説明

破砕機

【課題】被破砕物の性状に応じて運転条件を自動的に設定し、作業効率を向上させることができる破砕機を提供する。
【解決手段】被破砕物Wを破砕する破砕装置13と、破砕装置13に被破砕物Wを搬送する送りコンベア12と、送りコンベア12の搬送面に対向する押圧ローラ24と、押圧ローラ24を送りコンベヤ12上の被破砕物Wに押し付ける押圧シリンダ29と、押圧シリンダ29を駆動させて押圧ローラ24を被破砕物Wに押し付けた際の押圧シリンダ29の負荷を測定する押圧負荷演算部78と、押圧シリンダ20の負荷から被破砕物Wの硬度を判定する硬度判定部79と、硬度判定部79の判定結果に応じて、破砕条件を変更する破砕条件変更部84とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の再利用や減容化を主な目的として、間伐材、廃木材、建設廃材等の種々の被破砕物を破砕する破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
破砕装置を駆動する油圧モータの負荷圧が設定時間継続してしきい値を超えた場合に破砕装置が過負荷状態にあると判定し、破砕装置への被破砕物の供給を中断して破砕装置の負荷を低減する機能を備えた破砕機がある。ところが、この種の破砕機においては、過負荷状態の判定のための上記設定時間が一定であると、被破砕物の性状(硬さ等)によって破砕物の粒度品質の低下や中断頻度の必要以上の増大等の不具合が起こり得ることから、上記設定時間を手動で可変設定可能な設定手段を備えたものが提唱された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−175393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された設定手段は、オペレータが任意に操作するものであるため、設定時間の設定はオペレータの主観や経験に左右される。そのため、破砕機の能力が効果的に発揮される適正な設定時間が必ずしも選択される訳ではなく、経験の浅いオペレータ等は却って設定時間の設定に迷い兼ねない。
【0005】
また、この種の破砕機の運転操作は、被破砕物を投入する重機のオペレータが兼務することが通常であり、破砕機の運転状況に注意を払いながら被破砕物の性状が変化する度に重機の運転を中断して上記の設定時間を変更することは煩わしくオペレータにとって負担である。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、被破砕物の性状に応じて運転条件を自動的に設定し、作業効率を向上させることができる破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被破砕物を破砕する破砕装置と、この破砕装置に被破砕物を搬送する送りコンベアと、この送りコンベアの搬送面に対向する押圧手段と、この押圧手段を前記送りコンベヤ上の被破砕物に押し付ける押圧駆動装置と、この押圧駆動装置を駆動させて前記押圧手段を被破砕物に押し付けた際の前記押圧駆動装置の負荷を測定する押圧負荷測定手段と、この押圧負荷測定手段の測定結果から被破砕物の硬度を判定する硬度判定手段と、この硬度判定手段の判定結果に応じて、前記破砕装置の駆動速度、前記送りコンベヤの駆動速度の少なくとも一方を変更する破砕条件変更手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記破砕装置を駆動する破砕駆動装置の負荷を測定する破砕負荷測定手段と、この破砕負荷測定手段の測定値が予め設定した設定時間継続してしきい値を超えた場合に前記送りコンベヤによる前記破砕装置への被破砕物の供給動作を中断させる供給中断指令手段と、この供給中断指令手段からの指令に基づき前記送りコンベヤによる被破砕物の供給を中断している間に前記押圧駆動装置を駆動させて前記送りコンベヤ上の被破砕物に前記押圧手段を押し付けて前記硬度判定手段により前記被破砕物の硬度の判定を指令する硬度判定指令手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、被破砕物の硬度判定の実行時、前記供給中断指令手段が被破砕物の供給中断の判断に用いる前記しきい値、前記設定時間の少なくとも一方を前記硬度判定手段の判定結果に応じて変更する中断条件変更手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれか1つにおいて、前記押圧駆動装置を駆動させて前記押圧手段を被破砕物に押し付けた際の前記送りコンベヤの搬送面からの前記押圧手段の高さを測定する高さ測定手段をさらに備え、前記破砕条件変更手段は、前記硬度判定手段の判定結果とともに前記高さ測定手段の測定結果を基にして、前記破砕装置の駆動速度、前記送りコンベヤの駆動速度の少なくとも一方を変更することを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれか1つにおいて、前記押圧駆動装置を手動で駆動させて前記押圧手段を被破砕物に押し付ける手動押圧操作手段をさらに備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被破砕物の性状に応じて運転条件を自動的に設定し、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた破砕機本体部の内部の要部を抜き出して表した側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた駆動システムの要部を抜き出して表した回路図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた制御装置の機能ブロック図である。
【図6】押圧ローラが被破砕物を押圧している様子を表した図で、図3に対応する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る破砕機に備えられた制御装置による破砕条件等の変更手順を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図、図2はその平面図である。なお、本願明細書において図1中の右左を破砕機の前後とする。
【0016】
図1及び図2に例示した破砕機は、廃棄物の再利用や減容化を主な目的として被破砕物を破砕する機械である。破砕機の破砕対象物すなわち被破砕物には、例えば森林で発生する剪定枝材や間伐材、建築物の解体に伴って発生する廃木材等の木材の他、廃プラスチック材、廃タタミ、竹材等の建設廃材等を含めた木材以外の廃材も含まれ得る。また、木材については、比較的乾燥した硬質のものに限らず、剪定後間もない街路樹の枝葉や沿道の雑草などの水分量の多い軟質のものも含まれ得る。本実施形態では、これらの破砕対象物を総称して被破砕物と記載する。
