説明

硬化性熱応答性組成物

熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む熱応答性組成物が提供される。任意に硬化させてもよい組成物は身体の表面に被着させるために有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱応答性粘度調整剤を含む熱可逆性ゲル組成物は、温度が周囲温度または組成物の前処理温度より一般に高い環境における用途のためによく機能する。こうした組成物は、周囲温度で低粘度の組成物であることが可能であるが、より高い温度の環境(例えば、口腔環境)内で粘度が実質的に増加するか、あるいは増粘された半固体またはゲル様組成物に増粘することが可能である。熱応答性粘度調整剤を含む組成物の使用は、例えば歯白化(例えば米国特許第6,312,666号明細書(オクスマン(Oxman)ら))および歯エッチング(例えば米国特許第6,312,667号明細書(トロム(Trom)ら))を含む用途における使用について報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
表面に被着させた後に望ましい特性を有する他の熱応答性組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本発明は、熱応答性粘度調整剤、前記調整剤とは異なる重合性成分および水を含む熱応答性組成物を提供する。好ましくは、熱応答性粘度調整剤は、任意に反応性基を含むポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む。任意に、組成物は、分散液、サスペンジョン、エマルジョンまたは溶液の形態を取った口腔環境内で用いるために適する歯科用組成物である。任意に、組成物は、身体内または身体上で用いるために適する医療用組成物である。
【0004】
もう一つの実施形態において、本発明は表面を処理する方法を提供する。この方法は、熱応答性粘度調整剤、前記調整剤とは異なる重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記表面に被着させる工程および前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程を含む。
【0005】
もう一つの態様において、本発明は表面上で組成物を硬化させる方法を提供する。この方法は、熱応答性粘度調整剤、前記調整剤とは異なる重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記表面に被着させる工程、前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程および前記重合性成分を重合するように誘導する工程を含む。
【0006】
もう一つの態様において、本発明は身体の口腔表面を処理する方法を提供する。この方法は、熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程および前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程を含む。
【0007】
もう一つの態様において、本発明は身体の口腔表面上で組成物を硬化させる方法を提供する。この方法は、熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程、前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程および前記重合性成分を重合するように誘導する工程を含む。
【0008】
もう一つの態様において、本発明は熱応答性粘度調整剤を製造する方法を提供する。この方法は、ヒドロキシ末端ポリ(オキシアルキレン)ポリマーをイソシアネート官能性(メタ)アクリレートまたはビニルアズラクトンと反応させることを含む。
【0009】
もう一つの態様において、本発明は熱応答性粘度調整剤および前記調整剤の組成物を提供する。熱応答性粘度調整剤は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの末端上に少なくとも1個のCH2=C(R)C(O)OCH2CH2NHC(O)O−(式中、RはHまたはCH3を表す)基を含む前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む。
【0010】
もう一つの態様において、本発明は熱応答性粘度調整剤および前記調整剤の組成物を提供する。熱応答性粘度調整剤は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの末端上に少なくとも1個のCH2=CHC(O)NHC(CH32C(O)O−基を含む前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む。
【0011】
本発明の幾つかの態様において、本発明の組成物および方法は、硬化性組成物(例えば硬化性ゲル)を提供する。硬化性組成物は、非硬化性熱可逆性組成物に比べて利点を提供することが可能である。硬化後の利点には、例えば、寸法安定性、熱安定性、改善された液体に対する安定性、改善された粘着性および導入された添加剤(例えば歯科用添加剤)の徐放に関する可能性を挙げることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定義
本明細書で用いられる「熱応答性」は、温度の変化に応じた物理的特性の変化の発生に関する。
【0013】
本明細書で用いられる「熱応答性粘度調整剤」は、温度の変化に応じて粘度を実質的に変える(例えば、別個の液−液相または液−固相に分離する単一液相の相変化を含む)能力を組成物に与えるために組成物に導入してもよい材料を意味する。
【0014】
本明細書で用いられる「反応性」基は、選択された条件(例えば、ラジカルの存在下でまたは縮合反応条件下で)下でもう1個の反応性基またはもう1種の成分(例えば、縮合反応サイトを有する架橋剤または化合物)と反応できる基である。例えば、反応性基を含むポリマーにおいて、反応性基はもう1個の反応性基および/またはもう1種の成分と反応して、二量化、オリゴマー化および/または重合反応を通して架橋を形成することが可能である。
【0015】
本明細書で用いられる「硬化性」は「硬化」されることが可能である材料に関連する。本明細書で用いられる「硬化する」は、例えば、架橋、二量化、オリゴマー化および/または重合反応を含むプロセスを包含する積もりである。
【0016】
本明細書で用いられる「(メタ)アクリル」は「アクリル」および/または「メタクリル」を集合的に意味するように意図された略語である。
【0017】
本明細書で用いられる「a」、「少なくとも1」および「1以上」は互換可能に用いられる。
【0018】
本明細書で用いられる時、終点による数値範囲の列挙は、当該範囲内に包含されるすべての数値を含む(例えば、1〜5は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)
【0019】
上述した発明の開示は、本発明の開示された各実施形態またはあらゆる実施を記載しようとしていない。以下の説明は、例示的な実施形態をより特に例証している。
【0020】
本発明は熱応答性組成物を提供する。こうした組成物は、典型的には、標的部位(例えば身体の表面)上に被着させる前に前処理温度で低粘度状態にあるが、典型的には標的部位で非常に粘性(例えば濃くて制御可能)になる。一旦標的部位に適切に被着されると、組成物は任意に硬化して半永久ゲルまたは永久ゲルを提供することが可能である。これらの組成物は、ユーザーにより取り扱われた時、一般に容易に分配され、被着され、操作され、標的部位に被着されると一般に容易に制御される。組成物が前処理温度で初期に典型的に低粘度(例えば易流動性流体状態)を有するので、組成物は、例えば、意図した部位に組成物を送出するためにより低いシリンジ押出力しか一般に必要としない。更に、低粘度組成物は、比較的大きな表面積(例えば口腔)に微細ミストまたはエアーゾルを噴霧する能力を提供することが可能であり、典型的には、暖かい標的部位上でゲル化すると後で長期間保持を可能にする。これは、高粘度材料を送出できない一連のシステムからディスペンサまたは塗布器を選択する自由度をユーザーに与えることが可能である。さらに、低粘度組成物の製造は、より容易な加工およびより大きい均一性ならびにコンシステンシーを見込んでもよい。
【0021】
本発明の熱応答性組成物は、一般に生物組織内または生物組織上で用いるために適し、この場合、周囲(例えば室温)以下の前処理温度を有する組成物は口腔温度(例えば30〜39℃)または口腔温度付近にある硬組織および/または軟組織に被着させる。任意に、組成物は、分散液、サスペンジョン、エマルジョンまたは溶液の形態を取った口腔環境内で用いるために適する歯科用組成物である。任意に、組成物は、身体内または身体上で用いるために適する医療用組成物である。
【0022】
生体内で熱応答性組成物を(例えば光で)硬化させる能力は、強化された物理的特性および冷却しても単に水で希釈しても流体状態に戻らない利点を示す材料を提供することが可能である。更に、本発明の組成物が処理前に易流動性液体であってもよいので、配合、取り扱い、送り出しおよび粘性組成物の塗布の多くの問題を克服することが可能である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、未硬化組成物の前処理温度での初期粘度は、組成物が液状であるように十分に低いことが可能である。その後、処理温度(例えば口腔温度または口腔温度付近の温度)にさらされると、粘度が高まって組成物を増粘することが可能である。初期粘度が、組成物が液体であるような初期粘度である時、5倍、10倍または100倍以上でさえもの範囲の粘度増加を経験することが可能である。従って、例えば、液状の組成物は0〜7000ポイズの粘度を有しうる。温度の上昇に応えて、組成物の粘度は、少なくとも10,000ポイズに増加することが可能である。温度が下がると、未硬化組成物は、好ましくは、その粘度を戻すとともに液体の流動特性に戻る能力を有する。
【0024】
前処理温度は、塗布または処理の前に組成物を供する温度である。前処理温度は、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも20℃である。前処理温度は、好ましくは高くとも29℃、より好ましくは高くとも25℃である。但し、温度がこの範囲外である特定の実例がありうる。少なくとも20℃の前処理温度は、組成物を周囲温度または室温で容易に貯蔵することを可能にする。高くとも25℃の前処理温度は、組成物を周囲温度または室温で容易に貯蔵することを可能にする。但し、本発明の組成物は、5℃〜10℃のより低い冷蔵された前処理温度で貯蔵して、改善された安定性および保存寿命を提供することも可能である。好ましくは、冷蔵された前処理温度は少なくとも5℃である。好ましくは、冷蔵された前処理温度は高くとも10℃である。処理温度は、組成物が塗布中にさらされる温度である。処理温度は、身体温度または身体温度付近であることが可能である。好ましくは、処理温度は少なくとも30℃である。好ましくは、処理温度は高くとも39℃である。
【0025】
