説明

硬化性樹脂組成物

【課題】 実用的に十分な硬化性を示し、なおかつ、毒性が懸念されるトリブチルスズ化合物を含まない硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
特定の化学構造を有する架橋性シリル基含有官能基を分子内に含有する2種類の硬化性樹脂と、オクチルスズ化合物と、分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有する特定化学構造のアミノシラン化合物と、を含有し、トリブチルスズ化合物を含有しないことを特徴とする、硬化性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温大気下で硬化可能である、架橋性シリル基を含有する硬化性樹脂組成物に関し、より詳しくは、環境負荷の低減が可能であるとともに、必要十分な硬化速度を有する硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内に架橋性シリル基を有する硬化性樹脂は、シーラント、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーとして広く用いられている。この硬化性樹脂は架橋性シリル基が大気中の水分で加水分解し架橋することによって硬化するため、湿気硬化型ポリマーとも呼ばれている。特に架橋性シリル基がアルコキシシリル基である硬化性樹脂は、安全性や臭気が少ないことなどから幅広く用いられている(特許文献1や特許文献2)。
【0003】
硬化性樹脂のなかでも、ジアルコキシシリル基末端のポリマーは諸性能のバランスが良く一般的に用いられている。従来、これらジアルコキシシリル基末端を主成分とするポリマーを、実用的な硬化スピードで硬化させるためには、ジブチルスズ化合物が多用されているが、該ジブチルスズ化合物においては、近年その毒性が懸念されているトリブチルスズ化合物が微量に混入する可能性があるという潜在的な問題があった。
【0004】
硬化スピードを向上させる方法として、末端構造がジアルコキシシリル基及びトリアルコキシシリル基である硬化性樹脂の併用系(特許文献3)、架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合したα位炭素に非共有電子対を有する酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子が結合された基を有する硬化性樹脂(特許文献4)などが提案されている。しかしながら、特許文献3に示されるような混合系においても、ジブチルスズ化合物が硬化触媒として多用され、また、特許文献4に示されるような特殊な硬化性樹脂においては、有機スズ化合物等の有機金属触媒を本質的に用いないアミン触媒系が本質的に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特開昭63−112642号公報
【特許文献3】特許第3413453号公報
【特許文献4】特表2005−514504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、その製造プロセスの関係上、トリブチルスズ化合物の混入の危険性がない、有機スズ系触媒としては、オクチルスズ化合物がある。しかし、オクチルスズ化合物はブチルスズ化合物と比較して活性の低いため、単体での仕様では実用的に十分な硬化性を得るためには問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、実用的に十分な硬化性を示し、なおかつ、毒性が懸念されるトリブチルスズ化合物を含まない硬化性樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の組み合わせの硬化性樹脂混合物にアミノシラン化合物を混合した配合系において、ブチルスズ化合物と比較して活性の低いオクチルスズ化合物を用いても、ブチルスズ化合物と同等の硬化性を示す硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下の第1〜第6の発明から構成される。
【0009】
すなわち、第1の発明は、下記式(1)で表される架橋性シリル基含有官能基を分子内に含有する硬化性樹脂(P1)と、
下記式(2)で表される架橋性シリル基含有官能基を分子内に含有する硬化性樹脂(P2)と、
オクチルスズ化合物(B)と、
下記式(3)で表される化合物に代表されるような分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(C)と、
を含有し、トリブチルスズ化合物を含有しないことを特徴とする、硬化性樹脂組成物に関するものである。上記2種類の架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性樹脂を併用することによって、オクチルスズ化合物を用いてもブチルスズ化合物と同等の硬化性を示す硬化性樹脂組成物を得ることができる。

−X−SiR(OR ・・・式(1)
(但し、Xは炭素数2以上の炭化水素基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、それぞれ示す)

−W−CH−SiR(OR3−a ・・・式(2)
(但し、Wは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)

N−R−SiR(OR3−b ・・・式(3)
(但し、R、Rは有機基又は水素原子を、Rは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合する炭素原子にヘテロ原子が結合していない有機基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、bは0、1又は2を、それぞれ示す)

