説明

移動通信システム

【課題】
タクシー配車用AVMシステムでは、乗務員が無線配車を了解した後も、料金メータを空車の状態のままにしていると、前に無線配車した同じ移動局に別な無線配車を送信してしまう2重の無線配車の問題があった。
【解決手段】
複数の移動局の動態情報をポーリングにより収集する方式の移動通信システムにおいて、管理センタは、顧客からの配車要求に対して動態情報テーブルに基づいて上記複数の移動局の内の一台に無線配車を行うと共に、上記移動局は、少なくとも了解キーを有する操作表示部と、少なくとも「実車ボタン」と「迎車ボタン」を供える料金メータを有し、上記管理センタからの上記配車要求を受けた上記移動局は、上記了解キーを押下すると共に、上記了解キーを押下してから所定の時間経過後も上記「実車ボタン」あるいは上記「迎車ボタン」が押下されない場合、警告動作を実行するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムに関し、特に、タクシー配車用AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システム等で発生する重複配車を防止する移動通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の発展とともに電波を利用した測位技術は大幅に発展し、今日では人工衛星を利用したGPS(Global Positioning System)測位システムにより、全世界においてGPS受信機単体で誤差10m程度の精度で位置情報を得ることができるようになった。このGPS測位システムは、主にカーナビゲーションや船舶、航空機の航法あるいは測量などに利用されている。また、近年の移動通信システムの発展により、手軽に広域エリアを対象とした移動体通信を行うことが可能となっている。このようなGPS測位システムと移動通信システムとが融合して、移動体の位置管理システムや文字伝送システムが実用化され、公衆用無線や業務用無線を通じて宅配車両やタクシーなどの配車効率向上などの目的に利用されている。
【0003】
従来のタクシー配車用AVMシステム等の移動通信システムでは、タクシー等の車両(以下、移動局と称することにする。)の現在位置をGPSにより移動局自身が検出して記憶している。そして、各移動局は、それぞれの車両動態情報を、基地局からの定期的なポーリング信号に応答して、各移動局毎に割り当てられた専用の送信スロットで基地局へ送信している。基地局では、全移動局を順にポーリングを行い、全ての移動局の車両動態情報を把握している。
【0004】
図7は、GPSを利用したタクシー配車用AVMシステムのブロック図を示す。図7において、701−1、701−2、・・・701−mは、基地局である。なお、基地局を代表する場合は、基地局701と称する。702は、管理センタであり、複数の基地局701と専用伝送路703で結ばれている。704−1、704−2、・・・704−nは、移動局である。なお、移動局を代表する場合は、移動局704と称する。705は、基地局701−1が通信できる通信エリア、所謂、通信ゾーンであり、この通信エリア705内に位置する移動局704と基地局701−1とが通信できることを示している。706は、GPS衛星を示し、各移動局704は、GPS衛星706からの位置情報707を受けて、自車の位置情報(経度、緯度)を入手することができる。なお、管理センタ702からの指示で、各基地局701は、ポーリング信号PO1を各移動局704に送信し、各移動局は、このポーリング信号PO1に応答してポーリング応答信号SR1、SR2、・・・SRnを基地局に送信する。即ち、このシステムにおいては、管理センタ702は、各基地局701からの移動局車両番号指定により通信エリア705内の移動局704を車両番号の順番に車両動態情報を収集する方式である。なお、管理センタ702は、基地局701と一体に構成することもできる。また、移動局704は、通信ゾーンを越えて、他の基地局701の通信ゾーンに移動した場合も、基地局を切替えて、移動した移動局の車両動態情報が管理センタ702に収集されるように構成されている。
【0005】
