説明

磁気センサモジュール用加飾成形品及びその製造方法

【課題】小さく軽量で厚みの薄い形状の入力デバイスには用いることができる磁気センサモジュール用加飾成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】磁気センサモジュール用加飾成形品100は、上面中央部に入力媒体10の入力パネルとしての役割をする透明基材7と、透明基材7の側面付近に位置し入力媒体10に組み込まれた磁石12の磁界の強さを検知する磁気センサ16を設置するためのスペース200とが形成される。そして入力媒体10が接触される上面中央部は透明な窓部になっており、その上面外枠部に加飾層110が形成され、加飾層110は磁気センサ16を覆い隠す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話やPDAなどの小型の入力デバイスにおける位置検出装置に用いられる加飾成形品に関し、とくに磁石を内蔵した入力媒体を近づけ、該媒体の磁石から発生する磁界の強さを磁気センサで検知し、該磁界の強さから前記媒体の位置を算出する位置検出装置に適する磁気センサモジュール用加飾成形品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元空間での入力媒体の位置を磁気センサにて検知する三次元位置検出装置として特許文献1の発明があった。
【0003】
この発明の位置検出装置は、磁石の回りに磁界が形成され、この磁界を検出手段で検出し、この検出信号から磁界の大きさ、方向などによって磁石の位置を入力媒体の位置として三次元的な位置を求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−272528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この位置検出装置は、磁気センサが基材の上に単に設置された構造にあり、入力媒体を動かしたときに、誤って磁気センサに当たって磁気センサを破壊させたり、磁気センサが基材から外れたりする問題があった。また、デザイン的にも磁気センサが露出しているのは見苦しいものであった。従って、別の絵付筐体などで覆って保護するなどの措置がとられていたが、かさばることと覆った隙間から塵や水分などが入りやすく、最近の携帯電話やPDAなどのように精密で、小さく軽量で厚みの薄い形状の入力デバイスには用いることができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、この発明は、透明基材の上面中央部が透明な窓部からなり、前記透明基材の上面外枠部又は下面外枠部に磁気センサを隠蔽するための加飾層が形成され、前記下面外枠部に磁気センサを設置することができるスペースが備えられた、磁気センサモジュール用加飾成形品である。加飾層が磁気シールド層を含んでもよい。上面中央部が、凹部形状に凹んで形成されてもよい。
又、この発明は、上記磁気センサモジュール用加飾成形品の製造方法であって、基体シート上に加飾層を形成した転写シートを作成し、前記転写シートを射出成形金型内にセットして型締めし、前記転写シートの加飾層形成面から溶融した透明射出成形樹脂を射出成形金型内に充填し、冷却後、前記射出成形金型を開いて前期基体シートを剥離することにより、透明基材の上面又は下面の表面に前記加飾層を形成する、磁気センサモジュール用加飾成形品の製造方法である。
又、この発明は、上記磁気センサモジュール用加飾成形品の下面外枠部に、磁界の強さを検知することができる磁気センサが設置された、磁気センサモジュールである。
又、この発明は上記磁気センサモジュールと、磁石を内蔵した入力媒体と、磁界の強さから前記入力媒体の位置を算出する計算部とを備えた、位置検出装置である。
又、この発明は、上記磁気センサモジュールの上面中央部に、磁石を内蔵した入力媒体を近づけ、前記磁石から発生する磁界の強さを前記磁気センサモジュールの磁気センサで検知し、前記磁界の強さから前記入力媒体の位置を算出することにより、前記入力媒体の位置を決定する入力媒体の位置決定方法である。
【発明の効果】
【0007】
この発明の磁気センサモジュール用加飾成形品は、透明基材の上面中央部が透明な窓部からなり、該透明基材の上面外枠部または下面外枠部に磁気センサを隠蔽するための加飾層が形成され、該透明基材の下面外枠部に磁気センサを設置できるスペースが備えられたことを特徴とする。したがって、磁気センサを設置した場合、磁気センサが加飾成形品によって保護される構造にあり、入力媒体を動かしたときに誤って磁気センサに当たることもないため、磁気センサを破壊させたり磁気センサが基材から外れたりする問題が解消できる効果がある。また、磁気センサを塵や水分などから保護でき、軽量で厚みの薄い省スペースの磁気センサモジュールにできる効果がある。また、加飾層が意匠性を呈する美麗な磁気センサモジュールにできる効果もある。
【0008】
また、この発明の磁気センサモジュール用加飾成形品は、前記基材の加飾層が磁気シールド層を含むことを特徴とする。したがって、加飾層が意匠性だけではなく、入力媒体以外(例えば地磁気)の磁界の影響から磁気センサを遮蔽する役割も呈するので、信頼性の高いセンシングが可能になる効果がある。また、本発明の磁気センサモジュール用加飾成形品は、前記透明基材の上面中央部が、凹部形状に凹んで形成されていることを特徴とする。したがって、入力媒体が透明基材の上面中央部に接触する際、入力媒体の磁石と磁気センサの位置関係はほぼ真横となり、Z軸方向の距離はほとんどなくなり両者の距離が相対的に短くなるため、信頼性の高いセンシングが可能になる効果がある。
