説明

移動体通信システム性能評価装置

【課題】実システムを使用した場合と同様の通信動作を模擬することが可能であり、通信性能の評価の精度を向上すると共に、実際に通信を行った場合の使い勝手を評価することを可能とする移動体通信システム性能評価装置を提供する
【解決手段】無線でパケットを送受信するための手順である無線アクセスプロトコルと、移動体の移動特性をモデル化したものであり、複数の地上局無線アクセスプロトコル模擬部と、地上局切替模擬部と、移動局無線アクセスプロトコル模擬部から構成され、各地上局無線アクセスプロトコル模擬部はそれぞれ対応する地上局設備へ接続され、移動局無線アクセス模擬部は移動局設備へ接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
移動局と地上局間、あるいは移動局相互間でのデータの送受信を模擬して通信性能を評価するための移動体通信システム性能評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線伝送路の特性や移動局の移動を模擬して通信性能を評価する移動体通信システム性能評価装置としては、例えば、特許文献1に記載の、移動体の移動特性シミュレーション方法を用いたシミュレータが知られている。
【0003】
このシミュレータは、移動局,地上局を含む通信システム全体をモデル化し、移動体に発呼間隔,平均保留時間,使用回線数で代表される通信トラフィック特性情報を設定し、シミュレーションの対象とされる地域における現実の地理に適合した移動体の移動特性を実際の環境に近い状況で再現し評価を行う移動特性シミュレーション方法を提供するものである。
【0004】
【特許文献1】特許第2968227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなシミュレータでは、移動局,地上局を含む通信システム全体、すなわち、通信端末から発生する通信トラフィック特性,移動体の移動特性など通信システムを構成する全機能をモデル化し、通信端末の発呼間隔,平均保留時間などのパラメータは統計的に得られた値を使用し、通信遅延時間や通信スループットなどのシステム全体の統計的な通信性能を出力するものであるため、個々の通信端末から実際にインターネットアクセスやFTP(File Transfer Protocol)などの通信アプリケーションを使用して通信を行った場合の表示待ち時間やファイル転送時間など、具体的な通信アプリケーション別の通信性能にかかわる評価や使い勝手にかかわる評価は不可能である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、実システムを使用した場合と同様の通信動作を模擬することが可能であり、通信性能の評価の精度を向上すると共に、実際に通信を行った場合の使い勝手を評価することを可能とする移動体通信システム性能評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するために、本発明は、移動局と地上局とを接続して用いられ、移動局と地上局間の通信性能を評価するための移動体通信システム性能評価装置において、地上局から伝送データが受信されたときから移動局へ伝送データを送信したときまでの経過する予測時間を予め定められた無線アクセスプロトコルに基づいて計算し、地上局から伝送データが受信されたときから実時間を計測していき、実時間が予測時間を超えた場合、伝送データを転送する地上局無線アクセスプロトコル模擬部と、その地上局無線アクセスプロトコル模擬部に接続された地上局の無線通信可能領域内に転送された前記伝送データの伝送宛先である移動局が存在しているか否かを判断し、存在している場合、伝送データを転送し、存在していない場合、伝送データを破棄する地上局切替模擬部と、その地上局切替模擬部から転送された伝送データを伝送宛先の移動局へ転送する移動局無線アクセスプロトコル模擬部と、を有する構成とする。
【0008】
また、移動局から伝送データが受信されたときから地上局へ伝送データを送信したときまでの経過する予測時間を予め定められた無線アクセスプロトコルに基づいて計算し、移動局から伝送データが受信されたときから実時間を計測していき、実時間が予測時間を超えた場合、前記伝送データを転送する移動局無線アクセスプロトコル模擬部と、その伝送データを送信した移動局が前記複数の地上局のうちいずれかの地上局の無線通信可能領域内に存在しているか否かを判断し、存在している場合、伝送データを移動局が存在している無線通信可能領域を持つ地上局に接続された地上局無線アクセスプロトコル模擬部へ転送し、存在していない場合、伝送データを破棄する地上局切替模擬部と、地上局切替模擬部から転送された伝送データを接続された地上局へ転送する地上局無線アクセスプロトコル模擬部と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、実システムを使用した場合と同様の通信動作を模擬することが可能であり、通信性能の評価の精度を向上できると共に、実際に通信を行った場合の使い勝手を評価することを可能とする移動体通信システム性能評価装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、屋内あるいは屋外の空間を伝搬する電波を使用して、無線でパケットを送受信するための手順である無線アクセスプロトコルと、移動体の移動特性をモデル化し実時間で模擬する移動体通信システム性能評価装置に関するものであり、その他の通信端末などの機器は実際に使用するものを前記装置に接続し、前記通信端末から実際に使用する通信アプリケーションを用いてインターネットアクセスやFTPなどの実用に近い通信トラフィックを発生させ、実システムを使用した場合と同様の通信動作を模擬することが可能であり、通信性能の評価の精度を向上させ、また通信端末から実際に通信を行った場合の使い勝手を評価することを可能とする移動体通信システム性能評価装置を提供することができる。また、鉄道分野など実走行試験が実施し難い移動体通信システムの通信性能を事前に精度良く評価するために本発明を適用することができる。