本発明の熱応答性組成物は、熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む。好ましくは、組成物は開始剤系(例えば1種以上の開始剤)も含む。
【0026】
本発明の組成物は、上述した成分を組み合わせることにより単一部分液体またはゲルとして調製してもよい。例えば、熱応答性粘度調整剤および重合性成分は所望の温度(例えば室温)で水に添加してもよく、混合してもよい。あるいは、本発明の組成物は、組織に送り出す前に混合される多部分液体および/またはゲルとして調製してもよい。こうした多部分系は、例えば2成分レドックス化学に基づく開始剤系を含む組成物、および組成物中の他の材料と適合性でない添加剤を含む組成物を含む単一部分組成物に存在しえない保存安定性を提供することが可能である。
【0027】
本発明の熱応答性組成物は、熱応答性組成物の全質量を基準にして、好ましくは少なくとも30wt%の水、より好ましくは少なくとも40wt%の水を含む。本発明の熱応答性組成物は、熱応答性組成物の全質量を基準にして、好ましくは多くとも90wt%の水、より好ましくは多くとも80wt%の水を含む。水は、好ましくは、例えば、蒸留、濾過およびイオン交換法を含む方法によって精製される。水に加えて、本発明の組成物は溶媒を任意に含んでもよい。有用な溶媒には、例えば、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)およびグリセリン)が挙げられる。好ましくは、溶媒は水混和性溶媒である。
【0028】
重合性成分
本発明の硬化性熱応答性組成物は重合性成分を含み、よって重合性組成物を形成する。本発明の熱応答性組成物は、熱応答性組成物の全質量を基準にして、好ましくは少なくとも1wt%の重合性成分、より好ましくは少なくとも5wt%の重合性成分を含む。本発明の熱応答性組成物は、熱応答性組成物の全質量を基準にして、好ましくは多くとも60wt%の重合性成分、より好ましくは多くとも50wt%の重合性成分を含む。
【0029】
特定の実施形態において、組成物は光重合性である。すなわち、組成物は、化学線を照射すると組成物の重合(または硬化)を開始させる光開始剤(すなわち光開始剤系)および重合性成分を含有する。こうした光重合性組成物は好ましくはラジカル重合性である。
【0030】
特定の実施形態において、組成物は化学重合性である。すなわち、組成物は、化学線の照射によらずに組成物を重合するか、キュアさせるか、またはそうでない場合は硬化させることができる化学開始剤系を含有する。こうした化学重合性組成物は時には「自己キュア」組成物と呼ばれ、こうした組成物には、例えば、ガラスイオノマーセメント(例えば、従来のガラスイオノマーセメントおよび樹脂変性ガラスイオノマーセメント)、レドックスキュア系、縮合反応を受けることができるシラン部分(例えば、米国特許第5,607,663号明細書(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,662,887号明細書(ロッツィ(Rozzi)ら)、同第5,866,630号明細書(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,876,208号明細書(ミトラ(Mitra)ら)、同第5,888,491号明細書(ミトラ(Mitra)ら)および同第6,312,668号明細書(ミトラ(Mitra)ら)に記載されたようなもの)およびそれらの組み合わせを挙げることが可能である。
【0031】
エチレン系不飽和化合物
エチレン系不飽和化合物には、例えば、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合性ポリマーおよびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、重合性成分はラジカル重合性である。任意に、エチレン系不飽和化合物は複数の重合性基を含む。好ましいモノマー、オリゴマーおよびポリマーは、部分水混和性または完全水混和性であるものである。
【0032】
適する重合性モノマーおよびオリゴマーには、例えば、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)、テトラヒドロフルフラルメタクリレート;、ならびに例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリシジルジメタクリレート(GDMA)およびグリシジルモノメタクリレート(GMMA)を含むヒドロキシル官能性モノマーが挙げられる。例えば、ビス(グリシジルメタクリレート)(ビス−GMA)、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)およびウレタンジメタクリレートを含む疎水性モノマーおよびオリゴマーも用いてよい。
【0033】
適する重合性ポリマーには、例えば、官能化ポリ(アクリル酸)ポリマーを含む例えば部分または完全のアクリレート−またはメタクリレート官能化ポリマー、セルロース樹脂、ポリ(ビニルアルコール)ポリマー、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーおよびポリ(エチレングリコール)ポリマーなどが挙げられる。
【0034】
化学重合性組成物
化学重合性組成物は、エチレン系不飽和カルボン酸のホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ポリアクリル酸およびコポリ(アクリル酸,イタコン酸)など)、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラス、水および酒石酸などのキレート化剤を主原料として典型的に用いる従来のガラスイオノマーセメントなどのガラスイオノマーセメントを含んでもよい。従来のガラスイオノマー(すなわちガラスイオノマーセメント)は、典型的には、使用の直前に混合される粉末/液体配合物中で供給される。混合物は、ポリカルボン酸の酸性反復単位とガラスから浸出するカチオンとの間のイオン反応により暗所において自己硬化を受ける。ガラスイオノマーセメントは、樹脂変性ガラスイオノマー(「PMGI」)セメントも含んでよい。例証的な化学重合性組成物は、例えば、2002年12月20日出願の出願人の譲受人の同時係属出願第10/327,411号明細書に記載されている。
【0035】
化学重合性組成物は、重合性成分(例えば、エチレン系不飽和重合性成分)およびレドックス剤を含むレドックスキュア系を含んでもよい。レドックス剤は酸化剤および還元剤を含んでもよい。本発明において有用である適する重合性成分、レドックス剤、任意の酸官能性成分および任意の充填剤は、両方とも2002年4月12日出願の出願人の譲受人の同時係属出願第10/121,326号明細書および同第10/121,329号明細書に記載されている。あるいは、レドックス剤は、2002年12月20日出願の出願人の譲受人の同時係属出願第10/327,202号明細書で開示されたように酵素を含有するラジカル開始剤系を含んでもよい。
【0036】
還元剤および酸化剤は、互いに反応するか、またそうでない場合は互いに協働して、樹脂系(例えばエチレン系不飽和成分)の重合を開始させることができるラジカルを生成させるのがよい。キュアのこのタイプは暗反応である。すなわち、それは光の存在に依存せず、光の存在しない状態で進行することが可能である。還元剤および酸化剤は、好ましくは、典型的な歯科用条件下での貯蔵および使用を可能にするのに十分に保存安定性であり、望ましくない着色がない。還元剤および酸化剤は、重合性成分の他の成分への容易な溶解を可能にする(および重合性成分の他の成分からの分離を妨害する)ように十分に熱応答性組成物と適合性(および好ましくは水混和性)であるのがよい。
【0037】
有用な還元剤には、米国特許第5,501,727号明細書(ワング(Wang)ら)に記載されたようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体および金属錯体化アスコルビン酸化合物、4−t−ブチルジメチルアニリンなどのアミン、特に第三アミン、p−トルエンスルフィン酸塩およびベンゼンスルフィン酸塩などの芳香族スルフィン酸塩、1−エチル−2−チオウレア、テトラエチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、1,1−ジブチルチオウレアおよび1,3−ジブチルチオウレアなどのチオウレアならびにそれらの混合物が挙げられる。他の二次還元剤には、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に応じて異なる)、ジチオナイトまたはスルフィットアニオンの塩およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、還元剤はアミンである。
【0038】
適する酸化剤も当業者に熟知されており、こうした酸化剤には、過硫酸およびナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、セシウム塩およびアルキルアンモニウム塩などの過硫酸塩が挙げられるが、それらに限定されない。追加の酸化剤には、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドおよびアミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、ならびに塩化コバルト(III)および塩化第一鉄、硫酸セリウム(IV)などの遷移金属の塩、過硼酸およびその塩、過マンガン酸およびその塩、過燐酸およびその塩ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
2種以上の酸化剤または2種以上の還元剤を用いることが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物もレドックスキュアの速度を促進するために添加してよい。幾つかの実施形態において、2002年4月12日出願の出願人の譲受人の同時係属出願第10/121,329号明細書に記載されたように重合性組成物の安定性を強化するために二次イオン塩を含むことが好ましい場合がある。
【0040】
還元剤および酸化剤は適切なラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。これは、あらゆる任意の充填剤を除く重合性組成物の原料のすべてを組み合わせ、硬化した素材を得るかどうかを観察することにより評価することが可能である。
【0041】
還元剤または酸化剤は、米国特許第5,154,762号明細書(ミトラ(Mitra)ら)に記載されたようにマイクロカプセル化することが可能である。これは、重合性組成物の保存安定性を一般に強化し、必要ならば、還元剤と酸化剤を合わせて包装することを可能にする。例えば、封入剤の適切な選択を通して、酸化剤および還元剤を酸官能性成分および任意の充填剤と組み合わせることが可能であり、貯蔵安定状態で保つことが可能である。同様に、水混和性封入剤の適切な選択を通して、還元剤および酸化剤をFASガラスおよび水と組み合わせることが可能であり、貯蔵安定状態で維持することが可能である。
【0042】
レドックスキュア系は、他のキュア系と、例えばガラスイオノマーセメントと、および米国特許第5,154,762号明細書(ミトラ(Mitra)ら)に記載されたような光重合性組成物と組み合わせることが可能である。
