説明

移相回路

【課題】入力信号の周波数に依存せずに入力信号に対して所定の位相差を有する出力信号を生成する。
【解決手段】VDDから定電流を供給する定電流回路201aと、入力電流に対してn倍の出力電流を流すカレントミラー回路204a、205aと、矩形波の入力信号1Aaの論理レベルによって定電流回路に流れる電流をカレントミラー回路に流すか、出力端子1Baに流すか切り替えるスイッチ回路202a、203aとを備えた波形生成回路102aにより、立ち上がり勾配1に対してn倍の立ち下がり勾配波形を有する三角波を生成する。これと反転信号1Abを入力した波形生成回路102bにより生成した三角波の電圧をコンパレータ103で比較し出力信号を生成する。入力信号のデューティー比が50%である場合には、1/(2+2n)周期遅延した出力信号が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移相回路に関する、特に、矩形波の入力信号の位相を所定量ずらして出力する移相回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通信分野において信号の復調を行うときや、コンピュータで多相クロックを生成する場合など、様々な分野で、周期的なクロック信号を入力し、所定量位相をずらしたクロック信号を出力する移相回路がよく用いられる。
【0003】
図5は、特許文献1に記載されている従来の移相回路のブロック図である。この回路では、定電流回路18a、18bで、コンデンサ16a、16bを充電し、コンパレータ14a、14bによって、充電した電位が、基準電源20a、20bの電位を超えるまで、入力信号A、A’を遅延させることで、入力信号の位相を所定時間ずらして出力しようというものである。
【0004】
また、特許文献2には、一対の差動対のゲートに相補信号を入力し、差動対のドレイン間に抵抗と容量を接続して一対の相補形三角波を出力し、コンパレータで波形整形することにより入力クロック信号に対して90度遅延した出力クロック信号を得る移相回路が記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、クロスポイントずれを補正する差動出力バッファが記載されている。
【特許文献1】特開2001−345677号公報
【特許文献2】特表平11−505987号公報
【特許文献3】特開2001−177391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移相回路の用途によっては、入力信号の周波数によらず、入力信号と出力信号との位相差を所望の値に設定する必要がある場合がある。たとえば、ジャイロセンサ用の信号処理回路では、振動子が固有の周波数で振動することによって得られる一定周波数の位相をずらして出力するために移相回路が用いられる。移相回路によってずらす位相の量、すなわち移相量は、ジャイロセンサの感度に影響を及ぼすため、振動子に応じた最適な移相量が必要となる。また、振動子の振動周波数には、個体差があり、その個体差は移相回路に対する入力信号の周波数のばらつきになる。
【0007】
上記特許文献1に記載の移相回路では、入力信号の周波数に移相量が依存してしまう。また、特許文献2に記載の移相回路では、移相量が90度の他には設定できない。入力信号の周波数に依存せずに、移相量を自在に設定できる移相回路が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係る移相回路は、第一の信号を入力して第一の波形を出力する第一の波形生成回路と、前記第一の信号の反転信号を入力して第二の波形を出力する第二の波形生成回路と、前記第一の波形と第二の波形とを入力して前記第一の信号に対して所定の位相差を有する信号を出力するコンパレータと、を有する移相回路であって、前記第一、第二の波形生成回路が、第一の電源に接続された定電流回路と、出口が出力端子に接続され、入口と第二の電源との間に流れる電流のn倍(nは1以上の実数)の電流を出口と第二の電源との間に流すカレントミラー回路と、波形生成回路への入力信号が第一のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を出力端子に流し、前記入力信号が第二のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を前記入口に流すスイッチ回路と、前記出力端子と固定電位との間に接続された容量と、を含む波形生成回路であり、前記所定の位相差が前記カレントミラー回路のnの値に依存する位相差である。
【0009】
また、本発明の他のアスペクトに係る移相回路は、第一の信号を入力し、前記第一の信号が第一のレベルのときに第一の電圧から第一の勾配で上昇または下降し、前記第一の信号が前記第一のレベルから第二のレベルに変化すると前記上昇または下降した頂点から前記第一の勾配のn倍(nは1以上の実数)の第二の勾配で前記第一の電圧まで下降または上昇する第一の波形を出力する第一の波形生成回路と、前記第一の信号の反転信号を入力し、前記第一の信号が前記第二のレベルのときに前記第一の電圧から前記第一の勾配と実質同等の勾配で上昇または下降し、前記第一の信号が前記第二のレベルから第一のレベルに変化するとその上昇または下降した頂点から前記第二の勾配と実質同一の勾配で前記第一の電圧まで下降または上昇する第一の波形を出力する第二の波形生成回路と、前記第一の波形と第二の波形とを入力して前記第二の信号に対して前記nの値に依存する位相差を有する信号を出力するコンパレータと、を含む。
【0010】
