移動型無線機、その制御方法及びプログラム
【課題】位置ビーコンを送信する頻度を抑制しつつ、該位置ビーコンに基づく基地局11側における移動端末15の移動軌跡を的確化する移動端末15を提供する。
【解決手段】GPSレシーバ16から現在地の緯度及び経度並びに瞬間速度を取得する(S63)。移動中と判定されれば(S63正)、位置ビーコンの送信方式が累積方式に設定されているか否かを判定し(S64)、判定が正であれば、S69へ進む。2秒前の現在地と今回の現在地との間の直線距離を算出し、それを累積距離に累積する(S69,S70)。累積距離が送信基準距離を越えているか否かを判定し(S72)、判定が正であれば、位置ビーコンを送信するとともに、累積距離を初期化する(S76,S77)。
【解決手段】GPSレシーバ16から現在地の緯度及び経度並びに瞬間速度を取得する(S63)。移動中と判定されれば(S63正)、位置ビーコンの送信方式が累積方式に設定されているか否かを判定し(S64)、判定が正であれば、S69へ進む。2秒前の現在地と今回の現在地との間の直線距離を算出し、それを累積距離に累積する(S69,S70)。累積距離が送信基準距離を越えているか否かを判定し(S72)、判定が正であれば、位置ビーコンを送信するとともに、累積距離を初期化する(S76,S77)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在地情報を適宜送信する移動型無線機、その制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、移動体通信装置をユーザに携帯させて、ユーザが救援を必要とするときには、その現在地情報を該移動体通信装置から基地局へ自動的に送信することを開示する(特許文献1の段落0039〜0042等)。ユーザが救援を必要とするときとは、例えば山間部において17時から翌朝5時までの移動距離が100m以内であるとき(特許文献1の段落0039)、山間部の崖や海辺の岸壁において1秒間の移動距離が2m以上であるとき(特許文献1の段落0040及び0041)となっている。
【0003】
従来の移動型無線機(携帯型及び車載型の両方を含む。)において、位置ビーコンの送信方式には、(a1)手動送信、(a2)PTT(Press To Talk)連動送信、(a3)AUTO送信、及び(a4)SmartBeaconing送信の4種類が存在する。
【0004】
(a1)の手動送信では、例えばBCON(「BCON」は「BEACON」の簡略記載)キーという名称のキーを押した時に、それに連動して位置ビーコンの送信が行われる。(a2)PTT連動送信では、BCONキーを押してBEACON送信モードにした状態で、表示部の”BCON”表示が点滅した期間(ビーコン送信許可状態)に、PTTキーから指を離して、送信を終了すると、それに続いて、位置ビーコンが送信される。
【0005】
(a3)のAUTO送信では、同じくBCONキーを押して、BEACON送信モードにすると、以降は、たとえばBEACON送信時間と呼ばれている一定時間が経過するごとに(タイマーオーバーフロー)、位置ビーコンが自動的に送信される。なお、BEACON送信時間は、ユーザが●移動型●無線機のメニュー画面で所定範囲内で指定することができるようになっている。(a4)のSmartBeaconing送信では、速度及び進行方向の変化をパラメータとして使用して、基準値を越えたときに、位置ビーコンが自動的に送信される。各パラメータの基準値はユーザが●移動型●無線機のメニュー画面で設定することができるようになっている。また、無線機は、速度及び進行方向等のパラメータの測定値を内蔵のGPSレシーバから取得する。
【特許文献1】特開2006−109514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(a1)の手動送信は、ユーザが送信したい時にBCONキーを押して送信することができるようになっているが、車載型無線機では、ユーザが運転中のためBCONキーを押すことができない場面が考えられる。また、携帯型無線機では、ユーザは、歩行中などはポケットにしまっていることや、腰にぶら下げて使用していることが多いため、BCONキーが押しづらい状況が考えられる。したがって、ユーザが、ほぼ一定時間間隔でBCONキーを押すことは、ユーザにとり負担となるとともに、操作も煩わしい。
【0007】
(a2)のPTT連動送信は、PTTで交信が終わった時に、位置ビーコンの送信が自動的行われて、便利であるが、その反面、ユーザがこの地点で位置ビーコンの送信をしたいと思った時に、直ちに送信する場合にも、PTTキーを一度押してから送信することになるので、送信開始までに余計な時間を要してしまう。
【0008】
(a3)のAUTO送信は、送信間隔時間設定で設定した時間間隔で位置ビーコンが送信されるので、一定速度で走行しているときには、一定時間間隔で位置ビーコンの送信を行うことができる。しかし、実際の車載運用では信号や交差点渋滞など一定の速度では走行していない。携帯型の歩行運用も同様で、信号待ちや買い物中などの状態で速度が一定とは限らない。このような速度が一定でない条件で一定の間隔(距離)を置いて位置ビーコンの送信を行いたいときには、その速度に応じた時間間隔に随時変更する必要がある。しかし、ユーザが速度に応じて送信間隔時間を切り替えるのは、運転中や歩行中には操作が難しく、また、ユーザが自分の現在の速度を把握することも困難であり、現実上は無理である。したがって、一定距離間隔に軌跡を残すことはできない。また、停車(止まっている)時も、位置の変化はなくても繰り返し送信を行ってしまい、無駄な送信につながっている。
【0009】
(a4)のSmartBeaconing送信は、位置ビーコン送信判断処理時点の速度に対して送信間隔時間が変化する仕組みになっている。したがって、位置ビーコン送信判断の処理時点で、瞬間的に速度が速い場合は、位置ビーコン送信間隔が瞬間的に短くなるので、位置ビーコンの送信を行ってしまう。また、速度に対して送信時間間隔を切り替えているが、やはり速度がある程度の時間一定でいないと、想定した送信距離間隔で送信を行ってくれない。さらに、設定方法がLOWスピード及びHIGHスピードの2つについてそれぞれ何秒間隔で送信するかを設定するようになっており、LOWスピードとHIGHスピードとの中間のスピードにおいては、LOWスピードとHIGHスピードとの時間間隔から割り出して時間間隔を決定するようになっている。したがって、軌跡を残す距離間隔となる送信時間間隔に中間速度においてなるように、ユーザがLOWスピード及びHIGHスピードの時間間隔を設定することは非常に煩雑となる。
【0010】
本発明の目的は、ユーザに煩雑感を与えることなく、受信側がユーザの移動軌跡を的確にできるように位置ビーコンを送信する移動型無線機、その制御方法及びプログラムを提供することである。
【0011】
本発明の目的は、さらに、位置ビーコンを送信する頻度を抑制しつつ、受信側で位置ビーコンにより的確な移動軌跡を検出できるようにする移動型無線機、その制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、一定時間(例:2秒)ごとに該一定時間内の移動距離を測定し、該移動距離を累積移動距離として累積する。そして、累積移動距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに、累積距離をクリアする。
【0013】
本発明の移動型無線機は次のものを備えている。
現在地を検出する現在地検出手段、
一定時間の経過を測定する時間経過測定手段、
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定手段、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出手段、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信手段。
【0014】
本発明の移動型無線機制御方法は次のステップを備える。
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定ステップ、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出ステップ、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信ステップ。
【0015】
本発明のプログラムは、本発明の移動型無線機の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定時間ごとに該一定時間における移動距離を累積し、該累積移動距離が所定の閾値以上になると、位置ビーコンを送信するので、位置ビーコンの送信頻度を抑制しつつ、受信側では、位置ビーコンに基づき移動型無線機の移動軌跡を的確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は無線通信システム10の概略図である。無線通信システム10は、1つの基地局11と、少なくとも1つの移動端末15とを備える。基地局11は、所定の地点に固定して設置されるのに対し、移動端末15は、ユーザに携帯されたり、タクシー等の移動体に搭載されたりする。
【0018】
図2は移動端末15の詳細な構成図である。移動端末15は、GPSレシーバ16、パネルユニット17及びラジオユニット18を備えている。GPSレシーバ16及びパネルユニット17は、それぞれRS−232Cコネクタ21,22を備え、RS−232Cコネクタ21−22間を相互に接続されて、データを相互に送受する。パネルユニット17及びラジオユニット18は、それぞれRJ−45コネクタ25,26を備え、RJ−45コネクタ25−26間を相互に接続されて、データを相互に送受する。
【0019】
