積層型電子部品の製造方法
【課題】大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一つの態様に基づく積層型電子部品は、ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程および内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程を備えていることから、ビア導体パターンおよび内部導体パターンに含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートが膨潤することを抑制できる。
【解決手段】本発明の一つの態様に基づく積層型電子部品は、ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程および内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程を備えていることから、ビア導体パターンおよび内部導体パターンに含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートが膨潤することを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状の内部導体が内部に埋設された積層型電子部品の製造方法に関するものである。このような積層型電子部品は、産業用電子機器および民生用電気製品に代表される多種多様な電子機器において、例えばインダクタ、トランス、コイル部品、LC部品または貫通コンデンサとして用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コイル状の内部導体が内部に埋設された電子部品としては、例えば、特許文献1に記載された積層インダクタが知られている。特許文献1に記載された積層インダクタは、上面に導体パターンが印刷された磁性体グリーンシートを複数積層して生積層体を形成するとともに焼成することによって作製されている。
【0003】
また、生積層体を形成した後に、生積層体に対して積層方向に圧力を加えて磁性体グリーンシートを圧着することによって、磁性体グリーンシート間に隙間が生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−148027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品が求められている。積層型電子部品を大電流および高インダクタンスに対応させるためには、内部導体の厚みを大きくする方法が挙げられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法を用いて内部導体の厚みを大きくした場合、磁性体グリーンシートに対して積層方向に圧力を加えたとしても磁性体グリーンシートを十分に圧着させることが困難となる。また、大きな圧力を加える必要があるので、内部導体となる導体ペーストが変形して内部導体のインダクタンスが変動する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様に基づく積層型電子部品の製造方法は、上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを準備する第1の準備工程と、前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、上面および下面に開口する貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを準備する第2の準備工程と、前記第1の乾燥工程により乾燥させた前記第1のセラミックグリーンシートの上面に前記第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程と、前記ビア導体パターンと接合するように前記貫通パターンの内に前記貫通パターンの形状に対応した内部導体パターンを配設する第2の配設工程と、前記貫通パターンの内に配設された前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様に基づく積層型電子部品の製造方法によれば、内部導体パターンが貫通孔内に配設される第2のセラミックグリーンシートを用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0010】
また、第1の乾燥工程および第2の乾燥工程によってビア導体パターンおよび内部導体パターンをそれぞれ乾燥させていることから、ビア導体パターンおよび内部導体パターンに含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートが膨潤することを抑制できる。
【0011】
また、ビア導体パターンおよび内部導体パターンをそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターンおよび内部導体パターンの強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシートの上面に第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の積層型電子部品およびその製造方法を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の分解斜視図である。
【図3】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図4】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図5】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図6】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図7】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図8】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図9】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図10】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図11】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図12】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図13】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図14】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図15】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図16】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図17】図1に示す実施形態のA−A断面図である。
【図18】図1に示す実施形態の平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の積層型電子部品およびその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態の積層型電子部品は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0014】
第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法は、下記の工程を備えている。すなわち、
(1)上面および下面に開口する貫通孔3aを有する第1のセラミックグリーンシート3を準備する第1の準備工程と、
(2)貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する第1の配設工程と、
(3)貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程と、(4)上面および下面に開口する貫通パターン7aを有し、第1のセラミックグリーンシート3よりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシート7を準備する第2の準備工程と、
(5)第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程と、
(6)ビア導体パターン5と接合するように貫通パターン7aの内に貫通パターン7aの形状に対応した内部導体パターン9を配設する第2の配設工程と、
(7)貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程と、
(8)第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7を焼成する焼成工程と、を備えている。
【0015】
このように、第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法によれば、内部導体パターン9が貫通孔内に配設される第2のセラミックグリーンシート3を用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0016】
また、生積層体11を形成した後に乾燥させるのではなく、第1の配設工程の後に、第1の乾燥工程を都度行うとともに、第2の配設工程の後に、第2の乾燥工程を都度行うことによってビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させている。そのため、ビア導体パターン5および内部導体パターン9に含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0017】
第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することを抑制できることから、第1のセラミックグリーンシート3を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第1のセラミックグリーンシート3が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第1のセラミックグリーンシート3と、第1のセラミックグリーンシート3が有する貫通孔3aの内に配設されるビア導体パターン5との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0018】
また、同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できることから、第2のセラミックグリーンシート7を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加
圧・焼成する際における第2のセラミックグリーンシート7が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第2のセラミックグリーンシート7と、第2のセラミックグリーンシート7が有する貫通パターン7aの内に配設される内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0019】
従って、上記の部分的な変形によって生じる厚みのばらつきに起因して生積層体11の内部における第1および第2のセラミックグリーンシート5,7の間に隙間が生じることが抑制される。そのため、複数のセラミックグリーンシートを互いに接合するために、積層方向に大きな圧力を加えることが必ずしも必要ないので、内部導体ペーストが変形する可能性を小さくできる。
【0020】
また、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターン5および内部導体パターン9の強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【0021】
結果として、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品1を提供することが可能となる。
【0022】
(1)第1の準備工程
まず、第1のセラミックグリーンシート3を複数作製する。具体的には、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、例えば、酸化珪素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより複数の第1のセラミックグリーンシート3を作製することができる。
【0023】
さらに、上面および下面に開口する貫通孔3aは、上記の混合部材をシート状に成形した後に、このシートの一部を打ち抜くことによって形成すればよい。また、上記の混合部材をシート状に成形する際に、貫通孔3aとなる部分を除くようにシート状に成形することによって貫通孔3aを形成してもよい。このようにして、図3に示すように、上面および下面に開口する貫通孔3aを有する複数の第1のセラミックグリーンシート3を準備することができる。
【0024】
(2)第1の配設工程
次に、図3に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加したものを用いることができる。上記の金属材料は単一、合金、混合物として用い、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを導体ペーストとして用いることができる。
【0025】
(3)第1の乾燥工程
次に、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。なお、本実施形態における乾燥工程とは、ビア導体パターン5を配設した後に、ビア導体パターン5の上に内部導体パターン9を配設するまでの間に、ビア導体パターン5が露出していることに起因する製造工程上で不可避な乾燥を示すものではない。すなわち、ビア導体パターン5を乾燥させる工程を別途加えていることを意味している。