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
第1の実施形態について説明する。
【0013】
まず、図2に、第1実施形態に係る移動体通信システムの一構成例を示す。
【0014】
図2における移動体通信システムは、中央局4と、その中央局4と地上側データ伝送網3経由で接続された複数の地上局2と、複数の地上局を移動していく移動局5と、から構成される。
【0015】
移動局5は、送信する伝送データであるパケットを生成し、受信されたパケットを処理する移動局設備50と、地上局との間で電波を送受信する送受信部である移動局アンテナ52と、無線アクセスプロトコルに基づいて移動局設備50から受信したパケットの無線伝送路への送信タイミング制御を行い、パケットを無線信号に変換し移動局アンテナ52から送信し、また、移動局アンテナ52から受信した無線信号をパケットに変換し、移動局設備50へ送信する移動局無線機51と、から構成される。
【0016】
移動局設備50は、例えばルータなどの通信中継装置やイーサネット(登録商標),無線LANなどのデータ伝送網を介して複数の通信端末が接続されている。
【0017】
地上局2は、移動局5との間で電波を送受信する送受信部である地上局アンテナ22と、中央局4とのパケットの送受信を行う地上局設備20と、無線アクセスプロトコルに基づいて地上局設備20から受信したパケットの無線伝送路への送信タイミング制御を行い、パケットを無線信号に変換し地上局アンテナ22から送信し、また、地上局アンテナ
22から受信した無線信号をパケットに変換し、地上局設備20へ送信する地上局無線機21と、から構成される。なお地上局設備20は、中央局4から送られてきたパケットを地上局無線機21へ中継し、地上局無線機21が受信したパケットを中央局4へ中継する機能を備え、例えばルータなどの通信中継装置で構成される。
【0018】
地上側データ伝送網3は、複数の地上局2と中央局4との間でパケットを伝送するためのデータ伝送用のネットワークであり、例えば、広域イーサネット(登録商標)やSDH(Synchronous Digital Hierarchy),WAN(Wide Area Network)専用回線などで構成される。
【0019】
中央局4は、地上局2を介して移動局5の通信端末に対して各種通信サービスを提供する機能を持ち、例えば、ルータなどの通信中継装置やサーバ,認証装置などから構成される。
【0020】
図2の移動体通信システムの各構成要素をITS分野に当てはめると、地上局アンテナ22が路側に一定間隔で立ち並ぶアンテナ、地上局2は路側に設置された基地局、移動局5が自動車に相当し、基地局と自動車間で交通情報や沿線情報などをやり取りすることができる。
【0021】
また、図2の移動体通信システムの各構成要素を鉄道分野に当てはめると、地上局アンテナ22が沿線に一定間隔で立ち並ぶアンテナであり、地上局2は沿線あるいは駅に設置された基地局であり、移動局5が列車に相当し、基地局と列車間で相互に業務情報や旅客案内情報などをやり取りすることができる。
【0022】
本発明である移動体通信システム性能評価装置は、図2に示すように移動体通信システム性能評価装置で模擬する範囲1900、すなわち地上局無線機21,地上局アンテナ
22,無線伝送路,移動局アンテナ52,移動局無線機51を実時間で模擬するものである。
【0023】
移動体通信システム性能評価装置1を接続した評価構成(模擬の移動体通信システム構成)を図3に示す。移動体通信システム性能評価装置1は、複数の地上局設備20(地上局)および移動局設備50(移動局)に直接接続される。各地上局設備20は地上側データ伝送網3を介して中央局4と接続されている。
【0024】
地上局設備20および移動局設備50と移動体通信システム性能評価装置1との間の通信方式は、地上局設備20と地上局無線機21との間の通信方式、および移動局設備50と移動局無線機51との間の通信方式と同じものであり、例えばイーサネット(登録商標)やHDLC(High level Data Link Control)のような通信方式である。
【0025】
移動体通信システム性能評価装置1の構成を図1に示す。
【0026】
なお、本発明の移動体通信システム性能評価装置1は、FPGA(Field ProgrammableGate Array)などのLSIやネットワークプロセッサや、パーソナルコンピュータ上で動作するソフトウェアにおいて実現可能であるが、以下の説明では、ソフトウェアにおいて実現するものについて説明する。
【0027】
次に、図1において、移動体通信システム性能評価装置1の構成とその動作について説明する。
【0028】
移動体通信システム評価装置1は、複数の地上局無線アクセスプロトコル模擬部10と地上局切替模擬部11と移動局無線アクセスプロトコル模擬部12から構成される。複数の地上局無線アクセスプロトコル模擬部10は、それぞれ地上局の地上局設備20に接続され、移動局無線アクセスプロトコル模擬部12は、移動局の移動局設備50に接続される。その上で、移動体通信システム評価装置1では、地上局と移動局間の伝送データの送受信を模擬し、通信性能を評価する。
【0029】
地上局無線アクセスプロトコル模擬部10は、地上局設備20との間で伝送データであるパケットを送受信するインターフェース機能、および無線でパケットを送受信するための手順である無線アクセスプロトコルに基づいて無線伝送路にパケットを送信する動作を模擬してパケットを地上局切替模擬部11へ転送する転送機能を持つ。
