説明

磁性体と誘電体との複合焼結体およびLC複合電子部品

【課題】 本発明は、複合化による特性の低化を抑制し、少ない焼結助剤の添加量であっても比較的低温で焼結することが可能であり、原料として用い、複合焼結体中に磁性体および誘電体として存在する磁性体材料と誘電体材料の透磁率、誘電率の低化を抑制した磁性体と誘電体との複合焼結体を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、六方晶Baフェライト結晶と、Ca、SrおよびBaから選ばれる1種以上の元素およびTiを含有するペロブスカイト型結晶と、Liとを含有し、1GHzにおける比透磁率が1.4以上であることを特徴とする磁性体と誘電体との複合焼結体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の高周波ノイズ対策用EMIフィルタに用いられる、磁性体としての性質と誘電体としての性質を合わせ持つ磁性体と誘電体との複合焼結体およびLC複合電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子機器の高周波ノイズ対策用としては、EMI(Electro Magnetic Interference)フィルタが多く用いられているが、近年では、携帯電話、無線LAN等の移動体通信機器の高周波化に伴い、EMIフィルタにも数百MHz〜数GHzの高周波数帯域でも使用可能なフィルタ特性が求められている。
【0003】
一般的に、このような電子機器のノイズ対策用として使用されているEMIフィルタは、コンデンサとインダクタとを個々に組み合わせて構成されているものが多いが、近年では電子機器の小型化に伴い、磁性体により形成されるインダクタ層と、誘電体により形成されるコンデンサ層とを交互に積層して両者を一体化した複合焼結体の中に、銀電極などでコイルを形成したものが提案されてきている。しかし、このようなフィルタの場合、その積層構造上、複合化に際しては大きな面積を必要とし、電子機器の小型化の要求を十分に満足できるものにはなっていなかった。
【0004】
この問題点を解決するために、磁性体と誘電体とが混合焼成された複合磁器の内部に、銀電極などでコイルを形成したノイズフィルタが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
このような複合磁器に用いられる磁性体材料としては、数MHz〜数百MHz帯領域で透磁率が高いMn−Zn系、Ni−Zn系、Ni−Cu−Zn系等のスピネル型フェライトが多く用いられてきた。しかし、このスピネル型フェライトは、磁気異方性が低いために数百MHzの周波数で自然共鳴を起こしてしまい透磁率の周波数限界(スネークの限界)を超えることができず、数百MHz〜数GHz帯領域では十分な透磁率が得られないため、高い周波数帯域でのフィルタ材料には適用することができなかった。
【0006】
そこで、最近では透磁率がスピネル型フェライトの周波数限界を超えた周波数領域まで伸びている六方晶フェライトが、数百MHz〜数GHz帯領域での磁性体材料として提案されている。
【0007】
この六方晶フェライトは、c軸に対して垂直な面内に磁化容易軸を持ち、フェロックスプレーナ型フェライトとも呼ばれる磁性体材料である。フェロックスプレーナ型の代表的なフェライトとしては、Co置換系Z型六方晶フェライト3BaO・2CoO・12Fe、Co置換系Y型六方晶フェライト2BaO・2CoO・6Fe、Co置換系W型六方晶フェライトBaO・2CoO・8Fe等が知られている。
【0008】
これらのフェロックスプレーナ型フェライトの中でも、Y型六方晶フェライト単相の合成温度(約1050℃)は、Z型六方晶フェライト単相(1300℃)及びW型六方晶フェライト単相(1200℃)それぞれの合成温度に比べて低く、また、Y型六方晶フェライトは、透磁率の周波数限界が3GHz以上まで向上しているため、数百MHz〜数GHz帯領域での磁性体材料として有望視されている。
【0009】
例えば、Y型またはM型六方晶フェライトを主相とする磁性体材料からなる高周波用磁性体材料が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。この高周波用磁性体材料は、数百MHz〜数GHz帯域で使用でき、1000℃以下の温度で焼成可能で、焼結体密度が90%以上のものである。
【0010】
一方、複合磁器に用いられる誘電体材料としては、CaTiO、SrTiOやガラス等の常誘電体、BaTiO等の強誘電体が挙げられ、例えば、誘電体材料として誘電率が高いBaTiOを用い、高い透磁率と誘電率を両立した材料が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0011】
この特許文献3には、磁性体材料としてNi―Zn系フェライトまたはNi−Zn―Cu系フェライトから選択された1種を用い、誘電体材料として少なくともBaTiO、TiO、または、リラクサー系材料から選択される1種を用い、ガラス材料としてSiOとAlとROまたはRO(但し、RはCa、Ba、Pb、Zn、Tiの群から選択された少なくとも1種)の3種の組成比が合計で100重量%とされることが記載されている。