【0043】
レドックスキュア系を用いる硬化性組成物は、2部分粉末/液体系、ペースト/液体系およびペースト/ペースト系を含む様々な形態で供給することが可能である。その各々が粉末、液体、ゲルまたはペーストの形を取る多部分組み合わせ(すなわち2以上の部分の組み合わせ)を用いる他の形態も可能である。多部分系において、一つの部分は、典型的には還元剤を含有し、もう一つの部分は、典型的には酸化剤を含有する。従って、還元剤が系の一つの部分に存在する場合、酸化剤は、典型的には系のもう一つの部分に存在する。しかし、還元剤および酸化剤は、マイクロカプセル化技術の使用を通して系の同じ部分中で組み合わせることが可能である。
【0044】
熱応答性粘度調整剤
本発明の熱応答性組成物は、熱応答性組成物の全質量を基準にして、好ましくは少なくとも5wt%の熱応答性粘度調整剤、より好ましくは少なくとも10wt%の熱応答性粘度調整剤を含む。本発明の熱応答性組成物は、熱応答性組成物の全質量を基準にして、好ましくは多くとも60wt%の熱応答性粘度調整剤、より好ましくは多くとも50wt%の熱応答性粘度調整剤を含む。
【0045】
熱応答性粘度調整剤は、例えば、「プルロニック(PLURONIC)」という商品名でバスフ・ワイアンドット(BASF Wyandotte)(ミシガン州ワイアンドット(Wyandotte,MI))から入手できる例えばポリ(オキシアルキレン)ポリマー、特に高分子界面活性剤を含む。他のポリ(オキシアルキレン)ポリマーも熱応答性粘度調整剤として有用である。好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%のポリマー中のオキシアルキレン単位はオキシエチレン単位である。適する熱応答性粘度調整剤のもう一つのクラスは、例えば出願人の譲受人の同時係属出願第10/626,341号明細書で開示されているようにN−イソプロピルアクリルアミドのラジカル重合から調製された例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を含むポリ(N−アルキル(メタ)アクリルアミド)ポリマーである。
【0046】
本発明による好ましい熱応答性粘度調整剤はポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーを含む。オキシエチレン単位の数が全分子中の単位の数の少なくとも50%であり、1100〜15,500の平均分子量を有するポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーは特に好ましい。ポリマーは、コポリマー中のモノマー単位の全数を基準にして好ましくは70%のオキシエチレン単位を含む。好ましくは、コポリマーは、11,500の平均分子量を有する。例証的な熱可逆性粘度調整剤には、例えば、「プルロニック(PLURONIC)」F−127、F−68およびF−108という商品名でバスフ・ワイアンドット(BASF Wyandotte)(ミシガン州ワイアンドット(Wyandotte,MI))から入手できる組成物が挙げられる。
【0047】
第一ヒドロキシル基を末端とするポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシエチレン)縮合物は、「プルロニック(PLURONIC)」という商品名でバスフ・ワイアンドット(BASF Wyandotte)(ミシガン州ワイアンドット(Wyandotte,MI))から入手でき、式HO(C24O)a(C36O)b(C24O)cH(式中、aおよびcは統計的に等しい)によって実験的に表すことが可能である。ブロックコポリマーの濃度は重要なパラメータであり、所望の特性を提供するために調節することが可能である。組成物中に存在する他の材料を基準にして熱応答性粘度調整剤の濃度を調節することにより、周囲温度より高く且つ身体温度より低い所望の液体−半固体転移温度を達成することが可能である。従って、組成物中の他の材料と組み合わせた熱応答性粘度調整剤の濃度の選択は、所望の範囲内の液体−半固体転移温度を提供する。
【0048】
任意に、熱応答性粘度調整剤は反応性基を含んでもよい。例えば、熱応答性粘度調整剤がポリ(オキシアルキレン)ポリマーである時、ポリマーは、エチレン系不飽和基および/または酸性基(例えばカルボン酸基)を含んでもよい。エチレン系不飽和基を含む熱応答性粘度調整剤は、例えば、ラジカルの存在下で反応して、二量化、オリゴマー化および/または重合反応を通して架橋を形成することが可能である。酸性基を含む熱応答性粘度調整剤は、例えば、酸感受性充填剤の存在下で反応して、硬化したガラスイオノマーセメントを形成することが可能である。
【0049】
エチレン系不飽和基を含むポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、米国特許第6,201,065号明細書(パーサク(Paathak)ら)で開示されたような方法によって調製することが可能である。簡単に言うと、ヒドロキシ末端ポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、少なくとも1個の末端エチレン系不飽和基の形成をもたらす部分(例えば、塩化アクリロイル;、2−イソシアナトエチルメタクリレートなどのイソシアネート官能性(メタ)アクリレート、または4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン−5−オンなどのビニルアズラクトン)と反応することが可能である。好ましくは、エチレン系不飽和基はアクリレート基またはメタクリレート基である。より好ましくは、少なくとも1個のCH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2NHC(O)O−基またはCH2=CHC(O)NHC(CH32C(O)O−基はポリ(オキシアルキレン)ポリマーの末端に結合される。なおより好ましくは、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2NHC(O)O−基またはCH2=CHC(O)NHC(CH32C(O)O−基はポリ(オキシアルキレン)ポリマーの各末端に結合される。
【0050】
酸性基を含むポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、当業者に周知されている方法によって調製することが可能である。好ましくは、酸性基はカルボン酸基である。適する方法には、例えば、ヒドロキシ末端ポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、少なくとも1個の末端酸性基の形成を直接もたらす部分(例えば、環式酸無水物またはハロアルカン酸)との反応が挙げられる。あるいは、ヒドロキシ末端ポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、後で加水分解して少なくとも1個の末端酸性基を形成させることが可能である少なくとも1個の末端エステル基の形成をもたらす部分(例えばハロアルカン酸エステル)と反応することが可能である。あるいは、ヒドロキシ末端ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを酸化させて、少なくとも1個の末端酸性基を形成させることが可能である。
【0051】
開始剤系
本発明の熱応答性組成物は、好ましくは、組成物を硬化させることを可能にする開始剤系または触媒も含む。例えば、ラジカル重合性成分を含む組成物において光重合を開始させるために可視および/または近赤外光開始剤系を用いてもよい。例えば、モノマーは、米国特許第5,545,676号明細書(パラゾット(Palazzotto)ら)で開示されたように増感剤、電子供与体およびヨードニウム塩を含む3成分系または3元光開始剤系と組み合わせることが可能である。あるいは、組成物は、増感剤(例えば樟脳キノン)および電子供与体(例えば、米国特許第4,071,424号明細書(ダート(Dart)ら)で開示された第二または第三アルキルアミン化合物)を含む二元開始剤系を含んでもよい。
【0052】
有用な光開始剤のもう一つのクラスは、欧州特許公報第173,567号明細書(イング(Ying))で開示されたアシルホスフィン酸化物を含む。こうしたアシルホスフィン酸化物は、一般式(R)2P(=O)C(=O)−R1(式中、各Rは、ハロ基、アルキル基またはアルコキシ基で置換されてもよいヒドロカルビル基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキル)であることが個々に可能であるか、または2個のR基は接合して燐原子と一緒に環を形成してもよく、R1は、ヒドロカルビル基、S−、O−またはN−含有5員または6員のヘテロ環式環、あるいは−Z−C(=O)−P(=O)−(R)2基であり、ここで、Zは2〜6個の炭素原子を有する二価ヒドロカルビル基(例えば、アルキレンまたはフェニレン)を表す)の化合物である。
【0053】
本発明において有用な好ましいアシルホスフィン酸化物は、R基およびR1基がフェニル、あるいはより低級のアルキル−またはより低級のアルコキシ−置換フェニルである化合物である。「より低級のアルキル」および「より低級のアルコキシ」とは、1〜4個の炭素原子を有するこうした基を意味する。最も好ましくは、アシルホスフィン酸化物は、「イルガキュア(IRGACURE)」819という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY))から入手できるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸化物である。
【0054】
多成分系においてラジカル重合を誘導するための酸化剤および還元剤を含むレドックス触媒の使用も硬化したゲルを生成させるために有用である。重合反応を開始する好ましい方式はレドックス触媒系として酸化剤および還元剤を使用する。任意にマイクロカプセル化された還元剤および/または酸化剤を含む種々のレドックス系は米国特許第5,154,762号明細書(ミトラ(Mitra)ら)で開示されている。
【0055】
好ましくは、酸化剤は還元剤と反応するか、またそうでない場合は還元剤と協働して、ラジカルを生成させる。ラジカルは、エチレン系不飽和部分の重合を開始させることが可能である。酸化剤および還元剤は好ましくは十分に可溶性であり、米国特許第6,136,885号明細書(ルシン(Rusin)ら)で開示されたように適切なラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。
【0056】
酸化剤の好ましいクラスには、過硫酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸アルキルアンモニウム)が挙げられる。酸化剤のもう1つの好ましいクラスは過酸化物または過酸化物塩(例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイルおよび例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシドおよび2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルヘキサンを含むヒドロペルオキシド)を含む。他の好ましい酸化剤には、コバルト(III)および鉄(III)の塩、過硼酸およびその塩、ならびに過マンガン酸アニオンの塩が挙げられる。上述した酸化剤のいずれの組み合わせも用いることが可能である。
