説明

移動体の位置読取装置

【課題】部品の寸法上の誤差や変形に関わらず移動体の位置を常に正確に読み取ることができる移動体の位置読取装置を提供する。
【解決手段】移動体の移動可能方向に延在形成され移動体の位置を記録する位置記録部110と、位置記録部を配置したフレーム120と、位置記録部と所定距離離間しかつ位置記録部に沿って延在するようにフレームに支持されたガイド軸130と、位置記録部に記録された移動体の位置を読み取る読取部140と、ガイド軸に沿って移動し、読取部が位置記録部と所定間隔隔てて対向配置するように読取部を備えたケース本体150と、ケース本体に備わった読取部とフレームに配置された位置記録部との間隔をケース本体がガイド軸の何れの位置にあっても一定となるようにケース本体を位置記録部に付勢する付勢部材160と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリニア移動型の移動体の原点からの絶対位置を検出する移動体の読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から例えばリニア移動型の移動体の原点からの絶対位置を検出する移動体の読取装置は公知である(例えば特許文献1乃至特許文献3参照)。このような従来型の移動体の読取装置に関する典型的な構成について、図面に基づいて説明する。
【0003】
図10(a)は、従来の移動体の位置読取装置に係る一例を示す概略説明図であり、図10(b)は、従来の移動体の位置読取装置に係る他の一例を示す概略説明図である。図10(a)に示した従来の移動体の位置読取装置5は、読取部540を備えたケース本体550が、ベース部材511及び磁性体515からなる位置記録部510に対し、読取部540を対向配置させた状態で2本の平行なガイド軸530(531,532)に沿って移動する構成を有している。
【0004】
一方、図10(b)に示した従来の移動体の位置読取装置6は、読取部640を備えたケース本体650の移動方向と直交方向の一側端部においてガイド軸630に支持され、かつ他側端部においてはケース本体650に備わった凸部651の先端651aが、ベース部材611及び磁性体615からなる位置記録部610の摺動面611aに当接しながら、読取部640を位置記録部610に対向させた状態で移動させるようになっている。
【0005】
なお、ケース本体650には付勢部材660が備わっており、この付勢部材660の付勢力を介して凸部651の先端651aを位置記録部610の摺動面611aに当接させると共に、読取部640を位置記録部610に対して対向させた状態でケース本体650をガイド軸630に沿って移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−084408号公報
【特許文献2】特開2003−344105号公報
【特許文献3】特開2000−304838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来型の移動体の位置読取装置において、共通する問題について説明する。位置記録部は、一般に磁性を帯びた部分と磁性を帯びてない部分とが交互に又はランダムに配置された樹脂材等からなる磁性体をステンレス鋼等からなるベース板の一方の面上に長手方向に亘って延在するよう、射出成形を介して固着させた構造をとっている。従って、ベース板自体に元々反りや歪みがあったり射出成形時の熱影響によりベース板自体が反ったり歪んだりする場合がある。また、ガイド軸の軸芯が直線になっておらずガイド軸自体が元々曲がったりしている場合がある。
【0008】
このようなベース板やガイド軸を図10(a)に示す従来型の移動体の位置読取装置に用いると、読取装置を備えたケース本体がガイド軸の長手方向に沿って移動するに際して、ケース本体に備わった読取装置とベース板に備わった位置記録部との間隔がガイド軸の長手方向において一定せず変化してしまい、読取装置が位置記録部に記録された情報をガイド軸の長手方向全体に亘って正確に読み取れない場合がある。
【0009】
なお、このような問題は、図10(b)に示す他の従来型による移動体の位置読取装置においても、反ったり歪んだりしたベース板を用いたり曲がったガイドを用いると同様に生じる問題である。
【0010】
また、以上の問題は、設計寸法通りとなっていないベース板やガイド軸等部品単体の問題だけに起因するわけではなく、これらの要因と移動体の読取装置を組付ける際の各部品の組付公差に起因することもある。
【0011】
本発明の目的は、部品の寸法上の誤差や変形に関わらず移動体の位置を常に正確に読み取ることができる移動体の位置読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る移動体の位置読取装置は、
直線的に移動する移動体の位置を検知する移動体の位置読取装置において、