【特許文献1】特開平2−249294号公報
【特許文献2】特開2003−146739号公報
【特許文献3】特開2003−226573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載された複合磁器材料では、原料として用いた磁性体材料や誘電体材料の特性が、焼成の際に、大きく低化するという問題があり、比透磁率も、比誘電率も、原料の比透磁率および比誘電率の25%以下にまで小さくなっている。
【0013】
すなわち、上述の複合磁器材料に用いられている焼結助剤は、磁性体材料と誘電体材料と反応しやすいことから、容易に磁性体材料と誘電体材料の少なくとも一方が変質してしまうため、本来、原料として用いた磁性体材料と誘電体材料の特性を維持することは実現されていない。
【0014】
本発明は、磁性体材料と誘電体材料と焼結助剤とによって複合化される複合磁器材料からなる磁性体と誘電体との複合焼結体において、複合化による特性の低化を抑制し、少ない焼結助剤の添加量であっても比較的低温で焼結することが可能であり、複合焼結体中に磁性体および誘電体として存在する磁性体材料と誘電体材料の透磁率、誘電率の低化を抑制した1GHzにおける比透磁率が1.4以上である磁性体と誘電体との複合焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の磁性体と誘電体との複合焼結体は、六方晶Baフェライト結晶と、Ca、SrおよびBaから選ばれる1種以上の元素およびTiを含有するペロブスカイト型結晶と、Liとを含有し、1GHzにおける比透磁率が1.4以上であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の磁性体と誘電体との複合焼結体は、上記の構成において、主組成が前記六方晶Baフェライト結晶55〜95体積%と前記ペロブスカイト型結晶5〜45体積%とからなることを特徴とするものである。なお、主組成とは六方晶Baフェライト結晶およびペロブスカイト型結晶のことをいい、ここではこれらの総量を100体積%としたときのそれぞれの比率が上記比率となっていることを示している。
【0017】
また、本発明の磁性体と誘電体との複合焼結体は、上記の構成において、さらにガラスを含み、該ガラスがSi、Ca、BaおよびLiを含むとともに実質的にAlおよびBを含まないことを特徴とするものである。
【0018】
ここで、前記六方晶Baフェライト結晶のうちの主結晶がY型六方晶Baフェライト結晶であるのが好ましい。
【0019】
また、前記ペロブスカイト型結晶は、BaTiOであってもよく、CaTiOあるいはSrTiOであってもよい。
【0020】
また、本発明の磁性体と誘電体との複合焼結体は、BaAlSi結晶、BaB結晶、ZnAl結晶およびCaAlSi結晶を実質的に含まないことを特徴とするものである。
【0021】
さらに本発明は、上記の磁性体と誘電体との複合焼結体からなる絶縁基体の内部または表面にコンデンサ回路およびインダクタ回路が形成されていることを特徴とするLC複合電子部品である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、六方晶Baフェライト結晶と、Ca、SrおよびBaから選ばれる1種以上の元素およびTiを含有するペロブスカイト型結晶と、Liとを含有することで、磁性体と誘電体とが反応してそれぞれの特性が低下するのを抑制し、1GHzにおける比透磁率が1.4以上の磁性体と誘電体との複合焼結体を実現することができる。これにより、スピネル型フェライトでは超えられなかった透磁率の周波数限界(スネークの限界)を超えて、数百MHz〜数GHz帯領域でも十分な透磁率が得ることができ、高い周波数帯域でのフィルタ材料に適用することが可能となる。
【0023】
そして、上記の構成において、主組成が六方晶Baフェライト結晶55〜95体積%とペロブスカイト型結晶5〜45体積%とからなる場合には、より比透磁率および比誘電率の高い複合焼結体が得られる。
【0024】
また、上記の構成において、さらにガラスを含み、該ガラスがSi、Ca、BaおよびLiを含むとともに実質的にAlおよびBを含まない場合には、特性の低下につながる異相結晶の析出や磁性体および誘電体の変質を抑制し、焼結性の向上(焼結温度の低温化)を図ることができる。
【0025】
また、上記の構成において、六方晶Baフェライト結晶のうちの主結晶がY型六方晶Baフェライト結晶である場合には、高い周波数帯域においてより高い透磁率を得ることができる。
【0026】
また、上記の構成において、ペロブスカイト型結晶がBaTiOである場合には、少量の添加により複合焼結体の誘電率を高くすることができ、CaTiOあるいはSrTiOである場合には、1GHz以上の高周波領域においても誘電率を高めつつ1GHzにおける誘電損失を0.1以下に低く抑えることが可能となり、より急峻に減衰する極をもったEMIフィルタを得ることができる。
【0027】
また、上記の構成において、BaAlSi結晶、BaB結晶、ZnAl結晶およびCaAlSi結晶を実質的に含まない場合には、特性の低下がより抑制される。
