説明

移動体

【課題】ランドマークを誤認識する可能性を低減することが可能な移動体を提供する。
【解決手段】予め設定された測定領域に存在するランドマーク25までの距離及び角度を計測するレーザレンジファインダ12と、前記測定領域を決定する測定領域決定部45を有し、レーザレンジファインダ12の計測結果に基づいて予め教示された走行経路上を走行するように走行を制御する制御装置34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、簡単な構成の駆動輪を用いて、移動方向転換や姿勢変更を滑らかで精度良くかつ小スペースで実現して走行移動や接岸作業を安全かつ効率的に実行可能とする移動体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−52669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ランドマークを誤認識する可能性を低減することが可能な移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る移動体は、予め設定された測定領域に存在するランドマークまでの距離及び角度を計測するレーザレンジファインダと、
前記測定領域を決定する測定領域決定部を有し、前記レーザレンジファインダの計測結果に基づいて予め教示された走行経路上を走行するように走行を制御する制御装置とを備える。
【0006】
第1の発明に係る移動体において、前記測定領域決定部は、前記走行経路からのずれ量及び教示上の前記ランドマークの位置に基づいて、前記レーザレンジファインダが測定する第1の検出角度範囲を決定することができる。
【0007】
第1の発明に係る移動体において、前記測定領域決定部は、更に前記レーザレンジファインダが測定する第1の検出距離範囲を決定することができる。
【0008】
第1の発明に係る移動体において、前記制御装置は、前記第1の検出角度範囲よりも狭い第2の検出角度範囲で定まる領域の外側で前記ランドマークが検出された場合にアラームを出力する処理部を更に有してもよい。
【0009】
第1の発明に係る移動体において、前記制御装置は、1)前記第1の検出角度範囲よりも狭い第2の検出角度範囲で定まる領域の外側で前記ランドマークが検出された場合、かつ2)前記第1の検出距離範囲よりも狭い第2の検出距離範囲で定まる領域の外側で前記ランドマークが検出された場合にアラームを出力する処理部を更に有してもよい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る移動体は、予め設定された測定領域に存在する障害物までの距離及び角度を計測するレーザレンジファインダと、
前記測定領域を決定する測定領域決定部を有し、前記レーザレンジファインダの計測結果に基づいて予め教示された走行経路上を走行するように走行を制御する制御装置とを備える。
【0011】
第2の発明に係る移動体において、前記測定領域は走行速度に応じて決定されてもよい。
【0012】
第2の発明に係る移動体において、前記測定領域は載せられた荷物の重量に応じて決定されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜5記載の移動体においては、本発明の構成をとらない場合に比べて、移動体がランドマークを誤認識する可能性を低減することが可能である。
【0014】
特に、請求項4、5記載の移動体においては、走行精度の悪化を事前に検出することが可能である。
【0015】
請求項6〜8記載の移動体においては、本発明の構成をとらない場合に比べて、移動体が減速する回数を減少させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る移動体の斜視図である。
【図2】同移動体の機能ブロック図である。
【図3】同移動体が有するレーザレンジファインダの計測領域を示す説明図である。
【図4】(A)、(B)は、それぞれ同移動体とランドマークとの位置関係を示す説明図及び同移動体を基準として捉えた場合の同移動体とランドマークとの位置関係を示す説明図である。
【図5】同移動体が有するレーザレンジファインダの計測範囲(角度範囲)を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る移動体とランドマークとの位置関係を示す説明図である。
【図7】同移動体が有するレーザレンジファインダの計測領域(距離範囲)を示す説明図である。
