硬化性樹脂組成物及び光導波路
【課題】透明性、柔軟性、耐湿熱性を備え、硬化性、加工性、耐環境性に優れ、特に高い耐熱性が要求される光・電気混載基板を製造する上で有用な硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、(A)が、式(1)
で表され、該化合物の異性体の含有量が、20%以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【解決手段】脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、(A)が、式(1)
で表され、該化合物の異性体の含有量が、20%以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐屈曲性、耐熱性、耐湿性に優れ、さらに硬化収縮、光伝搬損失の少ない、光導波路に好適な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやインターネットの普及・発達に伴う情報量の著しい増加に従って、情報通信の更なる大容量化・高速化が求められている。高速大容量通信の手段として、光を情報伝達媒体とする光通信、特に光ファイバー、光導波路が広い分野で用いられるようになっており、中でも、フィルム状、シート状の樹脂組成物を用いた光導波路は、低コスト、衝撃安定性、大面積化可能、屈曲性などの観点から、今後様々な分野で利用されることが期待される。また、光導波路には鉛フリーハンダのリフローという高温プロセスに耐える高い耐熱性が要求されるが、同一基板内に電気配線と光導波路配線を配した光・電気混載基板への利用も期待される。光導波路に用いられる樹脂組成物としては、加工性の観点から、光などの活性エネルギー線によって硬化する樹脂が用いられることが多い。
【0003】
光導波路に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂の一つとして、高透明で光伝搬損失が少ないことや、樹脂硬化時の硬化収縮が小さいことなどから、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は前記の通り、高透明、低硬化収縮などの優位点を有する一方、柔軟性に劣り、変形に対してクラックが入りやすいなどの欠点を有する。そこで、ポリオール化合物を配合し柔軟性を付与するなどの改良が施されており、例えば、ポリオール化合物を配合したエポキシ樹脂を含む光導波路用感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1)。また、光導波路とは全く異なる分野であるが、エポキシ基を有する化合物と特定のカーボネートジオール及び活性エネルギー線活性触媒からなる活性エネルギー線硬化性樹脂が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−126497号公報
【特許文献2】特開平9−71636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記に示された活性エネルギー線硬化性樹脂について、光導波路のコアやクラッドに用いることを検討した。しかしながら、上記、特許文献1には、エステル結合を有する脂環式エポキシ樹脂とポリオールからなる樹脂組成物が記載されているが、エステル結合を有する脂環式エポキシ樹脂を用いた場合には、熱分解や加水分解が起こりやすく、耐環境性(耐湿熱性)に問題が生じることがわかった。また、光導波路でも特に電気配線との混載基板を形成する場合には、鉛フリーのハンダリフローに耐え得る耐熱性が必要であるが、既存のいずれの発明も光・電気混載基板に適用できるような光導波路用樹脂組成物が得られず、いまだ課題を有していることがわかった。
【0006】
特許文献2に記載の組成物のように、ポリカーボネートポリオールが、固体状やワックス状、ペースト状である場合には、分散性が悪く、透明性が低下したり、光導波路のようにある程度の厚みを有する成形体を硬化する場合には、表層と内層で硬化度の差が生じ、硬化による「しわ」が生じることがわかった。すなわち、既存のいずれの発明も、光導波路用樹脂組成物としては、課題を有していることがわかった。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、エポキシ樹脂とポリオールからなる活性エネルギー線により硬化する樹脂組成物であって、透明性、柔軟性、耐湿熱性を備え、硬化性、加工性、耐環境性に優れ、なおかつ、光伝搬損失の小さい光導波路、特に高い耐熱性が要求される光・電気混載基板を製造する上で有用な硬化性樹脂組成物、さらには、該硬化性樹脂からなる光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、化合物の構造とその異性体比率を特定した脂環式ジエポキシ化合物と、数平均分子量が特定値以上のポリオール及び活性エネルギー線感応触媒からなる硬化性樹脂組成物によって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(3)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる下記式(2)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、前記に同じ)
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
【0011】
上記各硬化性樹脂組成物において、ポリオール(B)は炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)であってもよい。炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)は、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオール又はポリオレフィン系ポリオールであってもよい。ポリジエン系ポリオールには、ポリブタジエンポリオールが含まれる。また、ポリジエン系ポリオールは、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールであってもよい。主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールには、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリブタジエンポリオールが含まれる。ポリオレフィン系ポリオールとして、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールに水素添加して得られるポリオレフィン系ポリオールが挙げられる。分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールには、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリイソプレンが含まれる。
【0012】
また、炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)は、両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーであってもよい。両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーには、下記化学式(4)で表されるオリゴマーが含まれる。
【化4】
(式中、R19は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、nは1〜50の整数である)
【0013】
上記各硬化性樹脂組成物において、前記ポリオール(B)は液状のポリカーボネートポリオール(B2)であってもよい。ポリカーボネートポリオール(B2)には、1,6−ヘキサンジオール成分、その他のジオール成分、及び、カーボネート成分から構成され、1,6−ヘキサンジオール成分とその他のジオール成分のモル比が9:1〜1:9である化合物が含まれる。
【0014】
上記各硬化性樹脂組成物において、前記ポリオール(B)は液状のポリエステルポリオール(B3)であってもよい。ポリエステルポリオール(B3)には、カプロラクトン共重合体も含まれる。
【0015】
上記各硬化性樹脂組成物において、前記ポリオール(B)は液状のポリエーテルポリオール(B4)であってもよい。ポリエーテルポリオール(B4)には、環状エーテルの開環共重合体も含まれる。
【0016】
脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部とする)に対して、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が30〜90重量部、ポリオール(B)の配合量が10〜70重量部、触媒(C)の配合量が0.05〜10重量部であるのが好ましい。
【0017】
上記各硬化性樹脂組成物は、さらに、炭素数3〜15、フッ素数1〜23の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールを含んでいてもよい。また、芳香環、又は、臭素及び芳香環を有するエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
本発明は、さらに、コアとクラッドからなる光導波路であって、コア又はクラッドの少なくとも何れか一方が上記の硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路を提供する。
【0019】
この光導波路において、コアとクラッドの屈折率の差は0.01以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、化合物の構造とその異性体比率を特定した脂環式ジエポキシ化合物と、数平均分子量が特定値以上のポリオールを用いるため、熱分解や加水分解を起こしにくく、また、硬化時に表層と内層の硬化度の差による「しわ」などを発生しにくく、生産性、加工性や環境変化に対する安定性に優れている。また、上記特性を反映して、該硬化性樹脂組成物を用いた光導波路は、取り扱い性が良好で、厳しい環境変化の下、特に鉛フリーハンダリフローという過酷な加工プロセスを経ても高い信頼性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、(i)前記式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である化合物であるか、又は、(ii)前記式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる前記式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。この硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、屈折率調整用のフッ素や硫黄、芳香環、ハロゲン含有の添加剤、無機粒子を含有させてもよい。また、そのほかにも、本発明の効果を阻害しない範囲内で、消泡剤、酸拡散制御剤、反応性希釈剤、可とう性エポキシ樹脂、光増感剤、脱水剤、界面活性剤、帯電防止剤、可塑剤や滑剤、架橋ゴム粒子等の有機物微粒子、酸化チタン、シリカ、酸化ジルコニア等の無機微粒子などの各種添加剤を含有させてもよい。
【0022】
[脂環式ジエポキシ化合物(A)]
前記式(1)中、R1〜R18におけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が含まれる。「酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基」における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5程度のアルキル基);ビニル、アリル基等のアルケニル基(例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5程度のアルケニル基);エチニル基等のアルキニル基(例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5程度のアルキニル基)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロアルケニル基;橋架け環式基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。酸素原子を有する炭化水素基としては、例えば、前記炭化水素基の炭素鎖中に酸素原子が介在している基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシアルキル基等)などが挙げられる。ハロゲン原子を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロフェニル基等の前記炭化水素基の有する水素原子の1又は2以上がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子)により置換された基が挙げられる。「置換基を有していてもよいアルコキシ基」におけるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ基等の炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)程度のアルコキシ基などが挙げられる。アルコキシ基の置換基としては、例えば、前記ハロゲン原子などが挙げられる。
【0023】
式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物のなかでも、R1〜R18がすべて水素原子である3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルが特に好ましい。
【0024】
3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体とは、沸点等の物性が近似しているため、一般的なガスクロマトグラフィーの装置では分離できないことが多い。そのため、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の定量分析は、より分離能が高いキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーにより行うのが望ましい。3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物及びその異性体のガスクロマトグラフィーによる定量分析は下記の測定条件で行うことができる。なお、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の構造は、例えば、NMR、GC−MS、GC−IR等によって確認することができる。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で10分保持
スプリット比:100
サンプル:1μl(エポキシ化合物:アセトン=1:40)
【0025】
式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物において、不純物として含まれている3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量は、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物(主化合物)とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下であり、好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下である。このような脂環式ジエポキシ化合物は、前記異性体の含有量が20%を超えるものと比較して、硬化反応速度が著しく速く、しかも硬化後の硬化物のガラス転移温度が大幅に高くなり、耐熱性等の物性が著しく向上する。
【0026】
このような脂環式ジエポキシ化合物は、例えば、前記式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体(二重結合の位置の異なる異性体)の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満(例えば19.5%以下、好ましくは15%以下)の脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより製造できる。式(2)中、R1〜R18は前記に同じである。
【0027】
ここで原料として用いられる異性体含有量の少ない式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物は、例えば、前記式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる。式(3)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は前記と同じである。
【0028】
より詳細には、例えば、前記式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、(i)有機溶媒中、反応条件下において液状又は反応液に溶解する脱水触媒の存在下、20Torr(2.67kPa)を超える圧力下で130〜200℃の温度に加熱し、副生する水を留去しながら脱水反応を行う工程と、(ii)前記工程(i)に続いて、反応混合液を200Torr(26.7kPa)以下の圧力下で100〜220℃の温度に加熱して、生成した式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる工程とを経ることにより製造することができる。この方法について、以下に説明する。
【0029】
式(3)で表される化合物の代表的な例として、4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル(水添ビフェノール)が挙げられる。
【0030】
前記工程(i)で使用する有機溶媒としては、反応条件下で不活性な溶媒であれば特に限定されないが、25℃において液体であって、沸点が120〜200℃程度のものが好ましい。好ましい有機溶媒の代表的な例として、例えば、キシレン、クメン、プソイドクメンなどの芳香族炭化水素;ドデカン、ウンデカンなどの脂肪族炭化水素などが挙げられる。有機溶媒として、副生水を簡易に分離除去するため、水と共沸し且つ水と分液可能な有機溶媒を用いてもよい。ケトンやエステル等の酸の存在下で反応する溶媒は沸点が上記範囲であっても好ましくない。また、アルコールは脱水反応を起こす可能性があるため好ましくない。
【0031】
有機溶媒の使用量は、操作性や反応速度等を考慮して適宜選択できるが、通常、基質である4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物100重量部に対して、50〜1000重量部程度であり、好ましくは80〜800重量部程度、さらに好ましくは100〜500重量部程度である。
【0032】
工程(i)で用いる脱水触媒としては、脱水活性を有し、反応条件下において液状のもの又は反応液に溶解するもの(後述する使用量で完全に溶解するもの)であれば特に限定されないが、反応溶媒に対して活性が無いか又はできるだけ低いものが好ましい。反応条件下において液状である脱水触媒は反応液中に微分散するものが好ましい。脱水触媒としては、通常、リン酸や硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類などの酸、又はそれらの塩、特に前記酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が使用される。脱水触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
酸の有機塩基による中和塩を使用する場合、酸と有機塩基とを反応させて得られる反応混合物から中和塩(完全中和塩又は部分中和塩)を単離精製して用いることもできるが、酸と有機塩基とを反応させて得られる反応混合物(完全中和塩及び/又は部分中和塩を含んでいる)をそのまま使用することもできる。後者の場合、この反応混合物中には遊離の酸が含まれていてもよい。また、後者の場合、酸と有機塩基との混合割合は、例えば、酸1当量に対して、有機塩基が0.01〜1当量程度、好ましくは0.05〜0.5当量程度、さらに好ましくは0.1〜0.47当量程度である。特に、硫酸と有機塩基との反応混合物を使用する場合、硫酸と有機塩基との混合割合は、硫酸1モルに対して、有機塩基が好ましくは0.02〜2モル、さらに好ましくは0.1〜1.0モル、特に好ましくは0.2〜0.95モル程度である。また、酸の有機塩基による中和塩を使用する場合、酸と有機塩基とを別々に添加して、系内で中和塩を形成してもよい。
【0034】
前記有機塩基としては塩基性を示す有機化合物であればよく、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ベンジルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類(特に、第3級アミン類);ピリジン、コリジン、キノリン、イミダゾールなどの含窒素芳香族複素環化合物;グアニジン類;ヒドラジン類などが挙げられる。これらの中でも、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類(特に、環状アミン類)、グアニジン類、ヒドラジン類が好ましく、特に、DBU、DBN、トリエチレンジアミン、トリエチルアミンが好ましい。また、有機塩基としては、pKa11以上のものが好ましく、また沸点が150℃以上のものが好ましい。
【0035】
脱水触媒として硫酸水素カリウム等の硫酸のアルカリ金属塩を用いると、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによる面積の割合として20%未満のものが得られない。なお、脱水触媒として硫酸水素アンモニウムを用いた場合には、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として19%程度のものが得られる。
【0036】
したがって、脱水触媒としては、スルホン酸類(p−トルエンスルホン酸等)、リン酸、硫酸、スルホン酸類(p−トルエンスルホン酸等)の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、リン酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が好ましい。なかでも、スルホン酸類(特に、p−トルエンスルホン酸)、該スルホン酸類の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が好ましく、特に、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩(とりわけ部分中和塩)が好ましい。
【0037】
脱水触媒の使用量は、原料である式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物1モルに対して、例えば0.001〜0.5モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.005〜0.2モルである。
【0038】
前記工程(i)と工程(ii)とでは圧力が異なる。工程(i)の反応液中には、未反応の4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物、該4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物におけるヒドロキシル基が結合した2つのシクロヘキサン環のうち1つのみが分子内脱水してシクロヘキセン環に変化した反応中間体、目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物、副生水、脱水触媒、及び反応溶媒が共存している。この工程(i)においては副生水を留出させるが、このとき前記反応中間体を留出させることは以下の点から望ましくない。すなわち、(1)前記反応中間体は、さらに分子内脱水することにより目的化合物に変換できるため、これを留出させると目的化合物の収率の低下を招く、(2)前記反応中間体は一般に昇華性の固体であるため、蒸留塔を使用する場合には、副生水の留出経路に固体が析出することによって該留出経路が閉塞して反応器内部の圧力上昇を招き、反応容器の破裂、破損、反応液の飛散等のトラブルの原因となる。したがって、工程(i)では、前記反応中間体が留出しないように、20Torr(2.67kPa)を超える圧力下で、副生水を留去しながら脱水反応を行う。圧力は、好ましくは20Torrより高く常圧以下(2.67kPaより高く0.1MPa以下)、より好ましくは100Torrより高く常圧以下(13.3kPaより高く0.1MPa以下)、さらに好ましくは200Torrより高く常圧以下(26.7kPaより高く0.1MPa以下)であり、操作性の点からは、特に常圧が好ましい。工程(i)における温度(反応温度)は130〜200℃であり、好ましくは140〜195℃、さらに好ましくは150〜195℃である。温度が高すぎると副反応が起こり収率が低下する。また温度が低すぎると反応速度が遅くなる。反応時間は、例えば3L程度の合成スケールであれば、1〜10時間、好ましくは2〜6時間程度である。