【0026】
具体的には、例えば、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5に乾燥した風をあてることによってビア導体パターン5を乾燥させることができる。また、貫通孔3aにビア
導体パターン5が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによってビア導体パターン5を乾燥させてもよい。また、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させてもよい。これらの方法によって、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程とすることができる。乾燥させる時間は、ビア導体パターン5として用いる材料の種類や有機溶剤並びにバインダの含有量に応じて適宜設定することができる。
【0027】
(4)第2の準備工程
次に、第2のセラミックグリーンシート7を複数作製する。具体的には、第1のセラミックグリーンシート3と同様に、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、例えば、酸化珪素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより複数の第2のセラミックグリーンシート7を作製することができる。
【0028】
このとき、第2のセラミックグリーンシート7の厚みを第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きくすることによって、内部導体パターン9の厚みを大きくすることができる。そのため、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0029】
第2のセラミックグリーンシート7は、第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きい厚みを有する一枚のシートによって構成されていてもよいが、これに限られるものではない。例えば、複数のセラミックグリーンシートを重ねることによって第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きい厚みを有する第2のセラミックグリーンシート7を形成してもよい。
【0030】
このとき、第1のセラミックグリーンシート3と同等の厚みを有するセラミックグリーンシートを複数積層することによって第2のセラミックグリーンシート7を形成する場合には、第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7として、一定の厚みを有するセラミックグリーンシートを準備すればよいので生産性を向上させることができる。
【0031】
さらに、上面および下面に開口する貫通パターン7aは、上記の混合部材をシート状に成形した後に、このシートの一部を打ち抜くことによって形成すればよい。また、上記の混合部材をシート状に成形する際に、貫通パターン7aとなる部分を除くようにシート状に成形することによって貫通パターン7aを形成してもよい。このようにして、図4に示すように、上面および下面に開口する貫通パターン7aを有する複数の第2のセラミックグリーンシート7を準備することができる。
【0032】
本実施形態における第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7は、それぞれ平面視した場合の外周形状が矩形状となっているが特にこれに限られるものではない。たとえば、平面視した場合の外周形状が、六角形または八角形のような多角形状、或いは、楕円形状または円形状のような曲面形状であってもよい。
【0033】
(5)積層工程
次に、図4に示すように、第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する。このとき、貫通パターン7aが第1のセラミックグリーンシート3の貫通孔3aの一部とつながるように第2のセラミックグリーンシート7が積層される。言い換えれば、貫通パターン7aの下面側の
開口部にビア導体パターン5の一部が露出するように第2のセラミックグリーンシート7が第1のセラミックグリーンシート3の上面に積層される。
【0034】
(6)第2の配設工程
次に、図5に示すように、貫通パターン7aの内に貫通パターン7aの形状に対応した内部導体パターン9を配設する。このとき、貫通パターン7aの下面側の開口部にビア導体パターン5の一部が露出していることから、内部導体パターン9とビア導体パターン5とが接合される。
【0035】
内部導体パターン9としては、ビア導体パターン5と同様に、例えば、銅、銀、金、白金ニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体ペーストを用いることができる。上記の金属材料は単一、合金、混合物として用い、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを導体ペーストとして用いることができる。
【0036】
特に、内部導体パターン9およびビア導体パターン5として、同じ金属材料を用いることが好ましい。内部導体パターン9の電気抵抗率とビア導体パターン5の電気抵抗率とのばらつきを小さくすることができる。
【0037】
本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、平面視した場合に、貫通パターン7aが略環状である、いわゆるC字形状となるように形成されている。そのため、平面視した場合に、内部導体パターン9が略環状である、いわゆるC字形状となるように形成されている。
【0038】
そして、後述するように、積層方向に隣り合う内部導体パターン9がビア導体パターン5を介して電気的に接続されている。そのため、積層型電子部品1の積層方向に向かって巻回されたコイル状の内部配線を焼成後の積層体11の内部に形成することができる。このようにして内部配線が形成されることによって積層型電子部品1をチップインダクタとして作用させることができる。
【0039】
(7)第2の乾燥工程
次に、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる。なお、本実施形態における第2の乾燥工程とは、内部導体パターン9を配設した後に、焼成するまでの間に、内部導体パターン9が露出していることに起因する製造工程上で不可避な乾燥を示すものではない。すなわち、内部導体パターン9を乾燥させる工程を別途加えていることを意味している。
【0040】
内部導体パターン9を乾燥させる方法として、具体的には、例えば、貫通パターン7aに配設された内部導体パターン9に乾燥した風をあてることによって内部導体パターン9を乾燥させることができる。また、貫通パターン7aに内部導体パターン9が配設された第2のセラミックグリーンシート7を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによって内部導体パターン9を乾燥させてもよい。また、マイクロ波加熱を行うことによって内部導体パターン9を乾燥させてもよい。これらの方法によって、貫通パターン7aに配設された内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程とすることができる。乾燥させる時間は、内部導体パターン9として用いる材料の種類や有機溶剤並びにバインダの含有量に応じて適宜設定することができる。
【0041】
本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、図2に示すように、第1のセラミックグリーンシート3およびビア導体パターン5の積層方向の厚みが、第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9の積層方向の厚みよりも小さい。そのため、積層型電子部品1の全体の大きさ(積層方向の高さ)を過度に大きくすることなく、内
部導体の電気抵抗を小さくすることができるため好ましい。
【0042】
次に、図6に示すように、上記の第2の乾燥工程により乾燥させた第2のセラミックグリーンシート7の上面に新たに第1のセラミックグリーンシート3を積層する。このとき、貫通孔3aが第2のセラミックグリーンシート7の貫通パターン7aの一部とつながるように第1のセラミックグリーンシート3が積層される。言い換えれば、貫通孔3aの下面側の開口部にビア導体ペーストが露出するように、第1のセラミックグリーンシート3が第2のセラミックグリーンシート7の上面に積層される。
【0043】
次に、図7に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する。このとき、貫通孔3aの下面側の開口部に内部導体パターン9が露出していることから、内部導体パターン9とビア導体パターン5とが接合される。さらに、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、既に示した通りの方法を用いればよい。
【0044】
さらに、図7に示すように、上記の(2)、(3)、(5)〜(7)の工程を繰り返すことによって、ビア導体パターン5が貫通孔3aの内に配設された第1のセラミックグリーンシート3と、内部導体パターン9が貫通パターン7aの内に配設された第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を作製することができる。
【0045】
なお、図3〜7は本実施形態の積層構造を明確にするための分解斜視図である。そのため、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7の数はそれぞれ図3〜7に示す分解斜視図に示す数に限られるものではない。また、生積層体11の積層方向の両端部には、ビア導体パターン5および内部導体パターン9が露出しないように第1のセラミックグリーンシート3と同組成の第3のセラミックグリーンシート15を配設しても良い。
【0046】
なお、複数のセラミックグリーンシートを重ねることによって第2のセラミックグリーンシート7を形成している場合には、このようにして形成された第2のセラミックグリーンシート7を積層工程によって第1のセラミックグリーンシート3の上面に積層した後に、内部導体パターンを第2の配設工程によって配設すればよい。
【0047】
あるいは、積層工程および第2の配設工程として、下記のようにしてもよい。まず、第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に、第2のセラミックグリーンシート7を構成するセラミックグリーンシートの一つを積層するとともに、このセラミックグリーンシートに形成された貫通孔の内に内部導体パターン9の一部となる導電ペーストを配設する。そして、第2の乾燥工程として、この導電ペーストを乾燥させる。
【0048】
次に、上記のセラミックグリーンシートの上面に、第2のセラミックグリーンシート7を構成するセラミックグリーンシートの他の一つを積層するとともに、この他のセラミックグリーンシートに形成された貫通孔の内に内部導体パターン9の一部となる導電ペーストを配設する。そして、第2の乾燥工程として、この導電ペーストを乾燥させる。
【0049】
つまり、第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9が、それぞれ複数のセラミックグリーンシートおよび複数の導電ペーストを重ねることによって形成されており、複数の導電ペーストをそれぞれ配設する際に、複数の導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9を配設してもよい。
【0050】
このように複数の導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9を配設している場合には、内部導体パターン9をさらに効率良く乾燥させることができる。そのため、内部導体パターン9となる導体ペーストが変形することをさらに抑制できる。
【0051】
また、複数の導電ペーストを重ねることによって内部導体パターン9が形成されている場合には、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の導電ペーストの幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターンほど小さいことが好ましい。
【0052】
内部導体パターン9となる複数の導体ペーストを第1のセラミックグリーンシート3の上に配設する工程において、複数の導体ペースト間で製造工程上の不可避のずれが生じる場合がある。しかしながら、上記のように積層方向の上側に位置する導体ペーストほど積層方向に垂直な方向の幅が小さいことによって、上側に位置する導体ペーストを下側に位置する導体ペーストの上に安定して位置させることができる。従って、内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性を低減できるからである。
【0053】
(8)焼成工程
上述の通り、第1のセラミックグリーンシート3と第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を加圧・焼成することによって積層体11が作製される。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0054】
さらに、図1〜2に示すように、焼成された積層体11の側面に一対の外部電極13が形成される。一対の外部電極13の一方は、積層体11の最も下面側に位置するビア導体パターン5または内部導体パターン9と電気的に接続される。また、一対の外部電極13の他方は、積層体11の最も上面側に位置するビア導体パターン5または内部導体パターン9と電気的に接続される。外部電極13は、リード端子などを介して外部配線(不図示)と電気的に接続するための部材である。
【0055】
