説明

移動通信方法、移動通信システム及び無線基地局

【課題】EUL方式が採用されている移動通信システムにおいて、無線基地局NodeBにおける受信成功レートについても補償する。
【解決手段】本発明に係る移動通信方法は、無線基地局NodeBが、目標SIRを用いたインナーループ送信電力制御によってDPCCHにおける送信電力を制御する工程と、移動局UEが、SG及びDPCCHにおける送信電力に基づいて決定されるE-DPDCHにおける送信電力で上りパケットを送信する工程と、無線基地局NodeBが、移動局UEによる上りパケットの送信がHARQ再送制御の何回目の送信であるのかについて示すHARQ送信回数及び当該HARQ送信回数における上りパケットの受信結果を用いたアウターループ送信電力制御によって目標SIRを決定する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が無線基地局によって通知された許可値に対応する送信レートで上りパケットを送信する移動通信方法、移動通信システム及び無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPPに規定されているEUL(Enhanced Uplink)方式、すなわち、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)方式が採用されている移動通信システムでは、図11に示すように、移動局UEは、無線基地局NodeBによって通知された許可値(SG:Scheduling Grant)に対応する送信レートで、E-DPDCH(ECH Dedicated Physical Data Chennel)を介して、上りパケットを送信するように構成されている。
【0003】
具体的には、移動局UEは、事前に通知されているテーブル1を参照して、無線基地局NodeBによって通知されたSGに対応するE-TFCI(E-DCH Transport Format Combination Identity)を選択し、かかるE-TFCIに対応する送信レートで、E-DPDCHを介して、上りパケット(トランスポートブロック)を送信するように構成されている。
【0004】
ここで、SG(許可値)は、上りパケットを送信するE-DPDCH(高速個別物理データチャネル)における送信電力とDPCCH(Dedicated Physical Control Chennel、上り個別物理制御チャネルにおける送信電力との比である。
【0005】
3GPPでは、SGとして、SGの値自身を示すAG(Absolute Grant)、或いは、SGの値の増減(Up/Down/Hold)を示すRG(Relative Grant)が規定されている。
【0006】
また、かかる移動通信システムでは、無線基地局NodeBにおける上りパケットの受信誤りについては、HARQ(Hybrid ARQ)再送制御によって補償されるように構成されている。
【0007】
図12を参照して、EUL方式が採用されている移動通信システムにおいて、移動局UEによって上りパケットが送信する動作について説明する。
【0008】
ステップS1001において、移動局UEが、スケジューリング情報(SI:Scheduling Information)によって、移動局UEの送信バッファ内に滞留している上りパケットのデータ量や、移動局UEにおいてE-DPDCHに割り当て可能な送信電力の上限値等を、無線基地局NodeBに対して報告する。
【0009】
ステップS1002において、無線基地局NodeBのスケジューラ10は、各移動局UEから報告されたSIや、無線基地局NodeBにおける全受信電力等によって、各移動局UEに通知すべきSG(AG又はRG)を決定する。
【0010】
ステップS1003において、無線基地局NodeBは、各移動局UEに対して、E-AGCH(E-DCH Absolute Grant Channel)やE-RGCH(E-DCH Relative Grant Channel)を介して、決定したSG(AG又はRG)を通知する。
【0011】
移動局UEは、通知されたAG又はRGに基づきSGを決定し、かかるSGに対応するE-TFCIを選択した後、ステップS1004において、E-DPCCH(E-DCH Dedicated Physical Control Channel)によってE-TFCIを通知すると共に、ステップS1005において、当該E-TFCIに対応する送信レートで、E-DPDCHを介して、無線基地局NodeBに対して、上りパケットを送信する。
【0012】
また、図13を参照して、EUL方式が採用されている移動通信システムにおいて、無線基地局NodeBにおいて、インナーループ送信電力制御で用いられる目標SIR(Signal to Interference Ratio)を更新する動作について説明する。
【0013】
図13に示すように、ステップS2001において、無線基地局NodeBは、各サブフレーム(TTI:Transmission Time Interval)において、CRC(Cyclic Redundancy Check)判定を行うことによって、上りパケットの受信に成功したか否かについて判定する。
【0014】
上りパケットの受信に成功したと判定された場合、ステップS2002において、無線基地局NodeBは、当該サブフレームにおいて用いられていた目標SIRをΔdownだけ減少させたものを、次のサブフレームにおいて用いられる目標SIRとする。
【0015】
一方、上りパケットの受信に失敗したと判定された場合、ステップS2003において、無線基地局NodeBは、当該サブフレームにおいて用いられていた目標SIRをΔupだけ増加させたものを、次のサブフレームにおいて用いられる目標SIRとする。
【0016】
ステップS2004において、無線基地局NodeBは、更新された目標SIRを用いて、次のサブフレームにおけるDPCCHの送信電力に対するインナーループ送信電力制御を行う。
【0017】
すなわち、図14に示すように、無線基地局NodeBは、各サブフレームにおいて、上りパケットの受信に失敗した場合(CRC:NG)には、インナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRをΔupだけ上げるように構成されている。
【0018】
一方、無線基地局NodeBは、各サブフレームにおいて、上りパケットの受信に成功した場合(CRC:OK)には、インナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRをΔdownだけ下げるように構成されている。
【0019】
ここで、ΔupとΔDownとの関係を、(式1)のように設定することで、無線基地局NodeBにおける上りパケットの受信品質(BLER:Block Error Rate)を、目標BLERに近づけることができる。
【0020】
Δdown = −Δup×(目標BLER)/(1−目標BLER) … (式1)
図14の例では、目標BLERは、「1/8」であり、TTI#1において、上りパケットの受信に失敗すると、無線基地局NodeBが、目標SIRをΔupだけ上げる。
【0021】
その結果、目標SIRが高くなるため、TTI#2〜#8までの間、無線基地局NodeBは、上りパケットの受信が7回連続して成功する。
