説明

積層コンデンサ

【課題】多端子電極とすることなく、低製造コストで、ESLを大幅に低減することができる積層コンデンサを提供すること。
【解決手段】複数の誘電体層12aが積層されて形成される略直方体形状の誘電体素体と、誘電体素体の第1長手方向側面12Aと二つの短手方向側面12C,12Dに跨がって引き出される第1内部導体層21と、第1内部導体層21に対して誘電体層12aを介して誘電体素体内に積層され、第2長手方向側面12Bと二つの短手方向側面12C,12Dに跨がって引き出される第2内部導体層22と、誘電体素体の外面に、第1長手方向側面12Aと二つの短手方向側面12C,12Dに跨がって形成される第1端子電極と、誘電体素体12の外面に、第2長手方向側面12Bと二つの短手方向側面12C,12Dに跨がって形成される第2端子電極とを有する積層コンデンサ。第1リード部には、第1隙間パターン41が形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等価直列インタクタンス(ESL)を大幅に低減した積層コンデンサに係り、特にデカップリングコンデンサなどとして用いられる積層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIなどの集積回路に供給用の電源においては低電圧化が進む一方で負荷電流は増大している。
【0003】
従って、負荷電流の急激な変化に対して電源電圧の変動を許容値内に抑えることが非常に困難になっている。このため、図2に示すように、デカップリングコンデンサと呼ばれる例えば2端子構造の積層セラミックコンデンサ100が電源102に接続されるようになっている。そして、負荷電流の過渡的な変動時に、この積層セラミックコンデンサ100からCPU等のLSI104に電流を供給して、電源電圧の変動を抑えるようにしている。
【0004】
しかし、今日のCPUの動作周波数の一層の高周波数化に伴って、負荷電流の変動はより高速且つ大きなものとなり、図2に示す積層セラミックコンデンサ100自身が有している等価直列インタクタンス(ESL)が、電源電圧の変動に大きく影響するようになった。
【0005】
つまり、従来の積層セラミックコンデンサ100ではESLが高いことから、負荷電流iの変動に伴って、上記と同様に電流電圧Vの変動が大きくなり易かった。
【0006】
これは、負荷電流の過渡時における電圧変動が下記の式1で近似され、ESLの高低が電源電圧の変動の大きさと関係するからである。そして、この式1から、ESLの低減が電源電圧を安定化することに繋がるとも言える。
【0007】
dV=ESL・di/dt …式1
ここで、dVは過渡時の電圧変動(V)であり、iは電流変動量(A)であり、tは変動時間(秒)である。
【0008】
ESLの低減を図った積層コンデンサとして、下記の特許文献1に示す積層コンデンサが知られている。この積層コンデンサによれば、寄生インダクタンスの低減を図ることができ、結果としてESLの低減を図ることができる。しかしながら、さらにESLの低減が求められている。
【0009】
さらにESLを低減させた積層コンデンサとしては、多端子積層コンデンサが知られている。この多端子積層コンデンサでは、外部端子電極を多くすることにより、一つの内部導体層の中で方向が異なる電流の流れを実現することができる。その結果、さらにESLを低減することが可能である。
【0010】
しかしながら、多端子コンデンサでは、内部導体層のパターンを複数用意する必要があったり、外部端子電極の数が多くなり、その製造コストが高くなるという課題を有している。
【特許文献1】特開2003−51423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、多端子電極とすることなく、低製造コストで、ESLを大幅に低減することができる積層コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層コンデンサは、
複数の誘電体層が積層されて形成される略直方体形状の誘電体素体と、
前記誘電体層間に挟まれるように前記誘電体素体内に配置され、前記誘電体素体の第1長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって引き出される第1リード部を有する第1内部導体層と、
前記第1内部導体層に対して前記誘電体層を介して前記誘電体素体内に積層され、前記誘電体素体の第2長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって引き出される第2リード部を有する第2内部導体層と、
前記誘電体素体の外面に、前記第1長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって形成され、前記第1リード部に接続される第1端子電極と、
