説明

磁気センサ回路及びこれを用いた電子機器

【課題】本発明は、比較オフセット電圧の影響をキャンセルし、交番磁界検知の磁界検出レベルに対称性を持たせることが可能な磁気センサ回路を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る磁気センサ回路は、ホール素子10と;ホール素子10の検出状態を第1、第2切替状態のいずれかに切り替える切替スイッチ回路20と;磁電変換素子10の検出電圧と所定の基準電圧を用いて比較処理を行い、比較結果信号COUTを生成する比較ユニット60と;出力信号OUTと比較結果信号COUTに基づいて、出力信号OUTの論理を維持または反転するための論理演算信号LOUTを生成する論理回路80と;論理演算信号LOUTをラッチして出力信号OUTを出力するラッチ回路70と;出力信号OUTに基づいて、ホール素子10の検出状態を切り替える順序(第1→第2、若しくは、第2→第1)を決定する制御回路90と;を有して成る構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁電変換素子(ホール素子や磁気抵抗素子など)を用いて、これが設置された場所の磁界を検知し、その極性(S極/N極)に応じた論理の出力信号を生成する交番磁界検知タイプの磁気センサ回路、及び、これを用いた電子機器(例えば、回転検知装置や、回転検知機能を備えたブラシレスモータドライバIC)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気センサ回路は、一般に、磁界の強さに比例した出力電圧を出力するホール素子と、ホール素子の出力電圧を増幅する増幅器と、増幅器の出力電圧を所定の基準電圧と比較して比較結果を出力する比較器と、を備えて成り、磁気センサ回路が設置された場所の磁界が一定の基準より強いか弱いかに応じて、2値(ハイレベルまたはローレベル)の信号を出力するようになっている。
【0003】
磁界の強さに応じた正確な比較結果を得るためには、増幅器から出力される信号に含まれるオフセット信号成分を抑制して、増幅器から出力される信号のばらつきを小さく抑える必要がある。そのオフセット信号成分が生じる主要な要因は、ホール素子の出力電圧に含まれるオフセット信号成分(以下「素子オフセット電圧」と呼ぶ。)と、増幅器の入力端子において存在するオフセット信号成分(以下「入力オフセット電圧」と呼ぶ。)である。素子オフセット電圧は、主に、ホール素子本体がパッケージから受ける応力等によって発生する。また、増幅オフセット電圧は、主に、増幅器の入力段を構成する素子の特性のばらつき等によって発生する。
【0004】
それらオフセット電圧による影響を低減する磁界センサが、特許文献1に開示されている。すなわち、磁界センサに用いられるホール素子は、一般に、図14に示すホール素子1のように、4つの端子A・C・B・Dに関して、幾何学的に等価な形状の板状に形成されている。ここで、幾何学的に等価な形状とは、同図に示した四角形のホール素子1のように、同図に示す状態での形状と、これを90度回転させた状態(A−Cが、B−Dに一致するように回転した状態)での形状が同一であることを意味する。このようなホール素子1の端子A・C間に電源電圧を印加したときに端子B・D間に生じる電圧と、端子B・D間に電源電圧を印加したときに端子A・C間に生じる電圧とでは、磁界の強さに応じた有効信号成分は同相で、素子オフセット電圧は逆相となる。
【0005】
まず、第1のタイミングでは、スイッチ回路2を介して、ホール素子1の端子A・C間に電源電圧が印加されるとともに、端子B・D間の電圧が電圧増幅器3に入力される。そこで、電圧増幅器3からは、端子B・D間の電圧と電圧増幅器3の入力オフセット電圧との和に比例した電圧V1が出力される。また、この第1のタイミングでは、スイッチ5が閉じることにより、キャパシタ4がその電圧V1に充電される。
【0006】
次に、第2のタイミングでは、スイッチ回路2を介して、ホール素子1の端子B・D間に電源電圧が印加されるとともに、第1のタイミングとは逆極性となるように端子C・A間の電圧が電圧増幅器3に入力される。そこで、電圧増幅器3からは、端子C・A間の電圧と電圧増幅器3の入力オフセット電圧との和に比例した電圧V2が出力される。
【0007】
入力オフセット電圧の影響は、入力電圧の極性に係らず、第1のタイミングと同じなので、電圧増幅器3の出力電圧V2は、第1のタイミングとは逆極性の端子C・A間の電圧と入力オフセット電圧との和に比例した電圧となる。
【0008】
また、この第2のタイミングでは、スイッチ5が開き、出力端子6・7の間で、電圧増幅器3の反転出力端子3aおよび非反転出力端子3bとキャパシタ4とが直列に接続された状態となる。このとき、キャパシタ4の充電電圧は、第1のタイミングでの電圧増幅器3の出力電圧V1に保持されたまま変化しない。出力端子6・7間の電圧(磁界センサの出力電圧)Vは、電圧増幅器3の反転出力端子3aを基準としたときの非反転出力端子3bの電圧V2と、キャパシタ4の端子4bを基準としたときの端子4aの電圧−V1との和、すなわち、電圧V2から電圧V1を減じたものとなる。したがって、入力オフセット電圧の影響を相殺した電圧Vが磁界センサの出力電圧として得られる。
【0009】
また、素子オフセット電圧による影響を低減するとともに、増幅器において生じる入力オフセット電圧による影響をも低減し得る磁界センサとしては、特許文献2に開示されたものが知られている。この磁界センサは、ホール素子、スイッチ回路、電圧電流変換増幅器、記憶素子としてのキャパシタ、スイッチ、および抵抗により構成されている。
【0010】
また、上記に関連する従来技術の他の一例として、特許文献3には、素子オフセット電圧による影響を低減するとともに、増幅器において生じる入力オフセット電圧による影響をも低減し得る磁気センサ回路が本願出願人によって開示・提案されている。
【特許文献1】特許第3315397号明細書
【特許文献2】特開平8−201491号公報
【特許文献3】国際公開第2006/085503号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
確かに、上記の従来技術によれば、素子オフセット電圧や入力オフセット電圧をキャンセルし、磁界の強度を精度良く測定することが可能である。
【0012】
なお、上記の従来技術は、検知された磁界の強弱に応じて、出力信号の論理を変遷するスイッチタイプの磁気センサ回路(主に磁石の位置検出用)に関するものであったが、磁気センサ回路としては、上記のスイッチタイプ以外にも、検知された磁界の極性(S極/N極)に応じて、出力信号の論理を変遷する交番磁界検知タイプの磁気センサ回路(主に回転検出用)が存在する。
【0013】
このような交番磁界検知タイプの磁気センサ回路は、図15で示すように、磁気センサ回路の出力信号OUTの論理値(延いては、次にS極信号を検出すべき状態であるのか、それとも、N極信号を検出すべき状態であるのか)に応じて、比較器6の各入力端間に印加する基準電圧VREF(第1基準電圧Vref1と第2基準電圧Vref2との差分)の極性を切り替えることにより、交番磁界検知の検出磁界レベルを決定する構成(すなわち、出力信号OUTを基準電圧生成回路5の選択信号として用いる構成)とされていた。
【0014】
しかしながら、上記従来の磁気センサ回路では、比較器6の入力段に存在するオフセット信号成分(以下では「比較オフセット電圧」と呼ぶ)の影響により、S極信号を検出するための検出磁界レベル、及び、N極信号を検出するための検出磁界レベルに対して、それぞれ、比較オフセット電圧に応じたずれが生じていた。
【0015】
より具体的に述べると、比較器6の非反転入力端(+)と反転入力端(−)との間に、比較オフセット電圧が存在する場合、S極信号を検出するための検出磁界レベルは、比較オフセット電圧に相当する分だけ低くなり(或いは高くなり)、逆に、N極信号を検出するための検出磁界レベルは、比較オフセット電圧に相当する分だけ高くなる(或いは低くなる)。すなわち、両者の差し引きを考えると、交番磁界検知の検出磁界レベルには、比較オフセット電圧の2倍に相当するずれが生じる形となる。
【0016】
その結果、上記従来の磁気センサ回路では、図16(a)、及び、図16(b)で示すように、S極とN極の検出磁界レベル(図中ではBop、Brpと表記)がS極側(或いはN極側)にずれてしまい、S極とN極の検出磁界レベルの対称性が損なわれていた。
【0017】
このように、S極とN極の検出磁界レベルの対称性が損なわれた磁気センサ回路を用いて回転検出を行うと、出力パルスのデューティ比が理想値(50%)とならないため、ユーザにとっては非常に使い勝手が悪かった。特に、検知対象となる磁石の磁力が弱い場合には、上記した比較オフセット電圧の影響が大きくなるため、上記の課題を解決することが非常に重要となっていた。
【0018】