前記移動体の移動可能方向に延在形成され当該移動体の位置を記録する位置記録部と、
前記位置記録部を配置したフレームと、
前記位置記録部と所定距離離間しかつ当該位置記録部に沿って延在するように前記フレームに支持されたガイド軸と、
前記位置記録部に記録された移動体の位置を読み取る読取部と、
前記ガイド軸に沿って移動し、かつ前記読取部が前記位置記録部と所定間隔隔てて対向配置するように当該読取部を備えたケース本体と、
前記ケース本体に備わった読取部と前記フレームに配置された位置記録部との間隔を前記ケース本体が前記ガイド軸の何れの位置にあっても一定となるように当該ケース本体を前記位置記録部に付勢する付勢部材と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項1に係る移動体の位置読取装置によると、付勢部材によりケース本体に備わった読取部とフレームに配置された位置記録部との間隔をケース本体がガイド軸の何れの位置にあっても一定となるようにしているので、位置記録部の一部をなすベース部材自体に元々反りや歪みがあったり射出成形時の熱影響によりベース部材自体が反ったり歪んだりしていても、又はガイド軸の軸芯が直線になっておらずガイド軸自体が元々曲がったりしていても、読取装置を備えたケース本体がガイド軸の長手方向に沿って移動するに際して、ケース本体に備わった読取装置とベース部材に備わった位置記録部との間隔をガイド軸の長手方向において常に一定に保つことができる。その結果、読取装置が位置記録部に記録された情報をガイド軸の長手方向全体に亘って正確に読み取ることができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る移動体の位置読取装置は、請求項1に記載の移動体の位置読取装置において、
前記位置記録部は、ベース部材と、当該ベース部材上に配置された磁性体とからなり、前記磁性体を介して前記移動体の移動位置を前記読取部で読み取ることを特徴としている。
【0015】
磁性体を介して移動体の移動位置を読取部で読み取る場合、特に読取部と磁性体の間の距離を移動体の移動位置の如何に関わらず一定にしなければ、読取装置が位置記録部に記録された情報をガイド軸の長手方向全体に亘って正確に読み取ることができない。しかしながら、本発明の請求項2に係る移動体の位置読取装置によると、付勢手段を介してケース本体に備わった読取装置とベース部材に備わった位置記録部との間隔がガイド軸の長手方向において常に一定となるようにしているので、読取装置が位置記録部に記録された情報をガイド軸の長手方向全体に亘って正確に読み取ることができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る移動体の位置読取装置は、請求項2に記載の移動体の位置読取装置において、
前記位置記録部の磁性体は、前記位置記録部のベース部材上に直列に配置された複数の磁性領域からなり、かつ隣り合う磁性領域の間の少なくとも一部には磁性を持たない非磁性領域が存在することを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項3に係る移動体の位置読取装置によると、磁性領域と非磁性領域とが交互に又はランダムに直列配置されるようになり、読取装置を介して移動体の位置を読み取るインクリメント型の位置読取装置又はアブソリュート型の位置読取装置若しくはその双方をベース部材と協働して構成することができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に係る移動体の位置読取装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の移動体の位置読取装置において、
前記ケース本体には溝部が形成され、当該溝部が前記ガイド軸に嵌合することで、前記ケース本体と前記位置記録部との間隔を前記ケース本体が前記ガイド軸の何れの位置にあっても一定となるように、当該ケース本体が前記ガイド軸に沿って移動可能となったことを特徴としている。
【0019】
本発明の請求項4に係る移動体の位置読取装置によると、溝部がガイド軸に嵌合してケース本体がガイド軸に沿って移動可能となっているので、ケース本体がガイド軸の何れの位置にあっても、簡単な構成でケース本体と位置記録部との間隔を一定となるようにすることができる。
【0020】
また、ケース本体が溝部を介してガイド軸に嵌合しているので、ケース本体を回転させながらガイド軸から取り外すことができ、ケース本体に備わった読取部の交換を特別な工具を必要とすることなく容易に行うことができる。
【0021】
また、本発明の請求項5に係る移動体の位置読取装置は、請求項4に記載の移動体の位置読取装置において、
前記ケース本体に設けられている溝部は断面U字形状をなし、当該溝部が前記ガイド軸に嵌合することで、前記ケース本体と前記位置記録部との間隔をケース本体が前記ガイド軸の何れの位置にあっても一定となるように、当該溝部を介して前記ケース本体が前記ガイド軸に沿って移動可能となっていることを特徴としている。
