説明

積層体

【課題】 本発明は、有機材料で形成された基材上に真空製膜法で形成された蒸着層を形成された場合でも、高度な密着性を有する積層体を提供することを主目的とする。
【解決手段】 本発明は、有機材料で形成された基材と、上記基材の片面または両面に真空製膜法で形成された中間層と、上記中間層上に無機酸化物を真空製膜法で製膜した蒸着層とを有し、上記中間層が有機成分と無機成分とを有する蒸着膜であることを特徴とする積層体を提供することにより上記目的を達成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム等の有機材料で形成された基材上に無機材料からなる蒸着膜を積層してなり、ガスバリアフィルム等に用いることができる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製フィルム状に酸化金属膜を真空製膜法により製膜して、ガスバリア性フィルムもしくは反射防止膜等の用途に用いることが知られている。具体的には、ガスバリア性を有する膜を高分子樹脂基材上に乾式成膜する方法として、プラズマCVD法等の乾式成膜法を用いて酸化珪素膜(シリカ膜)や酸化アルミニウム膜(アルミナ膜)を形成する方法(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3など)等を挙げることができる。
【0003】
しかしながら、このように樹脂製フィルム上に酸化金属膜を蒸着させる場合、有機物上に無機物が直接積層されることになり、両者の密着性に問題が生じる場合があった。また、密着性を改良する目的で、樹脂製フィルム上にアンカーコート層を形成し、この上に金属酸化膜からなる蒸着膜を製膜する方法が行われている。しかしながら、この方法では、湿式工程を工程中に組み込む必要があることから、製造効率上好ましくない場合があった。
【0004】
また、フレキシブルな樹脂製フィルム上に蒸着膜を形成するものであるので、用途によってはより高い密着性が要求される場合があり、このような場合は、アンカーコート層のみでは不十分な場合があった。
【0005】
さらに、樹脂製フィルム上に直接ガスバリア性もしくは反射防止性といった機能性を有する真空製膜法による膜を積層すると、製膜条件によっては樹脂製フィルム表面がダメージを受けることがあり、このような場合は、樹脂製フィルムと上記機能性を有する真空製膜法による膜との密着性が低下してしまう場合があった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−176326号公報
【特許文献2】特開平11−309815号公報
【特許文献3】特開2000−6301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、有機材料で形成された基材上に真空製膜法で形成された蒸着層を形成された場合でも、高度な密着性を有する積層体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載するように、有機材料で形成された基材と、上記基材の片面または両面に真空製膜法で形成された中間層と、上記中間層上に無機酸化物を真空製膜法で製膜した蒸着層とを有し、上記中間層が有機成分と無機成分とを有する蒸着膜であることを特徴とする積層体を提供する。
【0009】
この発明によれば、有機材料で形成された基材上に有機成分と無機成分とを有する真空製膜法による蒸着膜が形成され、その上に無機酸化物からなる蒸着層が形成されたものであるので、基材および中間層、さらには中間層および蒸着層の密着性が良好であることから、積層体としての密着性を極めて良好なものとすることができる。したがって、このような積層体がフレキシブル性を要求される包装材等の用途に用いられた場合であっても、蒸着層の剥離に伴うガスバリア性といった各種機能性の低下が生じることがない。
【0010】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記中間層は、上記基材側の有機成分の濃度が、上記蒸着層側の有機成分の濃度より高くなるように形成されていることが好ましい。このような中間層であれば、基材と中間層との密着性及び中間層と蒸着層との密着性を極めて高いものとすることができ、積層体としての密着性を高い水準のものとすることができるからである。
【0011】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記中間層が、CVD法またはプラズマ重合法により形成されたものであることが好ましい。基材に対して熱的なダメージを与えることなく中間層を形成することが可能であり、かつ中間層の有機成分および無機成分の割合の調整等を比較的容易に行うことができるからである。
【0012】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記中間層が、金属骨格からなり炭素を含む置換基を有する有機膜であることが好ましい。ここで、請求項5に記載するように、上記金属骨格が、珪素(Si)、チタン(Ti)もしくはアルミニウム(Al)、またはこれらと酸素(O)とから構成されるものであることが好ましく、また請求項6に記載するように、上記炭素を含む置換基が、−CHもしくは−C(ここで、p+q=3、pは0〜3であり、またr+s=5、rは0〜5である。)で示される置換基であることが好ましい。
【0013】
上記請求項4に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記金属骨格からなり炭素を含む置換基を有する有機膜が、Si(CHもしくは(SiO)(CH(ここで、p+q=3、pは0〜3である。)で示される有機シリコン系材料またはその重合膜であることが好ましく、中でも請求項8に記載するように、上記金属骨格からなり炭素を含む置換基を有する有機膜が、Si(CHもしくは(SiO)(CHで示される有機シリコン系材料またはその重合膜であることが特に好ましいといえる。
【0014】
上記請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項9に記載するように、上記中間層の膜厚が、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より中間層の膜厚が薄い場合は、中間層として十分な密着性を得ることができないことから好ましくなく、上記範囲より中間層の膜厚を厚くしても密着性が向上するものではなく、むしろコスト面でデメリットが生じるからである。
【0015】
上記請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項10に記載するように、上記基材上にアンカーコート層が形成され、その上に上記中間層が形成されているものであってもよい。より高い密着性を要求される場合は、このようなアンカーコート層を用いて密着性を向上させてもよい。
【0016】
本発明においては、請求項11に記載するように、請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載の積層体を有し、上記蒸着層が、ガスバリア性を示す層であることを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
【0017】
本発明のガスバリアフィルムは、ガスバリア性を有する蒸着層が基材に対して良好な密着性を有するものであるので、例えば高いフレキシブル性が要求されるような用途、例えば包装材等に用いられた場合でも、使用による蒸着層の剥離等が生じることがなく、高いガスバリア性を維持することが可能である。
【0018】
