説明

移動体制御装置及び移動体制御方法

【課題】推力リップルを正確に測定して補正することができる技術の提供。
【解決手段】少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部と、前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる制御部と、前記駆動部における可動要素と固定要素の相対位置を検出する位置検出部と、前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定部と、測定した誘起電圧と前記駆動部の相対位置とから、当該駆動部で発生する推力の変動である推力リップルを補正する推力リップル補正値を算出し、当該補正値を用いて前記駆動部に対する指令に乗算する補正演算部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を移動して位置決めする移動体制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は半導体露光装置や工作機械等において物体を位置決めするためのステージ装置の構成及び制御系の一例を示す図である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図12において、テーブル天板101はガイド102により紙面左右方向に移動可能に支持されている。テーブル天板101には紙面垂直方向に対して極性を交互に変えて配置された4個の磁石からなる可動磁石105が設けられている。この可動磁石105とテーブル天板101の移動方向にある等間隔で並べられたコイル104とによりリニアモータが構成されている。テーブル天板101の移動方向の位置情報は位置検出器106とカウンタユニット107によりサーボコントローラ108および相切替えコントローラ109へ入力される。サーボコントローラ108ではテーブル天板101への位置指令からテーブル天板101の位置計測値を差し引いた値である位置偏差を解消するべく、リニアモータへの制御指令を算出する。
【0004】
相切替えコントローラ109ではテーブル天板101の位置計測値から割り出した可動磁石105とリニアモータコイル104との相対位置関係を基に、各リニアモータコイル104への整流値を演算する。乗算器119は前述のリニアモータへの制御指令に対し、フィルタ回路113を介した上記整流値を乗じて各電流アンプ111に指令を送り、リニアモータコイル104で適宜推力を発生することによりテーブル天板101の位置制御が達成される。
【0005】
リニアモータの推力定数はコイルに流れる電流1.0[A]に対する推力[N]で表され、単位はN/Aである。この推力定数はコイルと可動子磁石の相対位置に係わらず一定であることが理想であるが、実際にはある振幅で変動することが知られている。この推力定数の変動は推力リップルと呼ばれている。例えば1%の推力リップルが存在すると、通常1[N]出すべきところが0.99〜1.0[N]の範囲で推力が位置により変動してしまう。
【0006】
半導体露光装置の性能を表す指標の一つに、1時間あたりでのウエハの処理枚数であるスループットがある。高スループットを実現するためにはステージを駆動する際の速度および加速度を大きくする必要がある。推力リップルの影響は推力に対して乗算になるので、リニアモータで大きな推力を出すほどは推力の誤差が大きくなる。
【0007】
従って、ステージの加速時や減速時に大きな推力を必要とする時に、実際の推力が所望の値から大きくずれることによりステージの位置偏差が大きくなってしまい、結果としてステージの位置偏差が所定の値に収束し露光が行えるようになるまでの整定時間の増加につながる。整定時間の増加はスループットの低下をもたらす。また、近年ではレチクルステージとウエハステージを同期して走査しながら露光するスキャン型露光装置が主流である。ウエハはレチクルステージおよびウエハステージが等速中において露光される。ステージの等速中では加減速中のように大きなリニアモータ推力は必要とされないが、ガイド部の摩擦抵抗やその他の外乱のためリニアモータへの制御指令は零とはならず、やはり推力リップルの影響が表れる。等速中での推力リップルの影響はステージの位置偏差を引き起こし、露光精度の悪化の要因となる。すなわちスキャン型露光装置では加減速中と等速中にも推力リップルの影響を受けてしまう。
【0008】
推力リップル補正として、推力リップルを前もって測定し、ステージ位置を基にした補正テーブルや補正関数を作成して駆動時に推力リップル補正をすることが行われている。また、推力リップルを測定して補正テーブルや補正関数を作成する手法が提案されている(特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特許第3176766号明細書
【特許文献2】特開平7−161798号公報
【特許文献3】特開2001−175332公報
【特許文献4】特開平11−98811号公報
【特許文献5】特開2003−163154公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2では、実際にステージを駆動した時に要したリニアモータの電流値を記録し、その値を基に位置に対するリップル補正のテーブルを作成して露光駆動時にリップル補正を行っている。また、等速時ではリニアモータへの電流制御指令がほぼ零で推力リップルを観測できないため、外力を与えてリニアモータに電流が流れるようにしている。即ち、外力が正確に求められていることが正しい推力リップルの算出に不可欠である。ステージに対する外力はリップル補正用に与えた外力以外にも、例えばステージ定盤面の傾きによるステージ自重分の力、ステージへのケーブルや空気配管等によるばね性による力、等が存在し、正確に求めることが出来ないものである。よっ、上記特許文献2の手法をもってしても推力リップルを正確に求めることは出来ず、推力リップル補正を行っても所望のステージ性能を達成できるとは限らない。