パネルユニット17は、メインマイコン30、表示部31、操作部32、モデム33、TNC(Terminal Node Controller)マイコン34及びEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory )35を備えている。表示部31は、メインマイコン30からのデータに基づき各種の表示を行う。操作部32は、操作キー、クリックエンコーダ及びアナログボリュームを含み、操作部32に対するユーザ操作の情報はメインマイコン30へ送られる。メインマイコン30は、TNCマイコン34及びEEPROM35とデータを送受し、所定の処理を実施する。
【0020】
モデム33は、RJ−45コネクタ25とTNCマイコン34との間に介在し、RJ−45コネクタ25へ通信速度1200bps又は9600bpsでデータを送受する。TNCマイコン34は、GPSレシーバ16から現在地情報を受け付ける。TNCマイコン34は、天気情報に係るウェザーステーション(Weather Station)用の接続端子や、2.5mmのステレオ(Stereo)プラグ端子から所定のデータを受けることもできる。
【0021】
ラジオユニット18は、マイコン39、送受信部40及び内蔵スピーカ41を備える。マイコン39は、ラジオユニット18内の各種素子を制御する。送受信部40は、内蔵スピーカ41、アンテナ端子43及びRJ−45コネクタ44と信号を送受する。アンテナ端子43にはアンテナが接続され、RJ−45コネクタ44にはマイクロホン(図示せず)が接続される。
【0022】
移動端末15から位置ビーコンを送信するには、移動端末15において、まず初めに自局コールサインを設定するか、位置情報の設定(GPSをシリアル接続するかメニューで位置情報を手動入力する)が必要となる。GPSをシリアル接続した場合には、TNCマイコン34は、リアルタイムな位置情報(緯度、経度、進行方向、速度、高度等)をGPSレシーバ16からシリアルデータとして受理して、位置情報を解析し、メインマイコン30へ送る。メインマイコン30は、その情報を基に位置ビーコンの送信データを作成し、ラジオユニット18へ送って、ラジオユニット18から送信する。位置情報は、図4、図6及び図7で後述するように、表示部31に表示させて確認することもできる。
【0023】
図3は移動端末15の表示部31におけるBEACON送信方式の選択画面を示している。移動端末15は、位置ビーコンの送信方式として従来の手動送信、PTT送信、AUTO送信及びSmartBeaconing送信の他にWALKBEACONが新規に追加される。図3(a)及び(b)は、位置ビーコンの送信方式としてそれぞれ手動送信(MANUAL)及びWALKBEACONが選択されている場合の画面を示す。WALKBEACONには、さらに、累積距離方式と移動距離方式とが含まれる。
【0024】
図4は位置ビーコン送信方式として手動送信が設定されている場合にユーザの指示により移動端末15の表示部31に自局位置を表示させたときの画面を示している。図4の画面情報では、現在時刻は12:00であり、現在の移動速度(mph)は123マイル/hであり、真北を0°として、時計方向へ357°の方向へ進行している。現在地は緯度(図4では北緯のN)、経度(図4では東経のE)、及び高度(ALT)により示される。
【0025】
図5は位置ビーコン送信方式として累積距離方式が設定されている場合の送信パラメータ設定画面を示している。図5では、位置ビーコンを送信する距離間隔は「5km」に、距離算出方式は「累積」に、また、補正速度●●とは、検出した移動速度が該補正速度以下である場合には、移動停止中と判断する速度である。検出した移動速度が補正速度以下である場合には、後述の図12のパネルマイコン処理ルーチン60のS63における判定は否と判定され、すなわち停止中と判定され、後述の移動距離計算や累積計算は行わないようになっている。図5の例では、補正速度●●は「1km」に設定されている。距離方式は「累積」と「移動距離」との2つが設定可能になっている。「累積」及び「移動距離」はそれぞれ後述の累積距離方式及び移動距離方式に対応している。
【0026】
図6は位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の累積距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末15の表示部31に自局位置を表示させたときの画面を示している。累積距離(Comulative Distance)は後述する図8のLaに相当するものであり、図6の画面では、現在のそれは12mと表示されている。
【0027】
ユーザはWALKBEACONの累積距離方式及び移動距離方式において、図5又は図6の画面から、各時点の緯度、経度、速度、進行方向、高度と共に累積距離方式の累積距離や移動距離方式の移動距離を参照することができるので、次回の位置ビーコン送信までの距離を確認することができる。
【0028】
図7は位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の移動距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末15の表示部31に自局位置を表示させたときの画面を示している。移動距離(Moving Distance)は、後述する図8のLbに相当するものであり、図7の画面では、現在のそれは●●12m●●と表示されている。
【0029】
図8は累積距離及び移動距離についての説明図である。該説明図では、移動端末15が自動車47に搭載されている場合を想定している。累積距離及び移動距離は位置ビーコン送信方式がそれぞれ累積距離方式及び移動距離方式に設定されているときに算出するものであり、累積距離方式及び移動距離方式のいずれであっても、移動端末15は地点P1において位置ビーコンを送信したものとする。移動端末15の位置ビーコンには、該移動端末15の現在地情報の他に、該移動端末15のID情報を含むので、基地局11(図1)は受信した位置ビーコンがどの移動端末15からのものであるかを検出することができる。位置ビーコンは、送信時刻情報を含んでもよいし、基地局11では、該送信時刻情報に代えて、受信時刻を処理に使用してもよい。
【0030】
該位置ビーコンは基地局11に受信され、基地局11は、移動端末15のID、移動端末15の現在地、及び移動端末15における送信時刻(又は基地局11における受信時刻)を相互に対応付けて、記憶装置(図示せず)にストアする。累積距離(Comulative Distance)Laは、移動端末15側に設定されるものであり、移動端末15は、P1において位置ビーコンを送信しだい、Laをクリアする。なお、位置ビーコンには、さらに、移動方向や移動速度を含めることもできる。
【0031】
この移動端末15では、累積距離方式において2秒間隔で移動距離を計算し、Laに累積する。移動距離は、GPSレシーバ16の出力から検出した2秒前の現在地と今回の現在地との緯度及び経度から計算する。したがって、この場合は、計算される移動距離は、2秒前の現在地と今回の現在地との直線距離となる。
【0032】
GPSレシーバ16は、各出力時点においてその時点の現在地の経度及び緯度情報だけでなく、その時点の瞬間速度の情報を出力する。また、2秒という時間間隔は十分に短く、この2秒間では、移動速度は今回の瞬間速度の近似値であると考えることができる。こうして、2秒前の現在地と今回の現在地との移動距離を緯度及び経度から計算する代わりに、今回の瞬間速度(m/s)×2秒を今回の移動距離として計算してもよい。移動距離を瞬間速度×一定時間とする場合、移動距離をニ地点間の直線距離とする場合よりも移動端末15が移動した道のりに近い値となることがある。
【0033】
図8のL1,L2,L3,・・・,Lnは、2秒ごとの自動車47の移動距離を示している。P1の時刻から2秒、4秒、6秒、2×n秒、経過するごとに、Laは、それぞれL1,L2,L3,・・・,Lnを順次、加算されていき、La=L1,La=L1+L2,La=L1+L2+L3,・・・と増大していく。自動車47がP2に来た時、La≧閾値(該閾値は図5では5km)となり、移動端末15は位置ビーコンを送信するとともに、Laをクリアする。こうして、移動端末15は、累積距離方式の期間では、La≧閾値となるごとに、位置ビーコンの送信とLaのクリアとを繰り返す。
【0034】
これに対して、移動距離方式では、一定時間間隔(例:2秒)で、現在地とP1との移動距離(Moving Distance)Lbを、GPSレシーバ16から出力される緯度及び経度情報に基づき計算する。換言すると、移動距離Lbとは移動中の各現在地と最後の位置ビーコン送信地点P1とのニ地点間の直線距離である。そして、Lb≧閾値(例:閾値=5km)となりしだい、移動端末15は位置ビーコンを送信する。なお、基地局11は、移動端末15が累積距離方式及び移動距離方式のどちらで位置ビーコンを送信しているかに関係なく、移動端末15から受信した位置ビーコンに基づき各時点の現在地を記憶して、軌跡を把握する。
【0035】
図9は移動端末15の位置ビーコン送信方式を累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第1の説明図である。ここでは、移動端末15は、累積距離方式及び移動距離方式共にLa,LbがRq(例:5km)以上になると、位置ビーコンを送信するように設定されているものとする。累積距離方式及び移動距離方式共に移動端末15は地点P0において位置ビーコンを送信したものと仮定するとともに、矢印のように、移動したと仮定する。移動端末15の実際の移動軌跡は曲線となるが、図示の便宜上、線分の連結で示している。
【0036】
図9おいて、累積距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は、白丸で示しており、時刻順にP1,P2,P3,P4となる。C0,C1,C2,C3,C4は、それぞれP1,P2,P3,P4を中心とする半径Rqの円を示す。これに対して、移動距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は、黒丸で示しており、Q1のみとなる。