【0057】
好ましい還元剤には、例えば、アミン(例えば芳香族アミン)、アスコルビン酸、金属錯体化アスコルビン酸、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、シュウ酸、チオウレア;、およびジチオナイト、チオスルフェート、ベンゼンスルフェートまたはスルフィットアニオンの塩が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物中に開始剤を含む場合、組成物は、組成物の全質量を基準にして好ましくは少なくとも0.01wt%の開始剤、より好ましくは少なくとも1wt%の開始剤を含む。本発明の組成物中に開始剤を含む場合、組成物は、組成物の全質量を基準にして好ましくは多くとも10wt%の開始剤、より好ましくは多くとも5wt%の開始剤を含む。
【0059】
添加剤
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、添加剤(例えば、身体中または身体上で用いるために適する医療用組成物のための医療用添加剤、口腔環境内で用いるために適する歯科用組成物のための歯科用添加剤)を含むか、または任意に含んでもよい。例証的な添加剤には、例えば、フッ化物源、白化剤、抗カリエス剤(例えばキシリトール)、再石灰化剤(例えば燐酸カルシウム化合物)、酵素、ブレスフレッシュナー、麻酔薬、凝固剤、酸中和剤、化学療法薬、免疫応答調節剤、薬物、指示薬、染料、顔料、湿潤剤、界面活性剤、緩衝剤、粘度調整剤、チキソトロープ、充填剤、ポリオール、抗菌剤、抗カビ薬、安定剤、口内乾燥を処理するための薬剤、減感剤およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、添加剤は、口腔環境内で用いるために適する歯科用添加剤である。
【0060】
有用な添加剤は必要に応じて特定の用途のために選択してもよい。例えば、熱応答性歯科用白化組成物は一般に白化剤を含む。本発明において用いられる白化剤は、歯を白化する作用を有するいかなる材料であってもよい。有用な白化剤には、例えば、次亜塩素酸塩(例えば次亜塩素酸ナトリウム)、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸(ペルオキシ酸としても知られている)、過酸化カルバミド(すなわち、ウレア過酸化水素、過酸化水素カルバミドまたはペルヒドロール−ウレアとしても知られている過酸化水素のウレア錯体CO(NH2222)およびそれらの組み合わせが挙げられる。組成物中の白化剤の濃度は、その活性に応じて異なることが可能である。
【0061】
本発明の熱応答性組成物は非重合性ポリマーも含んでよい。好ましくは、非重合性ポリマーは水性環境に部分または完全混和性であり、こうしたポリマーには、例えば、ポリ(アクリル酸)ポリマー、セルロース樹脂、ポリ(ビニルアルコール)ポリマー、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)ポリマーおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
方法
本発明の方法は表面の処理を提供することである。一実施形態において、処理された表面は身体(例えば動物または人)の表面(例えば軟組織または硬組織)である。硬組織には、例えば、骨、歯および歯の成分部分(エナメル、象牙質およびセメント質)が挙げられる。軟組織には、例えば、粘膜(例えば、舌、歯肉および喉)が挙げられる。
【0063】
あるいは、処理された表面は、例えば、基材(例えば軟質フィルム)であってもよい。好ましくは、表面処理された基材は造形してもよいか、または変形させてもよい。より好ましくは、表面処理された基材は、身体(例えば、手、足、歯)の表面からの圧力によって造形してもよいか、または変形してもよい。基材の一表面のみを処理する場合、圧力を基材のいずれの側から加えてもよい。
【0064】
本発明の組成物は、必要ないかなる方法によっても必要な部位に送出することが可能である。例えば、組成物は、容器またはディスペンサから標的部位上に直接送出してもよい。適する容器またはディスペンサには、例えば、瓶、バイアル、シリンジおよびチューブが挙げられる。針先から正味液体としてまたはエアロゾルからの微細ミストとして組成物を送出する能力は用途における融通性を提供する。あるいは、組成物はブラシ、スポンジ、塗布機またはスワッブを用いることにより送出して、標的部位上に組成物を塗装するか、または被覆することが可能である。幾つかの用途において、組成物をより大きい面に被着させることが望ましい場合がある。特定の用途に関して、組成物は、スプレーまたはエアロゾルディスペンサを介して、あるいは全標的部位(例えば口腔)を液体で単にリンスすることにより送出してもよい。もう一つの代替送出方式は、トレー型ディスペンサの使用を含む。
【0065】
あるいは、組成物は基材に被着させることが可能であり、組成物を上に有する基材は所望の表面に被着させることが可能である。適する基材には、例えば、ポリマーフィルム、紙、織シートおよび不織シートが挙げられる。組成物は、所望の表面に被着させる前にブラシ、スパチュラ、医療/歯科器具または塗布機に被着させることも可能である。
【0066】
本発明の熱応答性組成物が2以上の部分を含む時、2以上の部分は、塗布プロセスの直前または塗布プロセス中に好ましくは混合される。適する混合装置には、例えば静的混合装置が挙げられる。
【0067】
組成物は、好ましくは、必要な作用を提供するのに十分に長く標的部位の表面上に留まることを可能にする。滞留時間は、用いられる特定の組成物、標的部位のタイプ(例えば組織)、意図する用途および手順を行うために利用できる時間に応じて異なる。多くの用途に関して、組成物は、長い時間にわたって標的部位上に残ることを可能にしてもよい。
【0068】
硬化の前に、本発明の熱可逆性組成物は、液体−半固体転移温度より下に材料を冷却し、増粘作用を逆にすることにより標的部位から容易に除去することが可能である。これは、冷たい水または他の生理的適合性液体により実行することが可能である。あるいは、組成物中の成分の濃度は、水または他の液体を添加することにより調節し希釈してもよい。成分の濃度を調節することにより、転移温度は対応して調節され、従って、温溶液によってさえ組成物を除去する能力をユーザーに与える。水または他の液体は、リンスカップ、噴出ボトル、液体分配歯科用工具または液体を口腔環境に与えることが可能である他のあらゆる液体分配装置を通して投与してもよい。好ましくは、冷たい水または冷水の投与は粘度の大幅な低下をもたらす。あるいは、組成物をブラシ掛けするか、擦り付けるか、または吹き飛ばしてもよい。
【0069】
本発明の熱応答性組成物は、重合性成分を重合するように誘導することにより硬化させてもよい。例えば、重合性成分がエチレン系不飽和化合物である時、重合は、化学線の適用によって誘導してもよい。組成物に、好ましくは400〜1200ナノメートルの波長を有する放射線、より好ましくは可視光線を照射する。可視光線源には、例えば、日光、レーザ、金属蒸気(例えばナトリウムおよび水銀)ランプ、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀アークランプ、蛍光灯、フラッシュライト、発光ダイオード、タングステンハロゲンランプおよびキセノンフラッシュランプが挙げられる。
【0070】
あるいは、重合性成分がエチレン系不飽和化合物である時、組成物は、1つの部分が酸化剤を含み、もう一つの部分が還元剤を含む2つ以上の部分を含んでもよい。
【0071】
処理温度(例えば、口腔温度または口腔温度付近の温度)および硬化にさらされると、組成物の粘度は高まって組成物を増粘することが可能である。初期粘度が、組成物が液体であるような初期粘度である時、10倍、50倍または100倍以上でさえもの範囲の粘度増加を経験することが可能である。
【0072】
一旦本発明の組成物を硬化させると、組成物は熱不可逆性にされ、水で温度を下げるか、または水で希釈することによっては一般に容易に除去されない。しかし、硬化された組成物は、例えば、ブラシ掛け、ふき取り、掻き取りおよび溶媒(例えばアルコール)の使用を含む機械的方法または化学的方法によって一般に除去することが可能である。
【0073】
本発明の熱可逆性組成物の実質的な含水率は、例えば、脱水を受けやすい組織の実質的な水化を提供するゲルオンコンタクト水性材料を容易に送出するか、または被着させる能力を提供する。本発明の組成物は、例えば、外科手術および医療用途のための組織接着剤およびシーラント、歯周病の治療、歯肉炎の治療、歯白化、カリエス減少ゲル、硬組織および軟組織のための口腔塗料(局所麻酔薬入り/局所麻酔薬なし)ならびに薬物の皮下および真皮下送出、敏感度の治療、口臭の治療および口腔乾燥症の治療を含む用途のためにも有用である場合がある。
【0074】
本発明の目的および利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例で挙げた特定の材料および材料の量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定すると解釈されるべきでない。特に指示がない限り、すべての部および百分率は重量に基づき、すべての水は脱イオン水であり、すべての分子量は重量平均分子量である。
【実施例】
【0075】
試験方法
レオロジー試験方法
選択されたサンプルの流動学的特性は、「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA)(Model RDA II、ニュージャージー州ピスカタウェーのレオメトリック・サイエンティフィック(Rheometric Scientific(Piscataway,NJ)))により製造業者の推奨手順に従って測定した。ギャップ距離1mmおよび20℃〜40℃の温度範囲を用いて直径25mmのディスクとしてサンプルを試験した。測定の一般目的は、30℃で低粘度液状から粘性ゲル状に転移(すなわちゲル化)した熱可逆性組成物を見つけることであった。
【0076】
弗素化物放出試験方法
試験組成物の経時的な弗素化物放出は、標準方法による弗素化物選択性電極および以下の装置構成により測定した。円筒の「パイレック(Pyrex)」型(直径14mmおよび長さ5mm)および小さいマグネチックスターラーを含む50mlガラスバイアルを37℃のオーブンに入れ、空の型の質量を記録した。異なる試験組成物のアリコートを型キャビティに十分に注入し、充填された型の質量を記録した。37℃の水(25ml)を異なるバイアルに添加し、型が水で完全に覆われるようにした。その後、光キュアしようとするサンプルに歯科用キュア光を60秒にわたり照射した。バイアルを速度レベル3で加熱磁気攪拌板上に置き、加熱してバイアルを37℃で維持した。弗素化物含有率は、75分にわたって数回で弗素化物選択性電極を用いて決定し、その後、サンプルを37℃のオーブン内で1440分(24時間)にわたり貯蔵した。貯蔵後、最終弗素化物測定を行い、読み取りのために少なくとも10分安定化させた。24時間での弗素化物含有率を試験組成物中に含まれた全弗素化物に等しいように、得られたデータ(弗素化物イオンのパーツパーミリオン(ppm))を正規化した。
