説明

積層フィルムおよびガスバリアフィルムの放熱性改善方法

【課題】ガスバリアフィルムの放熱性を改善する。
【解決手段】基材フィルム上に、少なくとも1つの有機領域と少なくとも1つの無機領域とからなる有機/無機積層体を2回以上積層してなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムと、金属層と有することを特徴とする、積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび、ガスバリアフィルムの放熱性改善方法に関する。また、前記積層フィルムを用いた有機EL素子等の環境感受性デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、少なくとも1層の有機領域と、少なくとも1層の無機領域からなる有機/無機積層体を2回以上積層してなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムが知られている。このような、いわゆる有機無機積層型のガスバリアフィルムは、ガスバリア性には優れているが、熱伝導が悪くなり、放熱性に劣る場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−238446号公報
【特許文献2】特開2005−254795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来のガスバリアフィルムで問題となっていた、ガスバリアフィルムの放熱性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題のもと、本発明者が鋭意検討した結果、金属層を設けることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
(1)基材フィルム上に、少なくとも1つの有機領域と少なくとも1つの無機領域とからなる有機/無機積層体を2回以上積層してなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムと、金属層とを有することを特徴とする、積層フィルム。
(2)金属層が、Al、Ni、Co、Cr、Ti、Ag、PtおよびCuから選択される少なくとも1種を含む、(1)に記載の積層フィルム。
(3)金属層の厚みが、0.1〜1000μmである、(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4)金属層と、基材フィルムと、ガスバリア層とを該順に有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の積層フィルム。
(5)基材フィルム上に、少なくとも1つの有機領域と少なくとも1つの無機領域とからなる有機/無機積層体を2回以上積層してなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムに、金属層を設けることを特徴とする、ガスバリアフィルムの放熱性改善方法。
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の積層フィルムを用いた環境感受性デバイス。
(7)前記環境感受性デバイスが、有機EL素子である、(6)に記載の表示素子。
(8)前記環境感受性デバイスが、トップエミッション型有機EL素子である、(6)に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ガスバリアフィルムの放熱性を改善することが可能になった。そのため、得られる環境感受性デバイスの性能劣化を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0008】
本発明の積層フィルムは、基材フィルムと、少なくとも1つの有機領域と少なくとも1つの無機領域とからなる有機/無機積層体を2回以上積層してなるガスバリア層とを有する、いわゆる、有機無機積層型ガスバリアフィルムと、金属層とを有することを特徴とする。金属層は、ガスバリアフィルムの基材フィルム側、ガスバリア層側のいずれに設けられていても、両側に設けられていても良いが、好ましくは、少なくとも基材フィルム側に設けられている構成である。金属層を基材フィルム側に設けることにより、有機無機積層型ガスバリアフィルムの熱伝導を向上させることができ、結果として、有機無機積層型がスバリアフィルムの放熱性を向上させることができる。
さらに、本発明の積層フィルムは、金属層を設けることにより、軽量化を図ることができ、また、耐屈曲性に優れたものとすることができる。
【0009】
(金属層)
本発明における金属層は、金属箔であっても良いし、基材フィルム上等に金属層を製膜したものであってもよい。金属箔を用いる場合、金属箔は、接着剤、熱溶着等で貼り付けることが好ましい。一方、金属層を製膜する場合、金属を蒸着する方法やスタッパ法等が用いられる。
金属層の材料は、公知の金属から広く選択することができ、熱伝導性を向上させる観点から、Al、Ni、Co、Cr、Ti、Ag、Pt、Cuから選択されることが好ましく、Al、Ni、CoおよびTiから選択されることがより好ましい。金属層は、1種類の金属のみからなっても、2種類以上の金属合金からなってもよい。さらに、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の成分を含んでいてもよい。
また、金属層は1層のみであっても、2層以上設けられていてもよい。金属層の厚さは特に定めるものではないが、積層フィルムの放熱性を考慮すると、0.1〜1000μmであることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましい。
【0010】
(ガスバリアフィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは大気中の酸素、水分を遮断する機能を有するガスバリア層を有するフィルムである。本発明におけるガスバリア層は、少なくとも1つの有機領域(好ましくは有機層)と少なくとも1つの無機領域(好ましくは無機層)とからなる有機/無機積層体を2回以上積層してなる層有機無機積層型であることが好ましい。
有機領域と無機領域より構成される場合、各領域が膜厚方向に連続的に変化するいわゆる傾斜材料層であってもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(20005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層と無機層が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。以降、簡略化のため、有機層と有機領域は「有機層」として、無機層と無機領域は「無機層」として記述する。
カスバリアフィルムを構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。なお、ガスバリア層は基材フィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。両面に設ける場合、金属層、ガスバリア層、基材フィルム、ガスバリア層の順に設けられていることが好ましい。また、金属層、ガスバリア層、基材フィルム、ガスバリア層、金属層の順に設けられていることも好ましい。
【0011】
(基材フィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機層、無機層等の積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、金属支持体(アルミニウム、銅、ステンレス等)ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0012】