さて、従来の配車方法について簡単に説明する。従来のタクシー配車用AVMシステム等の無線通信システムでは、移動局の現在位置をGPSにより移動局自身が検出して記憶している。そして、基地局からの定期的なポーリング信号PO1に基づいて各移動局704は、基地局701との間で各移動局の動態位置情報を移動局番号毎に割り当てられた専用の送信スロット(ポーリング応答信号)で返送する。基地局では、全移動局について順にポーリングを行い、全ての移動局の位置動態情報を把握している。なお、ポーリングについての詳細は、後述する。
【0006】
基地局は、少なくとも1つあって管理センタに接続されており、管理センタでは、顧客Aからの配車要求(これを配車Aと称することにする。)に従い、移動局の位置動態情報から配車に最適な移動局、例えば、顧客に最も近い移動局の検索を行ってタクシー車両の配車を行う。配車を指定された移動局は、顧客の所まで移動し、顧客を乗せる。乗務員は、移動局を運転し、顧客の行き先へ向かうのが普通である。
【0007】
さて、上述のような従来のタクシー配車用AVMシステムでは、お客が乗車していない状態、即ち、料金メータが空車を示している場合、無線配車することを特徴としているが、乗務員が無線配車を了解した後も、料金メータを空車の状態のままにしていると、管理センタ側では、引き続きお客が乗車していない状態と見なし、別の顧客Bからの配車要求(これを配車Bと称することにする。)があると、前に無線配車した同じ移動局に別な無線配車を送信してしまう、所謂、2重の無線配車をするという問題があった。このような二重の無線配車は、例えば、乗務員の料金メータの操作忘れ、あるいは、お客が待っている場所までの移動局の移動中の状態(迎車状態)が考えられる。従って、このような二重の無線配車の生じない移動通信システムの実現が望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開2007−78664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のタクシー配車用AVMシステムでは、乗務員が無線配車を了解した後も、料金メータを空車の状態のままにしていると、管理センタ側では、引き続きお客が乗車していない状態と見なし、別の客からの配車要求があると、前に無線配車した同じ移動局に別な無線配車を送信してしまう2重の無線配車の問題があった。
【0010】
本発明の目的は、信頼性が高く、確実な配車が可能な移動通信システムを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、2重の無線配車の発生がない移動通信システムを提供することである。
【0012】
本発明の更に他の目的は、乗務員の負担を軽減でき、かつ、2重の無線配車の発生がない移動通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の移動通信システムは、管理センタと、上記管理センタと結合される基地局と、上記基地局と無線回線で接続される複数の移動局を有し、上記複数の移動局の動態情報をポーリングにより収集する方式の移動通信システムにおいて、上記管理センタは、上記複数の移動局の動態情報を記憶した動態情報テーブルを有し、顧客からの配車要求に対して上記管理センタは、上記動態情報テーブルに基づいて上記複数の移動局の内の一台に無線配車を行うと共に、上記移動局は、少なくとも了解キーを有する操作表示部と、少なくとも「実車ボタン」と「迎車ボタン」を供える料金メータを有し、上記管理センタからの上記配車要求を受けた上記移動局は、上記了解キーを押下すると共に、上記了解キーを押下してから所定の時間経過後も上記「実車ボタン」あるいは上記「迎車ボタン」が押下されない場合、警告動作を実行するように構成される。
【0014】
また、本発明の移動通信システムにおいて、上記警告動作は、上記了解キーを押下してから所定の時間経過後、操作表示部に警告文字の表示、あるいは、スピーカからの警告音の出力である。
【0015】