【0030】
地上局切替模擬部11は、地上局無線アクセスプロトコル模擬部10から伝送データであるパケットが転送されると、その転送されたパケット内に記された宛先の移動局5が前記地上局無線アクセスプロトコル模擬部10が接続されている地上局2の無線通信可能領域内に存在するか否かを判断し、存在していればそのパケットを移動局無線アクセスプロトコル模擬部12へ転送し、存在しなければパケットを廃棄する機能を持つ。また、移動局無線アクセスプロトコル模擬部12から伝送データであるパケットが転送されると、そのパケット内に記された送信元の移動局5が地上局無線アクセスプロトコル模擬部10が接続されているいずれかの地上局2の無線通信可能領域内に存在するか否かを判断し、存在している場合、そのパケットを該当する地上局に接続された地上局無線アクセスプロトコル模擬部10へ転送し、存在しなければパケットを廃棄する機能を持つ。
【0031】
移動局無線アクセスプロトコル模擬部12は、接続された移動局の移動局設備50との間で伝送データであるパケットを送受信するインターフェース機能、および無線でパケットを送受信するための手順である無線アクセスプロトコルに基づいて無線伝送路にパケットを送信する動作を模擬してパケットを地上局切替模擬部11へ転送する転送機能を持つ。
【0032】
以下、本発明の動作を説明する。
【0033】
まず、地上局2から移動局5へ伝送データであるパケットを送信することに対する模擬方法を図4,図6,図8を用いて説明する。
【0034】
地上局無線アクセスプロトコル模擬部10が地上局設備20からパケットを受信したかどうか判断し(図4手順9000)、受信した場合、そのパケットが受信されてから移動局5へ送信されるまでの送信待ち時間(予測時間)を予め定められた無線アクセスプロトコルに基づいて計算しておく(図4手順9001)、その後、タイマ等の時間計測手段により送信待ち時間を計測開始する(図4手順9002)。その送信待ち時間に相当する時間が経過したかどうか、つまり地上局から伝送データが受信されたときから実時間を計測していき、その実時間が計算された予測時間を超えたかどうかを判断し (図4手順9003) 、経過した場合(yesの場合)、受信されたパケットを地上局切替模擬部11に転送する(図4手順9004)。経過しない場合(noの場合)は、その送信待ち時間に相当する時間が経過するまで待つ。
【0035】
地上局無線アクセスプロトコル模擬部10から地上局切替模擬部11へ伝送データであるパケットが転送され、地上局切替模擬部11がパケットを受信したかどうか判断し(図6手順9010)、受信された場合、地上局切替模擬部11は、そのパケットを転送した地上局無線アクセスプロトコル模擬部10が接続されている地上局の地上局設備20の無線通信可能領域内にパケット内に記された伝送宛先の移動局5が存在しているか否かを判断し(図6手順9011)、伝送宛先の移動局5が存在していればパケットを移動局無線アクセスプロトコル模擬部12へ転送し(図6手順9012)、伝送宛先の移動局5が存在しなければパケットを廃棄する(図6手順9013)。
【0036】
地上局切替模擬部11から移動局無線アクセスプロトコル模擬部12へパケットが転送され、移動局無線アクセスプロトコル模擬部12がそのパケットを受信したかどうか判断し(図8手順9035)、受信した場合、移動局無線アクセスプロトコル模擬部12は、そのパケットを移動局である移動局設備50へ送信する(図8手順9036)。
【0037】
次に、移動局5から地上局2へ伝送データであるパケットを送信することに対する模擬方法を図8,図6,図4を用いて説明する。
【0038】
移動局無線アクセスプロトコル模擬部12が移動局である移動局設備50からパケットが受信されたかどうか判断し(図8手順9030)、受信された場合、移動局無線アクセスプロトコル模擬部12は、そのパケットが受信されたときから地上局2へ送信するまでの送信待ち時間(予測時間)を予め定められた無線アクセスプロトコルに基づいて計算しておく(図8手順9031)。その後、移動局無線アクセスプロトコル模擬部12は、タイマ等の時間計測手段により、その送信待ち時間に相当する時間を計測開始する(図8手順9032)。移動局無線アクセスプロトコル模擬部12は、その送信待ち時間に相当する時間が経過したかどうか、つまり移動局から伝送データが受信されたときから実時間を計測していき、その実時間が計算された予測時間を超えたかどうかを判断し(図8手順
9033)、経過した場合(yesの場合)、受信されたパケットを地上局切替模擬部
11に転送する(図8手順9034)。経過しない場合(noの場合)は、その送信待ち時間に相当する時間が経過するまで待つ。
【0039】
移動局無線アクセスプロトコル模擬部12から地上局切替模擬部11へパケットが転送され、地上局切替模擬部11がパケットを受信したかどうか判断し(図6手順9015)、受信した場合、地上局切替模擬部11は、パケットを転送した移動局5が複数の地上局のうちいずれかの地上局2の無線通信可能領域内に存在しているか否かを判断し(図6手順9016)、移動局5がいずれかの地上局の無線通信可能領域内に存在している場合
(yesの場合)、そのパケットをその移動局が無線通信可能領域内に存在している地上局2に接続された地上局無線アクセスプロトコル模擬部10へ転送し(図6手順9017)、移動局がいずれの地上局の無線通信可能領域内にも存在していない場合(noの場合)、転送されてきたパケットを廃棄する(図6手順9018)。
【0040】