本発明のさらに他のアスペクトに係る波形生成回路は、矩形波を入力し、立ち上がり勾配と立ち下り勾配とが一定の比率を有する擬似三角波または擬似台形波を生成する波形生成回路であって、第一の電源に接続された定電流回路と、出口が出力端子に接続され、入口と第二の電源との間に流れる電流のn倍(nは正の実数)の電流を出口と第二の電源との間に流すカレントミラー回路と、入力信号が第一のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を出力端子に流し、前記入力信号が第二のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を前記入口に流すスイッチ回路と、前記出力端子と固定電位との間に接続された容量と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力信号の周波数に依存せずに、入力信号と出力信号との位相差を自在に設定できる移相回路が得られる。また、本発明によれば、立ち上がり勾配と立ち下り勾配が一定の比率を有する擬似三角波または擬似台形波を生成する波形生成回路が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1、図2に示すように、本発明の一実施形態の移相回路は、第一の信号(1Aa)を入力して第一の波形(1Ba)を出力する第一の波形生成回路(102a)と、上記第一の信号の反転信号(1Ab)を入力して第二の波形(1Bb)を出力する第二の波形生成回路(102b)と、上記第一の波形と第二の波形とを入力して上記第一の信号に対して所定の位相差を有する信号(1C)を出力するコンパレータ(103)と、を備えている。また、上記第一及び第二の波形生成回路が、それぞれ、第一の電源(VDD)に接続された定電流回路(201a、201b)と、出口が出力端子(208a、208b)に接続され、入口と第二の電源(VSS)との間に流れる電流のn倍(nは1以上の実数)の電流を出口と第二の電源との間に流すカレントミラー回路(204a、205a、204b、205b)と、波形生成回路への入力信号(1Aa、1Ab)が第一のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を出力端子に流し、前記入力信号が第二のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を上記入口に流すスイッチ回路(202a、203a、202b、203b)と、上記出力端子と固定電位との間に接続された容量(207a、207b)と、を含む波形生成回路である。そして、上記コンパレータが出力する信号の上記所定の位相差が前記カレントミラー回路のnの値に依存する位相差である。
【0013】
すなわち、上記波形生成回路によれば、入力信号が第一のレベルのときには、定電流を第一の電源と出力端子との間に流し、入力信号が第二のレベルのときには、上記定電流のn倍の定電流を出力端子と第二の電源との間に流すことになる。したがって、入力信号が第一のレベルのときは、出力端子は、第二の電源から一定の勾配で上昇(下降)し、入力信号が、第一のレベルから第二のレベルに変わると上記一定の勾配で上昇(下降)した頂点(Vmax)から上記一定の勾配に対してn倍の勾配で第二の電圧に向けて下降(上昇)することになる。第一の波形生成回路が出力する第一の波形と第二の波形生成回路が出力する第二の波形では、上昇と下降のタイミングが逆なので、第一の波形と第二の波形は上昇、下降の勾配と、頂点の高さ(Vmax)に依存した時間だけ入力信号から遅れて交差することになる。入力信号の周波数が低ければ頂点の高さ(Vmax)は高くなり、入力信号のレベルが変わってから第一の波形と第二の波形が交差するまでの時間は長くなるが、入力信号の周波数は変わっても上昇、下降の勾配は変わらないので、入力信号の周波数が変わっても、移相回路の出力する位相の遅れの角度は変わらない。また、カレントミラー回路の入力電流に対する出力電流の比率nを変えることにより、移相回路の移相量を自在に変えることができる。
【0014】
また、波形生成回路は、定電流回路に流れる電流に基づいて波形を生成しているので、波形の上昇、下降の勾配を一定にすることができる。また、カレントミラー回路を用いているので、カレントミラー回路の電流比を変えることにより上昇と下降の勾配の比率を自在に変更することができる。さらに、スイッチ回路を用いているので、入力信号の変化に同期した波形を生成することができる。
【0015】
なお、第一の電源と第二の電源のどちらを高電位の電源とするかによって、第一の波形と第二の波形の上昇と下降は逆になる。
【0016】
以下、実施例に即し、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、実施例1の移相回路のブロック図である。移相回路は、第1の波形生成回路102aと、第2の波形生成回路102bと、コンパレータ103を備えている。第1の波形生成回路102aには、移相回路全体に対する入力信号である第1の信号1Aaがそのまま入力される。また、第1の信号1Aaは、インバータ101にも入力され、インバータ101で反転されて第2の波形生成回路102bに入力される。第1の波形生成回路102aから出力される第1の波形信号1Baは、コンパレータ103のプラス入力端子に接続され、第2の波形生成回路102bから出力される第2の波形信号1Bbは、コンパレータ103のマイナス入力端子に接続される。コンパレータ103からは、第1の信号1Aaに対して一定の位相差を有する出力信号1Cが出力される。
【0018】
次に、波形生成回路102a、102bの内部の構成について説明する。第2の波形生成回路102bは、第1の波形生成回路102aと構成が同一であるので、第1の波形生成回路102aについて代表して説明する。波形生成回路102aは、定電流回路201aと、Pチャネル型MOSトランジスタ202aとPチャネル型MOSトランジスタ203aとで構成されるスイッチ回路と、Nチャネル型MOSトランジスタ204aとNチャネル型MOSトランジスタ205aとで構成されるカレントミラー回路と、コンデンサ207aと、を備えている。
【0019】
