構成された回転筒82は円筒状の支持部812を囲繞して配設され、環状溝821を支持部材81を構成するベース部811に設けられた環状の嵌合凸部811bに嵌合するとともに、支持部材81を構成する支持部812に軸受け84によって回転可能に支持される。このように回転筒82が支持部材81を構成する支持部812に回転可能に支持された状態で、環状の歯車823が支持基台72を構成する上板722に配設されたサーボモータ85の駆動軸に装着された駆動歯車86に噛み合うようになっている。以上のように構成された回転筒82の上端部には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ87が配設されている。
【0031】
上記回転筒82の上端に装着される被加工物保持部材83は、ガラス板等の透明部材によって円板状に形成されており、回転筒82の上面に適宜の接着剤によって装着されている。この被加工物保持部材83の上面には、外周部に環状の吸引溝831が形成されている。また、被加工物保持部材83には、環状の吸引溝831と上記回転筒82に設けられた吸引通路822と連通する通路832が設けられている。従って、図示しない吸引手段を作動すると、上記支持基台72を構成する上板722に設けられた通路722b、支持部材81を構成するベース部811に設けられた通路811c、回転筒82に設けられた環状溝821および吸引通路822、通路832を介して環状の吸引溝831に負圧が作用せしめられる。
【0032】
図8に戻って説明を続けると、上記スピンドル支持機構9は、静止基台60上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール91、91と、該一対の案内レール91、91上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台92を具備している。この可動支持基台92は、一対の案内レール91、91上に移動可能に配設された移動支持部921と、該移動支持部921に取り付けられた装着部922とからなっている。移動支持部921の下面には上記一対の案内レール91、91と嵌合する一対の被案内溝921a、921aが形成されており、この一対の被案内溝921a、921aを一対の案内レール91、91に嵌合することにより、可動支持基台92は一対の案内レール91、91に沿って移動可能に構成される。また、装着部922は、一側面に矢印Zで示す被加工物保持手段8を構成する被加工物保持部材83の上面(保持面)に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール922a、922aが平行に設けられている。図示の実施形態におけるスピンドル支持機構9は、可動支持基台92を一対の案内レール91、91に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための割り出し送り手段93を具備している。割り出し送り手段93は、上記一対の案内レール91、91の間に平行に配設された雄ねじロッド931と、該雄ねじロッド931を回転駆動するためのパルスモータ932等の駆動源を含んでいる。雄ねじロッド931は、その一端が上記静止基台60に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ932の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ねじロッド931は、可動支持基台92を構成する移動支持部921の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ねじブロックに形成された雌ねじ穴に螺合されている。このため、パルスモータ932によって雄ねじロッド931を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台92は案内レール91、91に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0033】
図示の実施形態のおけるスピンドルユニット15は、ユニットホルダ151と、該ユニットホルダ151に取り付けられたスピンドルハウジング152と、該スピンドルハウジング152に回転可能に支持された回転スピンドル153を具備している。ユニットホルダ151は、上記装着部922に設けられた一対の案内レール922a、922aに摺動可能に嵌合する一対の被案内溝151a、151aが設けられており、この被案内溝151a、151aを上記案内レール922a、922aに嵌合することにより、矢印Zで示す切り込み送り方向に移動可能に支持される。上記回転スピンドル153はスピンドルハウジング152の先端から突出して配設されており、この回転スピンドル153の先端部に砥石工具としての砥石ブレードからなる切削ブレード154が装着されている。この砥石ブレードからなる切削ブレード154は、ブレード基台の側面に砥粒をニッケル等の金属メッキで結合した厚みが例えば20μmの電鋳ブレードからなっている。切削ブレード154を装着した回転スピンドル153は、サーボモータ155等の駆動源によって回転駆動せしめられる。上記スピンドルハウジング152の先端部には、上記被加工物保持手段8を構成する被加工物保持部材83上に保持された被加工物を撮像し、上記切削ブレード154によって切削すべき領域を検出するための撮像手段16を具備している。この撮像手段16は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなっており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0034】
図示の実施形態におけるスピンドルユニット15は、ホルダ151を一対の案内レール922a、922aに沿って矢印Zで示す方向に移動させるための切込み送り手段156を具備している。切込み送り手段156は、上記切削送り手段73および割り出し送り手段93と同様に案内レール922a、922aの間に配設された雄ねじロッド(図示せず)と、該雄ねじロッドを回転駆動するためのパルスモータ156aの駆動源を含んでおり、パルスモータ156aによって図示しない雄ねじロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ15とスピンドルハウジング152および回転スピンドル153を案内レール922a、922a に沿って矢印Zで示す切り込み送り方向に移動せしめる。
【0035】