本発明は、上記の問題点に鑑み、比較オフセット電圧の影響をキャンセルし、交番磁界検知の磁界検出レベルに対称性を持たせることが可能な磁気センサ回路、及び、これを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁気センサ回路は、検知された磁界の極性に応じた論理の出力信号を生成する磁気センサ回路であって、磁電変換素子と;前記磁電変換素子の検出状態を第1、第2切替状態のいずれか一に切り替える切替スイッチ回路と;前記磁電変換素子の検出電圧と所定の基準電圧を用いて所定の比較処理を行い、その結果に応じた比較結果信号を生成する比較ユニットと;前記出力信号と前記比較結果信号に基づいて、前記出力信号の論理を維持または反転するための論理演算信号を生成する論理回路と;前記論理演算信号をラッチし、これを前記出力信号として出力するラッチ回路と;前記出力信号に基づいて、前記第1切替状態から前記第2切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うか、或いは、前記第2切替状態から前記第1切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うかを決定する制御回路と;を有して成る構成(第1の構成)とされている。
【0020】
具体的に述べると、本発明に係る磁気センサ回路は、検知された磁界の極性に応じた論理の出力信号を生成する磁気センサ回路であって、印加される磁気に応じた出力電圧を第1端子対、若しくは、第2端子対に発生する磁電変換素子と;前記第1端子対に電源電圧を印加し、前記第2端子対に発生する電圧を第1出力端と第2出力端との間に出力する第1切替状態と、前記第2端子対に電源電圧を印加し、前記第1端子対に発生する電圧を前記第1出力端と前記第2出力端との間に出力する第2切替状態と、を有するように切り替えられる切替スイッチ回路と;前記第1出力端から印加される電圧を増幅して第1増幅電圧を生成し、これを第1増幅出力端から出力するとともに、前記第2出力端から印加される電圧を増幅して第2増幅電圧を生成し、これを第2増幅出力端から出力する増幅ユニットと;第1比較入力端に入力される第1比較電圧と、第2比較入力端に入力される第2比較電圧とを比較し、その結果に応じた比較結果信号を生成する比較ユニットと;前記第1増幅出力端と前記第1比較入力端との間に設けられた第1キャパシタと;前記第2増幅出力端と前記第2比較入力端との間に設けられた第2キャパシタと;前記切替スイッチ回路が前記第1切替状態であるときに、前記第1比較入力端に対して第1基準電圧を印加するための第1スイッチ回路と;前記切替スイッチ回路が前記第1切替状態であるときに、前記第2比較入力端に対して第2基準電圧を印加するための第2スイッチ回路と;前記出力信号と前記比較結果信号に基づいて、前記出力信号の論理を維持または反転するための論理演算信号を生成する論理回路と;前記論理演算信号をラッチし、これを前記出力信号として出力するラッチ回路と;前記出力信号に基づいて、前記第1切替状態から前記第2切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うか、或いは、前記第2切替状態から前記第1切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うかを決定する制御回路と;を有して成る構成(第2の構成)とされている。
【0021】
なお、上記第2の構成から成る磁気センサ回路において、前記制御回路は、前記増幅ユニット及び前記比較ユニットの少なくとも一方に対して、間欠的な電源供給制御を行う構成(第3の構成)にするとよい。
【0022】
また、本発明に係る電子機器は、ターゲットと、上記第1〜第3いずれかの構成から成る磁気センサ回路と、前記磁気センサ回路の出力信号に基づいて前記ターゲットの運動を解析する解析回路と、を有して成る電子機器であって、前記ターゲットは、S極の磁区とN極の磁区を複数有する磁石を備えて成り、その運動に伴って、前記磁気センサ回路に交番磁界を印加する構成(第4の構成)とされている。
【0023】
なお、上記第4の構成から成る電子機器において、前記解析回路は、前記磁気センサ回路で得られる出力信号のパルス数をカウントすることで、前記ターゲットの位置または運動量を検知する構成(第5の構成)にするとよい。
【0024】
また、上記第4または第5の構成から成る電子機器において、前記磁気センサ回路は、前記ターゲットの運動方向に沿って複数設けられており、前記解析回路は、各磁気センサ回路で得られる出力信号を比較することで前記ターゲットの運動方向を検知する構成(第6の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、比較オフセット電圧の影響をキャンセルし、交番磁界検知の磁界検出レベルに対称性を持たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る磁気センサ回路の実施形態について、図を参照して説明する。本発明に係る磁気センサ回路は、折り畳み型携帯電話機の開閉検知センサや、モータの回転位置検知センサ、或いは、ダイヤルの回転操作検知センサなど、磁気の状態(磁界の強さ)や磁界の極性を検知するセンサとして広い用途に使用される。その磁気センサ素子としては、印加される磁界の変化に応じて電気的特性が変化され、その変化に応じた出力電圧を取り出し得るものであれば良く、ホール素子や、磁気抵抗素子などの磁電変換素子が使用できる。以下の実施例では、ホール素子を用いた磁気センサ回路(いわゆるホールIC)について説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る磁気センサ回路の一実施形態を示す図である。図1において、ホール素子10は、4つの端子A・C・B・Dに関して、幾何学的に等価な形状の板状に形成されている。
【0028】
このようなホール素子10の第1端子対A−Cに電源電圧VDDを印加したときに第2端子対B−Dに生じるホール電圧と、第2端子対B−D間に電源電圧VDDを印加したときに第1端子対C−Aに生じるホール電圧と、を比較した場合、ホール素子10に印加される磁界の強さに応じた有効信号成分は同相で、素子オフセット成分(素子オフセット電圧)は逆相となる。
【0029】
切替スイッチ回路20は、ホール素子10への電源電圧VDDの印加方法と、ホール素子10からのホール電圧の取り出し方法を切り替える手段である。
【0030】
より具体的に述べると、切替スイッチ回路20は、第1切替信号CTL1の論理に応じてオン/オフ制御されるスイッチ21、23、25、27と、第2切替信号CTL2の論理に応じてオン/オフ制御されるスイッチ22、24、26、28と、を有している。なお、本実施形態において、スイッチ21、23、25、27は、第1切替信号CTL1がハイレベルのときにオンとなり、ローレベルのときにオフとなる。また、スイッチ22、24、25、27は、第2切替信号CTL2がハイレベルのときにオンとなり、ローレベルのときにオフとなる。ただし、上記の信号論理に関しては、あくまで例示であり、上記とは逆の論理で実施されても構わない。
【0031】
第1、第2切替信号CTL1、CTL2は、互いの論理が一致しないように、かつ、電源オン信号POWがハイレベルとされる期間(磁気センサ回路のセンシング期間に相当)の前半部分(若しくは後半部分)で第1切替信号CTL1がハイレベルとされ、後半部分(若しくは前半部分)で第2切替信号CTL2がハイレベルとされるものである。なお、電源オン信号POWは、間欠的に、例えば一定周期毎に所定期間だけハイレベルとされるものである。ただし、上記の信号論理に関しては、あくまで例示であり、上記とは逆の論理としても構わない。
【0032】
第1切替信号CTL1がハイレベルとされ、第2切替信号CTL2がローレベルとされる第1切替状態では、端子Aに電源電圧VDDが印加され、端子Cがグランドに接続される形となり、端子Bと端子Dとの間には、磁界の強さに応じたホール電圧が発生する。このとき、端子Bと端子Dとの間に発生する電圧は、印加される磁界の極性(磁界の方向)によって変動するが、ここでは、端子Bの電圧Vbが低く、端子Dの電圧Vdが高い場合を想定する。なお、電圧は、特に断らない限り、グランドに対する電位を表す。
【0033】
一方、第1切替信号CTL1がローレベルとされ、第2切替信号CTL2がハイレベルとされる第2切替状態では、端子Bに電源電圧VDDが印加され、端子Dがグランドに接続される形となり、端子Cと端子Aとの間には、磁界の強さに応じたホール電圧が発生する。ここで、第1切替状態から第2切替状態への状態遷移が高速度に行われた結果、第2切替状態においても、第1切替状態と同じ極性(方向)の磁界が印加されていると想定した場合、端子Cと端子Aとの間に発生する電圧は、端子Cの電圧Vcが低く、端子Aの電圧Vaが高くなる。
【0034】
これにより、切替スイッチ回路20の第1出力端iの電圧は、第1切替状態では電圧Vbであり、第2切替状態では電圧Vaである。一方、切替スイッチ回路20の第2出力端iiの電圧は、第1切替状態では電圧Vdであり、第2切替状態では電圧Vcである。
【0035】
増幅ユニット30は、切替スイッチ回路20の第1出力端iに接続される第1増幅回路31と、切替スイッチ回路20の第2出力端iiに接続される第2増幅回路32と、を有して成る。
【0036】