一対の外部電極13としては、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケルのような金属材料粉末を用いることができる。また、絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加してもよい。一対の外部電極13は、塗布焼付け、スパッタリングまたは蒸着などの方法によって形成される。
【0056】
なお、本実施形態における外部電極13は積層体11の側面に配設されているが、特にこれに限られるものではない。例えば、一対の外部電極13の一方が積層体11の上面に配設されるとともに、一対の外部電極13の他方が積層体11の下面に配設されていてもよい。また、一対の外部電極13の双方が積層体11の下面に配設されていてもよい。
【0057】
また、外部電極13の積層体11から露出する表面には、メッキを形成することが好ましい。外部に露出する外部電極13が劣化することを抑制できるからである。また、リード端子などを介して外部電極13と外部配線(不図示)とを電気的に接続する場合には、外部電極13とリード端子との接合性を高めることができる。メッキとしては、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、金メッキおよび錫めっきを用いることができる。具体的には、例えば、外部電極13の積層体11から露出する表面にニッケルメッキを形成した後、さらにニッケルメッキの表面に金メッキを形成すればよい。
【0058】
以上により、本実施形態の積層型電子部品1を作製することができる。
【0059】
次に、第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法は、下記の工程を備えている。すなわち、(1)上面および下面に開口する貫通孔3aを有する第1のセラミックグリーンシート3を準備する第1の準備工程と、
(2)貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する第1の配設工程と、
(3)貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程と、(4)第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に、ビア導体パターン5と接合するように、ビア導体パターン5よりも厚みの大きい内部導体パターン9を配設する工程と、
(5)内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程と、
(6)上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aを有し、第1のセラミックグリーンシート3よりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシート7を準備する第2の準備工程と、
(7)第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9が貫通パターン7a内に位置するように、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程と、
(8)積層工程により積層された第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7を焼成する焼成工程と、を備えている。
【0061】
このように、第2の実施形態の積層型電子部品1の製造方法によれば、第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法と同様に、内部導体パターン9が貫通孔内に配設される第2のセラミックグリーンシート3を用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0062】
また、生積層体11を形成した後に乾燥させるのではなく、第1の配設工程の後に、第1の乾燥工程を都度行うとともに、第2のセラミックグリーンシート7を配設する工程の前に、第2の乾燥工程を都度行うことによってビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させている。そのため、ビア導体パターン5および内部導体パターン9に含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0063】
第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することを抑制できることから、第1のセラミックグリーンシート3を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第1のセラミックグリーンシート3が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第1のセラミックグリーンシート3と、第1のセラミックグリーンシート3が有する貫通孔3aの内に配設されるビア導体パターン5との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0064】
また、同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できることから、第2のセラミックグリーンシート7を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第2のセラミックグリーンシート7が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第2のセラミックグリーンシート7と、第2のセラミックグリーンシート7が有する貫通パターン7aの内に配設される内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0065】
従って、上記の部分的な変形によって生じる厚みのばらつきに起因して生積層体11の内部における第1および第2のセラミックグリーンシート7の間に隙間が生じることが抑制される。そのため、複数のセラミックグリーンシートを互いに接合するために、積層方向に大きな圧力を加えることが必ずしも必要ないので、ビア導体パターン5が変形する可能性を小さくできる。
【0066】
また、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターン5および内部導体パターン9の強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【0067】
結果として、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品1を提供することが可能となる。
【0068】
(1)第1の準備工程
まず、第1のセラミックグリーンシート3を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第1のセラミックグリーンシート3と同様にして作製すればよい。図8に示すように、上面および下面に開口する貫通孔3aについてもまた、第1の実施形態における貫通孔3aと同様にして形成すればよい。
【0069】
(2)第1の配設工程
次に、図8に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、第1の実施形態における導体ペーストと同様の材料を用いることができる。
【0070】
(3)第1の乾燥工程
次に、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5に乾燥した風をあてることによってビア導体パターン5を乾燥させる、貫通孔3aにビア導体パターン5が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによってビア導体パターン5を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させる方法が挙げられる。
【0071】
(4)内部導体パターン配設工程
次に、図9に示すように、第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面にビア導体パターン5よりも厚みの大きい内部導体パターン9を配設する。このとき、ビア導体パターン5と接合するように内部導体パターン9が配設される。内部導体パターン9としては、第1の実施形態における導体ペーストと同様の材料を用いることができる。
【0072】
このとき、内部導体パターン9の厚みをビア導体パターン5の厚みよりも大きくすることによって、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0073】
内部導体パターン9は、ビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する一つの導体ペーストによって構成されていてもよいが、これに限られるものではない。例えば、複数の導体ペーストを重ねることによってビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する内部導体パターン9を形成してもよい。
【0074】
(5)第2の乾燥工程
次に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設された内部導体パターン9を乾燥させる。内部導体パターン9を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設された内部導体パターン9に乾燥した風をあてることによって内部導体パターン9を乾燥させる、上面に内部導体パターン9が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによって内部導体パターン9を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによって内部導体パターン9を乾燥させる方法が挙げられる。
【0075】
(6)第2の準備工程
次に、第2のセラミックグリーンシート7を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第2のセラミックグリーンシート7と同様にして作製すればよい。図10に示すように、上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aについてもまた、第1の実施形態における貫通パターン7aと同様にして形成すればよい。
【0076】
このとき、第2のセラミックグリーンシート7の厚みを第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きくすることによって、内部導体パターン9の厚みを大きくすることが容易となる。そのため、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0077】
(7)積層工程
次に、図10に示すように、第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9が貫通パターン7a内に位置するように、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する。
【0078】
第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層した後に、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させている。
【0079】
一方、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3の上面に内部導体パターン9を配設するとともに、この内部導体パターン9を乾燥させた後に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層している。
【0080】
このように、第2のセラミックグリーンシート7を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設するよりも先に内部導体パターン9を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設した場合であっても、内部導体パターン9を乾燥させていることから、第1の実施形態と同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0081】
また、内部導体パターン9を乾燥させた後に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層していることから、第1の実施形態よりもさらに、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0082】
次に、図11に示すように、上記の第2の乾燥工程により乾燥させた第2のセラミックグリーンシート7の上面に新たに第1のセラミックグリーンシート3を積層する。このとき、貫通孔3aが第2のセラミックグリーンシート7の貫通パターン7aの一部とつなが
るように第1のセラミックグリーンシート3が積層される。言い換えれば、貫通孔3aの下面側の開口部に内部導体パターン9が露出するように、第1のセラミックグリーンシート3が第2のセラミックグリーンシート7の上面に積層される。
【0083】
次に、図12に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する。このとき、貫通孔3aの下面側の開口部に内部導体パターン9が露出していることから、内部導体パターン9とビア導体パターン5とが接合される。さらに、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、既に示した通りの方法を用いればよい。
【0084】
さらに、図12に示すように、上記の(2)〜(5)、(7)の工程を繰り返すことによって、ビア導体パターン5が貫通孔3aの内に配設された第1のセラミックグリーンシート3と、内部導体パターン9が貫通パターン7aの内に位置する第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を作製することができる。
【0085】
