説明

積層セラミックコンデンサ及び積層セラミックコンデンサの製造方法

【課題】電気特性に優れた積層セラミックコンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックスラリーを塗布してグリーンシートを形成し、その上に第1導体ペーストを印刷して未焼成内部電極層を形成し、未焼成内部電極層が形成されたグリーンシートを積層して未焼成セラミック積層体とし、これをカットした後、未焼成セラミック積層体の未焼成内部電極層が露出した端面にNi金属を少なくとも含有する第2導電ペーストを塗布して未焼成下地金属を形成し、未焼成下地金属の周縁にMg化合物を含有する縁取層形成用ペーストを塗布して未焼成セラミック積層体と未焼成下地金属とを同時焼成し、未焼成下地金属を焼成して得られた下地金属の表面をメッキして、下地金属5の周縁5aが、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む縁取層7で縁取りされている積層セラミックコンデンサを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、携帯機器、通信機器等の各種電子機器に用いられている。積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、内部電極層の静電容量形成部から交互に異なる端面に露出するように引出された引出部を有するセラミック積層体と、セラミック積層体の各内部電極層の引出部が露出している端面に形成された外部電極とを備えてなるものが一般的である。外部電極は、下地金属と、該下地金属の表層に形成されたメッキ層とからなる。製造工程の簡略化、内部電極と下地金属との接続の信頼性等の要請から、未焼成のセラミック積層体と、未焼成の下地金属とを同時焼成することが行われている。
【0003】
ところで、携帯機器、通信機器等の電子機器において、近年小型化が求められており、これらの電子機器に搭載される電子部品においても小型化が求められているが、積層セラミックコンデンサを小型化するに伴い、セラミック積層体と下地金属との接触面積が減少して、セラミック積層体と下地金属との接着強度が低下する傾向にあった。
【0004】
特許文献1には、セラミック誘電体層中に、誘電体セラミックにMg化合物が添加され、セラミック誘電体層と内部電極層とを交互に積層したチップ状セラミック積層体(素体)とNi外部電極の境界面に(Ni、Mg)化合物の酸化層を有する積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−182011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
下地金属の表面にメッキ処理する際において、積層セラミックコンデンサを小型化するに伴い、小型化になった分だけ、短い距離にてセラミック積層体の内部に侵入し易くなる。メッキ液がセラミック積層体の内部に侵入すると、短絡等が発生して所望の電気特性が得られ難くなる。
【0007】
特許文献1の積層セラミックコンデンサは、セラミック積層体とNi外部電極の境界面に、(Ni、Mg)化合物の酸化層を有することにより、両者の接合強度を向上させたものである。この接着強度は、セラミック積層体の面と、Ni外部電極の面に関したものであり、メッキ液の侵入を抑制することについては、特許文献1では検討されていない。接続強度は、セラミック積層体の面と、Ni外部電極の面とが部分的であっても、強固に接続されていれば(すなわち、すべての面にて、隙間なくつながっていなくても良い)よいのに対し、メッキ液の侵入を抑制するには、一部でも接続していない部分があれば、その部分からメッキ液が侵入してしまう。
【0008】
よって、本発明の目的は、電気特性に優れた積層セラミックコンデンサを歩留まり良く製造可能な積層セラミックコンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、前記内部電極層が交互に異なる端面に露出するように形成されたセラミック積層体と、前記セラミック積層体の内部電極層が露出している端面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、前記外部電極は、前記セラミック積層体と同時焼成して形成される金属からなる下地金属と、該下地金属を被覆するメッキ層とからなり、前記下地金属の周縁が、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む縁取層で縁取りされて、該縁取層と前記セラミック積層体とが接続されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の積層セラミックコンデンサは、前記下地金属が、Niであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、前記内部電極層が交互に異なる端面に露出するように形成されたセラミック積層体と、前記セラミック積層体の内部電極層が露出している端面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサの製造方法であって、セラミック粉末を少なくとも含有するセラミックスラリーを塗布してグリーンシートを形成する工程と、前記グリーンシートの表面に第1導体ペーストを印刷して未焼成内部電極層を形成する工程と、未焼成内部電極層が形成されたグリーンシートを積層し、圧着して未焼成セラミック積層体を製造する工程と、前記未焼成セラミック積層体をカットする工程と、カットした未焼成セラミック積層体の前記未焼成内部電極層が露出した端面に、Ni金属を少なくとも含有する第2導電ペーストを塗布して未焼成下地金属を形成する工程と、前記未焼成下地金属の周縁に、Mg化合物を含有する縁取層形成用ペーストを塗布し、前記未焼成セラミック積層体と前記未焼成下地金属とを同時焼成する工程と、前記未焼成下地金属を焼成して得られた下地金属の表面をメッキする工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層セラミックコンデンサは、下地金属の周縁が縁取層で縁取りされてセラミック積層体に接続している。縁取層と下地金属は、両者の構成成分どうしが相互に拡散しあって強固に接合している。特に下地金属としてNiを用いた場合、同種の材料どうしなので、両者がより強固に接合する。また、縁取層とセラミック誘電体層は、いずれも酸化物を含む組成物であるので、両者の構成成分どうしが相互に拡散しあって強固に接合している。このように、下地金属の周縁が、縁取層を介してセラミック積層体に強固に接合している。また、縁取層の熱膨張係数は、下地金属とセラミック誘電体層との中間程度であり、縁取層によって、下地金属とセラミック誘電体層との熱膨張係数の差によって生じる応力が緩和され、セラミック誘電体層にクラックが入り難い。このため、本発明の積層セラミックコンデンサは、下地金属の周縁が、セラミック積層体とが隙間なく接続しており、これによってメッキ液の内部への侵入を抑制して絶縁抵抗を維持でき、不良品の発生が少なく歩留まりが良い。
【0013】
そして、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法によれば、未焼成下地金属の周縁にMg化合物を含有する縁取層形成用ペーストを塗布して、未焼成セラミック積層体と未焼成下地金属とを同時焼成するので、下地金属の周縁が、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む縁取層で縁取りされて、縁取層とセラミック積層体とが接続された積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【図2】図1のセラミック積層体の分解斜視図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1の平面図である。
【図5】実施例の積層セラミックコンデンサの図1の平面方向から見た写真(120倍拡大)である。
【図6】図5の範囲aの部分の電子顕微鏡写真である。
【図7】図6の範囲bの部分の元素分析結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の積層セラミックコンデンサについて、図1〜4を用いて説明する。図1は、本発明の積層セラミックコンデンサの斜視図であり、図2は、セラミック積層体3の分解斜視図であり、図3は、図1のA−A線に沿った断面図であり、図4は、図1の平面図である。
【0016】
本発明の積層セラミックコンデンサ10は、セラミック誘電体層1と内部電極層2とが交互に積層され、内部電極層2が交互に異なる端面に露出するように形成されたセラミック積層体3と、セラミック積層体3の内部電極層2が露出している端面に形成された一対の外部電極4,4とを備えている。
【0017】
セラミック誘電体層1は、セラミックペーストをグリーンシート化して焼成したセラミック焼結体から構成される。セラミックペーストとしては、BaTiO、CaTiO、SrTiO等のセラミック粉末を主原料とし、これに、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Y等の希土類金属酸化物、V、Cr及びMn等の遷移金属酸化物、SiO等のガラス成分、MgO、MgCO等のMg化合物を添加物として混合したセラミック組成物に、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダーと、トルエン等の溶剤と、その他助剤を添加してペースト化したもの等が挙げられる。セラミック組成物は、BaTiO(チタン酸バリウム)を例として主成分としたものが挙げられる。他にペロブスカイト構造を形成するBa1-x−yCaSrTi1−ZZr(0≦X≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)で表されるセラミックスを用いても良い。
【0018】
内部電極層2は、導体ペーストの薄膜を焼結した金属薄膜からなる。導体ペーストは、導電材料となる導電性金属と、バインダーと、溶剤と、必要に応じてその他助剤とを含んでいる。導電性金属としては、Ni、Cu、Ag、Pd等が挙げられ、後述する下地金属5との同時焼成が容易であるという理由からNi、Cuが好ましい。バインダー、溶剤は、上記したセラミックペーストと同様のものを使用できる。
【0019】
