説明

磁気抵抗素子を用いた位置検出装置及びこれを用いたレンズユニット

【課題】組立・調整作業が容易で良好な出力特性が得られる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズユニットを提供する。
【解決手段】磁気抵抗素子3を保持するホルダ5は、一端に磁気抵抗素子3の感受面と略平行且つ移動方向と直交する方向に突出した凸部を有し、ベース7は、前記凸部が挿入される凹部と、光軸と平行な方向に配設され、互いに平行な2つの平面部25を有する2つの突出部21と、ベース7を鏡筒に取り付ける位置決め手段とを備え、シムは、突出部21に設けられた平面部25と前記鏡筒との間に挿入され、ベース7を前記位置決め手段によって前記鏡筒に取り付ける際に、ベース7が突出部21を基点として湾曲することにより、磁気記録媒体と磁気抵抗素子3の間隔を調整し、前記シムは、その厚みを変更することで前記ベース7の前記鏡筒に対する距離が調整され、磁気抵抗素子3の前記磁気記録媒体に対する倒れが補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出する位置検出装置に関し、特に、磁気抵抗(Magneto Resistive、MR)素子を用いた位置検出装置、およびこの位置検出装置を用いたスチルカメラ、ビデオカメラ等のレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗素子は、インジウム・アンチモン(InSb)等の半導体薄膜に磁界を加えた時に、その磁気抵抗値が変化する現象を活用した素子である。この種の磁気抵抗素子を用いた位置検出装置は、フェライトやプラスチックマグネットのような磁気記録媒体と組み合わせて、その磁気記録媒体の位置検出に広く用いられている。
【0003】
この磁気抵抗素子は、磁気記録媒体が移動することによる磁界の変化を検出して、サインカーブ状の再生出力を得ることができる。この出力波形を処理することにより、磁気記録媒体の相対的あるいは絶対的位置を高精度に求めるようになっている。
【0004】
磁気抵抗素子は、磁気記録媒体の移動を検出する際に、磁気記録媒体との間隔を適切に調整する必要がある。これは基準ギャップ量と呼ばれ、磁気記録媒体の仕様によって決定される。基準ギャップ量よりも間隔が広がると、位置検出装置の出力が急激に小さくなり、逆に間隔が狭くなると出力が歪んでサインカーブ状の再生出力が得られない。民生用・産業用機器に広く用いられている磁気抵抗素子は、この要求を満たすために主に2つに大別できる調整手段を備えている。
【0005】
接触型の磁気抵抗素子は、非磁性体の樹脂等にインサート成形されており、その感受面には予め基準ギャップ量に相当する厚みの樹脂がスペーサーとして上乗せされている。そのため、磁気記録媒体に接触型の磁気抵抗素子を密着させ、磁気記録媒体が表面を摺動することで、常に基準ギャップ量を保つことができる。
【0006】
この種の位置検出装置としては、例えば特許文献1に開示されており、回転する部材に貼り付けられた磁気記録媒体に、固定部材から板バネによって保持された磁気抵抗素子が密着された構造となっている。このような位置検出装置は、基準ギャップ量の調整が不要であるという利点を有する。
【0007】
一方、非接触型の磁気抵抗素子は、磁気記録媒体と接触せずに位置検出が行うことができる構造のため、磁気記録媒体との摺動に伴う騒音や摩耗を無くすことができる利点を有する。しかしながら、基準ギャップ量の調整を個体ごとに実施する必要があるため、製造コストを引き上げる欠点がある。また、非接触型の磁気抵抗素子は接触型の磁気抵抗素子と同様に非磁性体の樹脂等にインサート成形されているが、取付けとギャップ量の調整のための機構が一体成形されている。
【0008】
この種の位置検出装置としては、例えば特許文献2に開示されており、取付けとギャップ量の調整が行えるような構造となっている。
【0009】