【0010】
上記特許文献3においても実際にステージを駆動した時のデータから補正関数を作成している。推力リップルをステージ駆動アンプの駆動力発生に起因するもの、リニアモータの粘性力に起因するもの、リニアモータ特有の一定振幅を有するもの、の3種に分けて各々にパラメータを設定し、適応機構によりパラメータを推定している。先の3種類の項目の中には、ステージ位置による推力定数の変化という真の意味での推力リップル以外のものも含まれている。実際にステージを駆動した時のデータを用いる手法では、全ての外乱を含んだ制御指令から求めなければならないことを意味している。故に推定パラメータの数が増え、正確に推力リップルを求めることは困難である。
【0011】
以上のように、推力リップル補正テーブルを作成するために、純粋な推力リップルを正確に測定することが望まれている。
【0012】
また、一般にステージやリニアモータおよび電流ドライバの破損を防止するため、制御系での計算において電流ドライバへ指令される値に上限値及び下限値からなる制限を与えることが行われる。電流ドライバへの指令に推力リップルに関する補正を施すと、補正前の電流ドライバへの指令が制限値いっぱいの値である時、補正値を乗ずることで電流ドライバへの指令は制限値を超えてしまう。電流ドライバへの指令を確実に制限値内に収めることができる推力リップルの補正方法が望まれている。
【0013】
また、推力リップルの測定には装置に組み込まれた状態で行うのが正確を期すためには都合が良い。よって装置に組み込まれた状態で推力リップルの測定を行う構成が望まれている。
【0014】
また、固定子および可動子が各々一つで構成された最も簡単な構成のリニアモータも多く用いられている。このようなリニアモータにおいても適用可能な簡単な構成の推力リップルの測定方法が望まれている。
【0015】
また、露光装置の組立の工期短縮のため、露光装置に組み込む前にリニアモータの推力リップル補正テーブルを求めておくことも考えられる。装置に組み込む前に推力リップルを測定する方法も望まれている。
【0016】
また最近では、ウエハ径の大口径化(300mm化)によりステージストロークが増大すること、一つの露光装置内に二つのステージを持つツインステージシステムを採用すること、等により露光装置で用いられるコイルの数が増え、以前は数十個の規模であったのが数百個の規模になることも考えられる。
【0017】
また、コイルやコイルへの配線の断線等の不具合を調べるにあたって、一つずつ調べていくのは効率が悪い。よって、コイルやコイル配線のチェックを効率よく行う方法も望まれている。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、推力リップルを正確に測定して補正することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様の移動体制御装置は、少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部と、前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる制御部と、前記駆動部における可動要素と固定要素の相対位置を検出する位置検出部と、前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定部と、測定した誘起電圧と前記駆動部の相対位置とから、当該駆動部で発生する推力の変動である推力リップルを補正する推力リップル補正値を算出し、当該補正値を用いて前記駆動部に対する指令に乗算する補正演算部とを具備する。
【0020】
また、本発明の他の態様の移動体の制御方法は、少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部とを備え、前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる移動体の制御方法であって、前記駆動部における可動要素と固定要素の相対位置を検出する位置検出工程と、前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定工程と、測定した誘起電圧と前記駆動部の相対位置とから、当該駆動部で発生する推力の変動である推力リップルを補正する推力リップル補正値を算出し、当該補正値を用いて前記駆動部に対する指令に乗算する補正演算工程とを具備する。
【0021】
また、本発明の他の態様の異常検出装置は、少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部と、前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる制御部と、前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定部と、前記測定部における測定結果を用いて異常を検出する検出部とを具備する。
【0022】
また、本発明の他の態様の異常検出方法は、少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部と、前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる制御部とを備える移動体制御装置の異常検出方法であって、前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定工程と、前記測定部における測定結果を用いて異常を検出する検出工程とを備える。
【0023】
なお、上記移動体制御装置を用いて、前記原版と基板とを相対的に位置決めして露光する露光装置や、この露光装置を用いてデバイスを製造するデバイス製造方法も、本発明の適用可能な範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、推力リップルを正確に測定して補正することができる。