次に、地上局切替模擬部11から地上局無線アクセスプロトコル模擬部10へパケットが転送され、地上局無線アクセスプロトコル模擬部10がパケットを受信したかどうか判断し(図4手順9005)、受信した場合、地上局無線アクセスプロトコル模擬部10は、そのパケットを接続された地上局の地上局設備20へ送信する(図4手順9006)。
【0041】
ここで、地上局無線アクセスプロトコル模擬部10および移動局無線アクセスプロトコル模擬部12において、予測時間である送信待ち時間を無線アクセスプロトコルに基づいて計算する方法に関して2つの例を以下に示す。ただし、以下に述べる例以外でも無線アクセスプロトコルを数式などでモデル化できれば適用可能である。
【0042】
送信待ち時間を計算する第1の例として、無線アクセスプロトコルが図5に示すポーリング方式である場合を示す。この方式では、地上局の地上局無線機21が複数の移動局無線機51に対して順番に1局ずつ呼び出し、呼び出された移動局無線機51がそれに応答する。地上局および移動局は、送信するデータが発生した場合は、そのデータの呼び出しや応答の時に送信するパケット(2001〜2006)の中に入れて送信する。また、図5では、パケットは時間τ毎に送信されるものとし、各パケットの中に入れることができるデータ量を最大αバイトとする。
【0043】
例えば、いま地上局2がβバイトのデータを送信する場合、γ=CEILING[β/α]個のパケットが必要となる。なお、CEILING[*]は*の小数点以下を切り上げた整数値を示すとする。したがって、送信待ち時間(以下、送信完了までの待ち時間と同意)は(2γ−1)τ以上(2γ+1)τ以下となり、平均値を取り2γτとしてもよい。
【0044】
一方、移動局5がβバイトのデータを送信する場合、移動局5が1局の場合、送信待ち時間は(2γ−1)τ以上(2γ+1)τ以下となり、平均値を取り2γτとしてもよい。また、後述する他の実施例のように、移動局5がn個になった場合、送信待ち時間は
{2n(γ−1)+1}τ以上(2nγ+1)τ以下となり、平均値を取り{(2γ−1)n+1}τとしてもよい。
【0045】
送信待ち時間を計算する第2の例として、無線アクセスプロトコルとしてIEEE802.11標準方式を使用する場合を示す。この場合の送信待ち時間の計算方法として、特開2005−303658号に記載された方法を用いることができる。すなわち送信待ち時間として、特開2005−303658号記載の式(4)のTftや式(6)のTtcoを用いてもよい。
【0046】
以上、送信待ち時間を計算する方法の例を説明した。
【0047】
次に、地上局切替模擬部11が、地上局2の無線通信可能領域内に伝送データであるパケットが伝送される宛先の移動局5が存在しているか否かを判断する方法の例を以下に示す。
【0048】
地上局切替模擬部11が図7に示す手順により、移動局5が複数の地上局2の無線通信可能領域間を移動することを模擬し、種々の通信性能を評価するための情報を取得する。
【0049】
まず、地上局切替模擬部11は、移動局5が複数の地上局2の各無線通信可能領域に対する進入及び離脱を時系列で定められた移動パターンを予め設定する(手順9020)。前記移動パターンとは、例えば、移動開始からa秒後に地上局Aの無線通信可能領域に進入しb秒後に離脱し、c秒後に地上局Bの無線通信可能領域に進入しd秒後に離脱すると設定する。移動パターンの一例を図17に示す。移動局が4つの地上局上を順に移動する場合、地上局1の無線通信可能領域を600秒で移動し、次に、地上局1と地上局2間の無線通信不可能領域(ハンドオーバ領域)を30秒で移動し、次に地上局2の無線通信可能領域を1200秒で移動する、というように移動局が移動する順番,移動局の移動領域、その移動領域内を通過する時間が対応付けて表になっているパターンである。これを予め記憶装置に設定しておく。
【0050】
次に地上局切替模擬部11は、設定された移動パターンに基づいて移動局5が次に進入すべき無線通信可能領域の地上局(図7では地上局kとする)を決定し(手順9021)、移動局が移動の最終地点(終点)まで到達したか否か、つまり移動終了か否かを移動パターンに基づいて判断し(手順9022)、移動終了であれば、処理を終了する。移動終了でなければ次の処理に進む。移動局5がいずれの地上局の無線通信可能領域にも入っていない状態(手順9023)から、地上局kの無線通信可能領域に進入する時刻かどうかを判断し(手順9024)、進入する時刻になった場合(yesの場合)、移動局5が地上局kの無線通信可能領域内に存在している状態となる(手順9025)。さらに地上局kの無線通信可能領域から離脱する時刻かどうかを判断し(手順9026)、離脱する時刻になった場合(noの場合)、次に移動局5が次に進入すべき無線通信可能領域の地上局を決定し(手順9021)、以下同様に動作する。
【0051】
以上、第1の実施形態について説明した。本実施形態によれば、実システムを使用した場合と同様の通信動作を模擬することが可能であり、特に、無線アクセスプロトコルおよび移動局の移動に伴う通信可能な地上局の変化を実時間で模擬することが可能であり、通信性能の評価の精度を向上できると共に、実際に通信を行った場合の使い勝手を評価することを可能とする移動体通信システム性能評価装置を提供できる。
【実施例2】
【0052】
上述の第1の実施形態では、無線伝送路のビットエラーの影響や、他の移動体との無線アクセス競合の影響が考慮されておらず、また、移動体通信システム性能評価装置1を通過したパケット数や廃棄されたパケット数などを記録したログ情報を蓄積する機能があれば、性能評価の重要なデータとなる。
【0053】
そこで、第2の実施形態では、無線伝送路のビットエラーの影響や他の移動体との無線アクセス競合の影響を考慮し、かつログ情報を蓄積することを考慮した機能を第1の実施形態に追加する。
【0054】
以下、第2の実施形態について説明する。
