説明

硬化性樹脂組成物

【課題】高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を保有する硬化物を与える硬化性樹脂組成物及びこれを含む封止剤、ならびにこれらの硬化物を提供する。
【解決手段】ラダー型シルセスキオキサン(A)と、フッ素含有化合物(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物及びこれを含む封止剤、ならびにこれらの硬化物を提供する。上記フッ素含有化合物(B)は、好ましくは、下記式(B1)
【化1】


[式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数]
で表される化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びこれを含む封止剤、ならびにこれらの硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐熱・高耐電圧の半導体装置において半導体素子を被覆する材料として、150℃以上の耐熱性を有する材料が求められている。特にLED素子などの光学材料を被覆する材料としては、耐熱性に加えて、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を備えることが求められている。
【0003】
耐熱性が高く熱放散性の良い材料として、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた、分子量が2万から80万である第3の有機珪素ポリマーの1種以上を含有する合成高分子化合物が報告されている(特許文献1)。しかしながら、これらの材料の物性は、未だ満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−206721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を保有する硬化物を与える硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、硬化後に、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を保有する封止剤を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を保有する硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ラダー型シルセスキオキサンと新規なフッ素含有化合物とを少なくとも含む組成物が、硬化した場合に、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性を保有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ラダー型シルセスキオキサン(A)と、フッ素含有化合物(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
上記フッ素含有化合物(B)は、下記式(B1)
【化1】

[式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数を示し、nが2以上の場合、n個の括弧内の基は、同一であっても異なっていてもよい。R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(B2)
【化2】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは、0〜3の整数を示す。)
で表される基を示す。但し、R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(B2)で表される基である。]
で表される化合物であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、上記ラダー型シルセスキオキサン(A)以外のポリシロキサン(D)を含有していてもよい。
【0008】
また、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を含む封止剤を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、液状を呈し、これを硬化した硬化物は、透明性を有し、かつ、これまでにない高温(180℃以上)での耐熱黄変性を長時間に渡って有する。本発明の硬化性樹脂組成物は、特に、次世代の光源用封止材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラダー型シルセスキオキサン(A)と、フッ素含有化合物(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含むことを特徴とする。本発明の硬化性樹脂組成物は、好ましくは、互いに反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン及びフッ素含有化合物と、又は、架橋剤とのヒドロシリル化反応により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン及びフッ素含有化合物と、ヒドロシリル化触媒とを含んでいる。
【0012】
互いに反応してヒドロシリル化により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン及びフッ素含有化合物としては、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するラダー型シルセスキオキサン(以下、ビニル型ラダーシルセスキオキサンと称する)と分子内にSi−H結合を有するフッ素含有化合物(以下、Si−H型フッ素含有化合物と称する)との組み合わせ、又は、分子内にSi−H結合を有するラダー型シルセスキオキサン(以下、Si−H型ラダーシルセスキオキサンと称する)と分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するフッ素含有化合物(以下、ビニル型フッ素含有化合物と称する)との組み合わせが挙げられる。
【0013】
架橋剤とのヒドロシリル化反応により炭素−ケイ素結合を形成可能なラダー型シルセスキオキサン及びフッ素含有化合物としては、ビニル型ラダーシルセスキオキサンとビニル型フッ素含有化合物と架橋剤としての分子内にSi−H結合を有する化合物との組み合わせ、Si−H型ラダーシルセスキオキサンとSi−H型フッ素含有化合物と架橋剤としての分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物との組み合わせなどが挙げられる。
【0014】
[ラダー型シルセスキオキサン(A)]
一般に、ラダー型シルセスキオキサンは、架橋された三次元構造を有するポリシロキサンである。ポリシロキサンは、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有する化合物であり、その基本構成単位は、下記式(M)、(D)、(T)、(Q)(以下、それぞれM単位、D単位、T単位、Q単位という)に分類される。
【0015】
【化3】

【0016】
上記式中、Rはケイ素原子に結合している原子又は原子団を示す。M単位は、ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した1価の基からなる単位であり、D単位は、ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した2価の基からなる単位であり、T単位は、ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した3価の基からなる単位であり、Q単位は、ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した4価の基からなる単位である。
【0017】
シルセスキオキサンは、上記T単位を基本構成単位とするポリシロキサンであり、その実験式(基本構造式)はRSiO3/2で表される。シルセスキオキサンのSi−O−Si骨格の構造としては、ランダム構造やラダー構造、カゴ構造が知られている。本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるラダー型シルセスキオキサン(A)は、ラダー構造のSi−O−Si骨格を有するシルセスキオキサンである。
【0018】
ラダー型シルセスキオキサンは、例えば、下記式(L)で表わすことができる。
【0019】
【化4】

【0020】
上記式(L)において、pは1以上の整数(例えば、1〜5000、好ましくは1〜2000、さらに好ましくは1〜1000)である。各Rは、同一又は異なって、水素原子、置換又は無置換の炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基(チオール基)、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、エポキシ基、ハロゲン原子、下記式(1)で表される基などが挙げられる。
【0021】
【化5】

