説明

移動通信システム、無線端末、無線基地局、及び通信品質測定方法

【課題】アプリケーションレベルでの通信品質の分布を把握可能にする通信品質測定方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る通信品質測定方法は、無線基地局100が、下り通信品質の測定に用いられる測定用データと、下り通信品質の測定要求とを配信するステップS301と、無線端末200が、無線基地局100からの測定要求を受信すると、無線基地局100からの測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定するステップS302と、無線端末200が、アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に無線基地局100に通知するステップS303と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に係る品質を測定して収集する移動通信システム、無線端末、無線基地局、及び通信品質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムでは、無線基地局の周辺にビルが建設されたり、当該無線基地局の周辺基地局の設置状況が変化したりすると、当該無線基地局に係る無線環境が変化する。このため、従来では、オペレータにより、測定機材を搭載した測定用車両を使用し、無線環境を測定して測定結果及び位置情報を収集するドライブテストが行われている。
【0003】
このような測定及び収集は、無線端末に良好な通信サービスを提供することに貢献できるが、工数が多く、且つ費用が高いという課題がある。
【0004】
そこで、移動通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、ユーザが所持する無線端末を使用して、当該測定及び収集を自動化する技術であるMDT(Minimization of Drive Test)の仕様策定が進められている(非特許文献1参照)。
【0005】
MDTにおいて、無線端末は、無線基地局が送信している参照信号の受信電力を測定し、受信電力の測定結果及び位置情報を無線基地局に通知する。MDTによれば、参照信号の受信電力の分布をネットワーク側で把握することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS 37.320 V1.0.0, “Radio measurement collection for Minimization of Drive Tests (MDT)”, 2010-08
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、無線通信の通信品質は、他の無線基地局からの干渉や、受信電力の変動(フェージング)の影響を受ける。
【0008】
例えば、参照信号の受信電力が高い位置においても、干渉レベルが高い、あるいは受信電力が安定しない等の理由により、通信品質は劣化する。この場合、無線端末のユーザから見た通信品質、すなわちアプリケーションレベルでの通信品質は低いものになる。
【0009】
しかしながら、従来提案されている通信品質測定方法では、アプリケーションレベルでの通信品質の分布を把握することが困難であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、アプリケーションレベルでの通信品質の分布を把握可能にする移動通信システム、無線端末、無線基地局、及び通信品質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明に係る移動通信システムの特徴は、無線基地局(無線基地局100)と、前記無線基地局との無線通信を行う無線端末(無線端末200)とを有する移動通信システム(移動通信システム1)であって、前記無線基地局は、下り通信品質の測定に用いられる測定用データと、下り通信品質の測定要求とを配信し、前記無線端末は、前記測定要求及び前記測定用データを受信する端末側受信部(無線通信部210)と、前記測定要求に応じて、前記測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する下り通信品質測定部(下り通信品質測定部261)と、前記アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に通知する通知部(通知処理部262)と、を備えることを要旨とする。
【0012】
このような特徴によれば、無線基地局は、下り通信品質の測定に用いられる測定用データと下り通信品質の測定要求とを配信し、無線端末は、無線基地局からの測定要求に応じて、無線基地局からの測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する。そして、無線端末は、アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に無線基地局に通知する。これにより、アプリケーションレベルでの下り通信品質の分布を把握可能にすることができる。