【0010】
第2の発明は、硬化性樹脂(P1)が、さらに分子内にウレタン結合及び/又は尿素結合を含有することを特徴とする、第1の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。なお、本発明においては、硬化性樹脂(P1)及び(P2)が分子内に有するウレタン結合及び/又は尿素結合における活性水素は、有機基で置換されていてもよい。したがって、本発明においては、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に属するし、ビュレット結合も尿素結合の範疇に属する。分子内にウレタン結合及び/又は尿素結合を有する硬化性樹脂を用いることで、オクチルスズ化合物を用いてもブチルスズ化合物と同等の硬化性を示す硬化性樹脂組成物をさらに容易に得ることができる。
【0011】
第3の発明は、上記式(2)においてa=1であることを特徴とする、第1又は第2の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。このような硬化性樹脂は、比較的その貯蔵安定性に優れているため好ましい。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とするシーラント組成物に関するものである。
第5の発明は、第1〜第3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とする接着剤組成物に関するものである。
第6の発明は、第1〜第3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とする粘着剤前駆体組成物に関するものである。
本発明に係る硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とすることにより、実用十分な硬化速度を有する上に、トリブチルスズ化合物を含有しないシーラント組成物、接着剤組成物、粘着剤前駆体組成物を調製することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、環境負荷の低減と安全性を確保しつつ、必要十分な硬化速度を与えるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0015】
[硬化性樹脂(P1)について]
本発明における硬化性樹脂(P1)は、分子内に上記式(1)で表される架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性樹脂である。本発明で使用される硬化性樹脂(P1)は、作業性などの面から、室温で液状であることが好ましい。上記架橋性シリル基含有官能基は、珪素原子に炭素数2以上の炭化水素基(X)が結合しており、これが主鎖骨格に結合している。また、架橋性シリル基を構成する珪素原子については炭化水素基Xとの結合手以外に架橋性基としてアルコキシル基(OR)が2個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が1個結合しているものである。アルコキシル基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、さらに好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であるのが好ましく、さらに好ましくは、メチル基またはエチル基である。
【0016】
硬化性樹脂(P1)の分子量は特に制限されないが、1,000〜60,000が好ましく、2,000〜40,000がより好ましく、3,000〜20,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると架橋密度が高くなりすぎることから、脆くなる場合があり、分子量が60,000を上回ると粘度が高くなり作業性が悪くなり使用条件が制限される場合がある。
【0017】
硬化性樹脂(P1)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用される。特に、本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリレートであることが、入手の容易さや硬化物の皮膜物性等の点から好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性樹脂(P1)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性樹脂(P1)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0018】
硬化性樹脂(P1)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、カネカ社製のサイリルシリーズ、カネカMSポリマーシリーズ、MAシリーズ、EPシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、旭硝子社製のエクセスターシリーズ、デグサジャパン社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ、東亞合成社製のXPRシリーズ、綜研化学社製のアクトフローシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
本発明における硬化性樹脂(P1)は、架橋性シリル基に加えて、さらにその分子内にウレタン結合及び/又は尿素結合を有する硬化性樹脂であることが好ましい。なお、本発明においては、硬化性樹脂(P1)が分子内に有するウレタン結合及び/又は尿素結合における活性水素は、有機基で置換されていてもよい。したがって、本発明においては、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に属するし、ビュレット結合も尿素結合の範疇に属する。