図8を参照して説明を続けると、上記スピンドル支持機構9の可動支持基台92を構成する移動支持部921の上面には、レーザー光線照射手段87が配設されている。このレーザー光線照射手段87は、後述する被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を発振する。レーザー光線照射手段87から発振されたパルスレーザー光線を照射する照射部871は、上記切削ブレード154と対向する位置に位置付けられている。
【0036】
図示の実施形態における切削装置6は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図11には、切削装置6によって切削加工されるウエーハ100が示されている。このウエーハ100は、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの上面に貼着されている。ウエーハ100はシリコンウエーハからなり、表面100aに複数のストリート101が格子状に形成されているとともに複数のストリート101によって区画された複数の領域にデバイス102が形成されている。
【0037】
上述したウエーハ100をストリート101に沿って切削するには、図11に示すようにダイシングテープTを介して環状のフレームFに支持されたウエーハ100を、図8に示す切削装置6の被加工物保持手段8を構成する被加工物保持部材83の上面(保持面)に載置する。そして、環状のフレームFをクランプ87によって固定する。次に、図示しない吸引手段を作動することにより、上述したように被加工物保持部材83に形成された環状の吸引溝831に負圧を作用せしめ、被加工物保持部材83の保持面(上面)上に載置されダイシングテープTを介してウエーハ100を吸引保持する(ウエーハ保持工程)。
【0038】
上述したようにウエーハ保持工程を実施したならば、切削送り手段73を作動してウエーハ100を吸引保持した被加工物保持手段8を撮像手段16の直下に位置付ける。被加工物保持手段8が撮像手段16の直下に位置付けられると、撮像手段16および図示しない制御手段によってウエーハ100の切削加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段16および図示しない制御手段は、ウエーハ100の所定方向に形成されているストリート101と、切削ブレード154との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する(アライメント工程)。また、ウエーハ100に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート101に対しても、同様にアライメントが遂行される。
【0039】
上述したようにアライメント工程を実施したならば、切削送り手段73を作動してウエーハ100を吸引保持した被加工物保持手段8を切削ブレード154の下方である切削加工領域の切削開始位置に移動する。このとき、図12で示すようにウエーハ100は切削すべきストリート101の一端(図12において左端)が切削ブレード154の直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。このように被加工物保持手段8が切削加工領域に移動する際には、被加工物保持手段8が配設されている支持基台72の下板721と上板722との間にレーザー光線照射手段87の照射部871が位置付けられる。
【0040】
このようにしてウエーハ100が切削加工領域の切削開始位置に位置付けられたならば、切削ブレード154を図12において2点鎖線で示す待機位置から下方に切り込み送りし、図12において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、図12に示すように切削ブレード154の下端がウエーハ100の裏面に貼着されたダイシングテープTに達する位置に設定されている。
【0041】
次に、図12に示すように切削ブレード154を矢印154aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、被加工物保持手段8即ちウエーハ100を図12において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、被加工物保持手段8即ちウエーハ100の他端(図12において右端)が切削ブレード154の直下より所定量左側に位置するまで達したら、被加工物保持手段8の移動を停止する。このように被加工物保持手段8を切削送りすることにより、ウエーハ100はストリート101に沿って切断される(切削工程)。この切削工程においては、レーザー光線照射手段87を作動して被加工物保持部材83、ダイシングテープTおよびシリコンウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を発振する。レーザー光線照射手段87から発振されたパルスレーザー光線は、上記支持基台72を構成する上板722に設けられた穴722a、および円筒状の支持部812を通り、図13に示すように透明部材によって形成された被加工物保持部材83、ダイシングテープT、ウエーハ100を通して砥石ブレードである切削ブレード154の切削部に照射される。なお、切削ブレード154の切削部に照射されるパルスレーザー光線は、波長が1064nm、平均出力は10W、繰り返し周波数が10Hz、スポット径が20μmに設定されている。このようにウエーハ100を通して切削ブレード154の切削部にパルスレーザー光線を照射することにより砥石ブレードである切削ブレード154が加熱され、加熱された切削ブレード154による熱加工と機械加工の複合加工が施されるので、ウエーハ100を効率よく効果的に切削することができる。
【0042】
次に、被加工物保持手段8即ちウエーハ100を図12において紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)にストリート101の間隔に相当する量だけ割り出し送りし、次に切削すべきストリート101を切削ブレード154と対応する位置に位置付け、図12に示す状態に戻す。そして、上記と同様に切削工程を実施する。この切削工程をウエーハ100に形成された全てのストリート101に沿って実施する。この結果、ウエーハ100はストリート101に沿って切断され、個々のデバイスに分割される。
【符号の説明】
【0043】
2:研削装置
20:装置ハウジング
3:研削ユニット
31:移動基台
32:スピンドルユニット
322:回転スピンドル
325:研削工具
326:ホイール基台
327:研削砥石