【0022】
上記式(1)中の各Rは、同一又は異なっていてもよく、前記式(L)におけるRと同じである。
【0023】
前記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、イソオクチル、デシル、ドデシル基などのC1-20アルキル基(好ましくは、C1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基)などが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、メタリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくは、C2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)などが挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロピニル基などのC2-20アルキニル基(好ましくは、C2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)などが挙げられる。
【0024】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロドデシル基などのC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル、ビシクロヘプテニル基などのC4-15の架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0025】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)などが挙げられる。
【0026】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基として、例えば、シクロへキシルメチル、メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、ベンジル、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール−C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基などが挙げられる。
【0027】
前記炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基の炭素数は0〜20、好ましくは0〜10である。該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、(メタ)アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メルカプト基;メチルチオ、エチルチオ基等のアルキルチオ基;アリルチオ基等のアルケニルチオ基;フェニルチオ基等のアリールチオ基;ベンジルチオ基等のアラルキルチオ基;カルボキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。
【0028】
前記Rにおけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくは、C1-4アルコキシ基)などが挙げられる。アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基(好ましくは、C2-4アルケニルオキシ基)などが挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、トリルオキシ、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基などが挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基などが挙げられる。アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基などが挙げられる。
【0029】
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基(好ましくは、C1-4アルキルチオ基)などが挙げられる。アルケニルチオ基としては、アリルチオ基等のC2-6アルケニルチオ基(好ましくは、C2-4アルケニルチオ基)などが挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ、トリルチオ、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールチオ基などが挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ、フェネチルチオ基等のC7-18アラルキルチオ基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基などが挙げられる。アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル、トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基などが挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基などのC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基などが挙げられる。モノ又はジアルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基などが挙げられる。アシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ベンゾイルアミノ基等のC1-11アシルアミノ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0030】
前記式(1)で表される基において、各Rとしては、それぞれ、水素原子、C1-10アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、C2-10アルケニル基(特に、C2-4アルキル基)、C3-12シクロアルキル基、C3-12シクロアルケニル基、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、C7-18アラルキル基、C6-10アリール−C2-6アルケニル基、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子であるのが好ましい。
【0031】
ラダー型シルセスキオキサンとしては、式(L)において、Rのうち、置換又は無置換の炭化水素基が50モル%以上(より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上)占めるのが好ましい。特に、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)が合計で50モル%以上(より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上)占めるのが好ましい。
【0032】
ラダー型シルセスキオキサンは、公知の方法により製造できる。例えば、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンは、下記式(2)
【化6】

(式中、Rは前記に同じ。3つのXは、同一又は異なって、加水分解性基又はヒドロキシル基を示す)
で表される加水分解性シラン化合物の1種又は2種以上を、又は前記式(1)で表される加水分解性シラン化合物の1種又は2種以上と下記式(3)若しくは(3′)
【化7】

(式中、R、Xは前記に同じ。複数個のRは、同一又は異なっていてもよい)
で表されるシラン化合物の1種又は2種以上とを、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)に付すことにより得ることができる。
【0033】
なお、式(2)で表される加水分解性シラン化合物はラダー型シルセスキオキサンのT単位の形成に用いられ、式(3)若しくは(3′)で表されるシラン化合物は、末端封止剤として機能し、ラダー型シルセスキオキサンのM単位の形成に用いられる。
【0034】
Xにおける加水分解性基としては、加水分解及びシラノール縮合によりシロキサン結合を形成しうる基であればよく、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-10アルコキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のC1-10アシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、塩素原子、C1-4アルコキシ基が好ましい。
【0035】
加水分解・縮合反応は、例えば、シラノール縮合触媒の存在下、水又は水と有機溶媒との混合溶媒中で、上記シラン化合物をシラノール縮合させ、反応中又は反応後に、溶媒及び/又は副生物(アルコールなど)を留去することにより行うことができる。反応温度は、−78℃〜150℃、好ましくは−20℃〜100℃である。水の使用量は、シラン化合物の合計1モルに対して、1モル以上(例えば、1〜20モル、好ましくは1〜10モル)である。
【0036】
前記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール;これらの混合溶媒などが挙げられる。有機溶媒の使用量は、シラン化合物の合計1容量部に対して、例えば、0.5〜30容量部である。
【0037】
シラノール縮合触媒としては、酸触媒、塩基触媒を用いることができる。酸触媒として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸などが挙げられる。塩基触媒として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;バリウムメトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級アンモニウムヒドロキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等のテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドなどの第4級ホスホニウムヒドロキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等の第3級アミンなどのアミン;ピリジン等の含窒素芳香族複素環化合物などが挙げられる。また、シラノール縮合触媒として、テトラブチルアンモニウムフルオライド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどのフッ素化合物を用いることもできる。
【0038】
反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0039】
<ビニル型ラダーシルセスキオキサン>
ビニル型ラダーシルセスキオキサンとしては、前記ラダー型シルセスキオキサンのうち、末端又は側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を持つ化合物であれば特に限定されず、例えば、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンにおいて、末端のRの少なくとも1つ及び/又は側鎖のRの少なくとも1つが脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物が挙げられる。
【0040】
脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基としては、例えば、ビニル、アリル、メタリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル基などのC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基);シクロヘキセニル基などのC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプテニル基などのC4-15架橋環式不飽和炭化水素基;スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基;シンナミル基などが挙げられる。なお、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基には、前記式(1)で表される基において、3つのRのうち少なくとも1つが上記のC2-20アルケニル基、C3-12のシクロアルケニル基、C4-15の架橋環式不飽和炭化水素基、C2-4アルケニル置換アリール基、シンナミル基等である基も含まれる。
【0041】
ビニル型ラダーシルセスキオキサンの分子量としては、例えば100〜80万、好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜4000である。ビニル型ラダーシルセスキオキサンの分子量がこの範囲にあると、液体且つ低粘度であるため、Si−H型ラダーシルセスキオキサンとの相溶性が高く、取り扱いやすい。ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、上記範囲の種々の分子量を有する混合物であってもよい。ビニル型ラダーシルセスキオキサン中の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、例えば、0.0010〜0.0040mmol/g、好ましくは0.0012〜0.0030mmol/gである。また、ビニル型ラダーシルセスキオキサンに含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合の割合(重量基準)は、ビニル基換算で、例えば、3.0〜9.0%、好ましくは3.7〜5.7%である。
【0042】
ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、前記ラダー型シルセスキオキサン(A)の製造法において、式(2)で表される加水分解性シラン化合物として、Rが脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物を少なくとも用いるか、式(3)若しくは(3′)で表されるシラン化合物として、Rの少なくとも1つが脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である化合物を少なくとも用いることにより製造できる。
【0043】
また、ビニル型ラダーシルセスキオキサンは、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンのうち、Rとして加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサン(A1)(以下、単に「ラダー型シルセスキオキサン(A1)」と称する場合がある)と、下記式(4)
【化8】