また、本発明の移動通信システムにおいて、上記警告動作は、上記了解キーの押下に連動して上記料金メータの実車ボタンあるいは迎車ボタンが点滅する動作である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、タクシー配車用AVMシステム等のポーリング方式において、信頼性が高く、確実な配車が可能な移動通信システムを実現することができる。また、2重の無線配車の発生がなく、乗務員の負担を軽減できる移動通信システムを提供することができる。更に、乗務員が一度無線配車を了解した場合、特別な事情がない限り、その配車業務を完遂させる無線通信システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明で用いる移動局の一実施例の概略構成を示すブロック図である。また、図2は、本発明で用いる管理センタおよび基地局の一実施例の概略構成を示すブロック図である。なお、本発明で使用する無線通信システム、例えば、タクシー配車用AVMシステムの構成は、図7のシステムと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0018】
移動局704の構成を図1を用いて説明する。図1において、101は、アンテナ、102は、無線機、115は、受信部、116は、送信部である。受信部115は、データ送信要求信号受信部103およびポーリング信号受信部104等を備えている。また、送信部116は、スロット設定部105等を備えている。106は、記憶部、107は、データ生成部、108は、スピーカ、109は、マイク、110は、カーナビ装置、111は、GPSアンテナ、112は、料金メータ、113は、操作表示部、114は、制御部、115は、伝送路である。
【0019】
そして、操作表示部113は、表示部と操作部を兼ね備えており、制御部114の入出力端末を構成している。この表示部は、例えば液晶表示パネルを用いたもので、漢字、カナ、英、数字等を表示することが可能であり、例えば待機場所や行先、顧客情報等を表示することができる。また、操作部は、文字入力キーやカーソルキーの他、基地局701との通話で、「応答」キー130、「了解」キー131等のファンクションキーを備えている。また、料金メータ112は、タクシー料金を表示する料金表示部120を備えると共に、「実車」ボタン121、「回送」ボタン122、「迎車」ボタン123、「空車」ボタン125及び領収書発行用のプリンタ124を備えている。
【0020】
管理センタ702と基地局701の構成を図2を用いて説明する。管理センタ702は、中央処理装置201、操作表示部202、マイク203およびスピーカ204で構成されている。また、中央処理装置201は、ポーリング信号生成部205、データ送信要求信号生成部206、記憶部207で構成されている。また、基地局701は、送信用無線機211および受信用無線機212で構成されている。
【0021】
次に、本発明の無線通信システムの動作について説明する。まず、基地局701の送信用無線機211は、例えば、移動局704からの各種情報を得るための動作を実行する。そのため中央処理装置201の記憶部207では、移動局番号を記憶し、ポーリング信号生成部205で生成された先頭スロットに応答送信させる移動局番号の指定情報を含むポーリング信号と、データ送信要求信号発生部206で生成された移動局へのデータ送信要求信号とを送信用無線機211からアンテナを経由して各移動局704へ送信する。
【0022】
この送信用無線機211から送信された電波は、移動局704側のアンテナ101を介して無線機102で受信され、このうちポーリング信号は、ポーリング信号受信部104で受信され、スロットの先頭の車輌番号から移動局の車輌番号が検出される。
【0023】
一方、データ送信要求信号受信部103で基地局701からのデータ送信要求信号を検出する。ポーリング信号受信部104及びデータ送信要求受信部103で検出された信号は、スロット設定部105へ送られる。スロット設定部105は、自局のデータ送信スロットの送信スロット のタイミングを設定する。また、スロット設定部105は、データ送信要求信号受信部103からの信号を継続して監視しており、自局のデータ送信スロットに達した時点でデータ送信要求信号が検出されている場合、データ生成部107を起動して送信すべきデータを無線機102、アンテナ101を経由して基地局701の受信用無線機212に送信する。
【0024】
