説明

移動式洗浄装置

【課題】 洗浄速度が速く、障害物や断面変化がある場所でも洗浄可能であり、作業に伴う危険性が少なく、さらには環境に対する負荷の低減された移動式洗浄装置を提供すること。
【課題を解決するための手段】
移動しながら、移動路に沿って配置されている対象物を洗浄する移動式洗浄装置であって、移動手段(10)と、該移動手段(10)に搭載され、ナノバブル水を該対象物に向けて噴霧するナノバブル水噴霧装置(20)と、該移動手段(10)に搭載された高圧水噴射装置(30)であって、該移動手段(10)の移動方向を基準にして、該ナノバブル水噴霧装置(20)の後方位置に配置され、移動手段(10)の移動に伴って、該ナノバブル水噴霧装置(20)が先にナノバブル水を噴霧した対象物に高圧水を噴射する高圧水噴射装置(30)と、を有する移動式洗浄装置(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネルの壁面などを移動しながら洗浄するための移動式洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの壁面を洗浄する際には、一般的には、石鹸水等を用いて回転ブラシ等で洗浄する接触型洗浄装置を備えた洗浄用車両によって行なわれている。
【0003】
しかし、このような接触型洗浄装置の洗浄速度は遅く、車両の走行速度を遅くせざるをえないために交通規制などを行なう必要がある。また、ガードフェンス、標識板、などの障害物があったり、待避場などトンネル壁面に大きな凹凸などがある場所では円滑に洗浄できない。さらには、洗浄後に発生する多量の石鹸水は環境上問題になる。また、ガソリン類が燃えて付着する汚れは落ちにくく、人手を要する場合もあり、そのような作業を高所でやる場合には作業員が転落するなどの危険がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、障害物があったり、壁面などの被洗浄対象面に大きな凹凸があったり、洗浄場所が高所にあったりする場合でも、従来のものに比べて高速で、円滑且つ安全に洗浄作業を行なうことができ、しかも、環境負荷を低減させる移動式洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
移動しながら、移動路に沿って配置されている対象物を洗浄する移動式洗浄装置(以下に述べる実施形態においては、参照符号1で示す。以下同様。)であって、
移動手段(10)と;
該移動手段(10)に搭載され、ナノバブル水を該対象物に向けて噴霧するナノバブル水噴霧装置(20)と、
該移動手段(10)に搭載された高圧水噴射装置(30)であって、該移動手段(10)の移動方向を基準にして、該ナノバブル水噴霧装置(20)の後方位置に配置され、移動手段(10)の移動に伴って、該ナノバブル水噴霧装置(20)が先にナノバブル水を噴霧した対象物に高圧水を噴射する高圧水噴射装置(30)と、
を有する移動式洗浄装置(1)を提供するものである。
【0006】
このように構成された移動式洗浄装置によれば、従来の接触型洗浄装置では作業が困難となるような障害物があったり、被洗浄面が高い場所にあったり、大きな凹凸を有するような場合でも、人手を要することなく円滑な洗浄が可能となる。また、ナノバブル水は洗剤を含まなくとも洗浄作用があり、本発明に係る装置では、このナノバブル水を、先ず被洗浄面に噴霧しておき、移動手段の移動にともなって、所定時間の後に高圧水を噴射して、ナノバブルによって被洗浄面から浮き上がった汚れを吹き飛ばすようにするものであり、車両を移動しながら洗浄作業を行なうことができる。このため、トンネル壁面の洗浄を、従来の洗浄装置によって行なう場合には必要であった交通止めを行なわなくても作業を行なうことを可能とする。更に、洗剤を使用しないので環境に対する負荷も低減されている。
【0007】
具体的には、該移動手段(10)に搭載されたナノバブル水貯留タンク(60)を備え、該ナノバブル水噴霧装置(20)は該ナノバブル水貯留タンク(60)からナノバブル水の供給を受けて噴霧を行なうようにすることができる。