前記誘電体素体の外面に、前記第2長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって形成され、前記第2リード部に接続される第2端子電極と、を有し、
前記第1リード部には、前記第1長手方向側面に沿う位置で、前記第1端子電極とは接続されない第1隙間パターンが形成してあることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る積層コンデンサでは、第1内部導体層の第1リード部に対して第1隙間パターンが形成される。このため、第1リード部は、第1内部導体層の本体部分から誘電体素体における第1長手方向側面と短手方向側面とが交差する二つの角部に引き出される一対の分岐リードパターンを有することになる。このため、各第1内部導体層では、それぞれの分岐リードパターンの角部から、それぞれ対角線の角部に向かう電流の流れが形成され、それらの流れが、第1内部導体層の本体部分で同一面内で交差することになる。
【0014】
その結果、電流が交差する個所で磁界を相殺する作用が生じ、これに伴って、積層コンデンサ自体が持つ寄生インダクタンスを小さくでき、等価直列インダクタンスを低減する効果が生じる。
【0015】
また、本発明では、第1端子電極と第2端子電極とが短手方向で相互に向かい合うために、端子間距離が短くなり、その点でも、低ESL化を図ることができる。また、第1および第2長手方向側面のそれぞれに沿って、第1端子電極および第2端子電極を形成するために、第1リード部に第1隙間パターンを形成したとしても、各リード部と各端子電極との接続長さを十分に確保することができる。
【0016】
さらに、本発明では、二種類の第1および第2内部導体層をそれぞれ誘電体素体内に複数配置することで、静電容量が高まるだけでなく磁界を相殺する作用がさらに大きくなり、インダクタンスがより大幅に減少してESLが一層低減される。
【0017】
すなわち、本発明に係る積層コンデンサによれば、積層コンデンサの大幅な低ESL化が図られて、電源電圧の振動を抑制できるようになり、デカップリングコンデンサなどとして好適に用いられることができる。
【0018】
好ましくは、前記第1隙間パターンは、前記第1長手方向側面の中央位置に形成してある。このように構成することで、第1リード部における一対の分岐リードパターンが対称形状になり、交差する電流も対称形状になりやすく、磁界を相殺する効果が大きくなる。
【0019】
好ましくは、前記第1隙間パターンの長手方向幅をL1とし、前記誘電体素体の長手方向幅をL0とした場合に、L1/L0の比が0.2〜0.5の範囲にある。この比が小さすぎても大きすぎても、同一面内での電流の交差現象が少なくなる傾向にある。
【0020】
好ましくは、前記誘電体素体の短手方向側面に引き出される第1リード部の幅をW1とし、前記誘電体素体の短手方向幅をW0とした場合に、W1/W0の比が0.15〜0.45の範囲にある。この比が小さすぎると、第1リード部と第1端子電極との接続面積が小さくなると共に、同一面内での電流の交差現象が少なくなる傾向にある。また、この比が大きすぎると、第1リード部が第2端子電極に対して短絡するおそれがある。
【0021】
好ましくは、前記誘電体素体の長手方向幅をL0とし、前記誘電体素体の短手方向幅をW0とした場合に、L0/W0の比が1〜5、さらに好ましくは1.6〜3の範囲にある。このような比とした場合に、第1端子電極と第2端子電極とを短手方向で相互に向かい合わせることが容易になる。なお、この比が大きすぎると、同一面内での電流の交差現象が生じにくくなる傾向にある。
【0022】
前記第1リード部には、前記第1長手方向側面に沿う位置で、前記第1隙間パターン以外に、その他の隙間パターンが形成してもよい。
【0023】
好ましくは、前記第1隙間パターンを有する前記第1内部導体層の平面パターンは、前記誘電体素体の長手方向中間位置を通る中心線に対して線対称なパターンである。このような構成を採用することで、同一面内での電流の交差現象も対称となり、磁界の相殺効果が高まる。
【0024】
好ましくは、前記第2リード部には、前記第2長手方向側面に沿う位置で、前記第2端子電極とは接続されない第2隙間パターンが形成してある。第2リード部においても、第2隙間パターンを形成することで、第1リード部と同様に、第2リード部にも、一対の分岐リードパターンが形成され、第2内部導体層にも、同一面内での電流の交差現象が生じる。その結果、さらにESLを低減することができる。
【0025】
好ましくは、前記第2隙間パターンと前記第1隙間パターンとが同じ形状と同じ寸法を有する。好ましくは、前記第1内部導体層と前記第2内部導体層とは、180度回転することで同じ平面パターンを有する。このような構成にすることで、第1内部導体層と第2内部導体層とで、各面内での電流の交差パターンがほとんど同じになり、さらにESLを低減することができる。
【0026】