【0055】
まず、第2の実施形態における移動体通信システム性能評価装置1の構成図を図9に示す。図9において第1の実施形態の図1に追加された構成は、無線伝送路模擬部13,無線アクセス競合模擬部14,ログ情報蓄積部15を備える点である。以下詳細に説明する。
【0056】
図9における無線伝送路模擬部13の動作を図10に示す。
【0057】
無線伝送路模擬部13は地上局から送信された伝送データであるパケットが伝送地上局切替模擬部11を介して転送されたか否か判断し(手順9040)、転送された場合
(yesの場合)、転送されたパケット内にビットエラーが発生していないか判断し(手順9041)、ビットエラーが発生していない場合(noの場合)は、パケットを移動局無線アクセスプロトコル模擬部12へ転送する(手順9042)。パケット内にビットエラーが発生している場合(yesの場合)は、パケットを廃棄するかあるいはパケット内にビットエラーを挿入する、つまりパケット内の任意のビットを反転させ、故意にビットエラーを発生させる(手順9043)。
【0058】
また、無線伝送路模擬部13は移動局無線アクセスプロトコル模擬部12からパケットが転送されたかどうか判断し(手順9044)、転送された場合(yesの場合)、そのパケット内にビットエラーが発生しているかどうか判断し(手順9045)、パケット内にビットエラーが発生していない場合(noの場合)、パケットを地上局切替模擬部11へ転送する(手順9046)。もしパケット内にビットエラーが発生している場合(yesの場合)、パケットを廃棄するかあるいはパケット内にビットエラーを挿入する(手順
9047)。
【0059】
ここで、無線伝送路模擬部13がパケット内にビットエラーが発生しているか否かを判断する方法の例を図11に示す。
【0060】
図11によれば、まず無線伝送路のビットエラー率εを時系列に予め記憶装置等に設定する(手順9050)。例えば、時刻aから時刻bまでの間はε=10の−5乗、時刻bから時刻cまでの間はε=10の−6乗、というように設定する。
【0061】
次に、無線伝送路模擬部13は、現在の時刻に応じた値をεに代入し(手順9051)、1以上1/ε以下の整数からランダムに数値Yを選ぶ(手順9052)。パケットが転送されたかどうか判断し(手順9053)、転送された場合(yesの場合)、数値Yから前記パケット長(ビット数)を減算しその減算結果を改めてYに代入する(手順9055)。次にYが0以下か否か判断し(手順9056)、もしYが0以下の値であれば(yesの場合)、パケット内でビットエラーが発生したと判定し(手順9057)、1/ε以下の最大の整数値をYに代入する(手順9061)。またYが0以下ではない、つまりYが0より大きい値であれば(noの場合)、パケット内にはビットエラーが発生していないと判定する(手順9059)。
【0062】
さらに手順9057及び手順9061、手順9059のビットエラー判定が終了した時、あるいは手順9053にてパケットが転送されていない場合(noの場合)は、εの値が変化する時刻か否かを監視し(手順9058,9060,9054)、εの値が変化する時刻である場合(yesの場合)、現在の時刻に応じた値をεに代入する(手順9051)。εの値が変化する時刻ではない場合(noの場合)、パケットが転送されたかどうか判断する(手順9053)。以下、同様の動作を繰返す。
【0063】
また、上記説明では、無線伝送路のビットエラーの影響を模擬するために、ビットエラー率に基づいたビットエラー挿入あるいはパケット廃棄を行ったが、ビットエラーの影響を模擬する別の方法として、指定された特定のパケットのみにビットエラー挿入あるいはパケット廃棄を行う方法も可能である。前記特定のパケットとは、例えば、TCP
(Transmission Control Protocol) のSYNパケット,ACKパケット,FINパケットなどが挙げられる。これらはTCPヘッダの制御ビットを参照することで判断できる。
【0064】
ただし特定のパケットとは、上記以外でも、パケットのビット配列から判断可能なものであれば、どのようなパケットでも指定できる。
【0065】
特定のパケットのみにビットエラー挿入あるいはパケット廃棄を行うと、その特定のパケットが消失した場合に通信システムがどのような動作を行うかを検証することが可能となる。
【0066】
次に、図9における無線アクセス競合模擬部14の動作を図12に示す。
【0067】
無線アクセス競合模擬部14の動作内容は、地上局無線アクセスプロトコル模擬部10および移動局無線アクセスプロトコル模擬部12に反映される。
【0068】
図12によれば、まず、ある移動局における他の移動局の発生局数と、その他の移動局の発生および消滅タイミングと、各他の移動局から発生するトラフィック量とを含み、データ送信権の競合の対象となる競合情報を予め記憶装置等に設定する(手順9070)。例えば、時刻aに他の移動局がk局発生し、各局から連続的にηバイトのパケットが発生し、時刻bにk′局が消滅する、という内容で設定する。
【0069】
無線アクセス競合模擬部14は、設定された競合情報に基づいて、他の移動局の発生時刻(上記設定では時刻a)かどうかを判断し(手順9071)、発生時刻となった場合
(yesの場合)、他の移動局の数(上記設定ではk)をインクリメントし(手順9072)、他の移動局の擬似トラフィック(上記設定では各局から連続的にηバイト)を発生している状態とする(手順9073)。また、設定された競合情報に基づいて、他の移動局の消滅時刻(上記設定では時刻b)かどうか判断し(手順9074)、消滅時刻である場合(yesの場合)、他の移動局の数(上記設定ではk′)をデクリメントし(手順9075)、他の移動局の擬似トラフィック(上記設定では各局から連続的にηバイト)が消滅した状態とする(手順9076)。