【0022】
ここで、無線基地局NodeBが、上りパケットの受信に成功する度に、目標SIRをΔdownだけ下げているため、TTI#9において、目標SIRが低くなり、上りパケットの受信失敗が発生し、無線基地局NodeBが、目標SIRをΔupだけ上げる。
【特許文献1】US 7,016,699 B2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来のEUL方式が採用されている移動通信システムでは、移動局UEにおける送信レートについては補償することができるが、無線基地局NodeBにおける受信成功レートについては補償されていないという問題点があった。
【0024】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、EUL方式が採用されている移動通信システムにおいて、移動局UEにおける送信レートについて補償すると共に、無線基地局NodeBにおける受信成功レートについても補償することができる移動通信方法、移動通信システム及び無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第1の特徴は、移動局が、無線基地局によって通知された許可値に対応する送信レートで、上りパケットを送信する移動通信方法であって、前記移動局と前記無線基地局との間の前記上りパケットの通信に対してHARQ再送制御が用いられており、前記許可値は、前記上りパケットを送信する高速個別物理データチャネルにおける送信電力と上り個別物理制御チャネルにおける送信電力との比であり、前記無線基地局が、目標受信品質を用いたインナーループ送信電力制御によって、前記上り個別制御チャネルにおける送信電力を制御する工程と、前記移動局が、前記許可値及び前記上り個別制御チャネルにおける送信電力に基づいて決定される前記高速個別物理データチャネルにおける送信電力で、前記上りパケットを送信する工程と、前記無線基地局が、前記移動局による前記上りパケットの送信が前記HARQ再送制御の何回目の送信であるのかについて示すHARQ送信回数及び該HARQ送信回数における該上りパケットの受信結果を用いたアウターループ送信電力制御によって、前記目標受信品質を決定する工程とを有することを要旨とする。
【0026】
本発明の第2の特徴は、移動局が、無線基地局によって通知された許可値に対応する送信レートで、上りパケットを送信するように構成されている移動通信システムであって、前記移動局と前記無線基地局との間の前記上りパケットの通信に対してHARQ再送制御が用いられており、前記許可値は、前記上りパケットを送信する高速個別物理データチャネルにおける送信電力と上り個別物理制御チャネルにおける送信電力との比であり、前記無線基地局は、目標受信品質を用いたインナーループ送信電力制御によって、前記上り個別制御チャネルにおける送信電力を制御するように構成されているインナーループ送信電力制御部と、前記移動局による前記上りパケットの送信が前記HARQ再送制御の何回目の送信であるのかについて示すHARQ送信回数及び該HARQ送信回数における該上りパケットの受信結果を用いたアウターループ送信電力制御によって、前記目標受信品質を決定するように構成されているアウターループ送信電力制御部とを具備し、前記移動局は、前記許可値及び前記上り個別制御チャネルにおける送信電力に基づいて決定される前記高速個別物理データチャネルにおける送信電力で、前記上りパケットを送信するように構成されていることを要旨とする。
【0027】
本発明の第2の特徴において、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以上であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定増加幅だけ増加させるように構成されており、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数未満であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていてもよい。
【0028】
本発明の第2の特徴において、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以下であり、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定減少幅だけ減少させるように構成されており、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数より大きく、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていてもよい。
【0029】
本発明の第2の特徴において、前記アウターループ送信電力制御部は、各サブフレームにおいて、前記高速個別物理データチャネルに対応する高速個別物理制御チャネルにおける制御情報の受信に失敗した場合、前記目標受信品質を変更しないように構成されていてもよい。
【0030】
本発明の第2の特徴において、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標HARQ送信回数、及び、前記移動局によって送信された全てのパケットのうち、該目標HARQ送信回数だけ送信された場合に前記無線基地局において受信に失敗しているパケットの割合を示す目標残留誤り率に基づいて、前記目標受信品質を決定するように構成されていてもよい。
【0031】
本発明の第2の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、最低補償受信成功レートと前記移動局におけるHARQアクティブプロセス数とサブフレーム単位の上りパケットのサイズとサブフレーム長に応じて、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを決定するように構成されていてもよい。
【0032】
本発明の第2の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも大きく、高グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを用いるように構成されていてもよい。
【0033】
本発明の第2の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が、高グループ用閾値よりも大きい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定期間ごとに、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを変更するように構成されていてもよい。
【0034】
本発明の第2の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が前記高速個別物理データチャネルの送信停止を要求している場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の目標受信品質を用いるように構成されていてもよい。
【0035】
