説明

積層型コンベアフィルタ装置

【課題】 ポリグルタミン酸架橋物を主体とする生分解性凝集剤を用いる浄化処理設備において、被処理水内の凝集物の濾過分離に使用する積層型コンベアフィルタ装置のフィルタ性能や抗菌性を高めて、処理水の清浄度をより一層高める。
【解決手段】 駆動軸9dと縦動軸9e間にエンドレス状に巻回した金属線又は金属繊維から成る最表層の単層フィルタ18aに複数枚の活性炭素を含有する繊維から成る単層フィルタ18b、18cを相互に分離可能に積層して成る積層型コンベアフィルタ18と、前記積層型コンベアフィルタ18を収容するケーシング17と、前記ケーシング17内に配設されて分離された各単層フィルタ18a、18b、18cのクリーニングを行う殺菌装置29を備えたクリーニング装置19とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグルタミン酸架橋物を主体とする生分解性凝集剤(水質浄化剤)(商品名PGα21及びPGα21Ca、日本ポリグル株式会社製造・販売、以下PGα21と呼ぶ)を用いる浄化処理設備に於いて主として使用する積層型コンベアフィルタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明者が先に開発をした生分解性凝集剤(水質浄化剤)PGα21は、自然界で容易に分解されて天然アミノ酸の一種であるグルタミン酸に変換されるため、安全性に極めて優れている。そのため食品産業分野や医薬品産業分野においては、従前のポリアミド等を主体とする高分子系の凝集剤や水質浄化剤に代えて広く利用に供されるようになって来ている。
【0003】
ところで、当該凝集剤(水質浄化剤)PGα21は、単に水中汚濁物質の凝集性能が高いだけでなく、凝集物(フロック)の硬度も比較的高く、しかも水に対する親水も高いと云う特性を具備している。
【0004】
図4は、この凝集剤(水質浄化剤)PGα21を用いた浄化処理設備の一例を示すものであり、原水Sのより高度な浄化処理を目的とする浄化処理設備である。
即ち、図4に於いて、1は原水タンク、2a・2bは凝集槽、3a、3bは撹拌機、4は凝集剤(PGα21)の貯留タンク、5a・5bは凝集剤混合装置、6a・6bは凝集槽水排出口、7a・7bはドレーン排出口、8は凝集槽排水の受入タンク、9はコンベアフィルタ装置、9aはコンベアフィルタ、9bは処理水回収タンク、9cはフィルタクリーニング装置、10は放流ポンプ、11は吸引ブロワ、12a〜12nは切換弁、13は水中ポンプ、14は凝集槽排水供給樋、15は原水ポンプ、Vl 〜Vn はバルブ、Sは原水(被処理水)、Qは凝集槽排水、Wは処理水、Fは凝集物(フロック)、Hは(凝集剤)である。
【0005】
また、前記コンベアフィルタ装置9は駆動軸9dと縦動軸9e間に巻回されたエンドレス状のコンベアフィルタ9aと、その下方に配設された処理水回収タンク9bと、フィルタクリーニング装置9cとスクレーパ9fと、凝集物収容タンク9g等から形成されている。
【0006】
凝集剤貯留タンク4内の粉体状の凝集剤(PGα21)Hは、吸引ブロワ11により凝集剤混合装置5a・5bへ送られ、ここで原水ポンプ15からの原水S内へ混合される。尚、凝集剤Hの混合量は原水Sの種類等に応じて適宜に設定されるが、通常は原水1tonに対して3〜200g(3〜200ppm)程度に設定されている。
凝集剤Hが混合された原水Sが凝集槽2a・2b内で一定時間、例えば1分〜20分間撹拌機3a、3bにより撹拌混合されることにより、原水S内の汚濁物質が混合された凝集剤Hを核として凝集を開始する。
【0007】
汚濁物質の凝集がある程度進行すると、凝集槽2a・2b内の混合液は排出口6a・6bから凝集槽排水Qとして取り出され、通常は受入れタンク8内へ貯留される。
受入タンク8内からは、浮上したフロックが圧力を受けずに順次コンベアフィルタ9a上へ流出して行く。
【0008】
尚、ここでは、各凝集槽2a・2bからの凝集槽排水Qの全量を受入タンク8内へ一旦貯留する場合について述べたが、その全部又は一部を直接に凝集槽排水供給樋14へ供給するようにしてもよい。
また、図4では両凝集槽2a・2bを並列運転する場合について述べたが、両凝集槽2a・2bの内の1基を運転し、他を予備として備える構成としてもよいことは勿論である。
【0009】