なお、データ生成部107は、料金メータ112からの信号によって、例えば、空車または実車を検出してデータを生成する。また、スロット設定部105は、データ送信要求信号受信部103の検出信号がなくなるとリセットされる。カーナビ装置110は、例えば、GPS衛星706から自車の位置、例えば、経度および緯度を検出する。地図データベース(図示せず。)は、地図データを記憶しており、例えば、カーナビ装置110で検出された自車の位置、即ち、経度および緯度の情報から操作表示部113に表示される地図上に自車の現在地を表示するものである。また、移動局704の行き先を地図データベースから検索し、同様に地図上に表示することもできる。なお、カーナビ装置110は、既に良く知られているので、その構成および動作についての詳細な説明は省略する。
【0025】
次に、上述した本発明の一実施例で使用されるポーリング方式について図3および図4に基づいて説明する。図3に示すポーリング方式は、多数台、例えば、数百台〜数千台の移動局で構成されるタクシー配車用AVMシステム等の無線通信システムにおいて、移動局をグループ化し、効率良く移動局の動態情報を収集する場合を示している。即ち、1回のポーリング周期で数百台〜数千台の移動局全ての動態情報を短時間に収集するには、ポーリングに時間がかかりすぎるし、また、ポーリング応答信号の送信にも無理が生じる。従って、図3では、例えば、300台の移動局を有する無線通信システムの一実施例を示す。そして、1回のポーリング信号PO1で150台の移動局の動態情報を収集し、次のポーリング信号PO2で次の150台の移動局の動態情報を収集するという方式を示している。
【0026】
従って、ポーリング信号長40msで、150台の移動局に対してポーリングを実施した場合、ポーリング周期Tは、休止期間6.4秒を含めて12.4秒となる。300台の移動局ならば、24.8秒に1回の割合で、車両検索ができることになる。なお、図3(a)では、ポーリング信号PO1のみを示しているが、通常は、基地局と移動局との間での情報交換のための同期をとるため、基地局は、常に空線信号を発信している。また、本実施例では、150台のグループに区分しているが、システム構成、規模、目的等に応じて適宜台数を多くしたり、また、台数を少なくするためにグループを細分化することもできることはいうまでもない。
【0027】
図4(a)は、ポーリング信号PO1の内容を示したものである。ポーリング信号PO1は、信号種別401、ポーリング車番指定402および予備403で構成され、データ長(ポーリング信号長)は、40msで構成されている。
【0028】
次に、このポーリング信号PO1に対して各移動局704−1、704−2、・・・704−n(図3(b)は、n=300台の場合を示している。)からのポーリング応答信号は、図3(b)に示すように、各移動局からポーリング応答信号SR1、SR2、・・・SR150(ポーリング応答信号長40ms)が所定のタイミングで基地局701に送信される。なお、ポーリング応答信号を代表する場合は、ポーリング応答信号SRと称する。従って、本発明のポーリング方式では、例えば、移動局に対するポーリング周期Tは、12.4秒の繰返しとなり、全車両300台の位置の認識のためには、24.8秒に1回の車両検索が可能となる。
【0029】
図4(b)は、ポーリング応答信号SRの内容を示したものである。ポーリング応答信号SRは、信号種別404、動態情報405および位置情報406で構成され、データ長(ポーリング応答信号長)は、40msで構成されている。
【0030】
次に、本発明のタクシー配車用AVMシステムにおける配車データ等の送信方法について、図5を用いて説明する。図5は、基地局701からの配車データ送信方法の概念図を示しており、図5(a)は、基地局からの配車データを示す。本発明で使用するデジタルSCPC(Single Channel Per Carrier)方式の無線機では、例えば、データ伝送速度が9,600bpsとなることから、例えば、顧客の行き先情報(行き先の緯度経度データおよび行き先名称文字データ)を配車データに含めても、1つの配車データは約950ms(配車文字データ最大127文字の場合)とすることができ、また、移動局のデータ受信の受信率を向上させるために、これを2連送しても1回の配車データ送信にかかる時間は約2.0秒である。図5(b)は、本発明の配車データ信号内容の一実施例を示すもので、501は、信号種別、例えば、配車データであることを表示する領域、502は、配車文字データ、即ち、乗務員に配車を指示する文字情報を送る領域(最大127文字)、503は、行き先の緯度、経度データ及び行き先名称文字データを送る行き先ダータ領域および504は、予備領域である。