【0020】
このような硬化性樹脂は、従来公知の方法で合成すればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(あるいはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174号公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
【0021】
[硬化性樹脂(P2)について]
本発明における硬化性樹脂(P2)は、分子内に上記式(2)で表される架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性樹脂である。本発明では、上記式(2)で表されるような、架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合したα位炭素に非共有電子対を有する酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子が結合された化学構造を「α−シラン構造」と表記する。α−シラン構造を選択することにより通常の架橋性シリル基よりも極めて高い湿分反応性を示すことが知られている。
【0022】
上記架橋性シリル基含有官能基には、架橋性シリル基を構成する珪素原子にメチレン基を介して非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基(W)が結合している。結合官能基(W)とは架橋性シリル基と主鎖をつなぐ構造であり、架橋性シリル基を構成する珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合していれば特に制限されないが、具体的には(チオ)ウレタン結合、(チオ)尿素結合、(チオ)置換尿素結合、(チオ)エステル結合、(チオ)エーテル結合、などが例示される。さらに当該架橋性シリル基は、この結合官能基(W)を介して主鎖骨格に結合している。
【0023】
また、当該珪素原子については、メチレン基との結合手以外に加水分解性基としてアルコキシ基(OR)が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が2〜0個結合しているものである。
ここで、アルコキシル基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であるのがより好ましい。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0024】
また、硬化性樹脂(P2)の架橋性シリル基は、アルキルジアルコシキシリル基(式(2)において、a=1)又はトリアルコキシシリル基(式(2)において、a=0)であることが、入手の容易さ、硬化物のモジュラス等の点から好ましく、アルキルジアルコシキシリル基(式(2)において、a=1)あることが、硬化物物性と硬化速度のバランスが取りやすいため特に好ましい。
【0025】
硬化性樹脂(P2)の分子量は特に制限されないが、1,000〜80,000が好ましく、1,500〜60,000がより好ましく、2,000〜40,000が特に好ましい。分子量が1,000を下回ると、架橋密度が高くなり過ぎることから得られる硬化物が脆い物性となる場合があり、分子量が80,000を上回ると、粘度が高くなり作業性が悪くなるため溶剤や可塑剤が多量に必要になるなど配合が制限される場合がある。
【0026】
硬化性樹脂(P2)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体(例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられている主鎖骨格から選ばれる1種以上の骨格が採用される。特に、本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリレートであることが、入手の容易さや硬化物の皮膜物性等の点から好ましい。ここで、「本質的に」とは、該構造が硬化性樹脂(P2)の主鎖骨格である繰り返し単位の主要素であることを意味する。また、硬化性樹脂(P2)の中に該構造が単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0027】
硬化性樹脂(P2)を得るためには、従来公知の方法で合成を行えばよい。例えばポリオール化合物にイソシアネートメチルアルコキシシラン化合物を反応させる方法、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を反応させウレタンプレポリマーを合成した後、ウレタンプレポリマーにメルカプトメチルアルコキシシラン化合物あるいはアミノメチルアルコキシシラン化合物等のアルコキシシリル基の珪素原子のα位炭素に活性水素基を有するヘテロ原子が結合している化合物を反応させる方法等が知られている。なお、ここではトリアルコキシシラン、アルキルジアルコシキシシラン、ジアルキルアルコシキシシランを総称して「アルコキシシラン」と表記している。該アミノメチルアルコキシシラン化合物のアミノ基は、第1級アミノ基であっても第2級アミノ基であってもよいが、第2級アミノ基であるほうが、硬化性樹脂(P2)の粘度が比較的低粘度に調製できるため好ましい。なお、第2級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物は、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物から誘導することができる。具体的には、第1級アミノ基を有するアミノメチルアルコキシシラン化合物と、α,β−不飽和カルボニル化合物あるいはアクリロニトリル化合物等のアミノ基と共役付加反応を起こす官能基を有する化合物とを反応させる方法などが上げられる。さらに、特表2004−518801、特表2004−536957、特表2005−501146等に記載の方法で容易に合成できる。