4:被加工物保持機構
41:移動基台
5:被加工物保持手段
51:支持部材
52:回転筒
53:被加工物保持部材
57:レーザー光線照射手段
6:切削装置
60:静止基台
7:被加工物保持機構
71:移動基台
72:支持基台
73:切削送り手段
8:被加工物保持手段
81:支持部材
82:回転筒
83:被加工物保持部材
87:レーザー光線照射手段
9:スピンドル支持機構
92:可動支持基台
93:割り出し送り手段
15:スピンドルユニット
153:回転スピンドル
154:切削ブレード
156:切込み送り手段
10:サファイア基板
100:ウエーハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア基板や炭化珪素基板等を砥石工具としての研削砥石によって研削したりシリコン基板等からなるウエーハを砥石工具としての砥石ブレードによって切削する砥石工具による加工方法および加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイス製造工程においては、略円板形状であるサファイア基板や炭化珪素基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って切断することにより光デバイスが形成された領域を分割して個々の光デバイスを製造している。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
サファイア基板や炭化珪素基板は、表面に光デバイスが形成される前に研削装置によって表面および裏面を研削することによりうねりを除去するとともに所定の厚みに形成される。
【0004】
また、シリコン基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画された複数の矩形領域にIC、LSI等のデバイスが形成されたウエーハは、一般に砥石ブレードからなる切削ブレードを備えた切削装置によってストリートに沿って切断され、個々のデバイスに形成される。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2859478号
【特許文献2】特開2004−303855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、サファイア基板や炭化珪素基板はモース硬度が高いため、表面および裏面を研削して所定の厚みに仕上げるには相当の加工時間を要し生産性が悪いという問題がある。
また、ウエーハを砥石ブレードからなる切削ブレードによって切断して個々のデバイスに形成すると、デバイスの周縁に欠けが生じてデバイスの抗折強度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、研削砥石による研削加工や砥石ブレードによる切削加工を効率良く実施することができる砥石工具による加工方法および加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術課題を解決するために、本発明によれば、被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物に砥石工具を作用せしめて被加工物に加工を施す砥石工具による加工方法であって、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有する被加工物保持部材を備えた被加工物保持手段と、該被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物を加工する砥石工具を備えた加工手段と、を具備する加工装置において、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振するレーザー光線照射手段を具備し、
該レーザー光線照射手段によって照射されたレーザー光線を該被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明による砥石工具による加工方法および加工装置においては、被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施すので、被加工物を効率よく効果的に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成された加工装置としての研削装置の斜視図。
【図2】図1に示す研削装置に装備される被加工物保持機構を示す斜視図。
【図3】図2に示す被加工物保持機構の構成部材を分解して示す斜視図。
【図4】図2に示す被加工物保持機構の要部断面図。
【図5】図1に示す研削装置によって研削加工される被加工物としてのサファイア基板を保護部材に貼着する保護部材貼着工程の説明図。
【図6】図1に示す研削装置によって図5に示すサファイア基板を研削加工する研削工程の説明図。
【図7】図6に示す研削工程におけるサファイア基板と研削砥石との関係を示す説明図。
【図8】本発明に従って構成された加工装置としての切削装置の斜視図。
【図9】図8に示す切削装置に装備される被加工物保持機構の構成部材を分解して示す斜視図。
【図10】図9に示す被加工物保持機構の要部断面図。
【図11】図8に示す切削装置によって切削加工される被加工物としてウエーハを環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの上面に貼着した状態を示す斜視図。
【図12】図8に示す切削装置によって図11に示すウエーハを切削加工する切削工程の説明図。
【図13】図12に示す切削工程の要部説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る砥石工具による加工方法および加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には本発明に従って構成された加工装置としての研削装置の斜視図が示されている。
図1に示す研削装置2は、全体を番号20で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング20は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ実質上鉛直に上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0014】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0015】