【0070】
他の移動局の擬似トラフィックの第1の例として、図5のポーリング方式を考える。他の移動局の擬似トラフィックの影響は自移動局の送信待ち時間に反映される。
【0071】
時刻aから他の移動局数がk局となる場合、すなわち自移動局も含めた全移動局数が
(k+1)局の場合、γ′=CEILING[η/α]として、送信待ち時間は時刻aより{2(k+1)(γ′−1)+1}τ以上{2(k+1)γ′+1}τ以下となり、平均値を取ると{(2γ′−1)(k+1)+1}τとなる。
【0072】
さらに、時刻bから他移動局数がk′局消滅する場合、すなわち自移動局も含めた全移動局数が(k+1−k′)局となる場合、送信待ち時間は時刻bより{2(k+1−k′)(γ′−1)+1}τ以上{2(k+1−k′)γ′+1}τ以下となり、平均値を取ると{(2γ′−1)(k+1−k′)+1}τとなる。
【0073】
他の移動局の擬似トラフィックの第2の例として、無線アクセスプロトコルにIEEE802.11標準方式を使用する場合を例にすると、第1の例と同様に他移動局の擬似トラフィックの影響は自移動局の送信待ち時間に反映される。
【0074】
この場合の送信待ち時間の計算方法として、特開2005−303658号に記載された方法を用いることができる。すなわち、送信待ち時間として、特開2005−303658号記載の式(17)のTtcを用いてもよい。
【0075】
ところで、図9における地上局切替模擬部11の動作は第1の実施形態の図6と同様だが、手順9012と手順9015の「地上局切替模擬部」の記述を「無線伝送路模擬部」に置き換えればよい。
【0076】
また、図9における移動局無線アクセスプロトコル模擬部12の動作は第1の実施形態の図8と同様だが、手順9034と手順9035の「地上局切替模擬部」の記述を「無線伝送路模擬部」に置き換えればよい。
【0077】
最後に、ログ情報蓄積部15の動作について説明する。情報蓄積部であるログ情報蓄積部15は移動体通信システム性能評価装置1の動作中に発生した各種イベントを観測し蓄積する機能を持つ。観測するイベントとしては、例えば、地上局無線アクセスプロトコル模擬部10や移動局無線アクセスプロトコル模擬部12で送受信した伝送データのパケット数やバイト数の累積値、無線伝送路模擬部13で設定されたビットエラー率や廃棄された伝送データのパケット数の累積値、地上局切替模擬部11での切替動作発生時刻、無線アクセス競合模擬部14で発生および消滅した他の移動局数および発生トラフィックなどが挙げられる。このようにログ情報蓄積部15に蓄積された情報を後述する表示部に表示することで、操作者は表示部を見ながら、その模擬を評価することができる。
【0078】
以上、第2の実施形態について説明した。本実施形態によれば、実システムを使用した場合と同様の通信動作を模擬することが可能であり、特に、無線伝送路上でのエラー発生や他の移動局との無線アクセス競合を実時間で模擬することが可能であり、また、動作中に発生した各種ログ情報を参照可能であり、通信性能の評価の精度を向上できると共に、実際に通信を行った場合の使い勝手を評価することを可能とする移動体通信システム性能評価装置を提供できる。
【実施例3】
【0079】
上述の実施例1および実施例2では接続する移動局設備50は1局のみであったが、図13に示すように複数の移動局における複数の移動局設備50を接続して、地上局と通信可能な端末である複数の通信端末から評価可能とすることもできる。
【0080】
この場合の移動体通信システム性能評価装置1の構成を図14に示す。
【0081】
図14における、複数の地上局無線アクセスプロトコル模擬部10,地上局切替模擬部11,複数の移動局無線アクセスプロトコル模擬部12,その複数の移動局無線アクセスプロトコル模擬部12に対応する複数の無線伝送路模擬部13,無線アクセス競合模擬部14およびログ情報蓄積部15の動作内容は、図9と同様である。
【0082】
ただし、地上局切替模擬部11は、各移動局設備50の識別情報であるアドレス(MACアドレスあるいはIPアドレスなど)を設定するか、あるいは通過パケットより学習することにより、各移動局設備50接続場所とアドレスを対応付ける機能を持つ必要がある。これは複数の移動局がそれぞれ移動局無線アクセスプロトコル模擬部に接続されている場合、地上局切替模擬部は、地上局側から受信したパケットに含まれる宛先アドレス(MACアドレスあるいはIPアドレスなど)を基に、そのパケットをどの移動局無線アクセスプロトコル模擬部に転送するかを判断する必要があるからである。
【0083】
また、地上局切替模擬部11の切替動作に関しては、各移動局無線アクセスプロトコル模擬部12に対して個別に設定および処理を行うものとする。
【0084】
また、無線アクセス競合模擬部14も各移動局無線アクセスプロトコル模擬部12に対して個別に設定および処理を行うが、接続された複数の移動局設備50が同一の無線通信可能領域内に存在する場合は、自移動局設備50に対する他移動局のパラメータ(他移動局の発生局数,発生および消滅タイミング,各他移動局から発生するトラフィック量)に他の移動局設備50の動作を反映させることにより、接続された複数の移動局設備50どうしの無線アクセス競合を模擬することが可能である。
【0085】
また、図14においては、移動体通信システム性能評価装置1に複数の移動局を接続し、移動局設備50どうしのパケット送受信を模擬することも可能である。すなわち、上述より地上局切替模擬部11は、各移動局設備50接続場所とアドレスを対応付ける機能を持つため、移動局設備50からのパケットをアドレスより判断して別の移動局設備50へ送ることが可能である。
【0086】