【0039】
一方、工程(ii)では、副生水を留出させた後の反応混合液から目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる。なお、工程(i)で得られた反応混合液は、そのまま工程(ii)に供してもよいが、必要に応じて、前記反応混合液に対して抽出、水洗、液性調整等の適宜な処理を施した後に工程(ii)に供してもよい。また、反応に用いた有機溶媒の沸点が目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の沸点より低い場合には、通常、該有機溶媒を留去した後にビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる。
【0040】
この工程(ii)では、前記反応中間体はほとんど存在しないので圧力を低くしても留出経路の閉塞等の問題は起こらず、また圧力が高いと目的化合物の留出に時間を要するため、200Torr(26.7kPa)以下の圧力で操作する。工程(ii)の圧力は、工程(i)の圧力より低くするのが好ましい。例えば、工程(i)の圧力と工程(ii)の圧力の差(前者−後者)は、例えば100Torr以上(13.3kPa以上)、好ましくは200Torr以上(26.7kPa以上)、さらに好ましくは500Torr以上(66.7kPa以上)である。工程(ii)の圧力は、好ましくは3〜200Torr(0.40〜26.7kPa)、より好ましくは3〜100Torr(0.40〜13.3kPa)、さらに好ましくは3〜20Torr(0.40〜2.67kPa)程度である。工程(ii)の温度は100〜220℃であり、好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜150℃未満程度である。温度が高すぎると副反応が起こりやすくなりビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の回収率が低下する。また温度が低すぎると留出速度が遅くなる。
【0041】
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物などを留出させるため、例えば反応器等に蒸留装置を付随させる場合には、該蒸留装置として、充填塔、オールダーショウ型蒸留装置など一般に使用されている蒸留装置で還流比の取れるものであれば特に限定されることなく使用できる。
【0042】
工程(ii)で留出したビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物は、必要に応じてさらに精製することができる。精製法としては、微量の水を含む場合は比重差を利用して分離することも可能であるが、一般には蒸留による精製が好ましい。
【0043】
このような方法によれば、原料の4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を有機溶媒中、反応条件下において液状又は反応液に溶解する脱水触媒の存在下、特定の反応条件で副生水を留去しつつ反応させた後、生成したビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を特定の条件で留出させるので、比較的低い温度で且つ比較的短時間で反応を行うことができ、異性化等の副反応を抑制できるとともに、反応中間体の留出によるロス・昇華による閉塞等を防止できるため、不純物含量の少ない高純度のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を簡易に且つ高い収率で効率よく得ることができる。すなわち、式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満(例えば19.5%以下、好ましくは15%以下)の脂環式ジエン化合物を得ることができる。
【0044】
なお、従来の方法、例えば、特開2000−169399号公報に記載の方法では、長い反応時間を必要とするので、異性化等の副反応により望ましくない副生物が多量に生成する。副生した異性体は沸点や溶媒溶解性等の物性が目的化合物と近似しているので、一旦生成すると分離が極めて困難となる。このような副生物を多量に含む環状オレフィン化合物を、エポキシ化して硬化性樹脂として使用すると、硬化の際に反応性が低い上、耐熱性等の物性に優れる硬化物が得られない。なお、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体とは、沸点等の物性が極めて近似しているため、一般的なガスクロマトグラフィーの装置では分離できず、これまでの文献ではビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の収率及び純度が高めに記載されている。ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の分析は、分離能が高いキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーにより行うのが望ましい。
【0045】
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物及びその異性体のガスクロマトグラフィーによる定量分析は下記の測定条件で行うことができる。なお、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の構造は、例えば、NMR、GC−MS、GC−IR等によって確認することができる。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ60m、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:2.6ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):60℃で5分保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:100
サンプル:1μl
【0046】
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物のエポキシ化法は特に制限はなく、例えば、酸化剤(エポキシ化剤)として有機過カルボン酸を用いる方法、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシドとモリブデン化合物等の金属化合物とを用いる方法等の何れであってもよいが、安全性、経済性、収率等の観点から有機過カルボン酸を用いる方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0047】
有機過カルボン酸としては、例えば、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過イソ酪酸、トリフルオロ過酢酸などを使用できる。有機過カルボン酸のうち、特に過酢酸は、反応性が高く、しかも安定度が高いことから好ましいエポキシ化剤である。なかでも、実質的に水分を含まない、具体的には、水分含有量0.8重量%以下、好ましくは0.6重量%以下の有機過カルボン酸を使用することが高いエポキシ化率を有する化合物が得られるという点で好ましい。実質的に水分を含まない有機過カルボン酸は、アルデヒド類、例えば、アセトアルデヒドの空気酸化により製造されるものであり、例えば、過酢酸についてはドイツ公開特許公報1418465号や特開昭54−3006に記載された方法により製造される。この方法によれば、過酸化水素から有機過カルボン酸を合成し、溶媒により抽出して有機過カルボン酸を製造する場合に比べて、連続して大量に高濃度の有機過カルボン酸を合成できるために、実質的に安価に得ることができる。
【0048】
エポキシ化剤の量には厳密な制限がなく、それぞれの場合における最適量は、使用する個々のエポキシ化剤やビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の反応性等によって決まる。エポキシ化剤の量は、例えば、不飽和基1モルに対して、1.0〜3.0モル、好ましくは1.05〜1.5モル程度である。経済性及び副反応の問題から、3.0倍モルを超えることは通常不利である。
【0049】
エポキシ化反応は、装置や原料物性に応じて溶媒使用の有無や反応温度を調節して行う。溶媒としては、原料粘度の低下、エポキシ化剤の希釈による安定化などの目的で使用することができ、過酢酸の場合であればエステル類、芳香族化合物、エーテル類などを用いることができる。特に好ましい溶媒は、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン等であり、とりわけ、酢酸エチルが好ましい。反応温度は用いるエポキシ化剤とビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の反応性によって定まる。例えば、過酢酸を使用する場合の反応温度は20〜70℃が好ましい。20℃未満では反応が遅く、70℃を超える温度では過酢酸が発熱を伴って分解するので、好ましくない。
【0050】
反応で得られた粗液の特別な操作は必要なく、例えば粗液を1〜5時間撹拌し、熟成させればよい。得られた粗液からのエポキシ化合物の単離は適当な方法、例えば貧溶媒で沈殿させる方法、エポキシ化合物を熱水中に撹拌下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、直接脱溶媒する方法、蒸留精製により単離する方法などにより行うことができる。
【0051】
このようにして、式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量(異性体比率)が、式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下(好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下)である脂環式ジエポキシ化合物を得ることができる。
【0052】
本発明において、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量は、脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部とする)に対して、30〜90重量部が好ましく、より好ましくは50〜80重量部である。脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が90重量部を超える場合には、ポリオールの添加効果が小さく、硬化時に「しわ」が発生しやすくなったり、硬化物の屈曲性が低下する場合があり、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が30重量部未満である場合には、耐熱性や透明性が低下する場合がある。
【0053】
[ポリオール(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられるポリオール(B)は、1分子内に水酸基を2個以上有する化合物であり、好ましくは、1分子あたりの水酸基数は2〜3個である。本発明においては、ポリオール(B)は、炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)、液状のポリカーボネートポリオール(B2)、液状のポリエステルポリオール(B3)、又は液状のポリエーテルポリオール(B4)であるのが好ましい。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物が硬化する際に、上記脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)は、カチオン重合により、共重合体(硬化物)を形成する。ここで、例えば、前記共重合体のポリオール成分の主鎖にエーテル結合が含まれる場合には、硬化物が熱分解しやすくなり、また、エステル結合が含まれる場合には、加水分解が起こりやすくなるため、硬化物を高温高湿の環境下で使用する際に安定性が低下しやすい。このため、ポリオール(B)は、主鎖にエーテル結合、エステル結合などを含まない構造であることがより望ましい。そのようなポリオール(B)として、主鎖が炭素−炭素結合を主成分として構成されるポリオール(B1)、若しくは、主鎖に酸素原子を有していても加水分解などを受けにくいポリカーボネートポリオール(B2)を用いることができる。
【0055】
本発明におけるポリオール(B)の数平均分子量は、400以上(例えば、400〜10000)であり、好ましくは480〜10000、より好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは1500〜5000である。ポリオール(B)の分子量が400未満である場合には、脂環式ジエポキシ化合物(A)のエポキシ基に対する水酸基の量が相対的に多くなりすぎるため、親水化し、水分をとりこみやすくなる。この水分が硬化阻害を引き起こすため、硬化度が低下する。このため、硬化時のしわの原因となったり、硬化後に粘着性が残り生産性が低下したり、耐熱性や弾性率や曲げ強度が低下するため、用途によっては使用不可能となる。また、分子量が10000を超える場合には、液状でなくなったり、粘性が高く取り扱い性が低下することがある。また、脂環式ジエポキシ化合物(A)のエポキシ基に対する水酸基の量が相対的に少なくなり、エポキシ樹脂のエネルギー線照射時の硬化反応の速度が遅くなる。このため、硬化工程で内層まで十分に硬化反応が進まず、表層と内層に硬化度の差が生じ、これが原因で樹脂組成物に「しわ」が生じる場合がある。
【0056】
本発明のポリオール(B)が炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)である場合、主鎖(ただし、末端基は含まない)の60%以上が炭素原子であり、好ましくは65%以上が炭素原子であり、さらに好ましくは、主鎖は炭素原子のみからなる。ポリオール(B1)としては、分子量制御の観点から、炭素数が25〜700の飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のジオールが好ましく例示される。水酸基の位置は、主鎖末端、側鎖で特に限定されないが、柔軟化、強靱化の観点から、主鎖の両末端に位置することが好ましい。中でも、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールまたはポリオレフィン系ポリオールが好ましい。
【0057】
上記、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールとしては、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエン、ポリイソプレン、または、分子鎖の両末端に水酸基を有し、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化されたポリジエン系ポリオール(例えば、水酸基末端ポリブタジエン等)が好ましい。
【0058】
また、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリオレフィン系ポリオールとしては、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリエチレンやポリプロピレンなどが挙げられるが、好ましくは、上述の分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールに水素添加して製造されたものが好ましく、例えば、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエンやポリイソプレンに水素添加したものが好ましい。
【0059】
本発明におけるポリオール(B1)としては、上記の他、両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーも好ましく、例えば、前記式(4)に示されたビニルエーテル系オリゴマーを用いることができる。前記式(4)において、R19は水素またはアルキル基またはアリール基を示し、nは1〜50の整数である。なお、ここでいうアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。また、アリール基としては、フェニル、ナフチル基などが挙げられる。アリール基の芳香環は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
上記に挙げたポリオールとしては、例えば、ダイセル化学工業(株)製「エポリードPB3600」、協和発酵ケミカル(株)製「TOE−2000H」などが市販品として入手可能である。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明におけるポリオール(B)は、液状のポリカーボネートポリオール(B2)であるのも好ましい。なお、ここでいう「液状」とは、25℃で測定した粘度が100Pa・s未満であることをいう。ポリオール(B)が固体状(ワックス状、ペースト状など)である場合には、脂環式ジエポキシ化合物(A)との混和性が悪く、ポリオール添加の効果が小さくなる。すなわち、水酸基濃度が偏ることにより硬化時に硬化度の不均一が生じて「しわ」が発生し、生産性が低下しやすくなる。また、分散不良により、透明性が低下して、光伝搬損失が大きくなる場合がある。
【0062】
上記ポリカーボネートポリオール(B2)としては、通常のポリカーボネートポリオールを製造する方法と同じくホスゲン法または、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネートまたはジフェニルカーボネートを用いるカーボネート交換反応(特開昭62−187725号、特開平2−175721号、特開平2−49025号、特開平3−220233号、特開平3−252420号公報等)などで合成される。
【0063】
ジアルキルカーボネート等と共にカーボネート交換反応で用いられるポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0064】
上記のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ダイセル化学工業(株)製「プラクセルCD205PL、CD205HL、CD210PL、CD210HL、CD220PL、CD220HL」、宇部興産(株)製「UH−CARB50、UH−CARB100、UH−CARB300、UH−CARB90(1/3)、UH−CARB90(1/1)、UC−CARB100」。旭化成ケミカルズ(株)製「PCDL T4671、T4672、T5650J、T5651、T5652」などが市販品として入手可能である。 これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
ポリカーボネートポリオールとしては、上記の中でも、柔軟化効果や製造コストなどの観点から、1,6−ヘキサンジオール成分、化学式HO−R20−OHで表されるその他のジオール成分、及び、カーボネート成分から構成されるオリゴマーである場合に、脂環式ジエポキシ化合物(A)との相溶性の観点で、特に好ましい。また、上記の場合に、1,6−ヘキサンジオール成分とその他のジオール成分のモル比は、9:1〜1:9が好ましく、より好ましくは、7:3〜3:7である。なお、R20は2価の有機基を示す。R20の炭素数は、例えば、2〜14であり、酸素、窒素、硫黄原子を含んでいてもよく、また、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。さらに、1〜3個の環状構造を有していてもよく、環内に酸素、窒素、硫黄原子を含んでいてもよい。中でも、R20として酸素原子が介在していてもよい炭素数2〜14の2価の炭化水素基(特にアルキレン基、シクロアルキレン基又はこれらの結合した基)が好ましい。
【0066】
本発明におけるポリオール(B)は、液状のポリエステルポリオール(B3)であるのも好ましい。この場合、ポリエステルポリオールは、ポリオール成分とカルボン酸成分から構成され、脱水エステル化反応、エステル交換反応、ラクトンの開環重合など、またはその組み合わせによって合成することができる。上記、ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。カルボン酸成分としては、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトララコン酸、1,10−デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、乳酸、りんご酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられる。ラクトン類としては、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0067】
上記の中でも、本発明のポリエステルポリオール(B3)として、特に好ましくは、ポリカプロラクトンポリオール(カプロラクトン共重合体)である。ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン等の公知の多価アルコールの存在下で、ε−カプロラクトンを開環付加重合して得られるポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。ポリエステルポリオール(B3)として、特に2種以上の多価アルコールとカプロラクトンとを開環付加重合して得られるポリカプロラクトンポリオール(カプロラクトン共重合体)が好ましい。
【0068】
上記のポリエステルポリオール(B3)としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製「プラクセル205、205H、205U、205BA、208、210、210CP、210BA、212、212CP、220、220CPB、220NP1、220BA、220ED、220EB、220EC、230、230CP、240、240CP、210N、220N、L205AL、L208AL、L212AL、L220AL、L230AL、220ED、220EB、220EC、205BA、210BA、220BA、305、308、312、L312AL、320、L320AL、L330AL、410、410D、610、P3403、CDE9P、P3403、E227」などが市販品として入手可能である。
【0069】
本発明のポリオール(B)が液状のポリエーテルポリオール(B4)である場合、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどやこれらの共重合体が例示される。これらは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状エーテルの開環重合により製造される。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。ポリエーテルポリオール(B4)として、特に環状エーテルの開環共重合体が好ましい。
【0070】
ポリエーテルポリオールとしては、旭電化工業(株)製「P−400、P−700、P−1000、P−2000、P−3000、G−300、G−400、G−700、G−1500、G−3000、G−4000、EDP−450、EDP−550、DG−500、DG−575、SP−600、SP−690SC−800、SC−1000、SC−1001、クオドロール」、日本油脂(株)製ポリエチレングリコール「PEG#200、400、600、1000、1500、2000、4000、6000」、東邦化学工業(株)製ビスオール「2EN−6、4EN、10EN、2P、2PN、3PN」、旭硝子(株)製「Poly−G 420P、720PG、1020P、2020P、3020P、630PG、1030PG、1530PG、2530PG、3030PG、4030PG、5030PG、210PG、212PG、448PG、412PG、439PG、216PG、X−213、X−301、X−302、X−303、400P、415P、419P、423P、443P、427P、441P、442P、610PG、357SA、465SA、480SA、530SA、X−71−531、X−71−532、375S、531S、RF−64、RF−66」、旭化成せんい(株)製「PTXG」、三洋化成工業(株)製「PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG1540、PEG2000、PEG4000S、PEG4000N、PEG6000S、PEG6000P」、「サンニックスGP−200、GE−250、TP−700、TE−700、EP−400、HE−400、HE−560、HE−600、RA−530、RX−401、RX−300、RX−403、RX−500、HR−460A」、「サンニックストリオールGP−250、GP−400、GP−600、GP−1000、TP−400」、「サンニックスポリオールRP−410A、HR−450P、HS−209」、「サンニックスヘキサトリオールSP−750」等が市販品として入手可能である。
【0071】
ポリオール(B1)、ポリオール(B2)、ポリオール(B3)、ポリオール(B4)これらは、いずれも2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
