説明

硬化性樹脂組成物

【課題】経時及び熱履歴による拡散反射率の低下を防止しつつ、柔軟性、低反り性、基板との密着性、耐薬品性を有するソルダーレジスト膜を形成できる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有共重合樹脂、
(B)一般式(iv)


(式中、Rは、同一または異なって、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜8の1価の脂環式炭化水素基であって、ヒドロキシル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を置換基として有していてもよい。)で表される4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物、
(C)エポキシ基を有する化合物、並びに
(D)無機白色顔料
を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板及びフレキシブル配線板のソルダーレジストや各種レジストなどに適した硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、基板の上に導体回路のパターンを形成し、そのパターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載するために使用され、そのはんだ付けランドを除く回路部分は永久保護皮膜としてのソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
【0003】
そこで、特許文献1に、安定性、耐熱性、耐薬品性に優れた希アルカリ水溶液で現像可能な一液型液状フォトレジストとして有用な感光性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、プリント配線板は発光ダイオード素子(LED)等の実装用基板としても使用され、実装面に形成されるソルダーレジスト膜には、光源からの光の反射率を向上させる機能が求められている。このような用途では、ソルダーレジスト膜を形成するソルダーレジスト組成物として、白色ソルダーレジストが主に使用されている。
【0005】
しかし、白色ソルダーレジストの場合、塗膜を加熱して硬化させたときに変色が起こって着色することがあり、光反射率が低下していた。特に、白色ソルダーレジストの場合には変色と反射率の低下が目立つために、商品価値が低下していた。そこで、特許文献2に、変色と反射率の低下を抑えることができるソルダーレジスト組成物が提案されている。
【0006】
また、近年、電子機器の小型化、内部構造の複雑化等が進んだことから、やわらかい構造を有するフレキシブル配線板にソルダーレジストが使用されている。この場合、フレキシブル配線板にやわらかい構造を与えるために、ソルダーレジスト組成物は、反射率の低下が抑えられているだけではなく、可撓性、低反り性も求められるが、上記ソルダーレジスト組成物では、上記特性においてさらに改良するべき必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3―172301
【特許文献2】特開2007−322546
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、経時及び熱履歴による拡散反射率の低下を防止しつつ、柔軟性、低反り性、基板との密着性、耐薬品性を有するソルダーレジスト膜を形成できる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、(A−1)一般式(i)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)で表される化合物と、一般式(ii)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、または、(A−2)一般式(ii)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物と、一般式(iii)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n3は2〜6の整数、m2は1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、(B)一般式(iv)
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、R 、R 、R 、Rは、同一または異なって、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜8の1価の脂環式炭化水素基であって、ヒドロキシル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を置換基として有していてもよい。)で表される4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物、(C)エポキシ基を有する化合物、並びに(D)無機白色顔料を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0020】
すなわち、上記態様の硬化性樹脂組成物では、(A)共重合樹脂として、(A−1)上記一般式(i)で表される重合性モノマーと上記一般式(ii)で表される重合性モノマーとを反応させたカルボキシル基含有共重合樹脂、または(A−2)上記一般式(ii)で表される重合性モノマーと上記一般式(iii)で表される重合性モノマーとを反応させたカルボキシル基含有共重合樹脂を用いる。
【0021】
本発明の第2の態様は、(A−3)一般式(i)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)で表される化合物と、一般式(ii)
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物と、一般式(v)
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはフェニル基、α-クミル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキル基の炭素数1〜10のアシル基、t-ブチル基、アダマンチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Aは直鎖状若しくは環状骨格を含む炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数3〜10ヒドロキシアルキレン基を示し、m3は0または1〜3の整数、pは1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、または、(A−4)一般式(ii)
【0028】
【化9】

【0029】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物と、一般式(iii)
【0030】
【化10】