【0022】
本発明の請求項5に係る移動体の位置読取装置によると、溝部が断面U字形状をなし、溝部がガイド軸に嵌合して溝部を介してケース本体がガイド軸に沿って移動可能となっているので、ケース本体がガイド軸の何れの位置にあってもケース本体と位置記録部との間隔を簡単な構成でしかも確実に一定となるようにすることができる。
【0023】
また、ケース本体が溝部を介してガイド軸に嵌合しているので、ケース本体を回転させながらガイド軸から引き抜くことができ、ケース本体に備わった読取部の交換を特別な工具を必要とすることなく容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明の請求項6に係る移動体の位置読取装置は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の移動体の位置読取装置において、
前記ケース本体には前記位置記録部に向かって突出した凸部が形成され、前記位置記録部のベース部材には前記凸部が当接したまま前記ケース本体が前記ガイド軸に沿って移動する摺動部が形成され、前記付勢部材は板バネからなり、前記ガイド軸における前記ケース本体の位置の如何に関わらず前記凸部を前記摺動部に常に当接させる付勢力を与えるように備わったことを特徴としている。
【0025】
本発明の請求項6に係る移動体の位置読取装置によると、付勢部材が板バネからなることとケース本体に位置記録部に向かって突出した凸部が形成されていることから、ケース本体がガイド軸の何れの位置にあってもケース本体と位置記録部との間隔を簡単な構成でしかも確実に一定となるようにすることができる。
【0026】
また、本発明の請求項7に係る移動体の位置読取装置は、請求項6に記載の移動体の位置読取装置において、
前記磁性体は、前記位置記録部のベース部材に射出成形により配置される樹脂材料からなり、前記ベース部材には、前記位置記録部を射出成形する際に用いる金型の割面に対応する位置と前記摺動部の間に射出成形時のガスが前記摺動部に到達するのを阻止するガス流迂回孔が形成されていることを特徴としている。
【0027】
本発明の請求項7に係る移動体の位置読取装置によると、ベース部材と磁性体とからなる位置記録部を射出成形により成形する際、ベース部材には、位置記録部に射出成形する際に用いる金型の割面に対応する位置から漏れ出す射出成形時のガスがベース部材の摺動部に到達するのをガス流迂回孔によって阻止するので、ケース本体の凸部が摺動部を滑らかに摺動するのを妨げるガスの残留物が摺動部上に付着するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、部品の寸法上の誤差や変形に関わらず移動体の位置を常に正確に読み取ることができる移動体の位置読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動体の位置読取装置を全体的に示す斜視図である。
【図2】図1に示した移動体の位置読取装置を分解して示す斜視図である。
【図3】図1に示したケース本体の外側部分及びその周辺を拡大して示す斜視図である。
【図4】図1に示した読取部及びその周辺を拡大して示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るケース本体と読取部を移動方向と直交する方向に沿って示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る移動体の位置読取装置の作用を説明する概略断面図である。
【図7】本実施形態に係る移動体の位置読取装置の変形例であり、図1に対応する斜視図である。
【図8】本実施形態の変形例に係る移動体の位置読取装置の位置記録部をその製造時に使用する金型と共に示す概略断面図である。
【図9】従来の移動体の位置読取装置の位置記録部を射出成形によるその製造時に使用する金型と共に示す概略断面図である。
【図10】従来の移動体の位置読取装置の一例を示す概略説明図(図10(a))及び他の一例を示す概略説明図(図10(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る移動体の位置読取装置を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る移動体の位置読取装置を全体的に示す斜視図である。また、図2は、図1に示した移動体の位置読取装置を分解して示す斜視図である。また、図3は、図1に示したケース本体の外側部分及びその周辺を拡大して示す斜視図である。また、図4は、図1に示した読取部分及びその周辺を拡大して示す斜視図である。また、図5は、本実施形態に係るケース本体と読取部分を移動方向と直交する方向に沿って示す断面図である。また、図6は、本実施形態に係る移動体の位置読取装置の作用を説明する概略断面図である。