【0028】
硬化性樹脂(P2)の市販品としては、Wacker Chemie AG製のGENIOSIL STP−E10、GENIOSIL STP−E30等が挙げられる。
【0029】
本発明は、上記2種類の架橋性シリル基含有官能基を有する硬化性樹脂(P1)及び(P2)を併用することによって、オクチルスズ化合物を用いてもブチルスズ化合物と同等の硬化性を示す硬化性樹脂組成物を得ることができるという知見に基づくものである。
【0030】
[オクチルスズ化合物(B)について]
本発明におけるオクチルスズ化合物(B)は、有機スズ化合物のうち、有機基部分が炭素数8の炭化水素基(オクチル基のみならず、2−エチルヘキシル基等の異性体も含む)であるような、モノアルキルスズ化合物、ジアルキルスズ化合物であり、架橋性シリル基に対して硬化促進剤として作用する化合物乃至物質を指す。
【0031】
オクチルスズ化合物の具体例としては、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカエート、ジオクチル錫ビスエチルマレート、ジオクチル錫ビスオクチルマレート、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、オクチル錫マレート、ジオクチル錫ジメトキシド、ジオクチルスズオキサイドとフタル酸ジエステルとの反応生成物、ジオクチルスズオキサイドとエチルシリケートとの反応生成物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、オクチルスズ化合物は市販されており、本発明においてはそれら市販品を用いることができる。オクチルスズ化合物の市販品としては、ネオスタンU−800,ネオスタンU−810,ネオスタンU−820,ネオスタンU−830,ネオスタンU−840,ネオスタンU−850,ネオスタンU−860,ネオスタンU−870、ネオスタンU−780、ネオスタンS−1(以上、日東化成社製商品名)等も使用できる。
【0032】
[アミノシラン化合物(C)について]
本発明におけるアミノシラン化合物(C)は、分子内にアミノ基と架橋性シリル基を有する化合物である。アミノシラン化合物(C)としては、α−シラン構造を有する低分子アミノシラン化合物は毒性が高いため、α−シラン構造を有さないアミノシラン化合物、つまり、アミノ基の窒素原子と架橋性シリル基の珪素原子との間に炭素原子が2つ以上結合しているアミノシラン化合物が好ましい。
【0033】
上記アミノシラン化合物(C)としては、上記式(3)で示されるアミノシラン化合物(C)、アミノシラン化合物(C)単独の縮合反応生成物、又は、アミノシラン化合物(C)と下記式(4)で示されるシラン化合物(C1)に例示されるような他のシラン化合物との縮合反応生成物等が挙げられる。これらの中では、該アミノシラン化合物(C)中のアミノ基の効果をより発現させやすいことから、アミノシラン化合物(C)、または、アミノシラン化合物(C)単独の縮合反応生成物がより好ましい。
【0034】
Si(R10)(R11)(R12)(OR13) ・・・式(4)
(但し、式中、R10、R11、R12は、フェニル基、分子量500以下のアルキル基、メルカプトプロピル基、ウレイドプロピル基、フェノキシ基、及び、炭素数1〜6のアルコキシ基、2−(ブトキシ)エトキシ基に代表される分子量500以下の有機基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ表し、R13はフェニル基、及び、炭素数1〜6のアルキル基、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜12の有機基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ示す)
【0035】
上記アミノシラン化合物(C)に含まれるアミノ基としては、第1級、第2級、第3級のいずれのアミノ基でもよいが、本発明に係る硬化性樹脂組成物を接着剤、シーリング材、粘着剤等の密着性が求められる用途に用いる場合においては、その密着性付与効果がより発現しやすい第1級又は第2級アミノ基が好ましく、第1級アミノ基が特に好ましい。また、上記アミノシラン化合物(C)中に含まれるアミノ基は、1個であってもよく2個以上であってもよい。また、上記アミノシラン化合物(C)に含まれる架橋性シリル基としては、アミノシラン化合物(C)で例示すると、アルキルジアルコキシシリル基(b=1)又はトリアルコキシシリル基(b=0)であることが入手が容易である点、及び、硬化物のモジュラス調整が容易である点から好ましい。上記アミノシラン化合物(C)に含まれる架橋性シリル基は、1個であってもよく2個以上であってもよい。
【0036】