本発明において、ポリオール(B)の配合量は、脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部)に対して、10〜70重量部が好ましく、より好ましくは20〜50重量部である。ポリオール(B)の配合量が10重量部未満の場合には、ポリオールの添加効果が小さく、硬化工程で「しわ」が生じやすくなったり、硬化物の屈曲性が低下する場合があり、ポリオール(B)の配合量が70重量部を超える場合には、耐熱性や透明性が低下する場合がある。
【0073】
[触媒(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられる触媒(C)は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により、プロトン、アニオン、ラジカル等を発生する触媒であれば、特に限定されず、カチオン重合開始剤、ラジカル重合触媒、アニオン重合触媒であってもよいが、好ましくはカチオン重合触媒である。また、活性エネルギー線についても、紫外線や電子線など、特に限定されないが、反応性などの観点から、紫外線を用いることが好ましい。触媒(C)の具体例としては、脂環式ジエポキシ化合物(A)およびポリオール(B)との組み合わせでも異なるが、例えば、光カチオン重合開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。また、触媒(C)は、異なる光カチオン重合開始剤同士を併用してもよく、光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用してもよく、光カチオン重合開始剤と熱によりプロトンを発生する熱カチオン重合開始剤を併用してもよい。なお、触媒(C)としては、既存の市販品を用いることが可能であり、The DOW Chemical Company製「CYRACURE UVI−6992、UVI−6976」、旭電化工業(株)製「アデカオプトマー SP−150、SP−152、SP−170、SP−172」、三新化学工業(株)製「サンエイド SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−180L」、GE東芝シリコーン(株)製「UV9380c」、ローディアジャパン(株)製「Rhodorsil2074」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製「IRGACURE250」、ダイセル・サイテック(株)製「Uvacure1590」、などが市場で入手可能である。
【0074】
本発明の触媒(C)の、硬化性樹脂組成物中の配合量は、脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部)に対して、0.05〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。触媒(C)の含有量が0.05重量部未満の場合には、活性エネルギー線照射時の重合反応の開始効率が悪く、局所的に重合して斑となったり、生産性が低下したりする場合があり、含有量が10重量部を超える場合には、耐熱性や透明性が低下する場合がある。硬化反応の制御が困難となったり、硬化物の分子量が小さくなったりする。
【0075】
[他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、屈折率調整の観点で、フッ素含有アルコールを含有していてもよい。その場合、フッ素含有アルコールは、炭素数が3〜15であり、フッ素数が1〜23の、直鎖または分岐状のアルコールであることが好ましい。フッ素含有アルコールを含有することにより、硬化性樹脂組成物の屈折率を低く調整することができる。上記のフッ素含有アルコールとしては、例えば、1H,1H−トリフルオロエタノール、1H,1H−ペンタフルオロプロパノール、6−(パーフルオロエチル)ヘキサノール、1H,1H−ヘプタフルオロブタノール、2−(パーフルオロブチル)エタノール、3−(パーフルオロブチル)プロパノール、6−(パーフルオロブチル)ヘキサノール、2−パーフルオロプロポキシ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパノール、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、3−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、6−(パーフルオロヘキシル)ヘキサノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、3−(パーフルオロオクチル)プロパノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロデシル)エタノール、1H,1H−2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノナノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノール、1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール、2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール等が挙げられる。フッ素含有アルコールの硬化性樹脂組成物中の含有量は、所望の屈折率に従って適宜変更できるが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物は、屈折率調整の観点で、脂環式ジエポキシ化合物(A)に加えて、芳香環または臭素と芳香環、硫黄を有するエポキシ樹脂や水酸基を有する他の樹脂を含有していてもよい。上記芳香環または臭素及び芳香環、硫黄を有する樹脂を含有することにより、硬化性樹脂組成物の屈折率を高く調整することができる。上記の樹脂は、既存の市販品を用いることも可能であり、例えば、市場で入手可能なものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 828、1001、1004、1009」や大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン 850−S、860、1055」、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン 830−S」、ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン EXA1514」、フェニルグリシジルエーテルとしてはナガセケムテックス(株)製「デナコール EX−141」、多官能エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 152、157S65、1031S、604」や大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン N−665、HP−7200」、ナフタレン型エポキシ樹脂としては大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン HP−4032、EXA−4701」、ビフェノール型エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート YX4000」、フェノキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 1256、4250」、臭素化エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 5050、5051」や大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン 152、153」やナガセケムテックス(株)製「デナコール EX−147」(ジブロモフェニルグリシジルエーテル)、住友化学工業(株)製「スミカエクセルPES 5003P」等が挙げられる。上記樹脂の硬化性樹脂組成物中の含有量は、所望の屈折率に従って適宜変更できるが、1〜70重量%が好ましく、より好ましくは、5〜60重量%である。
【0077】
なお、上記の芳香環、または、臭素及び芳香環、硫黄含有樹脂は、光導波路のコアを構成する硬化性樹脂組成物に用いられることが好ましく、フッ素含有アルコールは光導波路のクラッドを構成する硬化性樹脂組成物に好ましく用いられる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物には、反応速度を調節する目的で、必要に応じて、水酸基を有する化合物(数平均分子量400未満の低分子量のポリオールを含む)を添加してもよい。その場合、水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。上述の通り、水酸基を添加すると硬化反応速度を速めることが可能である。ただし、上記化合物を多量に添加すると、連鎖移動反応が起こりやすくなるため、硬化度が低下し、樹脂組成物の耐熱性などが低下する。
【0079】
上記硬化性樹脂組成物の粘度(25℃)は、加工性の観点から、100〜100000mPa・sが好ましく、より好ましくは200〜50000mPa・sである。
【0080】
上記硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは250℃以上である。硬化後のTgが100℃未満の場合には、高温環境下にさらされた場合に変形を生じ、光導波路の特性が低下する場合がある。
【0081】
上記硬化性樹脂組成物の硬化物の光透過率(島津製作所(株)製、分光光度計「UV−2450」、波長850nm、硬化物の厚み3mm)は、93T%以上が好ましい。光透過率が93T%未満である場合には、光導波路の材料として用いた場合に、伝搬損失が大きくなり、通信効率が低下する場合がある。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物を光導波路用部材として使用する場合、本発明の硬化性樹脂組成物は、コア、クラッドに用いられることは言うまでもないが、その他にも、樹脂基板として用いても良いし、基板と光導波路の間の中間層としても使用することができる。
【0083】
本発明の光導波路は、コアとクラッドから構成される。コアとクラッドの少なくともいずれか一方は本発明の硬化性樹脂組成物からなる必要があり、コア、クラッドともに本発明の硬化性樹脂組成物である場合が好ましい。なお、上記にいう「コア」とは、光導波路の導光部分のことをいい、クラッドはコアの周りに接して設けられている、コアよりも低屈折率の媒体であり、コア/クラッド界面で全反射を起こさせることを目的として設けられる部分をいう。本発明の硬化性樹脂組成物をコアおよびクラッドのいずれに用いない場合、基材または基材と光導波路の中間層にのみ用いる場合には、本発明の硬化収縮低減や長時間使用時の信頼性向上の効果は得られない。
【0084】
本発明の光導波路は、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも0.01以上大きいことが好ましく、より好ましくは、0.02以上である。屈折率が0.01よりも小さい場合には、コアとクラッド界面の全反射の臨界角が小さくなり、入射角度が制限されるため、コアの口径を小さくしなければならないことがある。なお、前述の通り、上記屈折率は、構成原料の置換基を選択したり、添加剤を添加することによって制御することができ、例えば、フッ素含有アルコール(屈折率を低下する)や、芳香環、または、臭素及び芳香環、硫黄を有する樹脂あるいは酸化ジルコニア微粒子(屈折率を増加する)を加えることにより制御することが可能である。
【0085】
本発明の光導波路の、コア部の幅及び高さは5〜100μmが好ましく、より好ましくは、25〜75μmである。コア部の幅及び高さが100μmを超える場合には、光導波路への光の入射角が大きくなって、臨界角を超える光までが入射されるため、入射光の一部が伝搬されず、伝搬損失が大きくなることがある。また、5μm未満の場合には、入射光量が小さくなるため、大容量通信には適さない場合がある。
【0086】
[硬化性樹脂組成物の硬化方法及び光導波路の製造方法]
以下に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化方法及び光導波路の製造方法を示す。なお、ここでは、湿式リソグラフィー法の一例を示すが、製造方法は、ここに挙げる方法に限定されるものではない。
【0087】
脂環式ジエポキシ化合物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、および必要に応じて、フッ素含有アルコールを所定の割合で添加したクラッド用の硬化性樹脂組成物(1)と脂環式ジエポキシ化合物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、および必要に応じて、臭素及びベンゼン環を有するエポキシ樹脂を所定の割合で添加したコア用の硬化性樹脂組成物(2)を作製する。
【0088】
続いて、基板上に、硬化性樹脂組成物(1)を塗布する。基板としては、シリコンやガラス基板が一般的に挙げられる。また、塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、インクジェット法などを用いることが可能である。中でも、表面の平滑性、厚みの精度などの観点から、スピンコート法が最も好ましく用いられる。スピンコートは、0〜100℃、10〜1000回転/分で1〜60秒塗布を行う前工程と、500〜10000回転/分で30〜300秒行われる後工程の、2段階の塗布によって行われることが、塗布厚み、表面の平滑性などの精度向上の観点から好ましい。乾燥またはプリベーク処理を施す。
【0089】
続いて、活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂組成物(1)を硬化させ、クラッド層を形成する。この際に、照射する活性エネルギー線としては、可視光、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などを用いることができる。中でも、安全性、反応効率などの工業性の観点などから、波長200〜400nmの紫外線が好ましく用いられる。好ましい照射条件としては、例えば、照度1〜1000mW/cm2、照射量0.1〜10000mJ/cm2で照射することが挙げられる。活性エネルギー線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどのランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザーなどのパルス、連続のレーザー光源などを用いることが可能である。
【0090】
次に、コアを形成する。上記と同様の方法で、硬化性樹脂組成物(2)を、上記のクラッド層上に塗布する。続いて、所定のライン状のスリットパターンを有するフォトマスクを用いて、塗布層の所定の部分(通常は直線の形状)のみを硬化させる。次いで、硬化部分と未硬化部分の溶解性の差を移用して、現像液を用いて、未硬化部分を除去し、コアの形状を作製する。なお、現像液としては、硬化性樹脂組成物(2)の種類によっても異なるが、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等のアルカリ水溶液や、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、アルコールなどの有機溶媒を用いることができる。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー現像法などの公知の手法を用いることができ、現像時間としては、30〜600秒程度が好ましい。現像液は風乾または水洗により除去する。
【0091】
さらに、上記と同様の方法によって、硬化性樹脂組成物(1)を塗布・硬化させ、クラッド層を形成し、光導波路を得る。最後にポストベークを行うと、溶媒等の除去、樹脂層の硬度、耐熱性が向上するため、好ましい。
【0092】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
以下に、本発明について用いられる測定方法および効果の評価方法について例示する。
【0093】
(1)粘度
E型粘度計を用いて、25℃において測定した。
【0094】
(2)ガラス転移温度(Tg)
アプリケータを用いて、硬化性樹脂組成物を鋼板上に、20μmの厚みで塗布する。UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−301」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量1500mJ/cm2)し、150℃で4時間ポストキュアした後に剥離し、試験片を作成した。
剛体振り子型粘弾性測定器((株)エー・アンド・ディー製「RPT3000」)を用いて、対数減衰率のピーク温度を測定し、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上を良好(○)とし、250℃未満を不十分(×)とした。
【0095】
(3)耐屈曲性
アプリケータを用いて、硬化性樹脂組成物を鋼板上に、100μmの厚みで塗布する。UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−301」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量1500mmJ/cm2)し、150℃で4時間ポストキュアした後に剥離し、試験片を作成した。
JIS K 5400に準拠して測定し、心棒直径10mmでの測定で、割れない場合を耐屈曲性が良好(○)、割れる場合を耐屈曲性不十分(×)と評価した。
【0096】
(4)硬化による「しわ」の発生
(3)と同条件で試験片を作成し、試験片の硬化後の状態を、目視で観察して、「しわ」の発生が認められないものを良好(○)と判断し、「しわ」の発生が認められるものを不良(×)と判断した。
【0097】
(5)密着性
(3)と同様にして、基材(鋼板)上に硬化性樹脂組成物を塗布・硬化させ硬化物層(層厚み:100μm)を設けた。その後、さらに該硬化物層の上に、同一の硬化性樹脂組成物を同様に塗布・硬化(層厚み:100μm)させ、2層の硬化物層を有する試験片を作成した。
該試験片を、恒温恒湿槽(エスペック(株)製「TSE−11−A」)を用い、(i)−40℃で30分放置後、(ii)85℃、85%RHで30分放置するサイクルを、500サイクル繰り返した。なお、昇温速度は3℃/分、降温速度1℃/分である。
500サイクル後、2層の硬化物層同士の界面に染色浸透探傷液(日本マテック(株)製、商品名「KD−CHECK RDP−1」)を塗布し、割れ、剥がれを目視観察し(試験回数:n=5)、全ての試験片において界面での剥離がみられなかった場合を密着性良好(○)と判断し、1つでも剥離がみられる場合には密着性不良(×)と判断した。
【0098】
(6)伝搬損失
サンプルとして、光導波路を用いた。実施例と同様にして、4インチシリコンウエハの基板上に、50μm×50μm角のコアを含む、厚み150μm直線上の光導波路を作製し、ダイシングにより導波路長10mmの光導波路サンプルを作製して試験を行った。
光テストセット(アンリツ(株)製「MT9810B」)を用いて測定を行った。波長850nmの光を、光導波路サンプルの一端から入射させ、他端から出射する光量をパワーメーターにより測定し、サンプルを介さない場合の光量との比を、伝搬損失(dB)とした。試験回数3回の平均値を用い、伝搬損失が1.0(dB/cm)以下の場合を伝搬損失が少ない(良好:○)、1.0(dB/cm)を超える場合を伝搬損失が大きい(不良:×)と判断した。
【0099】
(7)信頼性(熱履歴後の伝搬損失)
(6)で測定したサンプルを、熱風オーブン中、260℃で1分間加熱した後、85℃、85%RHの環境下で1週間放置した。
(6)と同様にして、上記サンプルの熱履歴後の伝搬損失を測定し、(6)と同じ基準で判断した。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0101】
[分析法]
(1)ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン及びその異性体のガスクロマトグラフィー(GC分析)
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ60m、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:2.6ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):60℃で5分保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:100
サンプル:1μl
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンとその異性体との比は次のようにして求めた。すなわち、上記条件でGC分析を行い、保持時間20.97分付近に出る最大ピーク(ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン)の面積と、その直前に現れる20.91分付近のピーク(異性体)の面積に基づいて、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンに対する異性体の含有比を求めた。すなわち、異性体比率(%)は、異性体面積÷(異性体面積+ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン面積)×100で算出される。
【0102】
(2)3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル及びその異性体のガスクロマトグラフィー(GC分析)
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で10分保持
スプリット比:100
サンプル:1μl(エポキシ化合物:アセトン=1:40)
3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体との比は次のようにして求めた。すなわち、上記条件でGC分析を行い、保持時間19.8分から20.0分付近に出る最大ピーク2本[3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル(2本のピークは立体異性体の存在による)]の合計面積と、その直前に現れる19.1分から19.5分付近のピーク3本(異性体)の合計面積に基づいて、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルに対する異性体の含有比を求めた。すなわち、異性体比率(%)は、異性体合計面積÷(異性体合計面積+3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル合計面積)×100で算出される。
【0103】
(3)3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル及びその異性体のGC−MS分析
測定装置:ヒューレットパッカード社製、HP6890(GC部)、5973(MS 部)
カラム:HP−5MS、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.25mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で18分保持
注入口温度:250℃
MSDトランスファーライン温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:0.7ml/分(コンスタントフロー)
スプリット比:スプリットレス
サンプル注入量:1.0μl
測定モード:EI
イオン源温度:230℃
四重極温度:106℃
MS範囲:m/z=25〜400
サンプル調製:サンプル0.1gをアセトン3.0gに溶解
合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物をGC−MS分析に付した。その結果(ガスクロマトグラムと各成分のMSスペクトル)を図4〜13に示す。保持時間17.73分、17.91分、18.13分のピークが3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルの異性体のピークであり、18.48分、18.69分のピークが3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルのピークである。上記GC分析の場合と分析条件が若干異なるので各ピークの保持時間は異なるが、出現する順序は同じである。図4はガスクロマトグラムと保持時間17.73分のピークのMSスペクトルであり、図5はその拡大図である。図6はガスクロマトグラムと保持時間17.91分のピークのMSスペクトルであり、図7はその拡大図である。図8はガスクロマトグラムと保持時間18.13分のピークのMSスペクトルであり、図9はその拡大図である。図10はガスクロマトグラムと保持時間18.48分のピークのMSスペクトルであり、図11はその拡大図である。図12はガスクロマトグラムと保持時間18.69分のピークのMSスペクトルであり、図13はその拡大図である。MSスペクトルによれば、上記何れの成分もm/z=194の分子イオンピークを有している。