【0009】
また、この発明の磁気センサモジュール用加飾成形品の製造方法は、基体シート上に加飾層を形成した転写シートを作成し、該転写シートを射出成形金型内にセットして型締めし、該転写シートの加飾層形成面から溶融した透明射出成形樹脂を射出成形金型内に充填し、冷却後、前記射出成形金型を開いて基体シートを剥離することにより、透明基材の上面または下面の表面に加飾層を形成することを特徴とする。したがって、意匠性等に優れた磁気センサモジュール用加飾成形品を生産性よく製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る磁気センサモジュール用加飾成形品の一実施例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る磁気センサモジュール用加飾成形品の別の一実施例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る磁気センサモジュール用加飾成形品の製造方法の一実施例を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る磁気センサモジュールの一実施例を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る位置検出装置の一実施例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0012】
磁気センサモジュール用加飾成形品100は、上面中央部に入力媒体10の入力パネルとしての役割をする透明基材7と、透明基材7の側面付近に位置し入力媒体10に組み込まれた磁石12の磁界の強さを検知する磁気センサ16を設置するためのスペース200とが形成される。そして入力媒体10が接触される上面中央部は透明な窓部になっており、その上面外枠部に加飾層110が形成され、加飾層110は磁気センサ16を覆い隠す(図1参照)。
【0013】
加飾層110は、磁気センサ16を隠し外観意匠としての役割を果たす絵柄層140の他に、磁石12以外からくる磁界の強さ(例えば、地磁気など)から磁気センサ16を保護するための磁気シールド層130を設けてもよい。絵柄層140は、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。また、着色剤としてアルミニウム、チタン、ブロンズ等の金属粒子やマイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料等を用いることもできる。
【0014】
絵柄層140の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。絵柄層140は、厚さ0.2〜50μmに形成するとよい。絵柄層140の厚さが0.2μm未満になると遮光性が不足しがちになり、また絵柄層140の厚さが50μmを超えると生産性が低下するからである。
【0015】
磁気シールド層130としては、金属薄膜などからなる層が挙げられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成するとよい。金属薄膜の材質としては、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物を使用できる。磁気シールド層130の表面はシールド性が有効に確保できるよう膜厚20nm〜20μmの膜にすることが好ましい。磁気シールド層130の膜厚が20nm未満になるとポンホールや透けが多くなりがちになりシールド性が低下し、また磁気シールド層130の膜厚が20μmを超えれば、それ以上厚くしても効果が上がらず生産性が低下するだけだからである。
【0016】
透明基材7の材質は、ポリスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂のほか、各種エンジニアリング樹脂を使用することができる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂であってもよい。また、多少着色されていてもよい。透明基材7の形状や厚みは強度が維持できる範囲で、できるだけ薄い厚みに設定することが好ましい。そして、透明基材7の上面中央部の形状は磁石12の磁界の強さが伝わりやすくなるよう凹部形状にすることが好ましい(図2参照)。凹部形状にすることで、入力媒体10が透明基材7の上面中央部に接触する際、入力媒体10の磁石12と磁気センサ16の位置関係はほぼ真横となり、Z軸方向の距離はほとんどなくなり両者の距離が相対的に短くなるため、信頼性の高いセンシングが可能になるからである。
【0017】