上記請求項11に記載された発明においては、請求項12に記載するように、上記蒸着層が、CVD法により形成された酸化珪素膜であることが好ましい。CVD法を用いれば、基材に対して熱的なダメージを与えることなくガスバリア性を有する蒸着層を形成することができるからであり、さらにガスバリア性の面から酸化珪素膜とすることが好ましいからである。
【0019】
上記請求項12に記載された発明においては、請求項13に記載するように、上記酸化珪素膜が、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなっており、さらに1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収があることが好ましい。ガスバリア性を有する層として作用する酸化珪素膜の成分割合とIR吸収とからなる特性を、上記の範囲内に制御したことによって、極めてガスバリア性に優れたガスバリアフィルムとすることができる。こうした特性を有する酸化珪素膜は、緻密で不純物の少ないSiOライクな膜であるといえる。
【0020】
上記請求項13に記載された発明においては、請求項14に記載するように、上記酸化珪素膜は、屈折率が1.45〜1.48であることが好ましい。ガスバリア性を有する層として作用する酸化珪素膜の屈折率を、上記の範囲内に制御することによって、ガスバリア性をより一層向上させることができるからである。
【0021】
上記請求項11から請求項14までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項15に記載するように、上記酸化珪素膜は、厚さが5〜300nmであることが好ましい。
【0022】
また、本発明は請求項16に記載するように、無機材料で形成された基材と、上記基材の片面または両面に真空製膜法で形成された中間層と、上記中間層上に有機成分を真空製膜法で製膜した蒸着層とを有し、上記中間層が有機成分と無機成分とを有する蒸着膜であることを特徴とする積層体を提供する。
【0023】
このように無機材料で形成された基材上に有機成分を真空製膜法により形成した蒸着層を積層する場合においても、密着性が問題となる場合がある。このような場合に、上述したような中間層を形成することにより、良好な密着性を有する積層体とすることができるからである。
【0024】
上記請求項14に記載された発明においては、請求項17に記載するように、上記中間層は、上記基材側の有機成分の濃度が、上記蒸着層側の有機成分の濃度より低くなるように形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、より基材と中間層との密着性、および中間層と蒸着層との密着性を向上させることができ、積層体としての密着性を高度のものとすることができるからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、有機材料で形成された基材上に有機成分と無機成分とを有する真空製膜法による蒸着膜が形成され、その上に無機酸化物からなる蒸着層が形成されたものであるので、基材および中間層、さらには中間層および蒸着層の密着性が良好であることから、積層体としての密着性を極めて良好なものとすることができる。したがって、このような積層体がフレキシブル性を要求される包装材等の用途に用いられた場合であっても、蒸着層の剥離に伴うガスバリア性といった各種機能性の低下が生じることがないといった効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の積層体は、有機材料で形成された基材と、上記基材の片面または両面に真空製膜法で形成された中間層と、上記中間層上に無機酸化物を真空製膜法で製膜した蒸着層とを有し、上記中間層が有機成分と無機成分とを有する蒸着膜であることを特徴とするものである。
【0027】
以下、本発明の積層体について図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明の積層体の構成の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、この例の積層体は、基材1と、当該基材1の表面に真空製膜法により形成された中間層2と、この中間層2上に真空製膜法により形成された蒸着層3とから構成されている。また、本発明においては、図2に示すように、上記中間層2と基材1との間にアンカーコート層4が形成されたものであってもよい。
以下、このような中間層、蒸着層、および基材、さらにはアンカーコート層について、それぞれ説明する。
【0028】
1.中間層
本発明に用いられる中間層は、基材の片面または両面に真空製膜法により形成されたものであり、有機成分と無機成分とを有する蒸着膜である。このように本発明において用いられる中間層は、有機成分と無機成分とを有するものであるので、有機材料で形成された基材との密着性も良好であり、かつ無機酸化物を真空製膜法で製膜した蒸着層との密着性も良好とすることができる。したがって、フレキシブル性が要求される用途においても蒸着層が剥離することなく基材上に保持されることから、蒸着層の剥離によるガスバリア性等の各種機能性の低下が生じることがない。
【0029】
また、基材上に直接蒸着層を形成する場合は、蒸着層の製膜条件によっては、基材表面を傷つける可能性があり、その結果蒸着層と基材との密着性を阻害する場合があった。このため、蒸着層を製膜する際に、基材にダメージを与えない条件で行う必要が生じ、蒸着層の成分等によっては層形成の設計の自由度が低下するといった問題があった。
【0030】
本発明においては、予め基材上に基材表面にダメージを与えない条件で中間層を製膜しておくことが可能であることから、例えばガスバリア性を有する蒸着層を製膜するに当り、基材表面に対する影響等を無視して製膜条件を設定することが可能となり、蒸着層の製膜にあたり、製膜条件の設定の自由度を大幅に向上させることができる。
【0031】
このような中間層は、上述したように真空製膜法で形成された膜であって、成分として有機成分および無機成分を含有するものであれば特に限定されるものではない。
【0032】
ここで、本発明における中間層は、上記有機成分の濃度が、有機材料で形成された基材側で高く、無機酸化物を真空製膜法により製膜してなる蒸着層側で低くなるように構成されることが好ましい。
【0033】
このように、中間層内において有機成分を有機材料で形成された基材側を高く、無機酸化物を真空製膜法により製膜してなる蒸着層側で低くなるように構成することにより、中間層と基材との密着性および中間層と蒸着層との密着性のいずれをも向上させることが可能となり、積層体としての密着性を極めて高くすることができるからである。
【0034】
本発明においては、中間層は真空製膜法により形成されたものであれば特に限定されるものではないが、中間層内の有機成分の濃度の変更を行うことが好ましい点、および基材表面を傷つけないで製膜することが好ましい点等の観点から、CVD法、特にプラズマCVD法により中間層が形成されていることが好ましい。なお、中間層内の濃度の変更はCVD法によるものに限定されるものではなく、例えば有機成分の濃度の高い材料と低い材料との2種類の材料を用いて、蒸着法により製膜する方法等を用いるものであってもよい。
【0035】
このような中間層を構成する物質としては、具体的には、金属骨格からなり炭素を含む置換基を有する有機膜であることが好ましい。本発明においては、この炭素を含む置換基の量を変更することで有機成分の濃度を変化させることが可能である。
【0036】
上記金属骨格としては、真空製膜法により製膜が可能であり、かつ炭素を含む置換基が結合できる骨格であれば特に限定されるものではないが、製膜が容易でかつ原料が入手し易い点等を考慮して、珪素(Si)、チタン(Ti)もしくはアルミニウム(Al)、またはこれらと酸素(O)とから構成されるものであることが好ましく、中でも珪素(Si)もしくは酸化珪素(SiO)を金属骨格とするものが特に好ましい。