定電流回路201aは、第1の電源VDDと、スイッチ回路202a、203aとの間に接続され、第1の電源から定電流をスイッチ回路に流す。スイッチ回路を構成するPチャネル型MOSトランジスタ202aは、ドレイン・ソースの一方がカレントミラー回路を構成するNチャネル型MOSトランジスタ204aのドレインに接続され、他方が定電流回路201aに接続される。Pチャネル型MOSトランジスタ202aのゲートには第1の信号1Aaが接続される。Pチャネル型MOSトランジスタ203aは、ドレイン・ソースの一方が波形生成回路の出力端子208aに接続され、他方が定電流回路201aに接続される。Pチャネル型MOSトランジスタ203aのゲートは、基準電源206aに接続される。
【0020】
また、カレントミラー回路のNチャネル型MOSトランジスタ204aのソースは、第2の電源VSSに接続され、ゲートとドレインは、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのゲートにも接続される。Nチャネル型MOSトランジスタ205aのソースは、第2の電源VSSに接続され、ドレインは、波形生成回路の出力端子208aに接続される。コンデンサ207aの一端は、第2の電源VSSに接続される。コンデンサ207aの他端は、波形生成回路の出力端子208aと、Pチャネル型MOSトランジスタ203aのドレイン・ソースの一方と、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインに接続される。Nチャネル型MOSトランジスタ204aのドレインとゲートがカレントミラー回路の電流の入口になり、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインが電流の出口となる。
【0021】
図2は、実施例1の移相回路のタイミングチャートである。図1と図2を用いて、実施例1の移相回路の動作について説明する。
【0022】
図2において1Aaで示される第1の信号1Aaと、第1の信号の反転信号1Abとは、共に周期的にハイとローが繰り返される矩形波信号である。反転信号1Abは、第1の信号1Aaと180度位相が異なる逆相の入力信号である。波形生成回路である102aと102bは、同一構成であるので基本的に動作も同じであるが、入力信号の位相の違いにより、180度位相が異なった動作をする。波形生成回路102a及び102bの動作説明として、波形生成回路102aを用いて説明する。
【0023】
第1の信号1Aaは、ゲートが基準電源206aに接続されたPチャネル型MOSトランジスタ203aと、ソース同士が短絡されて、差動対をなすPチャネル型MOSトランジスタ202aのゲートに供給されるため、第1の信号1Aaの電位が基準電源206aの電位よりも高い場合には、Pチャネル型MOSトランジスタ202aはオフし、Pチャネル型MOSトランジスタ203aはオンする。第1の信号1Aaの電位が基準電源206aの電位よりも低い場合には、Pチャネル型MOSトランジスタ202aはオンし、Pチャネル型MOSトランジスタ203aはオフする。すなわち、この差動対をなすPチャネル型MOSトランジスタ203aとPチャネル型MOSトランジスタ202aは、第1の信号1Aaによってオンオフするスイッチ回路として機能する。なお、基準電源206aがPチャネル型MOSトランジスタ203aのゲートに供給する電位は、第1の信号1Aaのハイの電位とローの電位との1/2の電位である。
【0024】
Pチャネル型MOSトランジスタ202aとPチャネル型MOSトランジスタ203aのソースはともに定電流回路201aに接続されているため、Pチャネル型MOSトランジスタ202aがオンすると、Pチャネル型MOSトランジスタ202aのソースからドレインに定電流回路201aの電流が流れる。Pチャネル型MOSトランジスタ203aがオンすると、Pチャネル型MOSトランジスタ203aのソースからドレインに定電流回路201aの電流が流れる。
【0025】
さらに、Pチャネル型MOSトランジスタ202aがオンしているときは、Nチャネル型MOSトランジスタ204aのドレインからソースに定電流回路201aの電流が流れる。Nチャネル型MOSトランジスタ204aとNチャネル型MOSトランジスタ205aとはチャネル型が同一で特性も同じトランジスタ素子で構成されたカレントミラー回路である。したがって、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインからソースには、Nチャネル型MOSトランジスタ204aのドレインからソースに流れる電流に、Nチャネル型MOSトランジスタ204aとNチャネル型MOSトランジスタ205aとのサイズの比率を乗じた電流が流れる。ここでは、Nチャネル型MOSトランジスタ204aとNチャネル型MOSトランジスタ205aとのサイズの比率は1対n(nは1以上の実数)とし、Nチャネル型MOSトランジスタ205aにはNチャネル型MOSトランジスタ204aに流れる電流のn倍が流れるものとする。
【0026】
つまり、Pチャネル型MOSトランジスタ202aがオンしているときは、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインからソースには、定電流回路201aに流れる電流のn倍が流れる。ただし、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電位が第2の電源VSSと同電位である場合には電流は流れない。また、Pチャネル型MOSトランジスタ203aがオンしているときは、Pチャネル型MOSトランジスタ202aがオフしており、Nチャネル型MOSトランジスタ204aに電流が流れないため、Nチャネル型MOSトランジスタ205aはオフし電流は流れない。
【0027】
次に、コンデンサ207aが接続されたNチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電位について説明する。第1の信号1Aaがローレベルである期間は、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電流によって、コンデンサ207aは放電される。第1の信号1Aaがハイレベルに変わるまでには、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電位は、基準の電位となる第2の電源VSSと同電位にあるものとする。