スピンドルユニット32は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための駆動手段としてのサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端には円板形状の工具装着部材324が設けられている。なお、工具装着部材324には、周方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔(図示していない)が形成されている。この工具装着部材324の下面に砥石工具としての研削工具325が装着される。研削工具325は、円環状のホイール基台326と該ホイール基台326の下面に装着される複数の研削砥石327とからなっており、ホイール基台326が工具装着部材324の下面に締結ボルト328によって取付けられる。
【0016】
図示の実施形態における研削装置2は、上記研削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削ユニット送り機構33を備えている。この研削ユニット送り機構33は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びる雄ねじロッド331を具備している。この雄ねじロッド331は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材332および333によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材332には雄ねじロッド331を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ334が配設されており、このパルスモータ334の出力軸が雄ねじロッド331に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ねじ穴が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド331が螺合せしめられている。従って、パルスモータ334が正転すると移動基台31即ち研削ユニット3が下降即ち前進(研削送り)せしめられ、パルスモータ334が逆転すると移動基台31即ち研削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0017】
図示の実施形態における研削装置2は、装置ハウジング20の主部21には被加工物保持機構4が配設されている。この被加工物保持機構4について、図2乃至図4を参照して説明する。
図2乃至図4に示す被加工物保持機構4は、上記装置ハウジング20の主部21上に前後方向(直立壁22の前面に垂直な方向)である矢印23aおよび23bで示す方向に延在する一対の案内レール23、23上に移動可能に配設された移動基台41と、該移動基台41上に配設された被加工物保持手段5とを含んでいる。移動基台41は矩形状に形成され、下面には一対の案内レール23、23に嵌合する一対の被案内溝411、411が設けられており、この被案内溝411、411を案内レール23、23に嵌合することにより、移動基台41は案内レール23、23に沿って移動可能に構成される。このようにして案内レール23、23上に移動可能に配設された移動基台41は、移動手段42によって一対の案内レール23に沿って矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめる。移動手段42は、一対の案内レール23間に配設され案内レール23と平行に延びる雄ねじロッド421と、該雄ねじロッド421を回転駆動するサーボモータ422を具備している。雄ねじロッド421は、上記移動基台41に設けられたねじ穴412と螺合して、その先端部が軸受部材423によって回転自在に支持されている。サーボモータ422は、その駆動軸が雄ねじロッド421の基端と伝動連結されている。従って、サーボモータ422が正転すると移動基台41が矢印23aで示す方向に移動し、サーボモータ422が逆転すると移動基台41が矢印23bで示す方向に移動せしめられる。
【0018】
上述した移動基台41上に配設される被加工物保持手段5は、支持部材51と、該支持部材51に回転可能に支持される回転筒52と、該回転筒52の上端に装着される被加工物保持部材53とを具備している。支持部材51は、図4に示すようにベース部511と、該ベース部511の中心部に形成された開口511dの上方に突出して形成された円筒状の支持部512とからなっている。ベース部511の上壁511aには環状の嵌合凸部511bが設けられている。この環状の嵌合凸部511bが形成された上壁511aには嵌合凸部511bの上面に開口する通路511cが設けられており、この通路511cが図示しない吸引手段に連通されている。
【0019】
上記支持部材51に回転可能に支持される回転筒52は、下面に支持部材51を構成するベース部511の上壁511aに設けられた環状の嵌合凸部511bに嵌合する環状溝521が設けられている。また、回転筒52には、環状溝521に開口するとともに上面に開口する吸引通路522が形成されている。なお、回転筒52の下部外周には、環状の歯車523が設けられている。このように構成された回転筒52は円筒状の支持部512を囲繞して配設され、環状溝521を支持部材51を構成するベース部511の上壁511aに設けられた環状の嵌合凸部511bに嵌合するとともに、支持部材51を構成する支持部512に軸受け54によって回転可能に支持される。このように回転筒52が支持部材51を構成する支持部512に回転可能に支持された状態で、図2に示すように環状の歯車523がベース部511内に配設されたサーボモータ55の駆動軸に装着された駆動歯車56に噛み合うようになっている。
【0020】
上記回転筒52の上端に装着される被加工物保持部材53は、ガラス板等の透明部材によって円板状に形成されており、回転筒52の上面に適宜の接着剤によって装着されている。この被加工物保持部材53の上面には、外周部に環状の吸引溝531が形成されている。また、被加工物保持部材53には、環状の吸引溝531と上記回転筒52に設けられた吸引通路522と連通する通路532が設けられている。従って、図示しない吸引手段を作動すると、上記支持部材51を構成するベース部511の上壁511aに設けられた通路511c、回転筒52に設けられた環状溝521および吸引通路522、通路532を介して環状の吸引溝531に負圧が作用せしめられる。
【0021】