(式中、Rは前記に同じ。3つのRは同一でも異なっていてもよい。但し、Rのうち少なくとも1つは脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である。Xは加水分解性基又はヒドロキシル基を示す)
で表されるシラン化合物(S1)の1種又は2種以上とを反応させることにより製造できる。
【0044】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基、式(4)で表されるシラン化合物(S1)のXにおける加水分解性基及びRにおける脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基は、前述の加水分解性基、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基と同様のものが挙げられる。ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基としては、メトキシ、エトキシ基等のC1-4アルコキシ基が特に好ましい。
【0045】
前記式(4)で表されるシラン化合物(S1)において、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を除く残りのRとしては、同一又は異なって、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、又は炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)であるのが好ましい。
【0046】
式(4)で表されるシラン化合物(S1)として、より具体的には、モノハロゲン化ビニルシラン、モノハロゲン化アリルシラン、モノハロゲン化3−ブテニルシラン、モノアルコキシビニルシラン、モノアルコキシアリルシラン、モノアルコキシ3−ブテニルシランなどが挙げられる。
【0047】
モノハロゲン化ビニルシランの代表例としては、クロロジメチルビニルシラン、クロロエチルメチルビニルシラン、クロロメチルフェニルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、クロロエチルフェニルビニルシラン、クロロジフェニルビニルシランなどが挙げられる。
【0048】
モノハロゲン化アリルシランの代表例としては、アリルクロロジメチルシラン、アリルクロロエチルメチルシラン、アリルクロロメチルフェニルシラン、アリルクロロジエチルシラン、アリルクロロエチルフェニルシラン、アリルクロロジフェニルシランなどが挙げられる。
【0049】
モノハロゲン化3−ブテニルシランの代表例としては、3−ブテニルクロロジメチルシラン、3−ブテニルクロロエチルメチルシラン、3−ブテニルクロロメチルフェニルシラン、3−ブテニルクロロジエチルシラン、3−ブテニルクロロエチルフェニルシラン、3−ブテニルクロロジフェニルシランなどが挙げられる。
【0050】
モノアルコキシビニルシランの代表例としては、メトキシジメチルビニルシラン、エチルメトキシメチルビニルシラン、メトキシメチルフェニルビニルシラン、ジエチルメトキシビニルシラン、エチルメトキシフェニルビニルシラン、メトキシジフェニルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、エトキシエチルメチルビニルシラン、エトキシメチルフェニルビニルシラン、エトキシジエチルビニルシラン、エトキシエチルフェニルビニルシランなどが挙げられる。
【0051】
モノアルコキシアリルシランの代表例としては、アリルメトキシジメチルシラン、アリルエチルメトキシメチルシラン、アリルメトキシメチルフェニルシラン、アリルジエチルメトキシシラン、アリルエチルメトキシフェニルシラン、アリルメトキシジフェニルシラン、アリルエトキシジメチルシラン、アリルエトキシエチルメチルシラン、アリルエトキシメチルフェニルシラン、アリルエトキシジエチルシラン、アリルエトキシエチルフェニルシランなどが挙げられる。
【0052】
モノアルコキシ3−ブテニルシランの代表例としては、3−ブテニルメトキシジメチルシラン、3−ブテニルエチルメトキシメチルシラン、3−ブテニルメトキシメチルフェニルシラン、3−ブテニルジエチルメトキシシラン、3−ブテニルエチルメトキシフェニルシラン、3−ブテニルメトキシジフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジメチルシラン、3−ブテニルエトキシエチルメチルシラン、3−ブテニルエトキシメチルフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジエチルシラン、3−ブテニルエトキシエチルフェニルシラン、3−ブテニルエトキシジフェニルシランなどが挙げられる。
【0053】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0054】
式(4)で表されるシラン化合物(S1)の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、1〜20モル、好ましくは2〜10モル、さらに好ましくは5〜9モル程度である。
【0055】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)との反応は、シラノール縮合触媒の存在下で行われる。シラノール縮合触媒としては、前記例示のものを使用できる。シラノール縮合触媒として、塩基触媒を用いるのが好ましい。
【0056】
シラノール縮合触媒の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、0.1〜10モル、好ましくは0.1〜1.0モルである。シラノール縮合触媒の使用量は触媒量であってもよい。
【0057】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択できるが、通常、0〜200℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは30〜60℃である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0058】
上記方法では、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)が、加水分解・縮合(又は縮合)して、対応する分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するビニル型ラダーシルセスキオキサンが生成する。
【0059】
反応終了後、反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0060】
<Si−H型ラダーシルセスキオキサン>
Si−H型ラダーシルセスキオキサンとしては、前記ラダー型シルセスキオキサンのうち、末端又は側鎖にSi−H結合を有するものであれば特に限定されず、例えば、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンにおいて、末端のRの少なくとも1つ及び/又は側鎖のRの少なくとも1つが水素原子又はSi−H結合を有する基である化合物が挙げられる。Si−H結合を有する基としては、例えば、前記式(1)で表される基において、3つのRのうち少なくとも1つが水素原子である基などが挙げられる。
【0061】
Si−H型ラダーシルセスキオキサンの分子量としては、例えば100〜80万、好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜4000である。Si−H型ラダーシルセスキオキサンの分子量がこの範囲にあると、ビニル型フッ素含有化合物との相溶性に優れるため好ましい。Si−H型ラダーシルセスキオキサンは、上記範囲の種々の分子量を有する混合物であってもよい。Si−H型ラダーシルセスキオキサン中のSi−H結合の含有量は、例えば、0.0001〜0.005mmol/g、好ましくは0.0005〜0.002mmol/gである。また、Si−H型ラダーシルセスキオキサンに含まれるSi−H基の割合(重量基準)は、例えば、0.01〜0.30%、好ましくは0.1〜0.2%である。
【0062】
Si−H型ラダーシルセスキオキサンは、前記ラダー型シルセスキオキサンの製造法において、式(2)で表される加水分解性シラン化合物として、Rが水素原子である化合物を少なくとも用いるか、式(3)若しくは(3′)で表されるシラン化合物として、Rの少なくとも1つが水素原子である化合物を少なくとも用いることにより製造できる。
【0063】
また、Si−H型ラダーシルセスキオキサンは、前記式(L)で表されるラダー型シルセスキオキサンのうち、Rとして加水分解性基又はヒドロキシル基を1以上有するラダー型シルセスキオキサン(A1)[ラダー型シルセスキオキサン(A1)]と、下記式(5)
【化9】