【0028】
そのときに、時刻t0で第1の信号1Aaがハイレベルに変わると、Pチャネル型MOSトランジスタ203aのドレイン電流、つまり、定電流回路201aに流れる一定の電流によって、コンデンサ207aは充電される。このとき、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電位は一定の勾配で、第1の信号1Aaのハイの期間が終了する時刻t2まで上昇する。
【0029】
次に第1の信号1Aaがローの期間となると、先ほどの時刻t2に得られたNチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電位から、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電流、つまり、定電流回路201aが流す電流のn倍の一定電流によって、コンデンサ207aは放電される。このとき、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電位は、第1の信号1Aaがハイの期間にPチャネル型MOSトランジスタ203aのドレインの電流による充電によって上昇する時のn倍の勾配で、第2の電源VSSの電位まで下降する。
【0030】
従って、Nチャネル型MOSトランジスタ205aのドレインの電位は、第1の信号1Aaのハイとローに合わせて上昇と下降を繰り返し、図2において第1の波形1Baに示す鋸波(三角波)状の波形となる。
【0031】
すなわち、波形生成回路102aは、第1の信号1Aaを入力して、第1の波形1Baを出力端子208aから出力し、コンパレータ103のプラス入力端子に供給する。一方、波形生成回路102bは、第1の信号1Aaとは180度位相がずれた第1の信号の反転信号1Abを入力して、第1の波形1Baとは180度位相がずれた、第2の波形1Bbを出力端子208bから出力し、コンパレータ103のマイナス入力端子に供給する。
【0032】
コンパレータ103は、プラス入力端子とマイナス入力端子に入力される互いに180度位相がずれた2つの鋸波状の信号を比較し、出力信号1Cを出力する。出力信号1Cは、第1の波形1Baの電位が第2の波形1Bbの電位より高いときにハイレベルとなり、第1の波形1Baの電位が第2の波形1Bbの電位より低いときにローレベルとなる。第1の波形1Baの電位と第2の波形1Bbの電位との高低が入れ替わる交点は、第1の信号1Aaの立ち上がり、または、立ち下がりに対して遅延するため、コンパレータ103から得られる出力信号1Cは、第1の信号1Aaに対して遅延した信号となる。
【0033】
出力信号1Cが第1の信号1Aaに対して遅延する時間は、第1の信号1Aaの立ち下がりから出力信号1Cの立ち下がりまでの時間td1、及び、第1の信号1Aaの立ち上がりから、出力信号1Cの立ち上がりまでの時間td2である。この遅延する時間は、第1の信号1Aaの立ち上がり、または立ち下がりから、第1の波形1Baの電位と第2の波形1Bbの電位とが同電位になり、交差するまでの時間である。
【0034】
第1の波形1Baの電位は、第1の信号1Aaが立ち上がると同時に、第2の電源VSSの電位から一定の勾配で上昇を開始する。第1の波形1Baの電位は、第1の信号1Aaがハイレベルである期間はずっと一定の勾配で上昇し続けるため、第1の信号1Aaが立ち下がる直前には、第1の信号1Aaハイレベルである期間の長さと上昇の勾配で決まる電位になっている。ここでは、第1の信号1Aaがハイレベルである期間には、第1の波形1Baの電位は、第1の電源VDDの電位までには達しないものとする。次に、第1の信号1Aaが立ち下がると同時に第1の波形1Baは上昇した頂点の電位から一定の勾配で下降を開始する。その頂点の電位をVmax(Vmax≦VDD)として、第1の信号1Aaがハイレベルの期間をtw1、波形生成回路102aにおける定電流回路201aに流れる電流をI、コンデンサ207aの容量値をCapとすると、Vmaxは式(1)で表される。
Vmax=I・tw1/Cap ・・・・・式(1)
【0035】
次に、第1の信号1Aaの立ち下がりからの経過時間をtd1とし、第1の波形1Baの電位をVfとして、また、波形生成回路102aにおいて、コンデンサ207aの放電を行うNチャネル型MOSトランジスタ205aのドレイン電流はすでに説明したように定電流回路201aに流れる電流のn倍となるので、上記Vmaxの関係式を用いると、Vfは式(2)で表される。
Vf=Vmax−n・I・td1/Cap ・・・・・式(2)
【0036】
さらに、上記のVmaxの式(1)を式(2)に代入すると式(3)で表される。
Vf={(tw1−n・td1)・I}/Cap ・・・・・式(3)
【0037】
第2の波形1Bbの電位をVrとして、波形生成回路102aと波形生成回路102bが同一構成であることより、波形生成回路102bにおける定電流回路201bの電流もIとし、コンデンサ207bの容量値もCapとすると、Vrは式(4)で表される。
Vr=I・td1/Cap ・・・・・式(4)
【0038】
時刻t2から第1の波形1Baの電位Vfと第2の波形1Bbの電位Vrとが同電位となるまでの経過時間td1は、前記のVfとVrを表す式(3)、(4)に、
Vf=Vr ・・・・・式(5)
の関係を用いると、
{(tw1−n・td1)・I}/Cap=I・td1/Cap・・・・・式(6)
となる。これを整理すると、時間td1は、以下の式(7)で求められる。
td1=tw1/(1+n) ・・・・・式(7)
【0039】
すなわち、第1の信号1Aaの立ち下がりから、立ち下がりの直前のハイレベルの期間tw1の1/(1+n)の時間経過後に、第1の波形1Baの電位と第2の波形1Bbの電位とが同電位となり、コンパレータ103の出力である出力信号1Cはハイからローに立ち下がることとなる。
【0040】