【0008】
本願発明者は、ナノバブル水中のナノバブルがかなりの長期間にわたって水中に滞留することを検証しており、そのようなナノバブル水の性質を利用し、当該洗浄装置がナノバブル発生装置を搭載していなくても、予め作ったナノバブルをタンクに貯留して洗浄を行なえるようにしたものである。
【0009】
また、高圧水噴射装置(30)は、対象物に好ましくは吐出水圧10〜20MPaの高圧水を吹き付けるようにすることができる。このように構成することにより、洗浄効果をより向上させることができる。ここで、圧力はポンプからの吐出圧力である。
【0010】
さらに、上記移動手段(10)が路上車両及び軌道車両のいずれかとなるように構成することもできる。
【0011】
ここで、該「対象物」としては、トンネル内の磁気タイル壁、ガラス壁、ALC版、コンクリート壁などトンネル内壁面、及びトンネル内に設置された器材(ガードレール、ガードパイプ、照明など)、トンネル以外の道路上の構築物(ガードレール、遮音壁、壁高蘭、防音壁、コンクリート製高欄など)、建築構造物の壁面・ガラス・床、トイレのタイル、樹脂板、人工・自然石などが挙げられるが、本発明の移動式洗浄装置は特にトンネル内壁面の洗浄に効果を奏する。
【0012】
また、高圧水噴射装置(30)は、1又は複数の高圧水噴射ユニット(31)を備え、各高圧水噴射ユニットは、それぞれ平行リンク機構を構成した油圧式または手動式のアーム(32)により該移動手段に取り付けられているように構成することもできる。このように構成することにより各ユニットの前面を対象物に向けたまま上下位置を適宜変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の移動式洗浄装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本実施形態の移動式洗浄装置1は、図1〜4に示すように、移動手段としての路上車両10に、ナノバブル水噴霧装置20と高圧水噴射装置30とが搭載されている。
【0015】
路上車両10はいわゆるトラック様の4輪自動車であり、運転席やエンジンを具備するキャブ11と、荷台部分12とを備える。
【0016】
ナノバブル水噴霧装置20は、洗浄を行うトンネル壁面などの対象物に向けてナノバブル水を噴霧する装置であり、荷台部分12においてキャブ11に近接して設置された噴霧ノズル機材21からなる。
【0017】
噴霧ノズル機材21は、縦長の機材本体と、該機材本体に上下方向で所定間隔をあけて複数個(特に図示しないが本形態においては3個)設けられた噴霧ノズルとからなる。ここで噴霧ノズルは特に制限されずに種々のものを用いることができるが、株式会社いけうち製の商品名「VNP−65−56」「VNP−65−56」「VNP−40−25」などを用いることができる。
【0018】
高圧水噴射装置30は、該ナノバブル水噴霧装置20から後方に間隔をあけた荷台部分後部に配置された複数個(本実施形態では3個)の高圧水噴射ユニット31を備える。
【0019】
ナノバブル水噴霧装置20と高圧水噴射装置30との間の間隔は、移動式洗浄装置1を走行速度10〜30km/hで走行させた場合に、ナノバブル水噴霧装置により噴霧したナノバブル水で対象物を十分に濡らした上で高圧水による洗浄を行う観点から、0.5〜1.5mとするのが好ましい。
【0020】
各ユニット31はいずれも同じ形状であり、図3に示すように、荷台上に固定されたユニット固定部材33に折りたたみ自在のアーム32を介して固定されている。各ユニット31は、図4に示すように、洗浄時に対象物に対向させる長方形状の前面部31aを有し、前面部31aの対角線上に複数個(本実施形態では13個)の噴射ノズル31bを備える。図示の実施形態においては、アーム32は図3に示すように平行リンク機構を構成しており、前面部31aを対象物に向けたまま上下方向での適宜位置とすることができる。図2に示す例では、3つのユニット31の噴射ノズル31bが、全体として、上方位置から下方位置に斜めに配置され、(配管31cを介して外部の高圧水供給装置から供給される)高圧水が対象物の高さ方向全域に亘ってほぼ均等に噴きつけることができるようにしている。ここで噴射ノズルは特に制限されずに種々のものを用いることができるが、株式会社いけうち製の商品名「DSP−12−83」「VNP−25−56」などを用いることができる。