上記アミノシラン化合物(C)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシプロピル)アミン、ビス(3−メチルジメトキシプロピル)アミン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−プロペニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等のケチミンシラン化合物も、湿気により第1級アミノ基が生成するため、上記アミノシラン化合物(C)のなかに実質的に含まれる。なかでも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、又は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いることが、入手が容易であるという点、及び、硬化促進効果が高いという点から好ましい。また、アミノシラン化合物が配合された硬化物は一般的に熱や光によって黄色く変色しやすいことが知られている。このような黄変が好まれない用途に用いる時は、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジメトキシシラン等の窒素原子のβ位の炭素に結合する水素原子の数が少ないアミノシラン化合物を用いると黄変が低減されるため好ましい。
【0037】
[シラン化合物(C1)について]
上記シラン化合物(C1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が例示される。なかでも、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランを用いることが、アミノシラン化合物(C)との縮合反応の容易性の観点から好ましい。
【0038】
アミノシラン化合物(C)単独、あるいは、アミノシラン化合物(C)とシラン化合物(C1)との縮合反応生成物は、従来公知の定法により合成すればよい。具体的には、アミノシラン化合物(C)を水と反応させる方法、あるいは、アミノシラン化合物(C)及びシラン化合物(C1)を水と反応させる方法が挙げられる。アミノシラン化合物(C)単独、あるいは、アミノシラン化合物(C)とシラン化合物(C1)との縮合反応生成物は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0039】
上記アミノシラン化合物(C)は、所望の硬化皮膜物性及び/又は硬化速度を得るために適宜選択すればよく、1種単独又は2種以上併用してもよい。上記アミノシラン化合物(C)のなかでは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン及び、それらから誘導される縮合反応生成物が、入手が容易であるため好ましく、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが、硬化促進効果が高いという点からより好ましく、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが、本発明に係る硬化性樹脂組成物を接着剤、シーリング材、粘着剤等の密着性が求められる用途に用いる場合において接着性付与効果が高いことから特に好ましい。
【0040】
[配合量について]
本発明においては、硬化性樹脂(P1)100質量部に対して、硬化性樹脂(P2)2〜1000質量部が好ましく、4〜800質量部がより好ましく、6〜500質量部が特に好ましく、10〜200質量部が最も好ましい。2質量部を下回ると硬化スピード発現の効果が十分発揮されない場合があり、1000質量部を上回ると硬化性樹脂(P1)の割合が相対的に小さくなるため貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
【0041】
上記アミノシラン化合物(C)の添加量は、硬化性樹脂(P1)と(P2)の総和100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。0.1質量部を下回ると、接着性付与の効果が十分発現されない場合があり、30質量部を上回ると希釈効果が大きくなりすぎて硬化性樹脂(P1)及び(P2)の機能が十分発揮されなくなることがある。上記アミノシラン化合物(C)は、所望の硬化皮膜物性及び/又は硬化速度を得るために適宜選択すればよく、1種単独又は2種以上併用してもよい。
【0042】
[その他の成分]
本発明に係る硬化性樹脂組成物中には、その他の成分として従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。たとえば、本発明で用いる硬化性樹脂(P1)及び(P2)以外の各種の硬化性樹脂(エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、オキセタン系樹脂、環状カーボネート系樹脂)及び非硬化性の樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等)、非スズ系金属系触媒、酸性触媒、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、炭酸カルシウム、クレイ、親水性又は疎水性シリカ系粉体等の充填剤、フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、各種液状オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油、各種溶剤等を配合することができる。
【0043】