【0104】
合成例1(異性体比率9%)
95重量%硫酸70g(0.68モル)と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)55g(0.36モル)を撹拌混合して脱水触媒を調製した。
撹拌機、温度計、および脱水管を備え且つ保温された留出配管を具備した3リットルのフラスコに、下記式(3a)
【化5】
で表される水添ビフェノール(=4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル)1000g(5.05モル)、上記で調製した脱水触媒125g(硫酸として0.68モル)、プソイドクメン1500gを入れ、フラスコを加熱した。内温が115℃を超えたあたりから水の生成が確認された。さらに昇温を続けてプソイドクメンの沸点まで温度を上げ(内温162〜170℃)、常圧で脱水反応を行った。副生した水は留出させ、脱水管により系外に排出した。なお、脱水触媒は反応条件下において液体であり反応液中に微分散していた。3時間経過後、ほぼ理論量の水(180g)が留出したため反応終了とした。反応終了液を10段のオールダーショウ型の蒸留塔を用い、プソイドクメンを留去した後、内部圧力10Torr(1.33kPa)、内温137〜140℃にて蒸留し、731gのビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを得た。GC分析の結果、得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン中にはその異性体が含まれており(GC−MS分析により確認)、下記式(2a)
【化6】
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエンとその異性体の含有比は91:9であった(図3参照)。
得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン(異性体を含む)243g、酢酸エチル730gを反応器に仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、かつ、反応系内の温度を37.5℃になるようにコントロールしながら約3時間かけて30重量%過酢酸の酢酸エチル溶液(水分率0.41重量%)274gを滴下した。過酢酸溶液滴下終了後、40℃で1時間熟成し反応を終了した。さらに30℃で反応終了時の粗液を水洗し、70℃/20mmHgで低沸点化合物の除去を行い、脂環式エポキシ化合物270gを得た。このときの収率は93%であった。粘度(25℃)を測定したところ、84mPa・sであった。得られた脂環式エポキシ化合物のオキシラン酸素濃度は15.0重量%であった。また1H−NMRの測定では、δ4.5〜5ppm付近の内部二重結合に由来するピークが消失し、δ3.1ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、下記式(1a)
【化7】
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルであることが確認された。GC分析の結果、得られた脂環式エポキシ化合物中には3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体が含まれており、異性体比率は9%であった(図1参照)。なお、異性体比率は次式により算出した。
異性体比率=(2262+1715+5702)÷(2262+1715+5702 +28514+74587)×100=9%
【0105】
比較合成例1(異性体比率21%)
撹拌機、20段の蒸留塔、温度計を備えている10リットルの四つ口フラスコに、水添ビフェノール6kgと硫酸水素カリウム620gを加えた。続いて、フラスコを180℃に加熱し、水添ビフェノールを融解後、撹拌を開始した。蒸留塔の塔頂より副生水を留出させながら反応を続け、3時間経過後、反応系内を10Torr(1.33kPa)に減圧し、水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを蒸留塔の最上段より連続的に系外に留出させた。系外に留去させた水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンはデカンターで二層に分離させ、上層液のみを取り出した。その後、4時間かけて反応温度を220℃まで上げ、水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留去が無くなった時点で反応終了とした。ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留出粗液の収量は4507gであった。上記ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留出粗液4500gを撹拌機、20段の蒸留塔、温度計を備えている5リットルの四つ口フラスコに入れ、オイルバスで180℃に昇温した。その後、反応系内を10Torr(1.33kPa)に減圧し、水を留去してから蒸留塔の最上段の温度を145℃に維持し、還流比1で5時間かけてビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを蒸留精製し、無色透明の液体を得た。収量は4353gであった。前記液体についてGC分析を行った結果、得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン中には異性体が含まれており、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンと異性体の含有比は80:20であった。
得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン(異性体を含む)243g、酢酸エチル730gを反応器に仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、かつ、反応系内の温度を37.5℃になるようにコントロールしながら約3時間かけて30重量%過酢酸の酢酸エチル溶液(水分率0.41重量%)274gを滴下した。過酢酸溶液滴下終了後、40℃で1時間熟成し反応を終了した。さらに30℃で反応終了時の粗液を水洗し、70℃/20mmHgで低沸点化合物の除去を行い、脂環式エポキシ化合物267gを得た。このときの収率は92%であった。粘度(25℃)を測定したところ、63mPa・sであった。得られた脂環式エポキシ化合物のオキシラン酸素濃度は14.9重量%であった。また1H−NMRの測定では、δ4.5〜5ppm付近の内部二重結合に由来するピークが消失し、δ3.1ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルであることが確認された。GC分析の結果、得られた脂環式エポキシ化合物には3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体が含まれており、異性体比率は21%であった(図2参照)。異性体比率は次式により算出した。
異性体比率=(5404+3923+13067)÷(5404+3923+130 67+23563+60859)×100=21%
【0106】
実施例1
表1に示す通り、脂環式ジエポキシ樹脂として、合成例1を75重量部、ポリオールとして、水酸基末端エポキシ化ブタジエン(ダイセル化学工業(株)製、商品名「エポリードPB3600」)を25重量部、紫外線感応触媒として、トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェイト塩(ダイセル・サイテック(株)製、商品名「Uvacure1590」を3重量部、および、エチレングリコール1重量部を、温度60℃で1時間攪拌混合して、硬化性樹脂組成物1を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物1は、表1に示す通り、その硬化物は、良好な耐屈曲性、密着性を有し、硬化収縮の小さい、光導波路用途として優れた特性を有していた。
【0107】
実施例2
表1に示す通り、ポリオールとして、水酸基末端水素添加ポリイソプレン(出光興産(株)製、商品名「エポール」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物2を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物2は優れた特性を有していた。
【0108】
実施例3
表1に示す通り、ポリオールとして、両末端水酸基型ビニルエーテルオリゴマー(協和発酵ケミカル(株)製、商品名「TOE−2000H」:HO(CH2)2(CH(OC2H5)CH2)nCH2OH)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物3を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物3は優れた特性を有していた。
【0109】
実施例4
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリカーボネートポリオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルCD205PL」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物4を調製した。なお、屈折率は1.51であった。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物4は優れた特性を有していた。
【0110】
実施例5
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリカーボネートポリオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルCD220PL」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物5を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物5は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.50であった。
【0111】
実施例6
表1に示す通り、実施例5と全く同様の原料を用い、エポキシ樹脂とポリオールの含有量をそれぞれ50重量部ずつに変更して、硬化性樹脂組成物6を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物6は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.49であった。
【0112】
実施例7
フッ素含有アルコール(ダイキンファインケミカル研究所製、「A−5410」)を添加し、表1に示すように含有量を変更した以外は、実施例5と全く同様にして、硬化性樹脂組成物7を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物7は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.49であった。
【0113】
実施例8
臭素化フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、「デナコールEX−147」)を添加し、表1に示すように含有量を変更した以外は、実施例5と全く同様にして、硬化性樹脂組成物8を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物8は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.51であった。
【0114】
実施例9
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリエステルポリオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルL220AL」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物9を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物9は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.50であった。
【0115】
実施例10
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリエーテルポリオール(旭化成せんい(株)製、商品名「PTXG」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物10を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物10は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.50であった。
【0116】
比較例1
表2に示す通り、ポリオールを添加せずに、実施例5と同様にして、硬化性樹脂組成物11を調製した。
表2に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物11は硬化時に「しわ」が発生し、耐屈曲性、密着性の劣るものであった。
【0117】
比較例2
表2に示す通り、エポキシ化合物(A)として比較合成例1を用いた以外は、実施例5と全く同様にして硬化性樹脂組成物12を調製した。
表2に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物12は硬化物のTgが低く耐熱性が劣るものであった。
【0118】
比較例3
表2に示す通り、エポキシ化合物(A)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名「セロキサイド2021P」)を用いた以外は、実施例5と全く同様にして硬化性樹脂組成物13を調製した。
表2に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物13は硬化物のTgが低く耐熱性の劣るものであった。
【0119】
さらに、上記の実施例、比較例で作製した硬化性樹脂組成物を用いて、光導波路を作製した。
【0120】
実施例1で作製した硬化性樹脂組成物1をコアとし、実施例5で作製した硬化性樹脂組成物5をクラッドとして、光導波路を作製した。
シリコンウエハ上に、硬化膜厚が50μmとなるように、スピンコート法により、硬化性樹脂組成物5を塗布し、マスクアライナーを用いて、照度30mW/cm2の紫外線を50秒間、大気雰囲気下で照射し、クラッド層を形成した。次に、上記クラッド層の上に、硬化膜厚が50μmとなるように、スピンコート法により、硬化性樹脂組成物1を塗布した後、コア部の幅が50μmの幅を有するマスクを通して、紫外線を照射した。次いで、アセトンからなる現像液によって、未硬化部を除去し、その後、150℃で4時間の加熱処理を行った。さらにその上面に、硬化膜厚が50μmとなるように、スピンコート法により、硬化性樹脂組成物5を塗布・硬化し、クラッド層を形成して、150℃で4時間加熱処理を施して、光導波路を作製した。
得られた光導波路について、伝搬損失および信頼性の評価を行ったところ、伝搬損失が少なく、また、信頼性も良好な優れた特性を有する光導波路であった。
【0121】
上記と、全く同様にして、実施例8で作製した硬化性樹脂組成物8をコアとし、実施例2〜7、9〜10、比較例1〜3で作製した硬化性樹脂組成物2〜7、9〜13をそれぞれクラッドとする光導波路を作製した。
その結果、実施例の硬化性樹脂組成物を用いた光導波路は、伝搬損失が少なく、また、信頼性も良好な優れた特性を有する光導波路であった。一方、硬化性樹脂組成物11は硬化の際に「しわ」が発生したため、不良品が多量に発生し、生産性の著しく劣るものであった。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC分析のチャートである。
【図2】比較合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC分析のチャートである。
【図3】合成例1において得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエンのGC分析のチャートである。
【図4】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間17.73分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図5】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間17.73分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図6】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間17.91分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図7】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間17.91分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図8】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.13分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図9】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.13分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図10】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.48分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図11】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.48分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図12】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.69分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図13】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.69分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、耐屈曲性、耐熱性、耐湿性に優れ、さらに硬化収縮、光伝搬損失の少ない、光導波路に好適な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやインターネットの普及・発達に伴う情報量の著しい増加に従って、情報通信の更なる大容量化・高速化が求められている。高速大容量通信の手段として、光を情報伝達媒体とする光通信、特に光ファイバー、光導波路が広い分野で用いられるようになっており、中でも、フィルム状、シート状の樹脂組成物を用いた光導波路は、低コスト、衝撃安定性、大面積化可能、屈曲性などの観点から、今後様々な分野で利用されることが期待される。また、光導波路には鉛フリーハンダのリフローという高温プロセスに耐える高い耐熱性が要求されるが、同一基板内に電気配線と光導波路配線を配した光・電気混載基板への利用も期待される。光導波路に用いられる樹脂組成物としては、加工性の観点から、光などの活性エネルギー線によって硬化する樹脂が用いられることが多い。
【0003】
光導波路に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂の一つとして、高透明で光伝搬損失が少ないことや、樹脂硬化時の硬化収縮が小さいことなどから、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は前記の通り、高透明、低硬化収縮などの優位点を有する一方、柔軟性に劣り、変形に対してクラックが入りやすいなどの欠点を有する。そこで、ポリオール化合物を配合し柔軟性を付与するなどの改良が施されており、例えば、ポリオール化合物を配合したエポキシ樹脂を含む光導波路用感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1)。また、光導波路とは全く異なる分野であるが、エポキシ基を有する化合物と特定のカーボネートジオール及び活性エネルギー線活性触媒からなる活性エネルギー線硬化性樹脂が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−126497号公報
【特許文献2】特開平9−71636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記に示された活性エネルギー線硬化性樹脂について、光導波路のコアやクラッドに用いることを検討した。しかしながら、上記、特許文献1には、エステル結合を有する脂環式エポキシ樹脂とポリオールからなる樹脂組成物が記載されているが、エステル結合を有する脂環式エポキシ樹脂を用いた場合には、熱分解や加水分解が起こりやすく、耐環境性(耐湿熱性)に問題が生じることがわかった。また、光導波路でも特に電気配線との混載基板を形成する場合には、鉛フリーのハンダリフローに耐え得る耐熱性が必要であるが、既存のいずれの発明も光・電気混載基板に適用できるような光導波路用樹脂組成物が得られず、いまだ課題を有していることがわかった。
【0006】
特許文献2に記載の組成物のように、ポリカーボネートポリオールが、固体状やワックス状、ペースト状である場合には、分散性が悪く、透明性が低下したり、光導波路のようにある程度の厚みを有する成形体を硬化する場合には、表層と内層で硬化度の差が生じ、硬化による「しわ」が生じることがわかった。すなわち、既存のいずれの発明も、光導波路用樹脂組成物としては、課題を有していることがわかった。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、エポキシ樹脂とポリオールからなる活性エネルギー線により硬化する樹脂組成物であって、透明性、柔軟性、耐湿熱性を備え、硬化性、加工性、耐環境性に優れ、なおかつ、光伝搬損失の小さい光導波路、特に高い耐熱性が要求される光・電気混載基板を製造する上で有用な硬化性樹脂組成物、さらには、該硬化性樹脂からなる光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、化合物の構造とその異性体比率を特定した脂環式ジエポキシ化合物と、数平均分子量が特定値以上のポリオール及び活性エネルギー線感応触媒からなる硬化性樹脂組成物によって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(3)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる下記式(2)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、前記に同じ)
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
【0011】
上記各硬化性樹脂組成物において、ポリオール(B)は炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)であってもよい。炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)は、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオール又はポリオレフィン系ポリオールであってもよい。ポリジエン系ポリオールには、ポリブタジエンポリオールが含まれる。また、ポリジエン系ポリオールは、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールであってもよい。主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールには、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリブタジエンポリオールが含まれる。ポリオレフィン系ポリオールとして、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールに水素添加して得られるポリオレフィン系ポリオールが挙げられる。分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールには、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリイソプレンが含まれる。