【0028】
また、この磁性体と誘電体との複合焼結体からなる絶縁基体の内部または表面にコンデンサ回路およびインダクタ回路が形成されているLC複合電子部品によれば、数百MHz〜数GHzの高周波帯域でも使用可能なLCフィルタ特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態にかかる誘電体と磁性体との複合焼結体は、六方晶Baフェライト結晶と、誘電体として少なくともCa、SrおよびBaから選ばれる1種以上の元素およびTiを含有するペロブスカイト型結晶と、Liを含有してなるものである。
【0030】
このように、磁性体材料である六方晶Baフェライトと誘電体材料であるペロブスカイト型結晶とを組合せた焼結体中にLiを含有させることで、原料として用いた材料の透磁率および誘電率の劣化が抑制され、1GHzにおける比透磁率が1.4以上である誘電体と磁性体との複合焼結体となる。
【0031】
ここで、六方晶フェライトとは、六方晶系結晶構造を有しているとともに磁化容易軸をもっているもののことである。具体的には、六方晶フェライトは結晶方向により異なる異方性磁界をもつために回転磁化共鳴周波数(fr)が高くなるとともに、c軸に垂直な結晶面(c面)内のa軸が磁界の方向に容易に磁化され、かつ外部磁界の方向の変化に容易に追従して磁化の向きが変化する。このため、高い周波数領域(数100M〜数GHz)においても、比透磁率が高い状態を維持することが可能である。一方、スピネル型フェライトなどは、数MHz程度では、数百といった比透磁率が得られるが、前記のような磁化容易軸を持たないため、1GHz程度で透磁率が急激に低下してしまう。なお、Baを含む六方晶Baフェライトは、酸化鉄や炭酸バリウム等の原料から仮焼合成する際の温度を低くすることができる。
【0032】
そして、Liを含有させることで、焼成の際に、原料として用いた磁性体材料と誘電体材料とが反応することを効果的に抑制し、磁性体材料および誘電体材料の少なくとも一方が変質して特性が大きく劣化することを抑制することができ、比透磁率および比誘電率の両特性を維持することができる。したがって、磁性体材料である六方晶Baフェライトと誘電体材料であるペロブスカイト型結晶とを組合せた焼結体中にLiを含有させることで1GHzにおける比透磁率が1.4以上という特性が得られる。
【0033】
このような誘電体と磁性体との複合焼結体は、例えば、予め、合成しておいた磁性体材料と誘電体材料とガラスとを混合した後、焼成することで作製することができる。
【0034】
六方晶Baフェライト粉末を作製するには、原料の主成分としてそれぞれ酸化物換算でFeを50〜90モル%、MOを0〜40モル%(ただし、MはCo、CuおよびZnから選ばれる1種以上の金属元素)、BaOを10〜50モル%となるように調合する。この際、各原料はこれに限定されず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。なお、Mは単独形態、または少なくとも2種を混合した混在形態であっても良く、Mとして2種以上を混合して用いる場合には、混合した総計モル%が0〜40モル%の範囲に入るようにすればよい。
【0035】
六方晶Baフェライト結晶の中でも特に1GHzにおける透磁率の高い六方晶Y型Baフェライト結晶は、化学式がBaFe1222(ただし、MはCo、Cu、Znから選ばれる一つ以上の金属元素)と表され、上記組成割合となるように各元素の原料を配合することにより合成することができる。なお、組成比によればBaFe1222結晶とは異なる結晶(例えば、Ba2.051.95Fe1222)であっても、X線回折のピーク強度が、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)のカードまたはデータベース中に存在するBaFe1222結晶に極めて近いものである場合には、BaFe1222結晶とする。
【0036】
このように配合した混合粉末を、大気中において900〜1300℃の温度範囲で、1〜10時間仮焼した後、粉砕することによって六方晶Baフェライト粉末を得ることができる。
【0037】
例えば、六方晶Baフェライト結晶のうちY型(六方晶Y型Baフェライト結晶)の場合は、850℃付近からBaFe1219結晶およびBaFe結晶の分解が始まり、生成されてくる。この分解、生成を十分に行うためには、900〜1100℃の温度範囲で、1〜5時間仮焼することが好ましい。そうすることにより、仮焼時に六方晶Y型Baフェライト結晶を80%以上生成することが可能となる。なお、仮焼温度が1100℃以下であれば、合成と同時に進行する粉と粉との焼結が抑制されるため、粉砕が容易となって細かい粉砕粉を得やすく、誘電体材料などと組み合わせて焼成する際の焼結性を向上させることができる。
【0038】
粉砕に際しては振動ミル、回転ミル、バレルミル等を用いて、磁生体材料を鋼鉄ボール、セラミックボール等のメディアと、水またはイソプロピルアルコール(IPA)、メタノール等の有機溶剤を用いて湿式にて行うことができる。
【0039】
