説明

磁性部材、現像装置及び画像形成装置

【課題】磁性部材74の共振が抑制する。
【解決手段】軸部76と第2磁極部82との間に高弾性率部86Aを配置する。これにより、軸部76に対する第2磁極部82側の曲げ剛性が高まり、軸部76に対する第2磁極部82側と軸部76に対する曲げ剛性に差が小さくなる。このため、磁性部材74の第2磁極部82・第5磁極部85が配置された配置方向(図3における矢印C方向)を加振方向とする振動が発生した場合において、複数の振幅(ゲイン)のピーク(複数の共振点)が近づく、或いは、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が1つとなる。このように、共振を生じる周波数の領域が狭くなるので、磁性部材74の共振が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性部材、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の部材に生じる共振を回避する技術としては、特許文献1及び特許文献2に開示される構成が公知である。特許文献1の構成では、ダイナミックダンパ10は、取付金具11と、その径方向外方に離間して同軸状に配置された質量金具14と、取付金具11と質量金具14間を周方向の中心角θで120°以下の領域において連結するゴム弾性体連結部17とを備えている。取付金具11と質量金具14間の上記領域の周方向長さを二等分する位置と軸心を結ぶ径線方向すなわち当該領域の中心角θを二等分する二等分線方向(図示P方向)が基準となる第1の共振周波数に調整されている。P方向に直交する径方向(図示Q方向)が第1の共振周波数の略1/2倍である第2の共振周波数に調整されており、上記領域の周方向長さを二等分する位置を中心とする質量金具14の径方向への首振り方向(図示R方向)が第1の共振周波数の略2倍である第3の共振周波数に調整されている。
【0003】
特許文献2の構成は、大口径の母管及びこの母管に接続した母管より小口径の小径配管とからなる配管系において、前記母管1に母管振動測定装置3を小径配管2に小径配管振動測定装置4を設置すると共に、両振動測定装置3,4により得た測定データにより解析を行う解析装置6と、その解析結果に基づき共振の診断を行う診断装置7と、その診断データを基にして小径配管2の固有振動数を変更させる振動低減装置5a,5bを設けたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−266383号公報(図1)
【特許文献2】特開平8−135729号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、磁性部材の共振を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、軸部と、前記軸部の外周の周方向一部に前記軸部の軸方向に沿って設けられ、磁性材料で形成された第1磁性部と、前記軸部の周方向における前記第1磁性部とは異なる位置に前記軸部の軸方向に沿って設けられ、前記第1磁性部よりも弾性率が低い磁性材料で構成された第2磁性部と、前記軸部と前記第2磁性部との間に設けられ、前記第2磁性部よりも弾性率が高い材料で構成された高弾性率部と、を備える磁性部材である。
【0007】
請求項2の発明は、軸部と、前記軸部の外周に設けられ、磁性材料で形成され、前記軸部を含む全体の外径が前記軸部の周方向において異なる磁性部と、非磁性材料で形成され、前記外径の短い部位に設けられ、前記磁性部の曲げ剛性を高める非磁性部と、を備える磁性部材である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の磁性部材と、前記磁性部材が内部空間に設けられ、前記磁性部材の磁力によって現像剤が外周面に付着され、回転により該現像剤を搬送して該現像剤を潜像へ供給する円筒状の円筒部材と、を備える現像装置である。
【0009】
請求項4の発明は、像を保持可能な像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置によって帯電した前記像保持体を露光し、静電潜像を形成する露光装置と、前記露光装置によって前記像保持体に形成された静電潜像を現像する請求項3に記載の現像装置と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の構成によれば、請求項1における高弾性率部を備えない場合に比べ、磁性部材の共振を抑制できる。
【0011】
本発明の請求項2の構成によれば、請求項2における非磁性部を備えない場合に比べ、磁性部材の共振を抑制できる。
【0012】
本発明の請求項3の構成によれば、請求項1,2の磁性部材を備えない場合に比べ、磁性部材の共振に起因する現像不良を抑制できる。
【0013】
本発明の請求項4の構成によれば、請求項1,2の磁性部材を備えない場合に比べ、磁性部材の共振に起因する画像劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る画像形成ユニットの構成を示す概略図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る現像ロールの構成を示す概略図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る磁性部材の構成を示す概略図である。
【図5】図5は、比較例に係る磁性部材の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、比較例に係る磁性部材の構成を示す概略図である。