本発明の積層フィルムは、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
【0013】
本発明では、プラスチックフィルムとして透明な材料および不透明な材料のいずれも用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明の積層フィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるので特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0014】
(無機層)
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、塗布法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
前記無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましく、特に、SiまたはAlの金属酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
前記無機層の厚みに関しては特に限定されないが、5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、10nm〜200nmである。また、2層以上の無機層を積層してもよい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であっても良い。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であっても良い。
【0015】
(有機層)
有機層は、通常、ポリマーの層である。具体的には、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、などの熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン、その他有機珪素化合物の層である。有機層は単独の材料からなっていても混合物からなっていてもよい。2層以上の有機層を積層してもよい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように無機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0016】
有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。有機層の平滑性は10μm角の平均粗さ(Ra値)として10nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。有機層の膜硬度は鉛筆硬度としてHB以上の硬さを有することが好ましく、H以上の硬さを有することがより好ましい。有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難となるし、厚すぎると外力や硬化時の収縮などに起因する内部応力によりクラックを発生し、バリア性能が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは、10nm〜2000nmが好ましく、100nm〜1000nmさらに好ましい。
【0017】
有機層の形成方法としては、通常の溶液塗布法、あるいは真空成膜法等を挙げることができる。溶液塗布法としては、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。また、ポリマーの前駆体(例えば、重合性化合物)を成膜後、重合することによりポリマー層を形成させても良い。本発明に用いることができる好ましいモノマーとしては、アクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。アクリレートおよびメタクリレートの好ましい例としては、例えば、米国特許6083628号明細書、米国特許6214422号明細書に記載の化合物が挙げられる。これらの一部を以下に例示する。
【0018】
本発明においては、好ましくはラジカル重合性化合物および/またはエーテル基を官能基に有するカチオン重合性化合物の重合物から構成された有機層である。
(重合性化合物)
本発明で用いる重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物(アクリレートとメタクリレートをあわせて(メタ)アクリレートと表記する)、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0019】
(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
【0020】
以下に、(メタ)アクリレート系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
モノマー重合法としては特に限定は無いが、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせが好ましく用いられる。加熱重合を行う場合、基材となる基材フィルムは相応の耐熱性を有する必要がある。この場合、少なくとも、加熱温度よりも基材フィルムのガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましい。
光重合を行う場合は、光重合開始剤を併用する。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、サートマー(Sartomer)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZTなど)等が挙げられる。
照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.5J/cm2以上が好ましく、2J/cm2以上がより好ましい。アクリレート、メタクリレートは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0028】
このとき、モノマーの重合率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。
【0029】
(機能層)
本発明の積層フィルムは、ガスバリア層上に機能層を有していても良い。機能層の例としては、基材フィルムの項で述べたものと同様の層が用いられる。
特に、本発明の積層フィルムにおいて、金属層が、ガスバリア層に設けられている場合、該金属層とガスバリア層の間に絶縁層を設けることが好ましい。絶縁層を設けることにより、環境感受性デバイスなどに用いた場合のショートをより効果的に抑制することができる。絶縁層は、絶縁性を有する物質であれば、その種類は特に定めるものではないが、好ましくは、SiO2、Si34、Al23、BaTiO3、HfO2であり、より好ましくは、SiO2、Si34、Al23である。
【0030】
(環境感受性デバイス)
本発明の積層フィルムは、環境感受性デバイスに好ましく用いることができる。ここで、環境感受性デバイスとは、環境中に存在する物質、たとえば酸素、水分による影響を受けて性能が変化するデバイスをいい、例えば、画像表示素子、有機メモリー、有機電池、有機太陽電池等が挙げられる。
本発明における画像表示素子とは、円偏光板・液晶表示素子、タッチパネル、有機EL素子などを意味する。
【0031】
液晶表示素子