【0025】
また、本発明によれば、誘起電圧を用いて、コイルの断線や位置ずれ、磁石の減磁や位置ずれ等の異常状態や不具合を効率的に発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、添付図面を参照して本発明を実施するための好適な態様について詳細に説明する。
【0027】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものである。
【0028】
また、本発明は、以下に説明するデバイス製造用装置の他に、各種工作機械や精密加工装置や各種精密測定装置、あるいはデバイス製造装置を使って半導体デバイス等を製造する方法にも適用可能である。
【0029】
また、本発明は、後述する実施形態であるリップル補正方法やデバイス製造方法等を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
[第1の実施形態]
図1は本発明に係る好適な実施の形態としての半導体デバイス製造用露光装置の概略構成図であり、図2は図1の露光装置に搭載されるレチクルステージの概略構成を示す上面図である。
【0030】
図1において、本実施形態の露光装置は、照明装置1、レチクルを搭載したレチクルステージ2、投影光学系103、ウエハを搭載したウエハステージ4、露光装置本体5とを有する。露光装置は、レチクル(原版)に形成された回路パターンをウエハ(基板)に投影露光するものであり、例えば、ステップアンドリピート投影露光方式またはステップアンドスキャン投影露光方式が適用される。
【0031】
照明装置1は回路パターンが形成されたレチクルを照明し、光源部と照明光学系とを有する。光源部は、例えば、光源としてレーザを使用する。レーザは、波長約193nmのArFエキシマレーザ、波長約248nmのKrFエキシマレーザ、波長約153nmのF2エキシマレーザ等を使用することができるが、レーザの種類はエキシマレーザに限定されず、例えば、YAGレーザを使用してもよいし、そのレーザの個数も限定されない。光源部にレーザが使用される場合、レーザ光源からの平行光束を所望のビーム形状に整形する光束整形光学系、コヒーレントなレーザ光束をインコヒーレント化するインコヒーレント化光学系を使用することが好ましい。また、光源部に使用可能な光源はレーザに限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプ等のランプも使用可能である。照明光学系はレチクルを照明する光学系であり、レンズ、ミラー、ライトインテグレーター、絞り等を含む。
【0032】
投影光学系3は、複数のレンズ素子のみからなる光学系、複数のレンズ素子と少なくとも一枚の凹面鏡とを有する光学系(カタディオプトリック光学系)、複数のレンズ素子と少なくとも一枚のキノフォーム等の回折光学素子とを有する光学系、全ミラー型の光学系等を使用することができる。
【0033】
上記のように構成された露光装置は、半導体集積回路等の半導体デバイスや、マイクロマシン、薄膜磁気ヘッド等の微細なパターンが形成されたデバイスの製造に利用されうる。
【0034】
次に、レチクルステージの概略構成について説明する。
【0035】
図2において、レチクルステージ2は不図示の静圧案内軸受を介して上面11aが鏡面状に加工された基準面となるステージ定盤11に非接触で支持されている。静圧案内軸受は高い剛性を有し、レチクルステージ2はステージ定盤11に対してZ方向と煽り方向(X軸又はY軸周りの回転方向)の変位が規制され(当該方向への運動を禁止するように拘束され)、XY方向である水平面に沿ってのみ変位可能になっている。
【0036】
ステージ定盤11のX方向の両側面(Z軸周りのヨーガイド面)11bもやはり鏡面状に加工されており、不図示の静圧案内軸受を介してX方向およびZ軸周りの回転方向であるθz方向の変位が規制されている。従って、レチクルステージ2はステージ定盤11上をY軸方向にのみ移動自在となり、他の方向への変位は静圧案内軸受の剛性により規制されている(当該方向への運動を禁止するように拘束されている。)。
【0037】
レチクルステージ2にはY軸方向の左右両側に一対の可動子ユニット12が設けられている。これらの可動子ユニット12の各々は対応する固定子ユニット13と協働して左リニアモータ、右リニアモータを構成している。リニアモータの構成に関しては後述する。
【0038】
ステージ定盤11及び左右の固定子ユニット13は共に不図示の基準ベースに支持されている。レチクルステージ2には反射鏡14が設けられており、不図示のレーザ干渉計からの計測光を反射することにより、レチクルステージ2のY軸方向への変位量又は移動位置が計測される。不図示の装置制御系から指令されたレチクルステージ2の位置指令とレーザ干渉計により計測されたステージ位置情報とにより、公知のPID制御系を用いた後述する制御器(図7参照)からリニアモータに推力を与える制御値が生成される。リニアモータは後述する電流ドライバ(図7参照)により適宜コイルに電流を流すことによりY軸方向に駆動力を発生し、レチクルステージ2を駆動して位置制御が達成される。レチクルステージ2には不図示のレチクル(原版)が搭載され、照明光学系1からの露光光がレチクルを透過し、縮小投影光学系3を経て不図示のウエハステージ4上のウエハ(基板)への露光が行われる。
【0039】
図3はリニアモータの構成図である。