【図7】図7は、比較例に係る磁性部材において、加振方向ごとに共振点が異なることを説明するためのグラフである。
【図8】図8は、本実施形態に係る磁性部材の変形例を示す斜視図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る磁性部材の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0016】
(本実施形態に係る画像形成装置の構成)
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは鉛直方向上方を示す。
【0017】
画像形成装置10は、図1に示すように、各構成部品が内部に収容される筐体11を備えている。
【0018】
筐体11の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部14と、記録媒体収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、が設けられている。また、筐体11の上部には、画像形成部14によって画像が形成された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18が設けられている。
【0019】
画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y〜22Kと示す)と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像が転写される転写体の一例としての中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する第1転写部材の一例としての第1転写ロール26と、第1転写ロール26によって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写する第2転写部材の一例としての第2転写ロール28と、を備えている。
【0020】
画像形成ユニット22Y〜22Kは、水平方向に対する斜め方向(図1における右斜め下方向)沿って、筐体11の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット22Y〜22Kは、像を保持する像保持体の一例として、一方向(図1における時計回り方向)へ回転する感光体32をそれぞれ有している。
【0021】
各感光体32の周囲には、図2に示すように、感光体32の回転方向上流側から順に、感光体32を帯電させる帯電装置の一例としての帯電ロール34と、帯電ロール34によって帯電した感光体32が露光されて形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置60と、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写された後に感光体32に残留している残留トナーを除去する除去装置40と、が設けられている。なお、現像装置60の具体的な構成については後述する。
【0022】
除去装置40は、感光体32に接触して残留トナーを掻き取る掻き取り部材の一例としてのブレード40Aと、ブレード40Aによって掻き取られた残留トナーを排出部(図示省略)へ搬送する搬送部材40Bと、を備えて構成されている。
【0023】
また、図1に示すように、画像形成ユニット22Y〜22Kの下方には、帯電ロール34によって帯電した各感光体32を露光して静電潜像を形成する露光装置36が設けられている。具体的には、露光装置36は、制御部20から送られた画像信号に基づく光Lを各感光体32へ照射することで、静電潜像を形成するようになっている。制御部20から送られる画像信号としては、例えば、制御部20が外部装置から取得した画像信号がある。
【0024】
中間転写ベルト24は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット22Y〜22Kの上側に配置されている。中間転写ベルト24の内周側に、中間転写ベルト24が巻き掛けられる巻掛ロール42,43,44が設けられている。中間転写ベルト24は、巻掛ロール42,43,44のいずれかが回転駆動することによって、感光体32と接触しながら一方向(図1における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール42は、第2転写ロール28に対向する対向ロールとされている。
【0025】
第1転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで感光体32に対向している。第1転写ロール26と感光体32との間が、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写される第1転写位置とされている。
【0026】
第2転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール42と対向している。第2転写ロール28と巻掛ロール42との間が、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0027】
搬送部16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路48と、搬送路48に沿って配置され送出ロール46によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール50と、が設けられている。