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明における積層フィルムは、前記下基板および反射電極として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Alignment)型、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
【0032】
有機EL素子
有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。本発明における積層フィルムは、有機EL素子の封止フィルムや基板となる。有機EL素子は、基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に発光層を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明である。本願発明ではトップエミッション型でもボトムエミッション型であっても良く、トップエミッション型であることが好ましい。
【0033】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。また、発光層としては一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0034】
次に、有機EL素子を構成する各要素について、詳細に説明する。
基板
本発明における有機EL素子に用いられる基板は、公知の有機EL素子に用いられる基板が広く採用できる。有機EL基板は、樹脂フィルムであってもよいし、ガスバリアフィルムであってもよい。ガスバリアフィルムの場合、特開2004−136466号公報、特開2004−148566号公報、特開2005−246716号公報、特開2005−262529号公報等に記載のガスバリアフィルムも好ましく用いることができる。もちろん、本発明の積層フィルムを用いることもできる。
【0035】
本発明で用いる基板の厚みは、特に規定されないが30μm〜700μmが好ましく、より好ましくは40μm〜200μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。さらに光取り出し側の基板はいずれの場合もヘイズは3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、全光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
本発明の積層フィルムは有機EL素子の光取り出し側で無い側の基板として用いることができる。
【0036】
陽極
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。上述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述がある。基板として耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0037】
陰極
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0038】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としては2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0039】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属または2属金属との合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されている。また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。
【0040】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0041】
発光層
有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、有機発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0042】
−有機発光層−
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子との再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、ドーパントは1種であっても2種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0043】
前記蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0044】
前記燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
前記遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。
前記ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
【0045】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0046】
また、発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0047】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0048】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0049】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。また、電子輸送層・電子注入層が正孔ブロック層の機能を兼ねていてもよい。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
また、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層を、発光層と陽極側で隣接する位置に設けることもできる。正孔輸送層・正孔注入層がこの機能を兼ねていてもよい。
【0050】
TFT表示素子
本発明における積層フィルムは、薄膜トランジスタ(TFT)画像表示素子用基板として用いることができる。TFTアレイの作製方法としては、特表平10−512104号公報に記載されている方法等が挙げられる。さらにこの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターはいかなる方法を用いて作製されてもよいが、好ましくはフォトリソグラフィー手法を用いることが好ましい。
【0051】
太陽電池
本発明のバリア性フィルム基板ガスバリアフィルムは、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、本発明のバリア性フィルム基板ガスバリアフィルムは、接着層が太陽電池素子に近い側となるように封止することが好ましい。本発明のバリア性フィルム基板ガスバリアフィルムが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0053】
[実施例1] 積層フィルムの作製と評価
ガスバリアフィルムの作製
基材フィルム上に無機層と有機層を設けたガスバリアフィルム(試料No.101、102)を下記の手順にしたがって作製した。各ガスバリアフィルムの層構成は表1に記載されるとおりである。基材フィルムには、ポリエチレンナフタレート(PEN、厚み100μm、帝人デュポン(株)製、Q65A)フィルムを用いた。
【0054】
[1]無機層(X)の形成
リアクティブスパッタリング装置を用いて、酸化アルミニウムの無機層を形成した。以下に具体的な成膜条件を示す。