なお、本発明においては、第1内部導体層と第2内部導体層とは、相対的な概念であり、第1内部導体層と第2内部導体層とは逆であっても良い。また、その他の「第1…」および「第2…」に関しても同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層コンデンサの斜視図、
図2は積層セラミックコンデンサが組み込まれる回路図、
図3は図1に示す積層コンデンサの分解斜視図、
図4(A)および図4(B)はそれぞれ図3に示す第1内部導体層および第2内部導体層の平面図、
図5(A)および図5(B)はそれぞれ本発明の他の実施形態に係る積層コンデンサにおける第1内部導体層および第2内部導体層の平面図、
図6(A)および図6(B)はそれぞれ本発明のさらに他の実施形態に係る積層コンデンサにおける第1内部導体層および第2内部導体層の平面図、
図7(A)〜図7(D)はそれぞれ本発明のさらに他の実施形態に係る積層コンデンサにおける第1〜第4内部導体層の平面図、
図8は本発明の実施例および比較例に係るインピーダンス特性を表すグラフである。
第1実施形態
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ(以下単に、積層コンデンサと言う)10は、誘電体層であるセラミックグリーンシートを複数枚積層した積層体を焼成することで得られた直方体状の焼結体である誘電体素体12を有する。
【0029】
誘電体素体12は、第1長手方向側面12Aと、それに対向する第2長手方向側面12Bと、これらの長手方向側面12Aおよび12Bを結ぶ対向する短手方向側面12Cおよび12Dを有する。誘電体素体12の外面には、第1長手方向側面12Aと二つの短手方向側面12Cおよび12Dに跨がって、第1端子電極31が形成される。また、第2長手方向側面12Bと二つの短手方向側面12Cおよび12Dに跨がって、第2端子電極32が形成される。
【0030】
この積層コンデンサ10は、たとえば図2に示すような回路に接続され、デカップリングコンデンサなどとして用いられる。
【0031】
図3に示すように、誘電体素体12内には、誘電体素体12の長手方向Xに沿って細長く延びる第1内部導体層21と、同じく誘電体素体12の長手方向Xに沿って細長く延びる第2内部導体層22とが配置されている。そして、これら内部導体層21および内部導体層22は、図3に示すように、隣接する層間で交互に配置されるように複数枚(図では合計8枚)配置され、それぞれの内部導体層21と内部導体層22との間には、誘電体層12aが配置されている。
【0032】
すなわち、本実施形態では、誘電体層12aに間に挟まれる形で、誘電体素体12内に4枚づつの第1および第2内部導体層21,22が交互に配置されている。なお、これら内部導体層21、22の材質としては、卑金属材料であるニッケル、ニッケル合金、銅或いは、銅合金が考えられるだけでなく、これらの金属を主成分とする材料が考えられる。
【0033】
図3に示すように、一方の第1内部導体層21は、誘電体層12aの外形形状に合わせた形状を持ち、誘電体層12aの周囲端部から所定の絶縁隙間パターン43で離れている内部導体層本体部分21aを有する。この内部導体層本体部分21aがコンデンサの一方の電極を構成する部分である。内部導体層21は、この内部導体層本体部分21aと一体的に同一平面上に形成され、誘電体素体12の相互に隣り合う三つの側面12A,12C,12Dに跨がって引き出される第1リード部をさらに有する。
【0034】
図4(A)に示すように、本実施形態では、第1リード部には、第1長手方向側面12Aに沿う中央位置で、第1端子電極31とは接続されない第1隙間パターン41が形成してある。このため、第1リード部は、第1内部導体層21の本体部分21aから誘電体素体12における第1長手方向側面12Aと短手方向側面12C,12Dとが交差する二つの角部に引き出される一対の分岐リードパターン21bを有することになる。
【0035】
誘電体素体12の短手方向Yの幅をW0とした場合に、第1リード部の分岐リードパターン21bにおける短手方向Yの幅W1は、W1/W0の比が0.15〜0.45の範囲、好ましくは0.25〜0.40の範囲にあるように決定される。
【0036】
また、誘電体素体12の長手方向Xの幅をL0とした場合に、第1隙間パターン41の長手方向幅をL1は、L1/L0の比が0.2〜0.5の範囲、好ましくは0.3〜0.45の範囲にあるように決定される。
【0037】
本実施形態では、第1隙間パターン41は、素子本体12における第1長手方向側面12Aの長手方向Xの中央位置に形成される。絶縁隙間パターン43は、素子本体12における第2長手方向側面12Bと、短手方向側面12C,12Dに連続して跨るように形成され、その隙間パターン43の長手方向の両端部は、第1リード部の分岐リードパターン21bに接触している。本実施形態では、第1内部導体層21の平面パターンは、誘電体素体12の長手方向Xの中間位置を通る中心線に対して線対称なパターンである。