【0017】
上記破砕機は、機体を自力走行させるための走行体1、被破砕物を受け入れて破砕処理する破砕機本体部2、破砕機本体部2で破砕処理された破砕物を機外に搬出する排出コンベヤ3、及び搭載した各機器の動力源であるエンジン等を有する動力装置(パワーユニット)4等を備えている。
【0018】
走行体1は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7、駆動輪6の軸に出力軸を連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8、並びに駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9を有している。トラックフレーム5上には前後に延在する本体フレーム10が設けられており、この本体フレーム10によって、破砕機本体部2や排出コンベヤ3、動力装置4等が支持されている。
【0019】
破砕機本体部2は、被破砕物を破砕する破砕装置13(後述の図3参照)、被破砕物を投入するホッパ11、このホッパ11内に収容配置された送りコンベヤ12、及び送りコンベア12とともに被破砕物を破砕装置13に供給する供給装置を構成する押圧ローラ装置14を備えている。破砕機本体部2の構成については後述する。
【0020】
排出コンベヤ3は、コンベヤフレーム50、このコンベヤフレーム50の前後両端に設けた駆動輪及び従動輪(不図示)、駆動輪と従動輪との間に掛け回したコンベヤベルト(不図示)、コンベヤベルトの搬送面の上方を覆うようにコンベヤフレーム50に取り付けたコンベヤカバー51、駆動輪を回転駆動してコンベヤベルトを循環駆動させる駆動装置(排出コンベヤ用油圧モータ)52等を有している。この排出コンベヤ3は、下流側(前方側)の部分が動力装置4の支持部から前方に延びる支持部材53により、上流側(後方側)の端部が支持部材54を介して本体フレーム10によりそれぞれ吊り下げられていて、左右の履帯9の間の破砕装置13(後述の図3参照)の下方付近から前方にほぼ水平に延在するとともに、動力装置4の下方あたりで二段階に屈曲して上り傾斜に転じ、輸送制限寸法の範囲で極力高い位置まで延在している。但し、このように屈曲したコンベヤを用いずに、本体フレーム10の下部領域において破砕装置13の下方から前方に直線状に延在する第1コンベヤ、及び第1コンベヤの放出端の下方から前方に向かって直線状に上る第2コンベヤで、乗り継ぎ式の排出コンベヤを構成する場合もある。
【0021】
動力装置4は、本体フレーム10の前部に支持部材55を介して搭載されている。この動力装置4の後方側でかつ機体幅方向一方側(本実施形態では右側)の区画には運転席56が設けられている。運転席56には破砕機を走行操作するための操作レバー57が設けられている。走行操作用の操作装置は、本実施形態のように運転席56に操作レバー57を設ける代わりに、有線又は無線のリモコンを用いる場合もある。また、動力装置4の下部でかつ機体幅方向一方側(本実施形態では右側)には、走行操作以外の機体操作や設定、モニタリング等を行うための操作盤58が設けられている。操作盤58は、本実施形態では地上から作業者が操作し易いように機体の側部に設けられているが、運転席56に設けても構わない。
【0022】
図3は破砕機本体部2の内部の要部を抜き出して表した側面図である。
【0023】
図3に示したように、上記ホッパ11は、上部及び前方が開口した有底形状の枠体であり、本体フレーム10の後部に水平に設置されている。
【0024】
上記送りコンベヤ12は、機体幅方向に回転軸21が延在するヘッド側の駆動輪16、同じく機体幅方向に回転軸(不図示)が延在するテール側の従動輪(不図示)、及び駆動輪16及び従動輪の間に掛け回した複数列(本実施形態では4列)の搬送ベルト(チェーンベルト)17を備え、機体後端近傍から破砕ロータ15の後面下半側に対向する位置までホッパ11内でほぼ水平に延在している。従動輪はホッパ11の左右の側壁体18(図1参照)における後部に設けた軸受19(図1参照)によって、また駆動輪16は破砕装置13の側壁を構成する破砕機フレーム20に設けた軸受(不図示)によって支持されている。駆動輪16の回転軸21は、軸受よりも機体幅方向外側に設けた駆動装置(不図示)の出力軸にカップリング等を介して連結している。当該駆動装置で駆動輪16を回転駆動することによって駆動輪16及び従動輪の間で搬送ベルト17が循環駆動する。
【0025】
破砕装置13は、送りコンベア12の前方に位置するように本体フレーム10の前後ほぼ中央位置に搭載されている。この破砕装置13は、破砕室27内に収容した上記の破砕ロータ15、及び破砕室27の内周壁部に破砕ロータ15側に突出して設けた反発板であるアンビル(反発板)34を備えている。破砕ロータ15の回転軸は、送りコンベヤ12の駆動輪16の軸と実質平行、すなわち機体幅方向に延在している。また、破砕ロータ15は、外周部に複数の破砕ビット36を有している。破砕ビット36は、破砕ロータ15の外周面に設けたビットホルダ35のロータ正転方向(図3において時計回り)の前方側にボルト及びナット37で取り付けられていて、その刃面(衝突面)は破砕ロータ15の正転方向の前方を向いている。破砕ロータ15は回転体であるため、その最外周部(破砕ビット36)の回転軌跡面と静止体であるアンビル34との間には所定の間隙が確保されている。
【0026】
アンビル34は、破砕室27内に導入された被破砕物が衝突する衝突面39を有しており、破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回する破砕片に衝突面39が対向するように、アンビルフレーム40における湾曲板41(後述)の破砕ロータ15の正転方向後方側に取り付けられている。このアンビル34は破砕室27内の左右ほぼ全長に亘って(一方の破砕機フレーム20の近傍から他方の破砕機フレーム20の近傍まで)延在している。アンビル34を保持するアンビルフレーム40は、押圧ローラ装置14の回動軸22の上方にて破砕機フレーム20に支持された回動軸31を支点に前後に回動可能に支持されており、通常時は破砕機フレーム20の内壁面に固設された支持ブロック42に対しシアピン43を介して支持されていて、アンビル34が破砕室27内に臨む姿勢で拘束されている。運転中、アンビル34にシアピン43の許容剪断応力を超える衝撃荷重がかかった場合、シアピン43が破断してアンビルフレーム40の拘束が解け、アンビルフレーム40が回動軸31を支点に回動しアンビル34が破砕室27から離れるとともに破砕室27が開放される構成である。
【0027】