ところで、スチルカメラ、ビデオカメラ等に用いられるレンズユニットでは、ズーム動作又はフォーカス動作時にレンズをリニアモータで移動させるものが知られている。このモータを利用してレンズを移動させるときには、モータ自体が位置情報をもたないために、別に位置検出手段が必要となる。また、動作時に騒音を発しにくい構造のため、特に動画撮影時には好ましい特性から、先述した非接触式の磁気抵抗素子を用いた位置検出装置をレンズ位置の検出に用いる方法が知られている。
【0010】
図7は、このようなリニアモータを用いたレンズユニット200の構造を示している。このレンズユニット200の内部には、フォーカスレンズ201が、レンズ枠203に保持されている。このレンズ枠203は、両端を鏡筒299とガイドシャフト受け206に固定された主軸209及び副軸211に沿って光軸方向に摺動自在に支持されている。このレンズ枠203を光軸方向に駆動するリニアモータは、固定子として駆動方向と垂直に磁化した駆動用マグネット213と、コの字型のメインヨーク215および板状のサイドヨーク217とを鏡筒299に設けている。一方、可動子としてコイル219が駆動用マグネット213と所定の空隙を有するようにレンズ枠203に固定されており、駆動用マグネット213の発生する磁束と直交する様にコイル219に電流を流すことで、レンズ枠203を光軸方向に駆動するしくみになっている。
【0011】
次に位置検出装置について説明する。図7において、フェライト等の磁気記録媒体でできた磁気スケール223をレンズ枠203に設け、その表面はレンズ枠203の駆動方向である光軸方向に沿って150〜400μm程度のピッチでS極とN極を交互に着磁している。そして、ホルダ5が鏡筒299に保持されており、磁気抵抗素子からなる感受面が磁気スケール223と所定の間隔を介して向かい合うようになっている。ホルダ5は、ピン13を回動穴15に挿入すると、これを中心として回動できる。そこでホルダ5を回動することによって、磁気スケール223と感受面の間隔を調整し、その後、長孔17に通した傾き調整ネジ19で固定する方法が一般に用いられている。
【0012】
また、非接触式の磁気抵抗素子を用いた位置検出装置として、例えば特許文献3では、磁気記録媒体と対向した磁気抵抗素子を保持するホルダに、ほぼ一定の曲率の曲面を有する突出部を備えると共に、位置決め手段によってホルダを被取付け部材に取り付ける際に、ホルダが突出部の曲面の中心軸を中心として回動することにより、磁気スケールと感受面の間隔を調整する構成となっている。
【0013】
また、非接触式の磁気抵抗素子を用いた位置検出装置として、例えば特許文献4では、磁気記録媒体と対向した磁気抵抗素子を保持するホルダに取付け孔を備えると共に、被取付け部材はホルダが取り付けられる枠部と締結用孔とを備え、ホルダと被取付け部材との間には弾性部材を備え、ネジ山のないガイド部とセルフタップネジ部とヘッド部とを有するネジ部材が取付け孔及び締結用孔に挿通され、ホルダがネジ部材と平行に動くことにより、磁気スケールと感受面の間隔を調整する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−250638号公報
【特許文献2】特開平1−203922号公報
【特許文献3】特開2000−2559号公報
【特許文献4】特開2003−241055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、先述のような構成の位置検出装置では、磁気記録磁気スケール223と感受面の間隔を調整する作業と、ホルダ5を固定する作業を別々に行わなければならず、組立作業が煩雑であり、装置の製造コストを引き上げる原因となっていた。
【0016】
また、基準ギャップ量の調整は、例えば、磁気スケール223の着磁ピッチが200μmであるとき、基準ギャップ量は100±20μm程度の公差内で両者の間隔を設定する必要があるが、手作業でピン13を中心としてホルダ5を回動し、このような微少な公差内の位置にホルダ5を位置決めする作業は、極めて困難であり、製造コストをさらに引き上げる要因となっていた。
【0017】