同様に、第1の信号1Aaの立ち上がり(時刻t4)から、第1の波形1Baの電位と第2の波形1Bbの電位とが同電位になるまで(時刻t5)の時間td2も求められる。すなわち、td1を求めたときに対して、波形生成回路102aの入力である第1の信号1Aaの立ち上がりと立ち下がりと出力である第1の波形1Baの上昇と下降とを、波形生成回路102bの入力である第1の信号の反転信号1Abの立ち上がりと立ち下がりと出力である第2の波形1Bbの上昇と下降と、互いに置き換えて考えることができる。
【0041】
ここで、第1の信号1Aaが立ち上がる直前のローの期間をtw2とすると、td2は式(8)で表される。
td2=tw2/(1+n) ・・・・・式(8)
【0042】
すなわち、第1の信号1Aaの立ち上がる時刻t4から、立ち上がりの直前のローレベルの期間tw2の1/(1+n)の時間経過後の時刻t5に、第1の波形1Baの電位と第2の波形1Bbの電位とが同電位となり、コンパレータ103の出力である出力信号1Cはローからハイに立ち上がることとなる。
【0043】
以上まとめると、出力信号1Cの立ち上がりは、第1の信号1Aaの立ち上がりから、立ち上がりの直前に1Aaがローレベルである期間tw2の1/(1+n)の時間だけ遅延する。また、出力信号1Cの立ち下がりは、第1の信号1Aaの立ち下がりから、立ち下がり直前に1Aaがハイレベルである期間tw1の1/(1+n)の時間だけ遅延する。tw1とtw2とは第1の信号1Aaがハイレベルを継続する時間とローレベルを継続する時間であるので、第1の信号1Aaのデューティー比が50%の場合には、tw1とtw2とは等しくなる。したがって、第1の信号1Aaの1周期をT1とすると、tw1とtw2は以下の式(9)の関係となる。
tw1=tw2=T1/2 ・・・・・式(9)
【0044】
式(7)に式(9)を代入すると、式(7)は式(10)となる。
td1=T1/{(1+n)・2} ・・・・・式(10)
【0045】
また、式(8)に式(9)を代入すると、式(8)は式(11)となる。
td2=T1/{(1+n)・2} ・・・・・式(11)
【0046】
すなわち、第1の信号1Aaのデューティー比が50%の場合には、第1の信号1Aaの立ち上がりから、出力信号1Cの立ち上がりまでの経過時間td1と、第1の信号1Aaの立ち下がりから、出力信号1Cの立ち下がりまでの経過時間td2とは等しくなる。そこで、td1とtd2を、第1の信号1Aaに対する出力信号1Cの遅延時間tdとすれば、式(10)もしくは式(11)より、tdは式(12)で表される。
td=T1/{(1+n)・2} ・・・・・式(12)
【0047】
すなわち、第1の信号1Aaのデューティー比が50%の場合には、第1の信号1Aaに対する出力信号1Cの遅延時間は、第1の信号1Aaの1周期の1/{(1+n)・2}となる。
【0048】
前述のとおり、式(12)のnは、波形生成回路102aにおいてカレントミラー回路を構成するNチャネル型MOSトランジスタ204aとNチャネル型MOSトランジスタ205aとのサイズの比率であり、また、波形生成回路102bにおいてカレントミラー回路を構成するNチャネル型MOSトランジスタ204bとNチャネル型MOSトランジスタ205bとのサイズの比率である。したがって、nの値は、設計時に任意の値に設定できる。よって、定電流回路やカレントミラー回路が理想的な回路であって、2つの波形生成回路の特性が同一であれば、第1の信号1Aaに対する出力信号1Cの遅延時間tdは、上記式(12)に示すように、第1の信号1Aaの1周期T1に対してカレントミラー回路のサイズ比nのみに依存する一定の比率の時間となる。
【0049】
また、式(12)のnは任意に設定することができるため、所望の位相差を得ることが可能である。例えば、nを3とした場合には、式(12)より、出力信号1Cは、第1の信号1Aaに対して、第1の信号1Aaの1周期の1/8だけ遅延した信号が得られ、移相量は45度となる。ただし、第1の波形1Baおよび第2の波形1Bbの電位は、上昇を開始するまでに、下降によって第2の電源VSSの電位に到達する必要があるため、設定可能なnは1以上の実数に限られる。したがって、式(12)より実施例1の移相回路によって得られる入力信号と出力信号との位相差は、0〜1/4周期の範囲となる。
【0050】
なお、式(12)には、波形生成回路102aおよび波形生成回路102bにおける、定電流回路201aおよび定電流回路201bの電流値I、ならびにコンデンサ207aおよびコンデンサ207bの容量値Capの項はない。ただし、定電流回路201aの電流値と定電流回路201bの電流値とを等しいとし、コンデンサ207aの容量値とコンデンサ207bの容量値とを等しいとした場合である。よって、定電流回路201aと定電流回路201bとに電流値が等しく相対値が一定の定電流回路を使用し、コンデンサ207aとコンデンサ207bとに容量値が等しく相対値が一定のコンデンサを使用すれば、定電流回路201aおよび定電流回路201bの電流値、ならびにコンデンサ207aおよびコンデンサ207bの容量値は、出力信号1Cの遅延時間tdには影響しない。
【0051】
また、式(12)のnは、波形生成回路102aにおいてカレントミラー回路を構成するNチャネル型MOSトランジスタ204aとNチャネル型MOSトランジスタ205aとのサイズの比率であり、また、波形生成回路102bにおいてカレントミラー回路を構成するNチャネル型MOSトランジスタ204bとNチャネル型MOSトランジスタ205bとのサイズの比率であり、カレントミラー回路の入力電流と出力電流の比率である。
【0052】
一般に、カレントミラー回路の、入力電流と出力電流の比率は、各トランジスタの特性の相対値で決まる。したがって、Nチャネル型MOSトランジスタ204aとNチャネル型MOSトランジスタ205aとNチャネル型MOSトランジスタ204bとNチャネル型MOSトランジスタ205bとに特性の相対値が一定のトランジスタを使用すれば、nは一定となり、出力信号1Cの遅延時間tdと、第1の信号1Aaの1周期T1との比率は一定となる。
【0053】
移相回路において、入力信号に対する出力信号の遅延時間が入力信号の1周期に対し一定の比率の時間であれば、入力信号の周波数が変化しても、ずらす位相の量、即ち移相量は変わらない。その理由は、周期的な信号の、周波数と1周期の時間と位相値とその位相値が表す時間とには次の関係があるからである。