本発明の第3の特徴は、移動局が、無線基地局によって通知された許可値に対応する送信レートで、上りパケットを送信するように構成されている移動通信システムで用いられる無線基地局であって、前記移動局と前記無線基地局との間の前記上りパケットの通信に対してHARQ再送制御が用いられており、前記許可値は、前記上りパケットを送信する高速個別物理データチャネルにおける送信電力と上り個別物理制御チャネルにおける送信電力との比であり、前記移動局は、前記許可値及び前記上り個別制御チャネルにおける送信電力に基づいて決定される前記高速個別物理データチャネルにおける送信電力で、前記上りパケットを送信するように構成されており、目標受信品質を用いたインナーループ送信電力制御によって、前記上り個別制御チャネルにおける送信電力を制御するように構成されているインナーループ送信電力制御部と、前記移動局による前記上りパケットの送信が前記HARQ再送制御の何回目の送信であるのかについて示すHARQ送信回数及び該HARQ送信回数における該上りパケットの受信結果を用いたアウターループ送信電力制御によって、前記目標受信品質を決定するように構成されているアウターループ送信電力制御部とを具備することを要旨とする。
【0036】
本発明の第3の特徴において、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以上であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定増加幅だけ増加させるように構成されており、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数未満であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていることを要旨とする。
【0037】
本発明の第3の特徴において、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以下であり、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定減少幅だけ減少させるように構成されており、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数より大きく、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていてもよい。
【0038】
本発明の第3の特徴において、前記アウターループ送信電力制御部は、各サブフレームにおいて、前記高速個別物理データチャネルに対応する高速個別物理制御チャネルにおける制御情報の受信に失敗した場合、前記目標受信品質を変更しないように構成されていてもよい。
【0039】
本発明の第3の特徴において、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標HARQ送信回数、及び、前記移動局によって送信された全てのパケットのうち、該目標HARQ送信回数だけ送信された場合に前記無線基地局において受信に失敗しているパケットの割合を示す目標残留誤り率に基づいて、前記目標受信品質を決定するように構成されていてもよい。
【0040】
本発明の第3の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、最低補償受信成功レートと前記移動局におけるHARQアクティブプロセス数とサブフレーム単位の上りパケットのサイズとサブフレーム長に応じて、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを決定するように構成されていてもよい。
【0041】
本発明の第3の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも大きく、高グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを用いるように構成されていてもよい。
【0042】
本発明の第3の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が、高グループ用閾値よりも大きい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定期間ごとに、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを変更するように構成されていてもよい。
【0043】
本発明の第3の特徴において、前記無線基地局によって通知された許可値が前記高速個別物理データチャネルの送信停止を要求している場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の目標受信品質を用いるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、EUL方式が採用されている移動通信システムにおいて、移動局UEにおける送信レートについて補償すると共に、無線基地局NodeBにおける受信成功レートについても補償することができる移動通信方法、移動通信システム及び無線基地局を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの構成)
図1乃至図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。本実施形態に係る移動通信システムでは、EUL方式が採用されており、無線基地局NodeBと移動局UEとの間の上りパケットの通信に対して、HARQ再送制御が用いられるように構成されている。
【0046】
図1に示すように、無線基地局NodeBは、スケジューラ10と、アウターループ送信電力制御部20と、HARQ制御部30と、インナーループ送信電力制御部40とを具備している。
【0047】
スケジューラ10は、各サブフレーム(TTI)において、上りパケットの送信を許可する移動局UE、及び、当該移動局UEによって通知すべきSG(許可値)を決定し、E-AGCH又はE-RGCHを介して、当該移動局UEに通知するように構成されている。
【0048】
また、スケジューラ10は、決定したSGを、アウターループ送信電力制御部20に通知するように構成されている。
【0049】
HARQ制御部30は、移動局UEによって送信される上りパケットに対するHARQ再送制御を行うように構成されている。
【0050】
インナーループ送信電力制御部40は、目標受信品質(例えば、目標SIR)を用いたインナーループ送信電力制御によって、DPCCH(上り個別制御チャネル)における送信電力を制御するように構成されている。以下、目標受信品質として目標SIRを用いたケースについて説明する。
【0051】
アウターループ送信電力制御部20は、目標HARQ送信回数・目標残留BLER決定部21と、目標SIR決定部22とを具備している。
【0052】
目標HARQ送信回数・目標残留BLER決定部21は、「目標HARQ送信回数」及び「目標残留BLER(目標残留誤り率)」を決定するように構成されている。
【0053】
ここで、「目標残留BLER」は、移動局UEによって送信された全てのパケット(トランスポートブロック)のうち、当該「目標HARQ送信回数」だけ送信された場合に無線基地局NodeBにおいて受信に失敗しているパケットの割合を示すものである。
【0054】