また、透明基材7が入力媒体10のたび重なる接触によって傷つくのを保護するために、透明基材7の上面にはハードコート層を形成してもよい。ハードコート層の材質は、アクリル系やウレタン系の樹脂ポリマーと多官能イソシアネート、またはアクリレート系の活性エネルギー線硬化型樹脂と光開始重合剤の混合物、グリシジル(メタ)アクリレート系重合体などが挙げられる。ハードコート層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法がある。ハードコート層の膜厚は、0.5〜50μmの厚さに形成するが好ましい。ハードコート層の厚さが0.5μm未満になるとハードコート性・耐薬品性が不足しがちになり、またハードコート層の厚さが50μmを超えると生産性が低下するからである。
【0018】
磁気センサモジュール用加飾成形品100の製造方法としては、例えば次のような成形同時転写法が挙げられる(図3参照)。すなわち、まず基体シート150上に加飾層110やハードコート層を形成した転写シート160を作成し、該転写シート160を可動型と固定型とからなる射出成形金型80内に転写層を内側にして、つまり、基体シート150が固定型に接するようにセットして型締めする。その際、枚葉の転写シート160を1枚づつ送り込んでもよいし、長尺の転写シート160の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写シート160を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写シート160の絵柄層と射出成形金型80との見当が一致するようにするとよい。
【0019】
また、転写シート160を間欠的に送り込む際に、転写シート160の位置をセンサーで検出した後に転写シート160を可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写シート160を固定することができ、絵柄層の位置ずれが生じないので便利である。型締め後は、該転写シート160の加飾層110の形成面から溶融した透明射出成形樹脂70を射出成形金型80内に充填し、冷却後、前記射出成形金型80を開いて樹脂成形品を取り出し、基体シート150を剥離すれば基体シート150と加飾層110またはハードコート層との境界面で剥離が起こり、透明基材7の上面にハードコート層や加飾層110が形成され、磁気センサモジュール用加飾成形品100が得られる。
【0020】
基体シート150としては、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シートのほか、セルロース系シートや各種シートの複合体などを使用することができる。
【0021】
なお、転写シート160は、基体シート150上に加飾層110やハードコート層との界面から離型し基体シート150上に残る離型層を設けてもよい。離型層は、加飾層110やハードコート層120の表面の平滑性に影響を与えるため、算術平均粗さRa値が1〜20nmの平滑性に富む表面状態にすることが好ましい。離型層の材質は、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系樹脂、アルキド系樹脂などの樹脂が挙げられ、必要に応じて各種添加剤などを含有させてもよい。離型層3の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法のほか、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法を採用することもできる。
【0022】
また、転写シート160上に、前述したような接着層を設けたり、剥離層やアンカー層を設けてもよい。アンカー層は、各層間の密着性を高めたりするための樹脂層であり、二液硬化性ウレタン樹脂、メラミン系やエポキシ系などの熱硬化性樹脂のほか、絵柄層と同種のビニル系樹脂やアクリル系樹脂を用いることができる。アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法やスクリーン印刷法などの印刷法がある。接着層は、透明基材7表面に上記の各層を接着するものである。剥離層は、基体シート150または離型層から加飾層110やハードコート層が離型しにくい場合、それを補助する層である。
【0023】
接着層は、剥離層または絵柄層上の、接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面的なら、接着層を全面的に形成する。また、接着させたい部分が部分的なら、接着層を部分的に形成する。接着層としては、透明基材7の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、透明基材7の材質がアクリル系樹脂の場合はアクリル系樹脂を用いるとよい。また、透明基材7の材質がポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、透明基材7の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。なお、転写シート160の構成は、上記した態様に限定されるものではなく、たとえば、磁気シールド層130の地模様を生かした加飾層110とする場合には絵柄層140を省略してもよいし、磁気シールド層130を設けなくともセンシングに問題ない場合には磁気シールド層130を省略した加飾層110としてもよい。
【0024】