【0031】
本発明の動作について図3を用いて更に詳しく説明する。まず、顧客Aから配車要求があったとする。この配車要求があると、管理センタ702では、顧客の現在地に最も近い位置にあり、かつ、空車である移動局704を図3に示される動作シーケンスに基づき検索する。その結果、例えば、移動局704−1が顧客Aの現在位置に最も近い位置にいたとする。
【0032】
中央処理装置201は、この結果に従い、まず、図5に示す配車データを移動局704−3に送信する。送信するタイミングは、例えば、図3(a)に示すようにポーリング信号POの休止期間(6.4秒)のD期間に、図5(b)に示すように配車文字データ502の領域を用いて乗務員に配車を指示する文字情報(最大127文字)と、行き先のデータ領域503を用いて顧客Aの自宅の(経度X1、緯度Y1)の情報および顧客Aの行き先名称文字データを送る。この結果、移動局704−1は、無線機102でこれら送信情報D(図3(b)に示す。)を受信すると共に記憶部106に記憶する。また、必要に応じて操作表示部113に配車情報を表示する。これによって乗務員は、顧客Aへの配車情報を把握することができる。
【0033】
ここで、本発明の理解を良くするために従来の移動通信システムの問題点について、詳しく説明する。まず、配車を希望する顧客Aが管理センタ702に移動局(タクシー)の配車を電話等の手段で依頼する。管理センタのオペレータは、顧客Aからの配車要求を受けると、操作表示部202を操作して顧客Aの位置を入力し、記憶部207から移動局704の動態情報テーブルを操作表示部202に表示する。この動態情報テーブルを表1に示す。
【0034】
【表1】

表1は、先に図3で説明したポーリング方式で各移動局704から収集された移動局動態情報で、記憶部207に記憶されている情報を基に構成される。ここで、移動局番号は、移動局の番号またはIDを示す。現在位置は、各移動局がGPS衛星から入手した自車の位置情報、例えば、緯度(X)、経度(Y)を示している。状態情報は、空車、待機、迎車、実車等の動態情報である。顧客Aまでの距離は、オペレータが操作表示部202を操作して顧客Aの位置を入力することによって中央処理装置201の演算部(例えば、CPU、図示せず。)で顧客Aの位置と各移動局の現在地までの距離を演算した結果を表示している。なお、表1の動態情報テーブルは、時間経過と共に常に更新されることはいうまでもない。また、表1の動態情報テーブルの各項目は、システムの構成、目的等に応じて適宜変更されることはいうまでもない。
【0035】
さて、管理センタのオペレータは、顧客Aの配車要求に対して、例えば、表1に示す動態情報テーブルから顧客Aに最も近い位置に位置し、かつ、空車の移動局を選択する。表1においては、移動局704−1が空車であり、顧客Aまでの距離も2Kmであるので、移動局704−1を指定することで最適な配車を行うことができる。従って、管理センタのオペレータは、マイク203を操作して移動局704−1を呼出し、顧客Aの配車要求を移動局704−1の乗務員に問い合わせる。この問合せは、例えば、移動局704−1のスピーカ108からオペレータの音声で出力される。
【0036】
移動局704−1の乗務員は、顧客Aの配車要求を受ける場合、マイク109のスイッチをONし、「了解」を音声でマイク109から送信する。移動局704−1の乗務員の「了解」の音声は、基地局701の管理センタ702に送られ、スピーカ204から「了解」の音声が出力される。これによって管理センタのオペレータは、顧客Aの配車要求が移動局704−1の乗務員が受けたことを知り、顧客Aの配車要求処理を終了する。なお、マイク109は、プレストーク方式のものであり、ボタン操作時に送信を行う。また、無線基地局701から送られてくる音声情報は、スピーカ108から出力される。なお、本実施例では、音声情報で「了解」の音声情報を送信する場合について説明したが、文字情報で送信することもできる。
【0037】