【0012】
また、炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)は、両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーであってもよい。両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーには、下記化学式(4)で表されるオリゴマーが含まれる。
【化4】
(式中、R19は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、nは1〜50の整数である)
【0013】
上記各硬化性樹脂組成物において、前記ポリオール(B)は液状のポリカーボネートポリオール(B2)であってもよい。ポリカーボネートポリオール(B2)には、1,6−ヘキサンジオール成分、その他のジオール成分、及び、カーボネート成分から構成され、1,6−ヘキサンジオール成分とその他のジオール成分のモル比が9:1〜1:9である化合物が含まれる。
【0014】
上記各硬化性樹脂組成物において、前記ポリオール(B)は液状のポリエステルポリオール(B3)であってもよい。ポリエステルポリオール(B3)には、カプロラクトン共重合体も含まれる。
【0015】
上記各硬化性樹脂組成物において、前記ポリオール(B)は液状のポリエーテルポリオール(B4)であってもよい。ポリエーテルポリオール(B4)には、環状エーテルの開環共重合体も含まれる。
【0016】
脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部とする)に対して、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が30〜90重量部、ポリオール(B)の配合量が10〜70重量部、触媒(C)の配合量が0.05〜10重量部であるのが好ましい。
【0017】
上記各硬化性樹脂組成物は、さらに、炭素数3〜15、フッ素数1〜23の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールを含んでいてもよい。また、芳香環、又は、臭素及び芳香環を有するエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
本発明は、さらに、コアとクラッドからなる光導波路であって、コア又はクラッドの少なくとも何れか一方が上記の硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路を提供する。
【0019】
この光導波路において、コアとクラッドの屈折率の差は0.01以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、化合物の構造とその異性体比率を特定した脂環式ジエポキシ化合物と、数平均分子量が特定値以上のポリオールを用いるため、熱分解や加水分解を起こしにくく、また、硬化時に表層と内層の硬化度の差による「しわ」などを発生しにくく、生産性、加工性や環境変化に対する安定性に優れている。また、上記特性を反映して、該硬化性樹脂組成物を用いた光導波路は、取り扱い性が良好で、厳しい環境変化の下、特に鉛フリーハンダリフローという過酷な加工プロセスを経ても高い信頼性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、(i)前記式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である化合物であるか、又は、(ii)前記式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる前記式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。この硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、屈折率調整用のフッ素や硫黄、芳香環、ハロゲン含有の添加剤、無機粒子を含有させてもよい。また、そのほかにも、本発明の効果を阻害しない範囲内で、消泡剤、酸拡散制御剤、反応性希釈剤、可とう性エポキシ樹脂、光増感剤、脱水剤、界面活性剤、帯電防止剤、可塑剤や滑剤、架橋ゴム粒子等の有機物微粒子、酸化チタン、シリカ、酸化ジルコニア等の無機微粒子などの各種添加剤を含有させてもよい。
【0022】
[脂環式ジエポキシ化合物(A)]
前記式(1)中、R1〜R18におけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が含まれる。「酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基」における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5程度のアルキル基);ビニル、アリル基等のアルケニル基(例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5程度のアルケニル基);エチニル基等のアルキニル基(例えば、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5程度のアルキニル基)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロアルケニル基;橋架け環式基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。酸素原子を有する炭化水素基としては、例えば、前記炭化水素基の炭素鎖中に酸素原子が介在している基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシアルキル基等)などが挙げられる。ハロゲン原子を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロフェニル基等の前記炭化水素基の有する水素原子の1又は2以上がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子)により置換された基が挙げられる。「置換基を有していてもよいアルコキシ基」におけるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ基等の炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)程度のアルコキシ基などが挙げられる。アルコキシ基の置換基としては、例えば、前記ハロゲン原子などが挙げられる。
【0023】
式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物のなかでも、R1〜R18がすべて水素原子である3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルが特に好ましい。
【0024】
3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体とは、沸点等の物性が近似しているため、一般的なガスクロマトグラフィーの装置では分離できないことが多い。そのため、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の定量分析は、より分離能が高いキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーにより行うのが望ましい。3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物及びその異性体のガスクロマトグラフィーによる定量分析は下記の測定条件で行うことができる。なお、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の構造は、例えば、NMR、GC−MS、GC−IR等によって確認することができる。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で10分保持
スプリット比:100
サンプル:1μl(エポキシ化合物:アセトン=1:40)
【0025】
式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物において、不純物として含まれている3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量は、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物(主化合物)とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下であり、好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下である。このような脂環式ジエポキシ化合物は、前記異性体の含有量が20%を超えるものと比較して、硬化反応速度が著しく速く、しかも硬化後の硬化物のガラス転移温度が大幅に高くなり、耐熱性等の物性が著しく向上する。
【0026】
このような脂環式ジエポキシ化合物は、例えば、前記式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体(二重結合の位置の異なる異性体)の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満(例えば19.5%以下、好ましくは15%以下)の脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより製造できる。式(2)中、R1〜R18は前記に同じである。
【0027】
ここで原料として用いられる異性体含有量の少ない式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物は、例えば、前記式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる。式(3)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は前記と同じである。
【0028】
より詳細には、例えば、前記式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、(i)有機溶媒中、反応条件下において液状又は反応液に溶解する脱水触媒の存在下、20Torr(2.67kPa)を超える圧力下で130〜200℃の温度に加熱し、副生する水を留去しながら脱水反応を行う工程と、(ii)前記工程(i)に続いて、反応混合液を200Torr(26.7kPa)以下の圧力下で100〜220℃の温度に加熱して、生成した式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる工程とを経ることにより製造することができる。この方法について、以下に説明する。
【0029】
式(3)で表される化合物の代表的な例として、4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル(水添ビフェノール)が挙げられる。
【0030】
前記工程(i)で使用する有機溶媒としては、反応条件下で不活性な溶媒であれば特に限定されないが、25℃において液体であって、沸点が120〜200℃程度のものが好ましい。好ましい有機溶媒の代表的な例として、例えば、キシレン、クメン、プソイドクメンなどの芳香族炭化水素;ドデカン、ウンデカンなどの脂肪族炭化水素などが挙げられる。有機溶媒として、副生水を簡易に分離除去するため、水と共沸し且つ水と分液可能な有機溶媒を用いてもよい。ケトンやエステル等の酸の存在下で反応する溶媒は沸点が上記範囲であっても好ましくない。また、アルコールは脱水反応を起こす可能性があるため好ましくない。
【0031】
有機溶媒の使用量は、操作性や反応速度等を考慮して適宜選択できるが、通常、基質である4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物100重量部に対して、50〜1000重量部程度であり、好ましくは80〜800重量部程度、さらに好ましくは100〜500重量部程度である。
【0032】
工程(i)で用いる脱水触媒としては、脱水活性を有し、反応条件下において液状のもの又は反応液に溶解するもの(後述する使用量で完全に溶解するもの)であれば特に限定されないが、反応溶媒に対して活性が無いか又はできるだけ低いものが好ましい。反応条件下において液状である脱水触媒は反応液中に微分散するものが好ましい。脱水触媒としては、通常、リン酸や硫酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類などの酸、又はそれらの塩、特に前記酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が使用される。脱水触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
酸の有機塩基による中和塩を使用する場合、酸と有機塩基とを反応させて得られる反応混合物から中和塩(完全中和塩又は部分中和塩)を単離精製して用いることもできるが、酸と有機塩基とを反応させて得られる反応混合物(完全中和塩及び/又は部分中和塩を含んでいる)をそのまま使用することもできる。後者の場合、この反応混合物中には遊離の酸が含まれていてもよい。また、後者の場合、酸と有機塩基との混合割合は、例えば、酸1当量に対して、有機塩基が0.01〜1当量程度、好ましくは0.05〜0.5当量程度、さらに好ましくは0.1〜0.47当量程度である。特に、硫酸と有機塩基との反応混合物を使用する場合、硫酸と有機塩基との混合割合は、硫酸1モルに対して、有機塩基が好ましくは0.02〜2モル、さらに好ましくは0.1〜1.0モル、特に好ましくは0.2〜0.95モル程度である。また、酸の有機塩基による中和塩を使用する場合、酸と有機塩基とを別々に添加して、系内で中和塩を形成してもよい。
【0034】
前記有機塩基としては塩基性を示す有機化合物であればよく、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ベンジルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類(特に、第3級アミン類);ピリジン、コリジン、キノリン、イミダゾールなどの含窒素芳香族複素環化合物;グアニジン類;ヒドラジン類などが挙げられる。これらの中でも、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類(特に、環状アミン類)、グアニジン類、ヒドラジン類が好ましく、特に、DBU、DBN、トリエチレンジアミン、トリエチルアミンが好ましい。また、有機塩基としては、pKa11以上のものが好ましく、また沸点が150℃以上のものが好ましい。
【0035】
脱水触媒として硫酸水素カリウム等の硫酸のアルカリ金属塩を用いると、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによる面積の割合として20%未満のものが得られない。なお、脱水触媒として硫酸水素アンモニウムを用いた場合には、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として19%程度のものが得られる。
【0036】
したがって、脱水触媒としては、スルホン酸類(p−トルエンスルホン酸等)、リン酸、硫酸、スルホン酸類(p−トルエンスルホン酸等)の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、リン酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が好ましい。なかでも、スルホン酸類(特に、p−トルエンスルホン酸)、該スルホン酸類の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩が好ましく、特に、硫酸の有機塩基による完全中和塩又は部分中和塩(とりわけ部分中和塩)が好ましい。
【0037】
脱水触媒の使用量は、原料である式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物1モルに対して、例えば0.001〜0.5モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.005〜0.2モルである。
【0038】
前記工程(i)と工程(ii)とでは圧力が異なる。工程(i)の反応液中には、未反応の4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物、該4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物におけるヒドロキシル基が結合した2つのシクロヘキサン環のうち1つのみが分子内脱水してシクロヘキセン環に変化した反応中間体、目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物、副生水、脱水触媒、及び反応溶媒が共存している。この工程(i)においては副生水を留出させるが、このとき前記反応中間体を留出させることは以下の点から望ましくない。すなわち、(1)前記反応中間体は、さらに分子内脱水することにより目的化合物に変換できるため、これを留出させると目的化合物の収率の低下を招く、(2)前記反応中間体は一般に昇華性の固体であるため、蒸留塔を使用する場合には、副生水の留出経路に固体が析出することによって該留出経路が閉塞して反応器内部の圧力上昇を招き、反応容器の破裂、破損、反応液の飛散等のトラブルの原因となる。したがって、工程(i)では、前記反応中間体が留出しないように、20Torr(2.67kPa)を超える圧力下で、副生水を留去しながら脱水反応を行う。圧力は、好ましくは20Torrより高く常圧以下(2.67kPaより高く0.1MPa以下)、より好ましくは100Torrより高く常圧以下(13.3kPaより高く0.1MPa以下)、さらに好ましくは200Torrより高く常圧以下(26.7kPaより高く0.1MPa以下)であり、操作性の点からは、特に常圧が好ましい。工程(i)における温度(反応温度)は130〜200℃であり、好ましくは140〜195℃、さらに好ましくは150〜195℃である。温度が高すぎると副反応が起こり収率が低下する。また温度が低すぎると反応速度が遅くなる。反応時間は、例えば3L程度の合成スケールであれば、1〜10時間、好ましくは2〜6時間程度である。
【0039】
一方、工程(ii)では、副生水を留出させた後の反応混合液から目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる。なお、工程(i)で得られた反応混合液は、そのまま工程(ii)に供してもよいが、必要に応じて、前記反応混合液に対して抽出、水洗、液性調整等の適宜な処理を施した後に工程(ii)に供してもよい。また、反応に用いた有機溶媒の沸点が目的のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の沸点より低い場合には、通常、該有機溶媒を留去した後にビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を留出させる。
【0040】
この工程(ii)では、前記反応中間体はほとんど存在しないので圧力を低くしても留出経路の閉塞等の問題は起こらず、また圧力が高いと目的化合物の留出に時間を要するため、200Torr(26.7kPa)以下の圧力で操作する。工程(ii)の圧力は、工程(i)の圧力より低くするのが好ましい。例えば、工程(i)の圧力と工程(ii)の圧力の差(前者−後者)は、例えば100Torr以上(13.3kPa以上)、好ましくは200Torr以上(26.7kPa以上)、さらに好ましくは500Torr以上(66.7kPa以上)である。工程(ii)の圧力は、好ましくは3〜200Torr(0.40〜26.7kPa)、より好ましくは3〜100Torr(0.40〜13.3kPa)、さらに好ましくは3〜20Torr(0.40〜2.67kPa)程度である。工程(ii)の温度は100〜220℃であり、好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜150℃未満程度である。温度が高すぎると副反応が起こりやすくなりビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の回収率が低下する。また温度が低すぎると留出速度が遅くなる。
【0041】
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物などを留出させるため、例えば反応器等に蒸留装置を付随させる場合には、該蒸留装置として、充填塔、オールダーショウ型蒸留装置など一般に使用されている蒸留装置で還流比の取れるものであれば特に限定されることなく使用できる。
【0042】
工程(ii)で留出したビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物は、必要に応じてさらに精製することができる。精製法としては、微量の水を含む場合は比重差を利用して分離することも可能であるが、一般には蒸留による精製が好ましい。
【0043】
このような方法によれば、原料の4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を有機溶媒中、反応条件下において液状又は反応液に溶解する脱水触媒の存在下、特定の反応条件で副生水を留去しつつ反応させた後、生成したビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を特定の条件で留出させるので、比較的低い温度で且つ比較的短時間で反応を行うことができ、異性化等の副反応を抑制できるとともに、反応中間体の留出によるロス・昇華による閉塞等を防止できるため、不純物含量の少ない高純度のビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物を簡易に且つ高い収率で効率よく得ることができる。すなわち、式(2)で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満(例えば19.5%以下、好ましくは15%以下)の脂環式ジエン化合物を得ることができる。
【0044】
なお、従来の方法、例えば、特開2000−169399号公報に記載の方法では、長い反応時間を必要とするので、異性化等の副反応により望ましくない副生物が多量に生成する。副生した異性体は沸点や溶媒溶解性等の物性が目的化合物と近似しているので、一旦生成すると分離が極めて困難となる。このような副生物を多量に含む環状オレフィン化合物を、エポキシ化して硬化性樹脂として使用すると、硬化の際に反応性が低い上、耐熱性等の物性に優れる硬化物が得られない。なお、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体とは、沸点等の物性が極めて近似しているため、一般的なガスクロマトグラフィーの装置では分離できず、これまでの文献ではビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の収率及び純度が高めに記載されている。ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の分析は、分離能が高いキャピラリーカラムを用いたガスクロマトグラフィーにより行うのが望ましい。
【0045】
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物及びその異性体のガスクロマトグラフィーによる定量分析は下記の測定条件で行うことができる。なお、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の構造は、例えば、NMR、GC−MS、GC−IR等によって確認することができる。
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ60m、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:2.6ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):60℃で5分保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:100
サンプル:1μl
【0046】
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物のエポキシ化法は特に制限はなく、例えば、酸化剤(エポキシ化剤)として有機過カルボン酸を用いる方法、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシドとモリブデン化合物等の金属化合物とを用いる方法等の何れであってもよいが、安全性、経済性、収率等の観点から有機過カルボン酸を用いる方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0047】