受入タンク8内の凝集槽排水Qのうちの底部に滞留したフロックは、水中ポンプ13により供給樋14を通してコンベアフィルタ装置9へ供給され、コンベアフィルタ9aに乗って縦動軸9eと駆動軸9d間の往路を走行する間に水分Wと凝集物Fとが分離され、水分Wは処理水回収タンク9b内へ落下する。また、回収された処理水Wは放流ポンプ10を通して処理済水として外部へ放流することが可能である。更に、より高度な処理を必要とする場合には、図4に示すように再度原水タンクSへ戻され、引き続き原水ポンプ15により凝集槽へ送られて行く。このようにして、原水Sを循環的に連続処理することにより、より高度な浄化処理が行われることになる。尚、図4では凝集槽2a・2bの撹拌機3a・3bを連続運転して、原水Sを連続的に循環処理する場合について述べたが、凝集槽2a・2b内における撹拌処理を所謂バッチ方式により行ってもよいことは勿論である。
【0010】
コンベアフィルタ9a上に残った凝集物下はスクレーパ9fにより掻き落され、収容タンク9g内に回収される。
また、凝集物Fが掻き落されたコンベアフィルタ9aは、フィルタクリーニング装置9cを通過する間に洗浄、消毒及び乾燥等の各種のクリーニング処理を受けたあと、復路である縦動軸9e側へ向けて繰り出されて行く。
【0011】
【特許文献1】特開平6−210109号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記図4に示したコンベアフィルタ装置9は、凝集槽排水Qを比較的高能率で処理水Wと凝集物Fとに分離することができ、優れた実用的効用を有するものである。
しかし、図4のコンベアフィルタ装置9にも解決すべき多くの問題が残されており、特に凝集物(フロック)Hを除去したあとのコンベアフィルタ9aの消毒が不足勝ちとなり、これによって様々な障害が現実に多発している。
【0013】
即ち、本発明で使用する凝集剤Hは前述の通りポリグルタミン酸架橋物を主体とするものであるため、必然的に従前のポリアミド等から成る高分子系の凝集剤に比較して微生物に対する栄養価が高くなる。その結果様々な微生物の繁殖が旺盛となり、微生物による処理水Wの汚損が生じ易くなるという問題がある。
【0014】
勿論、従前のこの種コンベアフィルタ装置9においても、クリーニング機構として消毒や加熱等による殺菌機構が設けられている。しかし、何れの方法も装置の大型化や構造の複雑化、運転・維持管理の複雑化を招くことになり、実用上様々な問題が存在する。
【0015】
本発明は、PGα21を凝集剤とするこの種浄化処理設備用のコンベアフィルタ装置に於ける上述の如き問題の解決を課題とするものであり、コンベアフィルタそのものを殺菌性並びに凝集物の吸着性を有する素材から構成すると共にコンベアフィルタを分離可能な積層型として通気・通光性を高め、これに殺菌装置を組み合わせることにより、凝集物(フロック)Hと水分Wとの分離性能や凝集物(フロック)の剥離・脱落性能を一層高めると共に、より高い殺菌処理とより小径の凝集物の捕集とを可能とした浄化処理設備用の積層式コンベアフィルタ装置を提供することを発明の主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願請求項1の発明は、所定量のポリグルタミン酸架橋物を主体とする生分解性凝集剤を原水内へ供給し、原水と凝集剤とを撹拌混合することにより形成した被処理水Qを処理対象物とする積層型コンベアフィルタ装置に於いて、所定の間隔をおいて配設した駆動軸9d及び縦動軸9eと、前記駆動軸9dを回転駆動する駆動装置20と、前記駆動軸9dと縦動軸9e間にエンドレス状に巻回した金属線又は金属繊維から成る最表層の単層フィルタ18aに複数枚の活性炭素を含有する繊維から成る単層フィルタ18b、18cを相互に分離可能に積層して成る積層型コンベアフィルタ18と、前記積層型コンベアフィルタ18の往路の下方に配設した処理水回収タンク9bと、前記積層型コンベアフィルタ18の往路の両側に配設されて積層型コンベアフィルタ18を形成する各単層コンベア18a、18b、18cを一定の間隔を保持せしめて分離する複数の層間ガイドローラ22a、22b、23a、23bと、前記積層型コンベアフィルタ18を収容するケーシング17と、前記ケーシング17内に配設されて分離された各単層フィルタ18a、18b、18cのクリーニングを行うオゾン発生装置29を備えたクリーニング装置19を発明の基本構成とするものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において殺菌装置29を、オゾン発生装置としたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明において殺菌装置29を、オゾンと酸