ここで、破砕室27とは、破砕ロータ15を収容し被破砕物を破砕処理する空間をいう。具体的には、送りコンベヤ12の下流側端部を始点とした場合、破砕ロータ15の正転方向に順に、送りコンベヤ12の端部、湾曲板28(後述)、アンビル34、上記湾曲板41、スクリーン(篩部材)38が破砕ロータ15の外周面に対向して円弧状に配置されており、これら送りコンベヤ12、湾曲板28、アンビル34、湾曲板41、スクリーン38によって画定された空間が破砕室27である。
【0028】
スクリーン38は、多数の排出孔(不図示)を有し円弧面状に曲成された板状の篩部材であり、破砕ロータ15の外周面の下半側(上記湾曲板41に対して破砕ロータ15の正転方向前方側)に対向するように、弧状に形成されたスクリーンホルダ44上に着脱可能に保持されている。また、スクリーン38は、破砕ロータ15の回転方向に複数枚(本実施形態では4枚)並べてスクリーンホルダ44上に配置されている。
【0029】
スクリーン38を支持するスクリーンホルダ44は、機体幅方向に延びる軸45を支点にしてシリンダ47の伸縮動作に伴って上下方向に回動する構成であり、図3の状態(作業時の姿勢)から破砕機フレーム20よりも下側にスクリーン38が下降する位置まで回動する。これによって、破砕機フレーム20の下側からスクリーン38を左右に抜き差しすることができる。
【0030】
シリンダ47は、例えば油圧シリンダ(電動シリンダでも良い)であり、左右の破砕機フレーム20の内壁面にそれぞれ1本ずつ設置されている。左右のシリンダ47は、破砕装置13の前方側に位置し、破砕機フレーム20に取り付けたブラケット49にボトム側が回動可能に連結されており、ブラケット49との連結部を基端部として後方側に延在している。シリンダ47のロッド先端部にはスライダ48が取り付けられ、このスライダ48はアーム46を介してスクリーンホルダ44の前端部近傍に連結されている。アーム46の両端は、スライダ48とスクリーンホルダ44に対して回動可能に連結されている。図3から判るように、スライダ48及びアーム46はリンク機構を構成しており、シリンダ47の伸縮動作に伴うスライダ48の前後方向への往復動作がアーム46の回動動作を経由してスクリーンホルダ44の上下動に変換される。
【0031】
なお、スクリーンホルダ44やアーム46の長さ、シリンダ47の前後位置等は、スクリーンホルダ44が作業時の通常姿勢(図3の状態)のときに、アーム46が破砕室27の接線方向に概ね沿って鉛直近くまで立ち上がるように設定されており、リンク機構によるスクリーンホルダ44の押し上げ力や姿勢保持力が効果的に得られるように配慮されている。
【0032】
上記押圧ローラ装置14は、破砕ロータ15前面の上方にて機体幅方向に延在する回動軸22、回動軸22を支点に上下方向に揺動可能な支持部材23、支持部材23に回転自在に支持されて送りコンベヤ12の駆動輪16付近の搬送面に対向する押圧ローラ24、及び押圧ローラ24の支持部材23を揺動させる油圧シリンダである押圧シリンダ29を備えている。
【0033】
回動軸22は、破砕機フレーム20に設けた軸受(不図示)に回転自在に支持されている。
【0034】
支持部材23は、回動軸22に支持されたアーム部25、及びアーム部25の先端側に連結された押圧ローラ取り付け用のブラケット部26を備えている。アーム部25の下面における押圧ローラ24の前方側の部分は弧状に凹んだ形状をしていて、この弧状の部分に押圧ローラ24の外周面に対向するように、破砕室27の壁面の一部をなす上記の湾曲板28が取付けられている。
【0035】
押圧シリンダ29は、被破砕物の硬度測定(後述)の際に送りコンベヤ12上の被破砕物に押圧ローラ24を押し付けたり、メンテナンス等の際に支持部材23を上方に回動させて破砕室27を開いたりするもので、アーム部25の前端部近傍の上方位置に設けたビームを介して破砕機フレーム20に固定されたブラケット30にボトム側端部が、アーム部25の上面後端部に設けたブラケット32にロッド側端部がそれぞれ回動可能に連結されている。
【0036】
押圧ローラ24は、その軸方向(図3中の紙面直交方向)の寸法が送りコンベヤ12の搬送面の幅と概ね同じ程度、若しくはそれよりも若干大きい程度に設定されている。この押圧ローラ24は駆動装置(不図示)を内部に収容していて、この駆動装置によって送りコンベア12により搬送される被破砕物に転動する方向(図3では反時計回り)に、送りコンベヤ12の搬送速度に同調した周速度で回転駆動する。
【0037】
図4は本実施形態の破砕機の駆動システムの要部、具体的には被破砕物の供給装置すなわち送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14、及び破砕装置13の駆動系統を抜き出して表した回路図である。
【0038】
図4に示したように、本実施形態の破砕機の駆動システムは、タンク60、このタンク60の作動油を吸い上げて吐出する少なくとも1つの油圧ポンプ(図示省略)、油圧ポンプからの作動油の流れ(方向及び流量)を制御する制御弁61−64、押圧ローラ装置14の支持部材23を上下に揺動させる上記押圧シリンダ29、押圧ローラ24を回転駆動させる油圧モータである押圧ローラモータ65、破砕ロータ15を回転駆動させる油圧モータである破砕ロータモータ66、送りコンベヤ12の駆動輪16を回転駆動させる油圧モータである送りコンベヤモータ67、制御弁61から押圧シリンダ29への作動油の供給管路をタンク60に連通又は遮断する開放弁68、及び当該駆動システムを制御する制御装置70を備えている。
【0039】
タンク60は作動油を貯留するものであり、図4では開放弁68を介した押圧シリンダ29の系統との接続関係しか示していないが、同図に示した押圧シリンダ29、押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66及び送りコンベヤモータ67を含め、破砕機に搭載された全ての油圧駆動装置は、このタンク60に貯留された作動油で作動し、油圧駆動装置を駆動した作動油はタンク60に戻る構成である。
【0040】
本実施形態では、押圧シリンダ29のボトム側の油室に接続する作動油管路に圧力センサ71が設けられている。また、押圧シリンダ29には、そのロッドの伸長量を検出するストロークセンサ72が設けられている。ストロークセンサ72は、例えば押圧シリンダ29のロッドに設けたスケールを検出するセンサであり、例えばロッドに磁性スケールを設け、この磁性スケールを磁気センサで検出するもの、また非磁性スケールをロッドに設け、この非磁性スケールを光センサで検出するもの等が適用可能である。さらに、破砕ロータモータ66に接続する作動油管路にも圧力センサ73が設けられている。
【0041】
制御弁61−64は、例えば電磁比例駆動方式の油圧パイロット3位置切換弁であり、油圧ポンプから吐出される作動油の流れ(方向及び流量)を制御し、それぞれ押圧シリンダ29、押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66、送りコンベヤモータ67に供給する役割を果たす。なお、電磁油圧パイロット方式でなく、電磁切換方式の電動の制御弁、油圧で切換及び駆動する方式の制御弁で代替できる場合は、それらを制御弁61−64に用いることもできる。