【0031】
本発明の一実施形態に係る移動体の位置読取装置1は、図1に示すように、直線的に移動する移動体の位置を検知する移動体の位置読取装置であって、移動体の位置を記録する位置記録部110と、位置記録部110を配置したフレーム120と、フレーム120に支持されたガイド軸130と、移動体の位置を読み取る読取部140と、読取部140を備えたケース本体150と、ケース本体150を位置記録部110に付勢する付勢部材160と、を備えている。
【0032】
ここで、移動体とは、例えば床や車のフロアパネル等にベース部が固定され、ベース部に取り付けられたシートがモータ等のアクチュエータによってスライドする電動シートのシート自体を言う。
【0033】
なお、図1は、ケース本体150が、ガイド軸130の一方の端部側に位置する場合と、他方の端部側に位置する場合とを同図に示している。同図に示すようにフレキシブルフラットケーブル190のコネクタ側が図示しないコネクタに嵌合していて、ケース本体150が磁性体115の長手方向両端まで動作してもフレキシブルフラットケーブル190の撓みに余裕があり、ケース本体の動きに支障をきたさない。なお、本実施形態の変形例を示した図7も同様である。
【0034】
位置記録部110は、移動体の位置読取装置1を組み立てた状態で移動体の移動可能方向に延在形成されている。位置記録部110は、ベース部材111と、ベース部材上に配置された樹脂製の磁性体115とからなり、磁性体115を介して移動体の移動位置を読取部140で読み取るようになっている。
【0035】
ベース部材111は、例えば非磁性材のステンレス鋼でできた厚さが薄く細長の板材からなり、一方の面の幅方向両縁からの一定の幅を有し長手方向全体に亘って後述するケース本体150の凸部151bが摺動する摺動部111aが形成されている。また、ベース部材111の幅方向において一定距離だけ摺動部111aから離間した位置に長手方向全体に亘って位置記録部110の磁性体115が形成されている。
【0036】
位置記録部110の磁性体115は、ベース部材111の長手方向全体に亘って互いに平行して配置されたインクリメント型の位置読取装置及びアブソリュート型の位置読取装置を構成する。インクリメント型の位置読取装置は、位置記録部110のベース部材上に直列に配置された複数の磁性領域からなり、かつ隣接する磁性領域の間には磁性を持たない非磁性領域が存在するようになっている。即ち、インクリメント型の位置記録部は、「磁石あり」と「磁石なし」との出力を読取部140で交互に読取り、「磁石あり」の場合は出力「1」信号を、「磁石なし」の場合は出力「0」信号を出力し、これを積算して移動体の移動量を求めるようになっている。
【0037】
一方、アブソリュート型の位置記録部は、この位置記録部110のベース部材上に直列に配置された複数の磁性領域からなり、かつ磁性領域が連続した部分や、隣接する磁性領域の間には磁性を持たない非磁性領域が1つ又は複数、存在する部分が連なって配置されている。具体的には、アブソリュート型の位置読取装置が、「磁石あり」と「磁石なし」の出力を読取部140で読み取り、「磁石あり」の場合は出力「1」信号を、「磁石なし」の場合は出力「0」信号を出力する。これによって、例えば出力が8ビットの連続したコードを読取装置140で読取ることができる場合、全ての互いに異なる8ビットの「0」「1」信号のコードをベース部材の長手方向全体に亘って配置し、読取部140が読み取る場所に応じた絶対位置を即座に検出するようになっている。
【0038】
本実施形態では、これらインクリメント型とアブソリュート型を組み合わせた位置読取装置を有することで、移動体の移動中に電源が遮断しても、移動体を原点復帰させることなく、その時点の移動体の絶対位置を読み取って電源復帰と同時に移動体が停止した位置から再び移動体を移動させることができるようになっている。
【0039】
フレーム120は、例えば亜鉛処理鋼板やステンレス鋼でできた厚さの厚い細長矩形状板材からなる背板121と、背板121の長手方向両端部からその幅方向全体に亘って同一方向に延在した側板122,123とからなる。そして、背板121の側板延在側面には上述した位置記録部110のベース部材111がそれぞれの長手方向を合致させるように固定されている。背板121の幅方向ガイド軸取り付け側には長手方向全体に亘って側面がL字状に折曲げられ、この折曲げ部124の外側面が後述する付勢部材160に備わったスペーサ167の摺動路124aを形成している。
【0040】
ガイド軸130は、例えばステンレス鋼の棒状部材からなり、その両端がフレーム120の側板122,123における幅方向一方の端部近傍に固定されている。これによって、ガイド軸130は、位置記録部110と所定距離離間しかつ位置記録部110に沿って延在している。
【0041】