素の混合気体の高濃度溶液内で混合気体の超微細気泡を接触させる構成の殺菌装置としたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の発明においてクリーニング装置19を、分離した各単層フィルタ18a、18b、18cの間隙内へ配設した乾燥用空気噴射ノズル28、層間スクレーパ25、層間真空吸引装置27を備えた構成としたものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1の発明においてクリーニング装置19を、分離した各単層フィルタ18a、18b、18cの間隙内へ配設した層間ブラシ26を備えた構成としたものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1の発明において最表層の単層フィルタ18aを除くその他の単層フィルタ18b、18cを、抗菌剤をねり込みした繊維材により形成する構成としたものである。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、3枚の単層フィルタ18a、18b、18cから積層型コンベアフィルタ18を形成する構成としたものである。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1の発明において、往路の分離した各単層フィルタ18a、18b、18cの間の間隔寸法を夫々異なる寸法とするようにしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本願発明においては、積層型コンベアフィルタ18を、複数枚の単層コンベア18a、18b、18cを分離可能に積層して形成すると共にその最外表層の単層コンベア18aを金属材製とし、且つその復路において各単層コンベア18a、18b、18cを分離させて相互の間に一定の間隔を設ける構成としている。
その結果、外表層の単層コンベア18a上に残留した凝集物(フロック)Fをスクレーパ9fによりより確実に除去することができると共に、復路に於いて各単層コンベア18a、18b、18cと容易に且つ完全にクリーニングすることが可能となる。
【0025】
特に、本願発明においては、最外層以外の各単層コンベア18b、18cを形成する素材に活性炭素を含有させた素材を使用するようにしているため、より小径の凝集物であってもこれを捕集(吸着)することが可能となり、フィルタ性能の悪化を招くことなしにより高度な原水の浄化処理が可能になる。
【0026】
更に、本願発明においては、クリーニング装置の構成材として殺菌装置を用い、この殺菌装置例えばオゾン発生装置により形成したオゾン化空気を分離した各単層フィルタ18a、18b、18cの間隙内へ送り込む構成としているため、コンベアーフィルタ装置の抗菌性が大幅に高まり、より高度な浄化処理の達成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明に係る積層型コンベアフィルタ装置の側面概要図であり、図2は図1のイ−イ視拡大断面概要図である。尚、図1及び図2に於いて、前記図3と同一の部位・部材には、これと同一の参照番号が使用されている。
【0028】
図1及び図2を参照して、本願発明に係る積層型コンベアフィルタ装置Aは、凝集槽2a・2bを支持する支持架台16の下方に配設されており、ほぼ密閉に近いケーシング17と、当該ケーシング内に配置した積層型コンベアフィルタ18と、処理水受け9bと凝集物(フロック)収容タンク9gと、クリーニング装置19等から構成されている。
【0029】
前記積層型コンベアフィルタ18は、ケーシング17内に水平方向に配設した駆動軸9dと縦動軸9e間にエンドレス状に巻回されており、駆動装置(駆動用モータ)20により5〜20m/分の移動速度で速度調整自在に矢印方向へ移動される。
【0030】
即ち、当該積層型コンベアフィルタ18は、複数枚(本実施形態では合計6枚の単層フィルタ18a〜18fを分離可能に積層することに形成されており、最表層の単層フィルタ18aは約100〜150メッシュの金属繊維(例えばステンレス繊維や銅合金繊維製)から形成されている。
また、第2層乃至第6層の各単層フィルタ18b〜18fは活性炭素繊維を含有する織布製のフィルタであり、濾過部分は約120〜200メッシュの濾過面に形成されている。
【0031】