その際、六方晶Baフェライト結晶を合成するための粉末は、平均粒子径が0.1〜5μm、より好ましくは0.1〜1μmであることが焼結性を高める点で望ましい。なお、「平均粒子径」とは、粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径d50を意味する。粉体の粒度分布は、例えばレーザ回折・散乱法によるマイクロトラック粒度分布測定装置X−100(日機装株式会社製)を用いて測定できる。
【0040】
かくして得られる六方晶Baフェライト結晶は、単独で焼結することにより比透磁率が数MHz〜数百MHzの領域で3〜17、数百MHz〜2GHzの領域で1.4〜10と、高周波数帯域まで透磁率が高い磁性体材料となる。
【0041】
ここで、六方晶Baフェライト結晶としては複数の型が知られているが、六方晶Baフェライト結晶のうちの主結晶がY型であるのが好ましく、磁性体材料中の80体積%以上、特に好ましくは、90体積%以上がY型の六方晶フェライト結晶で形成されていることが好ましい。この体積比率は、X線回折の結果からリートベルト解析にて算出される。六方晶Y型Baフェライト結晶の占有割合が80体積%以上であると、高周波においてより高い透磁率を得ることができ、高いインダクタンスやインピーダンスを持つ高周波回路部品を得ることができる。
【0042】
誘電体材料としては、Ca、SrおよびBaから選ばれる1種以上の元素およびTiを含有するペロブスカイト型結晶からなる材料を用いる。
【0043】
このようなペロブスカイト型結晶構造を有する誘電体材料としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムまたはその固溶体、およびそれらにさらにチタン酸マグネシウムが固溶した固溶体等が挙げられる。ただし、少ない添加量で高い誘電率が得られ、六方晶Baフェライト粉末と混合、焼成した場合に、六方晶Baフェライト中のBaと反応してBa1.55Ca0.45SiO結晶やBa0.88Ca0.12TiO結晶等の異相の析出をなくし、高い誘電率の誘電体と磁性体との複合焼結体を得るためには、強誘電体であるBaTiOを用いることが望ましい。
【0044】
この際、BaTiO粉末の平均粒子径は、誘電体と磁性体との複合焼結体の透磁率、誘電率を高くするために、0.1〜1.5μm、さらには0.3〜1.0μmであることが好ましい。
【0045】
BaTiO粉末の粒子径が細かすぎて六方晶Baフェライトの粒子間の至るところに分散配置されていると、六方晶Baフェライトの焼結を阻害し、所望の透磁率を得られないことになる。ここで、高い透磁率を得るためには誘電体の添加量をそれほど多くできず、また後述するように焼結性を向上させるためには添加されるガラスや低軟化点酸化物(例えば酸化ビスマス)等の焼結助剤量もそれほど多くできないことから、焼結時に粒成長させることはあまり期待できない。これらのことより、BaTiO粉末は、材料の混合時にある程度粒子径が大きいものを選択する方が誘電率、透磁率を高くすることができ、好ましくは平均粒子径0.3〜1.0μmのものが良い。このような平均粒子径のBaTiO粉末は比誘電率が2000〜3000であるため、高い誘電率の誘電体と磁性体との複合焼結体を得ることが可能となる。
【0046】
一方、誘電体と磁性体との複合焼結体において、1GHzでの誘電率を高めつつ、誘電損失を0.1以下とするためには、CaTiOやSrTiOを用いることが望ましい。CaTiOやSrTiOは、BaTiOよりも比誘電率は低いが、誘電損失を低くすることができるので、特に低誘電損失が求められる場合には、CaTiOやSrTiOを用いるのが望ましい。
【0047】
そして、焼結性を向上させるために、ガラスが磁性体材料と誘電体材料とに混合されるのが望ましく、ガラスとしては、少なくともSi、Ca、BaおよびLiを含むガラスであり、実質的にAlおよびBを含まないガラスを用いることが望ましい。
【0048】
具体的なガラスの組成としては、SiをSiO換算で20〜70質量%、CaをCaO換算で3〜26質量%、BaをBaO換算で16〜60質量%、及びLiをLiO換算で3〜11質量%含有しているものが好ましい。
【0049】
ここで、バインダの分解温度(約150〜400℃が一般的)に近い温度でガラスの軟化が生じると、ガラス中に分解したバインダの成分が取り込まれてしまい、変色やガラスの発泡、焼結性の劣化が懸念されるが、SiのSiO換算含有量が上記範囲内であれば、焼成時の脱バインダ性が良好で、1000℃以下の温度における焼結性も良好なものとすることができる。また、BaのBaO換算含有量が上記範囲内であれば、焼成時の脱バインダ性が良好で、開気孔率を低い良好な値とすることが容易になる。
【0050】
また、ガラスに含まれるCa、Liは、ガラスの軟化挙動を制御することが可能であり、焼成条件を望ましい範囲とすることができる。したがって、CaのCaO換算含有量、LiのLiO換算含有量が上記範囲内であれば、上記のBaと同様に焼成時の脱バインダ性が良好で、開気孔率を低い良好な値とすることができる。
【0051】
上記Si、Ca、BaおよびLiのさらに望ましい範囲は、SiはSiO換算で35〜65質量%、CaはCaO換算で5〜20質量%、BaはBaO換算で20〜50質量%、LiはLiO換算で3〜7質量%である。
