説明

積層セラミックコンデンサ

【課題】積層体においてクラック等の内部破壊が生じにくく大容量且つ小型化に適した積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】複数の誘電体層120と複数の内部電極層110とを交互に積層した積層体10と該積層体10の外面に形成され前記内部電極層110に電気的に接続した外部電極20とを備えた積層セラミックコンデンサ1において、積層体10の外層側部分における隣り合う内部電極層111,112間に形成される電界強度が積層体10の中央部分における隣り合う内部電極層110間に形成される電界強度よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関し、特に積層体内部の積層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは一般的に、複数の誘電体層と複数の内部電極層とを交互に積層してなる積層体と、該積層体の外面に形成前記内部電極層と電気的に接続する外部電極とを備えた構造となっている。また、積層セラミックコンデンサは温度補償系のクラス1と高誘電率系のクラス2に大別される。クラス1の積層セラミックコンデンサでは、誘電体として酸化チタン等を主成分とする低誘電率系誘電体が用いられる。一方、クラス2の積層セラミックコンデンサでは、誘電体としてチタン酸バリウム等を主成分とする高誘電率系誘電体(強誘電体とも言う。)が用いられる。
【0003】
近年、積層セラミックコンデンサの大容量化のために、内部電極層の積層数の増加及び誘電体層の薄層化がすすんでいる。これにともない特にクラス2の積層セラミックコンデンサでは積層体にクラックなど内部構造の破壊が生じる現象が増加してきている。クラックが生じる原因の1つとしては誘電体層の圧電効果が挙げられる。すなわち、強誘電体である誘電体層が圧電性を有していることから、外部電極間に電圧を印加すると誘電体層は内部電極層と並行する方向に変位が生じる。この誘電体層の変位により積層体に歪み応力が残存し、これにより積層体にクラックなどの破壊が生じると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−180956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなクラック発生を防止するための技術として特許文献1に記載されたものが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載のものでは積層体の中央部に応力を緩和するための中間層を設けている。該中間層は、容量形成部に用いられる誘電体と同一材料からなり、その層に接する内部電極層は容量を形成しないような配置としている。
【0007】
しかしながら特許文献1に記載のものは、中間層において容量を形成できないので大容量化・小型化には不利であるという問題がある。また、特許文献1に記載のものは中間層により応力を吸収するという思想であり、中間層においては圧電効果による変位が生じないので、誘電体層の変位がより大きい場合には誘電体層と中間層との界面においてクラックなどの内部破壊が生じるおそれがあると考えられる。同様に、特許文献1に記載のもの及び前述の従来の積層セラミックコンデンサの何れにおいて、最も外側の内部電極層、換言すれば最も表面側の内部電極層よりも外側(表面側)の誘電体層(カバー層と言う)には電圧が印加されないので、該カバー層には圧電効果による変位は生じない。このため変位が生じる誘電体層と変位が生じないカバー層との界面において歪み応力が残存し、クラックなどの内部破壊が生じるおそれがあると考えられる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、積層体においてクラック等の内部破壊が生じにくく大容量且つ小型化に適した積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明は、複数の誘電体層と複数の内部電極層とを交互に積層した積層体と該積層体の外面に形成され前記内部電極に電気的に接続した外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、積層体の外層側部分における隣り合う内部電極層間に形成される電界強度が積層体の中央部分における隣り合う内部電極層間に形成される電界強度よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、積層体の外層側部分(換言すれば積層体の表面側)では誘電体層に生じる電界強度が積層体の中央部分よりも小さいので圧電効果による変位も小さく、したがってカバー層(最も外側の内部電極層、換言すれば最も表面側の内部電極層よりも外側(表面側)の誘電体層)との界面における歪み応力が小さなものとなる。これによりクラック等の内部破壊の発生を軽減することができる。
【0011】
本発明の好適な態様の一例としては、前述の積層セラミックコンデンサにおいて、隣り合う内部電極層間における誘電体の厚みが積層体の中央部分よりも外層側部分の方が厚いことを特徴とするものが挙げられる。本発明によれば、電界強度を小さくするために誘電体の誘電率を変更する必要がないので、全ての誘電体層として同一材料を用いることができるので製造効率が高いものとなる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、積層体の外層側部分(換言すれば積層体の表面側)では誘電体層に生じる電界強度が積層体の中央部分よりも小さいので圧電効果による変位も小さく、したがってカバー層との界面における歪み応力が小さなものとなる。これによりクラック等の内部破壊の発生を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】積層セラミックコンデンサの断面図
【図2】積層セラミックコンデンサの製造工程を説明するフローチャート
【図3】他の例に係る積層セラミックコンデンサの断面図
【図4】他の例に係る積層セラミックコンデンサの断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る積層セラミックコンデンサについて図面を参照して説明する。図1は積層セラミックコンデンサの断面図である。なお本願では説明の簡単のため適宜寸法や形状を模式化している点に留意されたい。
【0015】
積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状の積層体10と、該積層体10の長手方向両端部に形成された一対の外部電極20とを備えている。
【0016】