(式中、Rは前記に同じ。3つのRは同一でも異なっていてもよい。但し、Rのうち少なくとも1つは水素原子である。Xは加水分解性基又はヒドロキシル基を示す)
で表される1種又は2種以上のシラン化合物(S2)とを反応させることにより製造できる。
【0064】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基、式(5)で表されるシラン化合物(S2)のXにおける加水分解性基は、前述の加水分解性基と同様のものが挙げられる。ラダー型シルセスキオキサン(A1)のRにおける加水分解性基としては、メトキシ、エトキシ基等のC1-4アルコキシ基が特に好ましい。
【0065】
前記式(5)で表されるシラン化合物(S2)において、水素原子を除く残りのRとしては、同一又は異なって、置換又は無置換の、炭素数1〜10のアルキル基(特に、メチル、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基(特に、フェニル基)、又は炭素数7〜10のアラルキル基(特に、ベンジル基)であるのが好ましい。
【0066】
式(5)で表されるシラン化合物(S2)として、より具体的には、モノハロゲン化シラン、モノアルコキシシランなどが挙げられる。
【0067】
モノハロゲン化シランの代表例としては、クロロジメチルシラン、クロロエチルメチルシラン、クロロメチルフェニルシラン、クロロジエチルシラン、クロロエチルフェニルシラン、クロロジフェニルシランなどが挙げられる。
【0068】
モノアルコキシシランの代表例としては、メトキシジメチルシラン、エチルメトキシメチルシラン、メトキシメチルフェニルシラン、ジエチルメトキシシラン、エチルメトキシフェニルシラン、メトキシジフェニルシラン、エトキシジメチルシラン、エトキシエチルメチルシラン、エトキシメチルフェニルシラン、エトキシジエチルシラン、エトキシエチルフェニルシランなどが挙げられる。
【0069】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(5)で表されるシラン化合物(S2)との反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、前記ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(4)で表されるシラン化合物(S1)との反応に用いられる溶媒と同様のものを使用できる。
【0070】
式(5)で表されるシラン化合物(S2)の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、1〜30モル、好ましくは1〜10モル、さらに好ましくは5〜9モル程度である。
【0071】
ラダー型シルセスキオキサン(A1)と式(5)で表されるシラン化合物(S2)との反応は、シラノール縮合触媒の存在下で行われる。シラノール縮合触媒としては、通常、前記シラノール縮合触媒のうち、酸触媒を使用する。塩基性触媒は式(5)で表されるシラン化合物(S2)と反応するので好ましくない。
【0072】
シラノール縮合触媒の使用量は、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(加水分解性基、ヒドロキシル基)の合計1モルに対して、例えば、0.001〜1モル、好ましくは0.002〜0.01モルである。シラノール縮合触媒の使用量は触媒量であってもよい。
【0073】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択できるが、通常、−78℃〜120℃、好ましくは−30℃〜60℃、さらに好ましくは−10℃〜30℃である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0074】
上記方法では、ラダー型シルセスキオキサン(A1)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)と式(5)で表されるシラン化合物(S2)中の反応性基(アルコキシ基等の加水分解性基、ヒドロキシル基)が、加水分解・縮合(又は縮合)して、対応する分子内にSi−H結合を有するSi−H型ラダーシルセスキオキサンが生成する。
【0075】
反応終了後、反応生成物は、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0076】
ラダー型シルセスキオキサンとしては、置換基、分子量等が異なる種々のラダー型シルセスキオキサンを使用でき、それらを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ラダー型シルセスキオキサンは、ビニル型ラダーシルセスキオキサン又はSi−H型ラダーシルセスキオキサンを含んでいることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるラダー型シルセスキオキサン(A)は、ビニル型及びSi−H型以外のラダー型シルセスキオキサン、及びランダム構造のシルセスキオキサンを含んでいても良い。
【0077】
ビニル型ラダーシルセスキオキサン又はSi−H型ラダーシルセスキオキサンの全ラダー型シルセスキオキサン中の含有量は、例えば50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%である。ビニル型ラダーシルセスキオキサン又はSi−H型ラダーシルセスキオキサンとしては、末端及び/又は側鎖にSi−H結合又はアルケニル基を有するビニル型又はSi−H型フェニル/メチルラダーシルセスキオキサンが好ましい。フェニル/メチル比は、1:0.8〜0.8:1が好ましい。
【0078】
硬化性樹脂組成物中のラダー型シルセスキオキサン(A)の含有量は、例えば10〜90wt%、好ましくは10〜85wt%である。ラダー型シルセスキオキサンの含有量がこの範囲にあると、耐熱性が高くなる。
【0079】
[フッ素含有化合物(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるフッ素含有化合物(B)としては、特に限定されないが、具体的には、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、C61324Si(OCH3)3、C715CONH(CH2)3Si(OC25)3、C81724Si(OCH3)3、C81724SiCH3(OCH3)2、C91924Si(OCH3)3、C91924Si(C25)(OCH3)2、(CH3O)3SiC2481624Si(OCH3)3、(CH3O)2(CH3)SiC91824Si(CH3)(OCH3)2などのフルオロアルキル基とアルコキシ基を有するシラン化合物、及び下記式(B1)
【化10】