而して、この状態で、移動局704−1の乗務員が素早く、料金メータ112の、例えば、実車ボタン121あるいは迎車ボタン123を押下すると、その信号は、移動局704−1から基地局701を介して管理センタ702へ送信される。管理センタ702では、この実車ボタン121あるいは迎車ボタン123の押下信号を受けると、記憶部207の動態情報テーブルを更新する。これを表2に示す。なお、表2では、迎車ボタンが押下された場合を示している。
【0038】
【表2】

表2において、移動局704−1の状態情報が「迎車」に変更されている。従って、管理センタのオペレータは、移動局704−1が迎車状態であることが分かる。
【0039】
しかしながら、空車状態で、無線配車を受信した乗務員は、顧客Aの配車要求を受諾する意思表示として、移動局704−1からマイク109のプレストークスイッチを押して、「了解」の音声を送信すると、「了解」の音声信号が移動局704−1から基地局701を介して管理センタ702のスピーカ204から「了解」の音声信号が出力されるので、管理センタのオペレータは、移動局704−1の乗務員が顧客Aの配車依頼を「了解」したことがわかるが、移動局704−1の乗務員が次の動作として、料金メータを空車から迎車に変更することを忘れた場合、管理センタ702の中央処理装置201では、記憶部207の動態情報テーブル(表1に示す。)の状態情報が「空車」から「迎車」に書き換わらないこととなる。
【0040】
その結果、顧客Aの近辺に位置する別の顧客Bから新たな配車要求があると、管理センタのオペレータは、再度、顧客Bの位置を入力し、記憶部207から移動局704の動態情報テーブルを操作表示部202に表示した場合、表1に示される動態情報テーブルが表示される。この表1では、まだ、移動局704−1は、「空車」の動態情報表示であるので、管理センタのオペレータは、移動局704−1に顧客Bの配車依頼を問い合わせるという二重の無線配車が行われる可能性が発生する。特に、1つの移動通信システムで、数百台〜数千台の移動局を有しているようなシステムでは、無線配車の頻度が極めて高く、直前に行なわれた「了解」の音声信号も、オペレータは、つい忘れがちとなるなど、信頼性に欠ける移動通信システムであった。
【0041】
なお、上記実施例では、「了解」の音声信号をプレストークスイッチを押して通知する方法を説明したが、文字表示等ですることもできる。即ち、管理センタのオペレータが操作表示部202を操作して、顧客Aの配車要求を図5で説明した文字情報で、移動局の乗務員に送ることもできる。この場合、図1に示す操作表示部113は、これを示している。この場合、空車状態で、無線配車を受信した乗務員は、顧客Aの配車要求を受諾する意思表示として、移動局704−1の「了解」キー131を押下すると、「了解」の信号が移動局704−1から基地局701を介して管理センタ702の操作表示部202に表示されるが、移動局704−1の乗務員が次の動作として、料金メータを空車から実車または迎車に変更する(ここでは、迎車とする。)ことを忘れた場合、管理センタ702の中央処理装置201では、記憶部207の動態情報テーブル(表1に示す。)の状態情報がやはり「空車」から「迎車」に書き換わらないため問題となる。
【0042】
本発明は、このような問題を解決する移動通信システムを提供するものであり、一実施例を図6を用いて説明する。まず、先に説明したように顧客Aから管理センタ702に配車依頼があると、管理センタ702のオペレータは、顧客Aの位置を、例えば、操作表示部202から入力し、表1に示される動態情報テーブルを記憶部207から読出し、顧客Aに最も近い位置に位置する移動局、例えば、移動局704−1を選択する。
【0043】
そして、管理センタ702のオペレータは、移動局704−1の乗務員に顧客Aの配車依頼を無線で連絡する(ステップ601、無線配車)、即ち、先に説明したように音声または文字表示で、管理センタ702のオペレータは、移動局704−1の乗務員に連絡する。
【0044】
移動局704−1の乗務員は、その時点では、空車状態であるので、顧客Aの配車依頼を受けるため、先に説明したように「了解」キー131を押下する(ステップ602)。なお、プレストークスイッチによる音声での応答も同様である。
【0045】
次に、ステップ603に進む。ステップ603では、移動局704−1の乗務員が料金メータ112の、例えば、迎車ボタン123を押したかどうかを判定する。迎車ボタン123を押下していなければ(Noの場合)、ステップ604に進み、迎車ボタン123を押下した場合(Yesの場合)は、ステップ605に進む。