第1増幅回路31は、第1出力端iからの入力電圧(電圧Vbないし電圧Va)を所定の増幅度αで増幅し、第1増幅出力端iiiから第1増幅電圧AOUT1として出力する手段である。なお、第1増幅回路31には、入力オフセット電圧Voffa1が存在するため、第1増幅回路31では、上記の入力電圧(電圧Vbないし電圧Va)に、その入力オフセット電圧Voffa1が加算された上で、所定の増幅処理が行われることになる。
【0037】
第2増幅回路32は、第2出力端iiからの入力電圧(電圧Vdないし電圧Vc)を所定の増幅度αで増幅し、第2増幅出力端ivから第2増幅電圧AOUT2として出力する手段である。なお、第2増幅回路32にも、入力オフセット電圧Voffa2が存在するため、第2増幅回路32では、上記の入力電圧(電圧Vdないし電圧Vc)に、その入力オフセット電圧Voffa2が加算された上で、所定の増幅処理が行われることになる。
【0038】
上記の増幅ユニット30を構成する第1、第2増幅回路31、32には、それぞれスイッチ回路34及びスイッチ回路35を介して、電源電圧VDDが印加されている。なお、スイッチ回路34及びスイッチ回路35は、いずれも電源オン信号POWの論理に応じてオン/オフ制御されるものであり、本実施形態においては、電源オン信号POWがハイレベルのときにオンとされ、ローレベルのときにオフとされる。
【0039】
従って、増幅ユニット30は、電源オン信号POWのハイレベル遷移に応じて、間欠的に、例えば一定周期毎に所定期間だけ駆動される。また、第1、第2増幅回路31、32が電流駆動型のものであるときには、スイッチ回路34及びスイッチ回路35として、スイッチ機能付きの電流源回路を用いればよい。
【0040】
第1キャパシタ41は、増幅ユニット30の第1増幅出力端iiiと、比較ユニット60の第1比較入力端v(非反転入力端(+))との間に接続されている。また、第2キャパシタ42は、増幅ユニット30の第2増幅出力端ivと、比較ユニット60の第2比較入力端vi(反転入力端(−))との間に接続されている。
【0041】
基準電圧生成回路50は、第1基準電圧Vref1と、これよりも所定値VREFだけ高い第2基準電圧Vref2を生成する手段である。なお、基準電圧生成回路50の具体的な構成については、後ほど詳細な説明を行う。
【0042】
比較ユニット60の第1比較入力端vには、第1スイッチ回路51を介して、第1基準電圧Vref1が供給され、第2比較入力端viには、第2スイッチ回路52を介して、第2基準電圧Vref2が供給される。第1、第2スイッチ回路51、52は、いずれも第3切替信号CTL3の論理に応じてオン/オフ制御されるものであり、本実施形態においては、第3切替信号CTL3がハイレベルのときにオンとされ、ローレベルのときにオフとされる。ただし、上記の信号論理に関しては、あくまで例示であり、上記とは逆の論理で実施されても構わない。
【0043】
比較ユニット60は、第1比較入力端vに入力される第1比較電圧INC1と、第2比較入力端viに入力される第2比較電圧INC2とを比較し、第1比較電圧INC1が第2比較電圧INC2よりも高いときには、比較結果信号COUTの論理をハイレベルとする一方、第1比較電圧INC1が第2比較電圧INC2よりも低いときには、比較結果信号COUTの論理をローレベルとする手段である。なお、比較ユニット60は、極めて高い入力インピーダンスを持つように構成されている。例えば、その入力段はMOSトランジスタ回路で構成される。このように、本実施形態の磁気センサ回路は、比較ユニット60を備えているので、電源電圧VDDのリップルやノイズの影響を受けにくくなり、安定したセンシング動作が可能となる。
【0044】
上記の比較ユニット60には、スイッチ回路61を介して、電源電圧VDDが印加されている。なお、スイッチ回路61は、電源オン信号POWの論理に応じてオン/オフ制御されるものであり、本実施形態においては、電源オン信号POWがハイレベルのときにオンとされ、ローレベルのときにオフとされる。
【0045】
従って、比較ユニット60は、電源オン信号POWのハイレベル遷移(延いては、反転電源オン信号(/POW)のローレベル遷移)に応じて、間欠的に、例えば一定周期毎に所定期間だけ駆動される。なお、比較ユニット60が電流駆動型のものであるときには、スイッチ回路61として、スイッチ機能付きの電流源回路を用いればよい。
【0046】
また、比較ユニット60の出力端は、スイッチ回路62を介して、接地端に接続されている。なお、スイッチ回路62は、反転電源オン信号(/POW)の論理に応じてオン/オフ制御されるものであり、本実施形態においては、反転電源オン信号(/POW)がハイレベルのときにオンとされ、ローレベルのときにオフとされる。これにより、比較ユニット60への電源供給が遮断されている場合には、比較結果信号COUTが強制的にローレベルとされるので、後段の論理回路80で生成される論理演算信号LOUT(延いては出力信号OUT)に意図しない論理変遷が生じることを防止することができる。
【0047】
ラッチ回路70は、論理回路80で得られた論理演算信号LOUTをクロック信号CLK_SHのエッジタイミングでラッチし、これを出力信号OUTとして出力する手段である。なお、ラッチ回路70としては、D型フリップフロップが好適である。
【0048】
論理回路80は、比較結果信号COUTと出力信号OUTに基づいて、論理演算信号LOUTを生成する手段である。なお、論理回路80の具体的な構成及び動作については、後ほど詳細な説明を行う。
【0049】
制御回路90は、基準クロック信号OSC(図1では不図示)に基づいて、電源オン信号POW、反転電源オン信号(/POW)、クロック信号CLK_SH、及び、第3切替信号CTL3を生成するほか、さらに出力信号OUTの入力を受けて、第1切替信号CTL1、及び、第2切替信号CTL2を生成する手段である。なお、制御回路90の具体的な構成及び動作については、後ほど詳細な説明を行う。
【0050】
図2は、増幅ユニットの第1の構成例を示す図である。この図2の増幅ユニット30Aは、第1増幅回路31Aと第2増幅回路32Aを有している。
【0051】
第1増幅回路31Aにおいて、演算増幅器31−1の非反転入力端(+)は、切替スイッチ回路20の第1出力端iに接続されている。演算増幅器31−1の反転入力端(−)と第1増幅出力端iiiとの間には、帰還抵抗31−2が接続されている。演算増幅器31−1の反転入力端(−)と基準電圧Vref0の印加端との間には、帰還抵抗31−3が接続されている。
【0052】
上記構成から成る第1増幅回路31Aは、切替スイッチ回路20の第1出力端iから入力される電圧(電圧Vbないし電圧Va)を所定の増幅度αで増幅し、第1増幅電圧AOUT1として、第1増幅出力端iiiから出力する。
【0053】
一方、第2増幅回路32Aにおいて、演算増幅器32−1の非反転入力端(+)は、切替スイッチ回路20の第2出力端iiに接続されている。演算増幅器32−1の反転入力端(−)と第2増幅出力端ivとの間には、帰還抵抗32−2が接続されている。演算増幅器32−1の反転入力端(−)と基準電圧Vref0の印加端との間には、帰還抵抗32−3が接続されている。
【0054】
上記構成から成る第2増幅回路32Aは、切替スイッチ回路20の第2出力端iiから入力される電圧(電圧Vdないし電圧Vc)を所定の増幅度αで増幅し、第2増幅電圧AOUT2として、第2増幅出力端ivから出力する。
【0055】
なお、図2の増幅ユニット30Aにおいて、帰還抵抗31−2、32−2の抵抗値をR2、帰還抵抗31−3、32−3の抵抗値をR1とすると、増幅度αは、約R2/R1である。ただし、R2≫R1とする。
【0056】
図3は、増幅ユニットの第2の構成例を示す図である。この図3の増幅ユニット30Bは、第1増幅回路31Bと、第2増幅回路32Bを有している。
【0057】
第1増幅回路31Bにおいて、演算増幅器31−1の非反転入力端(+)は、切替スイッチ回路20の第1出力端iに接続されている。演算増幅器31−1の反転入力端(−)と第1増幅出力端iiiとの間には、第1帰還抵抗31−2が接続されている。
【0058】
一方、第2増幅回路32Bにおいて、演算増幅器32−1の非反転入力端(+)は、切替スイッチ回路20の第2出力端iiに接続されている。演算増幅器32−1の反転入力端(−)と第2増幅出力端ivとの間には、第2帰還抵抗32−2が接続されている。
【0059】
また、第1演算増幅器31−1の反転入力端(−)と第2演算増幅器32−1の反転入力端(−)との間には、第3帰還抵抗33が接続されている。
【0060】
このように、増幅ユニット30Bは、第1増幅回路31Bと第2増幅回路32Bとで、第3帰還抵抗33を共有する形式、すなわち平衡入力−平衡出力形式の増幅回路である。増幅ユニット30Bでは、図2の増幅ユニット30Aに比べて、帰還抵抗の数を削減することが可能となるほか、第1、第2増幅回路31B、32Bの基準電圧は、その回路内で自動的に設定されることになるので、基準電圧の設定が不要となる。
【0061】