ケース本体150は、読取部固定部材151と、ガイド軸摺動部材155と、フレキシブルフラットケーブル(FFC)190を備えている。そして、読取部固定部材151は、例えば、エンジニアリングプラスチックスでできており、読取部140を読取部固定部材151に着脱可能に固定できるようになっている。また、読取部固定部材151のガイド軸130と反対側の上面にはフレキシブルフラットケーブル190の一端191が接続され、この他端はここでは図示しない移動体の位置読取装置1の制御部に接続され、読取部140で読み取った移動体の位置情報を制御部に送るようになっている。
【0042】
ケース本体150の読取部固定部材151には断面U字状の溝部151aが形成されている。また、読取部固定部材151には位置記録部110に向かって突出した凸部151bが形成されている。溝部151aは、読取部固定部材151がガイド軸130に嵌合した状態で、読取部固定部材151が位置記録部110に接近又は離間可能な方向に形成されている。そして、ガイド軸130が溝部151a内を移動可能とすることで、ガイド軸130がわずかにゆがんでいたり、ベース部材111がわずかに反っていたりしても、付勢部材160の弾性力により読取固定部材151の凸部151bがベース部材111の摺動部111aに押し付けられる。これによって、ケース本体150がガイド軸130に沿って移動することでこのケース本体150がガイド軸130の何れの位置にあろうとも、読取部固定部材151の凸部151bがベース部材111に形成された摺動部111aに当接したままケース本体150がガイド軸130に沿って移動することになり読取部固定部材151と位置記録部110との間を常に所望の間隔を保つことができるようになっている。
【0043】
ケース本体150の読取部固定部材151は、ガイド軸130に沿って移動し、かつ読取部140が位置記録部110と所定間隔隔てて対向配置するように読取部140を着脱可能に備えている。
【0044】
ガイド軸摺動部材155は、例えばエンジニアリングプラスチックスでできており、ガイド軸摺動孔155aにガイド軸130が挿通されている。また、ガイド軸摺動部材155には、読取部固定部材151を互いに規定の相対寸法を保ちながら着脱可能に取り付ける係合部(図示せず)が形成されている。また、読取部固定部材151には、読取部140をネジなどの締結部材で読取部固定部材151に固定する固定孔151cが形成されている。また、読取部固定部材151には、ここでは図示しないボールねじのねじ先端部に備わったナットと読取部固定部材151を結合するジョイント部151dが備わっている。
【0045】
なお、ボールねじは、例えばシートスライド用モータによって駆動されると共にボールねじ先端部がシートに連結され、モータの駆動力を介してシートをスライドさせるようになっている。この場合、フレーム120は、スライドするシートを支持する固定支持部材又は床やフロアパネル等に固定されることになる。
【0046】
ガイド軸摺動部材155は、読取部固定部材151との当接部の反対側面に付勢部材係合用の突起部155bを有すると共に付勢部材保持用の爪部155dを有している。
【0047】
本実施形態の場合、読取部140はMR素子からなり、位置記録部110に記録された移動体の位置を読み取る。より詳細には、読取部140は、位置記録部110の磁性体に備わったインクリメント型の磁性記録部を読み取る単一のMR素子と、アブソリュート型の磁性記録部を読取るこの磁性記録部に対応した個数のMR素子が並列に配置されている。読取部140は、上述した読取部固定部材151の固定孔151cにネジなどの締結部材を螺合することで読取部固定部材151にしっかりと固定されている。
【0048】
なお、読取部140にMR素子を用いる代わりに、光学素子を用いると共に位置記憶部もこれに対応させた構成として移動体の移動量を光学的に検知しても良い。
【0049】
付勢部材160は、バネ性を有する材料からなり、ケース本体150に備わった読取部140とフレーム120に配置された位置記録部110との間隔をケース本体150がガイド軸130の何れの位置にあっても一定となるように、ケース本体150を位置記録部110に付勢するようになっている。
【0050】
より具体的には、付勢部材160はL字状の板バネからなり、ガイド軸130におけるケース本体150の位置の如何に関わらず凸部151bを摺動部111aに常に当接させる付勢力を与えるように備わっている。
【0051】
付勢部材160の垂直起立部161は、その中央に形成された取り付け孔がガイド軸摺動部材155の突起部155bに係合している。また、垂直起立部161の先端部近傍には、半円状の膨出部168がガイド軸摺動部材155に向かって突出形成されており、この突出量に応じて付勢部材160がケース本体150を位置記録部110に押し付ける付勢力を調整するようになっている。
【0052】