具体的には、「目標残留BLER」は、「ne/N」によって算出される値である。ここで、「N」は、移動局UEによって送信された全ての新規送信パケットの数(再送パケットは含まないものとする)を示し、「ne」は、M回に送信されたにも関らず、無線基地局NodeBによって受信に失敗されているパケットの数を示す。
【0055】
具体的な「目標HARQ送信回数」及び「目標残留BLER」の決定方法については後述する。ここで、目標受信成功レート=送信レート/目標HARQ送信回数(M)×(1−目標残留BLER(Y))が成立するものとする。なお、従来の移動通信システムでは、目標受信成功レート=送信レート×(1−目標BLER)が成立している。
【0056】
目標SIR決定部22は、HARQ制御部30から受信した「HARQ送信回数」及び「受信結果」を用いたアウターループ送信電力制御によって、上述の目標SIRを決定するように構成されている。
【0057】
ここで、「HARQ送信回数」は、移動局UEのHARQプロセスによる上りパケットの何回目の送信であるのかについて示すものであり、「受信結果」は、かかるHARQ送信回数における上りパケットの受信結果(CRC:OK又はCRC:NG)を示す。
【0058】
また、目標SIR決定部22は、「HARQ送信回数」及び「受信結果」に加えて、「目標HARQ送信回数」及び「目標残留BLER」に基づいて、目標SIRを決定するように構成されている。
【0059】
一般に、HARQ再送制御が行われている移動通信システムでは、各HARQプロセスにおいて、上りパケットの受信に失敗した場合に、Δupだけ目標SIRが上げられるため、目標SIRが高くなりすぎる傾向にある。
【0060】
そこで、本実施形態に係る移動通信システムでは、図2及び図3に示すように、目標SIR決定部22は、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、「HARQ送信回数」が「目標HARQ送信回数(M回)」以上であり、かつ、「受信結果」が「当該HARQ送信回数において受信に失敗した旨(NACK)」を示す場合、目標SIRをΔup(所定増加幅)だけ増加させるように構成されている。
【0061】
一方、目標SIR決定部22は、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、「HARQ送信回数」が「目標HARQ送信回数(M回)」未満であり、かつ、「受信結果」が「当該HARQ送信回数において受信に失敗した旨(NACK)」を示す場合、目標SIRを変更しないように構成されている。
【0062】
また、目標SIR決定部22は、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、「HARQ送信回数」が「目標HARQ送信回数(M回)」以下であり、かつ、「受信結果」が「当該HARQ送信回数において受信に成功した旨(ACK)」を示す場合、目標SIRをΔdown(所定減少幅)だけ減少させるように構成されている。
【0063】
一方、目標SIR決定部22は、各サブフレームにおいて、上りパケットについて、「HARQ送信回数」が「目標HARQ送信回数(M回)」より大きく、かつ、「受信結果」が「当該HARQ送信回数において受信に成功した旨(ACK)」を示す場合、目標SIRを変更しないように構成されている。
【0064】
この結果、目標SIR決定部22は、目標受信成功レートを達成するように目標SIRを調整することができる。
【0065】
また、目標HARQ送信回数を「2回」以上に設定することによって、HARQ再送制御による利得を得ることができるため、目標SIRを低く設定することができ、また、E-DPDCHにおける送信電力を小さく設定することができるため、他の移動局UEに与える干渉を低減することができる。
【0066】
ここで、ΔupとΔDownとの関係を、(式2)のように設定されているものとする。
【0067】
Δdown = (Y/(1−Y))×Δdown … (式2)
ここで、Yは、目標残留BLERを示す。
【0068】
また、目標SIR決定部22は、各サブフレームにおいて、該当するE-DPDCHに対応するE-DPCCH(高速個別物理データチャネルに対応する高速個別物理制御チャネル)における制御情報の受信に失敗した場合、目標SIRを変更しないように構成されていてもよい。
【0069】
さらに、目標SIR決定部22は、各サブフレームにおいて、無線基地局NodeBによって通知されたSG(許可値)が「Zero Grant(0)」である場合(すなわち、E-DPDCHの送信停止を要求している場合)、所定の目標SIRを用いるように構成されていてもよい。
【0070】
また、図1に示すように、移動局UEは、無線基地NodeBによって通知されたSG(許可値)に対応する送信レートで、上りパケットを送信するように構成されている。
【0071】
さらに、移動局UEは、無線基地NodeBによって通知されたSG(許可値)、及び、インナーループ送信電力制御によって制御されているDPCCH(上り個別制御チャネル)における送信電力に基づいて決定されるE-DPDCH(高速個別物理データチャネル)における送信電力で、上りパケットを送信するように構成されている。
【0072】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作)
図4乃至図10を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作について説明する。
【0073】
第1に、図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係る無線基地局NodeB(目標SIR決定部22)が、インナーループ送信電力制御において用いられる目標SIRを更新する第1の動作について説明する。
【0074】
図4に示すように、ステップS101において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて、HARQ制御部30によって通知された上りパケットのHARQ送信回数(当該上りパケットが移動局UEのHARQプロセスによって送信された回数)が「目標HARQ回数(M回)」よりも小さいか否かについて判定する。
【0075】
かかるHARQ送信回数が「目標HARQ回数(M回)」よりも小さいと判定された場合、ステップS102において、目標SIR決定部22は、当該上りパケットの受信に成功したか(CRC:OK)であるか否かについて、HARQ制御部30により通知された「受信結果」を基に判定する。
【0076】
ここで、当該上りパケットの受信に成功したと判定された場合、ステップS106において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて用いられた目標SIRをΔdownだけ下げたものを、次のサブフレームにおいて用いられるべき目標SIRに決定する。
【0077】
一方、当該上りパケットの受信に失敗したと判定された場合、ステップS103において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて用いられた目標SIRを、次のサブフレームにおいて用いられるべき目標SIRに決定する。
【0078】