【0028】
第2転写位置より搬送方向下流側には、第2転写ロール28によって中間転写ベルト24から記録媒体Pへ第2転写位置で転写されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置30が設けられている。定着装置30よりも搬送方向下流側には、トナー画像が定着された記録媒体Pを記録媒体排出部18へ排出する排出ロール52が設けられている。
【0029】
次に、本実施形態に係る画像形成装置10における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0030】
本実施形態に係る画像形成装置10では、記録媒体収容部12から送出ロール46によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール50によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0031】
一方、画像形成ユニット22Y〜22Kでは、帯電ロール34によって帯電した感光体32が、露光装置36によって露光されて感光体32に静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置60によって現像されて感光体32にトナー画像が形成される。画像形成ユニット22Y〜22Kで形成された各色のトナー画像は、第1転写位置にて中間転写ベルト24に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト24に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0032】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置30へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置30により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール52によって記録媒体排出部18に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0033】
(現像装置60の構成)
次に、現像装置60の構成について説明する。
【0034】
現像装置60は、図2に示すように、内部に現像剤(図示省略)が収容される筐体62を備えている。筐体62の内部には、感光体32へ現像剤を供給する供給体の一例としての現像ロール64と、現像ロール64上の現像剤で形成される現像剤層の厚みを規制する規制部材66と、現像ロール64へ付与される現像剤を攪拌しながら搬送する搬送部材67A・67Bと、を備えている。なお、現像剤は、例えば、非磁性トナーと、磁性キャリアとを有する現像剤で構成されている。
【0035】
搬送部材67A・67Bは、例えば、筐体62に回転可能に支持された回転軸68aと、その回転軸68aにその軸周りに螺旋状に設けられた羽根部材68bと、を備えて構成されている。搬送部材67Aの回転軸68aが回転することで、羽根部材68bが現像剤を攪拌しながら回転軸68aの軸方向の一方(図2における紙面手前側)へ搬送し、搬送部材67Bの回転軸68aが回転することで、羽根部材68bが現像剤を攪拌しながら回転軸68aの軸方向に沿って、搬送部材67Aの搬送方向とは逆方向(図2における紙面奥側)へ搬送して、現像剤を循環させるようになっている。
【0036】
なお、搬送部材67Aによって現像剤が搬送される搬送路70Aと、搬送部材67Bによって現像剤が搬送される搬送路70Bとは、筐体62の内壁に形成された仕切壁69によって仕切られている。
【0037】
規制部材66は、現像ロール64の回転方向における感光体32よりも上流側であって、感光体32及び現像ロール64の下側において、現像ロール64の外周面と間隔をあけて配置されている。
【0038】
さらに、規制部材66は、円柱状に形成された磁性体で構成されている。この磁性体としては、例えば、一般的な低炭素鋼や、フェライト系のステンレス鋼から構成されている。この規制部材66では、磁性体の磁力により現像剤を保持する保持力が発生し、この保持力によって、現像ロール64に保持された現像剤の一部が削られる。これにより、現像ロール64上の現像剤で形成される現像剤層の厚みが、予め定められた厚みに規制されるようになっている。
【0039】
現像ロール64は、筐体62に形成された開口部62Aを通じて感光体32の外周面と対向配置されている。また、現像ロール64は、筐体62に対して回転可能に支持された円筒状の円筒部材72と、円筒部材72の内部空間に設けられ筐体62に対して固定された円柱状の磁性部材74と、を備えている。
【0040】
現像ロール64の磁性部材74は、非磁性材料で形成された軸部76と、軸部76の外周に設けられ磁性材料で形成された磁性部80と、を備えている。
【0041】
軸部76は、軸方向両端部が筐体62に対して固定されている。この軸部76の筐体62に対する固定部位よりも軸方向内側には、円筒部材72が回転可能に支持されている。また、軸部76は、例えば、SUS(ステンレス鋼)など磁性部80の後述の第1〜第5磁極部81、83、85、82、84よりも弾性率が高い材料で構成されている。なお、軸部76は、磁性材料で形成されていてもよい。
【0042】
軸部76に回転可能に支持された円筒部材72は、駆動部(図示省略)から駆動力を受けて回転するようになっている。円筒部材72は、後述するように磁性部材74の磁力によって現像剤が外周面に付着され、円筒部材72の回転により現像剤を搬送して現像剤を感光体32の静電潜像へ供給するように構成されている。