図4を参照して説明を続けると、上記支持部材51内には、レーザー光線照射手段57が配設されている。このレーザー光線照射手段57は、後述する被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射部571から発振する。レーザー光線照射手段57の照射部571から発振されたパルスレーザー光線は、上記支持部材51を構成する円筒状の支持部512を通して後述するように研削砥石327に照射される。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、上記被加工物保持機構4を構成する被加工物保持手段5の移動方向両側には、横断面形状が逆チャンネル形状であって、上記一対の案内レール23、23や雄ねじロッド421およびサーボモータ422等を覆っている蛇腹手段43および44が付設されている。蛇腹手段43および44はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段43の前端は主部21の前面壁に固定され、後端は被加工物保持機構4の被加工物保持手段5を構成する支持部材51の前端面に固定されている。蛇腹手段44の前端は被加工物保持手段5を構成する支持部材51の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。被加工物保持手段5が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段43が伸張されて蛇腹手段44が収縮され、被加工物保持手段5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段43が収縮されて蛇腹手段44が伸張せしめられる。
【0023】
図示の実施形態における研削装置2は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図5の(a)および(b)には、上記研削装置2によって研削加工されるサファイア基板10の斜視図が示されている。サファイア基板10は、裏面10bがガラス板等の透明部材によって円板状に形成され保護部材11の表面にボンド剤を介して貼着される(保護部材貼着工程)。従って、サファイア基板10は、表面10aが上側となる。
【0024】
次に、図1に示す研削装置2における被加工物載置域24に位置付けられている被加工物保持手段5を構成する被加工物保持部材53の保持面(上面)上に、上述したようにサファイア基板10が貼着された保護部材11側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、上述したように被加工物保持部材53に形成された環状の吸引溝531に負圧を作用せしめ、被加工物保持部材53の保持面(上面)上に載置されサファイア基板10が貼着された保護部材11を吸引保持する。
【0025】
被加工物保持部材53の保持面(上面)上にサファイア基板10が貼着された保護部材11を吸引保持したならば、移動手段42(図2および図3参照)を作動して被加工物保持機構4を矢印23aで示す方向に移動し、被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10を研削砥石327の下方の研削域25に位置付ける。なお、この状態においては被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10は、図6および図7に示すようにその中心(P)が研削砥石327が通過する位置に位置付けられる。なお、被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10を研削砥石327の下方の研削域25に位置付けられた状態においては、レーザー光線照射手段57の照射部571が研削砥石327と対向する位置に位置付けられる。このようにして、サファイア基板10が研削域25に位置付けられたならば、上記サーボモータ55を駆動して被加工物保持手段5を矢印5aで示す方向に300rpmで回転し、上記サーボモータ323を駆動して研削工具325を矢印325aで示す方向に6000rpmで回転するとともに、上記研削ユニット送り機構33のパルスモータ334を正転駆動して研削ユニット3を下降せしめて(研削送り)、研削砥石327の研削面である下端面を被加工物保持部材53上に保持されたサファイア基板10の上面(表面10a)に押圧せしめる。そして、研削工具325を所定量下降せしめて(研削送り)、サファイア基板10を所定の厚みに研削する(研削工程)。この研削工程においては、レーザー光線照射手段57を作動して被加工物保持部材53、保護部材11およびサファイア基板10に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射部571から発振する。レーザー光線照射手段57から発振されたパルスレーザー光線は、透明部材によって形成された被加工物保持部材53、透明部材によって形成された保護部材11およびサファイア基板10を通して研削砥石327の研削面に研削砥石327の幅に相当する直径を有するスポットSで照射される。なお、研削砥石327の研削面に照射されるパルスレーザー光線は、波長が532nm、平均出力は2.5W、繰り返し周波数が10Hz、スポット径が10mmに設定されている。このようにサファイア基板10を通して研削砥石327における加工部にパルスレーザー光線を照射することにより研削砥石327が加熱され、加熱された研削砥石327による熱加工と機械加工の複合加工が施されるので、サファイア基板10を効率よく効果的に研削することができる。
【0026】
次に、本発明に従って構成された加工装置としての切削装置について、図8乃至図10を参照して説明する。
図8には本発明に従って構成された加工装置としての切削装置の斜視図が示されている。図8に示された切削装置6は、静止基台60と、該静止基台60に切削送り方向(X軸方向)である矢印Xで示す方向に移動可能に配設され被加工物を保持する被加工物保持機構7と、静止基台60に切削送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)である矢印Yで示す方向に移動可能に配設されたスピンドル支持機構9と、該スピンドル支持機構9に後述する被加工物保持手段を構成する被加工物保持部材の保持面に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)である矢印Zで示す方向に移動可能に配設された切削手段としてのスピンドルユニット15が配設されている。
【0027】