【0031】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n3は2〜6の整数、m2は1〜5の整数である。)で表される化合物と、一般式(v)
【0032】
【化11】

【0033】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはフェニル基、α-クミル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキル基の炭素数1〜10のアシル基、t-ブチル基、アダマンチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Aは直鎖状若しくは環状骨格を含む炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数3〜10ヒドロキシアルキレン基を示し、m3は0または1〜3の整数、pは1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、(B)一般式(iv)
【0034】
【化12】

【0035】
(式中、R 、R 、R 、Rは、同一または異なって、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜8の1価の脂環式炭化水素基であって、ヒドロキシル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を置換基として有していてもよい。)で表される4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物、(C)エポキシ基を有する化合物、並びに(D)無機白色顔料を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0036】
すなわち、上記態様の硬化性樹脂組成物では、(A)共重合樹脂として、(A−3)上記一般式(i)で表される重合性モノマーと上記一般式(ii)で表される重合性モノマーと上記一般式(v)で表される重合性モノマーとを反応させたカルボキシル基含有共重合樹脂、または(A−4)上記一般式(ii)で表される重合性モノマーと上記一般式(iii)で表される重合性モノマーと上記一般式(v)で表される重合性モノマーとを反応させたカルボキシル基含有共重合樹脂を用いる。
【0037】
本発明の第3の態様は、前記一般式(ii)で表される化合物が、ポリカプロラクトン骨格を有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。また、本発明の第4の態様は、前記一般式(iii)で表される化合物が、ポリカプロラクトン骨格を有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0038】
本発明の第5の態様は、前記(B)4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物が、4級アルキルホスホニウムハイドロオキサイドであることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。本発明の第6の態様は、前記(C)エポキシ基を有する化合物が、1分子中にエポキシ基を2つ以上有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。本発明の第7の態様は、さらに、(E)リン系の難燃剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。本発明の第8の態様は、前記リン系の難燃剤が、アルキルホスフィン酸金属塩であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0039】
本発明の第1の態様によれば、(メタ)アクリル酸またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体と(メタ)アクリレートとを共重合体の構成要素とし、共重合樹脂のカルボキシル基を(メタ)アクリル酸由来またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体由来の構造に特定し、硬化触媒に上記した4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物を用いることで、硬化塗膜の経時及び熱履歴による拡散反射率の低下、特に配線上に硬化塗膜を形成する際における硬化塗膜の経時及び熱履歴による拡散反射率の低下を抑えることができる。また、柔軟性、低反り性、配線板との密着性も向上する。また、本発明の第2の態様によれば、さらに、上記した一般式(v)で表される芳香環を有する(メタ)アクリレートを配合することにより、重合後、芳香族炭化水素骨格の側鎖α位に水素原子を有さない化合物が共重合樹脂の構成要素となっている、すなわち、芳香族炭化水素骨格に対して側鎖のα位に水素原子がない化合物または芳香族炭化水素骨格に対してα位の水素原子が主鎖に存在することとなる化合物が共重合樹脂の構成要素となっているので、より確実に硬化塗膜の経時及び熱履歴による拡散反射率の低下を抑えることができる。
【0040】
本発明の第3、4の態様によれば、共重合体の構成要素にポリカプロラクトン骨格が含まれることで、経時及び熱履歴による拡散反射率の低下をより抑制できる。本発明の第5の態様によれば、4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物が4級アルキルホスホニウムハイドロオキサイドであり、カウンターアニオンとして水酸基を有するので、共重合体が有するカルボキシル基と塩を形成するにあたり少量の水を生成するのみであり、乾燥、硬化時に容易に揮発させることが可能である。また、カウンターアニオンとして塩素イオン、臭素イオンを有する場合に比べ、4級アルキルホスホニウムハイドロオキサイドを用いると、耐候性や電気絶縁性に悪影響を及ぼす無機イオン性の不純物が硬化塗膜に残留しない。さらに、カウンターアニオンが比較的高分子量である共重合体のカルボキシル基と塩を形成することから、薄膜を塗工して乾燥・硬化させる際に4級アルキルホスホニウムカチオン成分が揮発しにくくなるので、十分に塗膜の硬化に寄与し、また塗膜の架橋度を阻害する成分が残ることを防止する。なお、微量の水分残留をさけるために、あらかじめ共重合体と4級ホスホニウムハイドロオキサイドを混合して、塩を形成させた後、水分を揮発させてから配合することも可能である。本発明の第6の態様によれば、エポキシ基を有する化合物が、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するので、硬化性樹脂組成物の硬化が迅速化して硬化性が向上する。本発明の第7、8の態様によれば、さらに、リン系の難燃剤を含むので、硬化性樹脂組成物の難燃性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の硬化性樹脂組成物は、(A−1)、(A−2)、(A−3)または(A−4)である(A)共重合樹脂と、(B)一般式(iv)で表される4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物と、(C)エポキシ基を有する化合物と、(D)無機白色顔料とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0042】