また、ステップS101において、上述のHARQ送信回数が「目標HARQ回数(M回)」よりも小さくないと判定された場合、ステップS104において、目標SIR決定部22は、上述のHARQ送信回数が「目標HARQ回数(M回)」と同じであるか否かについて判定する。
【0079】
上述のHARQ送信回数が「目標HARQ回数(M回)」と同じであると判定された場合、ステップS105において、目標SIR決定部22は、当該上りパケットの受信に成功したか(CRC:OK)であるか否かについて判定する。
【0080】
ここで、当該上りパケットの受信に成功したと判定された場合、ステップS106において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて用いられた目標SIRをΔdownだけ下げたものを、次のサブフレームにおいて用いられるべき目標SIRに決定する。
【0081】
一方、当該上りパケットの受信に失敗したと判定された場合、ステップS108において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて用いられた目標SIRをΔupだけ上げたたものを、次のサブフレームにおいて用いられるべき目標SIRに決定する。
【0082】
また、ステップS104において、上述のHARQ送信回数が「目標HARQ回数(M回)」と同じでないと判定された場合、ステップS107において、目標SIR決定部22は、当該上りパケットの受信に成功したか(CRC:OK)であるか否かについて判定する。
【0083】
ここで、当該上りパケットの受信に成功したと判定された場合、ステップS103において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて用いられた目標SIRを、次のサブフレームにおいて用いられるべき目標SIRに決定する。
【0084】
一方、当該上りパケットの受信に失敗したと判定された場合、ステップS108において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて用いられた目標SIRをΔupだけ上げたたものを、次のサブフレームにおいて用いられるべき目標SIRに決定する。
【0085】
ステップS109において、インナーループ送信電力制御部40が、決定された目標SIRを用いて、DPCCHにおける送信電力に対するインナーループ送信電力制御を行う。
【0086】
第2に、図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る無線基地局NodeB(目標SIR決定部22)が、インナーループ送信電力制御において用いられる目標SIRを更新する第2の動作について説明する。
【0087】
図5に示すように、ステップS101において、目標SIR決定部22は、現在のサブフレームにおいて、該当するE-DPDCHに対応するE-DPCCHにおける制御情報の受信に成功したか否かについて判定する。
【0088】
かかる制御情報の受信に成功したと判定された場合、本動作は、ステップS202に進み、かかる制御情報の受信に失敗したと判定された場合、本動作は、ステップS204に進む。
【0089】
以下、ステップS202乃至ステップS210の動作は、上述したステップS101乃至S109の動作と同一である。
【0090】
次に、図6乃至図10を参照して、本発明の第1の実施形態に係る無線基地局NodeB(目標HARQ送信回数・目標残留BLER決定部21)が、目標HARQ送信回数(M)及び目標残留BLER決定(Y)を決定する動作について説明する。
【0091】
図6に示すように、目標HARQ送信回数・目標残留BLER決定部21は、目標HARQ送信回数(M)及び目標残留BLER決定(Y)を適切に調整することによって、任意のE-TFCIにおける所望の受信成功レート(スループット)及び無線基地局NodeBの受信品質(受信EcNo)を実現することができる。
【0092】
図6において、無線基地局NodeBから通知されたSGに基づいて、E-TFCIが決定され、E-TFCIに対応する送信レートが、移動局UEにおいて用いられるべき送信レートとして決定される。
【0093】
かかる送信レートは、無線基地局NodeBにおける受信品質が非常によいときに達成できる受信成功レートに相当する。
【0094】
ここで、上りDPCCHに対して、インナーループ送信電力制御及びアウターループ送信電力制御が行われない場合には、受信成功レート及び無線基地局NodeBの受信品質は、図6において、無線基地局NodeBから通知されたSGに基づいて決定されたE−TFCIの曲線上のいずれかの点に対応する値になる。
【0095】
一方、本実施形態に係る無線基地局NodeBは、目標HARQ送信回数(M)及び目標残留BLER決定(Y)を適切に調整した上で、上りDPCCHに対して、インナーループ送信電力制御及びアウターループ送信電力制御が行うことによって、受信成功レート及び無線基地局NodeBの受信品質を、無線基地局NodeBから通知されたSGに基づいて決定されたE−TFCIの曲線上の所望の点に対応する値とすることができる。
【0096】
かかる場合の無線基地局NodeBの動作について、図7乃至図10を参照して説明する。
【0097】
図7に示すように、ステップS301において、無線基地局NodeBのアウターループ送信電力制御部20は、スケジューラ10によって通知された最新のSGが「低グループ用閾値」よりも小さいか否かについて判定する。
【0098】
かかる最新のSGが「低グループ用閾値」よりも小さいと判定された場合、ステップS302において、アウターループ送信電力制御部20は、最低補償受信成功レートと移動局UEにおけるHARQアクティブプロセス数とサブフレーム(TTI)単位の上りパケットのサイズ(TBS:Tranport Block Size)とサブフレーム(TTI)長(例えば、2ms又は10ms)に応じて、目標HARQ送信回数(M)と目標残留BLER(Y)との組み合わせを決定する。
【0099】
具体的には、アウターループ送信電力制御部20は、図8に示すように、「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせを管理する表を記憶している。
【0100】
図8に示す表では、「1/M×(1−Y)」の昇順に、「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせに対して「試行番号」が付与されている。
【0101】
そして、アウターループ送信電力制御部20は、(式3)を成立させる「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせの中から、最小の「試行番号」が付与されている「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせを、目標SIRの決定に用いるべき「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせとして決定する。
【0102】
{(HARQアクティブプロセス数/8)×通知されたSGに対応するTBS/M×(1−Y)}/TTI長 ≧ 最低補償受信成功レート(kbps) … (式3)