【0021】
荷台部分12の前後方向ほぼ中央には、左側に燃料タンク40が、右側にナノバブル発生装置50が配置されている。また、ユニット固定部材33の右側にはナノバブル水を貯蔵するナノバブル水貯留タンク60が配置されており、ナノバブル発生装置60の前方には高圧水供給装置70が配置されている。
【0022】
そして、ナノバブル発生装置50とナノバブル水貯留タンク60とは配管51で連結されており、さらにナノバブル水貯留タンク60と高圧水供給装置70とは配管61で連結されている。そして高圧水供給装置70とナノバブル水噴霧装置20及び高圧水噴射装置30とはそれぞれ配管71、72で連結されている。
【0023】
ナノバブル発生装置としては、例えば、協和機設(株)製の製品名「バヴィタス(BUVITAS)」が適している。
【0024】
本実施形態の移動式洗浄装置1による洗浄操作は次のようにして行われる。
【0025】
ナノバブル水発生装置50でナノバブル水を作り、ナノバブル水貯留タンク60に貯留する。
【0026】
ナノバブル水貯留タンク60に貯留したナノバブル水は、配管61を通して高圧水供給装置70に供給されて高圧化され、配管71、72を通して噴霧ノズル機材21及び各高圧水噴射ユニット31に供給される。
【0027】
噴霧ノズル機材21からはナノバブル水が霧状にて対象物に噴きつけられ、また、各高圧水噴射ユニット31からはナノバブル水がジェット噴流として対象物に噴きつける。これらの操作は移動式洗浄装置を移動させつつ行なうので、対象物には、まず霧状のナノバブル水が噴き付けられて、一定時間をおいてナノバブル水のジェット噴流が噴き付けられる。ナノバブル水は、その界面活性作用等を有しており、ナノバブル水が噴霧された対象物表面の汚れは上記一定時間の間に該表面から浮き上がり、これに高圧のナノバブルジェット噴流が吹き付けられて、汚れが除去される。
【0028】
移動式洗浄装置は、速度10〜30Km/hで走行させつつ上述の洗浄を行なうことができるので、あまり交通に支障をきたさずに洗浄を行なうことができる。
【0029】
ナノバブル水としては、図7に示すように、平均粒径2μm以下、さらには10nm以上1μm以下の微細気泡を50万個/ミリリットル以上500万個/ミリリットル以下で含有するものを好ましく用いることができる。また、本発明で好ましく用いられるナノバブル水における微細気泡の粒度分布は、各粒径の微細気泡が微細気泡全部の総体積に占める割合(体積比率、特定の粒径の微細気泡の体積/微細気泡全部の体積)で、図7に示すように2μm以下の微細気泡の合計体積が気泡全部の総体積中80%以上であるのが好ましい。ここで、図7は、本発明において好ましく用いられるナノバブル水の粒度分布の測定グラフであり、粒度分布の測定は後述する粒度分布測定装置を用いて行なった。
【0030】
このようなナノバブル水が、本発明の所望の効果を得るうえで好ましく用いられる。
【0031】
ここでナノバブル水についてマイクロバブルと対比して説明すると、ナノバブルは、いわゆるマイクロバブルの1/1000程度の粒径を有し、マイナスの電荷を持っており、マイクロバブルに比較し強い界面活性を有する。また、マイクロバブルは水中に発生後数分で上昇し飛散するのに対して、ナノバブルはその多くが3ヶ月以上浮上しないことが確認されている。このため、ナノバブル発生装置で作ったナノバブル水を、容器に入れ、ナノバブル水としての機能を維持しながら長期間貯留することができる。
【0032】
また、ナノバブル水を製造する際のナノバブル製造装置の運転時間は、長いほど、発生する気泡の個数が増加するので、十分な時間、循環運転しナノバブルを多量の発生させることが本発明の所望の効果を得るうえで好ましく用いられる。