【0037】
このような金属骨格は、単一の金属で構成されるものであってもよいし複数種類の金属が用いられたものであってもよい。
【0038】
また、上記炭素を含む置換基としては、−CHもしくは−C(ここで、p+q=3、pは0〜3であり、またr+s=5、rは0〜5である。)で示される置換基であることが好ましく、中でも−CH(ここで、p+q=3、pは0〜3である。)であることが好ましい。
【0039】
このように置換基にフッ素が含有されていることにより、例えば基材がフッ素系の有機材料で形成されたものであった場合でも、中間層を基材との密着性を向上させることができる。
【0040】
一方、通常のフッ素を含まないような有機材料で形成された基材に対しては、置換基がメチル基であるものが好ましい。したがって、本発明においては、基材がフッ素を含まない有機材料で形成されている場合は、Si(CHもしくは(SiO)(CHで示される有機シリコン系材料またはその重合膜で中間層が形成されていることが好ましいといえる。ここで、上記式中のXおよびYは、X=1の場合、Y=2〜4の範囲内であり、X≧2の場合、Y=2〜(4X−2)の範囲内である。
【0041】
本発明においては、上述したように基材側で有機成分の濃度を高くし、蒸着層側で有機成分の濃度を低くした中間層が好ましいのであるが、このような中間層を形成する方法としては、大きく分けて有機成分の濃度の異なる複数の層からなる中間層を形成する方法と、一層の中間層の中で有機成分の濃度勾配を形成する方法とがある。
【0042】
まず、有機成分の濃度の異なる複数の層からなる中間層を形成する方法について説明する。このような方法の一例として、例えば図3に示すようなバッチ式の方法を挙げることができる。すなわち、図3(a)に示すように、まず有機材料からなる基材1上に、例えば原料ガスの比率をHMDSO(ヘキサメチルジシロキサン):O=10:0としてプラズマCVD法により成膜した極めて有機成分の濃度の高い第1中間層2aを形成する。次いで、HMDSO:O=5:5とした有機成分の濃度が中程度の第2中間層2bを成膜する(図3(b))。そして、さらにHMDSO:O=1:9として有機成分の濃度の低い第3中間層2cを形成する(図3(c))。そして最後に、真空成膜法により形成された、無機成分からなる薄膜3、例えば酸化珪素膜等を形成する方法である(図3(d))。
【0043】
図4は、この方法を巻き取り式に応用した例である。この例では、有機成分からなる基材1が連続してチャンバーA、チャンバーB、およびチャンバーCの順で通過する。そして、上記チャンバーAのガス導入口11aからは、例えば原料ガスの比率をHMDSO:O=10:0原料ガスが導入されており、電極12aとの間に生じるプラズマにより成膜されて、まず有機成分の高い第1中間層を形成する。次にチャンバーBにおいて、ガス導入口11bからHMDSO:O=5:5とした原料ガスが導入され、同様に電極12bとの間での放電により生じるプラズマにより、有機成分濃度が中程度の第2中間層を形成する。そして最後に、チャンバーCにおいて、ガス導入口11cからHMDSO:O=1:9とした原料ガスが導入され、同様に電極12cとの間での放電により生じるプラズマにより、有機成分濃度の低い第3中間層を形成する。そして、次工程において真空成膜法により形成された、無機成分からなる薄膜、例えば酸化珪素膜等を形成する方法である。
【0044】
いずれの方法においても、有機成分からなる基材上に段階的に有機成分濃度を低下させた層を複数層形成することにより、これら複数層全体を中間層としてみた場合、基材側の有機成分濃度が、蒸着層側の有機成分濃度より高くなるように形成したものである。
【0045】
この方法においては、形成する層が多ければ多いほど、各層間の密着度は向上し、結果として全体的高い密着性を有する積層体とすることが可能であるが、上述したバッチ式であっても巻き取り式であっても工程上煩雑となることは避けられない。一方、少なすぎても密着性に大きく寄与することができない。したがって、このように有機成分の濃度を段階的に変更させた複数層からなる中間層とした場合の層の数としては、1層〜3層程度とすることが好ましい。
【0046】
一方、連続的に中間層内の有機成分の濃度を変更させる方法としては、例えば図5に示す方法を挙げることができる。この例は、巻き取り式の例を示すものであり、チャンバー21内には、電極22と、二つのガス導入口23aおよび23bが配置されている。このチャンバー21内には有機材料からなる基材1が、ロール24に巻回され、ガス導入口23a側から侵入し、ガス導入口23b側に排出されるようになっている。ここで、この例では、侵入側のガス導入口23aからはHMDSOガスが導入され、排出側のガス導入口23bからはOガスが導入される。そして、電極22との間での放電により生じるプラズマにより、侵入側のガス導入口23a近傍では、HMDSOガスの濃度が高く、Oガス濃度が低い状態で成膜が行われるので、有機成分濃度の高い膜が形成される。そして、排出側のガス導入口23b近傍に近づくにつれて、HMDSOガスの濃度が徐々に低下し、かつOガス濃度が徐々に上昇するので、成膜される膜成分中の有機成分の濃度が徐々に低くなる。
【0047】
このようにして、中間層中の有機成分濃度が、基材1表面側では高く、真空成膜法により形成される蒸着膜側では低くなるように傾斜された中間層を形成することが可能となる。
【0048】
この方法は、上述したガス成分に限定されるものではなく、2種類のガスを用いて成膜された膜中に濃度勾配を形成するために用いることが可能である。
【0049】
なお、このように連続的に中間層内の有機成分の濃度を変更させる方法としては、巻き取り式に限るものではなく、例えばバッチ式であっても、導入する原料ガスの濃度を徐々に変更することにより、中間層内の有機成分の濃度を傾斜させて変更させた中間層を形成することが可能である。
【0050】
このような方法に用いられるガスとしては、具体的にはテトラメチルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の原料ガスを挙げることができ、これらとOガスとを共に用い、濃度調整を行う等することにより、上述したような有機成分からなる基材側で有機成分濃度が高く、無機成分の蒸着層側で有機成分濃度の低い中間層を形成することができる。
【0051】
本発明においては、中でもテトラメチルシランおよびメキサジシロキサンを好ましく用いることができる。
【0052】
また、この際の基材側における有機成分の濃度は、ESCA測定による元素分析値で金属原子100に対して、炭素原子が60以上、好ましくは80以上、特に100以上であることが好ましく、蒸着層側における有機成分の濃度が、同様に、金属原子100に対して、炭素原子が30以下、好ましくは25以下、特に20以下の無機質な膜であることが好ましい。
【0053】
なお、本発明でいうESCA測定による元素分析値とは、ESCA(英国 VG Scientific社製 ESCA LAB220i-XL)により、得られた値を示すものである。以下に、ESCA測定方法を示す。ここでは、金属原子をSiとした場合について説明する。
X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるモノクロAlX線源、および、直径約1mmのスリットを使用する。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行う。測定後の解析は、上述のESCA装置に付属されたソフトウェアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、C:1s、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行う。このとき、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1に対して、Si=0.817、O=2.930)を行い、原子数比を求める。得られた原子数比について、Si原子数を100とし、他の成分であるOとCの原子数を算出して成分割合とする。