また、ステップS301において、かかる最新のSGが「低グループ用閾値」よりも小さくないと判定された場合、ステップS303において、アウターループ送信電力制御部20は、かかる最新のSGが「高グループ用閾値」よりも小さいか否かについて判定する。
【0103】
かかる最新のSGが「高グループ用閾値」よりも小さいと判定された場合、ステップS304において、アウターループ送信電力制御部20は、目標SIRの決定に用いるべき「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせとして、所定の目標HARQ送信回数と目標残留BLERとの組み合わせを用いるように決定する。
【0104】
ここで、所定の目標HARQ送信回数を「2回」以上とすることによって、HARQ再送制御による利得を得ることができる。
【0105】
一方、最新のSGが「高グループ用閾値」よりも小さくないと判定された場合、ステップS305において、アウターループ送信電力制御部20は、所定期間ごとに、目標SIRの決定に用いるべき「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせを変更する。
【0106】
具体的には、アウターループ送信電力制御部20は、図9に示すように、「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせを管理する表を記憶している。
【0107】
図9に示す表では、「1/M×(1−Y)」の昇順に、「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせに対して、「レート番号」が付与されている。また、各「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせに対して、上述の所定期間を計時するための「レートアップタイマー(msec)」が設定されている。
【0108】
そして、ステップS305では、第1に、アウターループ送信電力制御部20は、図9に示す表における「レート番号」から、予め設定されている「初期レート番号」に対応する「レート番号」を選択し、選択した「レート番号」に対応する「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせを、目標SIRの決定に用いるべき「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせとして決定する。
【0109】
第2に、かかる「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせに対して設定されている「レートアップタイマー」によって計時される所定時間が経過した場合、アウターループ送信電力制御部20は、「初期レート番号+1」に対応する「レート番号」を選択し、選択した「レート番号」に対応する「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせを、目標SIRの決定に用いるべき「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせとして決定する。
【0110】
なお、ステップS305では、最大の「レート番号」に対応する「目標HARQ送信回数(M)」と「目標残留BLER(Y)」との組み合わせが選択されるまで、かかる動作が繰り返される。
【0111】
また、図10に示すように、無線基地局NodeBのアウターループ送信電力制御部20は、ステップS401において、スケジューラ10によって通知された最新のSGが「Zero Grant」である場合、ステップS402において、目標SIRとして、予め決められている固定値を用いるように決定し、ステップS405において、インナーループ送信電力制御部40は、かかる目標SIRを用いたインナーループ送信電力制御を行う。
【0112】
すなわち、スケジューラ10によって通知された最新のSGが「Zero Grant」である場合、すなわち、E-DPDCHにおける上りパケット(SIを除く)の送信をオフにするように指定された場合、移動局UEは、上りパケットを送信しないため、目標SIRを低くして、当該移動局UEにおける送信電力を小さくすることで、他の移動局UEに与える干渉電力を小さくすることができる。
【0113】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの作用・効果)
本実施形態に係る移動通信システムによれば、EUL方式が採用されている移動通信システムにおいて、移動局UEにおける上りパケットの送信レートについても補償するだけでなく、無線基地局NodeBにおける当該上りパケットの受信成功レートについても補償することができる。
【0114】
なお、上述の移動局UEや無線基地局NodeBの動作は、ハードウェアによって実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実施されてもよいし、両者の組み合わせによって実施されてもよい。
【0115】
ソフトウェアモジュールは、RAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリや、ROM(Read Only Memory)や、EPROM(Erasable Programmable ROM)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)や、レジスタや、ハードディスクや、リムーバブルディスクや、CD-ROMといった任意形式の記憶媒体内に設けられていてもよい。
【0116】
かかる記憶媒体は、プロセッサが当該記憶媒体に情報を読み書きできるように、当該プロセッサに接続されている。また、かかる記憶媒体は、プロセッサに集積されていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ASIC内に設けられていてもよい。かかるASICは、移動局UEや無線基地局NodeBや無線制御装置RNC内に設けられていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ディスクリートコンポーネントとして移動局UEや無線基地局NodeB内に設けられていてもよい。