【0033】
従って、上述した実施形態におけるバブル発生装置を装備せず、他所にてナノバブル水を作り、ナノバブル水貯留タンク60に直接供給し、貯留して使用することもできる。
【0034】
本発明の移動式洗浄装置により汚れが除去される原理は、次のようなものと考えられる。すなわち、ナノバブル水は表面張力が小さく、浸透性能が大きいため、ナノバブル水が対象面に噴霧されると該対象面の粉塵等の汚染物質に浸透する。そして、帯電しているナノバブルがそれら汚染物質に付着し、対象物から汚染物質が剥離しやすい状態となり、さらにここに高圧水を噴き付けることで対象物表面より剥離させることができる。
【0035】
また、他の条件は以下の範囲とするのが好ましい。
【0036】
噴霧されるナノバブル水の水温は、噴霧ノズルから噴霧される時点で30〜50℃であるのが洗浄効果をより向上させる点で好ましい。
【0037】
また、ナノバブル水の噴霧量は、対象物1mあたり0.01〜0.1リットルとするのが洗浄効果と経済性との点から好ましい。
【0038】
上記噴霧ノズルから対象物までの距離は、霧状のナノバブル水粒子が所望量対象物に付着する距離であれば特に制限されない。
【0039】
高圧水の水温は、洗浄効果をより向上させる点から、30〜50℃とするのが好ましい。
【0040】
また、噴きつけ量は、対象物1mあたり0.8〜1.6リットルとするのが洗浄効果と経済性との点から好ましい。
【0041】
以上、本発明にかかる実施形態につき説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0042】
例えば、上述の形態では路上車両を例示して説明したが、鉄道などの軌道車両や船などに応用することも可能である。
【0043】
また、ジェット噴流として吹き付ける高圧水としてナノバブル水を用いる場合を説明したが、通常の水道水などを用いることもできる。
【0044】
また、高圧水噴射ユニットは、アーム以外の取り付け手段、例えばレールによる手動ユニット等のユニット格納機構を用いて移動手段に取り付けてもよい。
【0045】
噴霧ノズルや高圧水噴射ユニットは、複数個設けずに1個とすることもできる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0047】
〔試験例1〕
予備実験(室内実験)として、水、マイクロバブル水、ナノバブル水の高圧洗浄能力試験を次のように行い、表1に示す結果を得た。
【0048】
まず、図5に示す、1m×2mガラス板をトンネル内で半年間供用して汚染させた後、0.5m×0.5mに切断したものを試験対象物として用いた。試験対象物の初期明度は70.9であり、洗浄前の明度は55〜60であった。
【0049】
次に図5に示す試験対象物のC点に向けて、それぞれ表1に示す噴射時の水温、噴射ノズルから試験対象物までの距離、噴射時間で、水、マイクロバブル水、ナノバブル水をそれぞれ噴射して洗浄を行なった。
【0050】
また、噴射は図5に示す対象物のC点に向けて行い、評価は、C点だけではなく、C点から左右に5cm離れたb点及びd点、並びに15cm離れたa点及びe点についても行なった。
【0051】
この試験での清掃後の明度基準は70とした。その結果、マイクロバブル水では所定の目標明度を満足しなかった。また、ナノバブル水と水道水とは、両者ともに明度は満足したものの、清掃できる面積において、面積比率で表すとナノバブル水は水道水の2.5倍以上の面積を同じ単位時間当たりに清掃可能であり、この点においてナノバブル水は顕著な効果を示した。
【0052】
ここで、ナノバブル水は、水を、ナノバブル発生装置(協和機設(株)製の製品名「バヴィタス(BUVITAS)」)を用いて処理して得られる、粒径2μm以下の微細気泡が50万個/ミリリットル以上の割合で含む水を用いた。
【0053】