(A)共重合樹脂:(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)の各共重合樹脂
(A)成分である共重合樹脂のうち、(A−1)の共重合樹脂は、一般式(i)で表されるアクリル酸またはメタクリル酸と、一般式(ii)で表される水酸基を有する(メタ)アクリレートとを共重合させて得られる。(A−2)の共重合樹脂は、一般式(ii)で表される水酸基を有する(メタ)アクリレートと一般式(iii)で表されるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとを共重合させて得られる。(A−3)の共重合樹脂は、一般式(i)で表されるアクリル酸またはメタクリル酸と一般式(ii)で表される水酸基を有する(メタ)アクリレートと一般式(v)で表される芳香環を有する(メタ)アクリレートとを共重合させて得られる。(A−4)の共重合樹脂は、一般式(ii)で表される水酸基を有する(メタ)アクリレートと一般式(iii)で表されるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートと一般式(v)で表される芳香環を有する(メタ)アクリレートとを共重合させて得られる。
【0043】
一般式(ii)で表される水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのラクトン付加物、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのラクトン付加物、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレートのラクトン付加物等を挙げることができる。これらのうち、耐熱性と柔軟性を確保する点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε‐カプロラクトン付加物が好ましい。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
一般式(iii)で表されるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物、β‐カルボキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのうち、耐熱性と柔軟性を確保する点で、アクリル酸のε‐カプロラクトン付加物、メタクリル酸のε‐カプロラクトン付加物が好ましい。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
一般式(v)で表される芳香環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2‐(2−フェノキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート及び2‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、4‐αクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の4‐αクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、並びに2‐フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の2‐フェニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなど挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
(A−1)の共重合樹脂、(A−2)の共重合樹脂、(A−3)の共重合樹脂及び(A−4)の共重合樹脂は、いずれも公知の溶液重合法により合成することができる。使用する溶剤はラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されない。その例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。溶剤の配合量は共重合樹脂100質量部に対し、30〜1000質量部、好ましくは50〜800質量部である。
【0047】
溶液重合法で用いるラジカル重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物を使用することができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドなどが使用できる。ラジカル重合開始剤は、重合温度に応じて適当な半減期のものを適宜選択する。ラジカル重合開始剤の配合量は、ラジカル重合性不飽和化合物の合計100質量部に対して0.2〜20質量部であり、好ましくは0.3〜10質量部である。
【0048】
重合方法は、昇温させた溶剤中に不飽和モノマーとラジカル重合開始剤を滴下後攪拌してもよく、不飽和モノマーとラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し攪拌しながら昇温して重合反応を行なってもよい。また、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加し昇温した中に不飽和モノマーを滴下してもよい。
【0049】
(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)の各共重合樹脂の重量平均分子量について、その下限値は硬化塗膜の強靭性及び指触乾燥性の点から3000であり、好ましくは5000である。一方、その上限値は、柔軟性及び低反り性の点から200000であり、好ましくは50000である。
【0050】
(B)4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物
4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物は、硬化性樹脂組成物に含まれるカルボキシル基を有する共重合体と後述の(C)成分のエポキシ基を有する化合物の硬化反応を促進するための触媒、すなわち硬化促進剤である。4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物には、例えば、テトラエチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラブチルホスホニウムアセテート、トリブチルメチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラペンチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリオクチルメチルホスホニウムハイドロオキサイド等を挙げることができる。上記化合物のうち、カウンターアニオンがハイドロオキサイドであるテトラブチルホスホニウムハイドロオキサイドが好ましい。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物の配合量について、上限値は、共重合樹脂100質量部に対して、硬化塗膜に残存することによる物性の低下を防止する点で10質量部であり、好ましくは5質量部である。また、下限値は、共重合樹脂100質量部に対して、硬化反応を奏する点で0.1質量部であり、硬化反応を迅速化する点で0.5質量部が好ましい。