【0043】
図3及び図4(A)に示すように、磁性部80は、第1磁性部の一例としての第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85と、第1磁性部よりも弾性率が低い磁性材料で構成された第2磁性部の一例としての第2磁極部82・第4磁極部84と、を備えている。
【0044】
第1磁極部(吸引極)81・第2磁極部(規制極)82・第3磁極部(現像極)83・第4磁極部(搬送極)84・第5磁極部(剥離極)85は、断面扇形状に形成されると共に、円筒部材72の回転方向に沿ってこの順で設けられている。すなわち、第1磁極部81・第2磁極部82・第3磁極部83・第4磁極部84・第5磁極部85は、それぞれが、軸部76の外周の周方向一部であって、かつ、軸部76の周方向において異なる位置に配置されている。また、第1磁極部81・第2磁極部82・第3磁極部83・第4磁極部84・第5磁極部85は、軸部76の軸方向に沿って設けられている。
【0045】
磁性部80は、第5磁極部85と第1磁極部81との間において磁極部が配置されていない領域、すなわち、一部が切り欠けられた切欠部88を有している。これにより、軸部76と磁性部80とを含む全体の外径が、軸部76の周方向において異なっている。なお、磁性部80が径方向に完全に切り欠けられて軸部76の外周が露出する構成(図4(A)参照)に限られず、磁性部80が環状に形成される共に磁性部80自体の外径が周方向において異なっている構成であってもよい。
【0046】
第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85は、同一の極性(例えば、N極)で構成され、第2磁極部82・第4磁極部84は、第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85とは異なる極性(例えば、S極)で構成されている。なお、第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85が、S極で構成され、第2磁極部82・第4磁極部84がN極で構成されていてもよい。
【0047】
第1磁極部(吸引極)81は、搬送部材67Bに対向して配置されており、搬送部材67Bによって搬送される現像剤を吸引して、円筒部材72の外周面に現像剤を付着させるようになっている。
【0048】
第2磁極部(規制極)82は、規制部材66に対向して配置されており、円筒部材72の回転により第1磁極部81側から搬送された現像剤を保持するようになっている。第2磁極部82によって保持された現像剤の一部が、規制部材66によって剥離されて、現像剤の通過量が規制される。
【0049】
第3磁極部(現像極)83は、感光体32に対向して配置されており、円筒部材72の回転により第2磁極部82側から搬送された現像剤を保持するようになっている。円筒部材72と感光体32の間には、電圧が付与されて電界が形成されており、現像剤中のトナーが感光体32へ移動し、現像剤中のキャリアは、第3磁極部83によって保持される。
【0050】
第4磁極部(搬送極)84は、現像ロール64の上部に配置されており、円筒部材72の回転により第3磁極部83側から搬送された現像剤を保持するようになっている。
【0051】
第5磁極部(剥離極)85は、搬送部材67Bの上方に配置されており、円筒部材72の回転により第4磁極部84側から搬送された現像剤を円筒部材72から剥離させるようになっている。具体的には、切欠部88において、同極である第5磁極部85及び第1磁極部81の各々へ向かう磁界同士の反発力により、円筒部材72上の現像剤が剥離されるようになっている。
【0052】
第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85は、同一材料で構成されており、例えば、EEA 樹脂(エチレン・アクリル酸エチル共重合体)にフェライト粉を混ぜて形成されている。一方、第2磁極部82・第4磁極部84は、第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85よりも弾性率(密度)が低い同一材料で構成されており、例えば、ブタジエンゴムにフェライト粉を混ぜて形成されている。これにより、軸部76の周方向における第2磁極部82・第4磁極部84の設置領域の曲げ剛性が高まる。
【0053】
また、第2磁極部82・第4磁極部84に用いられる材料は、同じ断面積であれば、第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85に用いられる材料よりも磁界が弱くなっている。
【0054】
本実施形態では、第3磁極部83で生じる磁界M3が最も強く、第2磁極部82で生じる磁界M2及び第4磁極部84で生じる磁界M4が磁界M3よりも弱く、第1磁極部81で生じる磁界M1及び第5磁極部85で生じる磁界M5が磁界M2及び磁界M4よりも弱くなっている。これは、現像剤中のトナーが感光体32へ供給される現像位置において、現像剤中のキャリアが感光体32に吸着されないように、キャリアを保持する保持力を最も強くする必要があると共に、現像剤の円筒部材72からの剥離及び現像剤の円筒部材72への吸着を円滑に行うべく、現像位置から離れるにつれて現像剤の保持力を弱める必要があるためである。
【0055】