【0013】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記下り通信品質測定部は、前記測定用データの受信に完了するまでに要する時間、前記測定用データの受信時のデータレート、前記測定用データの誤り率、又は前記測定用データの復号成否のうち少なくとも1つを、前記アプリケーションレベルでの下り通信品質として測定することを要旨とする。
【0014】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記無線基地局は、前記測定用データを予め記憶しており、予め定められた配信条件が満たされると、前記測定用データを無線端末に配信することを要旨とする。
【0015】
本発明に係る無線端末の特徴は、無線基地局(無線基地局100)との無線通信を行う無線端末(無線端末200)であって、下り通信品質の測定に用いられる測定用データと、下り通信品質の測定要求とを受信する端末側受信部(無線通信部210)と、前記測定要求に応じて、前記測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する下り通信品質測定部(下り通信品質測定部261)と、前記アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に通知する通知部(通知処理部262)と、を備えることを要旨とする。
【0016】
本発明に係る通信品質測定方法の特徴は、無線基地局が、下り通信品質の測定に用いられる測定用データと、下り通信品質の測定要求とを配信するステップと、無線端末が、前記無線基地局からの前記測定要求を受信すると、前記無線基地局からの前記測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定するステップと、前記無線端末が、前記アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に通知するステップと、を備えることを要旨とする。
【0017】
本発明に係る移動通信システムの特徴は、無線基地局(無線基地局100)と、前記無線基地局との無線通信を行う無線端末(無線端末200)とを有する移動通信システムであって、前記無線基地局は、上り通信品質の測定に用いられる測定用データの送信要求を配信する配信部(配信部143)と、前記測定用データと、前記無線端末の位置に関する位置情報とを前記無線端末から受信する基地局側受信部(無線通信部110)と、前記測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する上り通信品質測定部(上り通信品質測定部145)と、を備え、前記無線端末は、前記無線基地局からの前記測定要求を受信すると、前記測定用データを前記位置情報と共に前記無線基地局に送信することを要旨とする。
【0018】
このような特徴によれば、無線端末は、測定用データを自端末の位置に関する位置情報と共に無線基地局に送信し、無線基地局は、無線端末からの測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する。これにより、アプリケーションレベルでの上り通信品質の分布を把握可能にすることができる。
【0019】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記上り通信品質測定部は、前記測定用データの受信に完了するまでに要する時間、前記測定用データの受信時のデータレート、前記測定用データの誤り率、又は前記測定用データの復号成否のうち少なくとも1つを、前記アプリケーションレベルでの上り通信品質として測定することを要旨とする。
【0020】
本発明に係る無線基地局の特徴は、無線端末(無線端末200)との無線通信を行う無線基地局(無線基地局100)であって、上り通信品質の測定に用いられる測定用データの送信要求を配信する配信部(配信部143)と、前記測定用データと、前記無線端末の位置に関する位置情報とを前記無線端末から受信する基地局側受信部(無線通信部110)と、前記測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する上り通信品質測定部(上り通信品質測定部145)と、を備えることを要旨とする。
【0021】
本発明に係る通信品質測定方法の特徴は、無線基地局が、上り通信品質の測定に用いられる測定用データの送信要求を配信するステップと、無線端末が、前記無線基地局からの前記測定要求を受信すると、前記測定用データを、前記無線端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に送信するステップと、前記無線基地局が、前記無線端末からの前記測定用データと前記位置情報とを受信すると、前記無線端末からの前記測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定するステップと、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アプリケーションレベルでの通信品質の分布を把握可能にする移動通信システム、無線端末、無線基地局、及び通信品質測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態及び第2実施形態に係る移動通信システムの全体概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る無線基地局の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る無線端末の構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る下り通信品質測定動作を示す動作シーケンス図である。