また、マイクロバブル水としては、水道水を市販のマイクロバブル発生装置を用いて処理して得られる、平均粒径10〜100μm以上の微細気泡が含まれてなる水を用いた。なおナノバブル発生装置の仕様は、電源:三相200V、1.95Kw、流量:67L/min、揚程:60m、液温:5〜60℃とした。
【0054】
なお、明度は接触型色彩色差計(MINOLTA社製、商品名「CR−300」)で測定したものであり、高いほど明度に優れることを意味する。
【0055】
またナノバブルの粒子径や粒子個数は、粒度分布測定装置(ベックマンコールター製、商品名「コールター Multisizer 3」、「LS 13 320」)を用いて測定した。
【0056】
噴射ノズルとしては、株式会社いけうち製の商品名「DSP−12−83」を用いた。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示す結果から明らかなように、ナノバブル水は高い洗浄効果を呈することが判る。また、他の試験より、水圧は高い方がよく、噴射ノズルから対象物までの距離は近い方がよく、水温は40℃が、効果が高いことが確認された。
【0059】
また、従来方式のブラシ式洗浄方式により清掃を実施する際に通常時は水道水(石鹸水)を使用している。上述の各試験とは別に、この水道水(石鹸水)に代えてナノバブル水を用い、従来方式のブラシ式洗浄方式により清掃試験を行なった。その結果、洗剤等を利用せずとも、高い清掃効果が得られることを確認した。
【0060】
〔実施例1及び比較例1(事前噴霧の有効性の確認)〕
図1に示す移動式洗浄装置を用いて、移動式洗浄装置自体を走行させつつナノバブル水を噴霧した後、高圧水を噴射して、洗浄実験を行なった。対象物としては上述の試験例で用いた試験対象物と同じガラス板に同様に擬似汚れをつけたものを用い、図6に示す各点を測点とした。
【0061】
また、別にナノバブル水の噴霧を行なわないでナノバブル水の高圧水噴射のみを行なう系(比較例)について試験した。これらの結果を表2に示す。
試験条件は以下のとおりとした。
試験条件
・対象物までの距離:1.0m
・洗浄装置の移動速度:2.0km/h
・水圧:噴射20.0Mpa
・噴霧ノズル:VNP−40−25
・噴射ノズル:VNP−25−56
【0062】
【表2】

表2に示す結果から本発明のようにナノバブル水の噴霧を行なうことにより、噴霧を行わない場合に比して面積比で5倍以上の高い清掃効果が得られることが判る。このことから本発明の装置が高速での移動洗浄を可能としたものであり、道路やトンネル内部の清掃に好適であることが判る。
【0063】
〔実施例2及び比較例2〕
図1に示す移動式洗浄装置を用いて、移動式洗浄装置自体を走行させつつナノバブル水を噴霧した後、高圧水を噴射して、洗浄実験を行なった。
1.洗浄の対象物
既存の30mのコンクリート壁にガラス板を貼り付けた試験片1及び磁気タイルを貼り付けた試験片2を用意し、試験片1及び2におけるガラス板面及び磁気タイル面の上に排気ガスに近似の偽装汚れを吹き付けたものを洗浄の対象物とした(具体的には、炭化材料9重量%、エタノールを73重量%、水道水を18重量%含む試験用汚染物質を吹きつけた。)。
対象となる汚れは明度で評価し、ガラスは55〜60、磁器タイルは65〜70とした。
2.洗浄度の判定
洗浄度の判定は、明度とし、基準明度をガラス板については68、磁気タイルについては88として評価した。
3.実験条件
条件:水圧20Mpa
対象物から噴射位置までの距離:1m
水温:10℃
走行速度:表3に示す速度
試験の結果は、下記表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
表3に示す結果から明らかなように、ナノバブル水を噴霧した後、ナノバブル水の高圧水を噴射するように構成された本発明の移動式洗浄装置を用いることにより、他の交通の支障とならない速度で移動式洗浄装置を移動させながら、高い洗浄効果を得ることができることがわかる。
【0066】
なお、従来方式のブラシ式洗浄方式を採用した装置では、対象面にブラシを接触させて清掃を行なうため、作業の安全性の面から時速2kmでしか清掃が実施できない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