また、付勢部材160の水平延在部165は、その端部の折曲げ内側面に樹脂でできたスペーサ167を備えている。スペーサ167は、フレーム120の上述した摺動路124aに当接しながら摺動するようになっている。
【0053】
スペーサ167の厚さは、スペーサ167が摺動路124aに当接した際に付勢部材160の水平延在部165が撓んでケース本体150を位置記録部110に押し付ける付勢力を垂直起立部161に生じさせるのに十分な厚さを有している。
【0054】
続いて、上述した移動体の位置読取装置1の作用について説明する。本実施形態に係る移動体の位置読取装置1によると、上述した構成を有することで、付勢部材160によりケース本体150に備わった読取部140とフレーム120に配置された位置記録部110との間隔をケース本体150がガイド軸130の何れの位置にあっても一定となるようにしている。
【0055】
これにより、ベース部材自体に元々反りや歪みがあったり射出成形時の熱影響によりベース部材自体が反ったり歪んだりしても、又はガイド軸130の軸芯が直線になっておらずガイド軸自体が元々曲がったりしていても、読取部140を備えたケース本体150がガイド軸130の長手方向に沿って移動するに際して、ケース本体150に備わった読取部140とベース部材111に備わった位置記録部110との間隔をガイド軸130の長手方向において常に一定に保つことができ、読取部140が位置記録部110に記録された情報をガイド軸130の長手方向全体に亘って正確に読み取ることができる。
【0056】
特に、本実施形態の場合、位置記録部110が、ベース部材111と、ベース部材上に配置された磁性体115とからなり、磁性体115を介して移動体の移動位置を読取部140で読み取るようになっている。そのため、読取部140と磁性体115の間の距離を移動体の移動位置の如何に関わらず一定にしなければ、読取部140が位置記録部110に記録された情報をガイド軸130の長手方向全体に亘って正確に読み取ることができない。しかしながら、本実施形態に係る移動体の位置読取装置1によると、付勢部材160を介してケース本体150に備わった読取部140と位置記録部110との間隔がガイド軸130の長手方向において常に一定となるようにしているので、読取部140が位置記録部110に記録された情報をガイド軸130の長手方向全体に亘って正確に読み取ることができる。
【0057】
また、位置記録部110の磁性体115は、位置記録部110のベース部材111上に並列して配置したインクリメント型の磁性体及びアブソリュート型の磁性体からなる。そして、インクリメント型の磁性体は、磁性領域と非磁性領域とが交互に直列配置されており、アブソリュート型の磁性体は、連続的に配置された磁性領域のエリアと隣接する磁性領域間に非磁性領域が存在するエリアとがランダムに直列配置されている。磁性体115が位置記録部110に上述のように配置されていることで、仮に電源が突然遮断されても、電源復帰時に移動体を原点復帰させる必要なく移動体の移動量を常に正確に読み取ることができる。
【0058】
また、ケース本体150には溝部151aが形成され、溝部151aがガイド軸130に嵌合してケース本体150が溝部151aに沿って移動可能となっているので、簡単な構成でケース本体150と位置記録部110との間隔をケース本体150がガイド軸130の何れの位置にあっても一定に保つことができる。
【0059】
また、ケース本体150が溝部151aを介してガイド軸に嵌合しているので、ケース本体150を回転させながらガイド軸130から取り外すことができ、ケース本体150に備わった読取部140の交換を特別な工具を必要とすることなく容易に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態に係る移動体の位置読取装置では、ケース本体150に設けられている溝部151aは断面U字形状をなし、溝部151aがガイド軸130に嵌合することで、ケース本体150と位置記録部110との間隔をケース本体150がガイド軸130の何れの位置にあっても一定となるように、溝部151aを介してケース本体150が位置記録部130に向かって移動可能となっている。
【0061】
このように、溝部151aが断面U字形状をなし、溝部151aがガイド軸130に嵌合して溝部130を介してケース本体150が位置記録部110に向かって移動可能となっていることで、ケース本体150がガイド軸130の何れの位置にあってもケース本体150と位置記録部110との間隔を簡単な構成でしかも確実に一定となるようにする。
【0062】
また、本実施形態に係る移動体の位置読取装置1が板バネからなる付勢部材160を備えていることで、ケース本体150に形成され位置記録部110に向かって突出した凸部151bが、位置記録部110のベース部材111の摺動部111aに当接したままケース本体150をガイド軸130に沿って移動させるにあたって、付勢部材160を介してガイド軸130におけるケース本体150の位置の如何に関わらず凸部151bが摺動部111aに当接する付勢力を与えることができる。