【0037】
累積距離方式の系列の各P1,P2,P3,P4は、それぞれ一定時間前の各P0,P1,P2,P3を中心とする円C0,C1,C2,C3の内側に存在しているにもかかわらず、累積距離Laが前回の送信地点P0,P1,P2,P3からRq以上になると、位置ビーコンが送信されるので、P0,P1,P2,P3,P4は、時刻順に隣り同士が適度な距離となって、それらの地点に基づき軌跡が把握し易い。これに対して、移動距離方式では、P0からの直線距離がRq以上にならないと、すなわち、円C0の外へ出ないと、位置ビーコンが送信されないので、移動端末15が移動経路の地点Q1に来た時点で初めて位置ビーコンが送信される。基地局11は、P0とQ1とからP0−Q1間の軌跡を把握することは難しい。
【0038】
図10は移動端末15の位置ビーコン送信方式が累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第2の説明図である。ここで、移動端末15は、累積距離方式の場合は、図9と同じく累積距離La≧Rq以上になったら、位置ビーコンを送信するように設定されているのに対し、移動距離方式の場合は、二点間直線距離Lb≧Ru(ただし、Ruは、Rqより適当に小であり、図10では、Rqの約半分にしている。)以上になったら、位置ビーコンを送信するように設定したものとする。
【0039】
図10においても、白丸及び黒丸は図9と同様にそれぞれ累積距離方式及び移動距離方式の場合の送信地点を意味する。なお、白丸となっている地点P0は累積距離方式及び移動距離方式に共通の送信地点である。図10においても、累積距離方式の場合には、閾値=Rqの設定であるので、累積距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は時刻順にP1,P2,P3,P4となる。これに対して、移動距離方式の場合には、閾値=Ru(Ru<Rq)であるので、移動距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は時刻順にU1,U2の2つとなり、図9の移動距離方式の場合より1個、増大する。
【0040】
移動距離方式の閾値をRqからRu(Ru<Rq)への変更に伴い、移動距離方式の場合の位置ビーコン送信地点は、図9のQ1からU1へと、P0から割合に近い地点となる。しかし、移動距離方式の場合、地点U1以降の移動では、地点U1がU0に代わる基準地点となって、U1から直線距離がRu以上にならないと、次の位置ビーコンの送信が行われないことになるので、次の位置ビーコン送信地点は、移動端末15の長大な移動軌跡にもかかわらず、U2になってしまい、基地局11では、移動端末15の移動軌跡の把握は、多少改善されるものの、難しい。
【0041】
一方、Ruを大幅に短くすると、例えば、移動端末15が地点P0から一直線で遠ざかって行く軌跡の場合には、位置ビーコンの送信が頻繁になり過ぎて、基地局11が監視する移動端末15の個数が多いときには、トラフィック増大の原因になってしまう。また、移動端末15の移動軌跡は、ユーザによる個人差があるとともに、同一のユーザであっても日によって異なる場合があり、移動距離方式の場合の閾値を的確に値に一律に設定することは難しい。このように、移動距離方式では、個々の移動状況に関係なく、適切な閾値を設定することが難しく、また、このため、基地局11が移動端末15からの位置ビーコンに基づき軌跡を把握することが難しいのに対し、累積距離方式では、個々の移動状況に関係なく、適切な地点で位置ビーコンを送信することができる。
【0042】
累積距離方式の利点を列挙すると、次のとおりである。
【0043】
(b1)累積距離方式を採用することで、実際の移動距離に応じた移動軌跡を残すことができる。移動距離方式の場合、前回送信地点から直線距離で閾値を越えなければビーコンの送信を行わない。したがって、前回送信地点から一度閾値付近まで移動しても、そこで前回送信地点に戻ってしまうと、閾値を越えないので、実移動距離は閾値を越えても、位置情報の送信を行えない欠点がある。累積距離方式の場合その部分を解決し、実移動距離で位置情報の送信を行うことができる。限られたエリアで移動する運用では特に効果が高い。
【0044】
(b2)累積距離方式では、速度の変化が激しくても一定距離間隔で、位置ビーコンの送信を移動軌跡も一定距離間隔で分かり易くなる。
【0045】
(b3)累積距離方式の閾値(累積距離が該閾値を越えたら位置情報を送信する距離)をメニューで設定するようにすることが好ましい。この場合、車載運用の高速道路などの運用では大き目の値を、一般道路では通常の値を、徒歩運用などでは小さい値を設定することで運用形態に合わせた運用を行うことができる。
【0046】
図11はTNCマイコン処理ルーチン50のフローチャートである。TNCマイコン処理ルーチン50はパネルユニット17のTNCマイコン34において実行される。S51では、RS−232Cコネクタ21からGPSデータとして$GPGGA(Global Positioning System Fix Data), $GPGLL(Geographic Position-Latitude/Longtude), $GPRMC(Recommended Minimum Specific GNSS Data), $GPVTG(Course Over Ground and Ground Speed), $GPZDA(Time & Date),及びSONYの入力センテンスを受信する。なお、SONYの入力センテンスとは、ソニー株式会社のIPS−5000などが出力するフォーマットであり、「SONY」で始まり、[CR][LF]で終わる110バイト固定長でのデータであり、日付、時刻、緯度、経度、高度、移動速度、進行方向、衛星情報が含まれている。S52では、該入力センテンスを解析して、各データを抽出する。
【0047】
S53では、メインマイコン30で使用する$PKWDPOS(位置情報)センテンスを構築する。S54では、2秒ごとに$PKWDPOSセンテンスをメインマイコン30へ出力する。
【0048】
図12はパネルマイコン処理ルーチン60のフローチャートである。パネルマイコン処理ルーチン60はパネルユニット17のメインマイコン30において実行される。S61では、$PKWDPOSセンテンスをTNCマイコン34からGPSデータとして受信する。S62では、$PKWDPOSセンテンスから速度、緯度及び経度の情報を取得する。S63では、速度情報を確認し、移動中であれば、S64へ進み、停止中であれば、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。S64では、位置ビーコン送信方式が累積距離方式及び移動距離方式のどちらになっているかを判定し、前者であれば、S69へ進み、後者であれば、S80へ進む。
【0049】
S69では、前回の緯度経度情報(2秒前)と現在の緯度経度情報とから移動距離を算出する。該移動距離は、両地点の緯度及び経度から算出することになるので、両地点の直線距離で算出される。S70では、S69で算出した距離を累積距離Laに加算する。S71では、今回の現在地を前回の現在地として保存する。これは、今回の現在地を、次の2秒後のパネルマイコン処理ルーチン60の実行時には前回の現在地として使用するためである。
【0050】
S72では、累積距離Laが送信基準距離(送信基準距離は閾値Rqに対応する。)を越えたか否かを判定し、判定が正であれば、S76へ進み、否であれば、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。S76では位置ビーコンを送信する。S77では、累積距離Laを初期化、すなわちクリアし、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。
【0051】
S80では、S69と同様に、前回の緯度経度情報(2秒前)と現在の緯度経度情報とから移動距離を算出する。該移動距離は、2秒前の現在地と今回の現在地との直線距離として算出される。S81では、移動距離が送信基準距離(送信基準距離は前述の閾値Rqに対応する。)を越えたか否かを判定し、判定が正であれば、S84へ進み、否であれば、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。なお、S81における送信基準距離は、S72における送信基準距離とは別の値(通常は、S72における送信基準距離より小さい値、例えばRu)を設定してもよい。S85では、S76と同様に、位置ビーコンを送信する。
【0052】
図13は移動端末15における自局位置表示処理ルーチン90のフローチャートである。自局位置表示処理ルーチン90はメインマイコン30において実行される。S91では、操作部32のPOS(自局位置表示)キーが押されたか否かを判定し、判定が正であれば、S92へ進み、否であれば、自局位置表示処理ルーチン90を終了する。
【0053】
S92では、送信方式の設定がWALKBEACONとなっているか否かを判定し、判定が正であれは、S93へ進み、否であれば、S96へ進む。S94では、累積処理の表示要求を行う。これにより、自局位置の表示は累積距離方式に対応付けられる。S95は、移動距離の表示要求を行う。これにより、自局位置の表示は移動距離方式に対応付けられる。
【0054】
S96では、自局位置の表示要求を出す。この表示要求は、手動送信、累積距離方式又は移動距離方式に対応付けて行われる。S97では、対応付けられた位置ビーコン送信方式に従って、表示部31に自局位置を表示する表示処理を実施する。こうして、表示部31には、現在、設定されている位置ビーコン送信方式に対応して、図4、図6又は図7の自局位置表示画面が表示される。
【0055】