ここで、本実施形態では、第2磁極部82よりも弾性率が高い材料で構成された高弾性率部86Aが、軸部76と第2磁極部82との間に設けられている。また、第4磁極部84よりも弾性率が高い材料で構成された高弾性率部86Bが、軸部76と第4磁極部84との間に設けられている。
【0056】
高弾性率部86A、86Bは、軸部76に対して一体に設けられると共に、軸部76と同一材料で構成されている。高弾性率部86A、86Bは、断面扇形状に形成されるともに、図4(B)に示すように、軸部76の軸方向に沿って設けられている。
【0057】
なお、高弾性率部86Aの弾性率は、軸部76の周方向における第2磁極部82の設置領域と、軸部76の周方向における第5磁極部85の設置領域との曲げ剛性の差が小さくなる範囲で、第2磁極部82よりも高いことが望ましい。また、高弾性率部86Bの弾性率は、軸部76の周方向における第4磁極部84の設置領域と、軸部76の周方向における第1磁極部81の設置領域との曲げ剛性の差が小さくなる範囲で、第4磁極部84よりも高いことが望ましい。
【0058】
(本実施形態の作用)
次に、本実施形態の作用を、下記の比較例と比較して説明する。
【0059】
図5に示すように、比較例に係る磁性部材94は、磁性部材74における高弾性率部86A、86Bを有しておらず、磁性部材74において高弾性率部86A、86Bが配置された部分には、それぞれ、第2磁極部82・第4磁極部84が設けられている。
【0060】
この磁性部材94に対して、現像装置60外部にある駆動モータ(図示省略)等からの外力が入力されて磁性部材94が振動し、その振動数が磁性部材94の固有振動数と一致すると、磁性部材94が共振して振動が増幅される。
【0061】
例えば、図6において、第2磁極部82・第4磁極部84が配置された配置方向(図6における矢印A方向)を加振方向とする振動が発生した場合には、図7(A)に示すように、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が、110Hz付近で1つ現れる。
【0062】
また、図6において、第3磁極部83・切欠部88が配置された配置方向(図6における矢印B方向)を加振方向とする振動が発生した場合には、図7(B)に示すように、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が、70Hz付近で1つ現れる。なお、詳細には、110Hz付近でも、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が存在している。
【0063】
また、図6において、第2磁極部82・第5磁極部85が配置された配置方向(図6における矢印C方向)を加振方向とする振動が発生した場合には、図7(C)に示すように、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が、70Hz付近と110Hz付近との2つ現れる。これは、軸部76をまたいで加振方向に存在する第2磁極部82・第5磁極部85の材質(曲げ剛性)が異なるためであると考えられる。
【0064】
これに対して、本実施形態では、高弾性率部86Aが配置されているので、軸部76に対する第2磁極部82側の曲げ剛性が高まり、軸部76に対する第2磁極部82側と軸部76に対する第5磁極部85側とでの曲げ剛性の差が小さくなる。
【0065】
このため、磁性部材74の第2磁極部82・第5磁極部85が配置された配置方向(図3における矢印C方向)を加振方向とする振動が発生した場合において、上記の比較例において現れた70Hz付近と110Hz付近との2つピーク(共振点)が近づく、或いは、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が1つになる。
【0066】
また、本実施形態では、高弾性率部86Bが配置されているので、軸部76に対する第4磁極部84側の曲げ剛性が高まり、軸部76に対する第1磁極部81側と軸部76に対する第4磁極部84側とでの曲げ剛性の差が小さくなる。
【0067】
このため、磁性部材74の第1磁極部81・第4磁極部84が配置された配置方向(図3における矢印D方向)を加振方向とする振動が発生した場合においても、上記の比較例に比べ、複数の振幅(ゲイン)のピーク(複数の共振点)が近づく、或いは、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が1つとなる。
【0068】
さらに、軸部76に対する第2磁極部82側と、軸部76に対する第1磁極部81側・第3磁極部83側・第5磁極部85側とでの曲げ剛性の差が小さくなる。また、軸部76に対する第4磁極部84側と、軸部76部に対する第1磁極部81側・第3磁極部83側・第5磁極部85側とでの曲げ剛性の差が小さくなる。これにより、種々の方向を加振方向とする振動が発生した場合においても、上記の比較例に比べ、複数の振幅(ゲイン)のピーク(複数の共振点)が近づく、或いは、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が1つとなる。
【0069】
このように、共振を生じる周波数の領域が狭くなるので、磁性部材74の共振が抑制される。特に、画像形成装置10が、複数の画像形成速度(プロセススピード)を有する場合では、磁性部材74において発生する振動の周波数が多様となるが、このような場合でも、共振点を避けるように、磁性部材74において発生する振動の周波数を設定することが容易となる。
【0070】
このように磁性部材74の共振が抑制されることにより、現像装置60からの振動を起因とする露光装置36の光の書き込み位置(照射位置)ズレや、現像装置60自体の振動を起因とする画像の濃度ムラが抑制される。