【図5】第2実施形態に係る無線基地局の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る上り通信品質測定動作の動作パターン1を示す動作シーケンス図である。
【図7】第2実施形態に係る上り通信品質測定動作の動作パターン2を示す動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明の第1実施形態、第2実施形態、及びその他の実施形態を説明する。以下の各実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0025】
以下の各実施形態においては、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で仕様が策定されているLTE(Long Term Evolution)規格に基づいて構成される移動通信システムを説明するが、他の規格に基づいて構成される移動通信システムに対して本発明を適用してもよい。
【0026】
(1)第1実施形態
以下、第1実施形態について、(1.1)全体概略構成、(1.2)無線基地局の構成、(1.3)無線端末の構成、(1.4)移動通信システムの動作、(1.5)第1実施形態の効果の順に説明する。
【0027】
(1.1)全体概略構成
図1は、第1実施形態に係る移動通信システム1の全体概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、移動通信システム1は、複数の無線基地局100(100#1〜100#3)、複数の無線端末200(200#1〜200#3)、ゲートウェイ装置10、及び測定結果収集サーバ500を有する。
【0029】
各無線基地局100は、マクロセル基地局と比較して小さな通信エリア(セル)を形成する小セル基地局、具体的には、ピコセル基地局又はマイクロセル基地局である。各無線基地局100は、通信事業者によって提供されるバックホールネットワーク11に接続される。各無線基地局100は、バックホールネットワーク11を介して、測定結果収集サーバ500との通信を行う。また、各無線基地局100は、バックホールネットワーク11を介して基地局間通信を行うこともできる。
【0030】
各無線端末200は、無線基地局100との無線通信を行う。具体的には、無線端末200#1は無線基地局100#1を、無線端末200#2は無線基地局100#2を、無線端末200#3は無線基地局100#3をそれぞれサービング基地局としている。1つの無線基地局100をサービング基地局とする無線端末が複数存在してもよい。
【0031】
ゲートウェイ装置10は、バックホールネットワーク11及びコアネットワーク12の間に設けられ、バックホールネットワーク11及びコアネットワーク12に接続される。コアネットワーク12は、IP(Internet Protocol)に基づいて構成される公衆ネットワークである。
【0032】
測定結果収集サーバ500は、バックホールネットワーク11に接続される。測定結果収集サーバ500は、無線基地局100を設置するオペレータによって運営される。測定結果収集サーバ500の詳細については後述する。
【0033】
(1.2)無線基地局の構成
図2は、第1実施形態に係る無線基地局100の構成を示すブロック図である。
【0034】
図2に示すように、無線基地局100は、アンテナ101、無線通信部110、ネットワーク通信部120、記憶部130、及び制御部140を有する。アンテナ101は、無線通信部110に接続され、無線通信部110、ネットワーク通信部120、及び記憶部130は、制御部140に接続される。
【0035】
アンテナ101は、無線信号の送受信に用いられる。アンテナ101は、複数のアンテナ素子を用いて構成されてもよい。
【0036】
無線通信部110は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、アンテナ101を介して無線通信を行うように構成される。送信については、無線通信部110は、制御部140から入力される送信信号の符号化及び変調を行った後、アップコンバート及び増幅を行ってアンテナ101に出力する。受信については、無線通信部110は、アンテナ101から入力される受信信号の増幅及びダウンコンバートを行った後、復調及び復号を行って制御部140に出力する。
【0037】
ネットワーク通信部120は、バックホールネットワーク11に接続され、バックホールネットワーク11を介して他のネットワーク装置(測定結果収集サーバ500等)との通信を行う。
【0038】
記憶部130は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局100の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。制御部140は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局100が備える各種の機能を制御する。