【0063】
このように、本実施形態に係る移動体の位置読取装置1によると、ケース本体150がガイド軸130の何れの位置にあっても、板バネからなる付勢部材160、ケース本体150の凸部151b、ベース部材111の摺動部111aとの組み合わせからなる簡単な構成で、ケース本体150と位置記録部110との間隔を確実に一定に保つことができる。
【0064】
続いて、上述した本実施形態に係る移動体の位置読取装置の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
図7は、本実施形態に係る移動体の位置読取装置の変形例であり、図1に対応する斜視図である。また、図8は、本実施形態の変形例に係る移動体の位置読取装置の位置記録部をその製造時に使用する金型と共に示す概略断面図である。また、図9は、従来の移動体の位置読取装置の位置記録部を射出成形によるその製造時に使用する金型と共に示す概略断面図である。
【0066】
この変形例に係る移動体の位置読取装置1’は、上述の実施形態に係る移動体の位置読取装置と異なる構成の位置記録部を備えている。具体的には、位置記録部110’の磁性体115は、位置記録部110’のベース部材111に射出成形により配置される樹脂材料からなる点では上述の実施形態と同様であるが、ベース部材111の構成が上述の実施形態と異なっている。即ち、ベース部材111においては、位置記録部110’に射出成形する際に用いる金型71,72(70)の割面75に対応するベース部材上の位置とベース部材上の摺動部の間にガス流迂回孔111bが形成されている。このガス流迂回孔111bは、磁性体115とベース部材111とから射出成形により位置記録部110’を形成するにあたって、射出成形時に金型70の割面75から漏れだすガスが摺動部を通過するのを阻止する役目を果たしている。
【0067】
このガス流迂回孔111bの役割についてより詳細に説明する。上述の実施形態に係る移動体の位置読取装置1は、部品組立公差を低減させて位置記録部110と読取部140との寸法関係を一定に保つように、磁性体115を板金からなるベース部材111に射出成形することで位置記録部110を構成している。その結果、成形時のガスが摺動面を通過して金型外部に放出されていた。そのため、射出成形時に金型の割面75から漏れ出すガスがベース部材111の摺動面111aに付着する虞があった。その結果、ベース部材111の摺動面111aを摺動するケース本体150の凸部151bの滑らかな動きがこのガス残留付着物により阻害されたり、凸部151bの摩耗が早く進んだりすることが懸念されていた。
【0068】
特に上述の実施形態においては、読取部140が、読取部固定部材151に取り付けられ、読取部固定部材151のU字溝がガイド軸130に係合していることで、ガイド軸摺動部材155とは異なり位置記録部の形成面と垂直に移動可能となっていることで、位置記録部110と読取部140間の距離が、ケース本体150のガイド軸130の如何なる位置においても常に一定の距離となるように、付勢部材160の付勢力を介して移動体のケース本体150の凸部151bをベース部材111の摺動部111aに押し付けている。
【0069】
これと同様に、図7に示す本変形例においても、付勢部材160の付勢力を介して移動体のケース本体150の凸部151bをベース部材111の摺動部111aに常に押し付けているので、図9に示すように、射出成形時に金型70の割面75から漏れ出すガス流GFがベース部材111の摺動部111aに付着することで、このガス残留物付着部がベース部材111の摺動部111aにおけるケース本体150の凸部151bの摺動性を損なうことは好ましくない。
【0070】
従って、本変形例に係るベース部材111にガス流迂回孔111bを設けることにより、射出成形時に金型70の割面75から漏れ出すガス流GFがガス流迂回孔111bを介してベース部材111の摺動部111aを通過しないようにすることで、このような残留物付着部がベース部材111の摺動部111aに付着しないようにした。これによって、本発明の作用である読取部140が位置記録部110の情報を常に正確に読み取ることに貢献することが可能となる。
【0071】
なお、上述の実施形態及びその変形例において紹介した各部品の材質については、あくまで例示的な材質に過ぎず、本発明の作用を発揮し得る範囲内であれば如何なる材質の部品も使用できることは言うまでもない。
【0072】