また、ピン13と、これを挿入する回動穴15の間には、加工精度の関係から、数10μm以上の隙間が存在する。このため、ホルダ5をピン13を中心に回動するつもりでも、回動穴15との隙間の分だけホルダ5が並進する場合が頻発する。このため、10μmといった微少な調整が非常に困難であった。
【0018】
さらに、ホルダ5は一端に設けられたピン13を中心として回動しながら磁気スケール223との間隔を変化させる。そのため、磁気スケール223と感受面9がある一点を除いて平行にはならない。そのため、光軸方向における磁気スケール223と感受面9との間隔は一様で無くなる場合がある。一般に感受面には、複数の磁気抵抗素子が光軸方向に向かってパターン状に配置されている。パターン方向に磁気スケール223と感受面の間隔が異なると、パターン毎に出力特性が異なることとなり、結果的に位置検出装置の出力特性が劣化するという欠点がある。
【0019】
また、特許文献3に示すような構成の位置検出装置では、磁気スケールと感受面の間隔を調整する作業と、ホルダを固定する作業を同時にできる。しかしながら、特許文献3の図8及び図9に示されるように、磁気スケールと感受面との間隔の調整が極端に行われると、磁気スケールに対して感受面が倒れて平行でなくなり、両者の間隔が変化することになる。結果として、位置検出装置の出力特性が劣化するという欠点がある。
【0020】
また、特許文献4に示すような構成の位置検出装置では、磁気スケールと感受面の間隔を調整する作業と、ホルダを固定する作業を同時にできるものの、磁気スケールと感受面の平行は、ホルダと被取付け部材とに形成された枠部の精度によるのみであり、特許文献3と同様に倒れを補正する術を持たない。そのため、成形の精度が確保できない場合には、磁気ス
ケールと感受面との間隔が一様で無くなり、結果として位置検出装置の出力特性が劣化するという欠点がある。
【0021】
さらに、特許文献4に示すような構成の位置検出装置では、ホルダが取り付けられる枠部がレンズユニットの径方向に突出して形成されるため、レンズユニットの外径の拡大につながることとなる。
【0022】
本発明は、組立・調整作業が容易で、磁気記録媒体と感受面との間隔を容易に調整可能であり、さらに磁気スケールに対する感受面の倒れを調整可能であり、良好な出力特性が得られる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そこで本発明は、以下のような手段により、上記の目的を達成する。なお、理解を容易にするために、本発明の一実施例を示す図面に対応する符号を付して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
請求項1に示す発明は、所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体と所定の間隔を隔てて対抗配置した磁気抵抗素子と、前記磁気抵抗素子を保持するホルダと、前記ホルダを保持し、被取付け部材に取り付けられるベースと、前記被取付け部材に対する前記ベースの取り付け位置を調整するシムからなり、前記磁気抵抗素子の感受面で前記磁気記録媒体の移動量を検出する位置検出装置であって、前記ホルダは、一端に前記感受面と略平行且つ前記磁気抵抗素子の移動方向と直交する方向に突出した凸部を有し、前記ベースは、前記凸部が挿入される凹部と、光軸と平行な方向に配設され、互いに平行な2つの平面部を有する2つの突出部と、前記ベースを前記被取付け部材に取り付ける位置決め手段とを備え、前記シムは、前記突出部に設けられた平面部と前記被取付け部材との間に挿入され、前記ベースを前記位置決め手段によって前記被取付け部材に取り付ける際に、前記ベースが前記突出部を基点として湾曲することにより、前記磁気記録媒体と前記磁気抵抗素子の間隔を調整し、前記シムは、その厚みを変更することで前記ベースの前記被取付け部材に対する距離が調整され、前記磁気抵抗素子の前記磁気記録媒体に対する倒れが補正されることを特徴とする位置検出装置である。
【0025】
請求項2に示す発明は、前記位置決め手段は、前記感受面とほぼ直角な方向に前記ベースを付勢する弾性部材と、前記ベースに設けた取付け穴と、これに通したネジから構成し、前記弾性部材の付勢力に逆らって、前記被取付け部材に前記ネジをねじ込むことによって前記ベースを湾曲させ、前記磁気抵抗素子を位置決めすることを特徴とする請求項1記載の位置検出装置である。