【0038】
第1端子電極31は、第1長手方向側面12Aと短手方向側面12C,12Dの三側面に跨るように形成され、第1端子電極31における各短手方向側面12C,12Dの両端部は、分岐リードパターン21bにおける短手方向Yの幅W1よりも僅かに長い位置まで伸びている。
【0039】
第1隙間パターン41の隙間幅W2は、絶縁隙間43の隙間幅W3と同程度であり、好ましくは100〜200μm程度である。こけらの電極幅W2,W3が小さすぎると、各端子電極31または32との絶縁性が不十分になるおそれがあり、大きすぎると、本体部分21aの面積を狭め、コンデンサとしての能力を低下させるおそれがある。
【0040】
図3に示すように、他方第2内部導体層22は、誘電体層12aの外形形状に合わせた形状を持ち、誘電体層12aの周囲端部から所定の絶縁隙間パターン44で離れている内部導体層本体部分22aを有する。この内部導体層本体部分22aがコンデンサの他方の電極を構成する部分である。内部導体層22は、この内部導体層本体部分22aと一体的に同一平面上に形成され、誘電体素体12の相互に隣り合う三つの側面12B,12C,12Dに跨がって引き出される第2リード部をさらに有する。
【0041】
図4(B)に示すように、本実施形態では、第2リード部には、第2長手方向側面12Bに沿う中央位置で、第2端子電極32とは接続されない第2隙間パターン42が形成してある。このため、第2リード部は、第2内部導体層22の本体部分22aから誘電体素体12における第2長手方向側面12Bと短手方向側面12C,12Dとが交差する二つの角部に引き出される一対の分岐リードパターン22bを有することになる。
【0042】
この実施形態では、第2内部導体層22aのパターン形状は、第1内部導体層21aを180度回転させたパターンであり、同様な寸法関係(L0,L1,W1,W0,W2,W3)を有する。
【0043】
上述した寸法関係から、2種類の第1および第2内部導体層21および22にそれぞれ形成してある分岐リードパターン21bおよび22b同士は、誘電体層12aの積層方向Zに投影して相互に重ならない位置関係となっている。それぞれの本体部分21a、22a相互は、誘電体層12aの積層方向Zに投影して相互に重なり、誘電体層12aを介してコンデンサを構成している。
【0044】
図1に示すように、一対の端子電極31および32は、相互に絶縁されるように、素体12の対向する短手側側面12Cおよび12Dにおいて、Y方向に沿って幅W4で離間してある。この幅W4は、好ましくは0.3〜0.5mmである。
【0045】
本実施形態に係る積層コンデンサ10は、直方体である六面体形状とされる誘電体素体12の四つの側面12A〜12Dの全てに、端子電極31,32がそれぞれ配置される2端子構造の積層コンデンサになっている。
【0046】
次に、本実施形態に係る積層コンデンサ10の作用を説明する。
【0047】
本実施形態に係る積層コンデンサ10によれば、複数の誘電体層が積層されて直方体形状に形成される誘電体素体12内に、それぞれ誘電体層間に挟まれる形で、二種類の内部導体層21、22が交互に配置されている。これら二種類の内部導体層21、22は、誘電体層の積層方向に投影して相互に重ならない位置関係で、それぞれ誘電体素体12の三つの側面に跨がって引き出される構造となっている。また、二つの端子電極31、32が、それぞれ誘電体素体12の三つの側面に跨がって誘電体素体12の外側に配置されていて、二種類の内部導体層21、22の何れか一方に、これら二つの端子電極31、32がそれぞれ接続されている。
【0048】
しかも本実施形態に係る積層コンデンサ10では、第1内部導体層21の第1リード部に対して第1隙間パターン41が形成される。このため、第1リード部は、第1内部導体層21の本体部分21aから誘電体素体12における第1長手方向側面12Aと短手方向側面12C,12Dとが交差する二つの角部に引き出される一対の分岐リードパターン21bを有することになる。このため、各第1内部導体層21では、それぞれの分岐リードパターン21bの角部から、それぞれ対角線の角部に向かう電流の流れが形成され、それらの流れが、第1内部導体層21の本体部分21aで同一面内で交差することになる。
【0049】
また同様に、各第2内部導体層22では、それぞれの分岐リードパターン22bの角部から、それぞれ対角線の角部に向かう電流の流れが形成され、それらの流れが、第2内部導体層22の本体部分22aで同一面内で交差することになる。
【0050】
その結果、電流が交差する個所で磁界を相殺する作用が生じ、これに伴って、積層コンデンサ10自体が持つ寄生インダクタンスを小さくでき、等価直列インダクタンスを低減する効果が生じる。
【0051】