上記非スズ系金属系触媒としては、第1族のアルカリ金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム等が、第2族のアルカリ土類金属系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸マグネシウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸バリウム等が、遷移金属系金属元素を主体とする化合物として、オクチル酸イットリウム、チタンテトラブトキシド、チタンアセチルアセトン錯体、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトン錯体、マンガンアセチルアセトン錯体、オクチル酸鉄、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ニッケルアセチルアセトン錯体、ナフテン酸銅、銅アセチルアセトン錯体等が、第12族の亜鉛族系金属元素を主体とする化合物として、亜鉛アセチルアセトナートモノハイドレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が、第13族の土類金属系金属元素を主体とする化合物として、アルミニウムアセチルアセトン錯体、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート錯体、インジウムアセチルアセトン錯体等が、第15族の窒素族系金属元素を主体とする化合物として、ナフテン酸ビスマス、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられる。また、市販品の具体例としては、ナーセムアルミニウム、ナーセムクロム、ナーセム第一コバルト、ナーセム第二コバルト、ナーセム銅、ナーセム第二鉄、ナーセムニッケル、ナーセムバナジル、ナーセム亜鉛、ナーセムインジウム、ナーセムマグネシウム、ナーセムマンガン、ナーセムイットリウム、ナーセムセリウム、ナーセムストロンチウム、ナーセムパラジウム、ナーセムバリウム、ナーセムモリブデニル、ナーセムランタン、ナーセムジルコニウム、ナーセムチタン、ナフテックスCoシリーズ、ニッカオクチックスCoシリーズ、ナフテックスMnシリーズ、ニッカオクチックスMnシリーズ、ナフテックスZnシリーズ、ニッカオクチックスZnシリーズ、ナフテックスCaシリーズ、ニッカオクチックスCaシリーズ、ナフテックスKシリーズ、ニッカオクチックスKシリーズ、ニッカオクチックスBiシリーズ、ネオデカン酸Biシリーズ、プキャットシリーズ、PAシリーズ、ナフテックスZrシリーズ、ニッカオクチックスZrシリーズ、ナフテックスFeシリーズ、ニッカオクチックスFeシリーズ、ナフテックスMgシリーズ、ナフテックスLiシリーズ、ナフテックスCuシリーズ、ナフテックスBaシリーズ、ニッカオクチックス・レアースシリーズ、ニッカオクチックスNiシリーズ等(以上、日本化学産業社製商品名)、オルガチックスZA−40、オルガチックスZA−65、オルガチックスZC−150、オルガチックスZC−540、オルガチックスZC−570、オルガチックスZC−580、オルガチックスZC−700、オルガチックスZB−320、オルガチックスTA−10、オルガチックスTA−25、オルガチックスTA−22、オルガチックスTA−30、オルガチックスTC−100、オルガチックスTC−401、オルガチックスTC−200、オルガチックスTC−750、オルガチックスTPHS等(以上、マツモトファインケミカル社製商品名)、SNAPCURE3020、SNAPCURE3030、VERTEC NPZ等(以上、ジョンソン・マッセイ社製商品名)、ネオスタンU−600、ネオスタンU−660等(以上、日東化成社製商品名)、ケンリアクトNZ01、ケンリアクトNZ33、ケンリアクトNZ39等(以上、ケンリッチ社製商品名)、アルミニウムエトキサイド、AIPD、PADM、AMD、ASBD、ALCH、ALCH−TR、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA、アルゴマー、アルゴマー800AF、アルゴマー1000SF、プレンアクトALM等(以上、川研ファインケミカル社製商品名)、A−1、B−1、TOT、TOG、T−50、T−60、A−10、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA、DPSTA−25、S−151、S−152、S−181等(以上、日本曹達社製商品名)、オクトープシリーズ、ケロープシリーズ、オリープシリーズ、アセトープシリーズ、ケミホープシリーズ等(ホープ製薬社製商品名)等が挙げられる。なかでも、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、ビスマス化合物からなる群から選ばれる一種以上であると、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保でき、さらに実使用に耐えうる硬化速度が得られやすいという点で好ましい。
【0044】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、1液性としても2液以上の多液性としても使用することができるが、どの場合においても、水分の存在下で、架橋性シリル基同士が縮重合することによって硬化するものである。したがって、1液性の組成物として使用する場合、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化性樹脂が硬化するのである。
【0045】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーラント、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。特に、本発明に係る硬化性樹脂組成物を主体とすることで、環境負荷が少なく、高い安全性で、且つ、高い硬化速度を有する組成物を提供することができるため、作業時間の短縮が求められているようなシーラントまたは接着組成物などの用途に好適に用いることができる。なお、「主体」とは、該組成物が硬化する際の架橋ネットワーク構造において、該硬化性樹脂組成物の架橋性シリル基の縮合による架橋ネットワーク構造が主たる構成成分となることを意味する。
【0046】