【0039】
記憶部130は、測定用データを予め記憶する。測定用データとは、例えば、画像(静止画又は動画)、音声、文字(テキスト)、プログラムのデータ(プログラムで処理されるデータやハイパーテキストなども含む)、画像コンテンツデータ、音声コンテンツデータ、又は文字コンテンツデータ、或いはこれらの組み合わせである。
【0040】
制御部140は、予め定められた配信条件が満たされると、記憶部130に記憶されている測定用データを無線端末200に配信するよう無線通信部110を制御する。測定用データの配信には、無線端末200に個別に割り当てられる下りデータチャネルを用いたユニキャスト配信を適用してもよく、複数の無線端末200に共通の報知チャネルを用いたブロードキャスト配信を適用してもよい。
【0041】
配信条件の一例は、ネットワーク通信部120が配信指示を受信したことである。ネットワーク通信部120は、例えば測定結果収集サーバ500から配信指示を受信する。制御部140は、ネットワーク通信部120が配信指示を受信すると、測定用データを無線端末200に配信するよう無線通信部110を制御する。あるいは、所定の配信周期に応じた配信時刻になったことを配信条件としてもよい。この場合、制御部140は、所定の配信周期を計時するタイマが満了する度に、測定用データを無線端末200に配信するよう無線通信部110を制御する。
【0042】
次に、制御部140の詳細について説明する。制御部140は、配信部143及び測定結果転送部144を有する。配信部143及び測定結果転送部144のそれぞれの機能は、例えば、制御部140としてのCPUが、記憶部130に記憶されている制御プログラムを実行することで実現される。
【0043】
配信部143は、配信条件が満たされたことを検知すると、測定用データを配信する。具体的には、配信部143は、記憶部130に記憶されている測定用データを読み出し、読み出した測定用データを無線通信部110に出力する。無線通信部110は、配信部143から入力された測定用データを無線で送信する。なお、配信部143が測定用データを記憶部130から読み出した後においても、記憶部130には当該測定用データが削除されずに保持される。
【0044】
また、配信部143は、測定用データを配信する際に、下り通信品質の測定要求を配信する。当該測定要求は、例えば、測定用データに付加又は挿入される情報要素(フラグ)として構成される。測定用データと共に測定要求を配信すると、当該測定要求を受信した無線端末200は、測定用データの通信品質(アプリケーションレベルでの下り通信品質)を測定することになる。
【0045】
無線通信部110は、測定要求を受信した無線端末200から、アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報(以下、下り通信品質情報)と、当該無線端末200の位置に関する位置情報とを受信する。下り通信品質情報は、測定結果の値そのものであってもよく、測定結果の値のインデックスであってもよい。また、位置情報とは、例えばGPS(Global Positioning System)を用いて得られた位置情報である。
【0046】
測定結果転送部144は、無線通信部110が受信した下り通信品質情報及び位置情報を取得し、取得した下り通信品質情報及び位置情報を、自局の基地局IDと共に測定結果収集サーバ500に転送するようネットワーク通信部120を制御する。
【0047】
なお、測定結果収集サーバ500は、下り通信品質情報、位置情報、及び基地局IDの組を複数の無線基地局100から収集する。そして、測定結果収集サーバ500は、下り通信品質の分布を把握するために、収集した情報に統計処理を施し、例えば下り通信品質の分布を地図上に表示する処理を行う。
【0048】
(1.3)無線端末の構成
図3は、第1実施形態に係る無線端末200の構成を示すブロック図である。
【0049】
図3に示すように、無線端末200は、アンテナ201、無線通信部210、ユーザインターフェイス部220、GPS受信機230、バッテリ240、記憶部250、及び制御部260を有する。アンテナ201は、無線通信部210に接続され、無線通信部210、ユーザインターフェイス部220、GPS受信機230、及び記憶部250は、制御部140に接続される。
【0050】
アンテナ201は、無線信号の送受信に用いられる。アンテナ201は、複数のアンテナ素子を用いて構成されてもよい。
【0051】
無線通信部210は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、アンテナ201を介して無線通信を行うように構成される。送信については、無線通信部210は、制御部260から入力される送信信号の符号化及び変調を行った後、アップコンバート及び増幅を行ってアンテナ201に出力する。受信については、無線通信部210は、アンテナ201から入力される受信信号の増幅及びダウンコンバートを行った後、復調及び復号を行って制御部260に出力する。
【0052】
ユーザインターフェイス部220は、ユーザとのインターフェイスとして機能するディスプレイやボタン、スピーカ、マイク等である。