また、増幅ユニット30Bでは、特有の構成を用いた平衡入力−平衡出力型とすることにより、電圧増幅利得を大きく採ることができる。すなわち、第1、第2帰還抵抗31−2、32−2の抵抗値をR2、第3帰還抵抗33の抵抗値をR1とすると、増幅度αは、約2×R2/R1となる。ただし、R2≫R1とする。このように、増幅度αが2倍になるので、回路設計を容易に行うことが可能となり、また、感度の低いホール素子も使いこなしやすくなる。なお、図2、図3では明示されていないが、増幅ユニット30A、30Bの駆動に必要な電源電圧VDDは、図1と同様、スイッチ回路34、35を介して、各々の増幅回路に供給される構成にするとよい。
【0062】
次に、基準電圧生成回路50の構成及び動作について、図4を参照しながら説明する。
【0063】
図4は、基準電圧生成回路50の一構成例を示す図である。
【0064】
図4に示すように、基準電圧生成回路50は、電源電圧VDDを分圧抵抗器50−1〜50−3で分圧することにより、第1基準電圧Vref1と第2基準電圧Vref2を生成する。これらの基準電圧は、分圧抵抗器50−1〜50−3の電源電圧VDD側に接続されたP型MOSトランジスタ50−4と、グランド側に接続されたN型MOSトランジスタ50−5がオンとされているときに生成される。このMOSトランジスタ50−4、50−5は、インバータ50−6ないしインバータ50−7を介する形で、第3切替信号CTL3の論理に応じてオン/オフ制御される。なお、第3切替信号CTL3に代えて、電源オン信号POWの論理に応じて、MOSトランジスタ50−4、50−5のオン/オフ制御を行うようにしてもよい。
【0065】
次に、論理回路80の構成及び動作について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0066】
図5は、論理回路80の一構成例を示す図である。また、図6は、論理回路80の入出力論理を示す論理値表である。
【0067】
図5に示す通り、論理回路80は、インバータ81及びインバータ82と、論理積演算器83及び論理積演算器84と、論理和演算器85と、を有して成る。
【0068】
インバータ81の入力端は、出力信号OUTの印加端に接続されている。インバータ82の入力端は、比較結果信号COUTの印加端に接続されている。論理積演算器83の一入力端は、インバータ81の出力端に接続されている。論理積演算器83の他入力端は、比較結果信号COUTの印加端に接続されている。論理積演算器84の一入力端は、出力信号OUTの印加端に接続されている。論理積演算器84の他入力端は、インバータ82の出力端に接続されている。論理和演算器85の一入力端は、論理積演算器83の出力端に接続されている。論理和演算器85の他入力端は、論理積演算器84の出力端に接続されている。論理和演算器85の出力端は、論理演算信号LOUTの引出端として、ラッチ回路70のデータ入力端(図5では不図示)に接続されている。
【0069】
上記構成から成る論理回路80において、出力信号OUTと比較結果信号COUTが共にローレベルである場合、論理演算信号LOUTはローレベルとされる。出力信号OUTがローレベルで、比較結果信号COUTがハイレベルである場合、論理演算信号LOUTはハイレベルとされる。出力信号OUTがハイレベルで、比較結果信号COUTがローレベルである場合、論理演算信号LOUTはハイレベルとされる。出力信号OUTと比較結果信号が共にハイレベルである場合、論理演算信号LOUTはローレベルとされる。
【0070】
次に、制御回路90の構成及び動作について、図7及び図8を参照しながら、詳細な説明を行う。
【0071】
図7は、制御回路90の一構成例を示す図である。また、図8は、本発明に係る磁気センサ回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【0072】
図7に示すように、本構成例の制御回路90は、発振器91と、スタートパルス信号生成回路92と、シフトレジスタ93と、論理和演算器94と、インバータ95及びインバータ96と、切替信号生成回路97と、を有して成る。
【0073】
発振器91は、基準クロック信号OSC(図8を参照)を生成する手段である。
【0074】
スタートパルス生成回路92は、基準クロック信号OSCのパルス数が所定値(例えば32)に達する毎に1つのパルスを生成し、これをスタートパルス信号SIG(図8を参照)として出力する手段である。
【0075】
シフトレジスタ93は、基準クロック信号OSCとスタートパルス信号SIGの入力を受け、基準クロック信号OSCの1パルス毎に、スタートパルス信号SIGをシフトさせながら順次取り込んでいき、初段のレジスタデータ及び2段目のレジスタデータをそれぞれ第1タイミング信号S1及び第2タイミング信号S2として出力する手段である。すなわち、図8で示すように、スタートパルス信号SIGにパルスが生じると、基準クロック信号OSCに同期して、まず、第1タイミング信号S1にパルスが生じ、次いで第2タイミング信号S2にパルスが生じる。
【0076】
論理和演算器94は、第1タイミング信号S1と第2タイミング信号S2の論理和演算を行い、電源オン信号POW(図8を参照)を生成する手段である。
【0077】
インバータ95は、電源オン信号POWの論理を反転させることで、反転電源オン信号(/POW)(図8では省略)を生成する手段である。
【0078】
インバータ96は、第2タイミング信号S2の論理を反転させることで、クロック信号CLK_SH(図8を参照)を生成する手段である。
【0079】
切替信号生成回路97は、第1タイミング信号S1及び第2タイミング信号S2と、出力信号OUTの入力を受けて、第1切替信号CTL1、第2切替信号CTL2、及び、第3切替信号CTL3を生成する手段であり、論理積演算器97−1〜97−4と、論理和演算器97−5及び論理和演算器97−6と、インバータ97−7と、を有して成る。
【0080】
論理積演算器97−1の一入力端は、第1タイミング信号S1の印加端に接続されている。論理積演算器97−1の他入力端は、出力信号OUTの印加端に接続されている。論理積演算器97−2の一入力端は、第2タイミング信号S2の印加端に接続されている。論理積演算器97−2の他入力端は、出力信号OUTの印加端に接続されている。論理積演算器97−3の一入力端は、第2タイミング信号S2の印加端の接続されている。論理積演算器97−3の他入力端は、インバータ97−7の出力端に接続されている。論理積演算器97−4の一入力端は、第1タイミング信号S1の印加端に接続されている。論理積演算器97−4の他入力端は、インバータ97−7の出力端に接続されている。論理和演算器97−5の一入力端は、論理積演算器97−1の出力端に接続されている。論理和演算器97−5の他入力端は、論理積演算器97−2の出力端に接続されている。論理和演算器97−5の出力端は、第1切替信号CTL1の引出端として、切替スイッチ回路20(図7では不図示)に接続されている。論理和演算器97−6の一入力端は、論理積演算器97−3の出力端に接続されている。論理和演算器97−6の他入力端は、論理積演算器97−4の出力端に接続されている。論理和演算器97−6の出力端は、第2切替信号CTL2の引出端として、切替スイッチ回路20(図7で不図示)に接続されている。インバータ97−7の入力端は、出力信号OUTの印加端に接続されている。
【0081】
上記構成から成る切替信号生成回路97は、論理和演算器97−5で得られる論理和演算信号を第1切替信号CTL1として出力するとともに、論理和演算器97−6で得られる論理和演算信号を第2切替信号CTL2として出力する。
【0082】
従って、図8の(1)及び(4)で示すように、出力信号OUTがハイレベル(すなわち、N極信号の検出後、次にS極信号を検出すべき状態)である場合には、S極信号を増幅するべく、まず、第1切替信号CTL1にパルスが生じ、次いで第2切替信号CTL2にパルスが生じる形となる。言い換えると、出力信号OUTがハイレベルである場合、切替スイッチ回路20では、第1切替状態から第2切替状態という順序で、スイッチ21〜28の切り替え制御が行われることになる。
【0083】
一方、図8の(2)及び(3)で示すように、出力信号OUTがローレベル(すなわちS極信号の検出後、次にN極信号を検出すべき状態)である場合には、N極信号を増幅するべく、まず、第2切替信号CTL2にパルスが生じ、次いで第1切替信号CTL1にパルスが生じる形となる。言い換えると、出力信号OUTがローレベルである場合、切替スイッチ回路20では、第2切替状態から第1切替状態という順序で、スイッチ21〜28の切り替え制御が行われることになる。
【0084】
また、切替信号生成回路97は、第1タイミング信号S1を第3切替信号CTL3としてそのまま出力する構成であり、第1タイミング信号S1の印加端は、第3切替信号CTL3の引出端として、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52(図7ではいずれも不図示)に接続されている。
【0085】
次に、上記構成から成る磁気センサ回路の動作について、図8のタイミングチャートを引き続いて参照しながら詳細な説明を行う。
【0086】