可動子ユニット12は、複数の永久磁石からなる磁石群として構成される磁石ユニット21と、この磁石ユニット21を保持しステージ面に取り付けるための可動子板22とを有する。磁石ユニット21は磁極の向きがZ方向である計8個の主極磁石21aと、Y方向である計10個の補極磁石21bとからなる。主極磁石21aの磁極方向は1つおきに補極磁石21bを介して反対向きになっており、Y方向に等間隔で配置されている。補極磁石21bは主極磁石21aのコイル23に面した部位の極性が補極磁石21bと反発する向きに設けられており、主極磁石21aから出る磁束を効率的に用いることができるように構成されている。固定子ユニット13は強磁性体で作られたヨーク24にY方向に等間隔にコイル23が設けられ、上下から可動子ユニット12を挟むように配置されている。ここで、主極磁石21aのピッチMPとコイル23のピッチCPとは下記式1で表される関係がある。
CP=1.5*MP・・・(1)
上下のコイル、例えばイとイ’はコイルに流れる電流が同じ向きになるように直列に接続されており、一つの電流ドライバにて駆動される。これらのコイルを直列に接続せず、個々のドライバで駆動しても良い。尚、以下の説明では、上下のコイルは直列に接続されているものとする。
【0040】
図4は、図3に示すイ(a)、ロ(b)、ハ(c)の各コイルに同じ向きに一定電流を流し、可動子ユニット12をY軸方向に移動させた時に各コイルから可動子ユニット12が受ける力を示している。
【0041】
コイルのイでは-2.5MP〜0.5MPの間においてほぼ正弦波の力となり、その前後の-2.5MP以下と0.5MP以上の位置ではコイルの一部しか可動子ユニット12の磁石に対面しないため力が小さくなる。コイルのロでは-MP〜2MPにおいてほぼ正弦波となり、位相はイと90度ずれている。コイルのハでは0.5MP〜3.5MPにおいてほぼ正弦波となり、位相はイと180度ずれている。ここで、イとハにおいて、0.5MPまではイのコイルに電流を流し、0.5MP以上においてハのコイルに前記と逆向きの電流を流すと、連続的にほぼ正弦波状の力を発生することができる。このとき、一つの電流ドライバを用い、イとハでコイルの向きを逆向きに接続し、コイルと磁石の位置関係に応じて選択スイッチを用いてどちらかのコイルのみに電流を流すようにすれば、電流ドライバを個々のコイルに用意しないで済む。同様に3MPの間隔で一つおきにコイルを交互の向きに電流を流すことにより、連続的にほぼ正弦波の力を発生することができる。全く同様にしてロを代表とするコイルとその一つおきのコイルに交互の向きに電流を流すことにより、図5のように連続的にほぼ正弦波の力を発生することができる。ここで、イに代表されるコイル群をA相、ロに代表されるコイル群をB相と呼ぶことにする。A相、B相コイル群に位置に応じて選択的に電流を1[A]流したとき、可動子位置yに対する発生推力fa,fbは、図5の波形を正弦波とすると、
fa=K*cos(ω*y)・・・(2)
fb=K*sin(ω*y)・・・(3)
ただし、ω=2*π/(2MP)
となる。ここで、Kはある定数である。A相およびB相に流す指令電流Iに対し、次の整流値ca,cbを乗じてコイルに電流を流すと、
ca=cos(ω*y)・・・(4)
cb=sin(ω*y)・・・(5)
A相とB相の電流による力の合力Fは、
F=K*cos(ω*y)*I*cos(ω*y)+K*sin(ω*y)*I*sin(ω*y)
=K*I*(cos2(ω*y)+sin2(ω*y))
=K*I・・・(6)
となり、可動子の位置yに依らずIに比例する。比例定数のKを推力定数(単位N/A)と呼ぶ。ただし、式6はあくまでも図5の波形を正弦波であると仮定した場合である。実際には磁石組立の際の位置ずれ、磁石自体の着磁特性のずれ、等により式2,3のように理想的な正弦波とはならない。従って、式6のKは一定とはならない。一般的に磁石のずれ等による推力のムラは図6のような周期MP/2を持つ。この推力ムラを推力リップル、図6のαをリップル率とそれぞれ呼ぶことにする。また、非常に理想的な磁石が構成できたとして式2,3が成立していたとする。このとき、A相のコイル位置が+dずれているとすると式4は、
ca=cos(ω*(y-d))・・・(4)’
となり、やはり式6のKは一定ではなくなってしまう。このように、磁石に要因があるもの、コイルに要因があるもの、の2種類の推力リップルが存在する。コイルの位置決め精度は高くできるので、前者が主要因であることが多い。
【0042】
図7は本実施形態のステージ制御系を示したブロック線図である。同図において電流ドライバ32、リニアモータ33、切替えスイッチ34、推力リップル補正テーブル36、推力リップル補正テーブル算出器37、誘起電圧取り込み口38は左右のリニアモータに個別に設けられており、一点鎖線内で示した部分、つまり、制御器31、ステージ35のみが左右のリニアモータに共通する構成である。
【0043】
また、図7のリニアモータ33には図8のようなコイル選択回路が組み込まれている。コイル選択回路は前述したように、コイルと磁石の位置関係に応じたコイル選択指令により、A相、B相の各相のコイルのうち一つずつを選択して電流ドライバに接続する。図8の例ではA1,B1のコイルが選択されている状態を示している。ここで、A相のコイルの個数をAn個、B相のコイルの個数をBn個としてある(nは自然数。)。これらの個数はコイルピッチと必要なステージのストロークにより定まる。
【0044】
次に、図9のシーケンスに従って制御動作を説明する。
【0045】
S1:通常の初期化動作を行う。このとき、図7の切替えスイッチ34は電流ドライバ32側に接続されている。初期化動作によりレーザ干渉計の初期化、レチクルステージの原点出しが終了し、位置サーボ系が機能してレチクルステージを任意の位置に駆動することが可能になる。
【0046】
S2(S2−2):次に、右リニアモータの推力リップル測定動作に入る。このとき、図7の切替えスイッチ34は、右リニアモータが誘起電圧取り込み口38に接続され、左リニアモータが電流ドライバ32側に接続されている。
【0047】
S2−2:レチクルステージは左リニアモータのみで駆動されることになるため、大きな加減速力を出すとθzモーメントが発生してしまう。よってθz方向の静圧案内軸受が十分に耐えられる程度の小さな加速度により駆動を行う。そして、レチクルステージをYマイナス側のストローク限界まで移動する。次にYプラス側のストローク限界まで等速で駆動すると共に、右リニアモータのコイルで発生する誘起電圧をA相、B相の各相毎に測定する。