【0052】
また、実質的にAlおよびBを含まないガラスであることが望ましいのは、これらの成分が異相結晶を形成してしまうためである。これらの異相結晶の例としては、BaAlSi、BaB、ZnAlおよびCaAlSiが挙げられる。十分な透磁率や誘電率を容易に得るためには、これらの異相結晶が形成されないように、換言すればこれらの異相結晶が複合焼結体中に実質的に含まれないようにすることが望ましい。
【0053】
なお、ここで実質的にAlおよびBを含まないガラスとは、ガラスを製造する際にAlあるいはBとなる原料を積極的に加えていないガラスのことであり、ガラス中の不可避不純物として微量のAlあるいはBが含まれていてもよい。ガラス中の具体的な不可避不純物量としては、それぞれ0.1モル%以下が好ましい。
【0054】
また、BaAlSi結晶、BaB結晶、ZnAl結晶およびCaAlSi結晶が複合焼結体中に実質的に含まれないとは、X線回折によってこれらの結晶の存在が測定できないこと、具体的には、複合焼結体中に含まれる結晶のうちX線回折によって最も高いピーク強度を有する結晶のピーク強度に対して100分の1以下のピーク強度であることをいう。
【0055】
そして、Liは、ガラスの軟化点を適度に調節することができる効果に加えて、磁性体材料と誘電体材料との反応を抑制する効果も備えている。したがって、両方の効果を得る点で、原料のガラス中にLiが含まれているのが望ましいが、反応抑制の点ではLiCOやLiHCOの形で添加されてもよい。添加量としては、磁性体と誘電体の総量を100質量%とした場合、外添量として酸化物(LiO)換算で0.1〜1.5質量%、さらに0.2〜1.0質量%であるのが反応抑制効果および長期的絶縁信頼性の点で望ましい。これらを添加することで、磁性体材料と誘電体材料とが反応せずに焼成温度を低減することが可能となり、それぞれの材料特性を著しく劣化することのない複合焼結体を得ることが可能となる。なお、LiCOやLiHCOの形で添加されたものは、Liを含有する複合酸化物の結晶、例えばLiCuFeとして複合焼結体中に存在する。
【0056】
また、誘電体と磁性体との複合焼結体を得るための混合比率は、目的の透磁率、誘電率に合わせて調整することが可能であるが、主組成として六方晶Baフェライト結晶からなる磁性体材料55〜95体積%と、ペロブスカイト型結晶からなる誘電体材料5〜45体積%とするのが好ましく、焼結助剤として磁性体および誘電体の総量100質量%に対して、外添でガラス1.5〜25質量%と、Liを含有する複合酸化物の結晶0〜5質量%(0質量%の場合は、Liはガラス中に含まれている)の範囲内の複合比であるのが好ましい。
【0057】
磁性体材料および誘電体材料が上記範囲内であると、より比透磁率および比誘電率の高い複合焼結体が得られ、ガラスが上記範囲内であると、焼結性がよく比誘電率を高い値とすることができる。
【0058】
さらに、焼結性を向上させるために、低軟化点酸化物である酸化ビスマス(Bi)を、六方晶Baフェライトと誘電体の合計を100質量%とした際に、外添で0.5〜15質量%含有させてもよい。上記の副成分の含有割合であれば、1000℃以下の焼成温度で嵩密度が理論密度の90%以上の複合焼結体が得ることが容易であるとともに、高い透磁率の複合焼結体を得やすい傾向にある。なお、Biの形で添加されたものは、BiまたはBiを含有する複合酸化物の結晶、例えばBi12TiO20として複合焼結体中に存在する。
【0059】
このように、磁性体材料と誘電体材料とを混合、焼成して複合化する場合、その焼成温度を低温化するためには、焼結助剤を添加する必要がある。例えば、磁性体材料である六方晶Y型Baフェライトが900〜1000℃で焼結するのに対し、誘電体材料であるペロブスカイト型誘電体は1200〜1300℃の高温でないと焼結しないため、低い焼成温度で緻密かつ高強度の複合焼結体を得るためには、焼結助剤を添加する必要がある。
【0060】
一方で、複合焼結体の透磁率、誘電率は、添加する磁性体材料と誘電体材料のそれぞれの材料の体積比に応じて指数関数的に増減するため、焼結助剤の添加量は極力少なくする必要もある。
【0061】
また、焼結助剤としては磁性体材料と誘電体材料と反応しにくい、すなわち透磁率、誘電率に与える影響が小さく、焼結温度のみを低下させるものが望ましい。
【0062】
このような点を考慮して各材料を調整することで、本実施形態の誘電体と磁性体との複合焼結体は、1GHzの高周波数帯域においても、比透磁率1.4以上を有する焼結体を得ることができる。
【0063】
なお、原料としての六方晶Y型Baフェライト結晶からなる磁性体材料55〜95体積%と、前記ペロブスカイト型結晶からなる誘電体材料5〜45体積%という比率は、焼結後にほぼそのままの比率となっている。焼結後の比率としては、X線回折の結果からリートベルト解析にて求めることができる。具体的には、リートベルト解析により、各相の質量比(六方晶Baフェライト結晶、ペロブスカイト型結晶、ガラス)を求める。その後、結晶構造から六方晶Baフェライト結晶の密度を求め、質量比から体積比へと換算することで、体積比が求められる。また、ガラス組成も焼結後にほぼそのままの比率となっている。