上記被加工物保持機構7は、静止基台60上に矢印Xで示す切削送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール61、61と、該一対の案内レール61、61上に矢印Xで示す切削送り方向に移動可能に配設された移動基台71と、該移動基台71上に配設された支持基台72と、該支持基台72上に配設された被加工物保持手段8とを含んでいる。移動基台71は矩形状に形成され、下面には一対の案内レール61、61に嵌合する一対の被案内溝711、711が設けられており、この被案内溝711、711を案内レール61、61に嵌合することにより、移動基台71は案内レール61、61に沿って移動可能に構成される。このようにして案内レール61、61上に移動可能に配設された移動基台71は、切削送り手段73によって一対の案内レール61に沿って移動せしめられる。切削送り手段73は、一対の案内レール61、61間に配設され案内レール61、61と平行に延びる雄ねじロッド731と、該雄ねじロッド731を回転駆動するサーボモータ732を具備している。雄ねじロッド731は、上記移動基台71に設けられたねじ穴712と螺合して、その先端部が軸受部材733によって回転自在に支持されている。従って、サーボモータ732によって雄ねじロッド731を正転および逆転駆動することにより、移動基台71は案内レール61、61に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0028】
上記移動基台71上に配設された支持基台72は、下板721と上板722および下板721と上板722の一端を連結する連結板723とからなり、他方が開放されている。支持基台72を構成する上板722には、図10に示すように円形の穴722aが設けられている。このように構成された支持基台72は、図8に示すように開放部がスピンドルユニット15側に向けて下板721が上記移動基台71上に配設される。
【0029】
上述した支持基台72を構成する上板722上に被加工物保持手段8が配設される。被加工物保持手段8は、図9に示すように支持部材81と、該支持部材81に回転可能に支持される回転筒82と、該回転筒82の上端に装着される被加工物保持部材83とを具備している。支持部材81は、図10に示すようにベース部811と、該ベース部811の中心部に上方に突出して形成された円筒状の支持部812とからなっている。ベース部811は、上記支持基台72を構成する上板722に設けられた円形の穴722aと同径の穴を備えた環状に形成されている。このベース部811の上面には環状の嵌合凸部811bが設けられている。この環状の嵌合凸部811bが形成されたベース部811には嵌合凸部811bの上面に開口する通路811cが設けられており、この通路811cが支持基台72を構成する上板722に形成された通路722bを介して図示しない吸引手段に連通されている。
【0030】
上記支持部材81に回転可能に支持される回転筒82は、下面に支持部材81を構成するベース部811に設けられた環状の嵌合凸部811bに嵌合する環状溝821が設けられている。また、回転筒82には、環状溝821に開口するとともに上面に開口する吸引通路822が形成されている。なお、回転筒82の下部外周には、環状の歯車823が設けられている。このように構成された回転筒82は円筒状の支持部812を囲繞して配設され、環状溝821を支持部材81を構成するベース部811に設けられた環状の嵌合凸部811bに嵌合するとともに、支持部材81を構成する支持部812に軸受け84によって回転可能に支持される。このように回転筒82が支持部材81を構成する支持部812に回転可能に支持された状態で、環状の歯車823が支持基台72を構成する上板722に配設されたサーボモータ85の駆動軸に装着された駆動歯車86に噛み合うようになっている。以上のように構成された回転筒82の上端部には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ87が配設されている。
【0031】
上記回転筒82の上端に装着される被加工物保持部材83は、ガラス板等の透明部材によって円板状に形成されており、回転筒82の上面に適宜の接着剤によって装着されている。この被加工物保持部材83の上面には、外周部に環状の吸引溝831が形成されている。また、被加工物保持部材83には、環状の吸引溝831と上記回転筒82に設けられた吸引通路822と連通する通路832が設けられている。従って、図示しない吸引手段を作動すると、上記支持基台72を構成する上板722に設けられた通路722b、支持部材81を構成するベース部811に設けられた通路811c、回転筒82に設けられた環状溝821および吸引通路822、通路832を介して環状の吸引溝831に負圧が作用せしめられる。
【0032】
図8に戻って説明を続けると、上記スピンドル支持機構9は、静止基台60上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール91、91と、該一対の案内レール91、91上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台92を具備している。この可動支持基台92は、一対の案内レール91、91上に移動可能に配設された移動支持部921と、該移動支持部921に取り付けられた装着部922とからなっている。移動支持部921の下面には上記一対の案内レール91、91と嵌合する一対の被案内溝921a、921aが形成されており、この一対の被案内溝921a、921aを一対の案内レール91、91に嵌合することにより、可動支持基台92は一対の案内レール91、91に沿って移動可能に構成される。また、装着部922は、一側面に矢印Zで示す被加工物保持手段8を構成する被加工物保持部材83の上面(保持面)に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール922a、922aが平行に設けられている。図示の実施形態におけるスピンドル支持機構9は、可動支持基台92を一対の案内レール91、91に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための割り出し送り手段93を具備している。割り出し送り手段93は、上記一対の案内レール91、91の間に平行に配設された雄ねじロッド931と、該雄ねじロッド931を回転駆動するためのパルスモータ932等の駆動源を含んでいる。雄ねじロッド931は、その一端が上記静止基台60に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ932の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ねじロッド931は、可動支持基台92を構成する移動支持部921の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ねじブロックに形成された雌ねじ穴に螺合されている。このため、パルスモータ932によって雄ねじロッド931を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台92は案内レール91、91に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0033】