【0048】
ステージ制御系はデジタル信号処理を行う構成とすることが望ましく、誘起電圧はAD(アナログ−デジタル)変換器によりデジタル計算機に取り込まれる。このとき、ステージの位置と速度の情報も同時に計測する。ステージの速度は時間的に離散的な位置計測値の差分から算出しても良い。ステージの速度を大きくすると誘起電圧が高くなり、AD変換器の入力値の上限を超えてしまう虞があるので、AD変換器の上限を超えず且つSN比が良くなるようにステージ速度を適宜設定すればよい。
【0049】
ここで、誘起電圧について説明する。
【0050】
ステージの質量をm[kg]、ステージの速度をv[m/s]、誘起電圧をV[V]、コイルを閉じた時に誘起電圧により流れる電流をI[A]とすると、エネルギーの関係から下記式7が成り立つ。
d/dt(1/2*mv2)=VI・・・(7)
上記式7を変形すると、
dv/dt(vm)=VI・・・(7’)
となる。一方、運動方程式より力F[N]として、
dv/dt(m)=F・・・(8)
となる。コイルに流れる電流Iとステージにかかる力Fとの間の関係を係数Kを用いて
F=K*I・・・(9)
とすると、上記式7’,8,9より、下記式10が得られ、
dv/dt(vm)=v*F=v*K*I=V*I・・・(10)
K=V/v・・・(11)
となる。
【0051】
よって、係数Kは誘起電圧とその時のステージ速度vによって表すことができる。誘起電圧をそのときのステージ速度vで除した値を正規化誘起電圧と呼ぶことにする。A相、B相の誘起電圧をステージ速度で除した各々の正規化誘起電圧Va,Vbを算出する。各々の相の正規化誘起電圧に対して、上記式4,5の整流値ca,cbを乗じて和をとると、リニアモータとしての推力係数Kが得られる。
【0052】
この推力係数Kには、ステージに加わる外乱力は一切含まれない。また、実際の磁石とコイルとの相互作用により測定された誘起電圧を元に計算するので、純粋なリニアモータの推力係数と言える。KをKの平均値Kmで除した値を推力リップル係数と呼ぶことにする。推力リップル係数の逆数を求め、これを推力リップル補正係数と呼ぶことにする。
【0053】
図10に推力リップル係数の一例とそれに対応する推力リップル補正係数を示す。推力リップル係数と推力リップル補正係数は掛け合わすと1.0になる。そして、推力リップル補正係数を用いて図7の推力リップル補正テーブル36を作成する。推力リップル補正テーブル36はステージ位置情報を引数にしており、ステージ位置情報を細かな間隔で作成するほど精度が上がるが、露光装置上ではメモリの記憶容量に制限がある。このため、推力リップルの周期の数十分の1から百分の1程度の間隔で補正テーブル値を作成し、このテーブル値を公知の補間方法を用いて補間して補正値を算出することが好ましい。このようにして作成された補正値からなる推力リップル補正テーブル36は露光装置上のメモリに蓄えられる。
【0054】
図7は、推力リップル補正テーブル算出器37が誘起電圧データから推力リップル補正テーブル36を作成するまでの機能を概念的に示している。この機能を有する計算機は露光装置上に設けても良いし、露光装置とは別の計算機で作成し、露光装置のメモリへ推力リップル補正テーブルを複写しても良い。
【0055】
S3(S3−1,S3−2):次に、図7の切替えスイッチ34を、右リニアモータを電流ドライバ33側に、左リニアモータを誘起電圧取り込み口38側に接続し、上記と全く同様の手順により左リニアモータの推力リップル補正テーブルを作成する。
【0056】
S4:次に、図7の切替えスイッチ34を左右のリニアモータとも電流ドライバ32側に接続する(S4−1)。推力リップル補正テーブル算出器37が機能し始めると、ステージ位置情報を基に推力リップル補正テーブルから適宜補間を行い補正値を得る(S4−2)。
【0057】
推力リップル補正テーブル36は制御器31から電流ドライバ32への指令値に対して補正値を乗算して補正を行って電流ドライバ32へ送る。この補正によりレチクルステージの位置Yに依らず、リニアモータは推力特性があたかも一定値の推力定数Kmを有するがごとく振舞う。リニアモータの推力リップルは、前述のように磁石に要因があるもの、コイルに要因があるもの、の2種類があり、換言すると磁石の減磁や位置ずれ、コイルの位置ずれが起こらなければ推力リップルは変化はしない。よって、装置立ち上げ時に一度推力リップル補正テーブルを作成すれば、後は同じテーブルを用いればよい。装置を長年にわたり使用し磁石の減磁等の影響が現れるようであれば、再び上記手順により推力リップル補正テーブル36を作成し直せばよい。
[変形例]
尚、上記実施形態の変形例として、推力リップル係数から推力リップル補正係数を求める際に、推力リップル係数の平均値Kmではなく最小値Kminにより推力リップル係数を除してもよい。そうすると推力リップル係数は1.0以上となり、この逆数である推力リップル補正係数は1.0以下であり、推力リップル補正テーブルから得る補正値の値は1.0以下となる。
【0058】
一般に、ステージやリニアモータおよび電流ドライバの破損を防止するため、制御系での計算において電流ドライバへ指令される値に上限値及び下限値からなる制限を与えることが行われる。推力補正テーブルから得る補正値が1.0を超えると、補正前の電流ドライバへの指令が制限値いっぱいの値である時、補正値を乗ずることで電流ドライバへの指令は制限値を超えてしまう。推力補正テーブルから得る補正値の値が1.0以下であれば、補正前の電流ドライバの指令を管理することにより電流ドライバへの指令を確実に制限値内に収めることができる。
【0059】