なお、図8〜12は本実施形態の積層構造を明確にするための分解斜視図である。そのため、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7の数はそれぞれ図8〜12に示す分解斜視図に示す数に限られるものではない。また、生積層体11の積層方向の両端部には、ビア導体パターン5および内部導体パターン9が露出しないように第1のセラミックグリーンシート3と同組成の第3のセラミックグリーンシート15を配設しても良い。
【0086】
なお、複数の導体ペーストを重ねることによって内部導体パターン9を形成している場合には、複数の導電ペーストを配設した後に、これらの導電ペーストを第2の乾燥工程として乾燥してもよいがこれに限られるものではない。例えば、複数の導電ペーストをそれぞれ配設する際に、導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第2の乾燥工程としてもよい。
【0087】
このように複数の導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第1のセラミックグリーンシート3の上面に内部導体パターン9を配設している場合には、内部導体パターン9をさらに効率良く乾燥させることができる。そのため、内部導体パターン9となる導体ペーストが変形することをさらに抑制できる。
【0088】
また、複数の導電ペーストを重ねることによって内部導体パターン9が形成されている場合には、第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の導電ペーストの幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターンほど小さいことが好ましい。
【0089】
(8)焼成工程
上述の通り、第1のセラミックグリーンシート3と第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を加圧・焼成することによって積層体11が作製される。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0090】
さらに、第1の実施形態の積層型電子部品1と同様に、焼成された積層体11の側面に一対の外部電極13が形成される。一対の外部電極13としては、第1の実施形態における外部電極13と同様の材料を用いることができる。
【0091】
以上により、本実施形態の積層型電子部品1を作製することができる。
【0092】
次に、第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0093】
第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法は、下記の工程を備えている。すなわち、(1)上面および下面に開口する貫通孔3aを有する第1のセラミックグリーンシート3を複数準備する第1の準備工程と、
(2)貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する第1の配設工程と、
(3)貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程と、(4)上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシート7を複数準備する第2の準備工程と、
(5)貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設する第2の配設工程と、
(6)貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程と、
(7)第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9を介して隣り合う第1の乾燥工程により乾燥させたビア導体パターン5が接続されるように、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7を交互に積層する積層工程と、
(8)積層工程により積層された第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7を焼成する焼成工程と、を備えている。
【0094】
このように、第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法によれば、第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法と同様に、内部導体パターン9が内に配設される第2のセラミックグリーンシート7を用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0095】
また、生積層体11を形成した後に乾燥させるのではなく、第1の配設工程の後に、第1の乾燥工程を都度行うとともに、第2の配設工程の後に、第2の乾燥工程を都度行うことによってビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させている。そのため、ビア導体パターン5および内部導体パターン9に含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0096】
第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することを抑制できることから、第1のセラミックグリーンシート3を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第1のセラミックグリーンシート3が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第1のセラミックグリーンシート3と、第1のセラミックグリーンシート3が有する貫通孔3aの内に配設されるビア導体パターン5との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0097】
また、同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できることから、第2のセラミックグリーンシート7を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第2のセラミックグリーンシート7が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第2のセラミックグリーンシート7と、第2のセラミックグリーンシート7が有する貫通パターン7aの内に配設される内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0098】
従って、上記の部分的な変形によって生じる厚みのばらつきに起因して生積層体11の内部における第1および第2のセラミックグリーンシート7の間に隙間が生じることが抑制される。そのため、複数のセラミックグリーンシートを互いに接合するために、積層方向に大きな圧力を加えることが必ずしも必要ないので、内部導体ペーストが変形する可能性を小さくできる。
【0099】
また、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターン5および内部導体パターン9の強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【0100】
結果として、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品1を提供することが可能となる。
【0101】
(1)第1の準備工程
まず、第1のセラミックグリーンシート3を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第1のセラミックグリーンシート3と同様にして作製すればよい。図13に示すように、上面および下面に開口する貫通孔3aについてもまた、第1の実施形態における貫通孔3aと同様にして形成すればよい。
【0102】
(2)第1の配設工程
次に、図13に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、第1の実施形態における導体ペーストと同様の材料を用いることができる。
【0103】
(3)第1の乾燥工程
次に、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5に乾燥した風をあてることによってビア導体パターン5を乾燥させる、貫通孔3aにビア導体パターン5が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによってビア導体パターン5を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させる方法が挙げられる。
【0104】
(4)第2の準備工程
次に、第2のセラミックグリーンシート7を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第2のセラミックグリーンシート7と同様にして作製すればよい。図14に示すように、上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aについてもまた、第1の実施形態における貫通パターン7aと同様にして形成すればよい。
【0105】
このとき、第2のセラミックグリーンシート7の厚みを第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きくすることによって、内部導体パターン9の厚みを大きくすることが容易となる。そのため、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0106】
(5)第2の配設工程
次に、図14に示すように、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、第1の実施形態における導体ペーストと同様
の材料を用いることができる。
【0107】
このとき、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9として導体ペーストを充填することによって内部導体パターン9を配設すればよい。あるいは、まず、内部導体パターン9を準備して、内部導体パターン9が貫通パターン7a内に位置するように第2のセラミックグリーンシート7を配設してもよい。
【0108】
内部導体パターン9は、ビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する一つの導体ペーストによって構成されていてもよいが、これに限られるものではない。例えば、第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、複数の導体ペーストを重ねることによってビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する内部導体パターン9を形成してもよい。
【0109】
(6)第2の乾燥工程
次に、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる。内部導体パターン9を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、貫通パターン7aに配設された内部導体パターン9に乾燥した風をあてることによって内部導体パターン9を乾燥させる、貫通パターン7aに内部導体パターン9が配設された第2のセラミックグリーンシート7を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによって内部導体パターン9を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させる方法が挙げられる。
【0110】
(7)積層工程
次に、図15に示すように、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する。さらに、図16に示すように、第2のセラミックグリーンシート7の上面にさらに第1のセラミックグリーンシート3を積層する。このようにして、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7が交互に積層される。このとき、第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9を介して隣り合う第1の乾燥工程により乾燥させたビア導体パターン5が接続されるように、上記のセラミックグリーンシートが積層される。
【0111】
第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層した後に、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させている。
【0112】
一方、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させた後に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層している。
【0113】
このように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設するとともに、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3と、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させた第2のセラミックグリーンシート7と、をそれぞれ準備した後に、第2のセラミックグリーンシート7を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設した場合であっても、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させていることから、第1の実施形態と同様に、第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0114】