上述のように、本発明の移動式洗浄装置は、ある程度の速度で移動しつつ効果的に清掃を行なうことができるので、道路周辺やトンネル内部での清掃に活用できる。また、交通手段(新幹線、飛行機、バス等)の車体、建築構築物(カーテンウォール、タイル壁、フロアー等)の洗浄装置として、清掃する場所を選ばずに非接触式にて清掃を行なうことができ効率的であり、最適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の移動式洗浄装置の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す移動式洗浄装置の上面を示す上面図である。
【図3】図3は、図1に示す移動式洗浄措置の背面を中位噴射ユニット以外のユニットやタンクを省略して示す背面図である。
【図4】図4は、図1に示す移動式洗浄装置における各噴射ユニットの前面部を示す平面図である。
【図5】図5は、試験例で用いた洗浄対象物を示す平面図である。
【図6】図6は、実施例で用いた洗浄対象物を示す平面図である。
【図7】図7は、ナノバブル水における微細気泡の粒度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0069】
移動式洗浄装置1;路上車両本体10;ナノバブル水噴霧装置20;高圧水噴射装置30;キャブ11;荷台部分12;噴霧ノズル機材21;高圧水噴射ユニット31;ユニット固定部材33;アーム32;側縁部12a;前面部31a;噴射ノズル31b;配管31c;燃料タンク40;ナノバブル発生装置50;ナノバブル水貯留タンク60;高圧水供給装置70;配管51;配管61;配管71,72

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動しながら、移動路に沿って配置されている対象物を洗浄する移動式洗浄装置であって、
移動手段と;
該移動手段に搭載され、ナノバブル水を該対象物に向けて噴霧するナノバブル水噴霧装置と、
該移動手段に搭載された高圧水噴射装置であって、該移動手段の移動方向を基準にして、該ナノバブル水噴霧装置の後方位置に配置され、移動手段の移動に伴って、該ナノバブル水噴霧装置が先にナノバブル水を噴霧した対象物に高圧水を噴射する高圧水噴射装置と、
を有する移動式洗浄装置。
【請求項2】
該移動手段に搭載されたナノバブル水貯留タンクを備え、該ナノバブル水噴霧装置は該ナノバブル水貯留タンクからナノバブル水の供給を受けて噴霧を行なうようにした請求項1に記載の移動式洗浄装置。
【請求項3】
高圧水噴射装置は、吐出水圧10〜20MPaの高圧水を吹き付けるようにした請求項1又は2に記載の移動式洗浄装置。
【請求項4】
上記移動手段が路上車両及び軌道車両のいずれかとされている請求項1に記載の移動式洗浄装置。
【請求項5】
対象物を移動路に沿って配置されたトンネル内壁面および道路上の構築物とした請求項1乃至4の何れかに記載の移動式洗浄装置。
【請求項6】
高圧水噴射装置は、1または複数の高圧水噴射ユニットを備え、
各高圧水噴射ユニットは、それぞれ平行リンク機構を構成したアームにより該移動手段に取り付けられている請求項1乃至5の何れかに記載の移動式洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−263952(P2009−263952A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113520(P2008−113520)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(301031783)国土交通省中国地方整備局長 (5)
【出願人】(506316889)株式会社大広エンジニアリング (5)
【出願人】(507175843)株式会社協和機設 (8)
【Fターム(参考)】