上記実施形態では、図3で説明したように、上下のコイルユニットにおいて上下の対のコイルを直列に接続して構成したが、前述のように、直列接続せず個々に電流ドライバを設けて駆動しても良い。その場合は、推力リップル補正テーブルが右および上リニアモータ、右および下リニアモータ、左および上リニアモータ、左および下リニアモータの4通りとなり、個別に推力リップルを補正すればよい。
【0060】
また、図2のレチクルステージでは左右の固定子ユニットが基準ベースに固定されていたが、リニアモータの反力を基準ベースに伝えないようにするため、固定子ユニットを基準ベース上にY軸方向に移動可能に構成しても良い。この場合は固定子ユニットのコイルが移動するため、レチクルステージの位置のみではなく固定子ユニットの位置も計測し、各々の計測値とから可動子磁石とコイルの位置関係を算出して推力リップル補正テーブルの作成および推力リップル補正テーブルからの補正値の算出を行えばよい。
【0061】
また、本実施形態では、可動子として磁石、固定子としてコイルの構成を示したが逆の構成でもよく、可動子としてのコイルと固定子としての磁石からなるリニアモータにおいても本発明の効果を奏するように実施することができる。この場合はコイルを選択的に切り替える必要が無いので、図8のコイル選択回路は不要となる。
【0062】
また、リニアモータとして磁石をコイルにて挟む構成を説明したが、他の構成でも良い。例えば、特許文献1のように磁石でコイルを挟む構成でも良い。
【0063】
また、A相、B相の2相による構成を示したが、3相以上の構成を用いても良い。要は、各相毎に誘起電圧から正規化誘起電圧を作成して各相の整流値を乗じた和から推力係数および推力リップル係数を算出して、推力リップル補正係数及び推力リップル補正テーブルを作成する手順を踏めばよいのである。
[他の実施形態]
図10は図1の露光装置に搭載される他の実施形態のレチクルステージの概略構成を示す上面図であり、図2と同一の要素には同一の符号を付して示している。
【0064】
このリニアモータでは一つの固定子13に対してレチクルステージ2とサブステージ41の2つのステージに各々独立して可動子12,43が設けられている。このような構成のリニアモータに対しては、連結部材42を用いて両ステージを連結固定し、一方のステージの図7に対応する切替えスイッチを電流ドライバ側に、他方のステージの切替えスイッチを誘起電圧取り込み口側に接続し、電流ドライバ側に接続されたリニアモータの駆動を行い、誘起電圧取り込み口側に接続されたリニアモータの誘起電圧から推力リップル補正テーブル作成の一連の動作を行う。この後、両者の関係を逆にしてもう片方のステージ用の推力リップル補正テーブルを作成すればよい。連結部材42は電磁石のように電磁気力を用いたものでも良いし、真空チャックのように大気圧に対する負圧による力を利用する方法でも良いし、ボルト締結により固定する方法でも良い。
【0065】
また、ステージが2つの場合でなくても、推力を稼ぐために一つのステージにおいて一つの固定子に対して複数の可動子ユニットを設ける場合も考えられる。この場合も、可動子のうち一つ以上を用いてステージを駆動し、駆動に用いない可動子に対応する誘起電圧を計測してその後の処理を行い、推力リップル補正テーブルを作成すればよい。続いて、ステージを駆動していた可動子に対応する誘起電圧を測定できるように、他の可動子を用いてステージを駆動すればよい。このような構成を用いれば、装置に組み込まれた状態のままでリニアモータの各可動子に対応する推力リップル補正テーブルを作成し、推力リップルを補正した駆動制御を行うことができる。
【0066】
上記実施形態では、一つのステージに複数のリニアモータがあったり、一つのリニアモータ固定子に対して複数のステージ及び可動子がある構成で説明したが、場合によっては、一つのステージに一つのリニアモータしかない場合もある。このときは、相毎に切替えスイッチを電流ドライバ側かあるいは誘起電圧取り込み口側に設定すればよい。例えば、A相、B相の2相駆動によるリニアモータの場合、先ずA相を電流ドライバ側に設定し、B相を誘起電圧取り込み口側に設定してA相のみにてステージを駆動することになる。このとき、図5からわかるようにA相のみの駆動では推力が零になる位置が存在し、ステージの停止位置がこのA相での推力が零の位置になってしまうとステージをその位置から駆動することが出来なくなってしまう。よって、誘起電圧を取り込む際にステージの停止位置を考慮する必要がある。誘起電圧の測定には前述のように高いステージ速度は必要なく、位置と速度さえ計測できていれば速度に多少のムラがあっても構わない。一度ステージが動き出せばステージの慣性力によりA相の推力が零になる位置を通過できるので、ステージの初期位置及び停止位置にさえ留意しておけば誘起電圧測定のための駆動は問題なく行える。そして、B相の誘起電圧測定から前述の一連の演算により推力リップル補正テーブルを作成した後、切替えスイッチを変更してB相によりステージを駆動しA相の誘起電圧を測定できるようにする。後は前述の一連の演算を行えばよい。2相駆動の場合は1相のみで駆動した場合、推力が零になる位置が存在したが3相以上のリニアモータにおいて2相以上の相で駆動する場合は推力が零となる位置は無いので、駆動時において停止位置を考慮する必要は無くなる。3相以上のリニアモータにおいても各相毎に順番に誘起電圧測定を行い、推力リップル補正テーブルを算出すればよい。このような構成を用いれば、可動子が一つの場合でも推力リップル補正テーブルを作成し、推力リップルを補正した駆動制御を行うことができる。
【0067】
上記説明では、リニアモータの一部を用いてステージを駆動して誘起電圧を測定する方法を述べた。前述のように推力リップル補正テーブルを算出するのは基本的に装置立ち上げ時に一回のみであるので、他に駆動手段を設けることも考えられる。計測時に他のリニアモータを設けたりロボットハンドにより駆動しても良い。手動も考えられなくも無いが、速度ムラが非常に大きくなり正規化誘起電圧の計算に誤差を生じる虞があるので好ましくない。
【0068】