前記積層型のコンベアフィルタ18は、図1に示すようにその復路の大部分を前後のガイドローラ21a・21b、層間ガイドローラ22a〜22e及び層間ガイドローラ23a〜23eにより各単層フィルタが一定間隔を持って分離した状態で移動される構成となっており、この分離された各単層フィルタ18a〜18fの間隙内へ後述するようにクリーニング装置19を形成する各部材等が配設される構造となっている。尚、20は積層型コンベアフィルタ18の駆動装置(駆動用モータ)である。
【0032】
尚、図1及び図2の実施形態では、各単層フィルタ18a〜18fを等間隔に分離する構成としているが、図3に示すように層間ガイドローラ22a、22eの位置を変えて、各単層フィルタ18a〜18fの間隔を適宜に変更するようにしてもよい。
【0033】
また、最表層を除くその他の各単層フィルタの材質は、活性炭素繊維や炭素繊維、更に、ガラス繊維、合成樹脂繊維或いはこれらの各繊維の組み合せに係るものであってもよい。更に、細かな凝集物の吸着除去性能や殺菌性を高めるために、活性炭素成分を含有せしめたものがより望ましい。
【0034】
当該積層型コンベアフィルタ18を形成する単層フィルタの積層数は3〜6層位が最適であり、且つ各単層フィルタ18a〜18fは夫々適宜の機械的強度と濾過性能(約150〜200メッシュ)を保持する必要のあることは勿論である。
【0035】
前記クリーニング装置19は、清掃機構部と乾燥機構部と除菌機構部とから形成されている。
即ち、前記清掃機構部は洗浄水噴霧ノズル24、層間スクレーパ25、層間ブラシ装置26、層間真空吸引装置27等から形成されている。
また、前記乾燥機構部は乾燥用空気(熱風)噴霧ノズル28等から形成されている。
更に、前記除菌(殺菌)機構部は、殺菌装置29と各単層フィルタの素材内に練り込みした除菌剤等から形成されている。
【0036】
尚、本実施例においては、クリーニング装置19の除菌機構部として殺菌装置29を使用しているが、当該殺菌装置29としてはオゾン発生装置の使用が好適である。
また、オゾン発生装置は、単独で使用しても良いが、例えば洗浄用溶液を収容した容器内へ積層型コンベアフィルタ18(又は各単層フィルタ18a〜18f)を順次浸漬させた状態で走行させると共に、洗浄用溶液内へオゾンと酸素の混合気体を噴射してこれ等を溶解させると共に、オゾンと酸素の混合気体の微細気泡を溶液内で発生させ、これを積層型コンベアフィルタ18へ接触させることによりフィルタ18を殺菌する構造の殺菌装置29として用いることも可能である。
【0037】
次に、本発明に係る積層型コンベアフィルタ装置Aの作動について説明する。図1を参照して、凝集槽2a・2b内で撹拌機3a・3bにより撹拌混合された原水Sと浄化剤(凝集剤)Hとの混合体である凝集槽排水Qは、凝集槽排水供給樋14を通して積層型コンベアフィルタ18の上表面へ、所定流量でもって連続的に供給される。
【0038】
原水S内へ供給混合される浄化剤(凝集剤)Hとしては、所謂ポリグルタミン酸架橋物を主体とする生分解性の天然高分子浄化剤が使用されている。
即ち、当該浄化剤Hは、公知のγ−グルタミン酸(PGA)の分子間に架橋反応を起し、より大きな分子量の高分子体としたものであり、本実施形態では日本ポリグル株式会社製の商品名PGα21が使用されている。
【0039】
具体的には、当該浄化剤(凝集剤)Hは粉状体を呈しており、その成分構成は下記の通りである。
成分構成(wt%)
PGα21=14%、C=0.5%、O=45%、Na=8%、Al=0.5%、Si=12%、Cl=0.4%、Ca=15%、K=0.1%、Fe=15%。
また、当該PGα21は、本件出願人が開発して実用に供している商品名PGα21Caと呼ばれる粉体状凝集剤であり、生分解性を有するγ―ポリグルタミン酸を主体とする新規な自然分解性の物質であり、下記の構造式であらわされるものである。
【化1】

【0040】
尚、凝集剤H内のO、Ca、Fe、Si等は通常2Ca4 ・H2 O、NaCO3 ・H2 O、NaSO4 、MgSO4 ・6H2 O、Al2 (SO4 )・18H2 O等の化学構造式で表される物質の型で当該凝集剤H内に含まれている。
【0041】
この凝集剤Hは、親水性、保水性に優れているだけでなく、分子量が数千〜数万と高いため、水中の懸濁物質に対して従前の合成高分子凝集剤と同等以上の凝集・沈降促進作用を有している。
また、従前の合成高分子凝集剤に比較してより低濃度で凝集効果を発揮することができ5〜20ppm程度の低混合濃度でもって高い凝集効果が得られる。
更に、天然の高分子体であるため毒性が全くなく、水質汚染の虞れがないうえ、微生物により分解されるので、処理水中で残留し続けることがない等の特性を具備している。