【0026】
請求項3に示す発明は、前記突出部と前記磁気抵抗素子を挟んで反対側に、前記位置決め手段を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の位置検出装置である。
【0027】
請求項4に示す発明は、鏡筒と、前記鏡筒内部に支持されたガイド軸と、前記ガイド軸に沿って光軸方向に移動する移動レンズ群と、前記移動レンズ群を保持し、前記ガイド軸によって光軸方向に摺動自在に保持されているレンズ保持手段と、前記レンズ保持手段を光軸方向に駆動する駆動手段とを備え、前記レンズ保持手段の光軸方向の位置を検出する位置検出手段として、請求項1乃至請求項3いずれかに記載の位置検出装置を用いたことを特徴とするレンズユニットである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、組立・調整作業が容易で、磁気記録媒体と感受面との間隔を容易に調整可能であり、さらに磁気スケールに対する感受面の倒れを調整可能であり、良好な出力特性が得られる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例における位置検出装置1を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例における位置検出装置1を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例におけるレンズユニット100を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例におけるレンズユニット100を示す平面図である。
【図5】本発明の実施例におけるレンズユニット100の図4におけるA−A断面図である。
【図6】本発明の実施例におけるレンズユニット100の図4におけるB−B断面図である。
【図7】従来のレンズユニット200を側面から見た断面図である。
【図8】従来例及び本発明の実施例における磁気抵抗素子3及びホルダ5を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の位置検出装置1およびこれを用いたレンズユニット100の実施例について、図1乃至図6に基づいて説明する。図1と図2は位置検出装置1の斜視図、図3は位置検出装置1を用いたレンズユニット100の分解斜視図、図4は位置検出装置1を用いたレンズユニット100の平面図、図5はレンズユニット100の図4におけるA−A断面図、図6はレンズユニット100の図4におけるB−B断面図、図7は従来のレンズユニット200を側面から見た断面図、図8は従来例及び本発明の実施例における磁気抵抗素子3及びホルダ5を示す斜視図である。
【実施例】
【0031】
まず、本発明の位置検出装置1の構造について、図1及び図2を用いて説明する。本発明の位置検出装置1は、図1及び図2に示す通り、磁気抵抗素子3が組み込まれたホルダ5をベース7が保持する構造となっている。
【0032】
ホルダ5には、磁気抵抗素子3からなる感受面9と、磁気抵抗素子3への信号の入出力部材としてのリードフレーム11がインサート成形等で一体的に固定されている。ここで、感受面9の磁気抵抗素子3は、感受面9と平行な方向に向かう磁場の変化を検出できるように、その薄膜パターンを形成しており、磁気記録媒体と向かい合わせて設置し、その位置検出に利用する。
【0033】
ベース7には、ホルダ5がピン13を回動穴15に挿入し、これを中心として回動できる。そこでホルダ5を回動することによって、感受面9の磁気記録媒体に対する傾きを調整し、その後、長孔17に通した傾き調整ネジ19で固定することができる。
【0034】
そしてベース7の両側面には、互いに平行な2つの平面を有する2つの突出部であるところの固定ピン21を設けた。この固定ピン21は、ベース7と一体的に樹脂成形により作成した。もちろん、金属などの別部材を圧入・ネジ止め等の方法により組み立てても良い。また固定ピン21は、光軸と平行な方向に配設され、ほぼ同軸であるようにその形状を定めている。