【0053】
GPS受信機230は、GPS信号を受信し、GPS信号に基づく位置情報を生成して制御部260に出力する。
【0054】
バッテリ240は、無線端末200の各ブロックに供給される電力を蓄えており、無線端末200の各ブロックに当該電力を供給する。
【0055】
記憶部250は、例えばメモリを用いて構成され、無線端末200の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。制御部260は、例えばCPUを用いて構成され、無線端末200が備える各種の機能を制御する。
【0056】
無線通信部210は、無線基地局100からの測定用データを受信する端末側受信部に相当する。制御部140は、無線通信部210が受信した測定用データを再生してユーザインターフェイス部220に出力する。ユーザインターフェイス部220は、制御部260によって再生される測定用データを提示(すなわち、表示及び/又は音声出力)する。
【0057】
無線通信部210が測定用データと共に測定要求を受信した場合には、制御部140は、当該測定要求に応じて、当該測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する。アプリケーションレベルでの下り通信品質とは、測定用データの受信に完了するまでに要する時間、測定用データの受信時のデータレート、測定用データの誤り率、又は測定用データの復号成否のうち少なくとも1つである。
【0058】
そして、制御部140は、GPS受信機230から位置情報を取得した後、アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す下り通信品質と当該位置情報とを、測定用データの配信元の無線基地局100に通知するよう無線通信部210を制御する。
【0059】
次に、制御部260の詳細について説明する。制御部260は、下り通信品質測定部261、通知処理部262、及び再生部263を有する。下り通信品質測定部261、通知処理部262、及び再生部263のそれぞれの機能は、例えば、制御部260としてのCPUが、記憶部250に記憶されている制御プログラムを実行することで実現される。
【0060】
下り通信品質測定部261は、無線通信部210が受信した測定要求に応じて、無線通信部210が受信した測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する。要するに、単に受信レベルだけでなく、上位レイヤのプロトコルに従った通信の通信品質がどの程度のものかを推定する。
【0061】
上述したように、アプリケーションレベルでの下り通信品質とは、通信品質測定用のアプリケーションで測定用データが復号できたか否かを示すもの(通信状況の影響で測定用データが試験期間に届かないものも含む)で、さらに、測定用データの受信に完了するまでに要する時間、測定用データの受信時のデータレート、測定用データの誤り率、又は、受信レベルなどの組み合わせであってもよい。なお、測定用データの復号可否、受信レベル、および受信地点から通信エリアの通信品質がどの程度のものかを推測することができる。
【0062】
通知処理部262は、下り通信品質測定部261による測定結果を示す下り通信品質情報を生成する。また、通知処理部262は、GPS受信機230から位置情報を取得する。そして、通知処理部262は、下り通信品質情報及び位置情報の組を無線通信部210に出力する。無線通信部210は、当該下り通信品質情報及び位置情報を送信する。
【0063】
再生部263は、測定用データを再生するためのアプリケーションであり、無線通信部210が受信した測定用データを再生する。なお、無線通信部210が受信した測定用データは、記憶部250に一旦記憶され、再生部263は、記憶部250に記憶された測定用データを読み出して再生してもよい。再生部263は、再生した測定用データをユーザインターフェイス部220に出力する。
【0064】
(1.4)移動通信システムの動作
次に、第1実施形態に係る移動通信システム1の動作について説明する。図4は、第1実施形態に係る上り通信品質測定動作を示す動作シーケンス図である。
【0065】
図4に示すように、ステップS300において、無線基地局100は、配信条件が満たされたか否かを判定する。配信条件が満たされると、処理がステップS301に進む。
【0066】
ステップS301において、無線基地局100は、測定用データ及び測定要求を無線端末200に送信する。無線端末200は、当該測定用データ及び測定要求を受信する。
【0067】
ステップS302において、無線端末200は、無線基地局100からの測定要求に応じて、無線基地局100からの測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する。また、無線端末200は、当該測定用データを再生する。
【0068】
ステップS303において、無線端末200は、アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す下り通信品質情報と、当該無線端末200の位置に関する位置情報とを無線基地局100に送信する。無線基地局100は、当該下り通信品質情報及び位置情報を受信する。
【0069】