また、粘着剤前駆体組成物として使用する場合には、上記の硬化性樹脂組成物に対して、さらに粘着付与樹脂を配合し均一に混合して粘着剤前駆体組成物を得ることもできる。なお、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂とを均一に混合する場合、たとえば両者の相溶性が不十分な場合などにおいては、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。また、硬化性樹脂組成物と粘着付与樹脂の相溶性が良好な場合や、有機溶媒が好まれない用途などには、有機溶剤を使用しなくてもよい。また、弱粘着性が求められる用途には、粘着付与樹脂を用いず粘着剤前駆体組成物を得ることもできる。このようにして得られた粘着剤前駆体組成物を、従来公知のテープ基材又はシート基材の表面(片面又は両面)に塗布し、これを硬化させることで粘着剤層を形成することができ、粘着テープ又は粘着シートが得られる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0048】
・硬化性樹脂の準備
(本発明にかかる硬化性樹脂P1)
硬化性樹脂P1として、主鎖がポリオキシプロピレンであり、末端にメチルジメトキシシリル基を有する樹脂(旭硝子社製エクセスターS2420)を準備した。
【0049】
(本発明にかかる硬化性樹脂P2)
主鎖がポリオキシプロピレンであり、末端にメチルジメトキシシリル基型のα−シリル構造を有する「GENIOSIL STP−E10」(Wacker Chemie AG.製、メトキシ基等量から換算した分子量約10,000)を準備した。なお、硬化性樹脂P2は、その分子内にα−シラン構造を有する硬化性樹脂である。
【0050】
・スズ化合物の準備
本発明に係るオクチルスズ化合物(B)として、日東化成社製ネオスタンU−830及びネオスタンS−1を準備した。
また、比較のため、ブチルスズ化合物として、三共有機合成社製SCAT−27を準備した。
【0051】
・アミノシラン化合物(C)の準備
アミノシランとして、3−アミノプロピルトリメトキシシランを準備した。
【0052】
(実施例)
表1に示す配合割合(数字は質量部を表す)で、各成分を計量しこれらを30秒間速やかに混合して硬化性樹脂組成物を調製し、その皮張り時間を測定した。皮張り時間は、硬化性樹脂組成物を、23±1℃及び相対湿度50±5%の雰囲気下に放置し、エタノールで脱脂した指先で表面を軽く触ってみて、表面の硬化性樹脂組成物が、指先に付着しなくなるまでの時間として求めた(JIS A 1439に準拠)。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果から、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、トリブチルスズ化合物の混入の危険性がないオクチルスズ化合物を用いながらも、実用的に十分な硬化性を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、接着剤、シーラント、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される架橋性シリル基含有官能基を分子内に含有する硬化性樹脂(P1)と、
下記式(2)で表される架橋性シリル基含有官能基を分子内に含有する硬化性樹脂(P2)と、
オクチルスズ化合物(B)と、
下記式(3)で表される化合物に代表されるような分子内にアミノ基及び架橋性シリル基を有するアミノシラン化合物(C)と、
を含有し、トリブチルスズ化合物を含有しないことを特徴とする、硬化性樹脂組成物。

−X−SiR(OR ・・・式(1)
(但し、Xは炭素数2以上の炭化水素基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、それぞれ示す)

−W−CH−SiR(OR3−a ・・・式(2)
(但し、Wは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合するメチレン基に非共有電子対を有するヘテロ原子が結合している結合官能基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、aは0、1又は2を、それぞれ示す)

N−R−SiR(OR3−b ・・・式(3)
(但し、R、Rは有機基又は水素原子を、Rは架橋性シリル基に含まれる珪素原子に結合する炭素原子にヘテロ原子が結合していない有機基を、Rは炭素数1〜10個の炭化水素基を、Rはフェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、及び、2−(ブトキシ)エチル基に代表される炭素数1〜10の有機基から選ばれる一種以上の基を、bは0、1又は2を、それぞれ示す)

【請求項2】
硬化性樹脂(P1)が、さらに分子内にウレタン結合及び/又は尿素結合を含有することを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
上記式(2)においてa=1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とするシーラント組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とする接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化性成分の主体とする粘着剤前駆体組成物。


【公開番号】特開2011−46906(P2011−46906A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199101(P2009−199101)
【出願日】平成21年8月29日(2009.8.29)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】