【0117】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおける無線基地局の機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局におけるインナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRの設定方法を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局におけるインナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRの設定方法を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局においてインナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRを設定する動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局においてインナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRを設定する動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおいて、目標HARQ再送回数及び目標残留BLERを変更することによって、スループット及び無線基地局の受信品質を適応的に制御することができる概念を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局において目標HARQ再送回数及び目標残留BLERを調整する動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局において、SGが低グループに属する場合に、目標HARQ再送回数及び目標残留BLERを調整する動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局において、SGが高グループに属する場合に、目標HARQ再送回数及び目標残留BLERを調整する動作を説明するための図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局において、SGが「Zero Grant」である場合に、目標HARQ再送回数及び目標残留BLERを調整する動作を説明するフローチャートである。
【図11】従来のEUL方式が採用されている移動通信システムで用いられる無線基地局について説明するための図である。
【図12】従来のEUL方式が採用されている移動通信システムにおいて上りユーザデータの伝送速度を制御する動作を示すシーケンス図である。
【図13】従来のEUL方式が採用されている無線基地局においてインナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRを設定する動作を示すフローチャートである。
【図14】従来のEUL方式が採用されている無線基地局におけるインナーループ送信電力制御で用いられる目標SIRの設定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0119】
NodeB…無線基地局
10…スケジューラ
20…アウターループ送信電力制御部
21…目標HARQ送信回数・目標残留BLER決定部
22…目標SIR決定部
30…HARQ制御部
40…インナーループ送信電力制御部
UE…移動局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局が、無線基地局によって通知された許可値に対応する送信レートで、上りパケットを送信する移動通信方法であって、
前記移動局と前記無線基地局との間の前記上りパケットの通信に対してHARQ再送制御が用いられており、
前記許可値は、前記上りパケットを送信する高速個別物理データチャネルにおける送信電力と上り個別物理制御チャネルにおける送信電力との比であり、
前記無線基地局が、目標受信品質を用いたインナーループ送信電力制御によって、前記上り個別制御チャネルにおける送信電力を制御する工程と、
前記移動局が、前記許可値及び前記上り個別制御チャネルにおける送信電力に基づいて決定される前記高速個別物理データチャネルにおける送信電力で、前記上りパケットを送信する工程と、
前記無線基地局が、前記移動局による前記上りパケットの送信が前記HARQ再送制御の何回目の送信であるのかについて示すHARQ送信回数及び該HARQ送信回数における該上りパケットの受信結果を用いたアウターループ送信電力制御によって、前記目標受信品質を決定する工程とを有することを特徴とする移動通信方法。
【請求項2】
移動局が、無線基地局によって通知された許可値に対応する送信レートで、上りパケットを送信するように構成されている移動通信システムであって、
前記移動局と前記無線基地局との間の前記上りパケットの通信に対してHARQ再送制御が用いられており、
前記許可値は、前記上りパケットを送信する高速個別物理データチャネルにおける送信電力と上り個別物理制御チャネルにおける送信電力との比であり、
前記無線基地局は、
目標受信品質を用いたインナーループ送信電力制御によって、前記上り個別制御チャネルにおける送信電力を制御するように構成されているインナーループ送信電力制御部と、
前記移動局による前記上りパケットの送信が前記HARQ再送制御の何回目の送信であるのかについて示すHARQ送信回数及び該HARQ送信回数における該上りパケットの受信結果を用いたアウターループ送信電力制御によって、前記目標受信品質を決定するように構成されているアウターループ送信電力制御部とを具備し、
前記移動局は、前記許可値及び前記上り個別制御チャネルにおける送信電力に基づいて決定される前記高速個別物理データチャネルにおける送信電力で、前記上りパケットを送信するように構成されていることを特徴とする移動通信システム。
【請求項3】
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以上であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定増加幅だけ増加させるように構成されており、
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数未満であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の移動通信システム。
【請求項4】
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以下であり、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定減少幅だけ減少させるように構成されており、
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数より大きく、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記アウターループ送信電力制御部は、各サブフレームにおいて、前記高速個別物理データチャネルに対応する高速個別物理制御チャネルにおける制御情報の受信に失敗した場合、前記目標受信品質を変更しないように構成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の移動通信システム。
【請求項6】
前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標HARQ送信回数、及び、前記移動局によって送信された全てのパケットのうち、該目標HARQ送信回数だけ送信された場合に前記無線基地局において受信に失敗しているパケットの割合を示す目標残留誤り率に基づいて、前記目標受信品質を決定するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の移動通信システム。
【請求項7】
前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、最低補償受信成功レートと前記移動局におけるHARQアクティブプロセス数とサブフレーム単位の上りパケットのサイズとサブフレーム長に応じて、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを決定するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の移動通信システム。