ステップS304において、無線基地局100は、無線端末200からの下り通信品質情報及び位置情報を、当該無線基地局100の基地局IDと共に測定結果収集サーバ500に転送する。測定結果収集サーバ500は、下り通信品質情報、位置情報、及び基地局IDの組を受信する。
【0070】
このようにして、測定結果収集サーバ500は、下り通信品質情報、位置情報、及び基地局IDの組を複数の無線基地局100から収集する。そして、測定結果収集サーバ500は、下り通信品質の分布を把握するために、収集した情報に統計処理を施し、例えば下り通信品質の分布を地図上に表示する処理を行う。
【0071】
(1.5)第1実施形態の効果
以上説明したように、無線基地局100は、測定用データと下り通信品質の測定要求とを配信し、無線端末200は、無線基地局100からの測定要求に応じて、無線基地局100からの測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する。そして、無線端末200は、アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に無線基地局100に通知する。これにより、アプリケーションレベルでの下り通信品質の分布を把握可能にすることができる。
【0072】
(2)第2実施形態
上述した第1実施形態では下り通信品質を測定していたが、第2実施形態では上り通信品質を測定する。以下、第2実施形態について、(2.1)無線基地局の構成、(2.2)無線端末の構成、(2.3)上り通信品質測定動作、(2.4)第2実施形態の効果の順に説明する。なお、第1実施形態との相違点を説明し、重複する説明を省略する。
【0073】
(2.1)無線基地局の構成
図5は、第2実施形態に係る無線基地局100の構成を示すブロック図である。図5に示すように、第2実施形態に係る無線基地局100は、アプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する上り通信品質測定部145をさらに有する点で、第1実施形態とは異なる。
【0074】
また、第2実施形態では、配信部143は、測定用データ及び測定要求に代えて、上り通信品質の測定に用いられる測定用データの送信要求(以下、測定用データ送信要求)を配信する。測定用データ送信要求の配信には、無線端末200に個別に割り当てられる下りデータチャネルを用いたユニキャスト配信を適用してもよく、複数の無線端末200に共通の報知チャネルを用いたブロードキャスト配信を適用してもよい。なお、配信部143は、測定用データ送信要求を配信する際に、当該測定用データを配信してもよい。
【0075】
無線通信部110は、測定用データ送信要求を受信した無線端末200から、測定用データと、当該無線端末200の位置に関する位置情報とを受信する。すなわち、第2実施形態において無線通信部110は、基地局側受信部に相当する。
【0076】
上り通信品質測定部145は、無線通信部110が受信した測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する。アプリケーションレベルでの上り通信品質とは、通信品質測定用のアプリケーションで測定用データが復号できたか否かを示すもの(通信状況の影響で測定用データが試験期間に届かないものも含む)で、さらに、測定用データの受信に完了するまでに要する時間、測定用データの受信時のデータレート、測定用データの誤り率、又は、受信レベルなどの組み合わせであってもよい。なお、測定用データの復号可否、受信レベル、および受信信号を送信した地点から通信エリアの通信品質がどの程度のものかを推測することができる。
【0077】
そして、測定結果転送部144は、上り通信品質測定部145による測定結果を示す情報(以下、上り通信品質情報)と、無線通信部110が受信した位置情報と、自局の基地局IDとの組を、測定結果収集サーバ500に転送するようネットワーク通信部120を制御する。
【0078】
なお、測定結果収集サーバ500は、上り通信品質情報、位置情報、及び基地局IDの組を複数の無線基地局100から収集する。そして、測定結果収集サーバ500は、上り通信品質の分布を把握するために、収集した情報に統計処理を施し、例えば上り通信品質の分布を地図上に表示する処理を行う。
【0079】
(2.2)無線端末の構成
再び図3を参照して、第2実施形態に係る無線端末200の構成を説明する。
【0080】
第2実施形態では、無線端末200は、下り通信品質測定部261及び再生部263を有していなくてもよい。
【0081】
無線通信部210は、測定用データ送信要求を受信する。無線通信部210が測定用データ送信要求を受信すると、通知処理部262は、記憶部250に予め記憶されている測定用の測定用データと、GPS受信機230からの位置情報とを取得し、当該測定用データ及び位置情報を送信するよう無線通信部210を制御する。
【0082】
無線通信部210が測定用データ送信要求と共に測定用データを受信した場合には、通知処理部262は、無線通信部210が受信した測定用データと、GPS受信機230からの位置情報とを取得し、当該測定用データ及び位置情報を送信するよう無線通信部210を制御する。
【0083】
なお、第2実施形態では、無線端末200から無線基地局100へ測定用データを送信するため、当該無線端末200は通信中(RRC Connected)状態であることが必要である。