【図8】(A)、(B)、(C)は、本発明の第3の実施の形態に係る移動体が計測領域を変更して障害物を検出する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0018】
本発明の第1の実施の形態に係る移動体10は、工場、オフィス、病院及び商業施設等において、自律して移動することにより物品の搬送等に使用される。
図1に示すように、この移動体10は、車体11、レーザレンジファインダ12、4つの車輪18を備えている。
移動体10は、各車輪18を独立して駆動することにより、前進、後退及び旋回することができる。
【0019】
レーザレンジファインダ12は、物体との相対位置を計測するセンサである。レーザレンジファインダ12は、走査軸回りにレーザ光を走査し、物体に反射したレーザ光を検出する。レーザレンジファインダ12は、レーザ光を照射してから、その照射したレーザ光が反射して戻ってくるまでの時間に基づいて、物体までの距離と角度、即ち相対位置を求めることができる。レーザレンジファインダ12は、予め決められた角度ピッチ(例えば、0.2〜0.5度)でレーザ光を走査するので、物体の外形状を求めることができる。
レーザレンジファインダ12が物体を計測できる領域(計測領域)は、図3の点線で示す半径(Rs)の扇形状の領域である。この半径(Rs)は例えば2m〜4mである。
【0020】
レーザレンジファインダ12は、図2に示すように、内部に検出制御部21を備えている。検出制御部21は、外部から設定される測定領域に基づいて、レーザレンジファインダ12が計測する測定領域を制限する。具体的には、検出制御部21は、設定された測定領域外にて測定されたデータを無視することによって、設定された測定領域内に存在する物体のみを検出する。レーザレンジファインダ12はこのように構成されているため、図3に示すように、測定領域をランドマーク25の周辺領域(斜線部)に制限することができる。
【0021】
移動体10は、事前に教示された走行経路に沿って自律走行する。しかし、床面の状態や車輪18のすり減り具合等により走行経路からずれて走行する場合がある。そこで、自律走行する際の基準位置を示すランドマーク25を走行経路近傍の壁面等に設置する。移動体10は、レーザレンジファインダ12を使ってこのランドマーク25を検出することによって、走行経路からのずれを補正する。
【0022】
走行経路は、ジョブ形式で指示される。このジョブ形式による指示は、移動体10の具体的な動作態様を記した複数のコマンドを含んでプログラムされている。後述の制御装置34は、移動体10の動作時におけるジョブ形式の指示に含まれるコマンドを逐次解釈しながら実行する。このコマンドは、例えば、「5m前進せよ」、「右折せよ」、「右側30度〜60度の角度範囲を計測せよ」、「距離2m〜3mの距離範囲を計測せよ」等の指令である。ジョブ形式による指示は、移動体10の動作態様を記述的に記したものであるため、走行経路周囲の環境の精密な地図を準備する必要が無く、感覚的に教示し易いメリットがある。
【0023】
図2に示すように、移動体10は、前述のレーザレンジファインダ12に加え、車体11の内部に、記憶装置31、駆動装置32、ユーザインターフェース装置33、制御装置34及び電源装置35を備えている。
記憶装置31は、走行経路、教示された各ランドマーク25の位置、移動体10の走行経路の経由位置、及び走行目標位置等を記憶する。これらの情報は、事前に走行経路を教示するために行う教示走行をする際に記憶される。
【0024】
駆動装置32は、各車輪18を駆動するためのものである。駆動装置32は、各車輪18を回転させるサーボモータ42と、サーボモータ42に駆動電流を供給するモータドライバ41とを備えている。モータドライバ41は、制御装置34が出力した速度指令に基づいて、サーボモータ42を駆動する。
【0025】
ユーザインターフェース装置33は、教示走行する際の各種指令の入力や、自律走行中に発生したエラーやアラームを表示するために用いられる。このユーザインターフェース装置33は、例えばタッチパネルである。
【0026】
制御装置34は、レーザレンジファインダ12の計測結果に基づいて、移動体10が予め教示された走行経路上を走行するように走行制御する。制御装置34は、測定領域決定部45と、処理部46とを備えている。