また、第1の実施形態および第2の実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3または第2のセラミックグリーンシート7を積層する工程と、第1の乾燥工程または第2の乾燥工程と、が交互になされているため、積層数が多くなる程に積層型電子部品1を作製する時間が多く必要とされる。
【0115】
一方、本実施形態の積層型電子部品の製造方法においては、貫通孔3aの内にビア導体パターン5が配設された複数の第1のセラミックグリーンシート3と、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9が配設された複数の第2のセラミックグリーンシート7とに対して、同時に第1の乾燥工程および第2の乾燥工程を行うことが可能となるため、積層数が多くなる場合であっても積層型電子部品1を作製する時間を短縮することができる。
【0116】
なお、図13〜16は本実施形態の積層構造を明確にするための分解斜視図である。そのため、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7の数はそれぞれ図13〜16に示す分解斜視図に示す数に限られるものではない。また、生積層体11の積層方向の両端部には、ビア導体パターン5および内部導体パターン9が露出しないように第1のセラミックグリーンシート3と同組成の第3のセラミックグリーンシート15を配設しても良い。
【0117】
なお、複数の導体ペーストを重ねることによって内部導体パターン9を形成している場合には、複数の導電ペーストを配設した後に、これらの導電ペーストを第2の乾燥工程として乾燥してもよいがこれに限られるものではない。例えば、第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、複数の導電ペーストをそれぞれ配設する際に、導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第2の乾燥工程としてもよい。
【0118】
また、複数の導電ペーストを重ねることによって内部導体パターン9が形成されている場合には、第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の導電ペーストの幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターンほど小さいことが好ましい。
【0119】
(8)焼成工程
上述の通り、第1のセラミックグリーンシート3と第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を加圧・焼成することによって積層体11が作製される。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0120】
さらに、第1の実施形態の積層型電子部品1と同様に、焼成された積層体11の側面に一対の外部電極13が形成される。一対の外部電極13としては、第1の実施形態における外部電極13と同様の材料を用いることができる。
【0121】
以上により、本実施形態の積層型電子部品1を作製することができる。
【0122】
上記の各実施形態の積層型電子部品の製造方法においては、それぞれ第1のセラミックグリーンシート3およびビア導体パターン5の厚みよりも第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9の厚みが大きい。そのため、ビア導体パターン5に含有される有機溶剤並びにバインダの総量よりも内部導体パターン9に含有される有機溶剤並びにバインダの総量が多いことから、第1の乾燥工程においてビア導体パターン5を乾燥させるよりも第2の乾燥工程において内部導体パターン9をより乾燥させることが好ましい。
【0123】
具体的には、第1の乾燥工程におけるビア導体パターン5を乾燥させる時間よりも、第2の乾燥工程における内部導体パターン9を乾燥させる時間が長いことが好ましい。これによって内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができるので、内部導体パターン9が変形する可能性をさらに小さくできる。
【0124】
また、上記のようにビア導体パターン5および内部導体パターン9を乾燥させる時間を調整することによって内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができるが、第1の乾燥工程におけるビア導体パターン5を乾燥させる温度よりも、第2の乾燥工程における内部導体パターン9を乾燥させる温度を高くすることによっても、内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができる。たとえば、ビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥室および内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥室を準備して、第1の乾燥室の内部温度よりも第2の乾燥室の内部温度を高く設定しておくことによって、上記のように内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができる。
【0125】
また、上記の各実施形態の積層型電子部品の製造方法において、図17に示すように、複数の内部導体パターン9のうち、ビア導体パターン5を介して積層方向に隣り合う少なくとも二つの内部導体パターン9は、積層方向に平行な断面において、第2のセラミックグリーンシート7の上面側に位置する内部導体パターン9aの積層方向に垂直な方向の幅L1が、第2のセラミックグリーンシート7の下面側に位置する内部導体パターン9bの積層方向に垂直な方向の幅L2よりも小さいことが好ましい。
【0126】
内部導体パターン9を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設する工程において、製造工程上の不可避のずれが生じる場合がある。また、上記の各実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することが抑制されることから、第2のセラミックグリーンシート7と、内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが小さくなるが、製造工程上の不可避の厚みのばらつきが生じる可能性がある。
【0127】
そのため、積層方向に隣り合う少なくとも二つの内部導体パターン9のうち、上面側に位置する内部導体パターン9aにおける、下面側に位置する第1のセラミックグリーンシート3の上に位置する部分と、下面側に位置する内部導体パターン9bの上に位置する部分との間で段差が生じる可能性がある。
【0128】
しかしながら、上記のように第1のセラミックグリーンシート3の上面側に位置する内部導体パターン9aの積層方向に垂直な方向の幅L1が、第1のセラミックグリーンシート3の下面側に位置する内部導体パターン9bの積層方向に垂直な方向の幅L2よりも小さいことによって、上面側に位置する内部導体パターン9aを、下面側に位置する内部導体パターン9bの上に安定して位置させることができる。従って、内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性を低減することができる。
【0129】
特に、図17に示すように、複数の内部導体パターン9は、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターン9ほど小さいことがさらに好ましい。これによって、それぞれの内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性を低減することができるからである。
【0130】
また、上記のように積層方向の上側に位置する内部導体パターン9ほど積層方向に垂直な方向の幅が小さい場合には、積層方向に平行な断面において、積層方向に平行な方向の厚みが、積層方向の上側に位置する内部導体パターン9ほど大きいことがさらに好ましい。
【0131】
第1のセラミックグリーンシート3の上面側に位置する内部導体パターン9aと第1のセラミックグリーンシート3の下面側に位置する内部導体パターン9bとの間での断面積のばらつきを小さくすることができるからである。これらの内部導体パターン9の断面積のばらつきが小さいことによって、内部導体パターン9の抵抗率のばらつきを小さくすることができるので、局所的に大きな発熱が生じる可能性を小さくすることができる。
【0132】
また、図18に示すように、積層方向に隣り合う二つの内部導体パターン9を平面透視した場合に、上面側に位置する内部導体パターン9aの少なくとも一部が、第1のセラミックグリーンシート3の下面側に位置する内部導体パターン9bの一部と重なり合っていることがさらに好ましい。これによって、内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性をさらに低減することができるからである。
【0133】
なお、図18において、積層方向に隣り合う二つの内部導体パターン9のうち、下面側に位置する内部導体パターン9bの外周を一点鎖線にて便宜的に示している。また、上面側に位置する内部導体パターン9aを斜線で示すとともにその外周を鎖線にて便宜的に示している。
【0134】
なお、単体の積層型電子部品1の製造方法について示したが、積層方向に隣り合う内部導体パターン9がビア導体パターン5を介して接続された、積層方向に向かって巻回されたコイル状の内部配線が複数併設された生積層体11の集合体を形成してもよい。このような生積層体11の集合体を作製した後、それぞれの生積層体11に分割するとともにそれぞれの生積層体11を焼成することによって複数の積層型電子部品1を同時に作製することができる。また、上記する生積層体11の集合体を同時焼成した後に、それぞれの積層型電子部品1に分割してもよい。
【0135】
上述の通り、各実施形態の積層型電子部品の製造方法について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0136】
1・・・積層型電子部品
3・・・第1のセラミックグリーンシート
3a・・・貫通孔
5・・・ビア導体パターン
7・・・第2のセラミックグリーンシート
7a・・・貫通パターン
9・・・内部導体パターン
11・・・生積層体(積層体)
13・・・外部電極
15・・・第3のセラミックグリーンシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状の内部導体が内部に埋設された積層型電子部品の製造方法に関するものである。このような積層型電子部品は、産業用電子機器および民生用電気製品に代表される多種多様な電子機器において、例えばインダクタ、トランス、コイル部品、LC部品または貫通コンデンサとして用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コイル状の内部導体が内部に埋設された電子部品としては、例えば、特許文献1に記載された積層インダクタが知られている。特許文献1に記載された積層インダクタは、上面に導体パターンが印刷された磁性体グリーンシートを複数積層して生積層体を形成するとともに焼成することによって作製されている。
【0003】
また、生積層体を形成した後に、生積層体に対して積層方向に圧力を加えて磁性体グリーンシートを圧着することによって、磁性体グリーンシート間に隙間が生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−148027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品が求められている。積層型電子部品を大電流および高インダクタンスに対応させるためには、内部導体の厚みを大きくする方法が挙げられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法を用いて内部導体の厚みを大きくした場合、磁性体グリーンシートに対して積層方向に圧力を加えたとしても磁性体グリーンシートを十分に圧着させることが困難となる。また、大きな圧力を加える必要があるので、内部導体となる導体ペーストが変形して内部導体のインダクタンスが変動する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様に基づく積層型電子部品の製造方法は、上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを準備する第1の準備工程と、前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、上面および下面に開口する貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを準備する第2の準備工程と、前記第1の乾燥工程により乾燥させた前記第1のセラミックグリーンシートの上面に前記第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程と、前記ビア導体パターンと接合するように前記貫通パターンの内に前記貫通パターンの形状に対応した内部導体パターンを配設する第2の配設工程と、前記貫通パターンの内に配設された前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様に基づく積層型電子部品の製造方法によれば、内部導体パターンが貫通孔内に配設される第2のセラミックグリーンシートを用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0010】
また、第1の乾燥工程および第2の乾燥工程によってビア導体パターンおよび内部導体パターンをそれぞれ乾燥させていることから、ビア導体パターンおよび内部導体パターンに含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートが膨潤することを抑制できる。
【0011】
また、ビア導体パターンおよび内部導体パターンをそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターンおよび内部導体パターンの強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシートの上面に第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の積層型電子部品およびその製造方法を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の分解斜視図である。