【0054】
このような中間層における好適な膜厚は、1nm〜1000nmの範囲内、特に5nm〜100nmの範囲内が好ましい。中間層の膜厚が、上記範囲より薄い場合は、例えば中間層が形成されない部分が生じる等の中間層としての機能を発揮できない可能性が生じることから好ましくなく、上記範囲より膜厚を厚くしても、密着性に影響を与えないことからコスト面で問題となる可能性があるため好ましくない。
【0055】
また、本発明の積層体は、用途によって透明性を要求される場合がある。したがって、上述した中間層も透明であることが好ましい。
【0056】
2.蒸着層
本発明においては、上述した中間層上に蒸着層が形成される。この蒸着層は、例えばガスバリアフィルムであればガスバリア性を有する蒸着層が形成され、また反射防止フィルムであれば、反射防止性を有する蒸着層が形成されるものであり、その機能により種々の蒸着層を形成することができる。
以下、この蒸着層がガスバリア層である場合、すなわち本発明の積層体がガスバリアフィルムとして用いられる場合について説明する。
【0057】
(ガスバリア層)
本発明に用いられるガスバリア層は、ガスバリア性を付与するために上述した中間層上に形成された蒸着層であれば特に限定されるものはなく、透明膜であっても、不透明膜であってもよい。
【0058】
蒸着層を透明膜とする場合の膜種としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化珪素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ,酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウム等の酸化膜または酸化窒化膜を挙げることができる。また、ITO膜なども本発明における蒸着層として用いることができる。
【0059】
一方、不透明膜とする場合の膜種としては、アルミニウム、シリコン、窒化珪素(Si)、窒化アルミ(AlN)等を挙げることができ、また金属は全て、本発明における蒸着層として用いることができる。
【0060】
本発明においては、例えば包装材として用いる場合等のようにガスバリアフィルムに透明性が要求される用途が多い。したがって、本発明においてはガスバリア層が透明層であることが好ましく、具体的には上述したような金属酸化物の蒸着層であることが好ましい。
【0061】
本発明においては、このような金属酸化物の蒸着層の中でもCVD法により形成された酸化珪素膜であることが好ましい。酸化珪素膜は製造の容易性および用途の汎用性等の観点から好ましい材料であるといえるからである。
【0062】
このような酸化珪素膜において、本発明においては特に、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなり、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収がある酸化珪素膜であることが好ましい。このような特徴を有することにより、ガスバリア性が向上し、本発明の積層体をガスバリアフィルムとして用いた場合のガスバリア性を極めて高いものとすることができるからである。
【0063】
さらに、このとき、1.45〜1.48の屈折率を有するように形成することがより好ましい。このような特性の酸化珪素膜を備える積層体は、極めて優れたガスバリア性を発揮することができ、ガスバリアフィルムとして極めて高い性能を有するものとなるからである。
【0064】
Si、O、およびCの各成分割合を、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。特に、Cの混入を抑制するように制御することが好ましい。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整することによって、SiO ライクな膜にしてCの混入を抑制したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくすることによって、Si−C結合の切断を容易にして膜中へのCの混入を抑制することができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。
【0065】
この範囲の成分組成を有する酸化珪素膜は、Si−C結合が少ないので、SiOライクな均質膜となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。こうした成分割合は、Si、O、およびCの各成分を定量的に測定できる装置であればよく、代表的な測定装置としては、ESCA(Electron spectroscopy for chemical analysis)や、RBS(Rutherford back scattering)、オージェ電子分光法によって測定された結果によって評価される。
【0066】
Oの成分割合が170未満となる場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。その結果、膜中に多くのSi−C結合を有し、SiOライクな均質膜ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。なお、O原子数は化学量論的に200を超えにくい。また、Cの成分割合が30を超える場合は、Oの成分割合が170未満となる場合と同じ条件、すなわち(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、膜中にSi−C結合がそのまま残る。その結果、SiO ライクな均質膜ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。一方、Cの成分割合の下限は特に規定しないが、実際の成膜工程上の下限値として10に規定することができる。なお、Cの成分割合を10未満とすることは現実問題として容易ではないが、Cの成分割合が10未満であってもよく、SiO ライクな均質膜が得られる。
【0067】
IR測定において、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づく吸収があるようにするには、酸化珪素膜をできるだけSiOライクな均質膜とするように、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくしてSi−C結合の切断を容易にすることによって、SiOライクな膜とすることができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。こうしたIR吸収が現れる酸化珪素膜は、SiO ライクな均質膜特有のSi−O結合を有するので、極めて優れたガスバリア性を発揮する。
【0068】
IR吸収は、IR測定用の赤外分光光度計で測定して評価される。好ましくは、赤外分光光度計にATR(多重反射)測定装置を取り付けて赤外吸収スペクトルを測定する。このとき、プリズムにはゲルマニウム結晶を用い、入射角45度で測定することが好ましい。
【0069】
この範囲にIR吸収がない場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。その結果、膜中にSi−C結合を有することとなって、SiOライクな均質膜特有のSi−O結合が相対的に少なくなり、上記範囲内にIR吸収が現れない。そうして得られた酸化珪素膜は、酸素透過率と水蒸気透過率が大きく、十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0070】