まず、電源オン信号POWが間欠的にハイレベルとされることで、磁気センサ回路の各部(具体的には、増幅ユニット30や比較ユニット60などの主要ユニット)には、間欠的に電源電圧VDDが供給されて、その検出動作が可能となる。このような間欠電源制御と出力信号OUTのラッチ制御とを結合させることにより、磁気センサ回路の検出動作に支障を来すことなく、これを搭載する電子機器(例えば電池駆動の携帯電話機)の電力消費を著しく低減することが可能となる。なお、電源オン信号POWをハイレベルとする周期や電源オン信号POWのハイレベル期間については、磁気センサ回路が適用される用途に応じて、適切な時間長に設定すればよい。なお、磁気センサ回路は、間欠的に動作させるのではなく、連続的に動作させる構成としてもよい。
【0087】
さて、図8の(1)及び(4)で示すように、出力信号OUTがハイレベルである場合(すなわち、N極信号の検出後、次にS極信号を検出すべき状態)には、基準クロック信号OSCの立上がりエッジに同期して、まず、第1切替信号CTL1及び第3切替信号CTL3がハイレベルとされる。第1切替信号CTL1がハイレベルとされたことにより、切替スイッチ回路20は、第1切替状態になる。また、第3切替信号CTL3がハイレベルとされたことにより、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52はオンとなる。
【0088】
第1切替信号CTL1のハイレベル遷移に応じて、切替スイッチ回路20が第1切替状態とされたことにより、ホール素子10の第1端子対である端子A・Cには、それぞれ、電源電圧VDD及びグランド電圧が印加され、第2端子対である端子B・Dには、それぞれ、ホール電圧が発生する。このとき、端子Bには電圧Vbが発生し、端子Dには電圧Vdが発生する。
【0089】
増幅ユニット30の第1増幅出力端iiiには、電圧Vbが増幅された第1増幅電圧AOUT1(=α(Vb−Voffa1))が発生し、第2増幅出力端ivには、電圧Vdが増幅された第2増幅電圧AOUT2(=α(Vd−Voffa2))が発生する。このαは、増幅ユニット30の増幅度であり、Voffa1、Voffa2は、第1増幅回路31、第2増幅回路32の入力オフセット電圧である。
【0090】
一方、第3切替信号CTL3のハイレベル遷移に応じて、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52がともにオンされたことにより、比較ユニット60の第1比較入力端vには、第1基準電圧Vref1が印加され、第2比較入力端viには、第2基準電圧Vref2が印加された状態となる。
【0091】
これにより、第1キャパシタ41には、第1基準電圧Vref1と第1増幅電圧AOUT1との差電圧(Vref1−α(Vb−Voffa1))が充電される。一方、第2キャパシタ42には、第2基準電圧Vref2と第2増幅電圧AOUT2との差電圧(Vref2−α(Vd−Voffa2))が充電される。
【0092】
上記の充電動作が行われた後、次に到来する基準クロック信号OSCの立上がりエッジに同期して、第1切替信号CTL1、第3切替信号CTL3がローレベルとされ、第2切替信号CTL2がハイレベルとされる。第2切替信号CTL2がハイレベルとされたことにより、切替スイッチ回路20は、第2切替状態になる。また、第3切替信号CTL3がローレベルとされたことにより、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52は、共にオフとなる。
【0093】
第2切替信号CTL2のハイレベル遷移に応じて、切替スイッチ回路20が第2切替状態とされたことにより、ホール素子10の第2端子対である端子B・Dには、それぞれ、電源電圧VDD及びグランド電圧が印加され、第1端子対である端子C・Aには、それぞれ、ホール電圧が発生する。このとき、端子Cには電圧Vcが発生し、端子Aには電圧Vaが発生する。
【0094】
増幅ユニット30の第1増幅出力端iiiには、電圧Vaが増幅された第1増幅電圧AOUT1(=α(Va−Voffa1))が発生し、第2増幅出力端ivには、電圧Vcが増幅された第2増幅電圧AOUT2(=α(Vc−Voffa2))が発生する。
【0095】
一方、第3切替信号CTL3のローレベル遷移に応じて、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52はともにオフされるが、第1キャパシタ41、第2キャパシタ42に充電されている電荷は変化することなく保持されるので、比較ユニット60の第1比較入力端vの第1比較電圧INC1及び第2比較入力端viの第2比較電圧INC2は、次の(1)式、(2)式のようになる。
【0096】
INC1=Vref1−[α(Vb−Voffa1)−α(Va−Voffa1)]
=Vref1−α(Vb−Va) ・・・(1)
INC2=Vref2−[α(Vd−Voffa2)−α(Vc−Voffa2)]
=Vref2−α(Vd−Vc) ・・・(2)
【0097】
上記の(1)式、(2)式に示される通り、第1、第2比較電圧INC1、INC2には、入力オフセット電圧Voffa1、Voffa2が含まれていない。すなわち、入力オフセット電圧Voffa1、Voffa2は、第1切替状態と第2切替状態の操作を通じて相殺されている。
【0098】
そして、比較ユニット60では、第1比較電圧INC1と第2比較電圧INC2との比較処理が行われる。ここで、図8の(1)で示すように、磁気センサ回路にS極信号が入力されており、第1比較電圧INC1が第2比較電圧INC2よりも高ければ、比較結果信号COUTがハイレベルとされる。一方、図8の(4)で示すように、磁気センサ回路にN極信号が入力されており、第1比較電圧INC1が第2比較電圧INC2よりも低ければ、比較結果信号COUTがローレベルに維持される。なお、比較ユニット60での比較対象となる第1、第2比較電圧INC1、INC2の差分電圧を数式で表すと、以下の(3)式のようになる。
【0099】
INC1−INC2
=Vref1−Vref2−α(Vb−Va)+α(Vd−Vc)・・・(3)
【0100】
ところで、ホール素子10から発生されるホール電圧には、磁界の強さに比例した信号成分電圧と素子オフセット電圧とが含まれている。なお、ホール素子10の第1切替状態で端子B・D間に生じる電圧と、第2切替状態で端子C・A間に生じる電圧とでは、磁界の強さに応じた有効信号成分は同相で、素子オフセット電圧は逆相となる。
【0101】
電圧Vb、Vd、Va、Vcに含まれる素子オフセット電圧を、Vboffe、Vdoffe、Vaoffe、Vcoffeとすると、Vboffe−Vdoffe=Vaoffe−Vcoffeなる関係式が成立する。この関係式を変形すると、次の(4)式が得られる。
【0102】
Vboffe−Vaoffe=Vdoffe−Vcoffe ・・・(4)
【0103】
上記の(4)式は、先出の(3)式による第1比較電圧INC1と第2比較電圧INC2との比較において、素子オフセット電圧がキャンセルされていることを示している。
【0104】
このように、ホール素子10の素子オフセット電圧及び増幅ユニット30の入力オフセット電圧はともに、比較ユニット60における比較動作においてキャンセルされている。
【0105】
論理回路80は、上記で得られた比較結果信号COUTと、現在出力されている出力信号OUTに基づいて、論理演算信号LOUTを生成する。
【0106】
より具体的に述べると、図8の(1)で示すように、出力信号OUTがハイレベルであるときに、比較結果信号COUTがハイレベルに遷移された場合には、S極信号が検出されたと判断され、出力信号OUTの論理を反転させるべく、論理演算信号LOUTがローレベルに遷移される。一方、図8の(4)で示すように、出力信号OUTがハイレベルであるときに、比較結果信号COUTがローレベルに維持された場合には、S極信号が検出されていないと判断され、出力信号OUTの論理を現状に維持すべく、論理演算信号LOUTがハイレベルに維持される。
【0107】
ラッチ回路70は、クロック信号CLK_SHの立上がりエッジに同期して、論理回路80で生成された論理演算信号LOUTをラッチし、これを出力信号OUTとして出力する。従って、図8の(1)では、出力信号OUTがハイレベルからローレベルに切り替えられ、図8の(4)では、出力信号OUTがハイレベルのまま維持される。
【0108】
一方、図8の(2)及び(3)で示すように、出力信号OUTがローレベルである場合(すなわち、S極信号の検出後、次にN極信号を検出すべき状態)には、基準クロック信号OSCの立上がりエッジに同期して、まず、第2切替信号CTL2及び第3切替信号CTL3がハイレベルとされる。第2切替信号CTL2がハイレベルとされたことにより、切替スイッチ回路20は、第2切替状態になる。また、第3切替信号CTL3がハイレベルとされたことにより、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52はオンとなる。
【0109】