積層体10は、図1に示すように、複数の内部電極層110と誘電体層120とを交互に積層したセラミック焼結体からなる。内部電極層110は所定の間隔をもって互いに重なり合うように配置されており、その端部は積層体10の何れか一方の端面に交互に露出し、該端面において外部電極20に電気的に接続している。すなわち内部電極層110は一層おきに同一の外部電極20に電気的に接続している。内部電極層110はNi,Cu等の卑金属、Pd,Agなどの貴金属、Ag−Pd合金などを主成分とした金属からなるが、コストダウンの観点からはNiが好適である。また本実施の形態では積層セラミックコンデンサ1は高誘電率系のクラス2であり、誘電体層120はチタン酸バリウムベースの誘電体セラミックからなる。なお、誘電体層120のうち最も外層側(表面側)の内部電極層111よりも外層側のものをカバー層121と呼ぶものとする。
【0017】
外部電極20は、積層体10の表面のうち長手方向両端面から該端面に隣接する側面にまで回り込んで形成されている。外部電極20は、Ni,Cu等の卑金属、Pd,Agなどの貴金属、Ag−Pd合金などを主成分とした金属からなるが、コストダウンの観点からはNi又はCuが好適である。外部電極20の表面には、半田付け性の向上等のために1層又は複層のメッキ層(図示省略)が形成されている。
【0018】
本発明の特徴的な点は積層体10における層構造にある。すなわち、本発明では、積層体10の最も外層側部分(換言すれば積層体10の表面側部分)における隣り合う内部電極層110間に形成される電界強度が積層体10の中央部分における隣り合う内部電極層110間に形成される電界強度よりも小さいことを特徴とする。そして、本実施の形態では内部電極層110間の距離すなわち誘電体層120の厚みをもって電界強度を制御する。
【0019】
図1の例では、積層体10の最も外層側の内部電極層111(換言すればカバー層121に隣接する内部電極層111)と該内部電極層1111に隣り合う内層側の内部電極層112の間の誘電体層122の厚みD1が、他の全ての内部電極層110間の誘電体層120の厚みD0よりも厚い。これにより内部電極層111及び112間の誘電体層122における電界強度E1は、他の全ての内部電極層110間の誘電体層120における電界強度E0よりも小さくなる。一方、カバー層121には電界は生じない。したがって、積層体10の内部において圧電効果により生じる変位は、(カバー層121における変位=0)<(誘電体層122における変位)<(他の誘電体層120における変位)という関係になる。これにより各内部電極層110・各誘電体層120間の界面において残存する歪み応力が過大になることを防止できる。特に、カバー層121と最も外層側の内部電極層111との境界面における歪み応力が小さなものとなる。これによりクラック等の内部破壊の発生を軽減することができる。
【0020】
次に本実施の形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法について図2のフローチャートを参照して説明する。まず誘電体セラミックを形成する原料粉末、有機バインダ、溶剤及びその他添加剤を混合してセラミックスラリーを作成する(ステップS1)。次に、セラミックスラリーをドクターブレード法などによりシート状に形成・乾燥してセラミックグリーンシートを得る(ステップS2)。ここでセラミックグリーンシートは、前記誘電体層122用、他の誘電体層120、カバー層121用にそれぞれ厚みが異なり、少なくとも誘電体層122用の厚み<他の誘電体層120用の厚みとなっている。カバー層121用のセラミックグリーンシートの厚みについては不問であるが、積層工程の削減などの観点からは各誘電体層120,122用よりも厚くするのが好ましい。次にセラミックグリーンシートに所定のパターン形状で内部電極用の導電性ペーストを印刷する(ステップS3)。該導電性ペーストには共生地としてセラミック原料粉を所定分量混合しておくと好適である。次に、導電性ペーストを印刷したセラミックグリーンシートを所定のパターン・枚数積層した後に圧着してシート積層体を得る(ステップS4)。次にシート積層体を個別チップに切断した後に(ステップS5)、バレル研磨などで個別チップの表面を研磨する(ステップS6)。次に、研磨後の個別チップに対して大気中又は窒素等の非酸化性ガス中で脱バインダ処理を行う(ステップS7)。次に、脱バインダ処理後の個別チップの内部電極露出面に外部電極用の導電ペーストを塗布する(ステップS8)。次に、導電性ペーストを塗布した個別チップを所定の温度の窒素―水素雰囲気中で焼成する(ステップS9)。最後に、外部電極の表面にメッキ処理を施して積層セラミックコンデンサ1が得られた(ステップS10)。
【0021】
このように本発明によれば、積層体10の外層側部分では誘電体層122に生じる電界強度が積層体10の中央部分よりも小さいので圧電効果による変位も小さく、したがってカバー層121との界面における歪み応力が小さなものとなる。これによりクラック等の内部破壊の発生を軽減することができる。
【0022】
以上本発明の一実施の形態について詳述したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施の形態では、最も外層側の内部電極層111の内側に位置する1層の誘電体層122を他の誘電体層120よりも厚く形成していたが、図3に示すように、他の誘電体層120よりも厚い誘電体層122を複数形成してもよい。また例えば、図4に示すように、最も外層側の内部電極層111の内側に位置する誘電体層122から中心側にむかって徐々に誘電体層の厚みが小さくなるようにしてもよい。
【0023】
また、上記実施の形態では1回路のコンデンサを有するものについて説明したが、多回路のコンデンサを有するコンデンサアレイであっても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1…積層セラミックコンデンサ、10…積層体、110,111,112…内部電極層、120,122…誘電体層、121…カバー層、20…外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の内部電極層とを交互に積層した積層体と該積層体の外面に形成され前記内部電極に電気的に接続した外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサにおいて、
積層体の外層側部分における隣り合う内部電極層間に形成される電界強度が積層体の中央部分における隣り合う内部電極層間に形成される電界強度よりも小さい
ことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
隣り合う内部電極層間における誘電体の厚みが積層体の中央部分よりも外層側部分の方が厚い
ことを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−222290(P2012−222290A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89266(P2011−89266)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】