【請求項8】
前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも大きく、高グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを用いるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の移動通信システム。
【請求項9】
前記無線基地局によって通知された許可値が、高グループ用閾値よりも大きい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定期間ごとに、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを変更するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の移動通信システム。
【請求項10】
前記無線基地局によって通知された許可値が前記高速個別物理データチャネルの送信停止を要求している場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の目標受信品質を用いるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の移動通信システム。
【請求項11】
移動局が、無線基地局によって通知された許可値に対応する送信レートで、上りパケットを送信するように構成されている移動通信システムで用いられる無線基地局であって、
前記移動局と前記無線基地局との間の前記上りパケットの通信に対してHARQ再送制御が用いられており、
前記許可値は、前記上りパケットを送信する高速個別物理データチャネルにおける送信電力と上り個別物理制御チャネルにおける送信電力との比であり、
前記移動局は、前記許可値及び前記上り個別制御チャネルにおける送信電力に基づいて決定される前記高速個別物理データチャネルにおける送信電力で、前記上りパケットを送信するように構成されており、
目標受信品質を用いたインナーループ送信電力制御によって、前記上り個別制御チャネルにおける送信電力を制御するように構成されているインナーループ送信電力制御部と、
前記移動局による前記上りパケットの送信が前記HARQ再送制御の何回目の送信であるのかについて示すHARQ送信回数及び該HARQ送信回数における該上りパケットの受信結果を用いたアウターループ送信電力制御によって、前記目標受信品質を決定するように構成されているアウターループ送信電力制御部とを具備することを特徴とする無線基地局。
【請求項12】
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以上であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定増加幅だけ増加させるように構成されており、
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数未満であり、かつ、前記受信結果が受信に失敗した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の無線基地局。
【請求項13】
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が目標HARQ送信回数以下であり、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を所定減少幅だけ減少させるように構成されており、
各サブフレームにおいて、上りパケットについて、前記HARQ送信回数が前記目標HARQ送信回数より大きく、かつ、前記受信結果が受信に成功した旨を示す場合、前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標受信品質を変更しないように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の無線基地局。
【請求項14】
前記アウターループ送信電力制御部は、各サブフレームにおいて、前記高速個別物理データチャネルに対応する高速個別物理制御チャネルにおける制御情報の受信に失敗した場合、前記目標受信品質を変更しないように構成されていることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の無線基地局。
【請求項15】
前記アウターループ送信電力制御部は、前記目標HARQ送信回数、及び、前記移動局によって送信された全てのパケットのうち、該目標HARQ送信回数だけ送信された場合に前記無線基地局において受信に失敗しているパケットの割合を示す目標残留誤り率に基づいて、前記目標受信品質を決定するように構成されていることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の無線基地局。
【請求項16】
前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、最低補償受信成功レートと前記移動局におけるHARQアクティブプロセス数とサブフレーム単位の上りパケットのサイズとサブフレーム長に応じて、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを決定するように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の無線基地局。
【請求項17】
前記無線基地局によって通知された許可値が、低グループ用閾値よりも大きく、高グループ用閾値よりも小さい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを用いるように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の無線基地局。
【請求項18】
前記無線基地局によって通知された許可値が、高グループ用閾値よりも大きい場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定期間ごとに、前記目標HARQ送信回数と前記目標残留誤り率との組み合わせを変更するように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の無線基地局。
【請求項19】
前記無線基地局によって通知された許可値が前記高速個別物理データチャネルの送信停止を要求している場合、前記アウターループ送信電力制御部は、所定の目標受信品質を用いるように構成されていることを特徴とする請求項15に記載の無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−188955(P2009−188955A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29727(P2008−29727)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】