時間tと、周期的な信号の位相値θと、周期的な信号の周期Tとの関係は式(13)で表される。
θ=t/(T/360)=360・t/T ・・・・・式(13)
なお、周期的な信号の周期Tと周波数fとの関係は式(14)で表される。
T=1/f ・・・・・式(14)
【0054】
すなわち、周期的な信号において、周波数fが変化すると、式(14)の関係により周期Tも変化するが、周期Tが変化しても、それに応じて時間tも変化して、時間tと周期Tとの比率が一定であれば、位相値θは一定となる関係を式(13)は表している。
【0055】
上述したように実施例1によれば、移相回路に入力される第1の信号のデューティー比が50パーセントであれば、第1の信号の周波数によらず、第1の信号に対してあらかじめ設定した位相差を持った信号を出力する移相回路が得られる。この移相回路の位相差はカレントミラー回路の電流比nによって設定することができる。
【0056】
なお、上記実施例1は様々に変形、応用することができる。たとえば、実施例1では、波形生成回路の第1の電源VDDは第2の電源VSSより高い電圧であったが、逆に第1の電源の電圧を第2の電源より低い電圧にすることもできる。この場合は、第1の信号1Aaのハイレベルとローレベル、電流の流れる向きをすべて逆にして、波形の上昇と下降を逆にすればよい。このとき、スイッチ回路、カレントミラー回路に用いるMOSトランジスタの導電型も逆にする必要がある。
【0057】
また、実施例1では、好適な実施例として波形生成回路をMOSトランジスタで構成した実施例を説明したが、カレントミラー回路や、スイッチ回路が所定の機能を果たせば、バイポーラトランジスタ等MOSトランジスタ以外の他の機能素子を用いて、カレントミラー回路、スイッチ回路を構成することもできる。
【0058】
さらに、実施例1では、スイッチ回路に差動対を用いる例を説明したが、入力信号に応答して、定電流をカレントミラー回路に流すか、出力端子に流すか切り替えるスイッチ回路であれば、他の構成のスイッチ回路を用いてもよいことはいうまでもない。また、実施例1では、コンデンサ207a、207bの一端が、第2の電源VSSに接続されていたが、第2の電源VSSでなくとも、固定電位であればよいことは言うまでもない。
【実施例2】
【0059】
図3は、実施例2の移相回路のブロック図である。実施例1では、理想的な移相量を得るためには、入力される第1の信号のデューティー比が50パーセントである必要があった。実施例2では、この制限のない移相回路を示す。図3の移相回路全体は、分周回路401a、401bと、インバータ400と、移相回路402a、402bと、排他的論理和(XOR)回路403と、を含んで構成される。
【0060】
入力信号4Aaは、分周回路401aの入力端子とインバータ400の入力端子に接続される。分周回路401aの出力端子は、移相回路402aの入力端子に接続される。移相回路402aの出力端子は排他的論理和(XOR)回路403の一方の入力端子に接続される。インバータ400の出力端子は、分周回路401bの入力端子に接続され、分周回路401bの出力端子は、移相回路402bの入力端子に接続される。移相回路402bの出力端子は、排他的論理和(XOR)回路403の他方の入力端子に接続される。排他的論理和(XOR)回路403の出力端子からは、入力信号4Aaに対して所定の位相差を持った出力信号が得られる。なお、移相回路402a、402bは、図1に示す実施例1の移相回路である。
【0061】
図4は、実施例2の移相回路のタイミングチャートである。図3のブロック図と共に、図4も用いて、実施例2の移相回路の動作について説明する。図4において実施例2の移相回路に対する入力信号となる第2の信号4Aaと、その反転信号4Abとは、周期的にハイとローが繰り返される矩形波の信号であり、互いに逆相、すなわち180度位相が異なるだけの信号である。
【0062】
分周回路401aは、第2の信号4Aaを入力し、第2の信号4Aaの立ち上がり毎に、反転する分周信号4Baを出力する。すなわち、分周信号4Baは、第2の信号4Aaをその立ち上がりに同期して2分周した信号になる。ここで、分周回路の入力信号4Aaに対する出力信号4Baの周期は2倍になるが、周波数は1/2となる。第2の信号4Aaを2分周することにより、第2の信号4Aaが一定の周期であれば、そのデューティー比によらず、分周信号4Baのデューティー比は50%となる。
【0063】
分周信号4Baのデューティー比が50%であるので、図1に示す実施例1の移相回路と同一な構成である移相回路402aは、分周信号4Baを受け、実施例1で説明したとおり、分周信号4Baに対して一定の位相差を持つ移相回路出力信号4Caを出力する。
【0064】
また、分周回路401bは、第2の信号4Aaの反転信号4Abを受け、反転信号4Abの立ち上がり毎に反転する分周信号4Bbを出力する。すなわち、分周信号4Bbは、第2の信号4Aaをその立ち下がりに同期して2分周した信号になる。分周信号4Bbもデューティー比が50%の信号になるので、移相回路402aと同一の回路である移相回路402bは、移相回路402aと同様に、分周信号4Bbに対して一定の位相差を持つ移相回路出力信号4Cbを出力する。
【0065】
排他的論理和回路403は、移相回路出力信号4Caと移相回路出力信号4Cbとを受け、出力信号4Dを出力する。出力信号4Dは、移相回路出力信号4Caおよび移相回路出力信号4Cbが、共にハイレベルまたは共にローレベルであるときにはローレベルを出力する。また、出力信号4Dは、移相回路出力信号4Caと移相回路出力信号4Cbのうち、どちらか一方がハイレベルで且つ他方がローレベルであるときにはハイレベルを出力する。なお、この実施例では、出力信号4Dは、移相回路出力信号4Caの立ち上がり、または、立ち下がりに同期して立ち上がり、移相回路出力信号4Cbの立ち上がり、または、立ち下がりに同期して立ち下がる。なお、この実施例では、分周信号4Baが分周信号4Bbより位相が先行しているので、上記の関係になるが、分周回路の初期設定の状態によっては、分周信号4Bbが分周信号4Baより位相が先行する場合がある。具体的には、図4において、分周信号4Baまたは分周信号4Bbの位相が180度ずれている場合である。この場合であっても、排他的論理和(XOR)回路403を否定排他的論理和回路(または、XNORゲート回路)に変えれば、第2の信号4Aaと出力信号4Dとの関係は、図4のとおりの波形が得られる。なお、分周信号4Bbと分周信号4Baとの位相の関係は、分周信号4Baと分周信号4Bbの初期設定回路により一意に決めることができることはいうまでもない。