図14は移動型無線機110のブロック図である。前述の移動端末15は移動型無線機110の一例である。移動型無線機110は、ユーザに携帯されるものであってもよいし、自動車その他の移動体に搭載されるものであってもよい。移動型無線機110は、現在地検出手段111、時間経過測定手段112、移動距離測定手段113、累積移動距離算出手段114及び現在地情報送信手段115を備える。移動型無線機110は、さらに、瞬間移動速度検出手段118及び中止制御手段120を備えることもできる。
【0056】
現在地検出手段111は、現在地を検出する。時間経過測定手段112は、一定時間の経過を測定する。移動距離測定手段113は、一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する。累積移動距離算出手段114は、移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する。現在地情報送信手段115は、累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに、累積距離をクリアする。
【0057】
現在地情報の具体例は前述の移動端末15における位置ビーコンである。移動型無線機110が複数存在する場合には、現在地情報には、各移動型無線機110のID情報も含まれなければならない。一定時間とは、移動端末15では2秒となっているが、これに限定されない。閾値とは、前述の移動端末15では5kmとなっているが、携帯型であるか車載型であるかに応じて、ユーザの移動形態に応じて、設定される。好ましくは、移動型無線機110では、該閾値をユーザが所望値に調整できるようになっている。
【0058】
移動型無線機110では、累積距離が閾値以上になると、現在地情報を送信するので、移動端末15に関する図9及び図10で説明したように、現在地情報の送信頻度を抑制して、トラフィックの増大を防止しつつ、現在地情報の受信側では、移動型無線機110の広範な移動態様に対して的確な移動軌跡を現在地情報から生成することができる。
【0059】
具体的には、移動距離測定手段113は、今回の一定時間に移動した距離を、一定時間前の現在地と今回の現在地との直線距離に基づき測定する。各時点の現在地は例えば緯度と経度と定義され、一定時間前の現在地と今回の現在地との緯度経度に基づき両現在地間の直線距離を測定することができる。
【0060】
具体的には、移動型無線機110は瞬間移動速度検出手段118を備え、瞬間移動速度検出手段118は現在の瞬間移動速度を検出する。例えば、移動端末15のGPSレシーバ16は、GPS電波に基づき各時点の現在地の緯度及び経度と共に、各時点の瞬間速度や瞬間進行方向を検出して、パネルユニット17へ出力している。このような瞬間速度を利用して、移動距離測定手段113は、今回の一定時間に移動した距離を、瞬間移動速度と一定時間との積に基づき測定することもできる。一定時間は、その終端時刻の瞬間速度が、該一定時間内の各時点の瞬間速度に近似値とみなせる程度に、比較的短い値(該短い値は携帯の場合には自動車搭載の場合よりも長くなる。)を設定されることが好ましい。
【0061】
好ましくは、移動型無線機110は、瞬間移動速度検出手段118の他に、さらに、中止制御手段120を備える。中止制御手段120は、瞬間移動速度に基づきほぼ停止中であるか否かを判定し判定が正であれば、移動距離測定手段113による今回の移動距離測定を中止する。中止制御手段120のこのような機能は、図12のパネルマイコン処理ルーチン60のS63に対応している。中止制御手段120により移動距離測定手段113及び累積移動距離算出手段114の無駄な作動を回避することができる。
【0062】
図15は移動型無線機制御方法130のフローチャートである。移動型無線機制御方法130は移動型無線機110に適用される。S131,S132では、一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する。すなわち、S131では、移動型無線機制御方法130の前回の実行時から一定時間が経過したか否かを判定し、判定が正であれば、S132へ進み、否であれば、移動型無線機制御方法130を終了する。移動型無線機制御方法130の実行タイミングは、該一定時間より短く時間間隔に設定する必要があるか、あるいは、該一定時間ごとに、該移動型無線機制御方法130の実行の割込みが生じるようにすればよい。S132では、今回の一定時間における移動型無線機110の移動距離を測定する。
【0063】
S133では、S132で測定した移動距離を累積移動距離に累積する。S134では、累積距離が所定の閾値以上であるか否かを判定し、判定が正であれば、S135へ進み、否であれば、移動型無線機制御方法130を終了する。S135では、現在地情報を送信するとともに、累積距離をクリアする。
【0064】
S131,S132の処理は、移動型無線機110の移動距離測定手段113の機能に対応する。したがって、移動距離測定手段113について述べた具体的態様はS131,S132の処理についての具体的態様としても適用可能である。S133の処理は、移動型無線機110の累積移動距離算出手段114の機能に対応する。したがって、累積移動距離算出手段114について述べた具体的態様はS133の処理についての具体的態様としても適用可能である。S134,S135の処理は、移動型無線機110の現在地情報送信手段115の機能に対応する。したがって、現在地情報送信手段115について述べた具体的態様はS134,S135の処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0065】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを移動型無線機110の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、移動型無線機制御方法130の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0066】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、拡張ないし一般化の範囲で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を拡張ないし一般化の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】無線通信システムの概略図である。
【図2】移動端末の詳細な構成図である。
【図3】移動端末の表示部におけるBEACON送信方式の選択画面を示す図である。
【図4】位置ビーコン送信方式として手動送信が設定されている場合にユーザの指示により移動端末の表示部に自局位置を表示させたときの画面を示す図である。
【図5】位置ビーコン送信方式として累積距離方式が設定されている場合の送信パラメータ設定画面を示す図である。
【0068】
【図6】位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の累積距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末の表示部に自局位置を表示させたときの画面を示す図である。
【図7】位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の移動距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末の表示部に自局位置を表示させたときの画面を示す図である。
【図8】累積距離及び移動距離についての説明図である。
【図9】移動端末の位置ビーコン送信方式を累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第1の説明図である。
【図10】移動端末の位置ビーコン送信方式が累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第2の説明図である。
【0069】
【図11】TNCマイコン処理ルーチンのフローチャートである。
【図12】パネルマイコン処理ルーチンのフローチャートである。
【図13】移動端末における自局位置表示処理ルーチンのフローチャートである。
【図14】移動型無線機のブロック図である。
【図15】移動型無線機制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
110:移動型無線機、111:現在地検出手段、112:時間経過測定手段、113:移動距離測定手段、114:累積移動距離算出手段、115:現在地情報送信手段、118:瞬間移動速度検出手段、120:中止制御手段、130:移動型無線機制御方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在地情報を適宜送信する移動型無線機、その制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、移動体通信装置をユーザに携帯させて、ユーザが救援を必要とするときには、その現在地情報を該移動体通信装置から基地局へ自動的に送信することを開示する(特許文献1の段落0039〜0042等)。ユーザが救援を必要とするときとは、例えば山間部において17時から翌朝5時までの移動距離が100m以内であるとき(特許文献1の段落0039)、山間部の崖や海辺の岸壁において1秒間の移動距離が2m以上であるとき(特許文献1の段落0040及び0041)となっている。
【0003】
従来の移動型無線機(携帯型及び車載型の両方を含む。)において、位置ビーコンの送信方式には、(a1)手動送信、(a2)PTT(Press To Talk)連動送信、(a3)AUTO送信、及び(a4)SmartBeaconing送信の4種類が存在する。
【0004】
(a1)の手動送信では、例えばBCON(「BCON」は「BEACON」の簡略記載)キーという名称のキーを押した時に、それに連動して位置ビーコンの送信が行われる。(a2)PTT連動送信では、BCONキーを押してBEACON送信モードにした状態で、表示部の”BCON”表示が点滅した期間(ビーコン送信許可状態)に、PTTキーから指を離して、送信を終了すると、それに続いて、位置ビーコンが送信される。