なお、磁気センサモジュール用加飾成形品100の製造方法は、上記の成形同時転写法に限定されるわけではない。例えば、転写シート160を加飾層110側が接するよう透明基材7の上面にセットし、シリコンラバーからなる熱ロールを備えた転写機を用いて基体シート150の背面から温度80〜260℃程度、圧力50〜200kg/m↑2程度の条件で押圧する方法により、加飾層110やハードコート層などを透明基材7の表面に形成してもよい。あるいは、基体シート150を剥離せずハードコートフィルムとして透明基材7の上面に残すようにしてもよい。あるいは、転写シート160等を一切作製せず、汎用の印刷方法やインクジェットなどの方法によって透明基材7の表面に直接、加飾層110やハードコート層などを形成してもよい。
【0025】
以上、上記製造方法によって製造された磁気センサモジュール用加飾成形品100のスペース200に磁界の強さを検知できる磁気センサ16を設置することにより磁気センサモジュール5が製造できる(図4参照)。
【0026】
つぎに、上記磁気センサモジュール5を用いた位置検出装置20について説明する。位置検出装置20は、上記磁気センサモジュール5と磁石12を内蔵した入力媒体10と、磁界の強さから前記入力媒体10の位置を算出する計算部18とからなる(図5参照)。磁気センサモジュール5の透明基材7の上面中央部に、入力媒体10が近づくと内蔵された磁石12から発生する磁界を磁気センサモジュール5に設置された磁気センサ16が検知し、その検知した磁界の強さとから方向から、入力媒体10の位置を決定するしくみになっている。
【0027】
すなわち、入力媒体10に内蔵された磁石12から発せられた磁界は磁気センサモジュール5に設置された磁気センサ16で検知され、その信号は瞬時に計算部18に送られ、計算部18は、その信号である磁界の強さとその方向から磁界が発せられた位置を瞬時に計算し、入力媒体10の位置が特定される。
【0028】
なお、磁界の強さは磁石12から磁気センサ16までの距離17の二乗から三乗に反比例するので、得られた磁界の強さの値は計算部18において平方根または三乗根した値に変換されて、磁石12から磁気センサ16までの距離17が特定される。その場合、磁気センサが一個であると、磁石12から磁気センサ16までの距離17が近すぎるとスケールアウトしたり、反対に遠すぎると検知しにくくなるため、かなり広範囲に渡って検知できる磁気センサ16が必要となる。したがって、それを補うために磁気センサ16は一個ではなく複数個設置し、しかも一定間隔で均等配置するのが好ましい。磁気センサ16が多数個あっても本発明の位置検出装置20は磁気センサ16が加飾層110で覆い隠されるので問題はない。
【0029】
磁気センサ16としては、透明基材7の側面に設置できるよう小型で省スペースのMR素子(磁気抵抗効果素子)やホール素子、磁気インピーダンス効果を利用した磁気検出素子などが挙げられる。その中でも、とくに磁気インピーダンス効果を利用した磁気検出素子は、検出感度が高くかつ検出範囲が広いため最も好ましい。磁気インピーダンス効果とは、磁性体にMHz帯域の高周波電流を流すと、磁性体の両端間のインピーダンスが外部磁界により変化して両端間の電圧の振幅が変化する現象であり、数ガウス程度の微小な外部磁界でも数十%も変化する特性がある。
【0030】
入力媒体10としてはタッチペンなどが挙げられるが、磁界を発生できることができるものであれば、いずれの媒体であっても構わない。磁石12としては、エネルギー積の高いNd−Fe−B系の焼結磁石が挙げられる。なお、以上の説明では平面上における磁石12の二次元的な位置の検出を求めることしか述べていないが、スペース200を立体的な位置に形成し磁気センサ16をそのスペース200に設置することで立体的に磁気センサ16を配置することも可能であり、それにより入力媒体10の位置を三次元的に求めることも可能である。
【実施例1】
【0031】
<転写シートの作製>
基体シートとして厚さ38μmのポリエステル樹脂フィルムを用い、基体シート上に、メラミン樹脂系離型剤をグラビア印刷法にて1μmの厚さに塗布し離型層を形成した。その上にアクリル系樹脂からなるUV硬化型ハードコート層をリバースコート法にて全面ベタ厚さ6μmで形成した。紫外線を照射してハードコート層を架橋硬化し、該ハードコート層上に、絵柄層としてビニル系樹脂、接着層としてアクリル系インキをグラビア印刷法にて形成し、その上に真空蒸着法により膜厚80nmのアルミニウムからなる磁気シールド層を形成して転写シートを得た。
【0032】
<磁気センサモジュール用加飾成形品の作製>
上記転写シートを用い、位置決め機構を有する送り装置を使用して、可動型と固定型とからなる射出成形金型内に転写層を内側になるようにセットして型締めした。型締め後、接着層形成面から溶融したアクリル系樹脂からなる透明射出成形樹脂を射出成形金型内に充填した。成形条件は、樹脂温度240℃、金型温度55℃、樹脂圧力約300kg/cm↑2とした。冷却後、前記射出成形金型を開いて樹脂成形品を取り出し、基体シートを剥離したところ、基体シートとハードコート層との境界面で剥離が起こり、センサモジュール用加飾成形品が得られた。得られた磁気センサモジュール用加飾成形品は、透明基材の上面中央部が凹部形状でハードコート層が形成されており、透明基材の上面外枠部は凸形状で絵柄層が形成されており、透明基材の下面外枠部には磁気センサを設置するためのスペースが四隅にそれぞれ形成されていた。
【0033】
<磁気センサを設置しての磁気センサモジュール用加飾成形品の評価結果>