【0046】
ステップ604では、迎車ボタン123を乗務員が押下してないため、迎車依頼の表示およびブザーを鳴動させる。即ち、顧客Aの迎車を了解したにもかかわらず、迎車ボタン123を押下していない場合、制御部114は、操作表示部113に「迎車依頼」の警告表示をすると共に、スピーカ108からブザー音を出力し、乗務員に迎車ボタン123を押下するように注意を促がす。なお、乗務員が「了解」キー131を押下すると、直に、警告のための「迎車依頼表示およびブザー鳴動」をさせることもできるが、昨今の交通事情や法規制なども踏まえ、一定時間、例えば、5〜10秒程度経過後に警告のための「迎車依頼表示およびブザー鳴動」をさせる等のように柔軟性を持たせる方がよい。例えば、交差点をまがっている最中であり、両手でハンドル操作をしている状況では、乗務員が迎車ボタン123を押下できない場合がある。また、乗務員が「了解」キー131を押下すると、直に「迎車依頼表示およびブザー鳴動」させると、頻繁に警告することになり、乗務員にとっては煩わしい場合があるので、一定時間経過後に警告のための「迎車依頼表示およびブザー鳴動」をさせるのが良い。
【0047】
なお、一定時間経過後に警告のために、迎車依頼を表示したり、ブザーを鳴動させるためには、例えば、乗務員が「了解」キー131を押下した時点で、制御部114が有するタイマ機能によりカウントを開始し、5秒あるいは10秒等、適宜設定された時間が経過すると、制御部114が操作表示部113に迎車依頼表示をしたり、スピーカ108から警告音を出力させることで実現できる。
【0048】
ステップ605では、迎車信号が移動局704−1から基地局701に送信される。即ち、乗務員が迎車ボタン123を押下した場合、制御部114は、料金メータ112からの迎車信号を検出し、この迎車信号を無線機102、基地局701を介して管理センタ702に送信する。管理センタ702の中央処理装置201は、この迎車信号を検出し、記憶部207に記憶されている動態情報テーブルの移動局704−1の状態情報の項目を、「空車」から「迎車」に書換える。従って、前述した場合のように顧客Bからの配車依頼が発生した場合でも、管理センタ702のオペレータは、移動局704−1に顧客Bの無線配車をすることもない。
【0049】
ステップ606は、乗務員が迎車ボタン123を所定時間以内に押下しなかったために、迎車ボタン123を押下した後も警告のための「迎車依頼表示およびブザー鳴動」中かどうかを判定する。「迎車依頼表示およびブザー鳴動」中でない(Noの場合)ならば、乗務員は、顧客Aの迎車に向かう(ステップ608)。「迎車依頼表示およびブザー鳴動」中であれば(Yesの場合)、乗務員は、操作表示部113を操作して、迎車依頼表示およびブザー鳴動を停止し(ステップ607)、顧客Aの迎車に向かう(ステップ608)。
【0050】
上記本発明の実施例では、了解キー131を押下した後も所定の期間、「迎車ボタン」または「実車ボタン」が押下されない場合、警告として、「迎車依頼表示およびブザー鳴動」で乗務員に知らせるようにしているが、外にも種々の方法がある。表3は、本発明の一実施例を纏めたものである。
【0051】
【表3】

表3において、No.1は、上記実施例を記載したものである。No.2は、「了解」キー131が押下されると、料金メータ112の「実車」ボタン121および「迎車」ボタン123を点滅させるようにした場合である。後者の場合は、料金メータ112の「実車」ボタン121および「迎車」ボタン123を点滅させることによって乗務員には、いずれのボタンを押せばよいかを容易に判断させることができ、乗務員への負担を軽減することができる。
【0052】
なお、表3のNo.1あるいはNo.2を実現するための構成は、例えば、移動局704−1の記憶部106に表3に示すNo.1あるいはNo.2のテーブルを記憶しておき、「了解」キー131が押下されると、制御部114は、記憶部106から表3のテーブルを読出し、これを実行するように構成すれば容易に実現することができる。なお、No.1あるいはNo.2いずれを実行するかは、前もって設定するようにすればよい。また、No.1あるいはNo.2のいずれを実行するのか、あるいは、それらの組み合わせで実行するかは、例えば、乗務員が適宜操作表示部113を操作して適宜設定することができる。