図示の実施形態のおけるスピンドルユニット15は、ユニットホルダ151と、該ユニットホルダ151に取り付けられたスピンドルハウジング152と、該スピンドルハウジング152に回転可能に支持された回転スピンドル153を具備している。ユニットホルダ151は、上記装着部922に設けられた一対の案内レール922a、922aに摺動可能に嵌合する一対の被案内溝151a、151aが設けられており、この被案内溝151a、151aを上記案内レール922a、922aに嵌合することにより、矢印Zで示す切り込み送り方向に移動可能に支持される。上記回転スピンドル153はスピンドルハウジング152の先端から突出して配設されており、この回転スピンドル153の先端部に砥石工具としての砥石ブレードからなる切削ブレード154が装着されている。この砥石ブレードからなる切削ブレード154は、ブレード基台の側面に砥粒をニッケル等の金属メッキで結合した厚みが例えば20μmの電鋳ブレードからなっている。切削ブレード154を装着した回転スピンドル153は、サーボモータ155等の駆動源によって回転駆動せしめられる。上記スピンドルハウジング152の先端部には、上記被加工物保持手段8を構成する被加工物保持部材83上に保持された被加工物を撮像し、上記切削ブレード154によって切削すべき領域を検出するための撮像手段16を具備している。この撮像手段16は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなっており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0034】
図示の実施形態におけるスピンドルユニット15は、ホルダ151を一対の案内レール922a、922aに沿って矢印Zで示す方向に移動させるための切込み送り手段156を具備している。切込み送り手段156は、上記切削送り手段73および割り出し送り手段93と同様に案内レール922a、922aの間に配設された雄ねじロッド(図示せず)と、該雄ねじロッドを回転駆動するためのパルスモータ156aの駆動源を含んでおり、パルスモータ156aによって図示しない雄ねじロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ15とスピンドルハウジング152および回転スピンドル153を案内レール922a、922a に沿って矢印Zで示す切り込み送り方向に移動せしめる。
【0035】
図8を参照して説明を続けると、上記スピンドル支持機構9の可動支持基台92を構成する移動支持部921の上面には、レーザー光線照射手段87が配設されている。このレーザー光線照射手段87は、後述する被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を発振する。レーザー光線照射手段87から発振されたパルスレーザー光線を照射する照射部871は、上記切削ブレード154と対向する位置に位置付けられている。
【0036】
図示の実施形態における切削装置6は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図11には、切削装置6によって切削加工されるウエーハ100が示されている。このウエーハ100は、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの上面に貼着されている。ウエーハ100はシリコンウエーハからなり、表面100aに複数のストリート101が格子状に形成されているとともに複数のストリート101によって区画された複数の領域にデバイス102が形成されている。
【0037】
上述したウエーハ100をストリート101に沿って切削するには、図11に示すようにダイシングテープTを介して環状のフレームFに支持されたウエーハ100を、図8に示す切削装置6の被加工物保持手段8を構成する被加工物保持部材83の上面(保持面)に載置する。そして、環状のフレームFをクランプ87によって固定する。次に、図示しない吸引手段を作動することにより、上述したように被加工物保持部材83に形成された環状の吸引溝831に負圧を作用せしめ、被加工物保持部材83の保持面(上面)上に載置されダイシングテープTを介してウエーハ100を吸引保持する(ウエーハ保持工程)。
【0038】
上述したようにウエーハ保持工程を実施したならば、切削送り手段73を作動してウエーハ100を吸引保持した被加工物保持手段8を撮像手段16の直下に位置付ける。被加工物保持手段8が撮像手段16の直下に位置付けられると、撮像手段16および図示しない制御手段によってウエーハ100の切削加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段16および図示しない制御手段は、ウエーハ100の所定方向に形成されているストリート101と、切削ブレード154との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する(アライメント工程)。また、ウエーハ100に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート101に対しても、同様にアライメントが遂行される。
【0039】
上述したようにアライメント工程を実施したならば、切削送り手段73を作動してウエーハ100を吸引保持した被加工物保持手段8を切削ブレード154の下方である切削加工領域の切削開始位置に移動する。このとき、図12で示すようにウエーハ100は切削すべきストリート101の一端(図12において左端)が切削ブレード154の直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。このように被加工物保持手段8が切削加工領域に移動する際には、被加工物保持手段8が配設されている支持基台72の下板721と上板722との間にレーザー光線照射手段87の照射部871が位置付けられる。