外部電極4は、下地金属5と、該下地金属5の表面を被覆するメッキ層6とで構成される。
【0020】
下地金属5は、導体ペーストの薄膜を焼結した金属薄膜からなる。導体ペーストに含まれる導電性金属は、セラミック積層体3と同時焼成して形成される金属であり、例えば、Niが挙げられる。
【0021】
図3,4を合わせて参照すると、下地金属5の周縁5aが、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む縁取層7で縁取りされて、最外層のセラミック誘電体層1に接続している。縁取層7の幅Wは、1〜50μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。縁取層7の幅が50μmを超えると、画像認識等で、外部電極と縁取層7とが誤認識されるおそれがあり、更には、メッキ付き性が低下する傾向にある。縁取層7の幅Wが1μm未満であると、下地金属5とセラミック誘電体層1との接着性が不十分な場合があり、メッキ処理時などにおいて外部から下地金属5の端部に応力が加わると、下地金属5がセラミック誘電体層1から剥離する可能性がある。なお、縁取層7は、セラミック誘電体層1の表面であって、下地電極5の端部(周縁)にて、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む部位である。縁取層7が、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含むものであるかどうかは、縁取層7を元素分析することにより確認できる(Mg、Ni、Oが同時に検出される)。
【0022】
メッキ層6は、Ni、Cu及びこれらの合金からなる第1メッキ層6aと、該第1メッキ層6a上に形成された、Sn及び/又はSn合金からなる第2メッキ層6bとで構成されることが好ましい。第1メッキ層6aによって、下地金属5と第2メッキ層6bとの接着性が向上し、第2メッキ層6bによって、半田濡れ性が向上する。
【0023】
次に、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法の一例について以下説明する。
【0024】
まず、従来公知の方法で形成されたBaTiO粉末等のセラミック粉末と、必要に応じてその他の添加物粉末を適宜の量加え、バインダー及び溶剤を加えて、ボールミルなどで混合攪拌してセラミックスラリーを調製する。その他添加物粉末としては、MgO、MgCOなどのMg化合物が好ましい。Mg化合物は、セラミック粉末100molに対し0.4〜1.4mol含有することが好ましい。
【0025】
次に、ドクターブレード法等の従来公知の方法により、セラミックスラリーをPETフィルム等の長尺のベースフィルムに流し、その厚みをドクターブレードとの隙間で調整し、乾燥して、所定厚みのグリーンシートを作製する。
【0026】
次に、グリーンシート上に、スクリーン印刷法等の従来公知の方法により、内部電極形成用導電ペーストを塗布し、未焼成内部電極層を所定パターンで形成する。
【0027】
次に、未焼成内部電極層を形成したグリーンシートを所定の単位寸法でカットしてベースフィルムから取り出し、取り出されたグリーンシートを必要枚数積層し、静水圧プレス機等により圧着成型して未焼成セラミック積層体を作製する。
【0028】
次に、圧着後の未焼成セラミック積層体を、回転ブレードや昇降ブレード等のブレードでカットして、個々のチップ状未焼成セラミック積層体とする。このチップ状未焼成セラミック積層体の相対する面には未焼成内部電極層の端縁が交互に露出している。
【0029】
次に、チップ状未焼成セラミック積層体の未焼成内部電極層が露出した端面に、Ni金属を少なくとも含有する下地金属形成用導電ペーストを、ローラ塗布法やディップ法等の公知の方法で塗布して、未焼成下地金属を形成する。
【0030】
次に、チップ状未焼成セラミック積層体の最外層の表層であって、未焼成下地金属の周縁に沿って、MgO、MgCO等のMg化合物を含有する縁取層形成用導電ペーストを塗布する。なお、縁取層形成用導電ペーストの塗布量や、縁取層形成用導電ペーストの中のMgO粉末の比率をかえることで、焼成後の縁取層7の幅Wを調整することができる。
【0031】
そして、脱バインダー炉に投入し、好ましくはN雰囲気で脱バインダー処理した後、焼成炉に投入して、所定の温度及び時間等の条件下で焼成して、チップ状未焼成セラミック積層体と未焼成下地金属とを同時焼成する。焼成温度は、1150〜1400℃が好ましい。焼成時の酸素分圧O濃度は6.2×10−4Pa以下が好ましい。O濃度が6.2×10−4Paよりも大きい場合には、下地金属の酸化が全体的に進んでしまい、次の工程のメッキ付き性が悪くなる。
【0032】
次に、未焼成下地金属を焼成して得られた下地金属5の表面を、Ni、Cu及びこれらの合金でメッキして第1メッキ層6aを形成して、第2メッキ層6aのメッキ付け性を向上させる。その後、第1メッキ層6a上に、Sn及び/又はSn合金でメッキして第2メッキ層6bを形成する。メッキ方法としては特に限定はなく、バレルメッキなど従来公知の方法が挙げられる。
【0033】