酸化珪素膜の屈折率を1.45〜1.48にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節することによって上記範囲内に制御することができる。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整して制御することができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。この範囲の屈折率を有する酸化珪素膜は、緻密で不純物の少ないSiOライクな膜となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。こうした屈折率は、光学分光器によって測定された透過率と反射率とを測定し、光学干渉法を用いて633nmでの屈折率で評価したものである。
【0071】
屈折率が1.45未満となる場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さく、低密度で疎な酸化珪素膜が得られる場合にしばしば見られ、成膜された酸化珪素膜が疎になって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。一方、屈折率が1.48を超える場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、C(炭素)等の不純物質が混入した場合にしばしば見られ、成膜された酸化珪素膜が疎になって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0072】
上述した各特性を有する酸化珪素膜を、5〜300nmの厚さという薄い厚さで形成した積層体は、酸化珪素膜にクラックが入りづらいので、優れたガスバリア性を発揮するガスバリアフィルムとして用いることができる。酸化珪素膜の厚さが5nm未満の場合は、酸化珪素膜が中間層の全面を覆うことができないことがあり、ガスバリア性を向上させることができない。一方、酸化珪素膜の厚さが300nmを超えると、クラックが入り易くなること、透明性や外観が低下すること、フィルムのカールが増大すること、さらに、量産し難く生産性が低下してコストが増大すること、等の不具合が起こり易くなる。
【0073】
また、本発明の積層体をガスバリアフィルムとして包装材料等、フレキシブル性が要求される用途として用いる場合には、形成される酸化珪素膜の機械的特性や用途を勘案し、その厚さを5〜30nmとすることがより好ましい。酸化珪素膜の厚さを5〜30nmとすることによって、軟包装材料としてのフレキシブル性を持たせることができ、フィルムを曲げた際のクラックの発生を防ぐことができる。また、本発明の積層体をガスバリアフィルムとして用い、かつ比較的薄さを要求されない用途、例えば、フィルム液晶ディスプレイ用ガスバリア膜、フィルム有機ELディスプレイ用ガスバリア膜またはフィルム太陽電池用ガスバリア膜等の用途、に用いられる場合には、ガスバリア性が優先して要求されるので、前述の5〜30nmの範囲よりも厚めにすることが好ましく、その厚さを30〜200nmとすることが生産性等も考慮した場合により好ましい。
【0074】
このようにガスバリアフィルムとして上記の用途に用いることにより、同程度のガスバリア性を有する従来品よりもさらに薄膜化が可能となる。
【0075】
上記ガスバリア層に用いられる酸化珪素膜は、上述したようにCVD法により形成されることが好ましいのであるが、特にプラズマCVD法によって形成されることが好ましい。
【0076】
プラズマCVD法は、一定圧力の原料ガスを放電させてプラズマ状態にし、そのプラズマ中で生成された活性粒子によって基材表面での化学反応を促進して形成する方法である。このプラズマCVD法は、高分子樹脂に熱的ダメージが加わらない程度の低温(およそ−10〜200℃程度の範囲)で所望の材料を成膜でき、さらに原料ガスの種類・流量、成膜圧力、投入電力等によって得られる膜の種類や物性を制御できるという利点がある。
【0077】
上記酸化珪素膜は、プラズマCVD装置の反応室内に、有機珪素化合物ガスと酸素ガスとの混合ガスを所定の流量で供給すると共に、電極に直流電力または低周波から高周波の範囲内での一定周波数を持つ電力を印加してプラズマを発生させ、そのプラズマ中で有機珪素化合物ガスと、酸素原子を有するガス、中でも酸素ガスとが反応することによって基材上に形成される。使用されるプラズマCVD装置のタイプは特に限定されず、種々のタイプのプラズマCVD装置を用いることができる。通常は、長尺の高分子樹脂フィルムを基材として用い、それを搬送させながら連続的に酸化珪素膜を形成することができる連続成膜可能な装置が好ましく用いられる。
【0078】
なお、本発明において、酸化珪素膜は透明であることが好ましいが、各種の用途に供するために、基材やその他積層材料のうち、透明性が劣る層を任意に積層させることは自由であり、最終製品として求められる透明性およびその程度は、各種の用途によって異なる。例えば、本発明の積層体を酸化珪素膜を用いたガスバリアフィルムとして包装材料に用いる場合には、内容物を光線から保護するために、有色インキ等で印刷して遮光性を出してもかまわない。その他帯電防止剤やフィラー等、ガスバリアフィルム全体の透明性を悪くする要因がある添加物を練り混んだ層を積層したり、透明性がない金属箔等を積層したりすることができる。ただし、フィルム液晶ディスプレイ用ガスバリア膜、フィルム有機ELディスプレイ用ガスバリア膜またはフィルム太陽電池用ガスバリア膜等の用途に用いられる場合には、積層体全体の透明性が要求されるので、本発明における酸化珪素膜の透明性による効果が大である。
【0079】
3.基材
次に、本発明の積層体を構成する基材について説明する。
本発明の積層体における基材は、上述した中間層および蒸着層を保持することができる材料であれば特に限定されるものではない。
【0080】
具体的には、
・エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、
・環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、
・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、
・ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、
ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、
・ポリイミド(PI)樹脂、
・ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、
・ポリサルホン(PS)樹脂、
・ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、
・ポリカーボネート(PC)樹脂、
・ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、
・ポリアリレート(PAR)樹脂、
・エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、
等を用いることができる。
【0081】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、上記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材として用いることも可能である。
【0082】