【0040】
このようにしてウエーハ100が切削加工領域の切削開始位置に位置付けられたならば、切削ブレード154を図12において2点鎖線で示す待機位置から下方に切り込み送りし、図12において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、図12に示すように切削ブレード154の下端がウエーハ100の裏面に貼着されたダイシングテープTに達する位置に設定されている。
【0041】
次に、図12に示すように切削ブレード154を矢印154aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、被加工物保持手段8即ちウエーハ100を図12において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、被加工物保持手段8即ちウエーハ100の他端(図12において右端)が切削ブレード154の直下より所定量左側に位置するまで達したら、被加工物保持手段8の移動を停止する。このように被加工物保持手段8を切削送りすることにより、ウエーハ100はストリート101に沿って切断される(切削工程)。この切削工程においては、レーザー光線照射手段87を作動して被加工物保持部材83、ダイシングテープTおよびシリコンウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を発振する。レーザー光線照射手段87から発振されたパルスレーザー光線は、上記支持基台72を構成する上板722に設けられた穴722a、および円筒状の支持部812を通り、図13に示すように透明部材によって形成された被加工物保持部材83、ダイシングテープT、ウエーハ100を通して砥石ブレードである切削ブレード154の切削部に照射される。なお、切削ブレード154の切削部に照射されるパルスレーザー光線は、波長が1064nm、平均出力は10W、繰り返し周波数が10Hz、スポット径が20μmに設定されている。このようにウエーハ100を通して切削ブレード154の切削部にパルスレーザー光線を照射することにより砥石ブレードである切削ブレード154が加熱され、加熱された切削ブレード154による熱加工と機械加工の複合加工が施されるので、ウエーハ100を効率よく効果的に切削することができる。
【0042】
次に、被加工物保持手段8即ちウエーハ100を図12において紙面に垂直な方向(割り出し送り方向)にストリート101の間隔に相当する量だけ割り出し送りし、次に切削すべきストリート101を切削ブレード154と対応する位置に位置付け、図12に示す状態に戻す。そして、上記と同様に切削工程を実施する。この切削工程をウエーハ100に形成された全てのストリート101に沿って実施する。この結果、ウエーハ100はストリート101に沿って切断され、個々のデバイスに分割される。
【符号の説明】
【0043】
2:研削装置
20:装置ハウジング
3:研削ユニット
31:移動基台
32:スピンドルユニット
322:回転スピンドル
325:研削工具
326:ホイール基台
327:研削砥石
4:被加工物保持機構
41:移動基台
5:被加工物保持手段
51:支持部材
52:回転筒
53:被加工物保持部材
57:レーザー光線照射手段
6:切削装置
60:静止基台
7:被加工物保持機構
71:移動基台
72:支持基台
73:切削送り手段
8:被加工物保持手段
81:支持部材
82:回転筒
83:被加工物保持部材
87:レーザー光線照射手段
9:スピンドル支持機構
92:可動支持基台
93:割り出し送り手段
15:スピンドルユニット
153:回転スピンドル
154:切削ブレード
156:切込み送り手段
10:サファイア基板
100:ウエーハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物に砥石工具を作用せしめて被加工物に加工を施す砥石工具による加工方法であって、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工方法。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有する被加工物保持部材を備えた被加工物保持手段と、該被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物を加工する砥石工具を備えた加工手段と、を具備する加工装置において、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振するレーザー光線照射手段を具備し、
該レーザー光線照射手段によって発振されたレーザー光線を該被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工装置。
【請求項1】
被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物に砥石工具を作用せしめて被加工物に加工を施す砥石工具による加工方法であって、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工方法。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有する被加工物保持部材を備えた被加工物保持手段と、該被加工物保持部材の保持面に保持された被加工物を加工する砥石工具を備えた加工手段と、を具備する加工装置において、
被加工物保持部材は透明体によって形成されており、
被加工物保持部材の保持面と反対側から被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振するレーザー光線照射手段を具備し、
該レーザー光線照射手段によって発振されたレーザー光線を該被加工物保持部材および被加工物を通して砥石工具における加工部に照射することにより砥石工具を加熱し、加熱された砥石工具による熱加工と機械加工の複合加工を施す、
ことを特徴とする砥石工具による加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−171451(P2011−171451A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32756(P2010−32756)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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