【0005】
(a3)のAUTO送信では、同じくBCONキーを押して、BEACON送信モードにすると、以降は、たとえばBEACON送信時間と呼ばれている一定時間が経過するごとに(タイマーオーバーフロー)、位置ビーコンが自動的に送信される。なお、BEACON送信時間は、ユーザが●移動型●無線機のメニュー画面で所定範囲内で指定することができるようになっている。(a4)のSmartBeaconing送信では、速度及び進行方向の変化をパラメータとして使用して、基準値を越えたときに、位置ビーコンが自動的に送信される。各パラメータの基準値はユーザが●移動型●無線機のメニュー画面で設定することができるようになっている。また、無線機は、速度及び進行方向等のパラメータの測定値を内蔵のGPSレシーバから取得する。
【特許文献1】特開2006−109514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(a1)の手動送信は、ユーザが送信したい時にBCONキーを押して送信することができるようになっているが、車載型無線機では、ユーザが運転中のためBCONキーを押すことができない場面が考えられる。また、携帯型無線機では、ユーザは、歩行中などはポケットにしまっていることや、腰にぶら下げて使用していることが多いため、BCONキーが押しづらい状況が考えられる。したがって、ユーザが、ほぼ一定時間間隔でBCONキーを押すことは、ユーザにとり負担となるとともに、操作も煩わしい。
【0007】
(a2)のPTT連動送信は、PTTで交信が終わった時に、位置ビーコンの送信が自動的行われて、便利であるが、その反面、ユーザがこの地点で位置ビーコンの送信をしたいと思った時に、直ちに送信する場合にも、PTTキーを一度押してから送信することになるので、送信開始までに余計な時間を要してしまう。
【0008】
(a3)のAUTO送信は、送信間隔時間設定で設定した時間間隔で位置ビーコンが送信されるので、一定速度で走行しているときには、一定時間間隔で位置ビーコンの送信を行うことができる。しかし、実際の車載運用では信号や交差点渋滞など一定の速度では走行していない。携帯型の歩行運用も同様で、信号待ちや買い物中などの状態で速度が一定とは限らない。このような速度が一定でない条件で一定の間隔(距離)を置いて位置ビーコンの送信を行いたいときには、その速度に応じた時間間隔に随時変更する必要がある。しかし、ユーザが速度に応じて送信間隔時間を切り替えるのは、運転中や歩行中には操作が難しく、また、ユーザが自分の現在の速度を把握することも困難であり、現実上は無理である。したがって、一定距離間隔に軌跡を残すことはできない。また、停車(止まっている)時も、位置の変化はなくても繰り返し送信を行ってしまい、無駄な送信につながっている。
【0009】
(a4)のSmartBeaconing送信は、位置ビーコン送信判断処理時点の速度に対して送信間隔時間が変化する仕組みになっている。したがって、位置ビーコン送信判断の処理時点で、瞬間的に速度が速い場合は、位置ビーコン送信間隔が瞬間的に短くなるので、位置ビーコンの送信を行ってしまう。また、速度に対して送信時間間隔を切り替えているが、やはり速度がある程度の時間一定でいないと、想定した送信距離間隔で送信を行ってくれない。さらに、設定方法がLOWスピード及びHIGHスピードの2つについてそれぞれ何秒間隔で送信するかを設定するようになっており、LOWスピードとHIGHスピードとの中間のスピードにおいては、LOWスピードとHIGHスピードとの時間間隔から割り出して時間間隔を決定するようになっている。したがって、軌跡を残す距離間隔となる送信時間間隔に中間速度においてなるように、ユーザがLOWスピード及びHIGHスピードの時間間隔を設定することは非常に煩雑となる。
【0010】
本発明の目的は、ユーザに煩雑感を与えることなく、受信側がユーザの移動軌跡を的確にできるように位置ビーコンを送信する移動型無線機、その制御方法及びプログラムを提供することである。
【0011】
本発明の目的は、さらに、位置ビーコンを送信する頻度を抑制しつつ、受信側で位置ビーコンにより的確な移動軌跡を検出できるようにする移動型無線機、その制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、一定時間(例:2秒)ごとに該一定時間内の移動距離を測定し、該移動距離を累積移動距離として累積する。そして、累積移動距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに、累積距離をクリアする。
【0013】
本発明の移動型無線機は次のものを備えている。
現在地を検出する現在地検出手段、
一定時間の経過を測定する時間経過測定手段、
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定手段、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出手段、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信手段。
【0014】
本発明の移動型無線機制御方法は次のステップを備える。
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定ステップ、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出ステップ、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信ステップ。
【0015】
本発明のプログラムは、本発明の移動型無線機の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定時間ごとに該一定時間における移動距離を累積し、該累積移動距離が所定の閾値以上になると、位置ビーコンを送信するので、位置ビーコンの送信頻度を抑制しつつ、受信側では、位置ビーコンに基づき移動型無線機の移動軌跡を的確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は無線通信システム10の概略図である。無線通信システム10は、1つの基地局11と、少なくとも1つの移動端末15とを備える。基地局11は、所定の地点に固定して設置されるのに対し、移動端末15は、ユーザに携帯されたり、タクシー等の移動体に搭載されたりする。
【0018】
図2は移動端末15の詳細な構成図である。移動端末15は、GPSレシーバ16、パネルユニット17及びラジオユニット18を備えている。GPSレシーバ16及びパネルユニット17は、それぞれRS−232Cコネクタ21,22を備え、RS−232Cコネクタ21−22間を相互に接続されて、データを相互に送受する。パネルユニット17及びラジオユニット18は、それぞれRJ−45コネクタ25,26を備え、RJ−45コネクタ25−26間を相互に接続されて、データを相互に送受する。
【0019】
パネルユニット17は、メインマイコン30、表示部31、操作部32、モデム33、TNC(Terminal Node Controller)マイコン34及びEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory )35を備えている。表示部31は、メインマイコン30からのデータに基づき各種の表示を行う。操作部32は、操作キー、クリックエンコーダ及びアナログボリュームを含み、操作部32に対するユーザ操作の情報はメインマイコン30へ送られる。メインマイコン30は、TNCマイコン34及びEEPROM35とデータを送受し、所定の処理を実施する。
【0020】
モデム33は、RJ−45コネクタ25とTNCマイコン34との間に介在し、RJ−45コネクタ25へ通信速度1200bps又は9600bpsでデータを送受する。TNCマイコン34は、GPSレシーバ16から現在地情報を受け付ける。TNCマイコン34は、天気情報に係るウェザーステーション(Weather Station)用の接続端子や、2.5mmのステレオ(Stereo)プラグ端子から所定のデータを受けることもできる。
【0021】
ラジオユニット18は、マイコン39、送受信部40及び内蔵スピーカ41を備える。マイコン39は、ラジオユニット18内の各種素子を制御する。送受信部40は、内蔵スピーカ41、アンテナ端子43及びRJ−45コネクタ44と信号を送受する。アンテナ端子43にはアンテナが接続され、RJ−45コネクタ44にはマイクロホン(図示せず)が接続される。
【0022】
移動端末15から位置ビーコンを送信するには、移動端末15において、まず初めに自局コールサインを設定するか、位置情報の設定(GPSをシリアル接続するかメニューで位置情報を手動入力する)が必要となる。GPSをシリアル接続した場合には、TNCマイコン34は、リアルタイムな位置情報(緯度、経度、進行方向、速度、高度等)をGPSレシーバ16からシリアルデータとして受理して、位置情報を解析し、メインマイコン30へ送る。メインマイコン30は、その情報を基に位置ビーコンの送信データを作成し、ラジオユニット18へ送って、ラジオユニット18から送信する。位置情報は、図4、図6及び図7で後述するように、表示部31に表示させて確認することもできる。
【0023】
図3は移動端末15の表示部31におけるBEACON送信方式の選択画面を示している。移動端末15は、位置ビーコンの送信方式として従来の手動送信、PTT送信、AUTO送信及びSmartBeaconing送信の他にWALKBEACONが新規に追加される。図3(a)及び(b)は、位置ビーコンの送信方式としてそれぞれ手動送信(MANUAL)及びWALKBEACONが選択されている場合の画面を示す。WALKBEACONには、さらに、累積距離方式と移動距離方式とが含まれる。
【0024】