【0077】
圧縮強度(CS)試験方法
圧縮強度は、最初に混合セメントサンプルを直径4mmのガラスチューブに注入することにより評価した。ガラスチューブの端をシリコーンプラグで塞いだ。充填されたチューブを圧力0.275メガパスカル(MPa)に5分にわたり供し、温度37℃および90%を上回る相対湿度(RH)でチャンバに入れ、放置して1時間にわたり静置した。キュアしたサンプルを次に37℃の水に1日にわたり入れ、その後、8mmの長さに切断した。圧縮強度は、1ミリメートル/分(mm/min)のクロスヘッド速度で動作する「インストロン(INS(登録商標)TRON)」ユニバーサルテスター(マサチューセッツ州カントンのインストロン(Instron Corp.(Canton,MA)))を用いてISO規格7489に準拠して決定した。
【0078】
直径引張強度(DTS)試験方法
直径引張強度は、上述したCS手順を用いるが、2mmの長さに切断されたサンプルを用いて測定した。
【0079】
【表1】

【0080】
出発材料
SM−1
トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートテトラフルオロボレート(TMA−BF4)の合成
メカニカルスターラー、滴下漏斗および凝縮器が装着された三口フラスコに80部のナトリウムテトラフルオロボレート(マサチューセッツ州ワードヒルのアルファ・イーサー・インオーガニックス(Alpha Aesar Inorganics(Ward Hill,MA)))および130部のDI水を投入した。混合物を15分にわたり攪拌し、透明溶液を得た。滴下漏斗から、202.4部のジメチルアミノエチルメタクリレート−塩化メチル(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリド、イリノイ州クリスタルレークのCPSカンパニー・チバ(CPS Company,Ciba(Crystal Lake,IL)))および80部のDI水の溶液をゆっくり添加した。固体製品は直ちに沈殿し始めた。添加が完了した後、混合物を30分にわたり攪拌し、固形物を濾過により単離し、30部のDI水で洗浄し、真空下で40℃で乾燥させた。固体製品のNMR分析によると、純粋なトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートテトラフルオロボレートである構造が明らかにされた。
【0081】
実施例1
熱可逆性(TR)粘度調整剤+重合性成分
PLURONIC F127(12.24部)、PLURONIC F68(4.12部)および水(56.42部)を組み合わせ、氷浴(約4℃)によって冷却された容器内で完全に混合した。得られた溶液にPEG400(10.16部)、IA:ITA:IEM(3.4部)、PEGDMA400(10.85部)、TEGDMA(2.29部)およびIRGACURE819(0.5部)を添加した。得られた組成物を室温(22℃)で完全に混合し、得られた溶液を実施例1と呼んだ。
【0082】
実施例1のアリコートをシリンジに移し、37℃に加熱された1枚のポリエステルフィルム上にシリンジの針先を通して送出した。液体アリコートは、ポリエステルフィルム上で粘性で不動(すなわち非流動性)のゲルに直ちに変換した。ポリエステルフィルムを冷却して室温に戻すと、粘性ゲルは流動性液状態に変換して戻った(すなわち「熱可逆性」)。もう一つの実験において、粘性ゲル(37℃)に歯科用キュア光を直接照射し、それによって硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった(すなわち「熱可逆性」でない)。硬化済み材料は、37℃で0.9%食塩水5ml中に15日にわたり貯蔵した時に外観の著しい変化を示さなかった。
【0083】
実施例2
TR粘度調整剤+重合性成分+弗素化物源
PLURONIC F127(16部)、PLURONIC F68(8部)および水(47部)を組み合わせ、氷浴(約4℃)によって冷却された容器内で完全に混合した。得られた溶液にPEG400(10部)、IA:ITA:IEM(2部)、PEGDMA400(10部)、TEGDMA(2部)、TMA−BF4(5部)およびIRGACURE819(0.2部)を添加した。得られた組成物を氷浴温度で完全に混合し、得られた溶液を実施例2と呼んだ。溶液は室温で贈粘(より粘性になった)し、2℃〜5℃に冷却して戻した時、より低い粘性の元の液体溶液に変換し戻った。
【0084】
実施例2の冷却されたアリコートをシリンジに移し、37℃に加熱された1枚のポリエステルフィルム上にシリンジの針先を通して送出した。液体アリコートは、ポリエステルフィルム上で粘性で不動のゲルに直ちに変換した。ポリエステルフィルムを冷却して2℃〜5℃に戻すと、粘性ゲルは流動性液状態に変換して戻った。もう一つの実験において、粘性ゲル(37℃)に歯科用キュア光を直接照射し、それによって硬化済み材料にキュアし、その材料は室温以下に冷却して戻した時に変化しなかった。硬化済み材料は、37℃で0.9%食塩水5ml中に10日にわたり貯蔵した時に外観の著しい変化を示さなかった。
【0085】
実施例3
TR粘度調整剤+重合性成分+テトラサイクリンHCl
PLURONIC F127(13部)、PLURONIC F68(4部)および水(53部)を組み合わせ、氷浴(約4℃)によって冷却された容器内で完全に混合した。得られた溶液にPEG400(10部)、IA:ITA:IEM(2部)、PEGDMA400(10部)、TEGDMA(2部)、スクロース(5部)、テトラサイクリンHCl(1部)およびIRGACURE819(0.2部)を添加した。得られた組成物を室温で完全に混合し、得られた溶液を実施例3と呼んだ。
【0086】
実施例3のアリコートをシリンジに移し、37℃に加熱された1枚のポリエステルフィルム上にシリンジの針先を通して送出した。液体アリコートは、ポリエステルフィルム上で粘性で不動のゲルに直ちに変換した。ポリエステルフィルムを冷却して室温に戻すと、粘性ゲルは流動性液状態に変換して戻った。もう一つの実験において、粘性ゲル(37℃)に歯科用キュア光を直接照射し、それによって硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。硬化済み材料は、37℃で0.9%食塩水5ml中に12日にわたり貯蔵した時に外観の著しい変化を示さなかった。
【0087】
実施例4
TR粘度調整剤+重合性成分+リドカインHCl
49部の水を用い、リドカインHCl(10部)をスクロースおよびテトラサイクリンHClの代わりに用いたことを除き、実施例3について記載されたように実施例4の溶液を調製した。
【0088】
実施例4のアリコートをシリンジに移し、37℃に加熱された1枚のポリエステルフィルム上にシリンジの針先を通して送出した。液体アリコートは、ポリエステルフィルム上で粘性で不動のゲルに直ちに変換した。ポリエステルフィルムを冷却して室温に戻すと、粘性ゲルは流動性液状態に変換して戻った。もう一つの実験において、粘性ゲル(37℃)に歯科用キュア光を直接照射し、それによって硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。硬化済み材料は、37℃で0.9%食塩水5ml中に12日にわたり貯蔵した時に外観の著しい変化を示さなかった。
【0089】
実施例5
TR粘度調整剤+重合性成分+弗素化物/テトラサイクリン
48部の水を用い、TMA−BF4(5部)を組成物に追加して添加したことを除き、実施例3について記載されたように実施例5の溶液を調製した。
【0090】
実施例5のアリコートをシリンジに移し、37℃に加熱された1枚のポリエステルフィルム上にシリンジの針先を通して送出した。液体アリコートは、ポリエステルフィルム上で粘性で不動のゲルに直ちに変換した。ポリエステルフィルムを冷却して室温に戻すと、粘性ゲルは流動性液状態に変換して戻った。もう一つの実験において、粘性ゲル(37℃)に歯科用キュア光を直接照射し、それによって硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。硬化済み材料は、37℃で0.9%食塩水5ml中に12日にわたり貯蔵した時に外観の著しい変化を示さなかった。
【0091】
実施例6A〜6H
TR粘度調整剤+重合性成分
PLURONIC F127(9.1部)、IA:ITA:IEM(36.4部)、HEMA(9.1部)および水(45.5部)を250mlプラスチック容器に移し、室温で完全に混合した。得られた溶液を実施例6Aと呼んだ。実施例6B〜6Hを表1に示した個々の成分の量により似たように調製した。
【0092】
【表2】

【0093】
本明細書で記載されたレオロジー試験方法により「レオロジカル・データ・アナライザ(Rheological Data Analyzer)」(RDA)で実施例6Aおよび6Hを評価した。実施例6D〜6Hは、28℃と38℃との間の温度で低粘度(20,000〜40,000ポイズ(P))から高粘度(100,000〜120,000P)への急激な転移を示した温度依存粘度曲線をそれぞれ有することが判明した。これらの実施例に関する温度に対する粘度のRDA曲線を図1に示している。実施例6A〜6C(図1に示していない)は20℃と40℃との間で著しい粘度変化を示さなかった。
【0094】
実施例7Aおよび7B
TR粘度調整剤+重合性成分+光開始剤
2種の異なる光開始剤を添加することにより実施例6Hを更に修正した。実施例7Aは、CPQ(0.25%)、DPIHFP(1.00%)およびEDMAB(1.00%)を実施例6Hに添加することにより調製した。実施例7Bは、イルガキュア(IRGACURE)819(0.50%)を実施例6Hに添加することにより調製した。
【0095】
実施例7Aおよび7Bを本明細書で記載されたレオロジー試験方法により評価した。25℃(プレゲル化状態)または37℃(ゲル化状態)のいずれかで歯科用キュア光を60秒にわたり照射する前および照射した後に評価を行った。照射後、実施例7Aと7Bの両方は硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。実施例7Aおよび7Bに関する温度に対する粘度の3つのRDA曲線(照射前、25℃での照射後、37℃での照射後)をそれぞれ図2および図3に示している。実施例7Aと7Bの両方に関して、試験結果は、例えば、サンプル粘度が照射後に、例えば、25℃でプレゲル化状態にキュア後に4〜6百万Pに、および37℃でゲル化状態にキュア後に8〜10百万Pに劇的に増加したことを示した。従って、実施例7Aおよび7Bは、室温で低粘度、30℃を上回る温度でゲル化、および照射すると非熱可逆性硬化済み材料状態を組成物に提供する。
【0096】
実施例8Aおよび8K
TR粘度調整剤+重合性成分
PLURONIC F127(16.1部)、IA:ITA:IEM(10.8部)、PEGDMA400(10.8部)、TEGDMA(2.2部)および水(60.2部)を250mlプラスチック容器に移し、室温で完全に混合した。得られた溶液を実施例8Aと呼んだ。実施例8B〜8Kを表2に示した個々の成分の量により似たように調製した。
【0097】