また、本実施形態では、第1端子電極31と第2端子電極32とが短手方向Yで相互に向かい合うために、端子間距離が短くなり、その点でも、低ESL化を図ることができる。また、第1および第2長手方向側面12A,12Bのそれぞれに沿って、第1端子電極31および第2端子電極32を形成するために、各リード部に隙間パターン41,42を形成したとしても、各リード部の分岐リードパターン21b,22bと各端子電極31,32との接続長さを十分に確保することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、二種類の第1および第2内部導体層21,22をそれぞれ誘電体素体12内に複数配置することで、静電容量が高まるだけでなく磁界を相殺する作用がさらに大きくなり、インダクタンスがより大幅に減少してESLが一層低減される。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る積層コンデンサ10によれば、積層コンデンサ10の大幅な低ESL化が図られて、電源電圧の振動を抑制できるようになり、図2に示すデカップリングコンデンサなどとして好適に用いられることができる。
第2実施形態
【0054】
次に、本発明の第2実施形態を、図5(A)および図5(B)に基づき説明する。なお、第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、第1実施形態における第1内部導体層21を、図5(A)に示す第1内部導体層121に代えた以外は、第1実施形態と同様にして積層コンデンサを構成してある。本実施形態では、第2内部導体層22にのみ第2隙間パターン42が形成してあり、第1内部導体層121には、第1隙間パターンが形成されていない。
【0056】
本実施形態では、第1内部導体層121は、第1実施形態における第1内部導体層本体部分21aに対応する内部導体層本体部分121aと、第1リード部における一対の分岐リードパターン21bに対応する連続引出パターン121bとを有する。第1リード部の連続引出パターン121bは、第1端子電極31の内面全体にわたり接続してある。
【0057】
本実施形態に係る積層コンデンサにおいても、第1内部導体層121では、誘電体層12aを介して積層してある第2内部導体層22における電流の流れに応じて、第1実施形態と同様な交差電流が流れることが期待できる。その結果、第1実施形態よりは多少劣るが、ほぼ同様な作用効果が期待できる。
第3実施形態
【0058】
次に、本発明の第3実施形態を、図6(A)および図6(B)に基づき説明する。なお、第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、第1実施形態における第1内部導体層21および第2内部導体層22を、それぞれ図6(A)に示す第1内部導体層221および図6(B)に示す第2内部導体層22に代えた以外は、第1実施形態と同様にして積層コンデンサを構成してある。
【0060】
本実施形態では、第1内部導体層221は、第1実施形態における第1内部導体層本体部分21aに対応する内部導体層本体部分221aと、分岐リードパターン21bに対応する分岐リードパターン221bと、第1隙間パターン41に対応する第1隙間パターン241とを有する点で、第1内部導体層21と同様である。ただし、この第1内部導体層221は、第1隙間パターン241の両側に、その他の小さな隙間パターン243が形成してある点で、第1実施形態の第1内部導体層21とは異なる。
【0061】
また、本実施形態では、第2内部導体層222は、第1実施形態における第2内部導体層本体部分22aに対応する内部導体層本体部分222aと、分岐リードパターン22bに対応する分岐リードパターン222bと、第2隙間パターン42に対応する第2隙間パターン242とを有する点で、第1内部導体層21と同様である。ただし、この第2内部導体層222は、第2隙間パターン242の両側に、その他の小さな隙間パターン243が形成してある点で、第1実施形態の第2内部導体層22とは異なる。
【0062】
本実施形態に係る積層コンデンサにおいても、内部導体層221、222では、第1実施形態と同様な交差電流が流れることが期待できる。その結果、第1実施形態よりは多少劣るが、ほぼ同様な作用効果が期待できる。
第4実施形態
【0063】
次に、本発明の第4実施形態を、図7(A)〜図7(D)に基づき説明する。なお、第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、第1実施形態における第2内部導体層22を、図7(B)および図7(D)に示す第2内部導体層322および図7(D)に示す第2内部導体層323の2種類に代えた以外は、第1実施形態と同様にして積層コンデンサを構成してある。
【0065】
本実施形態では、図7(A)に示す第1実施形態と同じ第1内部導体層21の下に、誘電体層12aを介して図7(B)に示す第2内部導体層322を積層し、第2内部導体層322の下に、誘電体層12aを介して図7(C)に示す第1実施形態と同じ第1内部導体層21を積層する。そして、その第1内部導体層21の下に、誘電体層12aを介して図7(D)に示す第2内部導体層323を積層する。その下は、上述した図7(A)〜図7(D)に示す導体層21,322,21,323の積層の繰り返しとなる。