なお、図1において複数の移動局無線アクセスプロトコル模擬部12を設けて複数の移動局設備50を接続した構成は図14の機能に包含されるため、図示は省略する。
【0087】
以上、第3の実施形態について説明した。本実施形態によれば、実システムを使用した場合と同様の通信動作を模擬することが可能であり、特に、複数の移動局における通信を実時間で模擬することが可能であり、通信性能の評価の精度を向上できると共に、実際に通信を行った場合の使い勝手を評価することを可能とする移動体通信システム性能評価装置を提供できる。
【0088】
これまでに述べた移動体通信システム性能評価装置1は、上述したように、各機能毎にFPGA(Field Programmable Gate Array)などでLSI化したり、ネットワークプロセッサなどで各機能を並列に動作させることが可能である。
【0089】
さらに、パーソナルコンピュータ上で動作するソフトウェアにおいても実現可能であり、その場合のハードウェア構成例を図15に示す。
【0090】
図15では、移動体通信システム性能評価装置1は、各模擬部(地上局無線アクセスプロトコル模擬部10,地上局切替模擬部11,移動局無線アクセスプロトコル模擬部12,無線伝送路模擬部13,無線アクセス競合模擬部14)の処理を行うCPUやキャッシュメモリや主記憶メモリなどの演算装置1000と、移動局の移動パターンの設定(手順9020)や無線伝送路のビットエラー率を時系列にする設定(手順9050)や競合情報の設定(手順9070)などの設定項目を入力するキーボードやマウスなどの入力装置1001と、設定項目入力時の確認やログ情報蓄積部15に蓄積された動作状態やログ情報をモニタするディスプレイ(表示部)などの出力装置1002と、送受信する伝送データのパケットを蓄積したり、競合情報やログ情報を蓄積しておくハードディスクやシリコンディスク,不揮発性メモリなどの記憶装置1003と、地上局設備20や移動局設備
50との間の接続ネットワークのインターフェース機能を持つ複数の外部インターフェース装置1004から構成される。
【0091】
さらに、図16に示すように、上述した設定項目やログ情報を印刷するためのプリンタや印刷機などの外部出力装置1005や、他のパーソナルコンピュータへ設定データを移動させるためのUSBメモリや、記憶装置1003に蓄積できない大容量のログ情報などを蓄積しておく外部記憶装置1006を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る移動体通信システム性能評価装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の移動体通信システムの構成例を示す図である。
【図3】本発明の移動体通信システム性能評価装置と実際の通信機器の接続関係を示す図である。
【図4】本発明の移動体通信システム性能評価装置の地上局無線アクセスプロトコル模擬部の動作内容を示す図である。
【図5】本発明の地上局無線アクセスプロトコル模擬部に係るパケット送信タイミング例を示す図である。
【図6】本発明の移動体通信システム性能評価装置の地上局切替模擬部の動作内容を示す図である。
【図7】本発明の移動体通信システム性能評価装置の地上局切替模擬部の動作内容を示す図である。
【図8】本発明の移動体通信システム性能評価装置の移動局無線アクセスプロトコル模擬部の動作内容を示す図である。
【図9】本発明に係る移動体通信システム性能評価装置の他の実施形態の構成を示す図である。
【図10】本発明の移動体通信システム性能評価装置の無線伝送路模擬部の動作内容を示す図である。
【図11】本発明の移動体通信システム性能評価装置の無線伝送路模擬部の動作内容を示す図である。
【図12】本発明の移動体通信システム性能評価装置の無線アクセス競合模擬部の動作内容を示す図である。
【図13】本発明の移動体通信システム性能評価装置と実際の通信機器の接続関係を示す図である。
【図14】本発明に係る移動体通信システム性能評価装置の他の実施形態の構成を示す図である。
【図15】本発明の移動体通信システム性能評価装置のハードウェア構成の一実施形態を示す図である。
【図16】本発明の移動体通信システム性能評価装置のハードウェア構成の他の実施形態を示す図である。
【図17】本発明の移動パターンの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0093】
1…移動体通信システム性能評価装置、2…地上局、3…地上側データ伝送網、4…中央局、5…移動局、10…地上局無線アクセスプロトコル模擬部、11…地上局切替模擬部、12…移動局無線アクセスプロトコル模擬部、13…無線伝送路模擬部、14…無線アクセス競合模擬部、15…ログ情報蓄積部、20…地上局設備、21…地上局無線機、22…地上局アンテナ、50…移動局設備、51…移動局無線機、52…移動局アンテナ、1000…演算装置、1001…入力装置、1002…出力装置、1003…記憶装置、1004…外部インターフェース装置、1005…外部出力装置、1006…外部記憶装置、1900…移動体通信システム性能評価装置で模擬する範囲、2001〜2007…パケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局と地上局とを接続して用いられ、前記移動局と前記地上局間の通信性能を評価するための移動体通信システム性能評価装置において、
前記地上局から伝送データが受信されたときから前記移動局へ伝送データを送信したときまでの経過する予測時間を予め定められた無線アクセスプロトコルに基づいて計算し、前記地上局から伝送データが受信されたときから実時間を計測していき、前記実時間が前記予測時間を超えた場合、前記伝送データを転送する地上局無線アクセスプロトコル模擬部と、