図4は位置ビーコン送信方式として手動送信が設定されている場合にユーザの指示により移動端末15の表示部31に自局位置を表示させたときの画面を示している。図4の画面情報では、現在時刻は12:00であり、現在の移動速度(mph)は123マイル/hであり、真北を0°として、時計方向へ357°の方向へ進行している。現在地は緯度(図4では北緯のN)、経度(図4では東経のE)、及び高度(ALT)により示される。
【0025】
図5は位置ビーコン送信方式として累積距離方式が設定されている場合の送信パラメータ設定画面を示している。図5では、位置ビーコンを送信する距離間隔は「5km」に、距離算出方式は「累積」に、また、補正速度●●とは、検出した移動速度が該補正速度以下である場合には、移動停止中と判断する速度である。検出した移動速度が補正速度以下である場合には、後述の図12のパネルマイコン処理ルーチン60のS63における判定は否と判定され、すなわち停止中と判定され、後述の移動距離計算や累積計算は行わないようになっている。図5の例では、補正速度●●は「1km」に設定されている。距離方式は「累積」と「移動距離」との2つが設定可能になっている。「累積」及び「移動距離」はそれぞれ後述の累積距離方式及び移動距離方式に対応している。
【0026】
図6は位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の累積距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末15の表示部31に自局位置を表示させたときの画面を示している。累積距離(Comulative Distance)は後述する図8のLaに相当するものであり、図6の画面では、現在のそれは12mと表示されている。
【0027】
ユーザはWALKBEACONの累積距離方式及び移動距離方式において、図5又は図6の画面から、各時点の緯度、経度、速度、進行方向、高度と共に累積距離方式の累積距離や移動距離方式の移動距離を参照することができるので、次回の位置ビーコン送信までの距離を確認することができる。
【0028】
図7は位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の移動距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末15の表示部31に自局位置を表示させたときの画面を示している。移動距離(Moving Distance)は、後述する図8のLbに相当するものであり、図7の画面では、現在のそれは●●12m●●と表示されている。
【0029】
図8は累積距離及び移動距離についての説明図である。該説明図では、移動端末15が自動車47に搭載されている場合を想定している。累積距離及び移動距離は位置ビーコン送信方式がそれぞれ累積距離方式及び移動距離方式に設定されているときに算出するものであり、累積距離方式及び移動距離方式のいずれであっても、移動端末15は地点P1において位置ビーコンを送信したものとする。移動端末15の位置ビーコンには、該移動端末15の現在地情報の他に、該移動端末15のID情報を含むので、基地局11(図1)は受信した位置ビーコンがどの移動端末15からのものであるかを検出することができる。位置ビーコンは、送信時刻情報を含んでもよいし、基地局11では、該送信時刻情報に代えて、受信時刻を処理に使用してもよい。
【0030】
該位置ビーコンは基地局11に受信され、基地局11は、移動端末15のID、移動端末15の現在地、及び移動端末15における送信時刻(又は基地局11における受信時刻)を相互に対応付けて、記憶装置(図示せず)にストアする。累積距離(Comulative Distance)Laは、移動端末15側に設定されるものであり、移動端末15は、P1において位置ビーコンを送信しだい、Laをクリアする。なお、位置ビーコンには、さらに、移動方向や移動速度を含めることもできる。
【0031】
この移動端末15では、累積距離方式において2秒間隔で移動距離を計算し、Laに累積する。移動距離は、GPSレシーバ16の出力から検出した2秒前の現在地と今回の現在地との緯度及び経度から計算する。したがって、この場合は、計算される移動距離は、2秒前の現在地と今回の現在地との直線距離となる。
【0032】
GPSレシーバ16は、各出力時点においてその時点の現在地の経度及び緯度情報だけでなく、その時点の瞬間速度の情報を出力する。また、2秒という時間間隔は十分に短く、この2秒間では、移動速度は今回の瞬間速度の近似値であると考えることができる。こうして、2秒前の現在地と今回の現在地との移動距離を緯度及び経度から計算する代わりに、今回の瞬間速度(m/s)×2秒を今回の移動距離として計算してもよい。移動距離を瞬間速度×一定時間とする場合、移動距離をニ地点間の直線距離とする場合よりも移動端末15が移動した道のりに近い値となることがある。
【0033】
図8のL1,L2,L3,・・・,Lnは、2秒ごとの自動車47の移動距離を示している。P1の時刻から2秒、4秒、6秒、2×n秒、経過するごとに、Laは、それぞれL1,L2,L3,・・・,Lnを順次、加算されていき、La=L1,La=L1+L2,La=L1+L2+L3,・・・と増大していく。自動車47がP2に来た時、La≧閾値(該閾値は図5では5km)となり、移動端末15は位置ビーコンを送信するとともに、Laをクリアする。こうして、移動端末15は、累積距離方式の期間では、La≧閾値となるごとに、位置ビーコンの送信とLaのクリアとを繰り返す。
【0034】
これに対して、移動距離方式では、一定時間間隔(例:2秒)で、現在地とP1との移動距離(Moving Distance)Lbを、GPSレシーバ16から出力される緯度及び経度情報に基づき計算する。換言すると、移動距離Lbとは移動中の各現在地と最後の位置ビーコン送信地点P1とのニ地点間の直線距離である。そして、Lb≧閾値(例:閾値=5km)となりしだい、移動端末15は位置ビーコンを送信する。なお、基地局11は、移動端末15が累積距離方式及び移動距離方式のどちらで位置ビーコンを送信しているかに関係なく、移動端末15から受信した位置ビーコンに基づき各時点の現在地を記憶して、軌跡を把握する。
【0035】
図9は移動端末15の位置ビーコン送信方式を累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第1の説明図である。ここでは、移動端末15は、累積距離方式及び移動距離方式共にLa,LbがRq(例:5km)以上になると、位置ビーコンを送信するように設定されているものとする。累積距離方式及び移動距離方式共に移動端末15は地点P0において位置ビーコンを送信したものと仮定するとともに、矢印のように、移動したと仮定する。移動端末15の実際の移動軌跡は曲線となるが、図示の便宜上、線分の連結で示している。
【0036】
図9おいて、累積距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は、白丸で示しており、時刻順にP1,P2,P3,P4となる。C0,C1,C2,C3,C4は、それぞれP1,P2,P3,P4を中心とする半径Rqの円を示す。これに対して、移動距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は、黒丸で示しており、Q1のみとなる。
【0037】
累積距離方式の系列の各P1,P2,P3,P4は、それぞれ一定時間前の各P0,P1,P2,P3を中心とする円C0,C1,C2,C3の内側に存在しているにもかかわらず、累積距離Laが前回の送信地点P0,P1,P2,P3からRq以上になると、位置ビーコンが送信されるので、P0,P1,P2,P3,P4は、時刻順に隣り同士が適度な距離となって、それらの地点に基づき軌跡が把握し易い。これに対して、移動距離方式では、P0からの直線距離がRq以上にならないと、すなわち、円C0の外へ出ないと、位置ビーコンが送信されないので、移動端末15が移動経路の地点Q1に来た時点で初めて位置ビーコンが送信される。基地局11は、P0とQ1とからP0−Q1間の軌跡を把握することは難しい。
【0038】
図10は移動端末15の位置ビーコン送信方式が累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第2の説明図である。ここで、移動端末15は、累積距離方式の場合は、図9と同じく累積距離La≧Rq以上になったら、位置ビーコンを送信するように設定されているのに対し、移動距離方式の場合は、二点間直線距離Lb≧Ru(ただし、Ruは、Rqより適当に小であり、図10では、Rqの約半分にしている。)以上になったら、位置ビーコンを送信するように設定したものとする。
【0039】
図10においても、白丸及び黒丸は図9と同様にそれぞれ累積距離方式及び移動距離方式の場合の送信地点を意味する。なお、白丸となっている地点P0は累積距離方式及び移動距離方式に共通の送信地点である。図10においても、累積距離方式の場合には、閾値=Rqの設定であるので、累積距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は時刻順にP1,P2,P3,P4となる。これに対して、移動距離方式の場合には、閾値=Ru(Ru<Rq)であるので、移動距離方式の場合の位置ビーコンの各送信地点は時刻順にU1,U2の2つとなり、図9の移動距離方式の場合より1個、増大する。
【0040】
移動距離方式の閾値をRqからRu(Ru<Rq)への変更に伴い、移動距離方式の場合の位置ビーコン送信地点は、図9のQ1からU1へと、P0から割合に近い地点となる。しかし、移動距離方式の場合、地点U1以降の移動では、地点U1がU0に代わる基準地点となって、U1から直線距離がRu以上にならないと、次の位置ビーコンの送信が行われないことになるので、次の位置ビーコン送信地点は、移動端末15の長大な移動軌跡にもかかわらず、U2になってしまい、基地局11では、移動端末15の移動軌跡の把握は、多少改善されるものの、難しい。
【0041】