測定領域決定部45は、レーザレンジファインダ12の検出制御部21及びユーザインターフェース装置33に接続されている。この測定領域決定部45は、レーザレンジファインダ12の検出制御部21に対し、測定領域を予め決められた領域に設定するものである。測定領域決定部45が測定領域を設定する具体的な方法については後述する。測定領域決定部45は、制御装置34に搭載されたCPU(不図示)が実行するソフトウェアにより実現される。
処理部46は、記憶装置31、レーザレンジファインダ12、測定領域決定部45、駆動装置32、及びユーザインターフェース装置33に接続されている。処理部45は、移動体10を走行させるために必要な各種処理を行う。処理部46は、サーボモータ42のエンコーダが検出した車輪18の回転数に基づいて移動体10の位置を認識する。即ち、制御装置34は、所謂デッドレコニングにより移動体10の位置を認識する。処理部46は、前述のランドマーク25の位置情報をレーザレンジファインダ12から得ることによって、この認識した位置を補正する。処理部46は、記憶装置31に記憶された経由位置又は走行目標位置と、認識した自己の位置とのずれを求め、このずれが解消されるように駆動装置32に速度指令を出力する。処理部46は、制御装置34に搭載されたCPU(不図示)が実行するソフトウェアにより実現される。
【0027】
電源装置35は、移動体10が動作するために必要な電力を供給するためのものであり、例えばバッテリである。
【0028】
次に、測定領域決定部45が測定領域(角度範囲)を制限する方法について詳述する。
図4(A)は、ランドマーク25が設置された壁面に沿って自律走行する移動体を示している。図中、実線は、走行経路上をずれることなく走行している移動体(符号10)を示している。2点鎖線は、走行経路をそれぞれ前後左右方向にずれて走行する移動体(符号10a、10b、10c、10d)を示している。なお、移動体に固定されたXY座標を定義している。このXY座標は、進行方向に対して左右方向をX軸、前後方向をY軸としている。
移動体10は、位置P0(X0,Y0)にてランドマーク25を検出するように教示されている。その結果、移動体10は、X軸を基準として角度θの位置にランドマーク25が存在するものと認識している。
一方、移動体10a、10b、10c、10dは、デッドレコニングにより走行し、現在位置がP0(X0,Y0)であるものと認識している。しかし実際は、移動体10aは、位置P0から右方向にXe、前方にYeずれたPa(Xe,Ye)に位置している。移動体10bは、位置P0から左方向にXe、前方にYeずれたPb(−Xe,Ye)に位置している。移動体10cは、位置P0から左方向にXe、後方にYeずれたPc(−Xe,−Ye)に位置している。移動体10dは、位置P0から右方向にXe、後方にYeずれたPd(Xe,−Ye)に位置している。その結果、移動体10a、10b、10c、10dは、それぞれX軸を基準として角度θ+θa、角度θ−θb、角度θ−θc、角度θ+θdの位置にランドマーク25が存在するものと認識している。
【0029】
図4(A)から明らかなように、移動体10b、10dが測定したランドマーク25の角度ずれが大きい。移動体10b、10dが認識したランドマーク25の見方を変えて、移動体10b、10dを基準とすると、図4(B)に示すよう表される。図中、ランドマーク25は、移動体10が検出したものである。ランドマーク25bは、移動体10bが(θ―θb)の角度方向に検出したものである。ランドマーク25dは、移動体10dが(θ+θd)の角度方向に検出したものである。
このように、移動体10が認識するランドマーク25の角度は、移動体10の走行経路からのずれに応じて(θ―θb)〜(θ+θd)の範囲で変動する。従って、測定領域決定部45が、レーザレンジファインダ12がランドマーク25を検出するための第1の検出角度範囲θSV1を次式に基づいて決定することで、移動体10が教示された走行経路からずれて走行した場合であっても、ランドマーク25を検出することができる。
θ―θb ≦ θSV1 ≦ θ+θd 式(1)
【0030】
ここで、(θ―θb)は次のように求められる。ランドマーク25の中心位置をP1(X1,Y1)とすると、次式が成立する。
【0031】
tan(θ―θb) = (Y1−Ye)/(X1+Xe) 式(2)
従って、次式が導出される。
θ―θb = tan―1{(Y1−Ye)/(X1+Xe)} 式(3)
【0032】
また、(θ―θd)は次のように求められる。
tan(θ+θd) = (Y1+Ye)/(X1―Xe) 式(4)
従って、次式が導出される。