また、装置に組み込む前にリニアモータとしての組立時において他の組立計測装置において誘起電圧を測定して推力リップル補正テーブルを算出し、リニアモータを露光装置に組み込んでから推力リップル補正テーブルを露光装置に受け渡しても良い。そうすると、露光装置以外において推力リップル補正テーブルを作成することができる。
【0069】
また、本発明は、推力リップル補正テーブル作成以外の用途としても用いることができる。例えばコイルの断線に代表されるリニアモータの異常や不具合を検出する装置や方法として適用することができる。この場合、図7に示す誘起電圧取り込み口から取り込んだ誘起電圧データを、事前に実験等で得られた正常時の波形データ等と比較することにより、コイルやコイル配線の断線やコイルの位置ずれ、磁石の減磁や位置ずれ等の異常状態や不具合を効率的に検出することができる。
[デバイス製造方法]
次に、上述した露光装置を利用したデバイス製造方法の実施形態を説明する。
【0070】
図13は微小デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造のフローを示す。ステップS1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップS2(露光制御データ作成)では設計した回路パターンに基づいて露光装置の露光制御データを作成する。一方、ステップS3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップS4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意した露光制御データが入力された露光装置とウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップS5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップS4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップS6(検査)ではステップS5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップS7)される。
【0071】
図14は上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す。ステップS11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップS12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップS15(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。ステップS16(露光)では上記説明した露光装置によって回路パターンをウエハに焼付露光する。ステップS17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップS19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
[効果]
本実施形態によれば、リニアモータの誘起電圧を基に推力リップル係数を求めるので、他の外乱等の影響を受けない純粋な推力リップルを求めることができ、それから作成した推力リップル補正テーブルを用いてステージ駆動時に補正を行うので、リニアモータに推力リップルがあったとしてもあたかも推力リップルが無いかのごとく良好な位置決め制御が達成できる。
【0072】
また、推力リップル補正テーブルから算出した補正値が1.0以下であるので、補正前の電流ドライバの指令を管理することにより電流ドライバへの指令を確実に制限値内に収めることができる。また、装置に組み込まれた状態のままでリニアモータの各可動子に対応する推力リップル補正テーブルを作成し、推力リップルを補正した駆動制御を行うことができる。
【0073】
また、可動子が一つの場合でも推力リップル補正テーブルを作成し、推力リップルを補正した駆動制御を行うことができる。また、装置以外においても推力リップル補正テーブルを作成することができる。
【0074】
更に、誘起電圧データを調べることにより、コイルの断線や位置ずれ、磁石の減磁や位置ずれ等の不具合を効率的に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る好適な実施の形態としての半導体デバイス製造用露光装置の概略構成図である。
【図2】図1の露光装置に搭載されるレチクルステージの概略構成を示す上面図である。
【図3】リニアモータの構成図である。
【図4】コイルに一定電流を流した時に可動子が受ける力と位置との関係を示した図である。
【図5】コイルへの通電を適宜切り替えることにより発生する力と位置との関係を示した図である。
【図6】磁石に起因する推力リップルの例である。
【図7】本発明に係る実施形態のステージ制御系のブロック線図である。
【図8】コイル選択回路の一例を示す図である。
【図9】本発明に係る実施形態の制御シーケンス図である。
【図10】推力リップル係数の一例を示す図である。
【図11】他の実施形態のレチクルステージの構成図である。
【図12】物体を位置決めするためのステージ装置の構成及び制御系の一例を示す図である。
【図13】微小デバイスの製造フローを説明する図である。
【図14】ウエハプロセスを説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
1 照明装置
2 レチクルステージ
3 投影光学系
4 ウエハステージ
5 露光装置本体
11 ステージ定盤
12 可動子ユニット
13 固定子ユニット
14 反射鏡
21 磁石ユニット
22 可動子板
23 コイル
24 ヨーク
31 制御器
32 電流ドライバ
33 リニアモータ
34 切替えスイッチ
35 ステージ
36 推力リップル補正テーブル
37 推力リップル補正テーブル算出器