第2切替信号CTL2のハイレベル遷移に応じて、切替スイッチ回路20が第2切替状態とされたことにより、ホール素子10の第2端子対である端子B・Dには、それぞれ、電源電圧VDD及びグランド電圧が印加され、第1端子対である端子C・Aには、それぞれ、ホール電圧が発生する。このとき、端子Cには電圧Vcが発生し、端子Aには電圧Vaが発生する。
【0110】
増幅ユニット30の第1増幅出力端iiiには、電圧Vaが増幅された第1増幅電圧AOUT1(=α(Va−Voffa1))が発生し、第2増幅出力端ivには、電圧Vcが増幅された第2増幅電圧AOUT2(=α(Vc−Voffa2))が発生する。
【0111】
一方、第3切替信号CTL3のハイレベル遷移に応じて、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52がともにオンされたことにより、比較ユニット60の第1比較入力端vには、第1基準電圧Vref1が印加され、第2比較入力端viには、第2基準電圧Vref2が印加された状態となる。
【0112】
これにより、第1キャパシタ41には、第1基準電圧Vref1と第1増幅電圧AOUT1との差電圧(Vref1−α(Va−Voffa1))が充電される。一方、第2キャパシタ42には、第2基準電圧Vref2と第2増幅電圧AOUT2との差電圧(Vref2−α(Vc−Voffa2))が充電される。
【0113】
上記の充電動作が行われた後、次に到来する基準クロック信号OSCの立上がりエッジに同期して、第2切替信号CTL2、第3切替信号CTL3がローレベルとされ、第1切替信号CTL1がハイレベルとされる。第1切替信号CTL1がハイレベルとされたことにより、切替スイッチ回路20は、第1切替状態になる。また、第3切替信号CTL3がローレベルとされたことにより、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52は、共にオフとなる。
【0114】
第1切替信号CTL1のハイレベル遷移に応じて、切替スイッチ回路20が第1切替状態とされたことにより、ホール素子10の第1端子対である端子A・Cには、それぞれ、電源電圧VDD及びグランド電圧が印加され、第2端子対である端子B・Dには、それぞれ、ホール電圧が発生する。このとき、端子Bには電圧Vbが発生し、端子Dには電圧Vdが発生する。
【0115】
増幅ユニット30の第1増幅出力端iiiには、電圧Vbが増幅された第1増幅電圧AOUT1(=α(Vb−Voffa1))が発生し、第2増幅出力端ivには、電圧Vdが増幅された第2増幅電圧AOUT2(=α(Vd−Voffa2))が発生する。
【0116】
一方、第3切替信号CTL3のローレベル遷移に応じて、第1スイッチ回路51及び第2スイッチ回路52はともにオフされるが、第1キャパシタ41、第2キャパシタ42に充電されている電荷は変化することなく保持されるので、比較ユニット60の第1比較入力端vの第1比較電圧INC1及び第2比較入力端viの第2比較電圧INC2は、次の(5)式、(6)式のようになる。
【0117】
INC1=Vref1−[α(Va−Voffa1)−α(Vb−Voffa1)]
=Vref1−α(Va−Vb) ・・・(5)
INC2=Vref2−[α(Vc−Voffa2)−α(Vd−Voffa2)]
=Vref2−α(Vc−Vd) ・・・(6)
【0118】
上記の(5)式、(6)式に示される通り、第1、第2比較電圧INC1、INC2には、入力オフセット電圧Voffa1、Voffa2が含まれていない。すなわち、入力オフセット電圧Voffa1、Voffa2は、第2切替状態と第1切替状態の操作を通じて相殺されている。
【0119】
そして、比較ユニット60では、第1比較電圧INC1と第2比較電圧INC2との比較処理が行われる。ここで、図8の(3)で示すように、磁気センサ回路にN極信号が入力されており、第1比較電圧INC1が第2比較電圧INC2よりも高ければ、比較結果信号COUTがハイレベルとされる。一方、図8の(2)で示すように、磁気センサ回路にS極信号が入力されており、第1比較電圧INC1が第2比較電圧INC2よりも低ければ、比較結果信号COUTがローレベルに維持される。なお、比較ユニット60での比較対象となる第1、第2比較電圧INC1、INC2の差分電圧を数式で表すと、以下の(7)式のようになる。
【0120】
INC1−INC2
=Vref1−Vref2−α(Va−Vb)+α(Vc−Vd)・・・(7)
【0121】
ところで、先述の通り、ホール素子10から発生されるホール電圧には、磁界の強さに比例した信号成分電圧と素子オフセット電圧とが含まれている。なお、ホール素子10の第1切替状態で端子B・D間に生じる電圧と、第2切替状態で端子C・A間に生じる電圧とでは、磁界の強さに応じた有効信号成分は同相で、素子オフセット電圧は逆相となる。
【0122】
また、先述の通り、電圧Vb、Vd、Va、Vcに含まれる素子オフセット電圧を、Vboffe、Vdoffe、Vaoffe、Vcoffeとすると、Vboffe−Vdoffe=Vaoffe−Vcoffeなる関係式が成立する。この関係式を変形すると次の(8)式が得られる。
【0123】
Vaoffe−Vboffe=Vcoffe−Vdoffe ・・・(8)
【0124】
上記の(8)式は、先出の(7)式による第1比較電圧INC1と第2比較電圧INC2との比較において、素子オフセット電圧がキャンセルされていることを示している。
【0125】
このように、ホール素子10の素子オフセット電圧及び増幅ユニット30の入力オフセット電圧はともに、比較ユニット60における比較動作においてキャンセルされている。
【0126】
論理回路80は、上記で得られた比較結果信号COUTと、現在出力されている出力信号OUTに基づいて、論理演算信号LOUTを生成する。
【0127】
より具体的に述べると、図8の(3)で示すように、出力信号OUTがローレベルであるときに、比較結果信号COUTがハイレベルに遷移された場合には、N極信号が検出されたと判断され、出力信号OUTの論理を反転させるべく、論理演算信号LOUTがハイレベルに遷移される。一方、図8の(2)で示すように、出力信号OUTがローレベルであるときに、比較結果信号COUTがローレベルに維持された場合には、N極信号が検出されていないと判断され、出力信号OUTの論理を現状に維持すべく、論理演算信号LOUTがローレベルに維持される。
【0128】
ラッチ回路70は、クロック信号CLK_SHの立上がりエッジに同期して、論理回路80で生成された論理演算信号LOUTをラッチし、これを出力信号OUTとして出力する。従って、図8の(3)では、出力信号OUTがローレベルからハイレベルに切り替えられ、図8の(2)では、出力信号OUTがローレベルのまま維持される。
【0129】
上記の交番磁界検知動作(出力信号OUTの生成動作)について、図9のフローチャートを参照しながら総括的に説明する。
【0130】
図9は、本発明に係る磁気センサ回路の動作を説明するフローチャートである。
【0131】
交番磁界を検知するに際して、ステップS1では、出力信号OUTがハイレベルであるか、ローレベルであるかの判定が行われる。ここで、出力信号OUTがハイレベルであると判定された場合には、フローがステップS2に進められる。一方、出力信号OUTがローレベルであると判定された場合には、フローがステップS6に進められる。
【0132】
ステップS1において、出力信号OUTがハイレベルであると判定された場合、ステップS2では、現在の状況は、N極信号の検出後であって、次にS極信号を検出すべき状態であるという認識の下、S極信号を増幅すべく、第1切替状態から第2切替状態という順序で、切替スイッチ回路20のスイッチング制御が行われ、これにより得られた第1比較信号INC1と第2比較信号INC2との比較処理(両者の差分電圧と基準電圧VREFとの比較処理)が行われる。
【0133】
続くステップS3では、比較結果信号COUTがハイレベルであるか、ローレベルであるかの判定が行われる。ここで、比較結果信号COUTがハイレベル(印加磁界B>S極の検出磁界レベルBop)であると判定された場合には、フローがステップS4に進められる。一方、比較結果信号がローレベル(印加磁界B<S極の検出磁界レベルBop)であると判定された場合には、フローがステップS5に進められる。
【0134】
ステップS3において、比較結果信号COUTがハイレベルであると判定された場合、ステップS4では、S極信号が検出されたという認識の下、出力信号OUTがハイレベルからローレベルに遷移される。その後、フローはステップS1に戻される。
【0135】
一方、ステップS3において、比較結果信号COUTがローレベルであると判定された場合、ステップS5では、S極信号が未検出であるという認識の下、出力信号OUTがハイレベルに維持される。その後、フローはステップS1に戻される。
【0136】
また、ステップS1において、出力信号OUTがローレベルであると判定された場合、ステップS6では、現在の状況は、S極信号の検出後であって、次にN極信号を検出すべき状態であるという認識の下、N極信号を増幅すべく、第2切替状態から第1切替状態という順序で、切替スイッチ回路20のスイッチング制御が行われ、これにより得られた第1比較信号INC1と第2比較信号INC2との比較処理(両者の差分電圧と基準電圧VREFとの比較処理)が行われる。