【0064】
本実施形態によれば、磁性体と誘電体との複合焼結体からなる絶縁基体の内部または表面にコンデンサ回路およびインダクタ回路を形成することによりLC複合電子部品を形成することができる。
【0065】
そのLC複合電子部品の好適例であるEMIフィルタ部品を図1をもとに説明する。複数の絶縁層1が積層され、この絶縁層1の表面に配線層2が形成されている。また、絶縁層1によって隔てられた配線層2同士を電気的に接続するビアホール導体3が絶縁層1を貫通して形成されている。
【0066】
さらに、これらの配線層2及びビアホール導体3により複数の絶縁層1からなる絶縁基体の内部には、回路的にインダクタ部4及びコンデンサ部5が形成され、フィルタ回路をなしている。
【0067】
このインダクタ部4は、配線層2及びビアホール導体3により多層のコイル状に形成されているが、通常、回路のインダクタンスを増加させるためには、このコイルの巻き数を増加させる必要がある。しかし、本実施形態の複合磁性材料のような透磁率の高い磁性材料を用いた場合、コイルの巻き数を増やさずとも必要なインダクタンスを得ることが可能となる。これより、配線層2の積層数を減少することができることより、電子部品の小型、低背化が可能になる。
【0068】
このようなLC複合電子部品において、絶縁層1として、本発明にかかる実施形態に記載された誘電体と磁性体との複合焼結体を用いることで、本実施形態のLC複合電子部品となる。
【0069】
また、配線層2及びビアホール導体3を形成する低抵抗金属が、金、銀、銅のいずれかを含む金属であることが望ましい。配線層2として金、銀、銅のいずれかの低抵抗金属を主成分として含有する場合には、配線層2を低抵抗化でき、特に高周波信号の信号損失、遅延を小さくできる。
【0070】
また、本実施形態のLC複合電子部品を製造するには、上述した原料に対して、適当な有機バインダ、分散剤、溶媒を添加、混合してスラリーを調製し、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法、あるいは圧延法、プレス成形法により、シート状に成形する。
【0071】
そして、このシート状成形体に所望によりスルーホールを形成した後、スルーホール内に、低抵抗金属を含有する導体ペーストを充填する。
【0072】
そして、シート状成形体表面には、金属ペーストを用いてスクリーン印刷法、グラビア印刷法などの公知の印刷手法を用いて配線層の厚みが5〜30μmとなるように、配線パターンを印刷塗布するか、または金属箔を貼りつけ、パターン状に加工したものを貼りつける。
【0073】
そして、複数のシート状成形体を位置合わせして積層圧着した後、電子部品の大きさに合わせて切断した後、酸化性雰囲気中、または低酸化性雰囲気中にて200〜500℃にて脱バインダ処理した後、酸化性雰囲気または非酸化性雰囲気で900〜1100℃の温度で焼成することにより、本実施形態の磁性体と誘電体との複合焼結体からなる絶縁基体の内部または表面にコンデンサ回路およびインダクタ回路が形成されたLC複合電子部品を作製することができる。
【0074】
なお、焼成雰囲気については、用いる低抵抗金属の種類に応じて適宜決定され、例えば、銅等の酸化性雰囲気中での焼成によって酸化する金属を用いる場合には非酸化性雰囲気中にて焼成を行う必要があるが、金、銀に関しては酸化雰囲気中での焼成を行うことも可能である。
【0075】
上述したような工程を経ることによって、前述したように高い透磁率、及び誘電率を有するとともに、数百MHz〜数GHzの高周波数帯域でもノイズの減衰特性が高い、LCフィルタを再現性よく得ることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0077】
まず、Fe、CoO、CuO、ZnOおよびBaCOを出発原料とし、これらを各々モル比率で、表1の試料No.1〜試料No.40についてはFe、CoO、CuO、ZnOおよびBaOに換算して60:0.5:5:14:20.5の割合で有機溶媒にIPA、メディアに鋼鉄ボールを用いて湿式混合し、乾燥した後、大気中、950℃で仮焼し、さらに湿式にて72時間粉砕し、平均粒径1μmの六方晶Y型BaZnFe1222結晶を主結晶とする磁性体材料(比誘電率:25、比透磁率:15)、主結晶相として、BaZnFe1222結晶が析出する磁性体材料を得た。ここで、組成比によればBa2.05Zn1.4Cu0.5Co0.05Fe1222と表されるが、X線回折のピーク強度がJCPDSのカードまたはデータベース中に存在するBaZnFe1222結晶に極めて近いものであるため、主結晶相はBaZnFe1222結晶としている。
【0078】
また、表2の試料No.41については上記出発原料のモル比率を60:10:0:10:20の割合とし、試料No.42は上記出発原料のモル比率を60:20:0:0:20の割合とし、試料No.43は上記出発原料のモル比率を60:10:10:0:20の割合とし、試料No.44は上記出発原料のモル比率を60:0:20:0:20の割合とし、試料No.45は上記出発原料のモル比率を60:0:10:10:20の割合として、同様に仮焼したものであって、平均粒径1μmの六方晶Y型Baフェライト結晶を含有する磁性体材料が得られている。