【0042】
凝集槽2a・2bから供給樋14を通して積層型フィルタ18上へ流出される凝集槽排水Qは、凝集剤Hが撹拌混合されることにより原水S内の懸濁物質の凝集がほぼ完了した状態の凝集固化物(フロック)Fを含んだ流体であり、当該排水Qが所定の厚さで積層型フィルタ18上に拡散された状態でフィルタ18が矢印方向へ移動する。
【0043】
前記積層型フィルタ18が水平移動する間に、排水Q内から水分Wが動分離され、各単層フィルタ18a〜18fを通して処理水受け9b内へ落下すると共に、排水パイプ30を通して処理水Wは外部へ導出されて行く。
一方、積層型コンベアフィルタ18の最表層18aの上部には、分離された凝集物(フロック)Fが残ることになり、駆動軸9dの前方位置でスクレーパ9fにより剥離され、凝集物収容タンク9g内へ回収される。
【0044】
尚、前記凝集槽排水Q内の凝集物Fの大きさや硬さは、懸濁物質の種類や濃度及び凝集剤Hの混合後の時間経過の程度によって大きく変動し、極く小さな粒径の凝集物Fも多量に存在する。
これ等小粒径の凝集物Fは、各単層フィルタ18b〜18fを通過する間に各単層フィルタ18h〜18fの内部で捕捉若しくは吸着されることになる。尚、本発明の各単層フィルタ18b〜18fの形成素材には予め活性炭素成分が含有されているため、前記細かな凝集物Fの吸着性能が大幅に向上する。
【0045】
駆動軸9bを通過した積層型フィルタ18は先ず洗浄水噴霧ノズル24からの噴霧水によりその表・裏面側が洗浄される。尚、フィルタ18の最表面側18aは、金属繊維又は金属線からなる単層フィルタ18aとなっているため、洗浄水噴霧によって比較的容易に残留する凝集物Fが除去されることになり、洗浄水回収タンク31内へ回収される。
【0046】
前記積層型コンベアフィルタ18は、その帰路においては層間ガイドローラ22a〜22e及び層間ガイドローラ23a〜23eにより、各単層フィルタがそれぞれ分離された状態で進行する。
また、分離された状態で矢印口方向へ進行する各単層フィルタ18a〜18fの間隙内へは、乾燥用エアー噴射ノズル28から高温空気が噴射され、単層フィルタ18a〜18fの乾燥が行われる。
更に、前記分離された各単層フィルタ18a〜18fの間隙内へは層間スクレーパ25、層間ブラシ装置26、層間真空吸引装置27等が配設されており、スクレーパやブラシにより各単層フィルタ18a〜18fの外表面から剥離脱落された細かな凝集物F等が、真空吸引装置27により吸引回収される。
【0047】
前記、ケーシング17内には公知のオゾン発生装置29が配設されており、オゾン化空気流を各単層フィルタ18a〜18fの外表面へ接触させることにより、各単層フィルタ18a〜18fの殺菌処理が行われる。尚、各単層フィルタ18a〜18fの形成素材には、前述の通り予め抗菌剤がねり込み含有されており、当該抗菌剤の殺菌作用とオゾン処理とが相俟って、積層型コンベアフィルタ18の抗菌性が大幅に向上する。
【0048】
各単層フィルタ18a〜18fは、クリーニングされたあとガイドローラ21bにおいて積層状態にまとめられ、積層型コンベアフィルタ18の型で従動軸9eへ入り、順次前方へ繰り出しされて行く。
【0049】
尚、本発明に係る積層型コンベアフィルタ装置Aの具体的な寸法及び運転条件等は、原水Sの種類や凝集槽排水Qの処理流量によっても異るが、原水Sが池の貯留水及び凝集槽排水Qの排出量が1Ton/Hの場合、積層型コンベアフィルタ装置A(4層型コンベアフィルタ)は、横幅500〜600mm、長さ(全長5〜10m)、コンベア走行速度0.5〜1m/分程度となる。
【0050】
また、一度処理した処理水Wを、再度原水Sとして順還的に2〜3回連続処理することにより、より高度な清浄水を得ることが可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、飲料水等の浄化処理のみならず、薬品産業や食品産業関係等の身体に対する安全性の確保を最重要とする分野において、広く利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る積層型コンベアフィルタ装置の側面概要図である。
【図2】図1のイ−イ視拡大断面概要図である。
【図3】積層型コンベア18の他の実施形態の説明図である。
【図4】従前のPGα21を水質浄化剤とする浄化処理設備の一例を示す全体系統図である。
【符号の説明】
【0053】
1 原水タンク
2a・2b 凝集槽
3a・3b 撹拌機
4 凝集剤貯留タンク
5a・5b 凝集剤混合装置