有機過カルボン酸としては、例えば、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過イソ酪酸、トリフルオロ過酢酸などを使用できる。有機過カルボン酸のうち、特に過酢酸は、反応性が高く、しかも安定度が高いことから好ましいエポキシ化剤である。なかでも、実質的に水分を含まない、具体的には、水分含有量0.8重量%以下、好ましくは0.6重量%以下の有機過カルボン酸を使用することが高いエポキシ化率を有する化合物が得られるという点で好ましい。実質的に水分を含まない有機過カルボン酸は、アルデヒド類、例えば、アセトアルデヒドの空気酸化により製造されるものであり、例えば、過酢酸についてはドイツ公開特許公報1418465号や特開昭54−3006に記載された方法により製造される。この方法によれば、過酸化水素から有機過カルボン酸を合成し、溶媒により抽出して有機過カルボン酸を製造する場合に比べて、連続して大量に高濃度の有機過カルボン酸を合成できるために、実質的に安価に得ることができる。
【0048】
エポキシ化剤の量には厳密な制限がなく、それぞれの場合における最適量は、使用する個々のエポキシ化剤やビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の反応性等によって決まる。エポキシ化剤の量は、例えば、不飽和基1モルに対して、1.0〜3.0モル、好ましくは1.05〜1.5モル程度である。経済性及び副反応の問題から、3.0倍モルを超えることは通常不利である。
【0049】
エポキシ化反応は、装置や原料物性に応じて溶媒使用の有無や反応温度を調節して行う。溶媒としては、原料粘度の低下、エポキシ化剤の希釈による安定化などの目的で使用することができ、過酢酸の場合であればエステル類、芳香族化合物、エーテル類などを用いることができる。特に好ましい溶媒は、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン等であり、とりわけ、酢酸エチルが好ましい。反応温度は用いるエポキシ化剤とビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の反応性によって定まる。例えば、過酢酸を使用する場合の反応温度は20〜70℃が好ましい。20℃未満では反応が遅く、70℃を超える温度では過酢酸が発熱を伴って分解するので、好ましくない。
【0050】
反応で得られた粗液の特別な操作は必要なく、例えば粗液を1〜5時間撹拌し、熟成させればよい。得られた粗液からのエポキシ化合物の単離は適当な方法、例えば貧溶媒で沈殿させる方法、エポキシ化合物を熱水中に撹拌下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、直接脱溶媒する方法、蒸留精製により単離する方法などにより行うことができる。
【0051】
このようにして、式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量(異性体比率)が、式(1)で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下(好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下)である脂環式ジエポキシ化合物を得ることができる。
【0052】
本発明において、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量は、脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部とする)に対して、30〜90重量部が好ましく、より好ましくは50〜80重量部である。脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が90重量部を超える場合には、ポリオールの添加効果が小さく、硬化時に「しわ」が発生しやすくなったり、硬化物の屈曲性が低下する場合があり、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が30重量部未満である場合には、耐熱性や透明性が低下する場合がある。
【0053】
[ポリオール(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられるポリオール(B)は、1分子内に水酸基を2個以上有する化合物であり、好ましくは、1分子あたりの水酸基数は2〜3個である。本発明においては、ポリオール(B)は、炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)、液状のポリカーボネートポリオール(B2)、液状のポリエステルポリオール(B3)、又は液状のポリエーテルポリオール(B4)であるのが好ましい。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物が硬化する際に、上記脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)は、カチオン重合により、共重合体(硬化物)を形成する。ここで、例えば、前記共重合体のポリオール成分の主鎖にエーテル結合が含まれる場合には、硬化物が熱分解しやすくなり、また、エステル結合が含まれる場合には、加水分解が起こりやすくなるため、硬化物を高温高湿の環境下で使用する際に安定性が低下しやすい。このため、ポリオール(B)は、主鎖にエーテル結合、エステル結合などを含まない構造であることがより望ましい。そのようなポリオール(B)として、主鎖が炭素−炭素結合を主成分として構成されるポリオール(B1)、若しくは、主鎖に酸素原子を有していても加水分解などを受けにくいポリカーボネートポリオール(B2)を用いることができる。
【0055】
本発明におけるポリオール(B)の数平均分子量は、400以上(例えば、400〜10000)であり、好ましくは480〜10000、より好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは1500〜5000である。ポリオール(B)の分子量が400未満である場合には、脂環式ジエポキシ化合物(A)のエポキシ基に対する水酸基の量が相対的に多くなりすぎるため、親水化し、水分をとりこみやすくなる。この水分が硬化阻害を引き起こすため、硬化度が低下する。このため、硬化時のしわの原因となったり、硬化後に粘着性が残り生産性が低下したり、耐熱性や弾性率や曲げ強度が低下するため、用途によっては使用不可能となる。また、分子量が10000を超える場合には、液状でなくなったり、粘性が高く取り扱い性が低下することがある。また、脂環式ジエポキシ化合物(A)のエポキシ基に対する水酸基の量が相対的に少なくなり、エポキシ樹脂のエネルギー線照射時の硬化反応の速度が遅くなる。このため、硬化工程で内層まで十分に硬化反応が進まず、表層と内層に硬化度の差が生じ、これが原因で樹脂組成物に「しわ」が生じる場合がある。
【0056】
本発明のポリオール(B)が炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)である場合、主鎖(ただし、末端基は含まない)の60%以上が炭素原子であり、好ましくは65%以上が炭素原子であり、さらに好ましくは、主鎖は炭素原子のみからなる。ポリオール(B1)としては、分子量制御の観点から、炭素数が25〜700の飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のジオールが好ましく例示される。水酸基の位置は、主鎖末端、側鎖で特に限定されないが、柔軟化、強靱化の観点から、主鎖の両末端に位置することが好ましい。中でも、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールまたはポリオレフィン系ポリオールが好ましい。
【0057】
上記、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールとしては、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエン、ポリイソプレン、または、分子鎖の両末端に水酸基を有し、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化されたポリジエン系ポリオール(例えば、水酸基末端ポリブタジエン等)が好ましい。
【0058】
また、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリオレフィン系ポリオールとしては、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリエチレンやポリプロピレンなどが挙げられるが、好ましくは、上述の分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールに水素添加して製造されたものが好ましく、例えば、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエンやポリイソプレンに水素添加したものが好ましい。
【0059】
本発明におけるポリオール(B1)としては、上記の他、両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーも好ましく、例えば、前記式(4)に示されたビニルエーテル系オリゴマーを用いることができる。前記式(4)において、R19は水素またはアルキル基またはアリール基を示し、nは1〜50の整数である。なお、ここでいうアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。また、アリール基としては、フェニル、ナフチル基などが挙げられる。アリール基の芳香環は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
上記に挙げたポリオールとしては、例えば、ダイセル化学工業(株)製「エポリードPB3600」、協和発酵ケミカル(株)製「TOE−2000H」などが市販品として入手可能である。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明におけるポリオール(B)は、液状のポリカーボネートポリオール(B2)であるのも好ましい。なお、ここでいう「液状」とは、25℃で測定した粘度が100Pa・s未満であることをいう。ポリオール(B)が固体状(ワックス状、ペースト状など)である場合には、脂環式ジエポキシ化合物(A)との混和性が悪く、ポリオール添加の効果が小さくなる。すなわち、水酸基濃度が偏ることにより硬化時に硬化度の不均一が生じて「しわ」が発生し、生産性が低下しやすくなる。また、分散不良により、透明性が低下して、光伝搬損失が大きくなる場合がある。
【0062】
上記ポリカーボネートポリオール(B2)としては、通常のポリカーボネートポリオールを製造する方法と同じくホスゲン法または、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネートまたはジフェニルカーボネートを用いるカーボネート交換反応(特開昭62−187725号、特開平2−175721号、特開平2−49025号、特開平3−220233号、特開平3−252420号公報等)などで合成される。
【0063】
ジアルキルカーボネート等と共にカーボネート交換反応で用いられるポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0064】
上記のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ダイセル化学工業(株)製「プラクセルCD205PL、CD205HL、CD210PL、CD210HL、CD220PL、CD220HL」、宇部興産(株)製「UH−CARB50、UH−CARB100、UH−CARB300、UH−CARB90(1/3)、UH−CARB90(1/1)、UC−CARB100」。旭化成ケミカルズ(株)製「PCDL T4671、T4672、T5650J、T5651、T5652」などが市販品として入手可能である。 これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
ポリカーボネートポリオールとしては、上記の中でも、柔軟化効果や製造コストなどの観点から、1,6−ヘキサンジオール成分、化学式HO−R20−OHで表されるその他のジオール成分、及び、カーボネート成分から構成されるオリゴマーである場合に、脂環式ジエポキシ化合物(A)との相溶性の観点で、特に好ましい。また、上記の場合に、1,6−ヘキサンジオール成分とその他のジオール成分のモル比は、9:1〜1:9が好ましく、より好ましくは、7:3〜3:7である。なお、R20は2価の有機基を示す。R20の炭素数は、例えば、2〜14であり、酸素、窒素、硫黄原子を含んでいてもよく、また、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。さらに、1〜3個の環状構造を有していてもよく、環内に酸素、窒素、硫黄原子を含んでいてもよい。中でも、R20として酸素原子が介在していてもよい炭素数2〜14の2価の炭化水素基(特にアルキレン基、シクロアルキレン基又はこれらの結合した基)が好ましい。
【0066】
本発明におけるポリオール(B)は、液状のポリエステルポリオール(B3)であるのも好ましい。この場合、ポリエステルポリオールは、ポリオール成分とカルボン酸成分から構成され、脱水エステル化反応、エステル交換反応、ラクトンの開環重合など、またはその組み合わせによって合成することができる。上記、ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,12−ドデカンジオール、ポリブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ジヒドロキシアセトン、ヘキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。カルボン酸成分としては、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、クエン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シトララコン酸、1,10−デカンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、乳酸、りんご酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などが挙げられる。ラクトン類としては、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0067】
上記の中でも、本発明のポリエステルポリオール(B3)として、特に好ましくは、ポリカプロラクトンポリオール(カプロラクトン共重合体)である。ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、2,4−ジエチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン等の公知の多価アルコールの存在下で、ε−カプロラクトンを開環付加重合して得られるポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。ポリエステルポリオール(B3)として、特に2種以上の多価アルコールとカプロラクトンとを開環付加重合して得られるポリカプロラクトンポリオール(カプロラクトン共重合体)が好ましい。
【0068】
上記のポリエステルポリオール(B3)としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製「プラクセル205、205H、205U、205BA、208、210、210CP、210BA、212、212CP、220、220CPB、220NP1、220BA、220ED、220EB、220EC、230、230CP、240、240CP、210N、220N、L205AL、L208AL、L212AL、L220AL、L230AL、220ED、220EB、220EC、205BA、210BA、220BA、305、308、312、L312AL、320、L320AL、L330AL、410、410D、610、P3403、CDE9P、P3403、E227」などが市販品として入手可能である。
【0069】
本発明のポリオール(B)が液状のポリエーテルポリオール(B4)である場合、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどやこれらの共重合体が例示される。これらは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランなどの環状エーテルの開環重合により製造される。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。ポリエーテルポリオール(B4)として、特に環状エーテルの開環共重合体が好ましい。
【0070】
ポリエーテルポリオールとしては、旭電化工業(株)製「P−400、P−700、P−1000、P−2000、P−3000、G−300、G−400、G−700、G−1500、G−3000、G−4000、EDP−450、EDP−550、DG−500、DG−575、SP−600、SP−690SC−800、SC−1000、SC−1001、クオドロール」、日本油脂(株)製ポリエチレングリコール「PEG#200、400、600、1000、1500、2000、4000、6000」、東邦化学工業(株)製ビスオール「2EN−6、4EN、10EN、2P、2PN、3PN」、旭硝子(株)製「Poly−G 420P、720PG、1020P、2020P、3020P、630PG、1030PG、1530PG、2530PG、3030PG、4030PG、5030PG、210PG、212PG、448PG、412PG、439PG、216PG、X−213、X−301、X−302、X−303、400P、415P、419P、423P、443P、427P、441P、442P、610PG、357SA、465SA、480SA、530SA、X−71−531、X−71−532、375S、531S、RF−64、RF−66」、旭化成せんい(株)製「PTXG」、三洋化成工業(株)製「PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG1540、PEG2000、PEG4000S、PEG4000N、PEG6000S、PEG6000P」、「サンニックスGP−200、GE−250、TP−700、TE−700、EP−400、HE−400、HE−560、HE−600、RA−530、RX−401、RX−300、RX−403、RX−500、HR−460A」、「サンニックストリオールGP−250、GP−400、GP−600、GP−1000、TP−400」、「サンニックスポリオールRP−410A、HR−450P、HS−209」、「サンニックスヘキサトリオールSP−750」等が市販品として入手可能である。
【0071】
ポリオール(B1)、ポリオール(B2)、ポリオール(B3)、ポリオール(B4)これらは、いずれも2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
本発明において、ポリオール(B)の配合量は、脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部)に対して、10〜70重量部が好ましく、より好ましくは20〜50重量部である。ポリオール(B)の配合量が10重量部未満の場合には、ポリオールの添加効果が小さく、硬化工程で「しわ」が生じやすくなったり、硬化物の屈曲性が低下する場合があり、ポリオール(B)の配合量が70重量部を超える場合には、耐熱性や透明性が低下する場合がある。
【0073】
[触媒(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられる触媒(C)は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により、プロトン、アニオン、ラジカル等を発生する触媒であれば、特に限定されず、カチオン重合開始剤、ラジカル重合触媒、アニオン重合触媒であってもよいが、好ましくはカチオン重合触媒である。また、活性エネルギー線についても、紫外線や電子線など、特に限定されないが、反応性などの観点から、紫外線を用いることが好ましい。触媒(C)の具体例としては、脂環式ジエポキシ化合物(A)およびポリオール(B)との組み合わせでも異なるが、例えば、光カチオン重合開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。また、触媒(C)は、異なる光カチオン重合開始剤同士を併用してもよく、光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用してもよく、光カチオン重合開始剤と熱によりプロトンを発生する熱カチオン重合開始剤を併用してもよい。なお、触媒(C)としては、既存の市販品を用いることが可能であり、The DOW Chemical Company製「CYRACURE UVI−6992、UVI−6976」、旭電化工業(株)製「アデカオプトマー SP−150、SP−152、SP−170、SP−172」、三新化学工業(株)製「サンエイド SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−180L」、GE東芝シリコーン(株)製「UV9380c」、ローディアジャパン(株)製「Rhodorsil2074」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製「IRGACURE250」、ダイセル・サイテック(株)製「Uvacure1590」、などが市場で入手可能である。
【0074】
本発明の触媒(C)の、硬化性樹脂組成物中の配合量は、脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部)に対して、0.05〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。触媒(C)の含有量が0.05重量部未満の場合には、活性エネルギー線照射時の重合反応の開始効率が悪く、局所的に重合して斑となったり、生産性が低下したりする場合があり、含有量が10重量部を超える場合には、耐熱性や透明性が低下する場合がある。硬化反応の制御が困難となったり、硬化物の分子量が小さくなったりする。
【0075】
[他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、屈折率調整の観点で、フッ素含有アルコールを含有していてもよい。その場合、フッ素含有アルコールは、炭素数が3〜15であり、フッ素数が1〜23の、直鎖または分岐状のアルコールであることが好ましい。フッ素含有アルコールを含有することにより、硬化性樹脂組成物の屈折率を低く調整することができる。上記のフッ素含有アルコールとしては、例えば、1H,1H−トリフルオロエタノール、1H,1H−ペンタフルオロプロパノール、6−(パーフルオロエチル)ヘキサノール、1H,1H−ヘプタフルオロブタノール、2−(パーフルオロブチル)エタノール、3−(パーフルオロブチル)プロパノール、6−(パーフルオロブチル)ヘキサノール、2−パーフルオロプロポキシ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパノール、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、3−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、6−(パーフルオロヘキシル)ヘキサノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、3−(パーフルオロオクチル)プロパノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロデシル)エタノール、1H,1H−2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノナノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノール、1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール、2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール等が挙げられる。フッ素含有アルコールの硬化性樹脂組成物中の含有量は、所望の屈折率に従って適宜変更できるが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物は、屈折率調整の観点で、脂環式ジエポキシ化合物(A)に加えて、芳香環または臭素と芳香環、硫黄を有するエポキシ樹脂や水酸基を有する他の樹脂を含有していてもよい。上記芳香環または臭素及び芳香環、硫黄を有する樹脂を含有することにより、硬化性樹脂組成物の屈折率を高く調整することができる。上記の樹脂は、既存の市販品を用いることも可能であり、例えば、市場で入手可能なものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 828、1001、1004、1009」や大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン 850−S、860、1055」、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン 830−S」、ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン EXA1514」、フェニルグリシジルエーテルとしてはナガセケムテックス(株)製「デナコール EX−141」、多官能エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 152、157S65、1031S、604」や大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン N−665、HP−7200」、ナフタレン型エポキシ樹脂としては大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン HP−4032、EXA−4701」、ビフェノール型エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート YX4000」、フェノキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 1256、4250」、臭素化エポキシ樹脂としてはジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート 5050、5051」や大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン 152、153」やナガセケムテックス(株)製「デナコール EX−147」(ジブロモフェニルグリシジルエーテル)、住友化学工業(株)製「スミカエクセルPES 5003P」等が挙げられる。上記樹脂の硬化性樹脂組成物中の含有量は、所望の屈折率に従って適宜変更できるが、1〜70重量%が好ましく、より好ましくは、5〜60重量%である。