で表される化合物等が挙げられる。
【0080】
式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上(例えば1〜6)の整数を示し、nが2以上の場合、n個の括弧内の基は、同一であっても異なっていてもよい。R1〜R3は、同一又は異なって、上記式(4)又は(5)におけるRと同じである。好ましくは、R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(B2)
【化11】

で表される基を示す。但し、R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(B2)で表される基とすることができる。
【0081】
上記式(B2)中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは0〜3の整数を示し、m=0の場合は単結合を表す。mは0又は1が好ましく、特に好ましくは1である。
【0082】
1〜R3、Ra、Rb、Rc、Rd、Reにおける炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル基などが挙げられる。R1〜R3におけるアリール基としては、置換若しくは非置換のフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。R1〜R3として、水素原子又は上記式(2)で表される基以外の基としては、メチル基又はフェニル基が好ましい。Ra、Rb、Rc、Rd、Reとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0083】
<Rf
上記式(B1)中、Rfで示されるフッ素化炭化水素基における炭化水素基としては、例えば、1価又は多価の脂肪族炭化水素基、1価又は多価の脂環式炭化水素基、1価又は多価の芳香族炭化水素基、及びこれらが2以上結合した1価又は多価の基などが挙げられ、好ましくは、炭素数1〜20の1〜4価の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜20の1〜4価の分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の1〜4価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1〜4価の芳香族炭化水素基、及びこれらの基の2以上が酸素原子又は硫黄原子を介して若しくは介することなく結合した総炭素数が4〜22の1〜4価の基などが挙げられる。さらに好ましくは、炭素数3〜10の2〜3価の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜10の2〜3価の分枝鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の2〜3価の脂環式炭化水素基、炭素数8〜10の2〜3価の芳香族炭化水素基、及びこれらの基の2以上が酸素原子又は硫黄原子を介して若しくは介することなく結合した2〜3価の基などが挙げられる。
【0084】
炭素数1〜20の1価の直鎖状炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシル、ペンタデシル、オクタデシル基等;炭素数2〜20の1価の分岐鎖状炭化水素基として、メチルエチル、ジメチルメチル、2−メチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルブチル、2,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−エチル−2−メチルプロピル、2−メチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、2,3,4−トリメチルペンチル、2−エチル−2−メチルペンチル基等;炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基として、シクロペンチル、1−メチルシクロペンチル、シクロへキシル、1−メチルシクロへキシル、1,4−ジメチルシクロへキシル基等;炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基として、フェニル、1−メチルフェニル、1,4−ジメチルフェニル、ナフチル基等が挙げられる。
【0085】
炭素数1〜20の2価の直鎖状炭化水素基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、へキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン基等;炭素数2〜20の2価の分岐鎖状炭化水素基として、メチルメチレン、メチルエチレン、ジメチルメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、2−メチルテトラメチレン、2,3−ジメチルテトラメチレン、2,2−ジメチルテトラメチレン、2−エチル−2−メチルトリメチレン、2−メチルペンタメチレン、2,2−ジメチルペンタメチレン、2,3−ジメチルペンタメチレン、2,4−ジメチルペンタメチレン、2,3,4−トリメチルペンタメチレン、2−エチル−2−メチルペンタメチレン基等;炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基として、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等;炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基として、フェニレン、ナフチレン基等;1,4−シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4−フェニレンビス(メチレン)などが挙げられる。
【0086】
上記以外の多価の炭化水素基としては、例えば、1,2,3−プロパントリイル、1,2,3−ブチルトリイル、1,2,4−ブチルトリイル、1,2,3,4−ブチルテトライル、1,2,3−ペンタントリイル、1,2,4−ペンタントリイル、1,2,5ペンタントリイル、1,2,3,4−ペンタンテトライル、1,2,4,5−ペンタンテトライル、1,2,3−シクロへキサントリイルなどが挙げられる。
【0087】
上記Rfで示されるフッ素化炭化水素基における炭化水素基のなかでも、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、テトラメチレン、ペンタメチレン、へキサメチレン、2−メチルテトラメチレン、2−メチルトリメチレン、2−メチルペンタメチレン、3−メチルペンタメチレンが特に好ましい。
【0088】
上記Rfで示されるフッ素化炭化水素基は、フッ素化前の炭化水素基の水素原子の、例えば20〜100%がフッ素原子で置換されており、30〜90%が置換されているのが好ましく、50〜70%が置換されているのがさらに好ましい。上記Rfで示されるフッ素化炭化水素基において、両末端の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子で置換されていないことが好ましい。また、本発明のRfで示されるフッ素化炭化水素基は、炭素数が3〜8で、フッ素原子数が2〜14であり、−CF2−基を1〜6個含むことが好ましい。さらには、炭素数が3〜6で、フッ素原子数が2〜8であり、−CF2−基を1〜4個含むことが好ましい。−CF2−基が2個以上の場合、連続していることが好ましい。このような構造とすることにより、液状を呈する化合物が得られる。また、硬化した場合に耐熱性、透明性に優れた硬化物を得ることができる。炭素数が上記範囲より多いと硬化物が白濁しやすい。
【0089】
上記のフッ素化炭化水素基の例としては、例えば、2,2−ジフルオロプロパンジイル、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジイル、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナンジイル、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘプタデカフルオロデカンジイル、2−フルオロ−2−パーフルオロメチル−1,3−プロパンジイル、及び2−フルオロ−2−パーフルオロエチル−1,3−プロパンジイル基などが例示できる。
【0090】
fで示されるフッ素化炭化水素基としては、下記式(B3)
【化12】