6a・6b 凝集槽水排出口
7a・7b ドレーン排出口
8 凝集槽排水受入タンク
9 コンベアフィルタ装置
9a コンベアフィルタ
9b 処理水回収タンク
9c フィルタクリーニング装置
9d 駆動軸
9e 従動軸
9f スクレーパ
9g 凝集物収容タンク
10 放流ポンプ
11 吸引ブロワ
12 切換弁
13 水中ポンプ
14 凝集槽排水供給樋
15 原水ポンプ
l 〜Vn バルブ
S 原水(被処理水)
Q 被処理水(凝集槽排水)
W 水分(処理水)
F 凝集物(フロック)
H 凝集剤(浄化剤)
A 積層型コンベアフィルタ装置
16 支持架台
17 ケージング
18 積層型コンベアフィルタ
18a〜18f 単層フィルタ
19 クリーニング装置
20 駆動装置
21a・21b ガイドローラ
22a〜22e 層間ガイドローラ
23a〜23e 層間ガイドローラ
24 洗浄水噴霧ノズル
25 層間スクレーパ
26 層間ブラシ
27 層間真空引装置
28 乾燥用空気噴射ノズル
29 オゾン発生装置
30 排水パイプ
31 洗浄水回収タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量のポリグルタミン酸架橋物を主体とする生分解性凝集剤を原水内へ供給し、原水と凝集剤とを撹拌混合することにより形成した被処理水Qを処理対象物とする積層型コンベアフィルタ装置に於いて、所定の間隔をおいて配設した駆動軸(9d)及び縦動軸(9e)と、前記駆動軸(9d)を回転駆動する駆動装置(20)と、前記駆動軸(9d)と縦動軸(9e)間にエンドレス状に巻回した金属線又は金属繊維から成る最表層の単層フィルタ(18a)に複数枚の活性炭素を含有する繊維から成る単層フィルタ(18b)、(18c)を相互に分離可能に積層して成る積層型コンベアフィルタ(18)と、前記積層型コンベアフィルタ(18)の往路の下方に配設した処理水回収タンク(9b)と、前記積層型コンベアフィルタ(18)の往路の両側に配設されて積層型コンベアフィルタ(18)を形成する各単層コンベア(18a)、(18b)、(18c)を一定の間隔を保持せしめて分離する複数の層間ガイドローラ(22a、22b)、(23a、23b)と、前記積層型コンベアフィルタ(18)を収容するケーシング(17)と、前記ケーシング(17)内に配設されて分離された各単層フィルタ(18a)、(18b)、(18c)のクリーニングを行う殺菌装置(29)を備えたクリーニング装置(19)とから構成したことを特徴とする積層型コンベアフィルタ装置。
【請求項2】
殺菌装置(29)をオゾン発生装置とした請求項1に記載の積層型コンベアフィルタ装置。
【請求項3】
殺菌装置(29)を、オゾンと酸素の混合気体の高濃度溶液内で混合気体の超微細気泡を接触させる構成の殺菌装置とした請求項1に記載の積層型コンベアフィルタ装置。
【請求項4】
クリーニング装置(19)を、分離した各単層フィルタ(18a)、(18b)、(18c)の間隙内へ配設した乾燥用空気噴射ノズル(28)、層間スクレーパ(25)、層間真空吸引装置(27)を備えた構成とした請求項1に記載の積層型コンベアフィルタ装置。
【請求項5】
クリーニング装置(19)を、分離した各単層フィルタ(18a)、(18b)、(18c)の間隙内へ配設した層間ブラシ(26)を備えた構成とした請求項1に記載の積層型コンベアフィルタ装置。
【請求項6】
最表層の単層フィルタ(18a)を除くその他の単層フィルタ(18b)、(18c)を、抗菌剤をねり込みした繊維材により形成する構成とした請求項1に記載の積層型コンベアフィルタ型。
【請求項7】
3枚の単層フィルタ(18a)、(18b)、(18c)から積層型コンベアフィルタ(18)を形成する構成とした請求項1に記載の積層型コンベアフィルタ装置。
【請求項8】
往路の分離した各単層フィルタ(18a)、(18b)、(18c)の間の間隔寸法を夫々異なる寸法とした請求項1に記載の積層型コンベアフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142182(P2006−142182A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334461(P2004−334461)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(502426452)日本ポリグル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】