【0079】
さらに、表2の試料No.46は上記出発原料のモル比率を85.7:0:0:0:14.3の割合とした平均粒径1μmの六方晶M型フェライト、試料No.47は上記出発原料のモル比率を70.6:0:5.9:5.9:17.6の割合とした平均粒径1μmの六方晶Z型フェライト、試料No.48は上記出発原料のモル比率を72.7:18.2:0:0:9.1の割合とした平均粒径1μmの六方晶W型フェライトであって、仮焼温度を1200℃とした以外は上記と同様に作製したものである。
【0080】
次に、誘電体材料としては、市販のペロブスカイト型結晶である強誘電体BaTiO粉末(平均粒径0.3μm、比誘電率:3000、比透磁率:1.0)を準備した。また、誘電体材料として常誘電体のCaTiO(平均粒径0.3μm、比誘電率:175、比透磁率:1.0)、SrTiO(平均粒径0.3μm、比誘電率:255、比透磁率:1.0)を準備した。
【0081】
さらに、ガラスは、表1および表2に示す組成となるように、SiO、CaO、BaO、LiO、Al、BおよびMgOの各原料粉末を混合し、1200℃で溶解後急冷して作製した。得られたガラスは、湿式にて48時間粉砕し、平均粒径1.0μmのガラス材料を得た。
【0082】
なお、試料No.32〜35、39、40は市販の平均粒径3.0μmのLiCO粉末を添加したものであり、試料No.36〜40、46〜48は市販の平均粒径3.0μmのBi粉末を添加したものであり、これらの原料は磁性体と誘電体の粉末の合計の質量を100質量%とした場合に外部添加している。
【0083】
以上のようにして準備した磁性体材料、誘電体材料、ガラス、LiCOおよびBiの各材料を表1および表2に示す混合比となるように、有機溶媒にIPA、メディアに鋼鉄ボールを用いて湿式混合し、乾燥した後、比透磁率、比誘電率、誘電損失、相対密度等の特性及び焼結性を評価できるようにプレス成形し、大気中で950〜1100℃で2時間焼成し、誘電体と磁性体との複合焼結体を得た。
【0084】
かくして得られた誘電体と磁性体との複合焼結体について、比透磁率、比誘電率、誘電損失、相対密度等の特性及び焼結性を評価した。比透磁率、比誘電率、誘電損失については、1GHzでの値を測定し評価した。
【0085】
なお、相対密度は、JIS R2205に準拠して測定した嵩密度を真密度で除して算出した。真密度は、複合焼結体中の気孔を除いた状態の密度を測定するため、乳鉢を用いて複合焼結体を平均粒径3μm程度まで粉砕し、ピクノメータ法を用いて測定した結果を真密度とした。
【0086】
比透磁率は、同軸管を用いたSパラメータ法により測定し、比誘電率はインピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製 HP4291A)を用いた平行平板法により測定することができる。
【0087】
また、X線回折を行ない、その結果をリートベルト解析し、複合焼結体中の磁性体、誘電体、およびその他の結晶、ガラスの量を求めた。ここで、磁性体とはフェライトの結晶のことであり、誘電体とはCa、SrおよびBaから選ばれる1種以上の元素およびTiを含有するペロブスカイト型結晶のことである。また、それらの結果から、複合焼結体の主組成である磁性体および誘電体の比率を算出した。
【0088】
また、原料として用いた誘電体、磁性体およびガラスの比透磁率と比誘電率とを用いて、全く、誘電体、磁性体およびガラスの間で反応等が起こらず、理想的な焼結が行われた場合に得られる誘電体と磁性体との複合焼結体の比透磁率と比誘電率とを対数混合則によって計算し、得られた計算値で実測値を除算した値を表1および表2に記載した。この値が100であるときには、理想的な焼結が行われたことになり、100を下回ると何らかの反応が起こり、比透磁率もしくは比誘電率とが劣化したことになる。なお、残留ガラスや微小結晶の影響、あるいは何らかの反応によって比透磁率や比誘電率が向上し、100を超えているものもある。
【0089】
比較例として、磁性体材料にスピネル型複合フェライトであるNi−Cu−Zn系フェライトを上記フェライトと同様にNiO,ZnO,CuO,Feを出発原料とし、これらを各々モル比率で15:25:12:48の割合で湿式混合後、950℃で仮焼し、得られた磁性体材料Ni0.15Zn0.25Cu0.12Fe0.961.96(平均粒径1μm、比誘電率:5、比透磁率:1.2)を用いたものを作製した(表2中の試料No.49)。
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
複合焼結体中にLiを含有する本発明の実施の範囲である試料No.1〜30、32〜48は、比透磁率、比誘電率の低下が小さいものであった。特に、原料としてLiCOを用いた試料No.32〜35においても比透磁率、比誘電率の低下が小さく、1.4以上の比透磁率を有するものであった。
【0092】