【0084】
(2.3)上り通信品質測定動作
次に、第2実施形態に係る上り通信品質測定動作について、(2.3.1)動作パターン1、(2.3.2)動作パターン2の順に説明する。動作パターン1は、測定用データ送信要求を配信する際に測定用データを配信しない動作パターンである。動作パターン2は、測定用データ送信要求を配信する際に測定用データも配信する動作パターンである。
【0085】
(2.3.1)動作パターン1
図6は、第2実施形態に係る上り通信品質測定動作の動作パターン1を示す動作シーケンス図である。
【0086】
図6に示すように、ステップS401において、無線基地局100は、測定用データ送信要求を無線端末200に送信する。無線端末200は、当該測定用データ送信要求を受信する。
【0087】
ステップS402において、無線端末200は、予め記憶している測定用データと、自端末の位置に関する位置情報とを無線基地局100に送信する。無線基地局100は、当該測定用データ及び位置情報を受信する。
【0088】
ステップS403において、無線基地局100は、無線端末200から受信した測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する。
【0089】
ステップS404において、無線基地局100は、ステップS403での測定結果を示す上り通信品質情報と、ステップS402で受信した位置情報と、自局の基地局IDとの組を、測定結果収集サーバ500に送信する。測定結果収集サーバ500は、上り通信品質情報、位置情報、及び基地局IDの組を受信する。
【0090】
(2.3.2)動作パターン2
図7は、第2実施形態に係る上り通信品質測定動作の動作パターン2を示す動作シーケンス図である。
【0091】
図7に示すように、ステップS501において、無線基地局100は、測定用データ送信要求及び測定用データを無線端末200に送信する。無線端末200は、当該測定用データ送信要求及び測定用データを受信する。
【0092】
ステップS502において、無線端末200は、ステップS501で受信した測定用データと、自端末の位置に関する位置情報とを無線基地局100に送信する。無線基地局100は、当該測定用データ及び位置情報を受信する。
【0093】
ステップS503において、無線基地局100は、無線端末200から受信した測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する。
【0094】
ステップS504において、無線基地局100は、ステップS503での測定結果を示す上り通信品質情報と、ステップS502で受信した位置情報と、自局の基地局IDとの組を、測定結果収集サーバ500に送信する。測定結果収集サーバ500は、上り通信品質情報、位置情報、及び基地局IDの組を受信する。
【0095】
(2.4)第2実施形態の効果
以上説明したように、第2実施形態によれば、無線端末200は、測定用データを自端末の位置に関する位置情報と共に無線基地局100に送信し、無線基地局100は、無線端末200からの測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する。これにより、アプリケーションレベルでの上り通信品質の分布を把握可能にすることができる。
【0096】
(3)その他の実施形態
上記のように、本発明は各実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0097】
例えば、上述した第1実施形態及び第2実施形態は、個別に実施する場合に限らず、互いに組み合わせて実施してもよい。この場合、無線端末200は、無線基地局100から配信された測定用データを記憶し、当該測定用データを無線基地局100に送信してもよい。そして、無線基地局100は、無線端末200から受信した測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定してもよい。
【0098】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、GPSに基づく位置情報を使用していたが、無線端末200がGPS受信機を有していない場合には、複数の無線基地局からの受信状態の情報(RFフィンガープリント)を位置情報として使用してもよい。RFフィンガープリントから位置を推定する方法については、例えば3GPP TS 36.305: “Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN); Stage 2 functional specification of User Equipment (UE) positioning in E-UTRAN”を参照されたい。
【0099】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0100】