θ+θd = tan―1{(Y1+Ye)/(X1―Xe)} 式(5)
【0033】
このように、測定領域決定部45は、走行経路からのずれ量(Xe、Ye)及び教示上のランドマークの位置P1(X1,Y1)に基づいて第1の検出角度範囲θSV1を決定する。この第1の検出角度範囲θSV1に基づいて、検出制御部21が測定領域をランドマーク25の周辺領域に制限することにより、移動体10がランドマーク25以外の物体をランドマーク25と誤認識する可能性が低減される。
【0034】
更に、処理部46が、上式(1)で示した第1の検出角度範囲θSV1よりも更に10%〜20%狭い第2の検出角度範囲θSV2を次式(6)に基づいて導出し(図5参照)、この第2の検出角度範囲を超えてランドマーク25を検出した場合には、アラームを出力するように構成することができる。
θ―θbALM ≦ θSV2 ≦ θ+θdALM 式(6)
ここで、θbALM:θbよりも10〜20%小さい角度範囲、θdALM:θdよりも10〜20%小さい角度範囲である。
車輪18の磨耗等が生じるとデッドレコニングによる走行精度が悪化する。その結果、ランドマーク25の検出角度が、前述の角度θからずれてくる。ランドマーク25の検出角度が角度θbALM及び角度θdALMで設定された第2の検出角度範囲θSV2を超えた(外れた)場合にアラームを出力することで、走行精度の悪化が事前に検出される。
【0035】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る移動体50について説明する。第1の実施の形態に係る移動体10と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。本実施の形態は、第1の実施の形態で述べたランドマーク25の検出角度範囲を制限することに加え、検出距離範囲を制限するものである。
【0036】
以下、測定領域決定部45が測定領域(距離範囲)を制限する方法について詳述する。
図6は、ランドマーク25が設置された壁面に沿って自律走行する移動体を示している。図中、実線は、走行経路上をずれることなく走行している移動体(符号50)を示している。2点鎖線は、走行経路をそれぞれ前後左右方向にずれて走行する移動体(符号50a、50b、50c、50d)を示している。
移動体は、位置P0(X0,Y0)にてランドマーク25を検出するように教示されている。その結果、移動体50は、右前方の距離Dの位置にランドマーク25が存在するものと認識している。
一方、移動体50a、50b、50c、50dは、デッドレコニングにより走行し、現在位置がP0(X0,Y0)であるものと認識している。しかし実際は、移動体50aは、位置P0から右方向にXe、前方にYeずれたPa(Xe,Ye)に位置している。移動体50bは、位置P0から左方向にXe、前方にYeずれたPb(−Xe,Ye)に位置している。移動体50cは、位置P0から左方向にXe、後方にYeずれたPc(−Xe,−Ye)に位置している。移動体50dは、位置P0から右方向にXe、後方にYeずれたPd(Xe,−Ye)に位置している。その結果、移動体50a、50b、50c、50dは、それぞれ右前方の距離Da、距離Db、距離Dc、距離Ddの位置にランドマーク25が存在するものと認識している。
【0037】
図6から明らかなように、ランドマーク25までの距離は、移動体50aが測定したものが最も小さく、移動体50cが測定したものが最も大きい。このように、移動体50が認識するランドマーク25までの距離は、移動体50の走行経路からのずれに応じて距離Da〜Dcの範囲で変動する。従って、レーザレンジファインダ12がランドマーク25を検出するための第1の検出距離範囲DSV1を、測定領域決定部45が次式(7)に基づいて決定することで、移動体50が教示された走行経路からずれて走行した場合であっても、ランドマーク25を検出することができる。
Da ≦ DSV1 ≦ Dc 式(7)
【0038】
ここで、距離Daは次式で求められる。
Da = {(X1−Xe)+(Y1−Ye)1/2 式(8)
また、距離Dcは次式で求められる。
Dc = {(X1+Xe)+(Y1+Ye)1/2 式(9)
【0039】
このように、測定領域決定部45は、走行経路からのずれ量(Xe、Ye)及び教示上のランドマークの位置P1(X1,Y1)に基づいて第1の検出距離範囲DSV1を決定する。第1の検出角度範囲θSV1に加え、この第1の検出距離範囲DSV1に基づいて、検出制御部21が測定領域をランドマーク25の周辺領域に制限することにより、移動体50がランドマーク25以外の物体をランドマーク25と誤認識する可能性が更に低減される。