【図3】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図4】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図5】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図6】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図7】第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図8】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図9】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図10】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図11】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図12】第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図13】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図14】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図15】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図16】第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法の一工程を示す分解斜視図である。
【図17】図1に示す実施形態のA−A断面図である。
【図18】図1に示す実施形態の平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の積層型電子部品およびその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態の積層型電子部品は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0014】
第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法は、下記の工程を備えている。すなわち、
(1)上面および下面に開口する貫通孔3aを有する第1のセラミックグリーンシート3を準備する第1の準備工程と、
(2)貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する第1の配設工程と、
(3)貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程と、(4)上面および下面に開口する貫通パターン7aを有し、第1のセラミックグリーンシート3よりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシート7を準備する第2の準備工程と、
(5)第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程と、
(6)ビア導体パターン5と接合するように貫通パターン7aの内に貫通パターン7aの形状に対応した内部導体パターン9を配設する第2の配設工程と、
(7)貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程と、
(8)第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7を焼成する焼成工程と、を備えている。
【0015】
このように、第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法によれば、内部導体パターン9が貫通孔内に配設される第2のセラミックグリーンシート3を用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0016】
また、生積層体11を形成した後に乾燥させるのではなく、第1の配設工程の後に、第1の乾燥工程を都度行うとともに、第2の配設工程の後に、第2の乾燥工程を都度行うことによってビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させている。そのため、ビア導体パターン5および内部導体パターン9に含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0017】
第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することを抑制できることから、第1のセラミックグリーンシート3を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第1のセラミックグリーンシート3が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第1のセラミックグリーンシート3と、第1のセラミックグリーンシート3が有する貫通孔3aの内に配設されるビア導体パターン5との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0018】
また、同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できることから、第2のセラミックグリーンシート7を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加
圧・焼成する際における第2のセラミックグリーンシート7が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第2のセラミックグリーンシート7と、第2のセラミックグリーンシート7が有する貫通パターン7aの内に配設される内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0019】
従って、上記の部分的な変形によって生じる厚みのばらつきに起因して生積層体11の内部における第1および第2のセラミックグリーンシート5,7の間に隙間が生じることが抑制される。そのため、複数のセラミックグリーンシートを互いに接合するために、積層方向に大きな圧力を加えることが必ずしも必要ないので、内部導体ペーストが変形する可能性を小さくできる。
【0020】
また、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターン5および内部導体パターン9の強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【0021】
結果として、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品1を提供することが可能となる。
【0022】
(1)第1の準備工程
まず、第1のセラミックグリーンシート3を複数作製する。具体的には、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、例えば、酸化珪素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより複数の第1のセラミックグリーンシート3を作製することができる。
【0023】
さらに、上面および下面に開口する貫通孔3aは、上記の混合部材をシート状に成形した後に、このシートの一部を打ち抜くことによって形成すればよい。また、上記の混合部材をシート状に成形する際に、貫通孔3aとなる部分を除くようにシート状に成形することによって貫通孔3aを形成してもよい。このようにして、図3に示すように、上面および下面に開口する貫通孔3aを有する複数の第1のセラミックグリーンシート3を準備することができる。
【0024】
(2)第1の配設工程
次に、図3に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加したものを用いることができる。上記の金属材料は単一、合金、混合物として用い、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを導体ペーストとして用いることができる。
【0025】
(3)第1の乾燥工程
次に、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。なお、本実施形態における乾燥工程とは、ビア導体パターン5を配設した後に、ビア導体パターン5の上に内部導体パターン9を配設するまでの間に、ビア導体パターン5が露出していることに起因する製造工程上で不可避な乾燥を示すものではない。すなわち、ビア導体パターン5を乾燥させる工程を別途加えていることを意味している。
【0026】
具体的には、例えば、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5に乾燥した風をあてることによってビア導体パターン5を乾燥させることができる。また、貫通孔3aにビア
導体パターン5が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによってビア導体パターン5を乾燥させてもよい。また、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させてもよい。これらの方法によって、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程とすることができる。乾燥させる時間は、ビア導体パターン5として用いる材料の種類や有機溶剤並びにバインダの含有量に応じて適宜設定することができる。
【0027】
(4)第2の準備工程
次に、第2のセラミックグリーンシート7を複数作製する。具体的には、第1のセラミックグリーンシート3と同様に、ガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。原料粉末としては、例えば、酸化珪素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化硼素(B2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)を用いることができる。混合部材をシート状に成形することにより複数の第2のセラミックグリーンシート7を作製することができる。
【0028】
このとき、第2のセラミックグリーンシート7の厚みを第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きくすることによって、内部導体パターン9の厚みを大きくすることができる。そのため、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0029】
第2のセラミックグリーンシート7は、第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きい厚みを有する一枚のシートによって構成されていてもよいが、これに限られるものではない。例えば、複数のセラミックグリーンシートを重ねることによって第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きい厚みを有する第2のセラミックグリーンシート7を形成してもよい。
【0030】
このとき、第1のセラミックグリーンシート3と同等の厚みを有するセラミックグリーンシートを複数積層することによって第2のセラミックグリーンシート7を形成する場合には、第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7として、一定の厚みを有するセラミックグリーンシートを準備すればよいので生産性を向上させることができる。
【0031】
さらに、上面および下面に開口する貫通パターン7aは、上記の混合部材をシート状に成形した後に、このシートの一部を打ち抜くことによって形成すればよい。また、上記の混合部材をシート状に成形する際に、貫通パターン7aとなる部分を除くようにシート状に成形することによって貫通パターン7aを形成してもよい。このようにして、図4に示すように、上面および下面に開口する貫通パターン7aを有する複数の第2のセラミックグリーンシート7を準備することができる。
【0032】
本実施形態における第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7は、それぞれ平面視した場合の外周形状が矩形状となっているが特にこれに限られるものではない。たとえば、平面視した場合の外周形状が、六角形または八角形のような多角形状、或いは、楕円形状または円形状のような曲面形状であってもよい。
【0033】
(5)積層工程
次に、図4に示すように、第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する。このとき、貫通パターン7aが第1のセラミックグリーンシート3の貫通孔3aの一部とつながるように第2のセラミックグリーンシート7が積層される。言い換えれば、貫通パターン7aの下面側の
開口部にビア導体パターン5の一部が露出するように第2のセラミックグリーンシート7が第1のセラミックグリーンシート3の上面に積層される。
【0034】
(6)第2の配設工程
次に、図5に示すように、貫通パターン7aの内に貫通パターン7aの形状に対応した内部導体パターン9を配設する。このとき、貫通パターン7aの下面側の開口部にビア導体パターン5の一部が露出していることから、内部導体パターン9とビア導体パターン5とが接合される。
【0035】
内部導体パターン9としては、ビア導体パターン5と同様に、例えば、銅、銀、金、白金ニッケルのような金属材料粉末に絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加した導体ペーストを用いることができる。上記の金属材料は単一、合金、混合物として用い、有機溶剤並びにバインダを混ぜたものを導体ペーストとして用いることができる。