上記に挙げた樹脂等を用いた本発明における基材は、特に限定されるものではないが、フィルム形状であることが好ましく、この場合未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0083】
本発明に用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0084】
基材は、ロール状に巻き上げられた長尺品が便利である。基材の厚さは、得られるガスバリアフィルムの用途によって異なるので一概には規定できないが、一般的な包装材料やパッケージ材料用の基材として用いる場合には、3〜188μmが好ましい。
【0085】
また、本発明に用いられる基材は、中間層を形成する前にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理などの表面処理を行ってもよい。
【0086】
4.アンカーコート層
さらに、本発明においては、例えば図2に示すように、基材1上にアンカーコート層4を形成し、このアンカーコート層4上に上述した中間層2を形成し、その上に、例えば上述したようなガスバリア層である蒸着層3を形成するようにしてもよい。
【0087】
このようにアンカーコート層を併用することにより、本発明の積層体における密着性を極めて高くすることが可能となり、例えば積層体がガスバリアフィルムとして可撓性を有する包装材に用いられた場合であっても、ガスバリア層が剥離する等の問題が生じることがなく、良好なガスバリア性を維持することが可能となる。
【0088】
このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0089】
5.用途
本発明の積層体は、有機材料からなる基材上に無機材料からなる真空成膜法により形成された膜が良好な密着性を有して形成されたものであるので、例えばフレキシブル性が必要な種々の用途に用いることができる。具体的には、上述したようなガスバリア性フィルムの他、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、金属層積層による反射フィルム・遮光フィルムおよび導電性フィルム等の用途を挙げることができる。
【0090】
6.製造方法
本発明の積層体は、上述したように基材と、基材上に真空製膜法により形成された中間層と、この中間層上に形成された蒸着層とからなるものである。
【0091】
本発明においては、上記中間層および蒸着層が共にプラズマCVD法により形成されていることが好ましい。
【0092】
まず、中間層を形成する際のプラズマCVD法(プラズマ重合法)の好ましい成膜条件としては、成膜時の基材の温度が−20〜100℃の範囲内、好ましくは−10〜30℃の範囲内であることである。
【0093】
次に、原料ガスとして有機珪素ガス、炭化水素ガス、炭化フッ化ガスのいずれかを用い、プラズマCVD装置のプラズマ発生手段における単位面積当たりの投入電力を有機薄膜が形成可能な大きさで設定したり、成膜圧力をパーティクルの発生がない程度の高い圧力(6〜40Pa)の範囲で設定したり、マグネット等プラズマの閉じ込め空間を形成しその反応性を高めることにより、その効果がより高く得られる。
【0094】
また、本発明においては、中間層を形成する際の原料ガスとしては、以下のものを用いることができる。
【0095】
まず有機珪素化合物ガスとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の従来公知のものを、一種または二種以上用いることができる。
【0096】
しかしながら、本発明においては有機成分の濃度を変更する等の必要性があることから、特に分子内に炭素−珪素結合を多くもつ有機珪素化合物が好適に用いられる。具体的には、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等を挙げることができ、中でも分子内に炭素−珪素結合を多く有するヘキサメチルジシロキサン(HMDSO;(CH3)3SiOSi(CH3)3)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO;(CH3)2HSiOSiH(CH3)2)、テトラメチルシラン(TMS;Si(CH3)4)が好ましいといえる。
【0097】
また、フッ素含有有機材料としては、CF、C、C、C,C,C等を挙げることができ、特に、CおよびCが特に好ましい。
【0098】
このように、原料ガスのうち有機珪素化合物ガスとして炭素−珪素結合を多く有する有機化合物を用い、さらに上述したような開始時の基材の温度、原料ガスの流量比、さらにはプラズマ発生手段における投入電力、成膜圧力を上述した範囲内とすることにより、容易に有機成分の濃度を変更することができるのは、有機珪素化合物ガスの分解性が低く、膜の中にメチル基またはフッ素が取り込まれやすくなるからと考えられる。
【0099】
次に、蒸着層、特にガスバリア層を形成する際のプラズマCVD法の好ましい成膜条件としては、まず成膜時の基材の温度が−20〜100℃の範囲内、好ましくは−10〜30℃の範囲内であることである。
【0100】
次に、原料ガスとして有機珪素ガスおよび酸素原子を含むガスを用い、この有機珪素化合物ガスと酸素原子を含むガスとの流量比を、有機珪素化合物ガスを1とした場合に、3〜50の範囲内、好ましくは3〜10の範囲内とすることである。
【0101】
そして、プラズマCVD装置のプラズマ発生手段における単位面積当たりの投入電力を大きく設定したり、マグネット等プラズマの閉じ込め空間を形成しその反応性を高めることにより、その効果がより高く得られる。
【0102】
また、本発明においては、原料ガスの内、有機珪素化合物ガスとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の従来公知のものを、一種または二種以上用いることができる。
【0103】
しかしながら、本発明においては、SiOライクな膜を形成する目的から、特に分子内に炭素−珪素結合を有さない有機珪素化合物が好適に用いられる。具体的には、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン等を挙げることができ、中でも分子内に炭素−珪素結合が存在しないテトラメトキシシラン(TMOS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)を用いることが好ましい。
【0104】
また、酸素原子を含むガスとしては、NO、酸素、CO、CO等を挙げることができるが、中でも酸素ガスが好適に用いられる。
【0105】
このように、原料ガスのうち有機珪素化合物ガスとして炭素−珪素結合を有さない有機化合物を用い、さらに上述したような開始時の基材の温度、原料ガスの流量比、さらにはプラズマ発生手段における投入電力を上述した範囲内とすることにより、よりガスバリア性の良好なガスバリアフィルムが得られるのは、有機珪素化合物ガスの分解性が高くなり、膜の中に酸素原子が取り込まれやすくなり結果としてSiOライクな膜が形成されるためと考えられる。
【0106】
7.他の実施態様
本発明の積層体におけるその他の実施態様としては、無機材料で形成された基材と、上記基材の片面または両面に真空製膜法で形成された中間層と、上記中間層上に有機成分を真空製膜法で製膜した蒸着層とを有し、上記中間層が有機成分と無機成分とを有する蒸着膜とした実施態様を挙げることができる。
【0107】
本実施態様に用いられる中間層は、基材側の有機成分の濃度が、上記蒸着層側の有機成分の濃度より低くなるように形成されていることが好ましい点を除き、他の点は上記第1実施態様で用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
本実施態様においては、基材は無機材料で形成されたものである。具体的には、金属基板、ガラス基板や、基板上に無機材料が蒸着されたものや、シリコンウエハ基板等を挙げることができる。