【0040】
更に、処理部46が、上式(7)で示した第1の検出距離範囲DSV1よりも更に10%〜20%狭い第2の検出距離範囲DSV2を次式に基づいて導出し(図7に示す太線部参照)、この距離範囲を超えてランドマーク25を検出した場合には、アラームを出力するように構成することができる。
DaALM ≦ DSV2 ≦ DcALM 式(10)
なお、移動体50から距離DaALM離れた点を点PaALM、距離DcALM離れた点を点PcALMと定義した場合、線分PaALM−PcALMは、線分Pa−Pcの中間部に位置し、その長さが線分Pa−Pcの長さの80〜90%となる。
車輪18の磨耗等が生じるとデッドレコニングによる走行精度が悪化する。その結果、ランドマーク25の検出距離が、距離Dからずれてくる。ランドマーク25の検出距離が距離DaALM及び距離DcALMで設定された第2の検出距離範囲DSV2を超えた(外れた)場合にアラームを出力することで、走行精度の悪化が事前に検出される。
【0041】
以上のように、第1及び第2の実施の形態によれば、レーザレンジファインダ12の測定領域を制限する測定領域決定部45を備えているので、移動体がランドマーク25を誤認識する可能性が低減される。
測定領域決定部45による測定領域の制限方法には、他にも以下の方法が挙げられる。
1)ランドマーク25が設置されていない領域が明らかであれば、その領域を除外する。
2)人や台車等の物体が頻繁に往来する通路が明らかであれば、その通路が位置する領域を除外する。
3)レーザレンジファインダ12が前回の走査周期で測定した結果と現在の走査周期で測定した結果とを比較して、同じ大きさの検出物体が異なる場所に存在すると認められる場合には、この検出物体は移動する物体であると判断し、この物体を測定領域から除外する。
【0042】
続いて、本発明の第3の実施の形態に係る移動体60について説明する。第1及び第2の実施の形態に係る移動体10、50と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
第1及び第2の実施の形態に記載したレーザレンジファインダ12は、ランドマーク25の検出に用いられたが、移動体60が自律走行する上で支障となる障害物62の検出に用いることができる。一般に、移動体60は、障害物62を検出した後に、予め決められた速度まで減速又は停止することが求められる。
【0043】
図8(A)に示すように、移動体60の制動距離Lbに比して図3に示したレーザレンジファインダ12の測定領域の半径(Rs)が小さいと、障害物62を検出した後に予め決められた速度まで減速又は停止できない場合がある。反対に、図8(B)に示すように、移動体60の制動距離Lbに比してレーザレンジファインダ12の測定領域の半径(Rs)が大きいと、障害物62に加え、障害物62の先で通路を横断する人(障害物の1つ)63をも検出してしまう。そのため、移動体60は、必要以上に手前側で減速を開始し、円滑に走行できなくなる。
従って、測定領域の半径(Rs)は、図8(C)に示すように、移動体60が障害物62を検出してから停止するために必要な制動距離Lbよりも予め決められた距離だけ大きく設定される必要がある。この予め決められた距離は、図8(B)に示したような障害物62や人63を検出した場合に必要以上に手前側で減速を開始しない程度の距離である。
【0044】
この制動距離Lbは、移動体60の重量が変化しない場合、移動体60の走行速度によって変動する。そのため、測定領域決定部45は、移動体60の走行速度が大きい場合は、測定領域の半径(Rs)を大きく設定する。反対に移動体60の走行速度が小さい場合は、測定領域の半径(Rs)を小さく設定する。
【0045】
このように、測定領域決定部45が走行速度に応じて測定領域を制限するので、必要以上に障害物を検出することがない。即ち、移動体60の誤認識が低減され、移動体が障害物を検出することによって減速する回数が減少する。
なお、移動体の走行速度は、エンコーダのフィードバック信号に基づいて算出することができる。これに代えて、制御装置34が駆動装置32に出力する速度指令値を走行速度とみなしてもよい。
【0046】
続いて、本発明の第4の実施の形態に係る移動体について説明する。
第3の実施の形態に係る移動体60と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0047】