【0036】
特に、内部導体パターン9およびビア導体パターン5として、同じ金属材料を用いることが好ましい。内部導体パターン9の電気抵抗率とビア導体パターン5の電気抵抗率とのばらつきを小さくすることができる。
【0037】
本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、平面視した場合に、貫通パターン7aが略環状である、いわゆるC字形状となるように形成されている。そのため、平面視した場合に、内部導体パターン9が略環状である、いわゆるC字形状となるように形成されている。
【0038】
そして、後述するように、積層方向に隣り合う内部導体パターン9がビア導体パターン5を介して電気的に接続されている。そのため、積層型電子部品1の積層方向に向かって巻回されたコイル状の内部配線を焼成後の積層体11の内部に形成することができる。このようにして内部配線が形成されることによって積層型電子部品1をチップインダクタとして作用させることができる。
【0039】
(7)第2の乾燥工程
次に、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる。なお、本実施形態における第2の乾燥工程とは、内部導体パターン9を配設した後に、焼成するまでの間に、内部導体パターン9が露出していることに起因する製造工程上で不可避な乾燥を示すものではない。すなわち、内部導体パターン9を乾燥させる工程を別途加えていることを意味している。
【0040】
内部導体パターン9を乾燥させる方法として、具体的には、例えば、貫通パターン7aに配設された内部導体パターン9に乾燥した風をあてることによって内部導体パターン9を乾燥させることができる。また、貫通パターン7aに内部導体パターン9が配設された第2のセラミックグリーンシート7を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによって内部導体パターン9を乾燥させてもよい。また、マイクロ波加熱を行うことによって内部導体パターン9を乾燥させてもよい。これらの方法によって、貫通パターン7aに配設された内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程とすることができる。乾燥させる時間は、内部導体パターン9として用いる材料の種類や有機溶剤並びにバインダの含有量に応じて適宜設定することができる。
【0041】
本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、図2に示すように、第1のセラミックグリーンシート3およびビア導体パターン5の積層方向の厚みが、第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9の積層方向の厚みよりも小さい。そのため、積層型電子部品1の全体の大きさ(積層方向の高さ)を過度に大きくすることなく、内
部導体の電気抵抗を小さくすることができるため好ましい。
【0042】
次に、図6に示すように、上記の第2の乾燥工程により乾燥させた第2のセラミックグリーンシート7の上面に新たに第1のセラミックグリーンシート3を積層する。このとき、貫通孔3aが第2のセラミックグリーンシート7の貫通パターン7aの一部とつながるように第1のセラミックグリーンシート3が積層される。言い換えれば、貫通孔3aの下面側の開口部にビア導体ペーストが露出するように、第1のセラミックグリーンシート3が第2のセラミックグリーンシート7の上面に積層される。
【0043】
次に、図7に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する。このとき、貫通孔3aの下面側の開口部に内部導体パターン9が露出していることから、内部導体パターン9とビア導体パターン5とが接合される。さらに、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、既に示した通りの方法を用いればよい。
【0044】
さらに、図7に示すように、上記の(2)、(3)、(5)〜(7)の工程を繰り返すことによって、ビア導体パターン5が貫通孔3aの内に配設された第1のセラミックグリーンシート3と、内部導体パターン9が貫通パターン7aの内に配設された第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を作製することができる。
【0045】
なお、図3〜7は本実施形態の積層構造を明確にするための分解斜視図である。そのため、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7の数はそれぞれ図3〜7に示す分解斜視図に示す数に限られるものではない。また、生積層体11の積層方向の両端部には、ビア導体パターン5および内部導体パターン9が露出しないように第1のセラミックグリーンシート3と同組成の第3のセラミックグリーンシート15を配設しても良い。
【0046】
なお、複数のセラミックグリーンシートを重ねることによって第2のセラミックグリーンシート7を形成している場合には、このようにして形成された第2のセラミックグリーンシート7を積層工程によって第1のセラミックグリーンシート3の上面に積層した後に、内部導体パターンを第2の配設工程によって配設すればよい。
【0047】
あるいは、積層工程および第2の配設工程として、下記のようにしてもよい。まず、第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に、第2のセラミックグリーンシート7を構成するセラミックグリーンシートの一つを積層するとともに、このセラミックグリーンシートに形成された貫通孔の内に内部導体パターン9の一部となる導電ペーストを配設する。そして、第2の乾燥工程として、この導電ペーストを乾燥させる。
【0048】
次に、上記のセラミックグリーンシートの上面に、第2のセラミックグリーンシート7を構成するセラミックグリーンシートの他の一つを積層するとともに、この他のセラミックグリーンシートに形成された貫通孔の内に内部導体パターン9の一部となる導電ペーストを配設する。そして、第2の乾燥工程として、この導電ペーストを乾燥させる。
【0049】
つまり、第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9が、それぞれ複数のセラミックグリーンシートおよび複数の導電ペーストを重ねることによって形成されており、複数の導電ペーストをそれぞれ配設する際に、複数の導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9を配設してもよい。
【0050】
このように複数の導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9を配設している場合には、内部導体パターン9をさらに効率良く乾燥させることができる。そのため、内部導体パターン9となる導体ペーストが変形することをさらに抑制できる。
【0051】
また、複数の導電ペーストを重ねることによって内部導体パターン9が形成されている場合には、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の導電ペーストの幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターンほど小さいことが好ましい。
【0052】
内部導体パターン9となる複数の導体ペーストを第1のセラミックグリーンシート3の上に配設する工程において、複数の導体ペースト間で製造工程上の不可避のずれが生じる場合がある。しかしながら、上記のように積層方向の上側に位置する導体ペーストほど積層方向に垂直な方向の幅が小さいことによって、上側に位置する導体ペーストを下側に位置する導体ペーストの上に安定して位置させることができる。従って、内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性を低減できるからである。
【0053】
(8)焼成工程
上述の通り、第1のセラミックグリーンシート3と第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を加圧・焼成することによって積層体11が作製される。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0054】
さらに、図1〜2に示すように、焼成された積層体11の側面に一対の外部電極13が形成される。一対の外部電極13の一方は、積層体11の最も下面側に位置するビア導体パターン5または内部導体パターン9と電気的に接続される。また、一対の外部電極13の他方は、積層体11の最も上面側に位置するビア導体パターン5または内部導体パターン9と電気的に接続される。外部電極13は、リード端子などを介して外部配線(不図示)と電気的に接続するための部材である。
【0055】
一対の外部電極13としては、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケルのような金属材料粉末を用いることができる。また、絶縁材料との密着性を加えるためのガラス質を添加してもよい。一対の外部電極13は、塗布焼付け、スパッタリングまたは蒸着などの方法によって形成される。
【0056】
なお、本実施形態における外部電極13は積層体11の側面に配設されているが、特にこれに限られるものではない。例えば、一対の外部電極13の一方が積層体11の上面に配設されるとともに、一対の外部電極13の他方が積層体11の下面に配設されていてもよい。また、一対の外部電極13の双方が積層体11の下面に配設されていてもよい。
【0057】
また、外部電極13の積層体11から露出する表面には、メッキを形成することが好ましい。外部に露出する外部電極13が劣化することを抑制できるからである。また、リード端子などを介して外部電極13と外部配線(不図示)とを電気的に接続する場合には、外部電極13とリード端子との接合性を高めることができる。メッキとしては、例えば、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、金メッキおよび錫めっきを用いることができる。具体的には、例えば、外部電極13の積層体11から露出する表面にニッケルメッキを形成した後、さらにニッケルメッキの表面に金メッキを形成すればよい。
【0058】
以上により、本実施形態の積層型電子部品1を作製することができる。
【0059】
次に、第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法は、下記の工程を備えている。すなわち、(1)上面および下面に開口する貫通孔3aを有する第1のセラミックグリーンシート3を準備する第1の準備工程と、
(2)貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する第1の配設工程と、
(3)貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程と、(4)第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面に、ビア導体パターン5と接合するように、ビア導体パターン5よりも厚みの大きい内部導体パターン9を配設する工程と、
(5)内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程と、
(6)上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aを有し、第1のセラミックグリーンシート3よりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシート7を準備する第2の準備工程と、
(7)第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9が貫通パターン7a内に位置するように、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程と、
(8)積層工程により積層された第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7を焼成する焼成工程と、を備えている。
【0061】
このように、第2の実施形態の積層型電子部品1の製造方法によれば、第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法と同様に、内部導体パターン9が貫通孔内に配設される第2のセラミックグリーンシート3を用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0062】
また、生積層体11を形成した後に乾燥させるのではなく、第1の配設工程の後に、第1の乾燥工程を都度行うとともに、第2のセラミックグリーンシート7を配設する工程の前に、第2の乾燥工程を都度行うことによってビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させている。そのため、ビア導体パターン5および内部導体パターン9に含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0063】
第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することを抑制できることから、第1のセラミックグリーンシート3を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第1のセラミックグリーンシート3が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第1のセラミックグリーンシート3と、第1のセラミックグリーンシート3が有する貫通孔3aの内に配設されるビア導体パターン5との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0064】