41 サブステージ
42 連結部材
43 サブステージ用可動子ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、
前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部と、
前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる制御部と、
前記駆動部における可動要素と固定要素の相対位置を検出する位置検出部と、
前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定部と、
測定した誘起電圧と前記駆動部の相対位置とから、当該駆動部で発生する推力の変動である推力リップルを補正する推力リップル補正値を算出し、当該補正値を用いて前記駆動部に対する指令に乗算する補正演算部とを具備することを特徴とする移動体制御装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記可動要素としての磁石と、前記固定要素としてコイルとを有する多相リニアモータであり、
前記測定部は、前記駆動部の第1相のコイルに通電したときの第2相のコイルに発生する誘起電圧を測定することを特徴とする請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項3】
前記駆動部は、1つの固定要素に対して複数の可動要素を有し、
前記測定部は、前記駆動部の第1の可動要素を駆動したときの第2の可動要素により発生する誘起電圧を測定することを特徴とする請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項4】
前記駆動部は、第1の駆動要素と第2の駆動要素とを有し、
前記測定部は、前記第1の駆動要素を駆動したときの前記第2の駆動要素に発生する誘起電圧を測定することを特徴とする請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記駆動部を前記制御部によって駆動する状態と前記制御部によって駆動されない誘起電圧測定状態とに切り替える切替部を有することを特徴とする請求項1乃至4に記載の移動体制御装置。
【請求項6】
前記補正演算部は、算出された前記推力リップル補正値から補正テーブルを作成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の移動体制御装置。
【請求項7】
前記補正演算部は、前記誘起電圧をそのときの移動体速度で除した値を用いて推力リップル係数を算出し、この推力リップル係数をその平均値で除した値の逆数を前記推力リップル補正値として算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の移動体制御装置。
【請求項8】
前記推力リップル補正値は1.0以下であることを特徴とする請求項7に記載の移動体制御装置。
【請求項9】
少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部とを備え、前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる移動体の制御方法であって、
前記駆動部における可動要素と固定要素の相対位置を検出する位置検出工程と、
前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定工程と、
測定した誘起電圧と前記駆動部の相対位置とから、当該駆動部で発生する推力の変動である推力リップルを補正する推力リップル補正値を算出し、当該補正値を用いて前記駆動部に対する指令に乗算する補正演算工程とを具備することを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項10】
少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、
前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部と、
前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる制御部と、
前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定部と、
前記測定部における測定結果を用いて異常を検出する検出部とを具備することを特徴とする異常検出装置。
【請求項11】
少なくとも一方向に移動可能に設けられた移動体と、前記移動体に接続された可動要素と、当該可動要素を変位させる固定要素とを有する駆動部と、前記駆動部に通電して前記可動要素に推力を発生させる制御部とを備える装置の異常検出方法であって、
前記駆動部の可動要素を駆動させて、当該駆動部に発生する誘起電圧を測定する測定工程と、
前記測定部における測定結果を用いて異常を検出する検出工程とを備えることを特徴とする異常検出方法。
【請求項12】
原版のパターンを基板に露光する露光装置であって、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の移動体制御装置を用いて、前記原版と基板とを相対的に位置決めして露光することを特徴とする露光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の露光装置を用いてデバイスを製造することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−211873(P2006−211873A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23931(P2005−23931)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】