【0035】
ここで、固定ピン21と被取付け部材との間に挿入されるシム23について述べる。シム23は、同じ形状で厚みが異なるものが予め複数用意されており、固定ピン21の平面部25と被取付け部材に設けられた取付け溝との間に挿入される。この時、固定ピン21の互いに平行な2つの平面25にそれぞれシム23が挿入されるため、このシム23の厚みを調整することによりベース7の取付け位置を調整することができる。なお、シム23は厚みが同じものを複数挿入し、挿入する枚数で厚みを調整する構成でも良い。
【0036】
一方ベース7には、ホルダ5を挟んで固定ピン21の反対側に位置決め手段を構成する取付けバネ27及び取付けネジ29が挿入されるアーム部41が設けられている。ベース7は、その一端に設けられた固定ピン21が被取付け部材たる鏡筒99に固定され、他端がアーム部41に挿入された取付けバネ27及び取付けネジ29で位置決めされる。またアーム部41の末端に設けられたガイドピン31が被取付け部材たる鏡筒99に設けられたレール部33に挿入されて、取付けネジ29の締め込みに伴って揺動できる形状となっている。
【0037】
また、位置決め手段を構成する弾性部材であるところの取付けバネ27は、板状のバネ材がコの字型に折り曲げられ、取付け部35をベース7のアーム部41に設けられた溝37に差し込むことで取り付けられ、一端が被取付け部材に設けられた当接部に接して変形する構成とした。なお、取付け部のコの字型の折り曲げは、溝の部分の厚みよりも若干狭く構成しており、図1に示すように、取付けバネを差し込むだけで圧着保持できるようになっており、組立容易性を高めている。
【0038】
そしてベース7は、取付けバネの弾性力に逆らって取付けネジを締め込むことで湾曲し、保持しているホルダ5と磁気記録媒体との間隔を変化させる。この時、ベース7に設けられたガイドピン31が鏡筒99に設けられたレール部33に挿入されているため、ベース7はガイドピン31がレール部33に沿って移動するように湾曲することとなる。なお、ベース7にはホルダ5を保持するために箱形の形状が設けられており、ベース7の他の形状に比べて変形しにくい形状であることから、ベース7の湾曲によってホルダ5の保持が損なわれない形状となっている。
【0039】
続いて、本発明の位置検出装置1を用いたレンズユニット100の構造について説明する。図3は、以上のように構成した位置検出装置1を用いたレンズユニット100の分解斜視図である。
【0040】
このレンズユニット100の内部には、移動レンズ群であるところのフォーカスレンズ101が、レンズ保持手段であるレンズ枠103に保持されている。このレンズ枠103は、両端を鏡筒99と主軸受け105並びに副軸受け107に固定された主軸109並びに副軸111に沿って光軸方向に摺動自在に支持されている。なお、このレンズユニット100には、図示しないズーム用レンズ群と前部レンズ鏡筒が、光軸方向に順に配置される。
【0041】
このレンズ枠103を光軸方向に駆動する駆動手段としてのリニアモータは、固定子として駆動方向と垂直に磁化した駆動用マグネット113と、コの字型のメインヨーク115および板状のサイドヨーク117とを鏡筒99に設けている。一方、可動子としてコイル119が駆動用マグネット113と所定の空隙を有するようにレンズ枠103に固定されており、フレキシブルプリントケーブル121を用いて、駆動用マグネット113の発生する磁束と直交する様にコイル119に電流を流すことで、レンズ枠103を光軸方向に駆動する仕組みになっている。
【0042】
一方、磁気記録媒体としては、フェライト等の強磁性体でできた磁気スケール123をレンズ枠103に設け、その表面はレンズ枠103の駆動方向に沿って数百μmのピッチでS極とN極を交互に着磁している。ここでは棒状の磁石がレンズ枠103に設けられた溝部にはめ込まれ、さらに側面の4点を紫外線硬化樹脂等によって接着される構成をとっている。
【0043】