1…移動通信システム、10…ゲートウェイ装置、11…バックホールネットワーク、12…コアネットワーク、100…無線基地局、101…アンテナ、110…無線通信部、120…ネットワーク通信部、130…記憶部、140…制御部、143…配信部、144…測定結果転送部、145…通信品質測定部、200…無線端末、201…アンテナ、210…無線通信部、220…ユーザインターフェイス部、230…GPS受信機、240…バッテリ、250…記憶部、260…制御部、261…通信品質測定部、262…通知処理部、263…再生部、500…測定結果収集サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局と、前記無線基地局との無線通信を行う無線端末とを有する移動通信システムであって、
前記無線基地局は、下り通信品質の測定に用いられる測定用データと、下り通信品質の測定要求とを配信し、
前記無線端末は、
前記測定要求及び前記測定用データを受信する端末側受信部と、
前記測定要求に応じて、前記測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する下り通信品質測定部と、
前記アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に通知する通知部と、
を備える移動通信システム。
【請求項2】
前記下り通信品質測定部は、前記測定用データの受信に完了するまでに要する時間、前記測定用データの受信時のデータレート、前記測定用データの誤り率、又は前記測定用データの復号成否のうち少なくとも1つを、前記アプリケーションレベルでの下り通信品質として測定する、請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記無線基地局は、
前記測定用データを予め記憶しており、
予め定められた配信条件が満たされると、前記測定用データを無線端末に配信する、請求項1又は2に記載の移動通信システム。
【請求項4】
無線基地局との無線通信を行う無線端末であって、
下り通信品質の測定に用いられる測定用データと、下り通信品質の測定要求とを受信する端末側受信部と、
前記測定要求に応じて、前記測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定する下り通信品質測定部と、
前記アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に通知する通知部と、
を備える無線端末。
【請求項5】
無線基地局が、下り通信品質の測定に用いられる測定用データと、下り通信品質の測定要求とを配信するステップと、
無線端末が、前記無線基地局からの前記測定要求を受信すると、前記無線基地局からの前記測定用データのアプリケーションレベルでの下り通信品質を測定するステップと、
前記無線端末が、前記アプリケーションレベルでの下り通信品質の測定結果を示す情報を、自端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に通知するステップと、
を備える通信品質測定方法。
【請求項6】
無線基地局と、前記無線基地局との無線通信を行う無線端末とを有する移動通信システムであって、
前記無線基地局は、
上り通信品質の測定に用いられる測定用データの送信要求を配信する配信部と、
前記測定用データと、前記無線端末の位置に関する位置情報とを前記無線端末から受信する基地局側受信部と、
前記測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する上り通信品質測定部と、
を備え、
前記無線端末は、前記無線基地局からの前記測定要求を受信すると、前記測定用データを前記位置情報と共に前記無線基地局に送信する、移動通信システム。
【請求項7】
前記上り通信品質測定部は、前記測定用データの受信に完了するまでに要する時間、前記測定用データの受信時のデータレート、前記測定用データの誤り率、又は前記測定用データの復号成否のうち少なくとも1つを、前記アプリケーションレベルでの上り通信品質として測定する、請求項6に記載の移動通信システム。
【請求項8】
無線端末との無線通信を行う無線基地局であって、
上り通信品質の測定に用いられる測定用データの送信要求を配信する配信部と、
前記測定用データと、前記無線端末の位置に関する位置情報とを前記無線端末から受信する基地局側受信部と、
前記測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定する上り通信品質測定部と、
を備える無線基地局。
【請求項9】
無線基地局が、上り通信品質の測定に用いられる測定用データの送信要求を配信するステップと、
無線端末が、前記無線基地局からの前記測定要求を受信すると、前記測定用データを、前記無線端末の位置に関する位置情報と共に前記無線基地局に送信するステップと、
前記無線基地局が、前記無線端末からの前記測定用データと前記位置情報とを受信すると、前記無線端末からの前記測定用データのアプリケーションレベルでの上り通信品質を測定するステップと、
を備える通信品質測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−105162(P2012−105162A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253278(P2010−253278)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】