【表3】

【0098】
本明細書で記載されたレオロジー試験方法により「レオロジカル・データ・アナライザ(Rheological Data Analyzer)」(RDA)で実施例8A〜8Kを評価した。実施例8A、8G−8Iおよび8Kは、28℃と38℃との間の温度で低粘度(0〜12,000P)から高粘度(20,000〜30,000P)への急激な転移を示した温度依存粘度曲線をそれぞれ有することが判明した。実施例8Fは41℃で粘度の大幅な増加を示し始め、実施例8Eは試験された温度範囲内で粘度変化を示さなかった。これらの実施例に関する温度に対する粘度のRDA曲線を図4に示している。更に(図4で示していないが)、実施例8B〜8Dおよび8Jは25℃と41℃との間で著しい粘度変化を示さなかった。
【0099】
実施例9
TR粘度調整剤+重合性成分+光開始剤
実施例8Kを光開始剤イルガキュア(IRGACURE)819(0.50%)の添加によって更に修正して、実施例9をもたらした。
【0100】
25℃(プレゲル化状態)または37℃(ゲル化状態)のいずれかで歯科用キュア光を60秒にわたり照射する前および照射した後に本明細書で記載されたレオロジー試験方法によりで実施例9を評価した。25℃で照射後、実施例9は粘度の若干の増加のみを示したのに対して、37℃で粘度は劇的に増加し、サンプルは硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。実施例9に関する温度に対する粘度の3つのRDA曲線(照射前、25℃での照射後、37℃での照射後)を図5に示している。従って、実施例9は、室温で低粘度、30℃を上回る温度でゲル化、および高温で照射すると非熱可逆性硬化済み材料状態を組成物に提供する。
【0101】
実施例10
TR粘度調整剤+重合性成分+レドックス開始剤系
還元剤としてアリルチオウレア(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))および酸化剤として過硫酸ナトリウム(Sigma−Aldrich))を用いたレドックス開始剤系(すなわち、還元剤および酸化剤)の添加によって実施例8Kを更に修正した。詳しくは、アリルチオウレア(1.5%)を実施例8Kに添加して溶液Aをもたらし、過硫酸ナトリウム(1.0%)を実施例8Kに添加して溶液Bをもたらした。その後、溶液AおよびBを等しい部分で組み合わせ、混合して実施例10をもたらし、それを25℃または37℃のいずれかで維持し、その後、直ちに評価した。室温での実施例10が低粘度溶液として留まったのに対して、37℃に加熱された実施例10が粘性で不動のゲルに直ちに変換したことが目視で観察された。
【0102】
25℃(プレゲル化状態)または37℃(ゲル化状態)のいずれかで本明細書で記載されたレオロジー試験方法によりで実施例10を評価した。25℃で実施例10は粘度の大幅な増加を示さなかったのに対して、37℃で粘度は劇的に増加し、サンプルは硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。実施例10に関する温度に対する粘度の2つのRDA曲線(25℃での評価および37℃での評価)を図6に示している。従って、実施例10は、室温で低粘度、30℃を上回る温度でゲル化、および高温でレドックス開始剤系によりキュアすると非熱可逆性硬化済み材料状態を組成物に提供する。
【0103】
実施例11A〜11F
TR粘度調整剤+重合性成分
PLURONIC F127(16.7部)、PEGDMA400(29.2部)、TEGDMA(4.2部)および水(50.0部)を250mlプラスチック容器に移し、室温で完全に混合した。得られた溶液を実施例11Aと呼んだ。実施例11B〜11Fを表3に示した個々の成分の量により似たように調製した。
【0104】
【表4】

【0105】
本明細書で記載されたレオロジー試験方法により「レオロジカル・データ・アナライザ(Rheological Data Analyzer)」(RDA)で実施例11A−11Fを評価した。実施例11Aおよび11Dは、32℃と34℃との間の温度で低粘度(0〜10,000P)から高粘度(30,000〜40,000P)への急激な転移を示した温度依存粘度曲線をそれぞれ有することが判明した。実施例11B、11Eおよび11Fは25℃で既に粘性で不動のゲルであり、温度が上昇するにつれて粘度の若干の増加のみを示した。これらの実施例に関する温度に対する粘度のRDA曲線を図7に示している。更に(図7で示していないが)、実施例11Cは25℃と40℃との間で著しい粘度変化を示さなかった。
【0106】
実施例12
TR粘度調整剤+重合性成分+光開始剤
実施例11Dを光開始剤イルガキュア(IRGACURE)819(0.50%)の添加によって更に修正して、実施例12をもたらした。
【0107】
25℃(プレゲル化状態)または37℃(ゲル化状態)のいずれかで歯科用キュア光を60秒にわたり照射する前および照射した後に本明細書で記載されたレオロジー試験方法により実施例12を評価した。25℃で照射後、実施例12は100,000Pを上回る粘度への粘度の大幅な増加を示したのに対して、37℃で粘度は200,000Pを上回る粘度にさらにより大幅に増加した。両方の場合、サンプルは硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。実施例12に関する温度に対する粘度の3つのRDA曲線(照射前、25℃での照射後、37℃での照射後)を図8に示している。従って、実施例12は、室温で低粘度、30℃を上回る温度でゲル化、および高温で照射すると非熱可逆性硬化済み材料状態を組成物に提供する。
【0108】
実施例13
TR粘度調整剤+重合性成分+光開始剤
実施例10に記載されたようにレドックス開始剤系を添加することにより実施例11Dを更に修正した。詳しくは、アリルチオウレア(1.5%)を実施例11Dに添加して溶液Aをもたらし、過硫酸ナトリウム(1.0%)を実施例11Dに添加して溶液Bをもたらした。その後、溶液AおよびBを等しい部分で組み合わせ、混合して実施例13をもたらし、それを25℃または37℃のいずれかで維持し、その後、直ちに評価した。室温での実施例13が低粘度溶液として留まったのに対して、37℃に加熱された実施例13が粘性で不動のゲルに直ちに変換したことが目視で観察された。
【0109】
25℃(プレゲル化状態)または37℃(ゲル化状態)のいずれかで本明細書で記載されたレオロジー試験方法により実施例13を評価した。25℃で実施例13は粘度の大幅な増加を示さなかったのに対して、37℃で粘度は劇的に増加し、サンプルは硬化済み材料にキュアし、その材料は室温に冷却して戻した時に変化しなかった。実施例13に関する温度に対する粘度の2つのRDA曲線(25℃での評価および37℃での評価)を図9に示している。従って、実施例13は、室温で低粘度、30℃を上回る温度でゲル化、および高温でレドックス開始剤系によりキュアすると非熱可逆性硬化済み材料状態を組成物に提供する。
【0110】
実施例14Aおよび14B
TR粘度調整剤+重合性成分+光開始剤
(弗素化物放出試験)
フッ化ナトリウムを含有するヒドロゲル配合物の時間に対する弗素化放出を24時間に至るまでの間評価した。40℃を上回るゲル化温度を有する組成物を用いる実施例(実施例8F)を30℃でゲル化した組成物(実施例8K)と比べた。詳しくは、本明細書で記載された弗素化物放出試験方法により評価されたサンプルは、実施例14A(弗素化物イオン0.1%(1000ppm)を含有する組成物をもたらすために実施例8F+0.22%フッ化ナトリウム(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)))、実施例14B(実施例8K+0.22%フッ化ナトリウム+0.50%IRGACURE819光開始剤)および実施例14C(白色不動ゲルをもたらすために歯科用キュア光で37℃で60秒にわたり光キュアされた実施例14B)であった。
【0111】
実施例14A、14Bおよび14Cの弗素化物放出評価からの結果を表4に示している。データは、光キュア済みサンプル(実施例14C)が対応する未キュアサンプル(実施例14Aおよび14B)より経時的に制御された弗素化物放出(最初の75分中に遅く、その後、75と1440(分)との間で速い放出)をもたらしたことを示している。
【0112】
【表5】

【0113】
実施例15A〜15D
TR粘度調整剤+重合性成分+光開始剤+FASガラス
メタクリレート官能性成分およびフルオロアルミノシリケート(FAS)ガラスと合わせて熱可逆性ヒドロゲル系を含有する混成ガラスイオノマー組成物を調製し、以下で記載したように評価した。各組成物は、IEMにより官能化されたPLURONIC F127またはPLURONIC F127のいずれかを含んでいた(PLURONIC F127−IEMは実施例17に記載されたように調製されたもの)。
【0114】
表5に相対量で示した成分を組み合わせることにより熱可逆性液体組成物(実施例15Aおよび15B)を調製した。実施例15Aおよび15Bの液体アリコートは室温で低粘度溶液であったが、37℃に加熱された時に粘性で不動のゲルに直ちに変換した。
【0115】
【表6】

【0116】
紙混合パッド上で1部の実施例15Aまたは実施例15Bを2.5部のFAS−I(米国特許出願第09/916399号明細書でFAS Vについて記載されたように調製されたFASガラス)と別々に組み合わせ、その後、均質白色ペースト(それぞれ実施例15Cおよび実施例15D)を得るまで成分を混合することによりガラスイオノマー組成物を調製した。その後、実施例15Cおよび実施例15Dに歯科用キュア光を25℃で20秒にわたり照射して、硬化済み材料をもたらした。得られたキュア樹脂変性ガラスイオノマー組成物(実施例15C(キュア済み)および実施例15D(キュア済み))の直径引張強度(DTS)を本明細書に記載された方法により評価した。15C(キュア済み)および15D(キュア済み)は、それぞれ1340±88psi(9233±606KPa)および1560±227psi(10,748±1564KPa)のDTS値を有していた。
【0117】
実施例16Aおよび16B
TR粘度調整剤+重合性成分+光開始剤+FASガラス
メタクリレート官能性成分およびFASガラスと合わせて熱可逆性ヒドロゲル系を含有する混成ガラスイオノマー組成物を次の通り調製した。AA:ITA:IEM(8.90部)、AA:ITA(3.60部)、HEMA(4.73部)、BHT(0.0156部)および水(8.23部)を組み合わせ、均質溶液を得るまで完全に混合した。この溶液(20グラム)を5℃に冷却し、PLURONIC F−127−IEM(2.0グラム)と組み合わせ、得られた組成物を5℃で混合して、実施例16Aと呼ばれる均質溶液をもたらした。
【0118】
紙混合パッド上で実施例16A(10グラム)をFAS−II(25グラムのFAS−Iプラス0.2グラムのカプセル化過硫酸カリウムおよび0.12グラムのカプセル化スルフィン酸p−ナトリウムトルエン、後者は、米国特許第5,154,762号明細書(ミトラ(Mitra))に関して記載されたように調製されたカプセル化レドックス剤である)と組み合わせ、均質ペースト(実施例16B)を得るまで成分を手でへらで混ぜることによりガラスイオノマー組成物を調製した。流動性ペースト材料が不動の硬化済み固体材料に変換するまでプローブにより室温で混合ペーストを周期的に検査することにより、実施例16Bの硬化時間を検査した。硬化時間は4分であった。