【0066】
本実施形態では、一方の第2内部導体層322は、第1実施形態における第2内部導体層本体部分22aに対応する内部導体層本体部分322aと、分岐リードパターン22bに対応する単一のリードパターン322bとを有する。単一のリードパターン322bは、第2長手方向側面12Bと短手方向側面12Cとが交差する角部に位置する第2端子電極32にのみ接続してある。
【0067】
単一のリードパターン322bのみを形成するために、内部導体層本体部分322aの周囲には、リードパターン322b以外の部分で連続している絶縁隙間パターン344を形成している。
【0068】
また他方の第2内部導体層323は、第1実施形態における第2内部導体層本体部分22aに対応する内部導体層本体部分323aと、分岐リードパターン22bに対応する単一のリードパターン323bとを有する。単一のリードパターン323bは、第2長手方向側面12Bと短手方向側面12Dとが交差する角部に位置する第2端子電極32にのみ接続してある。
【0069】
単一のリードパターン323bのみを形成するために、内部導体層本体部分323aの周囲には、リードパターン323b以外の部分で連続している絶縁隙間パターン345を形成している。
【0070】
本実施形態に係る積層コンデンサにおいては、第1内部導体層321では、第1実施形態と同様な交差電流が流れることが期待できる。また、2種類の第2内部導体層322および323では、それぞれ単一のリードパターン322bまたは323bを通る対角線上の電流の流れが実現される。2種類の第2内部導体層322および323相互間では、電流の流れが交差する。
【0071】
したがって、第1実施形態と比較すれば、第2内部導体層322または323の各同一面内では、交差する電流が形成されないが、第1内部導体層321では、第1実施形態と同様な交差電流が流れることが期待できる。その結果、第1実施形態よりは多少劣るが、ほぼ同様な作用効果が期待できる。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0073】
たとえば、本発明に係る積層コンデンサでは、内部導体層の積層数は、特に限定されず、数十あるいは数百としても良い。また、本発明では、第1隙間パターンおよび第2隙間パターンは、必ずしも長手方向に沿って連続せず、断続的に形成しても良い。
実施例
【0074】
次に、本発明をさらに具体的な実施例に基づき説明するが、本発明は、この実施例に限定されない。この実施例では、ネットワークアナライザを使用して、Sパラメータからインピーダンスへ換算し、以下の各コンデンサ試料のESLをそれぞれ求めた。
【0075】
まず、各コンデンサ試料の内容を説明する。図1〜図4に示す実施形態に係る2端子型積層コンデンサをサンプルEx1とし、第1隙間パターン41および第2隙間パターン42を有さない以外は、サンプルEx1と同様にして製造されたコンデンサをサンプルCex1とし、ESLをそれぞれ求めた。
【0076】
そして、この結果として、各サンプルのインピーダンス特性を測定した。その結果を図8に示す。図8のグラフに示すように、高周波側では、サンプルEx1の方がサンプルCex1よりもインピーダンスの値は小さくなることが確認された。また、ESLを求めたところ、サンプルEx1ではESLが119pHであり、サンプルCex1では、ESLが140pHであった。つまり、本発明の実施形態によるサンプルEx1において、ESLが大幅に低減されることが確認された。
【0077】
なお、このESLは、2πf=1/√(ESL・C)の式より求められるものであり、fは自己共振周波数で、Cは静電容量である。
【0078】
ここで用いた各試料の寸法としては、図4に示す寸法において、L0=1.6mmで、L1が0.8mmであり、W0が0.8mmであり、W1が0.25mmであり、W2=W3が0.15mmであった。内部導体層の積層数は、合計で25層であり、静電容量は、0.1μFであった。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【図2】図2は積層セラミックコンデンサが組み込まれる回路図である。
【図3】図3は図1に示す積層コンデンサの分解斜視図である。
【図4】図4(A)および図4(B)はそれぞれ図3に示す第1内部導体層および第2内部導体層の平面図である。
【図5】図5(A)および図5(B)はそれぞれ本発明の他の実施形態に係る積層コンデンサにおける第1内部導体層および第2内部導体層の平面図である。
【図6】図6(A)および図6(B)はそれぞれ本発明のさらに他の実施形態に係る積層コンデンサにおける第1内部導体層および第2内部導体層の平面図である。