【0077】
なお、上記の芳香環、または、臭素及び芳香環、硫黄含有樹脂は、光導波路のコアを構成する硬化性樹脂組成物に用いられることが好ましく、フッ素含有アルコールは光導波路のクラッドを構成する硬化性樹脂組成物に好ましく用いられる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物には、反応速度を調節する目的で、必要に応じて、水酸基を有する化合物(数平均分子量400未満の低分子量のポリオールを含む)を添加してもよい。その場合、水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。上述の通り、水酸基を添加すると硬化反応速度を速めることが可能である。ただし、上記化合物を多量に添加すると、連鎖移動反応が起こりやすくなるため、硬化度が低下し、樹脂組成物の耐熱性などが低下する。
【0079】
上記硬化性樹脂組成物の粘度(25℃)は、加工性の観点から、100〜100000mPa・sが好ましく、より好ましくは200〜50000mPa・sである。
【0080】
上記硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは250℃以上である。硬化後のTgが100℃未満の場合には、高温環境下にさらされた場合に変形を生じ、光導波路の特性が低下する場合がある。
【0081】
上記硬化性樹脂組成物の硬化物の光透過率(島津製作所(株)製、分光光度計「UV−2450」、波長850nm、硬化物の厚み3mm)は、93T%以上が好ましい。光透過率が93T%未満である場合には、光導波路の材料として用いた場合に、伝搬損失が大きくなり、通信効率が低下する場合がある。
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物を光導波路用部材として使用する場合、本発明の硬化性樹脂組成物は、コア、クラッドに用いられることは言うまでもないが、その他にも、樹脂基板として用いても良いし、基板と光導波路の間の中間層としても使用することができる。
【0083】
本発明の光導波路は、コアとクラッドから構成される。コアとクラッドの少なくともいずれか一方は本発明の硬化性樹脂組成物からなる必要があり、コア、クラッドともに本発明の硬化性樹脂組成物である場合が好ましい。なお、上記にいう「コア」とは、光導波路の導光部分のことをいい、クラッドはコアの周りに接して設けられている、コアよりも低屈折率の媒体であり、コア/クラッド界面で全反射を起こさせることを目的として設けられる部分をいう。本発明の硬化性樹脂組成物をコアおよびクラッドのいずれに用いない場合、基材または基材と光導波路の中間層にのみ用いる場合には、本発明の硬化収縮低減や長時間使用時の信頼性向上の効果は得られない。
【0084】
本発明の光導波路は、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも0.01以上大きいことが好ましく、より好ましくは、0.02以上である。屈折率が0.01よりも小さい場合には、コアとクラッド界面の全反射の臨界角が小さくなり、入射角度が制限されるため、コアの口径を小さくしなければならないことがある。なお、前述の通り、上記屈折率は、構成原料の置換基を選択したり、添加剤を添加することによって制御することができ、例えば、フッ素含有アルコール(屈折率を低下する)や、芳香環、または、臭素及び芳香環、硫黄を有する樹脂あるいは酸化ジルコニア微粒子(屈折率を増加する)を加えることにより制御することが可能である。
【0085】
本発明の光導波路の、コア部の幅及び高さは5〜100μmが好ましく、より好ましくは、25〜75μmである。コア部の幅及び高さが100μmを超える場合には、光導波路への光の入射角が大きくなって、臨界角を超える光までが入射されるため、入射光の一部が伝搬されず、伝搬損失が大きくなることがある。また、5μm未満の場合には、入射光量が小さくなるため、大容量通信には適さない場合がある。
【0086】
[硬化性樹脂組成物の硬化方法及び光導波路の製造方法]
以下に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化方法及び光導波路の製造方法を示す。なお、ここでは、湿式リソグラフィー法の一例を示すが、製造方法は、ここに挙げる方法に限定されるものではない。
【0087】
脂環式ジエポキシ化合物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、および必要に応じて、フッ素含有アルコールを所定の割合で添加したクラッド用の硬化性樹脂組成物(1)と脂環式ジエポキシ化合物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、および必要に応じて、臭素及びベンゼン環を有するエポキシ樹脂を所定の割合で添加したコア用の硬化性樹脂組成物(2)を作製する。
【0088】
続いて、基板上に、硬化性樹脂組成物(1)を塗布する。基板としては、シリコンやガラス基板が一般的に挙げられる。また、塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、インクジェット法などを用いることが可能である。中でも、表面の平滑性、厚みの精度などの観点から、スピンコート法が最も好ましく用いられる。スピンコートは、0〜100℃、10〜1000回転/分で1〜60秒塗布を行う前工程と、500〜10000回転/分で30〜300秒行われる後工程の、2段階の塗布によって行われることが、塗布厚み、表面の平滑性などの精度向上の観点から好ましい。乾燥またはプリベーク処理を施す。
【0089】
続いて、活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂組成物(1)を硬化させ、クラッド層を形成する。この際に、照射する活性エネルギー線としては、可視光、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などを用いることができる。中でも、安全性、反応効率などの工業性の観点などから、波長200〜400nmの紫外線が好ましく用いられる。好ましい照射条件としては、例えば、照度1〜1000mW/cm2、照射量0.1〜10000mJ/cm2で照射することが挙げられる。活性エネルギー線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどのランプ光源、アルゴンイオンレーザーやヘリウムネオンレーザーなどのパルス、連続のレーザー光源などを用いることが可能である。
【0090】
次に、コアを形成する。上記と同様の方法で、硬化性樹脂組成物(2)を、上記のクラッド層上に塗布する。続いて、所定のライン状のスリットパターンを有するフォトマスクを用いて、塗布層の所定の部分(通常は直線の形状)のみを硬化させる。次いで、硬化部分と未硬化部分の溶解性の差を移用して、現像液を用いて、未硬化部分を除去し、コアの形状を作製する。なお、現像液としては、硬化性樹脂組成物(2)の種類によっても異なるが、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等のアルカリ水溶液や、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、アルコールなどの有機溶媒を用いることができる。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー現像法などの公知の手法を用いることができ、現像時間としては、30〜600秒程度が好ましい。現像液は風乾または水洗により除去する。
【0091】
さらに、上記と同様の方法によって、硬化性樹脂組成物(1)を塗布・硬化させ、クラッド層を形成し、光導波路を得る。最後にポストベークを行うと、溶媒等の除去、樹脂層の硬度、耐熱性が向上するため、好ましい。
【0092】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
以下に、本発明について用いられる測定方法および効果の評価方法について例示する。
【0093】
(1)粘度
E型粘度計を用いて、25℃において測定した。
【0094】
(2)ガラス転移温度(Tg)
アプリケータを用いて、硬化性樹脂組成物を鋼板上に、20μmの厚みで塗布する。UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−301」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量1500mJ/cm2)し、150℃で4時間ポストキュアした後に剥離し、試験片を作成した。
剛体振り子型粘弾性測定器((株)エー・アンド・ディー製「RPT3000」)を用いて、対数減衰率のピーク温度を測定し、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上を良好(○)とし、250℃未満を不十分(×)とした。
【0095】
(3)耐屈曲性
アプリケータを用いて、硬化性樹脂組成物を鋼板上に、100μmの厚みで塗布する。UV照射装置(アイグラフィックス(株)製、商品名「ECS−301」)を用いて、前記塗膜に紫外線を照射(積算光量1500mmJ/cm2)し、150℃で4時間ポストキュアした後に剥離し、試験片を作成した。
JIS K 5400に準拠して測定し、心棒直径10mmでの測定で、割れない場合を耐屈曲性が良好(○)、割れる場合を耐屈曲性不十分(×)と評価した。
【0096】
(4)硬化による「しわ」の発生
(3)と同条件で試験片を作成し、試験片の硬化後の状態を、目視で観察して、「しわ」の発生が認められないものを良好(○)と判断し、「しわ」の発生が認められるものを不良(×)と判断した。
【0097】
(5)密着性
(3)と同様にして、基材(鋼板)上に硬化性樹脂組成物を塗布・硬化させ硬化物層(層厚み:100μm)を設けた。その後、さらに該硬化物層の上に、同一の硬化性樹脂組成物を同様に塗布・硬化(層厚み:100μm)させ、2層の硬化物層を有する試験片を作成した。
該試験片を、恒温恒湿槽(エスペック(株)製「TSE−11−A」)を用い、(i)−40℃で30分放置後、(ii)85℃、85%RHで30分放置するサイクルを、500サイクル繰り返した。なお、昇温速度は3℃/分、降温速度1℃/分である。
500サイクル後、2層の硬化物層同士の界面に染色浸透探傷液(日本マテック(株)製、商品名「KD−CHECK RDP−1」)を塗布し、割れ、剥がれを目視観察し(試験回数:n=5)、全ての試験片において界面での剥離がみられなかった場合を密着性良好(○)と判断し、1つでも剥離がみられる場合には密着性不良(×)と判断した。
【0098】
(6)伝搬損失
サンプルとして、光導波路を用いた。実施例と同様にして、4インチシリコンウエハの基板上に、50μm×50μm角のコアを含む、厚み150μm直線上の光導波路を作製し、ダイシングにより導波路長10mmの光導波路サンプルを作製して試験を行った。
光テストセット(アンリツ(株)製「MT9810B」)を用いて測定を行った。波長850nmの光を、光導波路サンプルの一端から入射させ、他端から出射する光量をパワーメーターにより測定し、サンプルを介さない場合の光量との比を、伝搬損失(dB)とした。試験回数3回の平均値を用い、伝搬損失が1.0(dB/cm)以下の場合を伝搬損失が少ない(良好:○)、1.0(dB/cm)を超える場合を伝搬損失が大きい(不良:×)と判断した。
【0099】
(7)信頼性(熱履歴後の伝搬損失)
(6)で測定したサンプルを、熱風オーブン中、260℃で1分間加熱した後、85℃、85%RHの環境下で1週間放置した。
(6)と同様にして、上記サンプルの熱履歴後の伝搬損失を測定し、(6)と同じ基準で判断した。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0101】
[分析法]
(1)ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン及びその異性体のガスクロマトグラフィー(GC分析)
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ60m、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:2.6ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
昇温パターン(カラム):60℃で5分保持、10℃/分で300℃まで昇温
スプリット比:100
サンプル:1μl
ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンとその異性体との比は次のようにして求めた。すなわち、上記条件でGC分析を行い、保持時間20.97分付近に出る最大ピーク(ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン)の面積と、その直前に現れる20.91分付近のピーク(異性体)の面積に基づいて、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンに対する異性体の含有比を求めた。すなわち、異性体比率(%)は、異性体面積÷(異性体面積+ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン面積)×100で算出される。
【0102】
(2)3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル及びその異性体のガスクロマトグラフィー(GC分析)
測定装置:HP6890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−5、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.32mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
キャリアガス:窒素
キャリアガス流量:1.0ml/分
検出器:FID
注入口温度:250℃
検出器温度:300℃
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で10分保持
スプリット比:100
サンプル:1μl(エポキシ化合物:アセトン=1:40)
3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体との比は次のようにして求めた。すなわち、上記条件でGC分析を行い、保持時間19.8分から20.0分付近に出る最大ピーク2本[3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル(2本のピークは立体異性体の存在による)]の合計面積と、その直前に現れる19.1分から19.5分付近のピーク3本(異性体)の合計面積に基づいて、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルに対する異性体の含有比を求めた。すなわち、異性体比率(%)は、異性体合計面積÷(異性体合計面積+3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル合計面積)×100で算出される。
【0103】
(3)3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル及びその異性体のGC−MS分析
測定装置:ヒューレットパッカード社製、HP6890(GC部)、5973(MS 部)
カラム:HP−5MS、長さ30m、膜厚0.25μm、内径0.25mm
液相 5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
昇温パターン(カラム):100℃で2分保持、5℃/分で300℃まで昇温、30 0℃で18分保持
注入口温度:250℃
MSDトランスファーライン温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:0.7ml/分(コンスタントフロー)
スプリット比:スプリットレス
サンプル注入量:1.0μl
測定モード:EI
イオン源温度:230℃
四重極温度:106℃
MS範囲:m/z=25〜400
サンプル調製:サンプル0.1gをアセトン3.0gに溶解
合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物をGC−MS分析に付した。その結果(ガスクロマトグラムと各成分のMSスペクトル)を図4〜13に示す。保持時間17.73分、17.91分、18.13分のピークが3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルの異性体のピークであり、18.48分、18.69分のピークが3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルのピークである。上記GC分析の場合と分析条件が若干異なるので各ピークの保持時間は異なるが、出現する順序は同じである。図4はガスクロマトグラムと保持時間17.73分のピークのMSスペクトルであり、図5はその拡大図である。図6はガスクロマトグラムと保持時間17.91分のピークのMSスペクトルであり、図7はその拡大図である。図8はガスクロマトグラムと保持時間18.13分のピークのMSスペクトルであり、図9はその拡大図である。図10はガスクロマトグラムと保持時間18.48分のピークのMSスペクトルであり、図11はその拡大図である。図12はガスクロマトグラムと保持時間18.69分のピークのMSスペクトルであり、図13はその拡大図である。MSスペクトルによれば、上記何れの成分もm/z=194の分子イオンピークを有している。
【0104】
合成例1(異性体比率9%)
95重量%硫酸70g(0.68モル)と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)55g(0.36モル)を撹拌混合して脱水触媒を調製した。
撹拌機、温度計、および脱水管を備え且つ保温された留出配管を具備した3リットルのフラスコに、下記式(3a)
【化5】
で表される水添ビフェノール(=4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル)1000g(5.05モル)、上記で調製した脱水触媒125g(硫酸として0.68モル)、プソイドクメン1500gを入れ、フラスコを加熱した。内温が115℃を超えたあたりから水の生成が確認された。さらに昇温を続けてプソイドクメンの沸点まで温度を上げ(内温162〜170℃)、常圧で脱水反応を行った。副生した水は留出させ、脱水管により系外に排出した。なお、脱水触媒は反応条件下において液体であり反応液中に微分散していた。3時間経過後、ほぼ理論量の水(180g)が留出したため反応終了とした。反応終了液を10段のオールダーショウ型の蒸留塔を用い、プソイドクメンを留去した後、内部圧力10Torr(1.33kPa)、内温137〜140℃にて蒸留し、731gのビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを得た。GC分析の結果、得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン中にはその異性体が含まれており(GC−MS分析により確認)、下記式(2a)
【化6】
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエンとその異性体の含有比は91:9であった(図3参照)。
得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン(異性体を含む)243g、酢酸エチル730gを反応器に仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、かつ、反応系内の温度を37.5℃になるようにコントロールしながら約3時間かけて30重量%過酢酸の酢酸エチル溶液(水分率0.41重量%)274gを滴下した。過酢酸溶液滴下終了後、40℃で1時間熟成し反応を終了した。さらに30℃で反応終了時の粗液を水洗し、70℃/20mmHgで低沸点化合物の除去を行い、脂環式エポキシ化合物270gを得た。このときの収率は93%であった。粘度(25℃)を測定したところ、84mPa・sであった。得られた脂環式エポキシ化合物のオキシラン酸素濃度は15.0重量%であった。また1H−NMRの測定では、δ4.5〜5ppm付近の内部二重結合に由来するピークが消失し、δ3.1ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、下記式(1a)
【化7】
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルであることが確認された。GC分析の結果、得られた脂環式エポキシ化合物中には3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体が含まれており、異性体比率は9%であった(図1参照)。なお、異性体比率は次式により算出した。
異性体比率=(2262+1715+5702)÷(2262+1715+5702 +28514+74587)×100=9%
【0105】
比較合成例1(異性体比率21%)
撹拌機、20段の蒸留塔、温度計を備えている10リットルの四つ口フラスコに、水添ビフェノール6kgと硫酸水素カリウム620gを加えた。続いて、フラスコを180℃に加熱し、水添ビフェノールを融解後、撹拌を開始した。蒸留塔の塔頂より副生水を留出させながら反応を続け、3時間経過後、反応系内を10Torr(1.33kPa)に減圧し、水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを蒸留塔の最上段より連続的に系外に留出させた。系外に留去させた水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンはデカンターで二層に分離させ、上層液のみを取り出した。その後、4時間かけて反応温度を220℃まで上げ、水とビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留去が無くなった時点で反応終了とした。ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留出粗液の収量は4507gであった。上記ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンの留出粗液4500gを撹拌機、20段の蒸留塔、温度計を備えている5リットルの四つ口フラスコに入れ、オイルバスで180℃に昇温した。その後、反応系内を10Torr(1.33kPa)に減圧し、水を留去してから蒸留塔の最上段の温度を145℃に維持し、還流比1で5時間かけてビシクロヘキシル−3,3′−ジエンを蒸留精製し、無色透明の液体を得た。収量は4353gであった。前記液体についてGC分析を行った結果、得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン中には異性体が含まれており、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエンと異性体の含有比は80:20であった。