次に、位置検出装置1を鏡筒に組み付ける方法について説明する。図5は、図4に示すA−Aの線に沿った断面図で、被取付け部材であるところの鏡筒99には、先述の固定ピン21に対応する形状の矩形溝125を、図5に示すように、光軸方向と平行な方向に設けている。また矩形溝125には、固定ピン21を挟持するシム23を保持する形状も併せて形成されており、シム23の端面が固定ピン21の平面部25に接するよう、シム23を光軸方向に互いにずらして保持する構成となっている。
【0044】
初めに、取付けバネ27を図に示すようにベース7に差し込む。ベース7には予めホルダ5を取り付けておき、ベース7に対する傾きを大まかに調整しておく。次に、矩形溝125の上方から、矩形溝125に、ベース7に設けた突出部であるところの固定ピン21を挿入し、鏡筒99と固定ピン21との隙間にシム23を挿入する。矩形溝125の幅は、シムを挿入することを前提としているため、固定ピン21の厚みよりも広くなるように設定しているので、固定ピン21をスムースに挿入することができる。鏡筒99には、ベース7の幅よりもわずかに広い幅のガイド127を設けているので、このような組立作業が可能となっている。
【0045】
固定ピン21を矩形溝125に挿入し、さらにその両側にシム23を挿入すると、鏡筒99に設けたネジ穴129と、ベース7に設けた取付け穴39が、ほぼ同軸位置になるので、取付けネジ29をネジ穴129にねじ込んで、ベース7を鏡筒に固定する。すると、レンズユニットに設けた検出窓131を通して、ホルダ5の感受面9と、レンズ枠103に設けた磁気スケール123が向き合うようになっている。図6は、図4に示すB−Bの線に沿った断面図で、感受面9と磁気スケール123は、このように所定の間隔を隔てて、光軸方向に沿って、ほぼ平行な姿勢で向き合う。
【0046】
なおホルダ5のリードフレーム11には、外部回路と接続するために、図示しないジャンパ線やフレキシブルプリントケーブルがはんだ付けされる。この際、リードフレーム11はベース7の箱形の部分から外径方向に突き出しており、ベース7のアーム部41はさらに外径方向に形成されているので、フレキシブルプリントケーブルをアーム部41と鏡筒99との間に這わせることができる。そのため、リードフレームやフレキシブルプリントケーブルが鏡筒99から飛び出るような構成とはならず、レンズユニット100の小型化が一層可能となる。しかも、図示しないジャンパ線やフレキシブルプリントケーブルを、リードフレーム11にはんだ付けした後であっても、ベース7を鏡筒99に挿入、位置決めできる。
【0047】
続いて、本発明の位置検出装置1の実際の調整工程について説明する。先述のように、磁気抵抗素子3には、基準ギャップ量よりも間隔が広がると、出力が急激に小さくなり、逆に間隔が狭くなると出力が歪むという特性がある。調整工程は、この特性を利用しており、以下に示すような方法で感受面9と磁気スケール123との間隔を調整する。
【0048】
初めに、ホルダ5をベース7に取付ける。この時、ホルダ5を回動させて感受面がベース7に設けられた固定ピン21と略平行になるように調整し、傾き調整ネジを締め込んで固定する。なお、この調整は、大まかな傾きの調整を目的としているため、目視で行うことができる他、取付け治具等を利用しても良い。
【0049】
続いて、ホルダ5を取り付けたベース7を先述したように鏡筒99に取り付ける。この時、ベース7の固定ピン21と鏡筒99の矩形溝125との間に挿入するシム23は、厚みの違いで複数用意されたシム23のうち、標準シム23aと呼ばれる中間的な厚み(例えば0.2mm)のものを4箇所全てに挿入しておく。
【0050】
次に、レンズユニット100の電子部品に予めはんだ付けしておいたフレキシブルプリントケーブル(不図示)に調整器具を接続する。フレキシブルプリントケーブルの末端はメイン基板(不図示)の表面に実装されたコネクタに接続するために、パターンが露出した構成となっており、調整器具のコネクタに接続されて、レンズユニット100の駆動が行える構成となっている。
【0051】