前記地上局無線アクセスプロトコル模擬部に接続された前記地上局の無線通信可能領域内に転送された前記伝送データの伝送宛先である移動局が存在しているか否かを判断し、存在している場合、前記伝送データを転送し、存在していない場合、前記伝送データを破棄する地上局切替模擬部と、
前記地上局切替模擬部から転送された前記伝送データを前記伝送宛先の移動局へ転送する移動局無線アクセスプロトコル模擬部と、を有する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項2】
移動局と地上局とを接続して用いられ、前記移動局と前記地上局間の通信性能を評価するための移動体通信システム性能評価装置において、
前記移動局から伝送データが受信されたときから前記地上局へ伝送データを送信したときまでの経過する予測時間を予め定められた無線アクセスプロトコルに基づいて計算し、前記移動局から伝送データが受信されたときから実時間を計測していき、前記実時間が前記予測時間を超えた場合、前記伝送データを転送する移動局無線アクセスプロトコル模擬部と、
前記伝送データを送信した前記移動局が前記複数の地上局のうちいずれかの地上局の無線通信可能領域内に存在しているか否かを判断し、存在している場合、前記伝送データを前記移動局が存在している前記無線通信可能領域を持つ地上局に接続された地上局無線アクセスプロトコル模擬部へ転送し、存在していない場合、前記伝送データを破棄する地上局切替模擬部と、
前記地上局切替模擬部から転送された前記伝送データを接続された地上局へ転送する地上局無線アクセスプロトコル模擬部と、を有する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の移動体通信システム性能評価装置において、
前記地上局または前記移動局から受信された伝送データを記憶する記憶部を有する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項4】
請求項1記載の移動体通信システム性能評価装置において、
前記地上局切替模擬部は、前記移動局が複数の地上局の各無線通信可能領域に対する進入及び離脱を時系列で定められた予め設定された移動パターンに基づいて、前記地上局無線アクセスプロトコル模擬部に接続された前記地上局の無線通信可能領域内に、転送された前記伝送データの伝送宛先である移動局が存在しているか否かを判断する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の移動体通信システム性能評価装置において、
前記地上局切替模擬部または前記移動局無線アクセスプロトコル模擬部から転送された前記伝送データ内にビットエラーが発生していないかを判断し、ビットエラーが発生していなければ前記移動局無線アクセスプロトコル模擬部または前記地上局切替模擬部へ前記伝送データを転送し、ビットエラーが発生していた場合は前記伝送データを破棄する無線伝送路模擬部を有する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の移動体通信システム性能評価装置において、
複数の移動局が接続された場合、他の移動局の発生局数と前記他の移動局の発生及び消滅タイミングと前記他の移動局から発生するトラフィック量とを含む、データ送信権の競合の対象となる競合情報を設定する無線アクセス競合模擬部(14)を有し、
前記地上局無線アクセスプロトコル模擬部は、前記地上局から伝送データが受信されたときから前記移動局へ伝送データを送信したときまでの経過する予測時間を予め定められた無線アクセスプロトコル及び前記競合情報に基づいて計算し、
前記移動局無線アクセスプロトコル模擬部は、前記移動局から伝送データが受信されたときから前記地上局へ伝送データを送信したときまでの経過する予測時間を予め定められた無線アクセスプロトコル及び前記競合情報に基づいて計算する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項7】
請求項6記載の移動体通信システム性能評価装置において、
前記地上局切替模擬部は、前記複数の移動局のそれぞれに予め設定された識別情報を含む伝送データを移動局から受信した場合、前記伝送データ内の識別情報に基づいて、他の移動局に転送する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2記載の移動体通信システム性能評価装置において、
前記地上局無線アクセスプロトコル模擬部及び前記移動局無線アクセスプロトコル模擬部で送受信した伝送データのパケット数またはバイトの累積値や、前記無線伝送路模擬部で設定されたビットエラー率や破棄された伝送データのパケット数の累積値や、前記地上局切替模擬部での切替動作発生時刻を蓄積する情報蓄積部を有する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項9】
請求項8記載の移動体通信システム性能評価装置において、
前記情報蓄積部に蓄積された情報を表示する表示部を有する移動体通信システム性能評価装置。
【請求項10】
請求項4記載の移動体通信システム性能評価装置において、
前記移動体パターンは、移動局が移動する順番,移動局の移動領域,前記移動領域内を通過する時間が対応付けられたパターンである移動体通信システム性能評価装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−22388(P2008−22388A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193527(P2006−193527)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】