【0119】
硬化した材料の圧縮強度(CS)および直径引張強度(DTS)も本明細書に記載されたCSおよびDTS試験方法により評価し、次の結果を得た。CS=28,200±312psi(194,298±2150KPa)およびDTS=6050±190psi(41,684±1309KPa)。
【0120】
実施例17
PLURONIC F127−IEMの調製
PLURONIC F127(100部)、テトラヒドロフラン(200部)およびBHT(0.10部)を反応容器内で組み合わせ、透明溶液を得るまで混合した。得られた溶液にジブチル錫ジラウレート(0.50部、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を添加し、次に、IEM(5.0部)を添加した。得られた混合物を45℃に加熱し、2時間にわたり攪拌し、その時間中に反応全体を通して一定流量の空気を流した。次に、溶液を大過剰のシクロヘキサンに注ぎ込み、得られた白色固体沈殿物を濾過によって集め、30℃の真空炉内で乾燥させた。NMRスペクトル分析によると、固体の構造が2−メタクリルオキシエチルアミノカルボキシ部分(CH2=C(CH3)CO2CH2CH2NHCO2−)により各末端で終わるPLURONIC F127であることが確認された。
【0121】
実施例18
PLURONIC F127−VDMAの調製
PLURONIC F127(100部)、テトラヒドロフラン(200部)およびBHT(0.10部)を反応容器内で組み合わせ、透明溶液を得るまで混合した。得られた溶液にDBU(0.02部、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を添加し、次に、VDMA(0.23部)を添加した。得られた混合物を45℃に加熱し、2時間にわたり攪拌し、その時間中に反応全体を通して一定流量の空気を流した。次に、溶液を大過剰のシクロヘキサンに注ぎ込み、得られた白色固体沈殿物を濾過によって集め、30℃の真空炉内で乾燥させた。NMRスペクトル分析によると、固体の構造が2−アクリルアミドジメチルアセトキシ部分(CH2=CHCONHC(CH32CO2−)により各末端で終わるPLURONIC F127であることが確認された。
【0122】
本発明に対する種々の修正および変更は本発明の範囲および精神を逸脱せずに当業者に明らかになるであろう。本発明が本明細書に記載された例証的な実施形態および実施例によって不当に限定されない積もりであり、こうした実施例および実施形態が例のみとして提示されており、本発明の範囲が次の通り本明細書で記載された特許請求の範囲によってのみ限定される積もりであることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】表1において定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。
【図2】実施例7Aにおいて定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分、水および光開始剤を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。このプロットは、初期状態(◆)、25℃でのキュア後(黒三角)および37℃でのキュア後(黒四角)を含む。
【図3】実施例7Bにおいて定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分、水および光開始剤を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。このプロットは、初期状態(◆)、25℃でのキュア後(黒三角)および37℃でのキュア後(黒四角)を含む。
【図4】表2において定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。
【図5】実施例9において定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分、水および光開始剤を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。このプロットは、初期状態(◆)、25℃でのキュア後(黒三角)および37℃でのキュア後(黒四角)を含む。
【図6】実施例10において定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分、水およびレドックス開始剤系を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。このプロットは、25℃での初期プレゲル化状態(◆)および37℃でのゲル化状態(黒三角)を含む。
【図7】表3において定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。
【図8】実施例12において定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分、水および光開始剤を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。このプロットは、初期状態(◆)、25℃でのキュア後(黒四角)および37℃でのキュア後(黒三角)を含む。
【図9】実施例13において定義されたような熱応答性粘度調整剤、重合性成分、水およびレドックス開始剤系を含む組成物について「レオロジカル・ダイナミック・アナライザ(Rheological Dynamic Analyzer)」(RDA、Model RDA II)を用いて生じた温度(℃、x−軸)に対する粘度(ポイズ、y−軸)のプロットの図解である。このプロットは、25℃での初期プレゲル化状態(◆)および37℃でのゲル化状態(黒四角)を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱応答性粘度調整剤、
前記調整剤とは異なる重合性成分および

を含む熱応答性組成物。
【請求項2】
前記熱応答性粘度調整剤はポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重合性成分は、エチレン系不飽和化合物、ガラスイオノマーセメントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合性成分はラジカル重合性化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物は、モノマー化合物、オリゴマー化合物、ポリマー化合物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記化合物は複数の重合性基を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
開始剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記開始剤は光開始剤である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記開始剤はラジカル開始剤である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
酸化剤および還元剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーは反応性基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記反応性基は、エチレン系不飽和基、酸性基およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記反応性基はラジカル反応性基である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記反応性基は前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの末端に結合される、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は口腔環境内で用いるために適する歯科用組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は身体内または身体上で用いるために適する医療用組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、分散液、サスペンジョン、エマルジョン、溶液およびそれらの組み合わせからなる群から選択された形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
添加剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記添加剤は、フッ化物源、白化剤、抗カリエス剤(例えばキシリトール)、再石灰化剤(例えば燐酸カルシウム化合物)、酵素、ブレスフレッシュナー、麻酔薬、凝固剤、酸中和剤、化学療法薬、免疫応答調節剤、薬物、指示薬、染料、顔料、湿潤剤、界面活性剤、緩衝剤、粘度調整剤、チキソトロープ、充填剤、ポリオール、抗菌剤、抗カビ薬、安定剤、口内乾燥を処理するための薬剤、減感剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記添加剤は、次亜塩素酸塩、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸、過酸化カルバミドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択された白化剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
熱応答性粘度調整剤、
組成物の全質量を基準にして、前記調整剤とは異なる重合性成分1wt%〜60wt%および

を含む熱応答性組成物。
【請求項22】
組成物の全質量を基準にして、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む熱応答性粘度調整剤10wt%〜50wt%、
前記調整剤とは異なる重合性成分および

を含む熱応答性組成物。
【請求項23】
表面を処理する方法であって、
熱応答性粘度調整剤、前記調整剤とは異なる重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記表面に被着させる工程および
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程
を含む方法。
【請求項24】
前記表面は身体の表面である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記表面は口腔表面である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記処理温度における前記組成物の粘度は前記前処理温度における前記組成物の粘度の少なくとも5倍である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物の粘度を前記高粘性状態から下げることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記粘度を下げることは前記組成物を前記処理温度未満に冷却することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