で表される2価のフッ素化炭化水素基であることが特に好ましい。なお、式中、n1は1〜4の整数、n2は1〜10の整数、n3は1〜4の整数を示す。なかでも、n1=n3=1、n2=1〜7が好ましく、n2=1〜4が特に好ましい。すなわち、1〜4個の−CF2−基を連続して構造中に有し、両末端がメチレン基である、2,2−ジフルオロプロパンジイル、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジイル、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジイル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジイルが好ましい。
【0091】
上記式(B1)で表される化合物は液状を呈し、具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化13】

【0092】
上記フッ素含有化合物(B)は、上記式(B1)で表される化合物であることが好ましい。
【0093】
上記フッ素含有化合物(B)の含有量は、硬化性樹脂組成物中、例えば1〜50wt%、好ましくは1〜40wt%である。上記含有量がこの範囲にあると、柔軟性に優れた硬化物が得られる。また、ラダー型シルセスキオキサン(A)100重量部に対し、フッ素含有化合物(B)の量は、例えば1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。フッ素含有化合物(B)の量を、ラダー型シルセスキオキサン(A)に対し、上記範囲とすることにより、柔軟性に優れた硬化物が得られる。
【0094】
<式(B1)で表されるフッ素含有化合物の合成>
上記式(B1)で表されるフッ素含有化合物は、塩基の存在下、下記式(B4)
【化14】