続いて、調整器具を操作し、フレキシブルプリントケーブルを介して、コイル119に電流を通電し、レンズ枠103を光軸方向に連続して往復移動させる。この時、リードフレーム11を介して磁気抵抗素子3の出力を、調整器具に搭載されるオシロスコープ等で測定し、サインカーブ状の再生出力波形とそのピーク電圧をモニタする。この時、例えば感受面9と磁気スケール123との間隔が広い場合には、ピーク電圧は小さい。この状態から取付けネジ29をねじ込むと、ベース7が湾曲して感受面9と磁気スケール123との間隔が狭くなって、再生出力のピーク電圧は急激に大きくなる。さらに取付けネジ29をねじ込んで基準ギャップ量よりも間隔が狭くなると、ピーク電圧は増加しなくなる。そして、出力波形が歪んで、サインカーブから三角波に近づくようになる。
【0052】
そこで、ピーク電圧の増加が終わったことを確認できる位置まで取付けネジ29を締め付けた後、取付けネジ29を緩めれば、感受面9と磁気スケール123との間隔を基準ギャップ量に設定することができる。
【0053】
しかしこの時、以上のような調整を行ってもピーク電圧が安定せず、調整が完了しない場合がある。例えば、以上のような調整において取付けネジ29の締め込み量が過度に多かったり、少なかったりした場合、磁気スケール123に対して感受面9が傾き、感受面と磁気スケール123との間隔が一様でなくなる場合がある。
【0054】
このような場合、一度取付けネジ29を緩めてベース7を湾曲させるために加わった応力を解く。そして、ベース7の2つの固定ピン21それぞれに差し込まれている標準シム23aのうち、締め込み量過剰の場合は主軸に近い標準シム23aを、締め込み量過小の場合は主軸から遠い標準シム23aを取り外す。さらに、標準シム23aの半分の厚み(例えば0.1mm)を有する調整シム23bを固定ピン21の両側に各々挿入する。すなわち、ひとつの固定ピンの両側面に調整シム23bが挿入され、一方にのみ標準シム23aも挿入されている状態となる。
【0055】
この状態で再度間隔の調整を行う。ここで再び調整が完了しない場合には、さらに厚みが薄い微調整シム23c(例えば0.05mm)を用いて再度シム21を調整する。この時、調整が完了すれば、差し込まれたシム21の上に接着剤や紫外線硬化樹脂を塗布し、シム21が抜け落ちたりずれたりしないように固定する。
【0056】
即ち、本発明は、組立・調整作業が容易で、磁気記録媒体と感受面との間隔を容易に調整可能であり、さらに磁気スケールに対する感受面の倒れを調整可能であり、良好な出力特性が得られる小型の位置検出装置およびこれを用いたレンズユニットを提供するという目的を、特に、磁気記録媒体123と、磁気抵抗素子3と、前記磁気抵抗素子3を保持するホルダ5と、前記ホルダ5を保持し、被取付け部材99に取り付けられるベース7と、前記ベース7の前記被取付け部材99に対する倒れを調整するシム23からなり、前記ホルダ5は、一端に前記感受面9と略平行且つ前記磁気抵抗素子3の移動方向と直交する方向に突出した凸部13を有し、前記ベース7は、前記凸部13が挿入される凹部15と、光軸と平行な方向に配設され、互いに平行な2つの平面部25を有する2つの突出部21と、前記ベース7を被取付け部材99に取り付ける位置決め手段とを備え、前記位置決め手段によって前記被取付け部材に取り付ける際に、前記ベース7が前記突出部21を基点として湾曲することにより、前記磁気記録媒体123と前記磁気抵抗素子3の間隔を調整し、前記ベース7が前記突出部21の平面部25と前記被取付け部材99との間にシム23が変更されて前記ベース7の前記被取付け部材99に対する距離が調整されることにより、前記磁気抵抗素子3の前記磁気記録媒体123に対する倒れが補正される構成により実現した。
【0057】
なお、本発明にかかる位置検出装置は、本発明が適用される撮像装置及び取り付けられるレンズユニットに応じて適宜変形、及び拡大縮小される。また、必要に応じて、装置の外寸法の変更による外観の変化、部材間の結合位置など、種々の変形や変更が可能であるが、いずれも本発明の均等の範囲内である。
【符号の説明】
【0058】
1 位置検出装置
3 磁気抵抗素子
5 ホルダ
7 ベース
9 感受面
11 リードフレーム
13 ピン
15 回動穴