【0051】
(C)エポキシ基を有する化合物
エポキシ基を有する化合物は、硬化性樹脂組成物において、硬化塗膜の架橋密度を上げるとともに、UV照射、熱履歴による白色塗膜の変色及び拡散反射率の低下が少ない樹脂硬化膜を得るためのものであり、例えば、エポキシ樹脂を添加する。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型変性柔軟性エポキシ樹脂、核水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0052】
エポキシ化合物の配合量は、十分な塗膜硬化性と拡散反射率を得る点から、共重合樹脂100質量部に対して、1〜75質量部であり、塗膜硬化性と柔軟性のバランスの点から10〜50質量部が好ましい。
【0053】
(D)無機白色顔料
無機白色顔料は、塗膜を白色化するためのものであり、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンを挙げることができる。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度は高いものの、光触媒活性を有するので、硬化性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対して、ルチル型酸化チタンは光触媒活性をほとんど有さず、ソルダーレジスト膜の変色を防止できる点で好ましい。ルチル型酸化チタンの粒子の平均粒径は特に限定されないが、通常は、0.01〜1μmである。また、ルチル型酸化チタン粒子の表面処理剤も特に限定されない。ルチル型酸化チタンには、例えば、富士チタン工業(株)製「TR−600」、「TR−700」、「TR−750」、「TR−840」、石原産業(株)製「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−820」、「CR−50」、「CR−60」、「CR−90」、「CR−93」、チタン工業(株)製「KR−270」、「KR−310」、「KR−380」、テイカ(株)製「JR−1000 」、「JR−805」, 「JR−806」等を使用することができる。ルチル型酸化チタンの配合量は、共重合樹脂100質量部に対して30〜800質量部であり、好ましくは50〜500質量部である。
【0054】
本発明では、上記成分の他に、必要に応じて、下記成分を配合させることができる。
【0055】
(E)リン系の難燃剤
リン系の難燃剤は、硬化性樹脂組成物に難燃性を付与するためのものであり、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸金属塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下HCA)、HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらのうち、環境負荷を抑える点から、ノンハロゲン系のリン酸エステル、アルキルホスフィン酸金属塩、HCA変性型化合物、ホスフィンオキサイド系化合物が好ましく、少量にて、難燃性だけではなく、耐ブリードアウト性、耐変色性に優れる点からアルキルホスフィン酸金属塩が特に好ましい。
【0056】
リン系の難燃剤の配合量は、共重合樹脂100質量部に対して3〜30質量部であり、十分な難燃性を確保しつつソルダーレジスト膜の機械的強度の低下を確実に抑える点から、4〜25質量部が好ましい。
【0057】
また、本発明では、必要に応じて硬化性樹脂組成物に、さらに、種々の添加成分、例えば、消泡剤、分散剤、体質顔料、無機イオンキャッチャー、有機溶剤、希釈剤、光重合開始剤等を適宜配合することができる。
【0058】
消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。分散剤には、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤が挙げられる。体質顔料は、塗工したソルダーレジスト膜の物理的強度を上げるためのものであり、例えば、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ等を挙げることができる。無機イオンキャッチャーとしては、リン酸ジルコニウム系化合物等を挙げることができる。
【0059】
有機溶剤は、硬化性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するためのものであり、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。
【0060】
希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、本発明の硬化性樹脂組成物を光硬化させる場合に硬化性樹脂の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有するソルダーレジスト膜を得るために使用する。光重合性モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールA型EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型PO変性ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、例えば(メタ)アクリル基とヒドロキシ基を一つ以上有する化合物とイソシアネート基を1つ以上有する化合物とを反応させることにより得られるウレタン系アクリル化合物等を挙げることができる。
【0061】
光重合開始剤は、本発明の硬化性樹脂組成物を光硬化させる場合に添加するものである。本発明では、光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、オキシム系開始剤、ベンゾイン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン等がある。
【0062】
上記した本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、攪拌機で予備混合し、室温にて三本ロールにより混合分散させて製造することができる。
【0063】
次に、上記した本発明の硬化性樹脂組成物の塗工方法について説明する。上記のようにして得られた本発明の硬化性樹脂組成物を熱硬化させる場合には、例えば銅張り積層板の銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さに塗布後、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間加熱することで硬化性樹脂組成物を熱硬化させて、プリント配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0064】