一方、Ruを大幅に短くすると、例えば、移動端末15が地点P0から一直線で遠ざかって行く軌跡の場合には、位置ビーコンの送信が頻繁になり過ぎて、基地局11が監視する移動端末15の個数が多いときには、トラフィック増大の原因になってしまう。また、移動端末15の移動軌跡は、ユーザによる個人差があるとともに、同一のユーザであっても日によって異なる場合があり、移動距離方式の場合の閾値を的確に値に一律に設定することは難しい。このように、移動距離方式では、個々の移動状況に関係なく、適切な閾値を設定することが難しく、また、このため、基地局11が移動端末15からの位置ビーコンに基づき軌跡を把握することが難しいのに対し、累積距離方式では、個々の移動状況に関係なく、適切な地点で位置ビーコンを送信することができる。
【0042】
累積距離方式の利点を列挙すると、次のとおりである。
【0043】
(b1)累積距離方式を採用することで、実際の移動距離に応じた移動軌跡を残すことができる。移動距離方式の場合、前回送信地点から直線距離で閾値を越えなければビーコンの送信を行わない。したがって、前回送信地点から一度閾値付近まで移動しても、そこで前回送信地点に戻ってしまうと、閾値を越えないので、実移動距離は閾値を越えても、位置情報の送信を行えない欠点がある。累積距離方式の場合その部分を解決し、実移動距離で位置情報の送信を行うことができる。限られたエリアで移動する運用では特に効果が高い。
【0044】
(b2)累積距離方式では、速度の変化が激しくても一定距離間隔で、位置ビーコンの送信を移動軌跡も一定距離間隔で分かり易くなる。
【0045】
(b3)累積距離方式の閾値(累積距離が該閾値を越えたら位置情報を送信する距離)をメニューで設定するようにすることが好ましい。この場合、車載運用の高速道路などの運用では大き目の値を、一般道路では通常の値を、徒歩運用などでは小さい値を設定することで運用形態に合わせた運用を行うことができる。
【0046】
図11はTNCマイコン処理ルーチン50のフローチャートである。TNCマイコン処理ルーチン50はパネルユニット17のTNCマイコン34において実行される。S51では、RS−232Cコネクタ21からGPSデータとして$GPGGA(Global Positioning System Fix Data), $GPGLL(Geographic Position-Latitude/Longtude), $GPRMC(Recommended Minimum Specific GNSS Data), $GPVTG(Course Over Ground and Ground Speed), $GPZDA(Time & Date),及びSONYの入力センテンスを受信する。なお、SONYの入力センテンスとは、ソニー株式会社のIPS−5000などが出力するフォーマットであり、「SONY」で始まり、[CR][LF]で終わる110バイト固定長でのデータであり、日付、時刻、緯度、経度、高度、移動速度、進行方向、衛星情報が含まれている。S52では、該入力センテンスを解析して、各データを抽出する。
【0047】
S53では、メインマイコン30で使用する$PKWDPOS(位置情報)センテンスを構築する。S54では、2秒ごとに$PKWDPOSセンテンスをメインマイコン30へ出力する。
【0048】
図12はパネルマイコン処理ルーチン60のフローチャートである。パネルマイコン処理ルーチン60はパネルユニット17のメインマイコン30において実行される。S61では、$PKWDPOSセンテンスをTNCマイコン34からGPSデータとして受信する。S62では、$PKWDPOSセンテンスから速度、緯度及び経度の情報を取得する。S63では、速度情報を確認し、移動中であれば、S64へ進み、停止中であれば、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。S64では、位置ビーコン送信方式が累積距離方式及び移動距離方式のどちらになっているかを判定し、前者であれば、S69へ進み、後者であれば、S80へ進む。
【0049】
S69では、前回の緯度経度情報(2秒前)と現在の緯度経度情報とから移動距離を算出する。該移動距離は、両地点の緯度及び経度から算出することになるので、両地点の直線距離で算出される。S70では、S69で算出した距離を累積距離Laに加算する。S71では、今回の現在地を前回の現在地として保存する。これは、今回の現在地を、次の2秒後のパネルマイコン処理ルーチン60の実行時には前回の現在地として使用するためである。
【0050】
S72では、累積距離Laが送信基準距離(送信基準距離は閾値Rqに対応する。)を越えたか否かを判定し、判定が正であれば、S76へ進み、否であれば、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。S76では位置ビーコンを送信する。S77では、累積距離Laを初期化、すなわちクリアし、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。
【0051】
S80では、S69と同様に、前回の緯度経度情報(2秒前)と現在の緯度経度情報とから移動距離を算出する。該移動距離は、2秒前の現在地と今回の現在地との直線距離として算出される。S81では、移動距離が送信基準距離(送信基準距離は前述の閾値Rqに対応する。)を越えたか否かを判定し、判定が正であれば、S84へ進み、否であれば、パネルマイコン処理ルーチン60を終了する。なお、S81における送信基準距離は、S72における送信基準距離とは別の値(通常は、S72における送信基準距離より小さい値、例えばRu)を設定してもよい。S85では、S76と同様に、位置ビーコンを送信する。
【0052】
図13は移動端末15における自局位置表示処理ルーチン90のフローチャートである。自局位置表示処理ルーチン90はメインマイコン30において実行される。S91では、操作部32のPOS(自局位置表示)キーが押されたか否かを判定し、判定が正であれば、S92へ進み、否であれば、自局位置表示処理ルーチン90を終了する。
【0053】
S92では、送信方式の設定がWALKBEACONとなっているか否かを判定し、判定が正であれは、S93へ進み、否であれば、S96へ進む。S94では、累積処理の表示要求を行う。これにより、自局位置の表示は累積距離方式に対応付けられる。S95は、移動距離の表示要求を行う。これにより、自局位置の表示は移動距離方式に対応付けられる。
【0054】
S96では、自局位置の表示要求を出す。この表示要求は、手動送信、累積距離方式又は移動距離方式に対応付けて行われる。S97では、対応付けられた位置ビーコン送信方式に従って、表示部31に自局位置を表示する表示処理を実施する。こうして、表示部31には、現在、設定されている位置ビーコン送信方式に対応して、図4、図6又は図7の自局位置表示画面が表示される。
【0055】
図14は移動型無線機110のブロック図である。前述の移動端末15は移動型無線機110の一例である。移動型無線機110は、ユーザに携帯されるものであってもよいし、自動車その他の移動体に搭載されるものであってもよい。移動型無線機110は、現在地検出手段111、時間経過測定手段112、移動距離測定手段113、累積移動距離算出手段114及び現在地情報送信手段115を備える。移動型無線機110は、さらに、瞬間移動速度検出手段118及び中止制御手段120を備えることもできる。
【0056】
現在地検出手段111は、現在地を検出する。時間経過測定手段112は、一定時間の経過を測定する。移動距離測定手段113は、一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する。累積移動距離算出手段114は、移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する。現在地情報送信手段115は、累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに、累積距離をクリアする。
【0057】
現在地情報の具体例は前述の移動端末15における位置ビーコンである。移動型無線機110が複数存在する場合には、現在地情報には、各移動型無線機110のID情報も含まれなければならない。一定時間とは、移動端末15では2秒となっているが、これに限定されない。閾値とは、前述の移動端末15では5kmとなっているが、携帯型であるか車載型であるかに応じて、ユーザの移動形態に応じて、設定される。好ましくは、移動型無線機110では、該閾値をユーザが所望値に調整できるようになっている。
【0058】
移動型無線機110では、累積距離が閾値以上になると、現在地情報を送信するので、移動端末15に関する図9及び図10で説明したように、現在地情報の送信頻度を抑制して、トラフィックの増大を防止しつつ、現在地情報の受信側では、移動型無線機110の広範な移動態様に対して的確な移動軌跡を現在地情報から生成することができる。
【0059】
具体的には、移動距離測定手段113は、今回の一定時間に移動した距離を、一定時間前の現在地と今回の現在地との直線距離に基づき測定する。各時点の現在地は例えば緯度と経度と定義され、一定時間前の現在地と今回の現在地との緯度経度に基づき両現在地間の直線距離を測定することができる。
【0060】
具体的には、移動型無線機110は瞬間移動速度検出手段118を備え、瞬間移動速度検出手段118は現在の瞬間移動速度を検出する。例えば、移動端末15のGPSレシーバ16は、GPS電波に基づき各時点の現在地の緯度及び経度と共に、各時点の瞬間速度や瞬間進行方向を検出して、パネルユニット17へ出力している。このような瞬間速度を利用して、移動距離測定手段113は、今回の一定時間に移動した距離を、瞬間移動速度と一定時間との積に基づき測定することもできる。一定時間は、その終端時刻の瞬間速度が、該一定時間内の各時点の瞬間速度に近似値とみなせる程度に、比較的短い値(該短い値は携帯の場合には自動車搭載の場合よりも長くなる。)を設定されることが好ましい。
【0061】