なお、作製した試料について、X線回折により、結晶相を同定したところ、No.1〜30、32〜48では、原料として用いた磁性体結晶および誘電体結晶が、そのまま、残っていることがわかった。一方、ガラスにAlが含まれる試料No.23、24では、BaAlSi結晶が確認された。また、試料No.25、26および試料No.31〜35、39でも異相の析出が確認された。
【0093】
また、誘電体材料としてCaTiO、SrTiOを用いた試料No.27〜30、34、35は、誘電体材料としてBaTiOを用いたものに比べて誘電損失を極めて低くすることができていることがわかる。
【0094】
試料No.31はLiが含まれていなかったため、六方晶Y型Baフェライトと誘電体が反応し、比透磁率が著しく低下した。試料No.49は、フェライトがスピネル型フェライトであるため、1GHzでの比透磁率が1.4を下回った。
【0095】
次に、表1および表2に示す原料をブタノール溶媒中で混合し、ポリビニルブチラール等のバインダを混合粉に対し10質量%加えて混練し、スラリーを調整し、この複合スラリーをドクターブレード法により厚み50μmのグリーンシートを作製した。
【0096】
次に、このグリーンシートをそれぞれ20枚積層し、その途中で市販のAg−Pd(7:3)のペーストを用いて内部電極(内部導体)としてコイルとコンデンサを印刷形成し(コイルはスルーホールを介して接続)、熱間圧着後、焼成後に焼結体寸法が2.0×1.25mmとなるように切断し、三端子構造のLC複合EMIフィルタチップ部品をそれぞれ得た。
【0097】
次いで、このチップ部品を400℃で脱脂処理した後、大気中において1000℃で2時間焼成した。得られた本実施形態のLC複合電子部品であるチップ部品は、配線層、絶縁層ともに緻密な組織が得られ、チップ部品として良好なものであった。
【0098】
また、得られた本実施形態のLC複合電子部品でLC複合EMIフィルタチップ部品の周波数特性をネットワークアナライザーにより測定した結果、従来の誘電体を用いた場合と同等のコイルターン数で、減衰極の低周波化が実現しており、従来品の誘電体を用いたローパスフィルタと同等のサイズで、より低周波からの減衰特性を得ることが可能であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のLC複合電子部品の断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1・・・絶縁層、磁性体と誘電体との複合焼結体
2・・・配線層
3・・・ビアホール導体
4・・・インダクタ部
5・・・コンデンサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶Baフェライト結晶と、Ca、SrおよびBaから選ばれる1種以上の元素およびTiを含有するペロブスカイト型結晶と、Liとを含有し、1GHzにおける比透磁率が1.4以上であることを特徴とする磁性体と誘電体との複合焼結体。
【請求項2】
主組成が前記六方晶Baフェライト結晶55〜95体積%と前記ペロブスカイト型結晶5〜45体積%とからなることを特徴とする請求項1に記載の磁性体と誘電体との複合焼結体。
【請求項3】
さらにガラスを含み、該ガラスがSi、Ca、BaおよびLiを含むとともに実質的にAlおよびBを含まないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性体と誘電体との複合焼結体。
【請求項4】
前記六方晶Baフェライト結晶のうちの主結晶がY型六方晶Baフェライト結晶であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁性体と誘電体との複合焼結体。
【請求項5】
前記ペロブスカイト型結晶がBaTiOであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁性体と誘電体との複合焼結体。
【請求項6】
前記ペロブスカイト型結晶がCaTiOあるいはSrTiOであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁性体と誘電体との複合焼結体。
【請求項7】
BaAlSi結晶、BaB結晶、ZnAl結晶およびCaAlSi結晶を実質的に含まないことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の磁性体と誘電体との複合焼結体。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の磁性体と誘電体との複合焼結体からなる絶縁基体の内部または表面にコンデンサ回路およびインダクタ回路が形成されていることを特徴とするLC複合電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−96703(P2009−96703A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331641(P2007−331641)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】