移動体の制動距離Lbは、移動体の走行速度が一定の場合、移動体の重量によって変動する。そのため、測定領域決定部45は、移動体が搬送する荷物の重量が大きい場合は、測定領域の半径(Rs)を大きく設定する。反対に荷物の重量が小さい場合は、測定領域の半径(Rs)を小さく設定する。
【0048】
このように、測定領域決定部45が移動体が搬送する荷物の重量に応じて測定領域を制限するので、必要以上に障害物を検出することがない。即ち、移動体の誤認識が低減され、移動体が障害物を検出することによって減速する回数が減少する。
【0049】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述のそれぞれ実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
特に、検出制御部は、レーザレンジファインダではなく、制御装置側に設けられていても良い。
また、前述の各実施の形態におけるサーボモータ42に代えて、任意のモータとそのモータの回転位置を検出するエンコーダとを備える回転駆動手段としても良い。
また、第1及び第2の実施の形態においては、移動体10、50の右前方にランドマーク25が設置されていたが、左前方にランドマーク25が設置されていても、同様に測定領域を制限できることは明らかである。
また、第3の実施の形態と第4の実施の形態を組み合わせて本発明を構成しても良い。
【符号の説明】
【0050】
10:移動体、10a、10b、10c、10d:移動体、11:車体、12:レーザレンジファインダ、18:車輪、21:検出制御部、25:ランドマーク、25b、25d:ランドマーク、31:記憶装置、32:駆動装置、33:ユーザインターフェース装置、34:制御装置、35:電源装置、41:モータドライバ、42:サーボモータ、45:測定領域決定部、46:処理部、50:移動体、50a、50b、50c、50d:移動体、60:移動体、62:障害物、63:人



【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された測定領域に存在するランドマークまでの距離及び角度を計測するレーザレンジファインダと、
前記測定領域を決定する測定領域決定部を有し、前記レーザレンジファインダの計測結果に基づいて予め教示された走行経路上を走行するように走行を制御する制御装置とを備えた移動体。
【請求項2】
請求項1記載の移動体において、前記測定領域決定部は、前記走行経路からのずれ量及び教示上の前記ランドマークの位置に基づいて、前記レーザレンジファインダが測定する第1の検出角度範囲を決定する移動体。
【請求項3】
請求項2記載の移動体において、前記測定領域決定部は、更に前記レーザレンジファインダが測定する第1の検出距離範囲を決定する移動体。
【請求項4】
請求項2又は3記載の移動体において、前記制御装置は、前記第1の検出角度範囲よりも狭い第2の検出角度範囲で定まる領域の外側で前記ランドマークが検出された場合にアラームを出力する処理部を更に有する移動体。
【請求項5】
請求項3記載の移動体において、前記制御装置は、1)前記第1の検出角度範囲よりも狭い第2の検出角度範囲で定まる領域の外側で前記ランドマークが検出された場合、かつ2)前記第1の検出距離範囲よりも狭い第2の検出距離範囲で定まる領域の外側で前記ランドマークが検出された場合にアラームを出力する処理部を更に有する移動体。
【請求項6】
予め設定された測定領域に存在する障害物までの距離及び角度を計測するレーザレンジファインダと、
前記測定領域を決定する測定領域決定部を有し、前記レーザレンジファインダの計測結果に基づいて予め教示された走行経路上を走行するように走行を制御する制御装置とを備えた移動体。
【請求項7】
請求項6記載の移動体において、前記測定領域は走行速度に応じて決定される移動体。
【請求項8】
請求項6又は7記載の移動体において、前記測定領域は載せられた荷物の重量に応じて決定される移動体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−14265(P2012−14265A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147984(P2010−147984)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】