上記の構成で得られた磁気センサモジュール用加飾成形品の透明基材の下面外枠部に形成されたスペースに磁気センサ四個を四隅に各々一個づつ設置し、磁気センサモジュールを得た。得られた磁気センサモジュールについて絵柄層が各磁気センサを覆い隠しているか否か、入力媒体用のタッチペンでもって勢いをつけて各磁気センサの方向に動かしたときに磁気センサが外れたり、破損したりすることがないかテストをした。その結果、磁気センサは全て絵柄層で覆い隠されており、磁気センサが外れたり破損したりすることも全くなかった。
【0034】
<位置検出装置としての評価結果>
(1)位置検知評価
上記磁気センサと外部計算部とを接続し、磁気センサで検知された信号を瞬時に計算部に送り、計算部での算出手段を磁界の強さとその方向から磁界が発せられた位置を瞬時に計算できるように設定して、位置検出装置を作製した。得られた位置検出装置の上面中央部に磁石のついたタッチペンをタッチし、タッチペンのタッチした位置が検知可能か否かテストした。テスト箇所は任意の20箇所を選び各3回ずつタッチし測定した。その結果、すべての箇所でタッチペンのタッチした位置を確認できた。
【0035】
(2)高温高湿環境下での耐久性評価
上記の構成で得た位置検出装置を60℃90RH%の高温高湿環境下に16時間置いた後、位置検出装置の透明基材上面中央部にタッチペンをタッチし、位置検知の動作確認を行った。その結果、高温環境下に置いた前後でほとんど動作特性に変化が見られなかった。
【実施例2】
【0036】
転写シートを一切作製せず、汎用のインクジェット装置を用いて予め成形された透明基材の表面に直接、加飾層を形成し、ハードコート層を形成しない他は、実施例1と同様にして磁気センサモジュール用加飾成形品を作製した。そして、実施例1と同様にして磁気センサモジュールおよび位置検出装置を作製した。この構成で得た磁気センサモジュール用加飾成形品および位置検出装置でも、磁気センサは全て絵柄層で覆い隠されており、磁気センサが外れたり破損したりすることも全くなく、位置検知、高温高湿環境下での耐久性評価についても良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、液晶パネルなどの映像画面を設けるような携帯電話やPDA、小型PC、などの入力デバイスに適用できる位置検出装置に適した磁気センサモジュール用加飾成形品の発明である。
【符号の説明】
【0038】
5 磁気センサモジュール
7 透明基材
10 入力媒体
12 透明基材7の上面と入力媒体10との接触部
16 磁気センサ
17 磁気センサ16と入力媒体10との距離
18 入力媒体10の位置を算出する計算部
20 位置検出装置
70 溶融した透明射出成形樹脂
80 射出成形金型
100 磁気センサモジュール用加飾成形品
110 加飾層
120 透明基材7の上面中央部の凹部
130 磁気シールド層
140 絵柄層
150 基体シート
160 転写シート
200 磁気センサ16を設置するためのスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の上面中央部が透明な窓部からなり、前記透明基材の上面外枠部又は下面外枠部に磁気センサを隠蔽するための加飾層が形成され、前記下面外枠部に磁気センサを設置することができるスペースが備えられた、磁気センサモジュール用加飾成形品。
【請求項2】
前記加飾層が磁気シールド層を含む、請求項1記載の磁気センサモジュール用加飾成形品。
【請求項3】
前記上面中央部が、凹部形状に凹んで形成されている、請求項1又は請求項2記載の磁気センサモジュール用加飾成形品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気センサモジュール用加飾成形品の製造方法であって、
基体シート上に加飾層を形成した転写シートを作成し、前記転写シートを射出成形金型内にセットして型締めし、前記転写シートの加飾層形成面から溶融した透明射出成形樹脂を射出成形金型内に充填し、冷却後、前記射出成形金型を開いて前期基体シートを剥離することにより、透明基材の上面又は下面の表面に前記加飾層を形成する、磁気センサモジュール用加飾成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁気センサモジュール用加飾成形品の下面外枠部に、磁界の強さを検知することができる磁気センサが設置された、磁気センサモジュール。
【請求項6】
請求項5記載の磁気センサモジュールと、磁石を内蔵した入力媒体と、磁界の強さから前記入力媒体の位置を算出する計算部とを備えた、位置検出装置。
【請求項7】
請求項5記載の磁気センサモジュールの上面中央部に、磁石を内蔵した入力媒体を近づけ、前記磁石から発生する磁界の強さを前記磁気センサモジュールの磁気センサで検知し、前記磁界の強さから前記入力媒体の位置を算出することにより、前記入力媒体の位置を決定する入力媒体の位置決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−256196(P2010−256196A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107277(P2009−107277)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】