【0042】
このとき、押圧シリンダ29のロッド側及びボトム側の両油室と制御弁61とを接続する作動油管路からは、タンク60に接続する開放管路59が分岐している。上記の開放弁68はこの開放管路59に設けられた切換弁であり、開放管路59を開放状態又は遮断状態のいずれかに切り換える役割を果たす。
【0043】
制御装置70は、上記圧力センサ71、ストロークセンサ72、圧力センサ73の検出信号を入力し、これら入力信号に応じて制御弁61−64等に指令信号を出力し、押圧シリンダ29、押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66、送りコンベヤモータ67等の駆動装置を制御する機能を一機能として有する。なお、制御装置70には、センサ71−73からの検出信号のみならず、上記の操作レバー57や操作盤58等の各操作手段からの操作信号も入力される。こうした操作手段の一つとして、図4には、押圧シリンダ29を手動で駆動させて押圧ローラ24を被破砕物に押し付ける手動押圧操作手段74を図示した。
【0044】
図5は制御装置70の機能ブロック図である。
【0045】
制御装置70は、入力部75、破砕負荷演算部76、高さ演算部77、押圧負荷演算部78、硬度判定部79、記憶部80、タイマ81、供給中断指令部82、硬度判定指令部83、破砕条件変更部84、中断条件変更部85、及び出力部86を備えている。
【0046】
入力部75は、上記の圧力センサ71、ストロークセンサ72、圧力センサ73等の検出手段からの検出信号、及び手動押圧操作手段74等の操作手段からの操作信号を入力する機能を果たす。
【0047】
破砕負荷演算部76は、圧力センサ73により検出された破砕ロータモータ66の作動油管路の圧力を基に破砕ロータモータ66の負荷を演算する演算処理部であり、圧力センサ73とともに、破砕ロータモータ66の負荷を測定する破砕負荷測定手段として機能する。破砕負荷演算部76の演算結果は、記憶部80に出力されて記憶部80に記憶される。
【0048】
高さ演算部77は、ストロークセンサ72の検出値を基に送りコンベヤ12の搬送面からの押圧ローラ24の下端部の高さを演算する演算処理部である。この高さ演算部77は、上記のストロークセンサ72とともに、押圧シリンダ29を駆動させて押圧ローラ24を被破砕物に押し付けた際の送りコンベヤ12の搬送面からの押圧ローラ24の下端部の高さ、言い換えれば送りコンベヤ12上の被破砕物の上部の搬送面からの高さを測定する高さ測定手段を構成する。高さ演算部77の演算結果は、記憶部80に出力されて記憶部80に記憶される。
【0049】
押圧負荷演算部78は、圧力センサ71により検出された押圧シリンダ29の作動油管路の圧力を基に押圧シリンダ29の負荷を演算する演算処理部である。この押圧負荷演算部78は、圧力センサ71とともに、押圧シリンダ29を伸長駆動させて押圧ローラ24を被破砕物に押し付けた際の押圧シリンダ29の負荷を測定する押圧負荷測定手段を構成する。押圧負荷演算部78の演算結果は、記憶部80に出力されて記憶部80に記憶される。
【0050】
硬度判定部79は、押圧負荷演算部78の測定結果から被破砕物の硬度を判定する判定処理部である。この硬度判定部79では、押圧負荷の測定値を予め用意された少なくとも1つのしきい値と比較することにより、被破砕物の硬度を判定する。その一例として、本実施形態では、予め押圧負荷に対して2つのしきい値S1,S2(S1<S2)を用意し、例えば測定された押圧負荷SがS1以下(S≦S1)であれば低硬度の被破砕物、押圧負荷SがS1より大きくS2以下(S1<S≦S2)であれば中硬度の被破砕物、押圧負荷SがS2より大きければ(S>S2)高硬度の被破砕物と判定する。ここに例示した低硬度とは、例えば草や樹皮、廃パレット等を想定した硬度範囲である。中硬度とは、例えば枝葉や建造物等の解体材等を想定した硬度範囲である。高硬度とは、例えば丸太や幹、柱材等を想定した硬度範囲である。硬度判定部79の判定結果は、記憶部80に出力されて記憶部80に記憶される。
【0051】
供給中断指令部82は、破砕負荷演算部76で演算された破砕負荷の測定結果がしきい値Pc0を超えた状態が予め設定した設定時間T0継続した場合、破砕装置13が過負荷状態にあると判断し、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の制御弁62,64に指令して、送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14による破砕装置13への被破砕物の供給動作を中断させる指令部である。具体的には、供給中断指令部82は、破砕装置13が過負荷状態にあると判断したら、押圧ローラ装置14の押圧ローラ24及び送りコンベヤ12を短時間(設定)だけ逆転駆動させて被破砕物を破砕装置から抜き出した上で停止させ、その後破砕負荷がしきい値Pc0を下回ったら(若しくは予め定めた設定時間が経過したら)、押圧ローラ装置14の押圧ローラ24及び送りコンベヤ12再び正転駆動させて破砕動作を再開させる。なお、以下の説明において、破砕装置13が過負荷状態か否かを判定するための上記のしきい値Pc0、設定時間T0を適宜「中断条件」と記載する。
【0052】
硬度判定指令部83は、破砕装置13が過負荷状態にあると供給中断指令部82が判定した際、供給中断指令部82からの指令に基づき前記送りコンベヤによる被破砕物の供給が中断している間に、押圧シリンダ29の制御弁61に指令して押圧シリンダ29を伸長駆動させ、送りコンベヤ12上の被破砕物に押圧ローラ24を押し付けさせて前記硬度判定手段により前記被破砕物の硬度の判定を指令する指令部である。この押圧シリンダ29の伸長動作は、上記の高さ演算部77及び押圧負荷演算部78による前述の測定動作のトリガになり、押圧ローラ24が被破砕物を押圧することによって被破砕物の搬送面からの高さや押圧負荷が測定され、さらには硬度判定部79によって押圧負荷の測定結果から被破砕物の硬度が判定される。
【0053】
破砕条件変更部84は、上記の硬度判定部79による被破砕物の硬度の判定結果及び高さ演算部77による被破砕物の高さの測定結果に応じて、破砕条件を変更(再設定)する機能を果たし、変更後の破砕条件は記憶部80に記憶される。ここで言う「破砕条件」とは、破砕装置13の駆動速度(破砕ロータモータ66の回転速度)、送りコンベヤ12の駆動速度(送りコンベヤモータ67の駆動速度)、及び押圧ローラ24の駆動速度(押圧ローラモータ65の駆動速度)である。変更後の破砕条件は、前述したように供給中断指令部82が破砕動作の再開を指令する際に参照され、再開後の破砕動作は変更後の破砕条件で実行される。このとき、記憶部80には、被破砕物の硬度の判定結果、被破砕物の高さの測定結果、及び破砕条件の関係を予め定めたテーブルが記憶されていて、破砕条件変更部84は、破砕条件を変更する際に記憶部80に記憶されたテーブルを読み込んで被破砕物の硬度及び高さに応じた破砕条件を選択する。テーブルの一例を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