【0109】
また、このような無機材料で形成された基材上に上述した中間層を介して形成される有機成分を真空製膜法で製膜した蒸着層としては、プラズマCVD法、プラズマ重合法、物理蒸着法及びイオンプレーディング法等を挙げることができる。
【0110】
本実施態様の積層体は、反射防止層付きガラス、熱線吸収・反射層付きガラス、撥水層付きガラスおよびガラスもしくはウエハのレジストコート下地層等としてに用いることができる。
【0111】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0112】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
A.有機材料からなる基材を用いた態様(ガスバリアフィルム)
[実施例1]
(中間層(B)の形成)
図6に示すように、基材20として、シート状のポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製、E5101、厚さ50μm)を準備し、プラズマCVD装置101のチャンバー102内の下部電極114側に装着した。次に、CVD装置101のチャンバー102内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。次に、原料ガス112として、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス(東レダウコーニングシリコーン製、SH200−0.65cSt)、酸素ガス(大陽東洋酸素(株)、純度99.9999%以上)、およびヘリウムガス(大陽東洋酸素(株)、純度99.999%以上)を準備した。
次に、下部電極114に90kHzの周波数を有する電力(投入電力:150W)を印加した。そして、チャンバー102内の電極近傍に設けられたガス導入口109から、HMDSOガスを5sccm、酸素ガスを15sccm、ヘリウムガスを30sccm導入し、真空ポンプ108とチャンバー102との間にあるバルブ113の開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内圧力を0.25Torr(33.325Pa)に保ち、基材フィルム20上に蒸着膜として膜厚が5nmになるまで成膜を行い、中間層(B)を形成した。
【0113】
(ガスバリア層の形成)
次に、同様に図6に示す装置を用いてガスバリア層を形成した。
CVD装置101のチャンバー102内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。次に、原料ガス112として、テトラメトキシシラン(TMOS)ガス(信越化学工業株式会社製KBM−04)、酸素ガス(大陽東洋酸素(株)、純度99.9999%以上)、およびヘリウムガス(大陽東洋酸素(株)、純度99.999%以上)を準備した。
次に、下部電極114に90kHzの周波数を有する電力(投入電力:300W)を印加した。そして、チャンバー102内の電極近傍に設けられたガス導入口109から、TMOSガスを1sccm、酸素ガスを5sccm、ヘリウムガスを30sccm導入し、真空ポンプ108とチャンバー102との間にあるバルブ113の開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内圧力を0.25Torr(33.325Pa)に保ち、中間層(B)上に膜厚が100nmになるまでガスバリア層の成膜を行い、実施例1のガスバリアフィルムを得た。
【0114】
[実施例2]
実施例1に示すガスバリアフィルムの製造工程において、中間層(B)を形成する前に中間層(A)を形成し、中間層(B)を形成した後に中間層(C)を形成した以外、すなわち中間層として基材側から中間層(A)、(B)、および(C)の順で形成した以外は、実施例1に示す方法と同様の方法によりガスバリアフィルム形成した。
【0115】
(中間層(A)および(C)の形成)
中間層(A)および(C)は実施例1の中間層(B)と同様の成膜装置を用い、成膜時のガス流量のみを以下の条件に変更して形成した以外は同様の条件、同様の膜厚で成膜して形成した。
中間層A:HMDSOガス5sccm、酸素導入なし、ヘリウム30sccm
中間層C:HMDSOガス5sccm、酸素50sccm、ヘリウム30sccm
【0116】
[比較例1]
実施例1において中間層(B)を形成しなかった点を除き、同様にしてガスバリアフィルムを得た。
【0117】
[評価]
(評価方法)
上記実施例1〜2、および比較例1のガスバリアフィルムを以下の評価方法により評価した。
【0118】
1.成分割合の測定
成膜された各層の成分は、ESCA(英国、VG Scientific社製、ESCA LAB220i−XL)によって測定した。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度、300K〜1McpsとなるモノクロAlX線源、および直径約1mmφのスリットを使用した。測定は、測定に供した試料面に対して法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行った。測定後の解析は、上述のESCA装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1(英国、VG Scientific社製)を使用し、Si:2p、C:1s、O:1sのバインディングエネルギー(Binding Energy)に相当するピークを用いて行った。このとき、各ピークに対し、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1に対して、Si=0.817、O=2.930)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原子数を100とし、他の成分であるOとCの原子数を算出して成分割合として評価した。
【0119】
2.ガス透過試験
酸素ガス透過率は、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/20)を用い、23℃、ドライ(0%Rh)の条件で測定した。水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31)を用い、37.8℃、100%Rhの条件で測定した。
【0120】
3.密着強度測定試験
引張り法(Pull Test法)により面密着強度を測定した。この際、薄膜表面の接着面は7.1mmφ、接着剤としてエポキシ硬化性接着剤を用い、5回繰り返し測定の中間値3点の平均値を密着強度値として算出した。
【0121】
(結果)
各層のESCAによる測定結果は以下の通りであった。
中間層A Si:C:O=100:150:60
中間層B Si:C:O=100:70:160
中間層C Si:C:O=100:40:170
ガスバリア層 Si:C:O=100:25:180
ガス透過性試験および密着強度試験の結果を、以下の表にまとめる。
【0122】
【表1】



【0123】
B.無機材料からなる基材を用いた態様(基材上への撥水層の形成)
[実施例3]
(中間層(B)の形成)
基材としてシート状のポリエステルフィルムを用いる代わりに石英ガラスを用いた以外は、実施例1と同様にして中間層(B)を形成した。
【0124】
(撥水層の形成)
図7に示す蒸着装置を用いて撥水層を形成した。まず、中間層(B)が形成された基材を、図7に示す蒸着装置201内の基板ホルダー210に中間層(B)が蒸着セル211側となるようにして設置した。また蒸着材料としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を、蒸着セル211に充填した。蒸着装置201のチャンバー205内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度1.0×10−6Torr(1.3×10Pa)まで減圧した。