本発明において、更に付け加えるならば、上述の実施形態における読取部固定部材151のU字状をなす溝部151aの有する効果として、以下の効果があげられる。ケース本体150は、ガイド軸130に嵌合し付勢部材160である板バネで付勢される方向に移動できる余裕を必要とする。このために、U字状をなす溝部151aの代わりに長円形状を有するようにしても良い。しかしながら、長円形状とした場合には、例えば樹脂でできたケース本体150を射出成形するにあたって、金型にスライド機構をつけて長円を形成しなければならない。一方、本実施形態の場合のようにU字形状を有するケース本体150の場合には金型による製造時にスライド機構は不要となるので、製造業のコストダウンを図ることが可能となる。また、長円形状の場合、ケース本体150を交換するには、ガイド軸130をフレーム120から外さなければならず、交換作業に手間がかかる。しかしながら、本実施形態の場合のようにU字形状を有する溝部151aの場合には、ガイド軸130をフレーム120から外さなくともケース本体150を位置読取装置から外すことができ、交換作業が容易となる。
【符号の説明】
【0073】
1,1’ 移動体の位置読取装置
71,72(70) 金型
75 割面
110,110’ 位置記録部
111 ベース部材
111a 摺動部
115 磁性体
120 フレーム
130 ガイド軸
140 読取部
150 ケース本体
151 読取部固定部材
151a 溝部
151b 凸部
155 ガイド軸摺動部材
160 付勢部材
167 スペーサ
168 膨出部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に移動する移動体の位置を検知する移動体の位置読取装置において、
前記移動体の移動可能方向に延在形成され当該移動体の位置を記録する位置記録部と、
前記位置記録部を配置したフレームと、
前記位置記録部と所定距離離間しかつ当該位置記録部に沿って延在するように前記フレームに支持されたガイド軸と、
前記位置記録部に記録された移動体の位置を読み取る読取部と、
前記ガイド軸に沿って移動し、かつ前記読取部が前記位置記録部と所定間隔隔てて対向配置するように当該読取部を備えたケース本体と、
前記ケース本体に備わった読取部と前記フレームに配置された位置記録部との間隔を前記ケース本体が前記ガイド軸の何れの位置にあっても一定となるように当該ケース本体を前記位置記録部に付勢する付勢部材と、を備えたことを特徴とする移動体の位置読取装置。
【請求項2】
前記位置記録部は、ベース部材と、当該ベース部材上に配置された磁性体とからなり、前記磁性体を介して前記移動体の移動位置を前記読取部で読み取ることを特徴とする、請求項1に記載の移動体の位置読取装置。
【請求項3】
前記位置記録部の磁性体は、前記位置記録部のベース部材上に直列に配置された複数の磁性領域からなり、かつ隣り合う磁性領域の間の少なくとも一方には磁性を持たない非磁性領域が存在することを特徴とする、請求項2に記載の移動体の位置読取装置。
【請求項4】
前記ケース本体には溝部が形成され、当該溝部が前記ガイド軸に嵌合することで、前記ケース本体と前記位置記録部との間隔を前記ケース本体が前記ガイド軸の何れの位置にあっても一定となるように、当該ケース本体が前記ガイド軸に沿って移動可能となったことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の移動体の位置読取装置。
【請求項5】
前記ケース本体に設けられている溝部は断面U字形状をなし、当該溝部が前記ガイド軸に嵌合することで、前記ケース本体と前記位置記録部との間隔をケース本体が前記ガイド軸の何れの位置にあっても一定となるように、当該溝部を介して前記ケース本体が前記ガイド軸に沿って移動可能となっていることを特徴とする、請求項4に記載の移動体の位置読取装置。
【請求項6】
前記ケース本体には前記位置記録部に向かって突出した凸部が形成され、前記位置記録部のベース部材には前記凸部が当接したまま前記ケース本体が前記ガイド軸に沿って移動する摺動部が形成され、前記付勢部材は、前記ガイド軸における前記ケース本体の位置の如何に関わらず前記凸部を前記摺動部に常に当接させる付勢力を与えるように備わった板バネであることを特徴とする、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の移動体の位置読取装置。
【請求項7】
前記磁性体は、前記位置記録部のベース部材に射出成形により配置される樹脂材料からなり、前記ベース部材には、前記位置記録部を射出成形する際に用いる金型の割面に対応する位置と前記摺動部の間に射出成形時のガスが前記摺動部に到達するのを阻止するガス流迂回孔が形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の移動体の位置読取装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−98130(P2012−98130A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245595(P2010−245595)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】