【0137】
続くステップS7では、比較結果信号COUTがハイレベルであるか、ローレベルであるかの判定が行われる。ここで、比較結果信号COUTがハイレベル(印加磁界B<N極の検出磁界レベルBrp)であると判定された場合には、フローがステップS8に進められる。一方、比較結果信号がローレベル(印加磁界B>N極の検出磁界レベルBrp)であると判定された場合には、フローがステップS9に進められる。
【0138】
ステップS7において、比較結果信号COUTがハイレベルであると判定された場合、ステップS8では、N極信号が検出されたという認識の下、出力信号OUTがローレベルからハイレベルに遷移される。その後、フローはステップS1に戻される。
【0139】
一方、ステップS7において、比較結果信号COUTがローレベルであると判定された場合、ステップS9では、N極信号が未検出であるという認識の下、出力信号OUTがローレベルに維持される。その後、フローはステップS1に戻される。
【0140】
上記した通り、本発明に係る磁気センサ回路は、検知された磁界の極性(S極/N極)に応じた論理の出力信号OUTを生成する磁気センサ回路であって、ホール素子10と;ホール素子10の検出状態を第1切替状態と第2切替状態のいずれか一に切り替える切替スイッチ回路20と;ホール素子10の検出電圧と所定の基準電圧を用いて所定の比較処理を行い、その結果に応じた比較結果信号COUTを生成する比較ユニット60と;出力信号OUTと比較結果信号COUTに基づいて、出力信号OUTの論理を維持または反転するための論理演算信号LOUTを生成する論理回路80と;論理演算信号LOUTをラッチし、これを出力信号OUTとして出力するラッチ回路70と;出力信号OUTに基づいて、第1切替状態から第2切替状態という順序で、切替スイッチ回路20のスイッチング制御を行うか、或いは、第2切替状態から第1切替状態という順序で、切替スイッチ回路20のスイッチング制御を行うかを決定する制御回路90と;を有して成る構成とされている。
【0141】
このように、S極信号の検出時にもN極信号の検出時にも、比較ユニット60の各入力端間に印加する基準電圧VREFの極性を不変とする一方、出力信号OUTに応じて、第1、第2切替状態の順序を決定することで、S極信号を増幅するかN極信号を増幅するかを切り替える構成とすることにより、仮に、比較ユニット60の非反転入力端(+)と反転入力端(−)との間に、比較オフセット電圧が存在する場合であっても、S極信号を検出するための検出磁界レベル、及び、N極信号を検出するための検出磁界レベルは、比較オフセット電圧に相当する分だけ、同様の傾向を持って変動することになる。すなわち、両者の差し引きを考えると、比較オフセット電圧の影響をキャンセルし、交番磁界検知の磁界検出レベルに対称性を持たせることが可能となる。
【0142】
従って、本発明によれば、出力信号OUTに現れるパルスのデューティ比を理想値(50%)とすることができるので、ユーザにとって使い勝手の良い磁気センサ回路を提供することが可能となる。
【0143】
また、本発明によれば、従来におけるスイッチタイプの磁気センサ回路を基礎として、その回路構成を流用し、ロジック部分(論理回路や制御回路)のみを修正するだけで、交番磁界検知タイプの磁気センサ回路を実現することができるので、開発コストを削減することが可能となる。
【0144】
また、本発明によれば、基準電圧VREFの極性切替用スイッチが不要となる。
【0145】
次に、本発明に係る磁気センサ回路の第1適用例について、図10を参照しながら詳細に説明する。
【0146】
図10は、本発明に係る磁気センサ回路の第1適用例(回転検知アプリケーション)を示す図である。なお、図10(a)、図10(b)は、それぞれ、回転検知アプリケーションのイメージ図であり、図10(c)は、回転角θに対する印加磁界B(磁束密度)と出力信号OUTとの関係を示すタイミングチャートである。また、図10(c)中における(1)〜(4)は、先出の図8中における(1)〜(4)に対応するものである。
【0147】
図10(a)、図10(b)で示すように、その回転運動を検知しようとするターゲットは、S極の磁区とN極の磁区を複数有する磁石を備えて成り、その回転運動に伴って、磁気センサ回路に交番磁界を印加する構成とされている。なお、磁気センサ回路は、図10(a)で示すように、ターゲット(磁石)の側面側に配置してもよいし、図10(b)で示すように、ターゲット(磁石)の上面側或いは下面側に配置してもよい。
【0148】
従って、磁気センサ回路の出力信号OUTは、図10(c)で示すように、ターゲットの回転運動に伴ってパルス状に変化することになり、そのパルス数は、ターゲットの回転数(S極、N極の変化回数)に応じた値となる。そこで、解析回路を用いて、出力信号OUTのパルス数をカウントすることで、ターゲットの回転角や回転数を検知することが可能となる。例えば、タコメータやステアリング角度検知手段としての適用が考えられる。
【0149】
なお、ターゲットの回転角をより精度良く検知するためには、磁石の分割数をより細かくしてやればよい。
【0150】
次に、本発明に係る磁気センサ回路の第2適用例について、図11を参照しながら詳細に説明する。
【0151】
図11は、本発明に係る磁気センサ回路の第2適用例(スライド移動検知アプリケーション)を示す図である。なお、図11(a)は、スライド移動検知アプリケーションのイメージ図であり、図11(b)は、スライド移動量に対する印加磁界B(磁束密度)と出力信号OUTとの関係を示すタイミングチャートである。また、図11(b)中における(1)〜(4)は、先出の図8中における(1)〜(4)に対応するものである。
【0152】
図11(a)で示すように、そのスライド移動を検知しようとするターゲットは、S極の磁区とN極の磁区を複数有する磁石を備えて成り、そのスライド移動に伴って、磁気センサ回路に交番磁界を印加する構成とされている。
【0153】
従って、磁気センサ回路の出力信号OUTは、図11(b)で示すように、ターゲットのスライド運動に伴ってパルス状に変化することになり、そのパルス数は、ターゲットのスライド移動量(S極、N極の変化回数)に応じた値となる。そこで、解析回路を用いて出力信号OUTのパルス数をカウントすることで、ターゲットのスライド位置(スライド移動量)を検知することが可能となる。
【0154】
なお、ターゲットのスライド位置をより精度良く検知するためには、磁石の分割数をより細かくしてやればよい。
【0155】
また、磁石を不動とし、スライド移動されるターゲットに磁気センサ回路を搭載しても構わない。
【0156】
次に、本発明に係る磁気センサ回路の第3適用例について、図12を参照しながら詳細に説明する。
【0157】
図12は、本発明に係る磁気センサ回路の第3適用例(回転検知アプリケーション或いはスライド移動検知アプリケーション)を示す図である。なお、図12(a)は、回転検知アプリケーションのイメージ図であり、図12(b)は、スライド移動検知アプリケーションのイメージ図である。また、図12(c)は、回転角θ及びスライド移動量に対する印加磁界B(磁束密度)と出力信号OUTX、OUTYとの関係を示すタイミングチャートである。
【0158】
図12(a)で示すように、その回転運動を検知しようとするターゲットは、S極の磁区とN極の磁区を複数有する磁石を備えて成り、その回転運動に伴って、磁気センサ回路X、及び、磁気センサ回路Yに交番磁界を印加する構成とされている。なお、磁気センサ回路X、Yは、図12(a)で示すように、ターゲット(磁石)の側面側に配置してもよいし、ターゲット(磁石)の上面側或いは下面側に配置してもよい。
【0159】
また、図12(b)で示すように、そのスライド運動を検知しようとするターゲットはS極の磁区とN極の磁区を複数有する磁石を備えて成り、そのスライド運動に伴って、磁気センサ回路X、Yに交番磁界を印加する構成とされている。
【0160】
なお、図12(a)、図12(b)では、いずれも、ターゲットの正転方向(或いは正スライド方向)に沿って、上流側(ターゲットが正転(或いは正方向スライド)された場合に、先に磁界の極性が変化する側)となる位置に磁気センサ回路Xが配設され、下流側と成る位置に磁気センサ回路Yが配設されているものとする。
【0161】
従って、磁気センサ回路X、Yの出力信号OUTX、OUTYは、図12(c)で示すように、ターゲットの回転運動或いはスライド運動に伴ってパルス状に変化することになる。このとき、解析回路では、例えば、磁気センサ回路Xの出力信号OUTAがハイレベルに立ち上がるタイミング(磁気センサ回路XでN極信号が検知されたタイミング)で、磁気センサ回路Yの出力信号OUTBが未だローレベル(磁気センサ回路YはN極信号を未検出)であるならば、ターゲットは正転(或いは正方向スライド)されていると判断することができ、逆に、磁気センサ回路Yの出力信号OUTBが既にハイレベル(磁気センサ回路Yは既にN極信号を検出済み)であるならば、ターゲットは逆転(或いは負方向スライド)されていると判断することができる。