このようにして、図1〜4に示す本発明の積層セラミックコンデンサ10が得られる。この積層セラミックコンデンサ10は、下地金属5の周縁が縁取層7で縁取りされてセラミック誘電体層1に接続している。縁取層7と下地金属5は、相溶性が良好で、両者の構成成分どうしが相互に拡散しあって強固に接合している。また、縁取層7とセラミック誘電体層1は、いずれも酸化物を含む組成物であるので、両者の構成成分どうしが相互に拡散しあって強固に接合している。また、BaTiOを主成分とするセラミック誘電体層1の熱膨張係数は約10〜12×10−6−1であり、Ni金属からなる下地金属5の熱膨張係数は約14〜16×10−6−1であり、セラミック誘電体層1と下地金属5は、熱膨張係数が異なる材料で構成されていることから、従来では、未焼成セラミック積層体と、未焼成下地金属とを同時焼成すると、セラミック誘電体層1の下地金属5の周縁と接する部分を起点にして、セラミック誘電体層1にクラックが発生したり、下地金属5がセラミック誘電体層1からはがれることがあった。この積層セラミックコンデンサは、下地金属5の周縁が縁取層7で縁取りされてセラミック誘電体層1に接続しており、縁取層7の熱膨張係数は約11〜14×10−6−1であることから、縁取層7によって、下地金属5とセラミック誘電体層1との熱膨張係数の差によって生じる応力が緩和され、セラミック誘電体層1にクラックが入り難い。また、下地金属5がセラミック誘電体層1からはがれ難く、下地金属5とセラミック誘電体層1とがほぼ隙間なく接続している。
【0034】
このため、本発明の積層セラミックコンデンサは、メッキ液の内部への侵入を抑制でき、これによって電気特性(絶縁抵抗)のバラつきや低下を抑えることができ、不良品の発生率が極めて低く、歩留まりがよい。
【0035】
つまり、本発明では、積層セラミックコンデンサにて、セラミック誘電体と、下地電極との縁部に着目したものである。積層セラミックコンデンサの製造工程において、セラミック積層体と下地電極とを同時焼成すると、下地電極の縁部にてセラミック誘電体と、下地電極との熱膨張差により密着性が悪くなること(クラック、はがれ)、その後のメッキ処理工程において、セラミック積層体と下地金属との界面において、両者が接続していない部分があると、その部分からメッキ液が侵入すること、との観点から、下地金属の周縁をセラミック積層体に隙間なく接続することにより、メッキ液の侵入による絶縁抵抗を維持できる効果が得られている。
【実施例】
【0036】
以下の実施例、比較例で使用したセラミックスラリー、内部電極形成用導電ペースト、外部部電極形成用導電ペースト、縁取層形成用導電ペーストは以下である。
【0037】
・セラミックスラリー1
アルコキシド法にて作製した平均粒径0.15μmのBaTiO粉末を用い、BaTiO100molに対し、Ho1.0mol、MgO0.4mol、MnO0.1mol、SiO1.5molの割合にて、トルエン中で混合し、ブチラール樹脂を添加してセラミックスラリーを作製した。
【0038】
・セラミックスラリー2
アルコキシド法にて作製した平均粒径0.15μmのBaTiO粉末を用い、BaTiO100molに対し、Ho1.0mol、MgO1.0mol、MnO0.1mol、SiO1.5molの割合にて、トルエン中で混合し、ブチラール樹脂を添加してセラミックスラリーを作製した。
【0039】
・内部電極形成用導電ペースト
平均粒径0.2μmのNi粉末に、共材としてBaTiO粉末とエチルセルロース及びターピネオールを加えて混合し、内部電極形成用導電ペーストを作製した。
【0040】
・下地金属形成用導電ペースト
平均粒径0.5μmのNi粉末に、エチルセルロースとブチルカルビトールを加えて混合し、下地金属形成用導電ペーストを作製した。
【0041】
・縁取層形成用導電ペースト
平均粒径0.2μmのMgO粉末に、エチルセルロースとブチルカルビトールを加えて混合し、縁取層形成用導電ペーストを作製した。
【0042】
(実施例1)
セラミックスラリー1を、PETフィルム上にドクターブレード法により塗布して厚さ3μmグリーンシートを形成した。次に、このグリーンシート上に、スクリーン印刷法により、内部電極形成用導電ペーストを塗布して、未焼成内部電極層を形成した。次に、未焼成内部電極層を形成したグリーンシートを480層積層し、静水圧プレス機により圧着成型した後、焼成後に1.0mm×0.5mmの大きさになるように切断分割して、チップ状未焼成セラミック積層体を作製した。次に、チップ状未焼成セラミック積層体の未焼成内部電極層が露出した端面に、下地金属形成用導電ペーストを、ローラ塗布して、未焼成下地金属を形成した。次に、チップ状未焼成セラミック積層体の最外層の表層であって、未焼成下地金属の周縁に沿って、縁取層形成用導電ペーストを塗布した。そして、脱バインダー炉に投入し、N雰囲気で1260℃、2時間加熱して脱バインダー処理した後、焼成炉に投入して、焼成雰囲気中の酸素分圧(O濃度)を6.2×10−4Paの条件にて、1260℃で2時間保持して焼成を行なった。その後、再酸化を目的とした再酸化処理を1000℃/1h、30Paで実施した後、バレルメッキ法により、Cuメッキ、Sn−Znメッキの順にメッキ層を施して、実施例1の積層セラミックコンデンサを得た。
【0043】
この積層セラミックコンデンサの図1の平面方向から見た写真(120倍拡大)を図5に示す。また、図5の範囲aの部分の電子顕微鏡写真(600倍拡大)を図6に示す。また、図6の範囲bの部分の元素分析結果を図7に示す。