リアクティブスパッタリング装置の真空チャンバーを、油回転ポンプとターボ分子ポンプとで到達圧力5×10-4Paまで減圧した。次にプラズマガスとしてアルゴンを導入し、プラズマ電源から電力2000Wを印加した。チャンバー内に高純度の酸素ガスを導入し、成膜圧力を0.3Paになるように調整して一定時間成膜し、酸化アルミニウムの無機層を形成した。得られた酸化アルミニウム膜は、膜厚が40nmで、膜密度が3.01g/cm3であった。
【0055】
[2]有機層(Y、Z)の形成
有機層は、常圧下での溶剤塗布による成膜方法(有機層Y)と、減圧下でフラッシュ蒸着法による成膜方法(有機層Z)の二通りを用いて行った。以下に具体的な成膜内容を示す。
[2−1]常圧下での溶剤塗布による成膜
有機層(Y)の成膜
光重合性アクリレートとしてトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA、ダイセル・サイテック製)9g、および光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、イルガキュア907)0.1gを、メチルエチルケトン190gに溶解させて塗布液とした。この塗布液を、ワイヤーバーを用いて基材フィルムに塗布し、酸素濃度0.1%以下の窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度350mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して有機層Yを形成した。膜厚は、約500nmであった。
【0056】
[2−2]減圧下でフラッシュ蒸着法による成膜
有機層(Z)の成膜
ヴァイテックス・システムズ社より市販されているBRS-0101を蒸着液として使用した。この蒸着液を、真空チャンバーの内圧が3Paの条件でフラッシュ蒸着法により基材フィルムに蒸着した。続いて同じ真空度の条件で、照射量2J/cm2の紫外線を照射して有機層Zを形成した。膜厚は、約1200nmであった。有機層Zの形成には、有機無機積層成膜装置(Guardian200、ヴァイテックス・システムズ社製)を用いて実施した。
【0057】
[3]ガスバリア層の積層
ガスバリア層は、基材フィルムに上記の無機層と有機層を表1に記載された各試料の構成に従って順次形成することで作製した。また作製の方法は、次の二通りで行った。
[3−1]溶剤塗布による有機層形成と減圧下での無機層形成を繰り返す方法(積層A、有機層Y/無機層Xの積層))
基材フィルム上に有機層と無機層を交互に積層した。有機層の上に無機層を積層する時は、溶剤塗布で有機層を成膜した後に真空チャンバーに入れて減圧し、真空度が10-3Pa以下の状態で一定時間保持してから無機層を成膜した。また無機層の上に有機層を積層する時は、無機層を成膜後直ちに、溶剤塗布で有機層を成膜した。
[3−2]減圧下で有機層と無機層を一貫成膜する方法(積層B、有機層Z/無機層Xの積層))
上述の有機無機積層成膜装置Guardian200を用い、有機層と無機層を積層した。この装置は、有機層および無機層とも減圧環境下で成膜を行い、且つ有機層と無機層の成膜チャンバーが連結しているので、減圧環境下で連続成膜することが可能である。そのため、バリア層が完成するまで大気に開放されることがない。
【0058】
【表1】

【0059】
積層フィルムの作製
[金属層の設置]
上記で作製したガスバリアフィルム(試料101、102)の基材フィルム側に、金属アルミ箔(東洋アルミニウム(株)製、純度99.3%、厚み:70μm)を熱硬化性接着剤(エポテック310、ダイゾーニチモリ(株))を用いて貼り付けた(試料103、104)。
また、上記で作製したガスバリアフィルム(試料101、102)のガスバリア層側に、金属アルミ箔(東洋アルミニウム(株)製、純度99.3%、厚み:70μm)を熱硬化性接着剤(エポテック310、ダイゾーニチモリ(株))を用いて貼り付けた(試料105、106)。
【0060】
[有機EL素子の作製]
前記金属層を設けたガスバリアフィルム(試料103〜106)を基板として用い、基材に対してガスバリア層側の表面にITOターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、厚み0.2μmのITO薄膜からなる透明電極を形成した。
ここで、前記金属層をガスバリア層側に有する試料(試料105、106)においては、金属層上に絶縁層として0.2μmのSiO2薄膜を形成し、その上に前記ITO薄膜を形成した。
ITO電極(陽極)が設けられた側の上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン:膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム:膜厚60nm
最後にフッ化リチウムを1nm、金属アルミニウム1nm、金属銀を20nmを順次蒸着して陰極とし、その上に厚さ3μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作製した。
また、比較用有機EL素子として、上記で作製したガスバリアフィルム(試料101、102)を基板として、上記と同様に有機EL素子を作製した(試料101、102)。
【0061】
[放熱による有機EL素子の劣化評価]
上記により作製した有機EL素子(10mm角)に、ドライブ電流密度50mA/cm2、室温環境(25℃)で、ドライブし続け、100時間後と300時間後の素子の点灯状態を確認した。その結果を表に示す。下記表2から明らかなとおり、試料101および102については、点灯直後は点灯していたが、わずか100時間後には熱破壊してしまい、点灯しなかった。
【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、少なくとも1つの有機領域と少なくとも1つの無機領域とからなる有機/無機積層体を2回以上積層してなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムと、金属層とを有することを特徴とする、積層フィルム。
【請求項2】
金属層が、Al、Ni、Co、Cr、Ti、Ag、PtおよびCuから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
金属層の厚みが、0.1〜1000μmである、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
金属層と、基材フィルムと、ガスバリア層とを該順に有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
基材フィルム上に、少なくとも1つの有機領域と少なくとも1つの無機領域とからなる有機/無機積層体を2回以上積層してなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムに、金属層を設けることを特徴とする、ガスバリアフィルムの放熱性改善方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルムを用いた環境感受性デバイス。
【請求項7】
前記環境感受性デバイスが、有機EL素子である、請求項6に記載の表示素子。
【請求項8】
前記環境感受性デバイスが、トップエミッション型有機EL素子である、請求項6に記載の表示素子。

【公開番号】特開2009−298135(P2009−298135A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238942(P2008−238942)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】