ここで、表1中の被破砕物の高さは、例えば、押圧ローラ24の最大上昇高さを三等分し、高い領域から順に「高」「中」「低」と区分したものである。すなわち「高」のときの被破砕物の高さが最も高く、「中」「低」と順に低くなっていく。また、破砕モードL,M,Hは、破砕装置13の運転モード名であり、破砕モードL,M,Hにおける破砕ロータ15の回転速度の関係はL<M<Hである。さらに、被破砕物の供給速度の数値は、送りコンベヤ12及び押圧ローラ装置14の駆動速度の最大値を100%とし、最大値に対して何%程度の値かを表している。例えば操作盤58にある被破砕物の供給速度設定用のダイヤルの目盛りが最小から最大まで等分に10目盛りだとすると、(被破砕物の硬度/高さ)の組み合わせが(軟質/低)の場合、ダイヤルの最大目盛り(100%)に設定したときの供給速度、及び破砕モードLという破砕条件に設定される。ダイヤル目盛り換算で表1の破砕条件をまとめると、次の通りである。
【0056】
(軟質/低):ダイヤル目盛り10/破砕モードL
(軟質/中):ダイヤル目盛り8−9/破砕モードL
(軟質/高):ダイヤル目盛り7−8/破砕モードL
(中質/低):ダイヤル目盛り7−8/破砕モードM
(中質/中):ダイヤル目盛り5−6/破砕モードM
(中質/高):ダイヤル目盛り3−5/破砕モードM
(硬質/低):ダイヤル目盛り5−7/破砕モードH
(硬質/中):ダイヤル目盛り3−5/破砕モードH
(硬質/高):ダイヤル目盛り1−3/破砕モードH
表1に例示したテーブルでは、被破砕物が硬度によって破砕モードを設定し、それぞれの硬度において被破砕物の高さによって被破砕物の供給速度に差を付けた設定としてある。表1の設定は一例であって、被破砕物の硬度、高さの評価、区分数、破砕条件との対応を含めて適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0057】
中断条件変更部85は、被破砕物の硬度判定の実行時、すなわち破砕条件変更部84が破砕条件を変更する際、供給中断指令手段82が被破砕物の供給中断の判断に用いる上記中断条件(しきい値Pc0、設定時間T0)を、硬度判定部79の判定結果及び高さ演算部77の演算結果に応じて変更(再設定)する機能を果たし、変更された中断条件は記憶部80に記憶される。
【0058】
しきい値Pc0を変更する場合を例に説明すると、しきい値Pc0として複数の値(ここでは、仮にしきい値Pc0L,Pc0H(Pc0L<Pc0H)とする)を用意しておき、硬度判定部79により被破砕物の硬度が「低硬度」又は「中硬度」と評価された場合には低いしきい値Pc0L、「高硬度」と評価された場合には高いしきい値Pc0Hを設定するといった要領である。勿論、用意するしきい値の数は限定されず、例えば3つのしきい値Pc0L,Pc0M,Pc0H(Pc0L<Pc0M<Pc0H)を用意しておき、「高硬度」、「中硬度」、「低硬度」にそれぞれしきい値Pc0H,Pc0M,Pc0Lを割り当てることも考えられる。
【0059】
勿論、しきい値Pc0を変更する代わりに、設定時間T0を変更する構成とすることもできる。この場合、設定時間T0として複数の値(ここでは、仮に設定時間T0S,T0L(T0S<T0L)とする)を用意しておき、硬度判定部79により被破砕物の硬度が「低硬度」又は「中硬度」と評価された場合には短い設定時間T0S、「高硬度」と評価された場合には長い設定時間T0Lを設定するといった要領である。勿論、用意する設定時間の数は限定されず、例えば3つの設定時間T0S,T0M,T0L(T0S<T0M<T0L)を用意しておき、「高硬度」、「中硬度」、「低硬度」にそれぞれしきい値T0L,T0M,T0Sを割り当てることも考えられる。
【0060】
さらに、しきい値Pc0、設定時間T0のいずれか一方だけでなく、両者の組み合わせにより、より細かく段階的に中断条件を設定するようにしても良い。或いは、被破砕物の硬度評価のみならず、先に表1で説明した破砕条件のように被破砕物の硬度及び高さの組み合わせに対し、しきい値Pc0、設定時間T0の適正な組み合わせをそれぞれ対応付ける構成も考えられる。
【0061】
なお、中断条件と中断動作との関係としては、しきい値Pc0を下げる、設定時間T0を短縮する、又は両方をすることで、中断条件が満たされ易くなる(すなわち制御反応が敏感になる)ので、比較的硬質の被破砕物に対する中断条件として妥当性が増す傾向にある。反対に、しきい値Pc0を上げる、設定時間T0を延ばす、又は両方をすることで、中断条件が満たされ難くなる(すなわち制御反応が鈍感になる)ので、比較的軟質の被破砕物に対する中断条件として妥当性が増す傾向にある。
【0062】
記憶部80は、上記破砕負荷演算部76、高さ演算部77、押圧負荷演算部78、硬度判定部79、破砕条件変更部84、中断条件変更部85の演算や判定の結果、設定した条件、その他各種演算や判定に必要な情報(表1のテーブル等)を記憶する。
【0063】
出力部86は、供給中断指令部82、硬度判定指令部83等からの指令信号を押圧シリンダ29、押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66、送りコンベヤモータ67の各制御弁61−64や開放弁68等に出力する役割を果たす。
【0064】
次に上記構成の本実施形態の破砕機の動作を説明する。
【0065】
まず、図6を用いて破砕機の基本動作すなわち破砕運転中の動作を説明する。
【0066】
(1)基本動作
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によってホッパ11内に被破砕物Wを投入すると、被破砕物Wが送りコンベヤ12の搬送ベルト17に載って破砕装置13に向かって搬送される。被破砕物が破砕装置13の手前のところに差し掛かると、同図に示したように押圧ローラ装置14の押圧ローラ24が被破砕物W上に乗り上げ、その後、押圧ローラ24の自重によって送りコンベヤ12の搬送面に被破砕物Wが押し付けられる。押圧ローラ24は送りコンベヤ12の搬送速度に同調して自転しており、被破砕物Wは搬送ベルト17と押圧ローラ24に挟持され、送りコンベヤ12と押圧ローラ装置14の協働によって破砕室27へ押し込まれる。破砕室27に送り込まれた被破砕物Wは、押圧ローラ24と搬送ベルト17とで挟持された部分を支点に片持ち梁状に破砕ロータ15に向かって突出する。図6に矢印で示したように、破砕ロータ15は被破砕物Wに対して破砕ビット36が下から衝突する向き(同図中時計回り)に回転するので、破砕反力が主に押圧ローラ24によって受けられる構成である。