好ましくは、移動型無線機110は、瞬間移動速度検出手段118の他に、さらに、中止制御手段120を備える。中止制御手段120は、瞬間移動速度に基づきほぼ停止中であるか否かを判定し判定が正であれば、移動距離測定手段113による今回の移動距離測定を中止する。中止制御手段120のこのような機能は、図12のパネルマイコン処理ルーチン60のS63に対応している。中止制御手段120により移動距離測定手段113及び累積移動距離算出手段114の無駄な作動を回避することができる。
【0062】
図15は移動型無線機制御方法130のフローチャートである。移動型無線機制御方法130は移動型無線機110に適用される。S131,S132では、一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する。すなわち、S131では、移動型無線機制御方法130の前回の実行時から一定時間が経過したか否かを判定し、判定が正であれば、S132へ進み、否であれば、移動型無線機制御方法130を終了する。移動型無線機制御方法130の実行タイミングは、該一定時間より短く時間間隔に設定する必要があるか、あるいは、該一定時間ごとに、該移動型無線機制御方法130の実行の割込みが生じるようにすればよい。S132では、今回の一定時間における移動型無線機110の移動距離を測定する。
【0063】
S133では、S132で測定した移動距離を累積移動距離に累積する。S134では、累積距離が所定の閾値以上であるか否かを判定し、判定が正であれば、S135へ進み、否であれば、移動型無線機制御方法130を終了する。S135では、現在地情報を送信するとともに、累積距離をクリアする。
【0064】
S131,S132の処理は、移動型無線機110の移動距離測定手段113の機能に対応する。したがって、移動距離測定手段113について述べた具体的態様はS131,S132の処理についての具体的態様としても適用可能である。S133の処理は、移動型無線機110の累積移動距離算出手段114の機能に対応する。したがって、累積移動距離算出手段114について述べた具体的態様はS133の処理についての具体的態様としても適用可能である。S134,S135の処理は、移動型無線機110の現在地情報送信手段115の機能に対応する。したがって、現在地情報送信手段115について述べた具体的態様はS134,S135の処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0065】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを移動型無線機110の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、移動型無線機制御方法130の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0066】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、拡張ないし一般化の範囲で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を拡張ないし一般化の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】無線通信システムの概略図である。
【図2】移動端末の詳細な構成図である。
【図3】移動端末の表示部におけるBEACON送信方式の選択画面を示す図である。
【図4】位置ビーコン送信方式として手動送信が設定されている場合にユーザの指示により移動端末の表示部に自局位置を表示させたときの画面を示す図である。
【図5】位置ビーコン送信方式として累積距離方式が設定されている場合の送信パラメータ設定画面を示す図である。
【0068】
【図6】位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の累積距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末の表示部に自局位置を表示させたときの画面を示す図である。
【図7】位置ビーコン送信方式としてWALKBEACONの内の移動距離が設定されている場合にユーザの指示により移動端末の表示部に自局位置を表示させたときの画面を示す図である。
【図8】累積距離及び移動距離についての説明図である。
【図9】移動端末の位置ビーコン送信方式を累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第1の説明図である。
【図10】移動端末の位置ビーコン送信方式が累積距離方式及び移動距離方式に設定した場合の位置ビーコン送信地点の差異についての第2の説明図である。
【0069】
【図11】TNCマイコン処理ルーチンのフローチャートである。
【図12】パネルマイコン処理ルーチンのフローチャートである。
【図13】移動端末における自局位置表示処理ルーチンのフローチャートである。
【図14】移動型無線機のブロック図である。
【図15】移動型無線機制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
110:移動型無線機、111:現在地検出手段、112:時間経過測定手段、113:移動距離測定手段、114:累積移動距離算出手段、115:現在地情報送信手段、118:瞬間移動速度検出手段、120:中止制御手段、130:移動型無線機制御方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在地を検出する現在地検出手段、
一定時間の経過を測定する時間経過測定手段、
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定手段、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出手段、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信手段、
を備えることを特徴とする移動型無線機。
【請求項2】
前記移動距離測定手段は、今回の一定時間に移動した距離を、前記一定時間前の現在地と今回の現在地との直線距離に基づき測定することを特徴とする請求項1記載の移動型無線機。
【請求項3】
現在の瞬間移動速度を検出する瞬間移動速度検出手段を備え、
前記移動距離測定手段は、今回の一定時間に移動した距離を、前記瞬間移動速度と一定時間との積に基づき測定することを特徴とする請求項1記載の移動型無線機。
【請求項4】
現在の瞬間移動速度を検出する瞬間移動速度検出手段、及び
前記瞬間移動速度に基づきほぼ停止中であるか否かを判定し判定が正であれば前記移動距離測定手段による今回の移動距離測定を中止する中止制御手段、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移動型無線機。
【請求項5】
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定ステップ、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出ステップ、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信ステップ、
を備えることを特徴とする移動型無線機制御方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の移動型無線機の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項1】
現在地を検出する現在地検出手段、
一定時間の経過を測定する時間経過測定手段、
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定手段、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出手段、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信手段、
を備えることを特徴とする移動型無線機。
【請求項2】
前記移動距離測定手段は、今回の一定時間に移動した距離を、前記一定時間前の現在地と今回の現在地との直線距離に基づき測定することを特徴とする請求項1記載の移動型無線機。
【請求項3】
現在の瞬間移動速度を検出する瞬間移動速度検出手段を備え、
前記移動距離測定手段は、今回の一定時間に移動した距離を、前記瞬間移動速度と一定時間との積に基づき測定することを特徴とする請求項1記載の移動型無線機。
【請求項4】
現在の瞬間移動速度を検出する瞬間移動速度検出手段、及び
前記瞬間移動速度に基づきほぼ停止中であるか否かを判定し判定が正であれば前記移動距離測定手段による今回の移動距離測定を中止する中止制御手段、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移動型無線機。
【請求項5】
前記一定時間ごとに今回の一定時間における移動距離を測定する移動距離測定ステップ、
前記移動距離を測定するごとに該移動距離を累積移動距離に累積する累積移動距離算出ステップ、及び
前記累積距離が所定の閾値以上になると、現在地情報を送信するとともに前記累積距離をクリアする現在地情報送信ステップ、
を備えることを特徴とする移動型無線機制御方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の移動型無線機の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−74712(P2010−74712A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242206(P2008−242206)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]