で表されるヒドロキシ化合物と、前記式(4)で表されるシラン化合物(S1)又は前記式(5)で表されるシラン化合物(S2)とを反応させることにより得ることができる。なお、上記式(B4)中のRfとnは、前記式(B1)におけるものと同じである。
【0095】
<ヒドロキシ化合物>
式(B4)で表されるヒドロキシ化合物としては、上記Rfを有する1価又は多価のアルコールが使用でき、目的とする式(B1)で表されるフッ素含有化合物に対応するヒドロキシ化合物を使用できる。式(B4)で表されるヒドロキシ化合物は公知の方法で製造でき、また市販品を用いることもできる。具体的には、2,2−ジフルオロプロパンジオール、2,2,3,3−テトラフルオロブタンジオール、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジオールが好ましく例示できる。
【0096】
<溶媒>
式(B4)で表されるヒドロキシ化合物と、前記式(4)で表されるシラン化合物(S1)又は前記式(5)で表されるシラン化合物(S2)との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、前記ビニル型ラダーシルセスキオキサン、Si−H型ラダーシルセスキオキサンの合成で例示した溶媒を使用できる。
【0097】
前記式(4)で表されるシラン化合物(S1)又は前記式(5)で表されるシラン化合物(S2)の使用量は、式(B4)で表されるヒドロキシ化合物の反応に付すべきヒドロキシル基1モルに対して、例えば1.0〜2モル、好ましくは1.0〜1.3モル、さらに好ましくは1.0〜1.2モル程度である。
【0098】
<塩基>
式(B1)で表されるフッ素含有化合物の製造は、塩基の存在下で行う。反応系に塩基を存在させることにより一般に反応速度が著しく増大する。塩基としては、前記ビニル型ラダーシルセスキオキサン、Si−H型ラダーシルセスキオキサンの合成で例示した塩基を使用できる。なかでも、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどの3級アミン;ピリジン、ルチジン、ピコリンなどの窒素含有芳香族性複素環化合物などが好ましい。
【0099】
塩基の使用量は、式(B4)で表されるヒドロキシ化合物中のヒドロキシル基1モルに対して、例えば1〜300モル、好ましくは1〜1.5モル程度である。
【0100】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、ビニルシランを用いる場合、20〜200℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜60℃程度である。また、ヒドロシランを用いる場合、反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、−78〜110℃、好ましくは−30〜40℃、さらに好ましくは−10〜10℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0101】
上記方法では、反応により、式(B4)で表されるヒドロキシ化合物の少なくとも1個以上のヒドロキシル基がシリル化され、対応する式(B1)で表されるフッ素含有化合物が生成する。反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。反応後の混合液に水、1〜7%の希塩酸、1〜7%の重曹水などの水系溶媒を加えて洗浄してもよい。
【0102】
[架橋剤]
ラダー型シルセスキオキサン及びフッ素含有化合物とヒドロシリル化反応により炭素−ケイ素結合を形成可能な架橋剤としては、分子内にSi−H結合、及び/又は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を1以上有する化合物で有れば良く、例えば、上記ラダー型シルセスキオキサン(A)以外のポリシロキサンであって、分子内にSi−H結合、及び/又は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を1以上有するポリシロキサン(D)が挙げられる。以下、分子内にSi−H結合を有する基を1以上有するポリシロキサン(D)をSi−H型ポリシロキサン、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を1以上有するポリシロキサン(D)をビニル型ポリシロキサンと称する。ポリシロキサンとしては、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有する化合物であれば、特に限定されず、種々のポリシロキサンを使用できる。ポリシロキサンとしては、具体的には、直鎖状、分岐鎖状又は環状のシロキサン、架橋された三次元構造を有するシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0103】
上記ポリシロキサン(D)の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジビニルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ビニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−1,7−ジビニルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7−ノナメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7−ノナメチル−3−ビニルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,7,7−ノナメチル−3,5−ジビニルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−1,9−ジビニルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチル−3−ビニルペンタシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−1,9−ジビニルペンタシロキサンなどの、(Si−O)単位を1〜10個(好ましくは2〜5個)有するSi−H型又はビニル型の、直鎖状ポリジメチルシロキサン、ジメチルシリコーンなどの直鎖状ポリジアルキルシロキサン(好ましくは直鎖状ポリジC1-10アルキルシロキサン);へキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの、(Si−O)単位を2〜10個(好ましくは2〜5個)有するSi−H型又はビニル型の、環状ポリジメチルシロキサンなどの環状ポリジアルキルシロキサン(好ましくは環状ポリジC1-10アルキルシロキサン)などが挙げられる。
【0104】
上記ポリシロキサン(D)としては、さらに、上記例示の化合物のメチル基などのアルキル基の全部又は一部がフェニル基などのアリール基(好ましくはC6-20アリール基)で置換された化合物、例えば、Si−H型又はビニル型の直鎖状又は環状の、ポリジフェニルシロキサンなどのポリジアリールシロキサン(好ましくはポリジC6-20アリールシロキサン);Si−H型又はビニル型の直鎖状又は環状の、ポリフェニルメチルシロキサンなどのポリアルキルアリールシロキサン(好ましくはポリC1-10アルキルC6-20アリールシロキサン);前記ポリオルガノシロキサン単位で構成された共重合体[ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体など]などが例示できる。上記例示のポリシロキサンは、分岐鎖を有していても良い。また、ランダム構造やカゴ構造のシルセスキオキサンも使用できる。
【0105】
上記ポリシロキサン(D)の分子量は、例えば100〜80万のものが使用でき、好ましくは100〜1000である。ポリシロキサン(D)の分子量がこの範囲にあると、シルセスキオキサンとの相溶性が高い傾向がある。
【0106】
上記ポリシロキサン(D)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。上記ポリシロキサン(D)の含有量は、ラダー型シルセスキオキサン(A)100重量部に対し、例えば10〜1000wt%、好ましくは10〜500重量部とすることができる。上記ポリシロキサン(D)の含有量がこの範囲にあると、耐熱性が高くなる傾向が有る。
【0107】
ポリシロキサン(D)の硬化性樹脂組成物における全珪素含有化合物中の含有量は、例えば50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%である。
【0108】
ポリシロキサンは、トリアルコキシシランを加水分解し、溶液からゾル、ゾルからゲルへ変化させて製造する、所謂ゾルゲル法で製造できる。また、出発原料のアルコキシシランを変えることにより、性質の大きく異なるポリシロキサンを得ることができる。さらに、ポリシロキサンのSi−H型化、及びビニル型化は、公知の方法にて行うことができる。
【0109】
ポリシロキサン(D)としては、H末端ポリジメチルシロキサン等の市販品を用いることができる。
【0110】
上記ラダー型シルセスキオキサン(A)と上記ポリシロキサン(D)の合計含有量は、硬化性樹脂組成物中、例えば50〜99wt%、好ましくは60〜98wt%である。上記含有量がこの範囲にあると、特に耐熱性が高い硬化物を生成する傾向がある。
【0111】
[ヒドロシリル化触媒(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれるヒドロシリル化触媒(C)としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示され、具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体などの白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体などの白金ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、ならびに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、白金ビニルメチルシロキサン錯体が、反応速度が良好であることから好ましい。
【0112】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル化触媒(C)の含有量は、触媒中の白金、パラジウム、又はロジウムが重量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量であることが好ましく、0.1〜500ppmの範囲内であることがさらに好ましい。ヒドロシリル化触媒(C)の含有量がこのような範囲にあると、架橋速度が著しく遅くなることがなく、架橋物に着色等の問題を生じる恐れが少なく好ましい。
【0113】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、ヒドロシリル化反応の速度を調整するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含有していてもよい。このヒドロシリル化反応抑制剤としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールが例示される。このヒドロシリル化反応抑制剤の含有量としては、上記組成物の架橋条件により異なるが、実用上、硬化性樹脂組成物100重量部に対して、0.00001〜0.01重量部の範囲内であることが好ましい。