【図7】図7(A)〜図7(D)はそれぞれ本発明のさらに他の実施形態に係る積層コンデンサにおける第1〜第4内部導体層の平面図である。
【図8】図8は本発明の実施例および比較例に係るインピーダンス特性を表すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
10… 積層コンデンサ
12… 誘電体素体
12a… 誘電体層
12A… 第1長手方向側面
12B… 第2長手方向側面
12C,12D… 短手方向側面
21,121,221… 第1内部導体層
21a,121a,221a… 内部導体層本体部分
21b,121b… 分岐リードパターン
221b… 連続引出パターン
22,222,322,323… 第2内部導体層
22a,222a,322a,323a… 内部導体層本体部分
22b,222b… 分岐リードパターン
322b,323b… リードパターン
31… 第1端子電極
32… 第2端子電極
41… 第1隙間パターン
42… 第2隙間パターン
43,44… 絶縁隙間パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されて形成される略直方体形状の誘電体素体と、
前記誘電体層間に挟まれるように前記誘電体素体内に配置され、前記誘電体素体の第1長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって引き出される第1リード部を有する第1内部導体層と、
前記第1内部導体層に対して前記誘電体層を介して前記誘電体素体内に積層され、前記誘電体素体の第2長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって引き出される第2リード部を有する第2内部導体層と、
前記誘電体素体の外面に、前記第1長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって形成され、前記第1リード部に接続される第1端子電極と、
前記誘電体素体の外面に、前記第2長手方向側面と二つの短手方向側面に跨がって形成され、前記第2リード部に接続される第2端子電極と、を有し、
前記第1リード部には、前記第1長手方向側面に沿う位置で、前記第1端子電極とは接続されない第1隙間パターンが形成してあることを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記第1隙間パターンは、前記第1長手方向側面の中央位置に形成してある請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記第1隙間パターンの長手方向幅をL1とし、前記誘電体素体の長手方向幅をL0とした場合に、L1/L0の比が0.2〜0.5の範囲にある請求項1または2に記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記誘電体素体の短手方向側面に引き出される第1リード部の幅をW1とし、前記誘電体素体の短手方向幅をW0とした場合に、W1/W0の比が0.15〜0.45の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
前記誘電体素体の長手方向幅をL0とし、前記誘電体素体の短手方向幅をW0とした場合に、L0/W0の比が1〜5の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項6】
前記第1リード部には、前記第1長手方向側面に沿う位置で、前記第1隙間パターン以外に、その他の隙間パターンが形成してある請求項1〜5のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項7】
前記第1隙間パターンを有する前記第1内部導体層の平面パターンは、前記誘電体素体の長手方向中間位置を通る中心線に対して線対称なパターンである請求項1〜6のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項8】
前記第2リード部には、前記第2長手方向側面に沿う位置で、前記第2端子電極とは接続されない第2隙間パターンが形成してある請求項1〜7のいずれかに記載の積層コンデンサ。
【請求項9】
前記第2隙間パターンと前記第1隙間パターンとが同じ形状と同じ寸法を有する請求項8に記載の積層コンデンサ。
【請求項10】
前記第1内部導体層と前記第2内部導体層とは、180度回転することで同じ平面パターンを有する請求項9に記載の積層コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−84894(P2008−84894A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259798(P2006−259798)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】