【0071】
なお、図8に示すように、磁性部材74においては、軸部76と磁性部80とで形成される外径の短い部位、すなわち、切欠部88に対して、磁性部80の曲げ剛性を高める非磁性部96を配置する構成であってもよい。非磁性部96は、例えば、SUS305(非磁性ステンレス鋼)など磁性部80の第1〜第5磁極部81、83、85、82、84よりも弾性率が高い材料で形成されている。
【0072】
この構成によれば、第3磁極部83・非磁性部96(磁極部がない領域)が配置された配置方向(図8における矢印B方向)を加振方向とする振動が発生した場合において、上記の比較例において現れた70Hz付近のピーク(共振点)と110Hz付近のピーク(共振点)とが近づく、或いは、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が統合される。
【0073】
なお、本実施形態では、第2磁極部82・第4磁極部84は、第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85よりも弾性率が高い材料で構成されていたが、第2磁極部82・第4磁極部84が、第1磁極部81・第3磁極部83・第5磁極部85よりも弾性率が高い材料で構成されていてもよい。
【0074】
また、磁性部材74における磁極部の配置は、上記の構成に限られず、他の配置であってもよい。また、磁性部材74は、5つの磁極部で構成されていたが、2つ〜4つ、6つ以上で構成されていてもよい。
【0075】
さらに、磁性部材74は、図9(A)に示すように、1つの磁極部、すなわち、1つの磁性材料で構成されていてもよい。1つの磁性材料で構成される場合では、図9(B)に示すように、軸部76と磁性部80とで形成される外径の短い部位、すなわち、磁極部が無い領域に対して、磁性部80の曲げ剛性を高める非磁性部98が配置されている。非磁性部98は、例えば、磁性部80と同じ材質の樹脂(EEA樹脂やブタジエンゴム等。ただしフェライトなどの磁性粉は混ぜない)で形成されている。
【0076】
この構成によれば、磁極部がある領域と非磁性部98(磁極部がない領域)とが配置された配置方向(図9(B)における矢印B方向)を加振方向とする振動が発生した場合において、非磁性部がなく切り欠けた状態の比較例に比べ、複数の振幅(ゲイン)のピーク(複数の共振点)が近づく、或いは、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が1つとなる。さらに、種々の方向を加振方向とする振動が発生した場合においても、上記の比較例に比べ、複数の振幅(ゲイン)のピーク(複数の共振点)が近づく、或いは、振幅(ゲイン)のピーク(共振点)が1つとなる。
【0077】
また、磁性部80においては、軸部76の周方向において切欠部88が複数形成される構成であってもよい。この場合では、複数の切欠部88に非磁性部98が配置される。
【0078】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 画像形成装置
32 感光体(像保持体の一例)
34 帯電ロール(帯電装置の一例)
36 露光装置
60 現像装置
72 円筒部材
74 磁性部材
76 軸部
80 磁性部
81 第1磁極部(第1磁性部の一例)
82 第2磁極部(第2磁性部の一例)
83 第3磁極部(第1磁性部の一例)
84 第4磁極部(第2磁性部の一例)
85 第5磁極部(第1磁性部の一例)
86 高弾性率部
94 磁性部材
96 非磁性部
98 非磁性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、
前記軸部の外周の周方向一部に前記軸部の軸方向に沿って設けられ、磁性材料で形成された第1磁性部と、
前記軸部の周方向における前記第1磁性部とは異なる位置に前記軸部の軸方向に沿って設けられ、前記第1磁性部よりも弾性率が低い磁性材料で構成された第2磁性部と、
前記軸部と前記第2磁性部との間に設けられ、前記第2磁性部よりも弾性率が高い材料で構成された高弾性率部と、
を備える、現像装置に用いられる磁性部材。
【請求項2】
軸部と、
前記軸部の外周に設けられ、磁性材料で形成され、前記軸部を含む全体の外径が前記軸部の周方向において異なる磁性部と、
非磁性材料で形成され、前記外径の短い部位に設けられ、前記磁性部の曲げ剛性を高める非磁性部と、
を備える、現像装置に用いられる磁性部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の磁性部材と、
前記磁性部材が内部空間に設けられ、前記磁性部材の磁力によって現像剤が外周面に付着され、回転により該現像剤を搬送して該現像剤を潜像へ供給する円筒状の円筒部材と、
を備える現像装置。
【請求項4】
像を保持可能な像保持体と、
前記像保持体を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置によって帯電した前記像保持体を露光し、静電潜像を形成する露光装置と、
前記露光装置によって前記像保持体に形成された静電潜像を現像する請求項3に記載の現像装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−203326(P2011−203326A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68177(P2010−68177)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】