【0114】
[溶媒]
シリル化反応時にトルエン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の従来公知の溶媒を使用してもよい。
【0115】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、その他任意の成分として、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、溶剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、補強材(他の充填剤など)、核剤、カップリング剤、シランカップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤などの慣用の添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0116】
本発明の硬化性樹脂組成物としては、ビニル型ラダーシルセスキオキサンとビニル型フッ素含有化合物と架橋剤として分子内にSi−H結合を有する化合物とを含んでいることが好ましい。また、Si−H型ラダーシルセスキオキサンとSi−H型フッ素含有化合物と架橋剤として分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物を含んでいることが好ましい。
【0117】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記の各成分を室温で攪拌・混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物は、多液系の組成物も含み、1液系でもよく、2液系または多液系として別個に保存しておき使用前に混合してもよい。
【0118】
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記触媒を使用したヒドロシリル化反応により硬化できる。ヒドロシリル化反応の条件は特に限定されず、上記触媒を使用して従来公知の条件で行なえばよいが、反応速度の点から、室温〜180℃、より好ましくは60℃〜150℃で、5〜300分程度行なうのが好ましい。得られた硬化物は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れている。
【0119】
[封止材]
本発明の封止材は、上記硬化性樹脂組成物を含んでいる。本発明の封止材は、高温耐熱性、柔軟性、透明性、耐熱黄変性、耐光黄変性等の物性に優れ、光半導体素子等の封止材として好適に使用できる。
【実施例】
【0120】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。反応生成物の同定はGC−MS及び1H−NMRにより行った。なお、1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。
【0121】
合成例1[ラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサンの合成]
300ml四つ口フラスコに、ラダー型末端エトキシ基フェニルメチルシルセスキオキサン(重量平均分子量Mw2200、1分子当たりのエトキシ基の含有量(平均)は1.5重量%、フェニル/メチル(モル比)=1/1)10gと、10重量%水酸化テトラメチルアンモニウム3.0g、メチルイソブチルケトン200g、ジメチルエトキシビニルシラン5.5gを仕込んだ。45℃で1時間加熱し、反応終了とした。酢酸エチル100gを加えた後に、500gの水で、5回水洗浄を行った。洗浄後の上層をエバポレータで濃縮した後に真空ポンプで30分減圧に引いた。得量7.8gで、液体のラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン[本発明のラダー型シルセスキオキサン(A)に相当する化合物]が得られた。重量平均分子量Mwは1700、1分子当たりのビニル基の含有量(平均)は5.6重量%であった。
[ラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサンの1H−NMRスペクトル]
1H−NMR(CDCl3)δ0.1 ppm (br)、δ5.4-6.2 ppm (br)、δ6.8-7.8 ppm (br)
【0122】
なお、原料として用いたラダー型末端エトキシ基フェニルメチルシルセスキオキサンは、トリエトキシメチルシランとトリエトキシフェニルシラン(モル比1:1)を、常法により加水分解・縮合することで調製した。
【0123】
合成例2[ヘキサフルオロペンタンジオールの誘導化(ジビニルシラン体への誘導化)]
300ml四つ口フラスコにヘキサフルオロベンタンジオール(20g)とピリジン(22.3g)とトルエン(160g)を仕込んだ。室温中、マグネチックスターラーで攪拌しながら、クロロジメチルビニルシラン(25.0g)を30分間かけて滴下漏斗で滴下した。滴下終了後、オイルバスで50℃に加熱して1時間熟成した。
水(100g)を入れて攪拌した後、静置して下層(水層)を抜取った。さらに上層に5%HCl(60ml)を入れて攪拌した後静置して下層を抜取った。上層に5%重曹水を30ml入れて攪拌し、静置して下層を抜取った。
エバポレータで上層を濃縮した後、真空ポンプで減圧に引くとジビニルシラン誘導体が27g得られた。
1H−NMR(CDCl3) δ0.25 ppm (s,12H)、δ4.04 ppm (s,4H)、δ5.80 ppm (dd,4H) δ6.12 ppm (t,2H)
【0124】
実施例1[フッ素系ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物1及びその硬化物1の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン(0.320g)と合成例2で得られたヘキサフルオロペンタンジオールのジビニルシラン誘導体(0.150g)と1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(0.056g)とを6mlのスクリュー管に秤量し、1時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(和光純薬製;白金1.6wt%)を0.5μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物1を得た。
得られた硬化性樹脂組成物1をガラスプレートに塗布し、ホットプレート上で60℃、10分間加熱すると無色透明な硬化物1が得られた。
【0125】
実施例2[フッ素系ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物2及びその硬化物2の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン(0.400g)と合成例2で得られたヘキサフルオロペンタンジオールのジビニルシラン誘導体(0.040g)とH末端ポリジメチルシロキサン(アズマックス社製、分子量400〜500、0.182g)とを6mlのスクリュー管に秤量し、1時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(白金1.6wt%)を1.0μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物2を得た。
得られた硬化性樹脂組成物2をガラスプレートに塗布し、ホットプレート上で60℃、10分間加熱すると無色透明な硬化物2が得られた。
【0126】
実施例3[フッ素系ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物3及びその硬化物3の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン(0.200g)と合成例2で得られたヘキサフルオロペンタンジオールのジビニルシラン誘導体(0.020g)と1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(0.550g)とを6mlのスクリュー管に秤量し、1時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(白金1.6wt%)を0.5μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物3を得た。
得られた硬化性樹脂組成物3をガラスプレートに塗布し、ホットプレート上で60℃、10分間加熱すると無色透明な硬化物3が得られた。
【0127】
実施例4[フッ素系ラダーシルセスキオキサン含有硬化性樹脂組成物4及びその硬化物4の製造]
合成例1で得られたラダー型ビニルフェニルメチルシルセスキオキサン(0.200g)と合成例2で得られたヘキサフルオロペンタンジオールのジビニルシラン誘導体(0.020g)と1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(0.752g)とを6mlのスクリュー管に秤量し、1時間室温で攪拌したところ、相溶性が良好で、透明で均一な溶液が得られた。
得られた混合液に白金ビニルメチルシロキサン錯体(白金1.6wt%)を0.4μL仕込み、再度攪拌し、硬化性樹脂組成物4を得た。
得られた硬化性樹脂組成物4をガラスプレートに塗布し、ホットプレート上で60℃、10分間加熱すると無色透明な硬化物4が得られた。
【0128】
[耐黄変性試験]
実施例1〜4で得られた硬化物1〜4を、180℃で168時間、オーブン中で加熱したところ、変色は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラダー型シルセスキオキサン(A)と、フッ素含有化合物(B)と、ヒドロシリル化触媒(C)とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記フッ素含有化合物(B)が、下記式(B1)
【化1】

[式中、Rfはn価のフッ素化炭化水素基、nは1以上の整数を示し、nが2以上の場合、n個の括弧内の基は、同一であっても異なっていてもよい。R1〜R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基又は下記式(B2)
【化2】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは、0〜3の整数を示す。)
で表される基を示す。但し、R1〜R3の少なくとも1つは、水素原子又は上記式(B2)で表される基である。]
で表される、請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、前記ラダー型シルセスキオキサン(A)以外のポリシロキサン(D)を含有する、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含む封止剤。

【公開番号】特開2012−121955(P2012−121955A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272358(P2010−272358)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】