【0067】
破砕ロータ15に向かって押し込まれる被破砕物Wは、押圧ローラ24によって上方から押さえられつつ、下方から高速で衝突してくる破砕ロータ15の破砕ビット36によって先端から徐々に粗破砕(1次破砕)されていく。このように1次破砕されて破砕室27内で跳ね上げられた被破片はアンビル34に衝突し、その衝撃力によりさらに細かく破砕(2次破砕)される。2次破砕された破砕片のうち既にスクリーンを通過する程度に小さいものはスクリーン38を通過して排出され、通過しない比較的大きなものは破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回し、アンビル34や破砕ビット36、スクリーン38等の破砕室27の内壁面等との衝突作用や剪断作用、すり潰し作用等を受けてさらに破砕(3次破砕)される。そして、周回する破砕片のうち3次破砕を経てスクリーン38の目を通過する大きさに細粒化されたものから順次スクリーン38を通過して破砕装置13から排出される。破砕装置13から排出された破砕物は、シュート(不図示)を介して排出コンベヤ3上に落下し、排出コンベヤ3によって機外に搬出される。
【0068】
次に、図7等を用いて被破砕物の硬度を判定し、破砕条件を設定する動作を説明する。図7は制御装置70による破砕条件等の変更手順を表したフローチャートである。
【0069】
(2)破砕条件等の変更動作
(ステップ101)
破砕運転の開始が指示されたら、制御装置70は図7の制御手順を開始し、破砕運転を開始する前にストロークセンサ72及び圧力センサ71の検出信号を入力し、押圧シリンダ29の初期長さL0(図3参照)、初期圧力P0をそれぞれ演算して記憶部80に記憶する。
【0070】
(ステップ102)
制御装置70は、記憶部80から読み出した現在の破砕条件(又は操作盤58等で入力操作された破砕条件)に応じて排出コンベヤ3、破砕装置13、送りコンベヤ24、押圧ローラ24の各駆動装置の制御弁に指令信号を出力し、排出コンベヤ3、破砕装置13、送りコンベヤ24、押圧ローラ24を駆動させて破砕運転を開始する(排出コンベヤ3の駆動速度は一定とする)。破砕運転開始後の動作は、「(1)基本動作」で説明した通りである。破砕運転時においては、図4に示した押圧ローラモータ65、破砕ロータモータ66、送りコンベヤモータ67の各制御弁62−64は、モータ65−67を正転駆動するポジションに切り換えられ、破砕条件に応じた開度でモータ65−67に作動油を供給する。図4には図示していないが、排出コンベヤ3についても同様である。それに対し、押圧シリンダ29に関しては、制御弁61が押圧シリンダ29への作動油の供給管路を遮断するポジション、開放弁68が開放管路59をタンク60に連通するポジションとされるため、押圧シリンダ29はフリーの状態であり、前述したように押圧ローラ装置14の自重が被破砕物Wにかかる。
【0071】
(ステップ103)
制御装置70は、破砕運転中、手動押圧操作手段74を手動操作することによる手動押圧操作手段74からの操作入力の有無を判定する。入力がなければステップ104に手順を移行し、入力があれば手順をステップ107(後述)に移行する。
【0072】
(ステップ104)
制御装置70は、圧力センサ73からの検出信号(破砕負荷信号)を入力し、破砕負荷演算部76で破砕負荷Pcを演算して記憶部80に記憶する。
【0073】
(ステップ105)
制御装置70は、破砕負荷Pcがしきい値Pc0を超えているか否かを判定する。破砕負荷Pcがしきい値Pc0以下であれば、ステップ103に手順を戻し、しきい位置Pc0を超えていれば、破砕装置13が過負荷状態にあると判定し、タイマ81による時間計測を開始してステップ106に手順を移行する。
【0074】
(ステップ106)
制御装置70は、破砕負荷Pcがしきい値Pc0を超えてから設定時間T0が経過したかどうか(中断条件が満たされたか否か)を判定する。設定時間T0の経過前であれば、手順をステップ105に戻し、その際に破砕負荷Pcがしきい値Pc0以下に復帰していれば手順はステップ103に戻る。破砕負荷Pcがしきい値Pc0を超えた状態のまま設定時間T0を経過した場合、すなわち中断条件が満たされた場合には、手順はステップ107に移る。
【0075】
(ステップ107)
制御装置70は、供給中断指令部82により被破砕物の供給動作の中断を指令するとともに、硬度判定指令部83により被破砕物の硬度判定の実行、すなわち被破砕物の押圧を指令する。
【0076】
供給中断指令部82は、押圧ローラモータ65及び送りコンベヤモータ67の制御弁62,64に指令して、押圧ローラ装置14の押圧ローラ24及び送りコンベヤ12を短時間(設定時間)逆転駆動させて被破砕物を破砕装置13から抜き出した状態とした上で、押圧ローラ24及び送りコンベヤ12を停止させる。或いは、逆転駆動させずに単に停止させる。
【0077】
硬度判定指令部83は、押圧シリンダ29の制御弁61に指令して押圧シリンダ29を伸長駆動させ、停止中の送りコンベヤ12の搬送面上の被破砕物に押圧ローラ24を押し付け、被破砕物の硬度及び高さの判定を指示する。このとき、硬度判定指令部83は、開放弁68に指令信号を出力して開放管路59を遮断するとともに、制御弁61に指令信号を出力して押圧シリンダ29を伸長させる。開放管路59が遮断されることで、押圧シリンダ29がフリー状態を脱し、油圧ポンプからの作動油で伸縮駆動可能な状態となる。
【0078】
(ステップ108)
ステップ107で押圧シリンダ29が伸長動作し押圧ローラ24が被破砕物に押し付けられたことで、制御装置70は、高さ演算部77による測定動作を開始する。高さ演算部77は、ストロークセンサ72の検出信号を基に押圧シリンダ29の現在の長さL(図6参照)を算出し、この長さLを基に送りコンベヤ12の搬送面からの押圧ローラ24の下端部の高さH(図6参照)を演算して記憶部80に記憶する。演算方法としては、例えば記憶部80から押圧シリンダ29の初期長さL0を読み出し、現在の長さLと初期長さL0の偏差ΔL(=L0−L)を算出して、ΔLを送りコンベヤ12の搬送面からの押圧ローラ24の下端部の高さH(図6参照)、すなわち被破砕物の厚みに変換する場合が例示できる。偏差ΔLを求めず、長さLを高さHに直接変換することも考えられる。
【0079】
前掲した表1の評価区分を例とすれば、高さ演算部77は、算出した高さHを「高」「中」「低」で評価して記憶部80に記憶する。
【0080】
(ステップ109)