また、上記のようにして得られた本発明の硬化性樹脂組成物を光硬化させる場合には、例えば銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さに塗布し、硬化性樹脂組成物中の溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行う。その後、塗布した硬化性樹脂組成物上に、前記回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリも使用可能である。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、プリント配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0065】
このようにして得られたソルダーレジスト膜にて被覆されたプリント配線板に、噴流はんだ付け方法、リフローはんだ付け方法等により電子部品がはんだ付けされることで、電子回路ユニットが形成される。また、上記した塗工方法の例では、プリント配線板に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を被覆したが、フレキシブル配線板上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗工することにより、フレキシブル配線板に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を被覆してもよい。
【0066】
また、上記した本発明の硬化性樹脂組成物をシート状のベースフィルム上に塗布することで反射シートを得ることができる。例えば、上記反射シートを、太陽電池モジュールの裏面側、すなわち日射を受ける表面とは反対側の表面上に配置する。すると、太陽電池モジュールの発電素子に受光されずに太陽電池モジュール内を透過した太陽光が、上記反射シートにより反射されて太陽電池モジュールの裏面側から再度太陽電池モジュール内部に戻されるので、太陽電池モジュールの発電効率が向上する。なお、太陽電池モジュール裏面への反射シートの設置方法には、例えば、接着剤や接着用テープを用いて太陽電池モジュール裏面に直接貼り合わせる方法が挙げられる。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物が塗工されるベースフィルムの材料は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルフロライド(PVF)、フッ化エチレン・プロピレンコポリマー(FEP)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、アラミド、ポリアミド・イミド、エポキシ、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)等を挙げることができる。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物を、シート状のベースフィルム上に塗工する方法は特に限定されず、上記した塗工方法に加えて、以下の方法でも塗工できる。例えば、厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面を3%硫酸で処理して表面を洗浄後、洗浄した表面に、スクリーン印刷等公知の印刷方法を用いて硬化性樹脂組成物を所定の厚さ、例えば、硬化後の膜厚が20〜23μmとなるように塗工する。硬化性樹脂組成物の塗工部位は、太陽電池モジュール裏面に対向したベースフィルム表面の全面または略全面について行なう。塗工後、60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行う。次いで、130〜170℃程度の温度で10〜80分間ポストキュアを行うことにより、シート状のベースフィルム上に目的とする白色の膜を形成させることができる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0070】
(A)成分である共重合樹脂の合成
合成例1
攪拌機、温度計、還流管を取付けた500mLの四つ口フラスコに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、DPM)200gを投入し、窒素雰囲気下で100℃まで温度を上昇後、アクリル酸のカプロラクトン付加物(一般式(iii)に相当)(カプロラクトン平均2mol付加、東亜合成(株)製「アロニックスM−5300」)35.0g(0.12mol)、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン付加物(一般式(ii)に相当)(カプロラクトン平均1mol付加、ダイセル化学工業(株)製「プラクセルFM1D」) 132.2g(0.53mol)、メタクリル酸メチル(共栄社化学(株)製「ライトエステルM」)60.1g(0.60mol)を添加してから、DPM 30gとラジカル重合開始剤であるジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬(株)製「V-601」)0.6gとの混合溶液を約2時間かけて滴下した。その後、100℃で6時間攪拌することで、合成例1のカルボキシル基を有する共重合樹脂を約50質量%含むDPM溶液を得た。このカルボキシル基を有する共重合樹脂の重量平均分子量が約100000(ポリスチレン換算)、固形分酸価が30mgKOH/gであった。
【0071】
合成例2
攪拌機、温度計、還流管を取付けた500mL四つ口フラスコに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、DPM)200gを投入し、窒素雰囲気下で120℃まで温度を上昇後、メタクリル酸(一般式(i)に相当)18.1g(0.21mol)、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン付加物(一般式(ii)に相当)(カプロラクトン平均1mol付加、ダイセル化学工業(株)製「プラクセルFM1D」) 112.2g(0.45mol)、フェノキエチルメタクリレート(一般式(v)に相当)(サートマー(株)製「SR-340」)92.8g(0.45mol)を添加してから、DPM30gとラジカル重合開始剤であるジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬(株)製「V-601」)1.9gとの混合溶液を約1時間かけて滴下した。その後、120℃で3時間攪拌することで、合成例2のカルボキシル基を有する共重合樹脂を約50質量%含むDPM溶液を得た。このカルボキシル基を有する共重合樹脂の重量平均分子量が約120000(ポリスチレン換算)、固形分酸価が53mgKOH/gであった。
【0072】
合成例3