【0066】
ここで、分周信号4Baは、第2の信号4Aaの立ち上がりに同期して変化する信号であり、移相回路出力信号4Caは、その分周信号4Baを移相回路402aにより決まる移相量ずらした信号である。出力信号4Dの立ち上がりは、移相回路出力信号4Caの変化するタイミングに同期しているので、結局、出力信号4Dの立ち上がりは、この移相回路全体に対する入力信号である第2の信号4Aaの立ち上がりから移相回路402aにより決まる移相量だけ遅れて立ち上がることになる。同様に、出力信号4Dの立ち下がりは、第2の信号4Aaの立ち下がりから移相回路402bにより決まる移相量だけ遅れて立ち下がることになる。
【0067】
したがって、移相回路402aと移相回路402bとの移相量を同じにすれば、立ち上がりも立ち下りも第2の信号4Aaから移相回路402a、402bで決まる移相量だけ遅れた位相差を有する出力信号4Dが得られる。さらに、この実施例2の移相回路では、第2の信号4Aaを2分周してから、移相回路402a、402bへ入力しているので、第2の信号4Aaは、周期的な信号であれば、デューティー比は50パーセントである必要はない。
【0068】
なお、移相回路402aおよび移相回路402bは、実施例1の移相回路であるため、前述のとおり、移相回路402aおよび移相回路402bによる遅延時間は、入力される信号の1周期の1/4の時間まで設定が可能である。移相回路402aおよび移相回路402bに入力される信号は、実施例2の全体の移相回路に対する入力信号である第2の信号4Aaを2分周した信号であるので、実施例2の移相回路全体では、第2の信号4Aaの1周期の1/2の時間まで可能である。なお、インバータ等の反転素子を用いれば、容易に位相を180度ずらすことが可能であるので、図3の位相回路の入力または、出力にインバータを追加するか、排他的論理和回路403を否定排他的論理和回路(または、XNORゲート回路)に変えれば、入力に対して任意の位相差を有する信号を、入力信号の周波数に依存せずに得られる移相回路が実現できる。
【実施例3】
【0069】
実施例1及び実施例2では、波形生成回路102a、102bを用いることにより、入力信号の周波数に依存せずに、入力信号に対して任意の位相差を得ることができる移相回路が実現できることを説明した。
【0070】
この実施例1及び実施例2で説明した波形生成回路は、移相回路以外にも用いることができる。すなわち、本発明の波形生成回路によれば、立ち上がり勾配と立ち下り勾配が一定の比率をもつ波形生成回路が実現できる。この立ち上がり勾配と立ち下り勾配の比率は、すでに実施例1で説明したとおり、カレントミラー回路の電流比によって設定できる。なお、波形生成回路を単独で用いる場合は、カレントミラーの電流比nを1以上に限定する必要はない。nの値は正の実数とすることができる。また、実施例1の波形生成回路をそのまま用いると、入力信号のレベルが長い間変化しない場合、出力波形は、第1の電源VDD以上には、上昇しないので、出力波形の上昇はVDDまで上昇した後、飽和する。しかし、入力信号が反転すれば、所定の勾配で第1の電源VDDから下降するので、特に問題は生じない。すなわち、実施例3によれば、一定の立ち上がり勾配、立ち下り勾配を有する波形生成回路が得られるが、この波形生成回路が出力する波形が擬似三角波になるか、三角波の頂点が飽和した擬似台形になるかは、入力信号の周波数によって決まることになる。
【0071】
以上説明したように、上記実施例1、実施例2によれば、ジャイロセンサ等に特に好適な移相回路が得られる。また、実施例3によれば、汎用的な波形生成回路が得られる。
【0072】
以上、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施例の移相回路のブロック図である。
【図2】図1記載の移相回路のタイミングチャートである。
【図3】本発明の別な実施例の移相回路のブロック図である。
【図4】図3記載の移相回路のタイミングチャートである。
【図5】特許文献1記載の従来の移相回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0074】
10 アンプ
12a、12b トランジスタ
14a、14b、103、103a、103b コンパレータ
16a、16b、207a、207b コンデンサ(容量)
18a、18b、201a、201b 定電流回路
20a、20b、206a、206b 基準電源
22 RSフリップフロップ
24 バッファ回路
101、101a、101b、400 インバータ(反転器)
102a、102b、102c、102d、102e、102f 波形生成回路
202a、203a、202b、203b Pチャネル型MOSトランジスタ
204a、205a、204b、205b Nチャネル型MOSトランジスタ
208a、208b 出力端子
401a、401b 分周回路
402a、402b 移相回路
403 排他的論理和(XOR)回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の信号を入力して第一の波形を出力する第一の波形生成回路と、
前記第一の信号の反転信号を入力して第二の波形を出力する第二の波形生成回路と、
前記第一の波形と第二の波形とを入力して前記第一の信号に対して所定の位相差を有する信号を出力するコンパレータと、を含む移相回路であって、