17 長穴
19 調整ネジ
21 固定ピン
23 シム
25 平面部
27 取付けバネ
29 取付けネジ
31 ガイドピン
33 レール部
35 取付け部
37 溝
39 取付け穴
41 アーム部
99 鏡筒
100 レンズユニット
101 フォーカスレンズ
103 レンズ枠
105 主軸押さえ
107 副軸押さえ
109 主軸
111 副軸
113 駆動用マグネット
115 メインヨーク
117 サイドヨーク
119 コイル
121 フレキシブルプリントケーブル
123 磁気スケール
125 矩形溝
127 ガイド
129 ネジ穴
131 検出窓
200 レンズユニット
201 フォーカスレンズ
203 レンズ枠
206 ガイドシャフト受け
209 主軸
211 副軸
213 駆動用マグネット
215 メインヨーク
217 サイドヨーク
219 コイル
223 磁気スケール
299 鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のピッチでN,S極が着磁された磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体と所定の間隔を隔てて対抗配置した磁気抵抗素子と、
前記磁気抵抗素子を保持するホルダと、
前記ホルダを保持し、被取付け部材に取り付けられるベースと、
前記被取付け部材に対する前記ベースの取り付け位置を調整するシムからなり、
前記磁気抵抗素子の感受面で前記磁気記録媒体の移動量を検出する位置検出装置であって、
前記ホルダは、一端に前記感受面と略平行且つ前記磁気抵抗素子の移動方向と直交する方向に突出した凸部を有し、
前記ベースは、前記凸部が挿入される凹部と、光軸と平行な方向に配設され、互いに平行な2つの平面部を有する2つの突出部と、前記ベースを前記被取付け部材に取り付ける位置決め手段とを備え、
前記シムは、前記突出部に設けられた平面部と前記被取付け部材との間に挿入され、
前記ベースを前記位置決め手段によって前記被取付け部材に取り付ける際に、
前記ベースが前記突出部を基点として湾曲することにより、前記磁気記録媒体と前記磁気抵抗素子の間隔を調整し、
前記シムは、その厚みを変更することで前記ベースの前記被取付け部材に対する距離が調整され、前記磁気抵抗素子の前記磁気記録媒体に対する倒れが補正されることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記位置決め手段は、
前記感受面とほぼ直角な方向に前記ベースを付勢する弾性部材と、
前記ベースに設けた取付け穴と、
これに通したネジから構成し、
前記弾性部材の付勢力に逆らって、前記被取付け部材に前記ネジをねじ込むことによって前記ベースを湾曲させ、前記磁気抵抗素子を位置決めすることを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記突出部と前記磁気抵抗素子を挟んで反対側に、前記位置決め手段を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の位置検出装置。
【請求項4】
鏡筒と、
前記鏡筒内部に支持されたガイド軸と、
前記ガイド軸に沿って光軸方向に移動する移動レンズ群と、
前記移動レンズ群を保持し、前記ガイド軸によって光軸方向に摺動自在に保持されているレンズ保持手段と、
前記レンズ保持手段を光軸方向に駆動する駆動手段とを備え、
前記レンズ保持手段の光軸方向の位置を検出する位置検出手段として、
請求項1乃至請求項3いずれかに記載の位置検出装置を用いたことを特徴とするレンズユニット。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11477(P2013−11477A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143246(P2011−143246)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000131326)株式会社シグマ (167)
【Fターム(参考)】