攪拌機、温度計、還流管を取付けた500mL四つ口フラスコに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、DPM)200gを投入し、窒素雰囲気下で120℃まで温度を上昇後、アクリル酸のカプロラクトン付加物(一般式(iii)に相当)(カプロラクトン平均2mol付加、東亜合成(株)製「アロニックスM−5300」)35.0g(0.12mol)、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン付加物(一般式(ii)に相当)(カプロラクトン平均1mol付加、ダイセル化学工業(株)製「プラクセルFM1D」) 99.7g(0.4mol)、フェノキエチルメタクリレート(一般式(v)に相当)(サートマー(株)製「SR-340」)92.8g(0.45mol)を添加してから、DPM30gとラジカル重合開始剤であるジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬(株)製「V-601」)2.1gとの混合溶液を約1時間かけて滴下した。その後、120℃で3時間攪拌することで、合成例3のカルボキシル基を有する共重合樹脂を約50質量%含むDPM溶液を得た。このカルボキシル基を有する共重合樹脂の重量平均分子量が約65000(ポリスチレン換算)、固形分酸価が29mgKOH/gであった。
【0073】
比較合成例1
攪拌機、温度計、還流管を取付けた500mL四つ口フラスコに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、DPM)110gを投入し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温後、メタクリル酸17.2g(0.2mol)、フェノキエチルメタクリレート(サートマー(株)製「SR-340」)92.8g(0.45mol)を添加してから、DPM10gとラジカル重合開始剤であるジメチル2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオネート)(和光純薬(株)製「V-601」)4.6gとの混合溶液を約1時間かけて滴下した。その後、120℃で3時間攪拌することで、比較合成例1の共重合樹脂を約49質量%含むDPM溶液を得た。この共重合樹脂の重量平均分子量は約25000(ポリスチレン換算)、固形分酸価は98mgKOH/gであった。
【0074】
実施例1〜6、比較例1〜5
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜6、比較例1〜5の硬化性樹脂組成物を調製した。そして、調製した硬化性樹脂組成物を下記の工程にて塗工して、実施例1〜6及び比較例1〜5にて使用する試験片を作製した。下記表1に示す配合量は質量部を表す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1中、
ACA‐Z250:ダイセル化学工業(株)製の樹脂溶液(脂環式骨格を有し、芳香族炭化水素骨格を有さず、カルボキシル基とアクリル基を持つ)、
TBPH‐40:北興化学工業(株)製のテトラブチルホスホニウムハイドロオキサイド40%溶液、
エピクロンEXA‐840‐ss:DIC(株)製のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(2官能)、
エピクロンEXA‐4816:DIC(株)製のビスフェノールA型変性柔軟性エポキシ樹脂(2官能)、
エピコートYX‐8034:ジャパンエポキシレジン(株)製の核水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能)、
CR‐93:石原産業(株)製のルチル型酸化チタン、
KS‐66:信越シリコーン(株)製のシリコーン系消泡剤である。
【0077】
試験片作製工程
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、「カプトン100H」)上にスクリーン印刷法にて、硬化後の厚みが15μmとなるように上記実施例1〜6及び比較例1〜5の硬化性樹脂組成物を塗布後、BOX炉にて150℃で60分のキュアを行って硬化塗膜を形成した。
【0078】
性能評価
(1)柔軟性
円筒形マンドレル法により、所定の折り曲げ半径で180°折り曲げて、目視観察及び×200の光学顕微鏡観察から塗膜の柔軟性を、下記の3段階で評価した。
◎:折り曲げ半径0.1mmで折り曲げ後、塗膜に異常なし。
○:折り曲げ半径0.5mmで折り曲げ後、塗膜に異常はないが、折り曲げ半径0.1mmで折り曲げ後、塗膜にひび割れ、剥離等の異常あり。
×:折り曲げ半径0.5mmで折り曲げ後、塗膜にひび割れ、剥離等の異常発生。
(2)反り性
試験片を2cm×2.5cmに切り出した後、 水平な台上に上が凹になるように静かに試験片を置き、特に外力を加えないようにして、4か所の角と台との間の垂直な隔たりを直尺で1mmの単位まで測定し、その最大値を反り量とし、下記の3段階で評価した。
○:5mm未満の反り量。
△:5〜8mmの反り量。
×:8mm超の反り量。
(3)密着性
密着性JIS K5600‐5‐6に準拠し、試験片に1mm四方の碁盤目を100個(10×10)設け、セロハンテープによるピーリング試験(剥離試験)を行って、上記100個の碁盤目の剥離状態を目視により観察し、下記の3段階で評価した。
○:100個中90個以上に剥離が認められない。
△:100個中50個以上90個未満に剥離が認められない。
×:100個中50個未満に剥離が認められない。
(4)耐薬品性
試験片を室温にて30分間メチルエチルケトンに浸せきさせたのち、塗膜の状態を目視により観察し、下記の2段階で評価した。
○:塗膜に全く変化が認められない。
×:塗膜が膨潤し、剥離している。
(5)燃焼性
試験片について、UL94規格に準拠した垂直燃焼試験を行った。UL94規格に基づいて、VTM−0〜燃焼で評価した。
(6)拡散反射率
分光光度計U‐3410((株)日立製作所製:φ60mm積分球)を用いて、450nmにおける拡散反射率を測定した。なお、「初期」とはキュアを行って硬化塗膜を形成した直後を意味する。「熱処理後」とは大気中でピーク温度260℃にてリフロー処理を3回行った後を意味し、熱履歴による拡散反射率を評価するものである。「加温加湿後」とは85℃、85%RHにて1000時間放置後を意味し、経時による拡散反射率を評価するものである。
【0079】
実施例1〜6、比較例1〜5の評価結果を下記表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表2に示すように、実施例1〜6及び比較例1、2、5より、(A)成分である樹脂に上記(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)のカルボキシル基含有共重合樹脂、(B)成分として硬化促進剤である4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物を用いると、熱処理後及び加温加湿後の拡散反射率の低下を抑えることができ、さらに柔軟性、低反り性、密着性にも優れた塗膜を得ることができた。また、実施例1〜6及び比較例3、4より、(B)成分として硬化促進剤の4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物を用いると、密着性、耐薬品性に優れた塗膜を得ることができた。また、実施例6より、さらにリン系の難燃剤を配合すると、難燃性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の硬化性樹脂組成物は、経時及び熱履歴による拡散反射率の低下を防止しつつ、柔軟性、低反り性、基板との密着性、耐薬品性を有する硬化塗膜を形成できるので、プリント配線板やフレキシブル配線板のソルダーレジスト膜、特に発光ダイオード素子(LED)等の実装用基板のソルダーレジスト膜の分野で利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A−1)一般式(i)