表面上で組成物を硬化させる方法であって、
熱応答性粘度調整剤、前記調整剤とは異なる重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記表面に被着させる工程、
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程および
前記重合性成分を重合するように誘導する工程
を含む方法。
【請求項30】
前記表面は身体の表面である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記表面は口腔表面である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記重合を誘導することは前記組成物を照射することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記重合を誘導することは前記組成物を可視光線または紫外線で照射することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記重合を誘導することは1種以上の追加の成分を導入することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記熱応答性粘度調整剤はポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーは反応性基を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記反応性基は、エチレン系不飽和基、酸性基およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記反応性基はラジカル反応性基である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記反応性基は前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの末端に結合される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物は開始剤を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記開始剤は光開始剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記開始剤はラジカル開始剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物は酸化剤および還元剤を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項44】
前記身体は人体である、請求項30に記載の方法。
【請求項45】
前記熱応答性組成物は添加剤を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記添加剤は、フッ化物源、白化剤、抗カリエス剤(例えばキシリトール)、再石灰化剤(例えば燐酸カルシウム化合物)、酵素、ブレスフレッシュナー、麻酔薬、凝固剤、酸中和剤、化学療法薬、免疫応答調節剤、薬物、指示薬、染料、顔料、湿潤剤、界面活性剤、緩衝剤、粘度調整剤、チキソトロープ、充填剤、ポリオール、抗菌剤、抗カビ薬、安定剤、口内乾燥を処理するための薬剤、減感剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記添加剤は、次亜塩素酸塩、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸、過酸化カルバミドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択された白化剤である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物を被着させることはオリフィスを通して前記組成物を送出することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項49】
前記オリフィスはシリンジのオリフィスである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物を被着させることは、前記組成物を塗装すること、前記組成物をブラシ掛けすること、前記組成物を注入すること、前記組成物を霧状に吹きかけること、前記組成物を噴霧すること、前記組成物を上に有する基材を被着させること、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項51】
前記熱応答性組成物は2つ以上の部分を含み、前記組成物を被着させることは前記2つ以上の部分を組み合わせることを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項52】
前記組み合わせることは静的混合装置を用いることを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記処理温度における前記組成物の粘度は、前記重合性成分を重合するように誘導する前、前記前処理温度における前記組成物の粘度の少なくとも5倍である、請求項29に記載の方法。
【請求項54】
前記処理温度における前記組成物の粘度は、前記重合性成分を重合するように誘導した後、前記前処理温度における前記組成物の粘度の少なくとも10倍である、請求項29に記載の方法。
【請求項55】
前記前処理温度は最高でも室温である、請求項29に記載の方法。
【請求項56】
前記処理温度は身体温度である、請求項29に記載の方法。
【請求項57】
身体の口腔表面を処理する方法であって、
熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程および
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程
を含む方法。
【請求項58】
身体の口腔表面上で組成物を硬化させる方法であって、
熱応答性粘度調整剤、重合性成分および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程、
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに高粘性状態に粘度を高める工程および
前記重合性成分を重合するように誘導する工程
を含む方法。
【請求項59】
前記口腔表面は、骨、歯、舌、歯肉、喉およびそれらの組み合わせから選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
熱応答性粘度調整剤を製造する方法であって、ヒドロキシ末端ポリ(オキシアルキレン)ポリマーをイソシアネート官能性(メタ)アクリレートまたはビニルアズラクトンと反応させることを含む方法。
【請求項61】
ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの末端上に少なくとも1個のCH2=C(R)C(O)OCH2CH2NHC(O)O−(式中、RはHまたはCH3を表す)基を含む前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む熱応答性粘度調整剤。
【請求項62】
前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの各末端上にCH2=C(R)C(O)OCH2CH2NHC(O)O−(式中、RはHまたはCH3を表す)基を含む、請求項61に記載の熱応答性粘度調整剤。
【請求項63】
ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの末端上に少なくとも1個のCH2=CHC(O)NHC(CH32C(O)O−基を含む前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む熱応答性粘度調整剤。
【請求項64】
前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、前記ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの各末端上にCH2=CHC(O)NHC(CH32C(O)O−基を含む、請求項63に記載の熱応答性粘度調整剤。
【請求項65】
請求項61に記載の熱応答性粘度調整剤および

を含む熱応答性組成物。
【請求項66】
身体の口腔表面を処理する方法であって、
請求項61に記載の熱応答性粘度調整剤および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程および
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに粘度を高粘性状態に高める工程
を含む方法。
【請求項67】
身体の口腔表面上で組成物を硬化させる方法であって、
請求項61に記載の熱応答性粘度調整剤および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程、
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに粘度を高粘性状態に高める工程および
前記調整剤を重合するように誘導する工程
を含む方法。
【請求項68】
請求項63に記載の熱応答性粘度調整剤および

を含む熱応答性組成物。
【請求項69】
身体の口腔表面を処理する方法であって、
請求項63に記載の熱応答性粘度調整剤および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程および
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに粘度を高粘性状態に高める工程
を含む方法。
【請求項70】
身体の口腔表面上で組成物を硬化させる方法であって、
請求項63に記載の熱応答性粘度調整剤および水を含む熱応答性組成物を低粘性状態において前処理温度で前記口腔表面に被着させる工程、
前記組成物を放置して処理温度に暖めるとともに粘度を高粘性状態に高める工程および
前記調整剤を重合するように誘導する工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−516544(P2006−516544A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568041(P2004−568041)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/040676
【国際公開番号】WO2004/069278
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
PYREX
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】