図5〜7に示されるように、この積層セラミックコンデンサは、下地金属の周縁が、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む縁取層で縁取りされていた。
また、この積層セラミックコンデンサについて、DC25Vを印加して1分後、絶縁抵抗試験を行い、抵抗値が10MΩ以上のものを合格とし、抵抗値が10MΩ未満のものを不合格としたところ、試験数100個中、不合格数は0個であった。結果を表1に記す。
【0044】
(実施例2)
実施例1において、セラミックスラリー1の代わりにセラミックスラリー2を用いた以外は、実施例1と同様にしてチップ状未焼成セラミック積層体を作製し、その最外層の表層であって、未焼成下地金属の周縁に沿って、縁取層形成用導電ペーストを塗布した。そして、脱バインダー炉に投入し、N雰囲気で1260℃、2時間加熱して脱バインダー処理した後、焼成炉に投入して、焼成雰囲気中の酸素分圧(O濃度)を3.0×10−4Paの条件にて、1260℃で2時間保持して焼成を行なった。その後、再酸化を目的とした再酸化処理を1000℃/1h、30Paで実施した後、バレルメッキ法により、Cuメッキ、Sn−Znメッキの順にメッキ層を施して、実施例2の積層セラミックコンデンサを得た。
この積層セラミックコンデンサは、下地金属の周縁が、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む縁取層で縁取りされていた。
また、実施例1と同様にして絶縁抵抗試験を行ったところ、試験数100個中、不合格数は0個であった。結果を表1に記す。
【0045】
(比較例1)
実施例1において、縁取層形成用導電ペーストを使用しなかった以外は実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサを得た。この積層セラミックコンデンサは、縁取層が形成されていなかった。また、実施例1と同様にして絶縁抵抗試験を行ったところ、試験数100個中、不合格数は4個であった。結果を表1に記す。
【0046】
(比較例2)
実施例2において、縁取層形成用導電ペーストを使用しなかった以外は実施例2と同様にして積層セラミックコンデンサを得た。この積層セラミックコンデンサは、縁取層が形成されていなかった。また、実施例1と同様にして絶縁抵抗試験を行ったところ、試験数100個中、不合格数は4個であった。結果を表1に記す。
【0047】
【表1】

【符号の説明】
【0048】
1:セラミック誘電体層
2:内部電極層
3:セラミック積層体
4:外部電極
5:下地金属
6:メッキ層
6a:第1メッキ層
6b:第2メッキ層
7:縁取層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、前記内部電極層が交互に異なる端面に露出するように形成されたセラミック積層体と、前記セラミック積層体の内部電極層が露出している端面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、
前記外部電極は、前記セラミック積層体と同時焼成して形成される金属からなる下地金属と、該下地金属を被覆するメッキ層とからなり、
前記下地金属の周縁が、Mgの酸化物と、Ni及び/又はその酸化物とを含む縁取層で縁取りされて、該縁取層と前記セラミック積層体とが接続されていることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記下地金属が、Niである請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、前記内部電極層が交互に異なる端面に露出するように形成されたセラミック積層体と、前記セラミック積層体の内部電極層が露出している端面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
セラミック粉末を少なくとも含有するセラミックスラリーを塗布してグリーンシートを形成する工程と、
前記グリーンシートの表面に第1導体ペーストを印刷して未焼成内部電極層を形成する工程と、
未焼成内部電極層が形成されたグリーンシートを積層し、圧着して未焼成セラミック積層体を製造する工程と、
前記未焼成セラミック積層体をカットする工程と、
カットした未焼成セラミック積層体の前記未焼成内部電極層が露出した端面に、Ni金属を少なくとも含有する第2導電ペーストを塗布して未焼成下地金属を形成する工程と、
前記未焼成下地金属の周縁に、Mg化合物を含有する縁取層形成用ペーストを塗布し、前記未焼成セラミック積層体と前記未焼成下地金属とを同時焼成する工程と、
前記未焼成下地金属を焼成して得られた下地金属の表面をメッキする工程と、を含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−156171(P2012−156171A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11531(P2011−11531)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】