【化1】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)で表される化合物と、
一般式(ii)
【化2】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、
または、(A−2)一般式(ii)
【化3】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物と、
一般式(iii)
【化4】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n3は2〜6の整数、m2は1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、
(B)一般式(iv)
【化5】


(式中、R 、R 、R 、Rは、同一または異なって、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜8の1価の脂環式炭化水素基であって、ヒドロキシル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を置換基として有していてもよい。)で表される4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物、
(C)エポキシ基を有する化合物、並びに
(D)無機白色顔料
を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A−3)一般式(i)
【化6】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)で表される化合物と、
一般式(ii)
【化7】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物と、
一般式(v)
【化8】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはフェニル基、α-クミル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキル基の炭素数1〜10のアシル基、t-ブチル基、アダマンチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Aは直鎖状若しくは環状骨格を含む炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数3〜10ヒドロキシアルキレン基を示し、m3は0または1〜3の整数、pは1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、
または、(A−4)一般式(ii)
【化9】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n1は2〜4の整数、n2は3〜6の整数、m1は1〜5の整数である。)で表される化合物と、
一般式(iii)
【化10】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、n3は2〜6の整数、m2は1〜5の整数である。)で表される化合物と、
一般式(v)
【化11】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはフェニル基、α-クミル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキル基の炭素数1〜10のアシル基、t-ブチル基、アダマンチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Aは直鎖状若しくは環状骨格を含む炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数3〜10ヒドロキシアルキレン基を示し、m3は0または1〜3の整数、pは1〜5の整数である。)で表される化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、
(B)一般式(iv)
【化12】


(式中、R 、R 、R 、Rは、同一または異なって、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基または炭素数3〜8の1価の脂環式炭化水素基であって、ヒドロキシル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を置換基として有していてもよい。)で表される4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物、
(C)エポキシ基を有する化合物、並びに
(D)無機白色顔料
を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(II)で表される化合物が、ポリカプロラクトン骨格を有することを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(III)で表される化合物が、ポリカプロラクトン骨格を有することを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)4級アルキルホスホニウムカチオンを有する化合物が、4級アルキルホスホニウムハイドロオキサイドであることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)エポキシ基を有する化合物が、1分子中にエポキシ基を2つ以上有することを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(E)リン系の難燃剤を含むことを特徴とする請求項1〜6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記リン系の難燃剤が、アルキルホスフィン酸金属塩であることを特徴とする請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−241300(P2011−241300A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114765(P2010−114765)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】