【0053】
以上、本発明について詳細に説明したように、乗務員が無線配車を了解した後、料金メータを空車の状態のままにしていると、警告表示あるいは警告音あるいは「実車」ボタン「迎車」ボタンの点滅というような警告が出るので、乗務員は、迎車ボタンや実車ボタンの押し忘れを防止することができる。
【0054】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された移動通信システムの実施例に限定されるものではなく、上記以外の移動通信システムに広く適応することが出来ることは、言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例で用いられる移動局の概略構成のブロック図を示す。
【図2】本発明の一実施例で用いられる基地局および管理センタの概略構成のブロック図を示す。
【図3】本発明で用いられるポーリング方法を説明するための図である。
【図4】本発明で使用されるポーリング信号およびポーリング応答信号を説明するための図である。
【図5】本発明で使用される文字情報の伝送方法を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】従来の移動通信システムの一例を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
101:アンテナ、102:無線機、103:データ送信要求信号受信部、104:ポーリング信号受信部、105:スロット設定部、106、207:記憶部、107:データ生成部、108、204:スピーカ、109、203:マイク、110:カーナビ装置、111:GPSアンテナ、112:料金メータ、113、202:操作表示部、114:制御部、115、703:伝送路、120:料金表示部、121:実車ボタン、122:回送ボタン、123:迎車ボタン、124:プリンタ、130:応答キー、131:了解キー、201:中央処理装置、205:ポーリング信号生成部、206:データ送信要求信号生成部、211:送信用無線機、212:受信用無線機、701:基地局、702:管理センタ、704:移動局。705:通信エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理センタと、上記管理センタと結合される基地局と、上記基地局と無線回線で接続される複数の移動局を有し、上記複数の移動局の動態情報をポーリングにより収集する方式の移動通信システムにおいて、上記管理センタは、上記複数の移動局の動態情報を記憶した動態情報テーブルを有し、顧客からの配車要求に対して上記管理センタは、上記動態情報テーブルに基づいて上記複数の移動局の内の一台に無線配車を行うと共に、上記移動局は、少なくとも了解キーを有する操作表示部と、少なくとも「実車ボタン」と「迎車ボタン」を供える料金メータを有し、上記管理センタからの上記配車要求を受けた上記移動局は、上記了解キーを押下すると共に、上記了解キーを押下してから所定の時間経過後も上記「実車ボタン」あるいは上記「迎車ボタン」が押下されない場合、警告動作を実行することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の移動通信システムにおいて、上記警告動作は、上記了解キーを押下してから所定の時間経過後、操作表示部に警告文字の表示、あるいは、スピーカからの警告音の出力であることを特徴とする移動通信システム。
【請求項3】
請求項1記載の移動通信システムにおいて、上記警告動作は、上記了解キーの押下に連動して上記料金メータの実車ボタンあるいは迎車ボタンが点滅する動作であることを特徴とする移動通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−15690(P2009−15690A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178346(P2007−178346)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】