ステップ107で押圧シリンダ29が伸長動作し押圧ローラ24が被破砕物に押し付けられたことで、制御装置70は、上記高さ測定動作と並行して、押圧負荷演算部78による測定動作を実行する。押圧負荷演算部78は、圧力センサ71による検出信号を基に押圧シリンダ29の現在の圧力Pを算出し、この圧力Pを基に押圧負荷Sを演算して記憶部80に記憶する。演算方法としては、例えば記憶部80から押圧シリンダ29の初期圧力P0を読み出し、現在の圧力Pと初期圧力P0の偏差ΔP(=P−P0)を押圧シリンダ29の押圧力に変換する場合が例示できる。偏差ΔPを求めず、圧力Pを押圧負荷Sに変換することも考えられる。
【0081】
前掲した表1の評価区分を例とすれば、押圧負荷演算部78で演算された押圧負荷Sは、硬度判定部79によって「高硬度」「中硬度」「低硬度」に区分され記憶部80に記憶される。
【0082】
(ステップ110)
被破砕物の高さと硬度が演算されたら、制御装置70は、破砕条件変更部84及び中断条件変更部85により、ステップ107,S108の判定結果に応じて破砕条件及び中断条件を変更する。
【0083】
具体的には、破砕条件変更部84は、硬度判定部79による被破砕物の硬度の判定結果及び高さ演算部77による被破砕物の高さ評価結果に応じて、破砕条件を変更し、変更した破砕条件を記憶部80に記憶する。本実施形態では、前掲の表1のテーブルで破砕条件が設定されることとする。
【0084】
また、中断条件変更部85は、硬度判定部79の判定結果及び高さ演算部77の評価結果に応じて、中断条件を前述したように変更し、変更した中断条件を記憶部80に記憶する。
【0085】
(ステップ111)
ステップ110で破砕条件及び中断条件が変更されたら、制御装置70は、破砕負荷Pcがしきい値Pc0以下になるまで、押圧ローラ24及び送りコンベヤ12を停止状態のまま待機させ、Pc≦Pc0の状態に復帰したら手順をステップ112に移行する。なお、このステップ111で判定に用いるしきい値Pc0は、ステップ110が実行される前の値が維持されている(ステップ110で同値が再設定されている)場合もあるが、変更されている(ステップ110で大きな値又は小さな値に設定変更されている)場合もある。したがって、変更後のしきい値の大きさによってPc≦Pc0となるのに要する時間は変化し得る。
【0086】
(ステップ112)
ステップ112では、制御装置70は、操作盤58等で破砕運転の終了の操作が行われたか否かを判断し、終了の指示がなければ手順をステップ102に戻して破砕運転を再開する。破砕運転を再開する際には、制御装置70は、ステップ110で変更された破砕条件を記憶部80から読み出し、変更後の破砕条件に応じて排出コンベヤ3、破砕装置13、送りコンベヤ24、押圧ローラ24の各駆動装置の制御弁に指令信号を出力し、排出コンベヤ3、破砕装置13、送りコンベヤ24、押圧ローラ24を駆動させて破砕運転を開始する(排出コンベヤ3の駆動速度は一定とする)。押圧シリンダ29はフリーの状態に復帰する。
【0087】
ステップ112の実行時に、既に破砕運転の終了が指示されていれば、制御装置70は、破砕装置13及び排出コンベヤ3を停止して図7の手順を終了する。
【0088】
本実施形態の破砕機による作用効果を説明する。
【0089】
まず、本実施形態によれば、被破砕物の性状や大きさが変化した場合、その変化に応じて破砕条件が適正に変更されるため、被破砕物に対して適正な条件で破砕動作が行われる結果、過負荷状態の発生が抑制され、破砕運転の中断の頻度が減少し作業効率が向上する。また、破砕条件のみならず、被破砕物の性状や大きさに応じて中断条件を適正に変更する場合には、破砕動作の中断時機の適正化によって、作業効率の更なる向上が期待できる。例えば、硬質の被破砕物を対象とした際、被破砕物の硬さの割に過負荷判断のための時間設定が長い場合には、破砕抵抗によって破砕ロータの回転数が低下した状態で暫く破砕動作が継続し得ることで、破砕物の粒度品質が低下する恐れがある。また、軟質の被破砕物を対象とした際、被破砕物の硬さの割に過負荷判断のための時間設定が短い場合には、制御が敏感になり過ぎ、必要以上に破砕動作が中断されて作業効率が低下する恐れがある。それに対し、本実施形態では、被破砕物の性状や大きさに応じて中断条件を変更することで、破砕物の粒度品質や作業効率の低下を抑制することができる。
【0090】
このとき、本実施形態では、破砕条件や中断条件(以下、「破砕条件等」とする)の適正な選定をオペレータに強いることなく被破砕物の性状に応じて破砕条件等を自動的に設定することで、作業効率を向上させることができる。したがって、破砕条件等がオペレータの主観や経験に左右されることもなく、妥当性の高い破砕条件等で破砕機を運転することができ、また破砕条件等の設定でオペレータを悩ませることもない。また、破砕機の運転操作は投入重機のオペレータが兼務することが多く、破砕機の運転状況や被破砕物の性状の監視、破砕条件等の設定変更を強いることはオペレータの負担になるが、本実施形態ではこのオペレータの負担軽減にも寄与する。
【0091】
また、本実施形態の破砕機は、例えば破砕装置に被破砕物を供給しながら破砕ロータの負荷を監視して破砕条件にフィードバックするのとは異なり、破砕装置13に供給される前の被破砕物の性状や大きさを監視し、供給前にその被破砕物の性状に応じて破砕条件等を変更し得る点も、構成上の重要なメリットである。
【0092】
さらには、通常の破砕運転時には押圧シリンダ29をフリーにし、搬送されてくる被破砕物に押圧ローラ24が乗り上げる構成としているのに対し、破砕条件等を変更する際には押圧シリンダ29を伸長駆動して押圧ローラ24を被破砕物に積極的に押し付けるため、破砕条件等の変更動作は通常の破砕動作と分けて実行することが好ましい。しかし、例えば一定時間おきに破砕動作を中断して破砕条件等の変更動作を実行する構成とすると、破砕条件等の変更が必要でないにも関わらず破砕動作が中断されて作業効率を低下させてしまう可能性もある。また、破砕運転中に押圧シリンダ29をフリーにせずに一定の押圧力で被破砕物を押圧する構成とし、破砕動作中に随時又は一定時間おきに破砕条件等を変更する構成も考えられるが、データの処理量が必要以上に増大する、破砕条件等が過度に変更される等の恐れがある。
【0093】
それに対し、本実施形態では、破砕装置13が過負荷状態になって被破砕物の供給動作が中断される機会を利用して、その間に破砕条件等の変更動作を実行することにより、破砕条件等の変更動作のために必要以上に破砕動作を中断し作業効率を低下させることがない。また、被破砕物の性状や量に対して破砕条件等が適合していないことは破砕動作が中断される一因に挙げられるため、破砕動作中断の機会に破砕条件等が自動的に見直されることは合理的である。しかも、破砕条件等の変更動作を適時に実行するのでデータ処理量も抑えられ、過度に破砕条件等が変更されることもない。
【0094】