【0162】
なお、ターゲットの回転角や回転数、或いは、スライド位置を検知する場合には、先述と同様、解析回路を用いて、出力信号OUTXまたは出力信号OUTYのパルス数をカウントすればよい。
【0163】
また、ターゲットの回転角やスライド位置をより精度良く検知するためには、磁石の分割数をより細かくしてやればよい。
【0164】
なお、上記の実施形態では、ホール素子10の素子オフセット電圧や、増幅ユニット30の入力オフセット電圧をキャンセルすべく、2入力2出力形式の増幅ユニット30を用い、第1、第2増幅電圧AOUT1、AOUT2に基づいて、比較ユニット60における比較処理を行う構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、図13に示すように、2入力1出力形式の増幅ユニット30を用いた構成にも広く適用することが可能である。
【0165】
また、図1から増幅ユニット30を除いた構成としても構わない。
【0166】
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、交番磁界検知タイプの磁気センサ回路や、これを用いた電子機器(例えば、回転検知装置やモータの回転検知機能を備えたブラシレスモータドライバIC)に好適な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明に係る磁気センサ回路の一実施形態を示す図である。
【図2】増幅ユニットの第1の構成例を示す図である。
【図3】増幅ユニットの第2の構成例を示す図である。
【図4】基準電圧生成回路50の一構成例を示す図である。
【図5】論理回路80の一構成例を示す図である。
【図6】論理回路80の入出力論理を示す論理値表である。
【図7】制御回路90の一構成例を示す図である。
【図8】本発明に係る磁気センサ回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明に係る磁気センサ回路の動作を説明するフローチャートである。
【図10】本発明に係る磁気センサ回路の第1適用例を示す図である。
【図11】本発明に係る磁気センサ回路の第2適用例を示す図である。
【図12】本発明に係る磁気センサ回路の第3適用例を示す図である。
【図13】本発明に係る磁気センサ回路の一変形例を示す図である。
【図14】従来の磁界センサの構成を示す図である。
【図15】交番磁界検知タイプの磁気センサ回路の一従来例を示す図である。
【図16】比較オフセット電圧の影響を示す図である。
【符号の説明】
【0169】
10 ホール素子
20 切替スイッチ回路
21〜28 スイッチ
30、30A、30B 増幅ユニット
31、31A、31B 第1増幅回路
32、32A、32B 第2増幅回路
33 帰還抵抗
34、35 スイッチ回路
40 キャパシタ
41、42 第1キャパシタ、第2キャパシタ
50 基準電圧生成回路
50−1〜50−3 分圧抵抗器
50−4 P型MOSトランジスタ
50−5 N型MOSトランジスタ
50−6、50−7 インバータ
51、52 第1、第2スイッチ回路
60 比較ユニット
61、62 スイッチ回路
70 ラッチ回路
80 論理回路
81、82 インバータ
83、84 論理積演算器
85 論理和演算器
90 制御回路
91 発振器
92 スタートパルス信号生成回路
93 シフトレジスタ
94 論理和演算器
95、96 インバータ
97 切替信号生成回路
97−1、97−2、97−3、97−4 論理積演算器
97−5、97−6 論理和演算器
VDD 電源電圧
Vref1、Vref2 第1、第2基準電圧
POW 電源オン信号
/POW 反転電源オン信号
CTL1、CTL2、CTL3 第1、第2、第3切替信号
AOUT1、AOUT2 第1、第2増幅電圧
INC1、INC2 第1、第2比較電圧
COUT 比較結果信号
LOUT 論理演算信号
OUT 出力信号
CLK_SH クロック信号
OSC 基準クロック信号
SIG スタートパルス信号
S1、S2 第1、第2タイミング信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知された磁界の極性に応じた論理の出力信号を生成する磁気センサ回路であって、
磁電変換素子と;
前記磁電変換素子の検出状態を第1、第2切替状態のいずれか一に切り替える切替スイッチ回路と;
前記磁電変換素子の検出電圧と所定の基準電圧を用いて所定の比較処理を行い、その結果に応じた比較結果信号を生成する比較ユニットと;
前記出力信号と前記比較結果信号に基づいて、前記出力信号の論理を維持または反転するための論理演算信号を生成する論理回路と;
前記論理演算信号をラッチし、これを前記出力信号として出力するラッチ回路と;
前記出力信号に基づいて、前記第1切替状態から前記第2切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うか、或いは、前記第2切替状態から前記第1切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うかを決定する制御回路と;
を有して成ることを特徴とする磁気センサ回路。
【請求項2】
検知された磁界の極性に応じた論理の出力信号を生成する磁気センサ回路であって、
印加される磁気に応じた出力電圧を第1端子対、若しくは、第2端子対に発生する磁電変換素子と;
前記第1端子対に電源電圧を印加し、前記第2端子対に発生する電圧を第1出力端と第2出力端との間に出力する第1切替状態と、前記第2端子対に電源電圧を印加し、前記第1端子対に発生する電圧を前記第1出力端と前記第2出力端との間に出力する第2切替状態と、を有するように切り替えられる切替スイッチ回路と;
前記第1出力端から印加される電圧を増幅して第1増幅電圧を生成し、これを第1増幅出力端から出力するとともに、前記第2出力端から印加される電圧を増幅して第2増幅電圧を生成し、これを第2増幅出力端から出力する増幅ユニットと;
第1比較入力端に入力される第1比較電圧と、第2比較入力端に入力される第2比較電圧とを比較し、その結果に応じた比較結果信号を生成する比較ユニットと;
前記第1増幅出力端と前記第1比較入力端との間に設けられた第1キャパシタと;
前記第2増幅出力端と前記第2比較入力端との間に設けられた第2キャパシタと;
前記切替スイッチ回路が前記第1切替状態であるときに、前記第1比較入力端に対して第1基準電圧を印加するための第1スイッチ回路と;
前記切替スイッチ回路が前記第1切替状態であるときに、前記第2比較入力端に対して第2基準電圧を印加するための第2スイッチ回路と;
前記出力信号と前記比較結果信号に基づいて、前記出力信号の論理を維持または反転するための論理演算信号を生成する論理回路と;
前記論理演算信号をラッチし、これを前記出力信号として出力するラッチ回路と;
前記出力信号に基づいて、前記第1切替状態から前記第2切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うか、或いは、前記第2切替状態から前記第1切替状態という順序で、前記切替スイッチ回路のスイッチング制御を行うかを決定する制御回路と;
を有して成ることを特徴とする磁気センサ回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記増幅ユニット及び前記比較ユニットの少なくとも一方に対して、間欠的な電源供給制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ回路。
【請求項4】
ターゲットと、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の磁気センサ回路と、前記磁気センサ回路の出力信号に基づいて前記ターゲットの運動を解析する解析回路と、を有して成る電子機器であって、
前記ターゲットは、S極の磁区とN極の磁区を複数有する磁石を備えて成り、その運動に伴って、前記磁気センサ回路に交番磁界を印加する構成とされていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記解析回路は、前記磁気センサ回路で得られる出力信号のパルス数をカウントすることで、前記ターゲットの位置または運動量を検知することを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記磁気センサ回路は、前記ターゲットの運動方向に沿って複数設けられており、前記解析回路は、各磁気センサ回路で得られる出力信号を比較することで、前記ターゲットの運動方向を検知することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−2851(P2009−2851A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165238(P2007−165238)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】