得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエン(異性体を含む)243g、酢酸エチル730gを反応器に仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、かつ、反応系内の温度を37.5℃になるようにコントロールしながら約3時間かけて30重量%過酢酸の酢酸エチル溶液(水分率0.41重量%)274gを滴下した。過酢酸溶液滴下終了後、40℃で1時間熟成し反応を終了した。さらに30℃で反応終了時の粗液を水洗し、70℃/20mmHgで低沸点化合物の除去を行い、脂環式エポキシ化合物267gを得た。このときの収率は92%であった。粘度(25℃)を測定したところ、63mPa・sであった。得られた脂環式エポキシ化合物のオキシラン酸素濃度は14.9重量%であった。また1H−NMRの測定では、δ4.5〜5ppm付近の内部二重結合に由来するピークが消失し、δ3.1ppm付近にエポキシ基に由来するプロトンのピークの生成が確認され、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルであることが確認された。GC分析の結果、得られた脂環式エポキシ化合物には3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシルとその異性体が含まれており、異性体比率は21%であった(図2参照)。異性体比率は次式により算出した。
異性体比率=(5404+3923+13067)÷(5404+3923+130 67+23563+60859)×100=21%
【0106】
実施例1
表1に示す通り、脂環式ジエポキシ樹脂として、合成例1を75重量部、ポリオールとして、水酸基末端エポキシ化ブタジエン(ダイセル化学工業(株)製、商品名「エポリードPB3600」)を25重量部、紫外線感応触媒として、トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェイト塩(ダイセル・サイテック(株)製、商品名「Uvacure1590」を3重量部、および、エチレングリコール1重量部を、温度60℃で1時間攪拌混合して、硬化性樹脂組成物1を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物1は、表1に示す通り、その硬化物は、良好な耐屈曲性、密着性を有し、硬化収縮の小さい、光導波路用途として優れた特性を有していた。
【0107】
実施例2
表1に示す通り、ポリオールとして、水酸基末端水素添加ポリイソプレン(出光興産(株)製、商品名「エポール」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物2を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物2は優れた特性を有していた。
【0108】
実施例3
表1に示す通り、ポリオールとして、両末端水酸基型ビニルエーテルオリゴマー(協和発酵ケミカル(株)製、商品名「TOE−2000H」:HO(CH2)2(CH(OC2H5)CH2)nCH2OH)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物3を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物3は優れた特性を有していた。
【0109】
実施例4
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリカーボネートポリオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルCD205PL」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物4を調製した。なお、屈折率は1.51であった。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物4は優れた特性を有していた。
【0110】
実施例5
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリカーボネートポリオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルCD220PL」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物5を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物5は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.50であった。
【0111】
実施例6
表1に示す通り、実施例5と全く同様の原料を用い、エポキシ樹脂とポリオールの含有量をそれぞれ50重量部ずつに変更して、硬化性樹脂組成物6を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物6は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.49であった。
【0112】
実施例7
フッ素含有アルコール(ダイキンファインケミカル研究所製、「A−5410」)を添加し、表1に示すように含有量を変更した以外は、実施例5と全く同様にして、硬化性樹脂組成物7を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物7は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.49であった。
【0113】
実施例8
臭素化フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、「デナコールEX−147」)を添加し、表1に示すように含有量を変更した以外は、実施例5と全く同様にして、硬化性樹脂組成物8を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物8は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.51であった。
【0114】
実施例9
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリエステルポリオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルL220AL」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物9を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物9は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.50であった。
【0115】
実施例10
表1に示す通り、ポリオールとして、液状のポリエーテルポリオール(旭化成せんい(株)製、商品名「PTXG」)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして、硬化性樹脂組成物10を調製した。
表1に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物10は優れた特性を有していた。また、熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率は1.50であった。
【0116】
比較例1
表2に示す通り、ポリオールを添加せずに、実施例5と同様にして、硬化性樹脂組成物11を調製した。
表2に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物11は硬化時に「しわ」が発生し、耐屈曲性、密着性の劣るものであった。
【0117】
比較例2
表2に示す通り、エポキシ化合物(A)として比較合成例1を用いた以外は、実施例5と全く同様にして硬化性樹脂組成物12を調製した。
表2に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物12は硬化物のTgが低く耐熱性が劣るものであった。
【0118】
比較例3
表2に示す通り、エポキシ化合物(A)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名「セロキサイド2021P」)を用いた以外は、実施例5と全く同様にして硬化性樹脂組成物13を調製した。
表2に示す通り、得られた硬化性樹脂組成物13は硬化物のTgが低く耐熱性の劣るものであった。
【0119】
さらに、上記の実施例、比較例で作製した硬化性樹脂組成物を用いて、光導波路を作製した。
【0120】
実施例1で作製した硬化性樹脂組成物1をコアとし、実施例5で作製した硬化性樹脂組成物5をクラッドとして、光導波路を作製した。
シリコンウエハ上に、硬化膜厚が50μmとなるように、スピンコート法により、硬化性樹脂組成物5を塗布し、マスクアライナーを用いて、照度30mW/cm2の紫外線を50秒間、大気雰囲気下で照射し、クラッド層を形成した。次に、上記クラッド層の上に、硬化膜厚が50μmとなるように、スピンコート法により、硬化性樹脂組成物1を塗布した後、コア部の幅が50μmの幅を有するマスクを通して、紫外線を照射した。次いで、アセトンからなる現像液によって、未硬化部を除去し、その後、150℃で4時間の加熱処理を行った。さらにその上面に、硬化膜厚が50μmとなるように、スピンコート法により、硬化性樹脂組成物5を塗布・硬化し、クラッド層を形成して、150℃で4時間加熱処理を施して、光導波路を作製した。
得られた光導波路について、伝搬損失および信頼性の評価を行ったところ、伝搬損失が少なく、また、信頼性も良好な優れた特性を有する光導波路であった。
【0121】
上記と、全く同様にして、実施例8で作製した硬化性樹脂組成物8をコアとし、実施例2〜7、9〜10、比較例1〜3で作製した硬化性樹脂組成物2〜7、9〜13をそれぞれクラッドとする光導波路を作製した。
その結果、実施例の硬化性樹脂組成物を用いた光導波路は、伝搬損失が少なく、また、信頼性も良好な優れた特性を有する光導波路であった。一方、硬化性樹脂組成物11は硬化の際に「しわ」が発生したため、不良品が多量に発生し、生産性の著しく劣るものであった。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC分析のチャートである。
【図2】比較合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC分析のチャートである。
【図3】合成例1において得られたビシクロヘキシル−3,3′−ジエンのGC分析のチャートである。
【図4】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間17.73分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図5】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間17.73分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図6】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間17.91分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図7】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間17.91分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図8】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.13分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図9】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.13分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図10】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.48分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図11】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.48分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【図12】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラム(上図)と保持時間18.69分のピークのMSスペクトル(下図)である。
【図13】合成例1で得られた脂環式ジエポキシ化合物のGC−MS分析におけるガスクロマトグラムの拡大図(上図)と保持時間18.69分のピークのMSスペクトルの拡大図(下図)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(3)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる下記式(2)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、前記に同じ)
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリオール(B)が炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)が、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオール又はポリオレフィン系ポリオールである請求項3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
ポリジエン系ポリオールが、ポリブタジエンポリオールである請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリジエン系ポリオールが、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールである請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールが、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリブタジエンポリオールである請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
ポリオレフィン系ポリオールが、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールに水素添加して得られるポリオレフィン系ポリオールである請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールが、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリイソプレンである請求項8に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)が、両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーである請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーが、下記化学式(4)で表されるオリゴマーである請求項10記載の硬化性樹脂組成物。
【化4】
(式中、R19は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、nは1〜50の整数である)
【請求項12】
ポリオール(B)が液状のポリカーボネートポリオール(B2)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
ポリカーボネートポリオール(B2)が、1,6−ヘキサンジオール成分、その他のジオール成分、及び、カーボネート成分から構成され、1,6−ヘキサンジオール成分とその他のジオール成分のモル比が9:1〜1:9である請求項12記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
ポリオール(B)が液状のポリエステルポリオール(B3)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
ポリエステルポリオール(B3)が、カプロラクトン共重合体である請求項14記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
ポリオール(B)が液状のポリエーテルポリオール(B4)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部とする)に対して、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が30〜90重量部、ポリオール(B)の配合量が10〜70重量部、触媒(C)の配合量が0.05〜10重量部である請求項1〜16の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
さらに、炭素数3〜15、フッ素数1〜23の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールを含む請求項1〜17の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
さらに、芳香環、又は、臭素及び芳香環を有するエポキシ樹脂を含む請求項1〜18の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
コアとクラッドからなる光導波路であって、コア又はクラッドの少なくとも何れか一方が請求項1〜19の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路。
【請求項21】
コアとクラッドの屈折率の差が0.01以上である請求項20に記載の光導波路。
【請求項1】
脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であって、該3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物の異性体の含有量が、3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%以下である化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
脂環式ジエポキシ化合物(A)、数平均分子量が400以上のポリオール(B)、および活性エネルギー線感応触媒(C)からなる樹脂組成物であって、脂環式ジエポキシ化合物(A)が、下記式(3)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す)
で表される4,4′−ジヒドロキシビシクロヘキシル化合物を、有機溶媒中、脱水触媒の存在下、副生する水を留去しながら脱水反応を行うことにより得られる下記式(2)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、前記に同じ)
で表されるビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物であって、該ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物の異性体の含有量が、ビシクロヘキシル−3,3′−ジエン化合物とその異性体の総和に対して、ガスクロマトグラフィーによるピーク面積の割合として20%未満である脂環式ジエン化合物をエポキシ化することにより得られる3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル化合物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリオール(B)が炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)が、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオール又はポリオレフィン系ポリオールである請求項3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
ポリジエン系ポリオールが、ポリブタジエンポリオールである請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリジエン系ポリオールが、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールである請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリジエン系ポリオールが、主鎖の二重結合の一部がエポキシ化したポリブタジエンポリオールである請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
ポリオレフィン系ポリオールが、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールに水素添加して得られるポリオレフィン系ポリオールである請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
分子鎖の両末端に水酸基を有するポリジエン系ポリオールが、分子鎖の両末端に水酸基を有するポリイソプレンである請求項8に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリオール(B1)が、両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーである請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
両末端に水酸基を有するビニルエーテル系オリゴマーが、下記化学式(4)で表されるオリゴマーである請求項10記載の硬化性樹脂組成物。
【化4】
(式中、R19は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、nは1〜50の整数である)
【請求項12】
ポリオール(B)が液状のポリカーボネートポリオール(B2)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
ポリカーボネートポリオール(B2)が、1,6−ヘキサンジオール成分、その他のジオール成分、及び、カーボネート成分から構成され、1,6−ヘキサンジオール成分とその他のジオール成分のモル比が9:1〜1:9である請求項12記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
ポリオール(B)が液状のポリエステルポリオール(B3)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
ポリエステルポリオール(B3)が、カプロラクトン共重合体である請求項14記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
ポリオール(B)が液状のポリエーテルポリオール(B4)である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
脂環式ジエポキシ化合物(A)とポリオール(B)の合計量(100重量部とする)に対して、脂環式ジエポキシ化合物(A)の配合量が30〜90重量部、ポリオール(B)の配合量が10〜70重量部、触媒(C)の配合量が0.05〜10重量部である請求項1〜16の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
さらに、炭素数3〜15、フッ素数1〜23の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールを含む請求項1〜17の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
さらに、芳香環、又は、臭素及び芳香環を有するエポキシ樹脂を含む請求項1〜18の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項20】
コアとクラッドからなる光導波路であって、コア又はクラッドの少なくとも何れか一方が請求項1〜19の何れかの項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路。
【請求項21】
コアとクラッドの屈折率の差が0.01以上である請求項20に記載の光導波路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−189699(P2008−189699A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22346(P2007−22346)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】
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