なお、以上の実施形態において、被破砕物の高さを測定するために押圧シリンダ29のストロークセンサ72を用いたが、例えば押圧ローラ装置14の回動軸22(又は他の関節部)に角度センサを設置し、角度センサの検出信号を基に被破砕物の高さ(支持部材23の角度姿勢)を測定することもできる。
【0095】
また、破砕条件変更部84が、硬度判定部79の判定結果とともに高さ演算部77の演算値を基にして破砕条件を設定する構成を採ったが、被破砕物の大きさが比較的均一で供給量も安定している場合等には、高さ演算部77の演算結果を参照せず、硬度判定部79の判定結果のみを基にして破砕条件を設定する構成としても良い。また、破砕条件変更部84が、破砕条件として、破砕装置13の駆動速度及び送りコンベヤ12の駆動速度を変更する場合を例に挙げて説明したが、破砕装置13及び送りコンベヤ12のいずれか一方の駆動速度を変更する構成としても良い。
【0096】
また、破砕条件の変更時に中断条件を併せて変更する場合を例示したが、破砕条件の変更に併せて中断条件を変更する必要は必ずしもなく、押圧シリンダ29を伸長駆動して被破砕物を押圧ローラ24で押圧した際に破砕条件のみを変更する構成としても良い。また、破砕条件と併せて中断条件を変更するにしても、しきい値Pc0及び設定時間T0の双方を変更する必要は必ずしもなく、いずれか一方のみを変更する構成とすることもできる。
【0097】
また、破砕負荷を破砕ロータモータ66の負荷圧力で測定する構成としたが、例えば破砕ロータモータ66の回転数を検出する回転数センサを設置し、破砕ロータモータ66の回転数を基に破砕負荷を測定する構成とすることもできる。また、破砕装置13や押圧ローラ装置14等の各作動機器を油圧駆動式としたが、電動にすることもできる。電動の駆動装置の負荷を検出する場合、例えば電動モータの負荷電流を基に過負荷を検出することができるので、油圧駆動式の場合と同様に図7に示した動作手順を実行することができる。
【0098】
また、破砕装置13の過負荷時に被破砕物の供給動作を中断させる際、送りコンベヤ12及び押圧ローラ24を一時的に逆転させてから停止させる構成としたが、逆転動作を実行せずに単に送りコンベヤ12及び押圧ローラ24を停止させる構成とすることもできる。また、送りコンベヤ12上の被破砕物を押圧する押圧手段として押圧ローラ24を例示したが、押圧ローラ24に代えて例えば履帯状の押圧手段を用いることも考えられる。また、押圧手段を被破砕物に押し付ける押圧駆動手段としては、押圧シリンダ29の代わりに、例えば回動軸22に連結したモータ(油圧又は電動)を用いることもできる。
【0099】
さらに、本発明を自力走行可能な破砕機に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引により走行可能な移動式破砕機、若しくはクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式破砕機にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
12 送りコンベア
13 破砕装置
24 押圧ローラ(押圧手段)
29 押圧シリンダ(押圧駆動装置)
71 圧力センサ(押圧負荷測定手段)
72 ストロークセンサ(高さ測定手段)
73 圧力センサ(破砕負荷測定手段)
74 手動押圧操作手段
76 破砕負荷演算部(破砕負荷測定手段)
77 高さ演算部(高さ測定手段)
78 押圧負荷演算部(押圧負荷測定手段)
79 硬度判定部(硬度判定手段)
82 供給中断指令部(供給中断指令手段)
83 硬度判定指令部(硬度判定指令手段)
84 破砕条件変更部(破砕条件変更手段)
85 中断条件変更部(中断条件変更手段)
H 被破砕物の高さ
Pc 破砕負荷
Pc0 しきい値
S 押圧負荷
T0 設定時間
W 被破砕物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物を破砕する破砕装置と、
この破砕装置に被破砕物を搬送する送りコンベアと、
この送りコンベアの搬送面に対向する押圧手段と、
この押圧手段を前記送りコンベヤ上の被破砕物に押し付ける押圧駆動装置と、
この押圧駆動装置を駆動させて前記押圧手段を被破砕物に押し付けた際の前記押圧駆動装置の負荷を測定する押圧負荷測定手段と、
この押圧負荷測定手段の測定結果から被破砕物の硬度を判定する硬度判定手段と、
この硬度判定手段の判定結果に応じて、前記破砕装置の駆動速度、前記送りコンベヤの駆動速度の少なくとも一方を変更する破砕条件変更手段と
を備えたことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記破砕装置を駆動する破砕駆動装置の負荷を測定する破砕負荷測定手段と、
この破砕負荷測定手段の測定値が予め設定した設定時間継続してしきい値を超えた場合に前記送りコンベヤによる前記破砕装置への被破砕物の供給動作を中断させる供給中断指令手段と、
この供給中断指令手段からの指令に基づき前記送りコンベヤによる被破砕物の供給を中断している間に前記押圧駆動装置を駆動させ、前記送りコンベヤ上の被破砕物に前記押圧手段を押し付けて前記硬度判定手段により前記被破砕物の硬度の判定を指令する硬度判定指令手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
被破砕物の硬度判定の実行時、前記供給中断指令手段が被破砕物の供給中断の判断に用いる前記しきい値、前記設定時間の少なくとも一方を前記硬度判定手段の判定結果に応じて変更する中断条件変更手段をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の破砕機。
【請求項4】
前記押圧駆動装置を駆動させて前記押圧手段を被破砕物に押し付けた際の前記送りコンベヤの搬送面からの前記押圧手段の高さを測定する高さ測定手段をさらに備え、
前記破砕条件変更手段は、前記硬度判定手段の判定結果とともに前記高さ測定手段の測定結果を基にして、前記破砕装置の駆動速度、前記送りコンベヤの駆動速度の少なくとも一方を変更する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の破砕機。
【請求項5】
前記押圧駆動装置を手動で駆動させて前記押圧手段を被破砕物に押し付ける手動押圧操作手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の破砕機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−81369(P2012−81369A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226859(P2010−226859)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】