次に、蒸着セル211を230℃まで加熱し、PTFE材料の加熱を行い、シャッター212を開け、PTFEの膜厚が50nmとなるまで蒸着を行い、撥水層を形成した。
【0125】
[実施例4]
(中間層の形成)
基材としてシート状ポリエステルフィルムを用いる代わりに石英ガラスを用いた以外は、実施例2と同様にして中間層(A)、(B)、および(C)を形成した。
【0126】
(撥水層の形成)
実施例3と同様にして撥水層を形成した。
【0127】
[比較例2]
中間層Bを形成しなかった点を除いて、実施例3と同様にして積層体を得た。
【0128】
[評価]
(評価方法)
上記実施例3〜4、および比較例2のガラス基板上撥水膜について以下の評価方法により評価した。
【0129】
1.成分割合の測定
上記ガスバリアフィルムの評価方法と全く同様にして行った。
【0130】
2.水接触角測定試験
協和界面化学社の接触角測定装置(型番CA−Z)を用いて23℃の測定環境下で測定した。すなわち、被測定対象物の表面上に純水を一定量滴下させ、10秒経過後、顕微鏡を用いて水滴形状を観察を行い、物理的に水の接触角度を求めた。
また環境負荷保存試験(85℃、93%Rh環境下、1000時間保存)後にも同様の評価を実施した。
【0131】
3.密着強度測定試験
ガスバリアフィルムの評価方法と同様に、引張り法(Pull Test法)により測定した。
また環境負荷保存試験(85℃、93%Rh環境下、1000時間保存)後にも同様の評価を実施した。
【0132】
(結果)
各層のESCAによる測定結果は以下の通りであった。
中間層A Si:C:O=100:150:60
中間層B Si:C:O=100:70:160
中間層C Si:C:O=100:40:170
ガラス基板 Si:C:O=100:10:180
水接触角測定試験および密着強度試験の結果を、以下の表にまとめる。
【0133】
【表2】



【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の積層体の構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の積層体の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明における中間層の形成方法の一例を示す概略図である。
【図4】本発明における中間層の形成方法の他の例を示す概略図である。
【図5】本発明における中間層の形成方法の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明に用いられるプラズマCVD装置を示す概略図である。
【図7】本発明に用いられる蒸着装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0135】
1…基材
2…中間層
3…蒸着層
4…アンカーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料で形成された基材と、前記基材の片面または両面に真空製膜法で形成された中間層と、前記中間層上に無機酸化物を真空製膜法で製膜した蒸着層とを有し、前記中間層が有機成分と無機成分とを有する蒸着膜であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記中間層は、前記基材側の有機成分の濃度が、前記蒸着層側の有機成分の濃度より高くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記中間層が、CVD法またはプラズマ重合法により形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記中間層が、金属骨格からなり炭素を含む置換基を有する有機膜であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の積層体。
【請求項5】
前記金属骨格が、珪素(Si)、チタン(Ti)もしくはアルミニウム(Al)、またはこれらと酸素(O)とから構成されるものであることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記炭素を含む置換基が、−CHもしくは−C(ここで、p+q=3、pは0〜3であり、またr+s=5、rは0〜5である。)で示される置換基であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記金属骨格からなり炭素を含む置換基を有する有機膜が、Si(CHもしくは(SiO)(CH(ここで、p+q=3、pは0〜3である。)で示される有機シリコン系材料またはその重合膜であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
【請求項8】
前記金属骨格からなり炭素を含む置換基を有する有機膜が、Si(CHもしくは(SiO)(CHで示される有機シリコン系材料またはその重合膜であることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
【請求項9】
前記中間層の膜厚が、1nm〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の積層体。
【請求項10】
前記基材上にアンカーコート層が形成され、その上に前記中間層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載の積層体を有し、前記蒸着層が、ガスバリア性を示す層であることを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項12】
前記蒸着層が、CVD法により形成された酸化珪素膜であることを特徴とする請求項11に記載のガスバリアフィルム。
【請求項13】
前記酸化珪素膜が、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなっており、さらに1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収があることを特徴とする請求項12に記載のガスバリアフィルム。
【請求項14】
前記酸化珪素膜は、屈折率が1.45〜1.48であることを特徴とする請求項13に記載のガスバリアフィルム。
【請求項15】
前記酸化珪素膜は、厚さが5〜300nmであることを特徴とする請求項11から請求項14までのいずれかの請求項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項16】
無機材料で形成された基材と、前記基材の片面または両面に真空製膜法で形成された中間層と、前記中間層上に有機成分を真空製膜法で製膜した蒸着層とを有し、前記中間層が有機成分と無機成分とを有する蒸着膜であることを特徴とする積層体。
【請求項17】
前記中間層は、前記基材側の有機成分の濃度が、前記蒸着層側の有機成分の濃度より低くなるように形成されていることを特徴とする請求項16に記載の積層体。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate


【公開番号】特開2005−256061(P2005−256061A)
【公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−67822(P2004−67822)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】