前記第一及び第二の波形生成回路が、それぞれ
第一の電源に接続された定電流回路と、
出口が出力端子に接続され、入口と第二の電源との間に流れる電流のn倍(nは1以上の実数)の電流を出口と第二の電源との間に流すカレントミラー回路と、
波形生成回路への入力信号が第一のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を出力端子に流し、前記入力信号が第二のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を前記入口に流すスイッチ回路と、
前記出力端子と固定電位との間に接続された容量と、を含む波形生成回路であり、
前記所定の位相差が前記カレントミラー回路のnの値に依存する位相差である移相回路。
【請求項2】
前記スイッチ回路が、
ドレイン・ソースの一方が前記定電流回路に、他方が前記カレントミラー回路の入口に、ゲートが前記入力信号に、それぞれ接続された第一の第一導電型MOSトランジスタと、
ドレイン・ソースの一方が前記定電流回路に、他方が前記出力端子に、ゲートが前記第一の電源と第二の電源との中間電位に、それぞれ接続された第二の第一導電型MOSトランジスタと、を含む請求項1記載の移相回路。
【請求項3】
前記カレントミラー回路が、
ソースが前記第二の電源に、ドレインとゲートが前記入口に、それぞれ接続された第一の第二導電型MOSトランジスタと、
ソースが前記第二の電源に、ドレインが前記出口に、ゲートが前記第一の第二導電型MOSトランジスタのゲートとドレインとに、それぞれ接続された第二の第二導電型MOSトランジスタと、を含む請求項1または2記載の移相回路。
【請求項4】
第一の信号を入力し、前記第一の信号が第一のレベルのときに第一の電圧から第一の勾配で上昇または下降し、前記第一の信号が前記第一のレベルから第二のレベルに変化すると前記上昇または下降した頂点から前記第一の勾配のn倍(nは1以上の実数)の第二の勾配で前記第一の電圧まで下降または上昇する第一の波形を出力する第一の波形生成回路と、
前記第一の信号の反転信号を入力し、前記第一の信号が前記第二のレベルのときに前記第一の電圧から前記第一の勾配と実質同等の勾配で上昇または下降し、前記第一の信号が前記第二のレベルから第一のレベルに変化するとその上昇または下降した頂点から前記第二の勾配と実質同一の勾配で前記第一の電圧まで下降または上昇する第二の波形を出力する第二の波形生成回路と、
前記第一の波形と第二の波形とを入力して前記第一の信号に対して前記nの値に依存する位相差を有する信号を出力するコンパレータと、を含む移相回路。
【請求項5】
第二の信号の立ち下りに同期して前記第二の信号を2分周する第一の分周回路と、
前記第二の信号の立ち上がりに同期して前記第二の信号を2分周する第二の分周回路と、
前記第一の分周回路の出力を前記第一の信号として入力する第一の前記移相回路と、
前記第二の分周回路の出力を前記第一の信号として入力する第二の前記移相回路と、
前記第一の移相回路の出力信号と、前記第二の移相回路の出力信号とを合成するゲート回路と、を含む請求項1乃至4いずれか1項記載の移相回路。
【請求項6】
前記ゲート回路が、排他的論理和(XOR)、または、否定排他的論理和(XNOR)回路である請求項5記載の移相回路。
【請求項7】
矩形波を入力し、立ち上がり勾配と立ち下り勾配とが一定の比率を有する擬似三角波または擬似台形波を生成する波形生成回路であって、
第一の電源に接続された定電流回路と、
出口が出力端子に接続され、入口と第二の電源との間に流れる電流のn倍(nは1以上の実数)の電流を出口と第二の電源との間に流すカレントミラー回路と、
入力信号が第一のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を出力端子に流し、前記入力信号が第二のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を前記入口に流すスイッチ回路と、
前記出力端子と固定電位との間に接続された容量と、を含む波形生成回路。
【請求項8】
矩形波を入力し、立ち上がり勾配と立ち下り勾配とが一定の比率を有する擬似三角波または擬似台形波を生成する波形生成回路であって、
第一の電源に接続された定電流回路と、
出口が出力端子に接続され、入口と第二の電源との間に流れる電流のn倍(nは正の実数)の電流を出口と第二の電源との間に流すカレントミラー回路と、
入力信号が第一のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を出力端子に流し、前記入力信号が第二のレベルのときに前記定電流回路に流れる電流を前記入口に流すスイッチ回路と、
前記出力端子と固定電位との間に接続された容量と、を含む波形生成回路。
【請求項9】
前記スイッチ回路が、
ドレイン・ソースの一方が前記定電流回路に、他方が前記カレントミラー回路の入口に、ゲートが前記入力信号に接続された第一の第一導電型MOSトランジスタと、
ドレイン・ソースの一方が前記定電流回路に、他方が前記出力端子に、ゲートが前記第一の電源と第二の電源との中間電位に、接続された第二の第一導電型MOSトランジスタと、を含む請求項7または8記載の波形生成回路。
【請求項10】
前記カレントミラー回路が、
ソースが前記第二の電源に、ドレインとゲートが前記入口に接続された第一の第二導電型MOSトランジスタと、
ソースが前記第二の電源に、ドレインが前記出口に、ゲートが前記第一の第二導電型MOSトランジスタのゲートとドレインとに、接続された第二の第二導電型MOSトランジスタと、を含む請求項7乃至9いずれか1項記載の波形生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−16584(P2010−16584A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174192(P2008−174192)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】