また、同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できることから、第2のセラミックグリーンシート7を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第2のセラミックグリーンシート7が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第2のセラミックグリーンシート7と、第2のセラミックグリーンシート7が有する貫通パターン7aの内に配設される内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0065】
従って、上記の部分的な変形によって生じる厚みのばらつきに起因して生積層体11の内部における第1および第2のセラミックグリーンシート7の間に隙間が生じることが抑制される。そのため、複数のセラミックグリーンシートを互いに接合するために、積層方向に大きな圧力を加えることが必ずしも必要ないので、ビア導体パターン5が変形する可能性を小さくできる。
【0066】
また、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターン5および内部導体パターン9の強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【0067】
結果として、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品1を提供することが可能となる。
【0068】
(1)第1の準備工程
まず、第1のセラミックグリーンシート3を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第1のセラミックグリーンシート3と同様にして作製すればよい。図8に示すように、上面および下面に開口する貫通孔3aについてもまた、第1の実施形態における貫通孔3aと同様にして形成すればよい。
【0069】
(2)第1の配設工程
次に、図8に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、第1の実施形態における導体ペーストと同様の材料を用いることができる。
【0070】
(3)第1の乾燥工程
次に、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5に乾燥した風をあてることによってビア導体パターン5を乾燥させる、貫通孔3aにビア導体パターン5が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによってビア導体パターン5を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させる方法が挙げられる。
【0071】
(4)内部導体パターン配設工程
次に、図9に示すように、第1の乾燥工程により乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3の上面にビア導体パターン5よりも厚みの大きい内部導体パターン9を配設する。このとき、ビア導体パターン5と接合するように内部導体パターン9が配設される。内部導体パターン9としては、第1の実施形態における導体ペーストと同様の材料を用いることができる。
【0072】
このとき、内部導体パターン9の厚みをビア導体パターン5の厚みよりも大きくすることによって、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0073】
内部導体パターン9は、ビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する一つの導体ペーストによって構成されていてもよいが、これに限られるものではない。例えば、複数の導体ペーストを重ねることによってビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する内部導体パターン9を形成してもよい。
【0074】
(5)第2の乾燥工程
次に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設された内部導体パターン9を乾燥させる。内部導体パターン9を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設された内部導体パターン9に乾燥した風をあてることによって内部導体パターン9を乾燥させる、上面に内部導体パターン9が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによって内部導体パターン9を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによって内部導体パターン9を乾燥させる方法が挙げられる。
【0075】
(6)第2の準備工程
次に、第2のセラミックグリーンシート7を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第2のセラミックグリーンシート7と同様にして作製すればよい。図10に示すように、上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aについてもまた、第1の実施形態における貫通パターン7aと同様にして形成すればよい。
【0076】
このとき、第2のセラミックグリーンシート7の厚みを第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きくすることによって、内部導体パターン9の厚みを大きくすることが容易となる。そのため、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0077】
(7)積層工程
次に、図10に示すように、第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9が貫通パターン7a内に位置するように、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する。
【0078】
第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層した後に、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させている。
【0079】
一方、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3の上面に内部導体パターン9を配設するとともに、この内部導体パターン9を乾燥させた後に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層している。
【0080】
このように、第2のセラミックグリーンシート7を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設するよりも先に内部導体パターン9を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設した場合であっても、内部導体パターン9を乾燥させていることから、第1の実施形態と同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0081】
また、内部導体パターン9を乾燥させた後に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層していることから、第1の実施形態よりもさらに、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0082】
次に、図11に示すように、上記の第2の乾燥工程により乾燥させた第2のセラミックグリーンシート7の上面に新たに第1のセラミックグリーンシート3を積層する。このとき、貫通孔3aが第2のセラミックグリーンシート7の貫通パターン7aの一部とつなが
るように第1のセラミックグリーンシート3が積層される。言い換えれば、貫通孔3aの下面側の開口部に内部導体パターン9が露出するように、第1のセラミックグリーンシート3が第2のセラミックグリーンシート7の上面に積層される。
【0083】
次に、図12に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する。このとき、貫通孔3aの下面側の開口部に内部導体パターン9が露出していることから、内部導体パターン9とビア導体パターン5とが接合される。さらに、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、既に示した通りの方法を用いればよい。
【0084】
さらに、図12に示すように、上記の(2)〜(5)、(7)の工程を繰り返すことによって、ビア導体パターン5が貫通孔3aの内に配設された第1のセラミックグリーンシート3と、内部導体パターン9が貫通パターン7aの内に位置する第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を作製することができる。
【0085】
なお、図8〜12は本実施形態の積層構造を明確にするための分解斜視図である。そのため、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7の数はそれぞれ図8〜12に示す分解斜視図に示す数に限られるものではない。また、生積層体11の積層方向の両端部には、ビア導体パターン5および内部導体パターン9が露出しないように第1のセラミックグリーンシート3と同組成の第3のセラミックグリーンシート15を配設しても良い。
【0086】
なお、複数の導体ペーストを重ねることによって内部導体パターン9を形成している場合には、複数の導電ペーストを配設した後に、これらの導電ペーストを第2の乾燥工程として乾燥してもよいがこれに限られるものではない。例えば、複数の導電ペーストをそれぞれ配設する際に、導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第2の乾燥工程としてもよい。
【0087】
このように複数の導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第1のセラミックグリーンシート3の上面に内部導体パターン9を配設している場合には、内部導体パターン9をさらに効率良く乾燥させることができる。そのため、内部導体パターン9となる導体ペーストが変形することをさらに抑制できる。
【0088】
また、複数の導電ペーストを重ねることによって内部導体パターン9が形成されている場合には、第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の導電ペーストの幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターンほど小さいことが好ましい。
【0089】
(8)焼成工程
上述の通り、第1のセラミックグリーンシート3と第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を加圧・焼成することによって積層体11が作製される。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0090】
さらに、第1の実施形態の積層型電子部品1と同様に、焼成された積層体11の側面に一対の外部電極13が形成される。一対の外部電極13としては、第1の実施形態における外部電極13と同様の材料を用いることができる。
【0091】
以上により、本実施形態の積層型電子部品1を作製することができる。
【0092】
次に、第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0093】
第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法は、下記の工程を備えている。すなわち、(1)上面および下面に開口する貫通孔3aを有する第1のセラミックグリーンシート3を複数準備する第1の準備工程と、
(2)貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設する第1の配設工程と、
(3)貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥工程と、(4)上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシート7を複数準備する第2の準備工程と、
(5)貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設する第2の配設工程と、
(6)貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥工程と、
(7)第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9を介して隣り合う第1の乾燥工程により乾燥させたビア導体パターン5が接続されるように、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7を交互に積層する積層工程と、
(8)積層工程により積層された第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7を焼成する焼成工程と、を備えている。
【0094】
このように、第3の実施形態の積層型電子部品の製造方法によれば、第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法と同様に、内部導体パターン9が内に配設される第2のセラミックグリーンシート7を用いていることから、セラミックグリーンシート間に隙間が生じにくくなる。そのため、セラミックグリーンシートを圧着させやすくなる。
【0095】
また、生積層体11を形成した後に乾燥させるのではなく、第1の配設工程の後に、第1の乾燥工程を都度行うとともに、第2の配設工程の後に、第2の乾燥工程を都度行うことによってビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させている。そのため、ビア導体パターン5および内部導体パターン9に含有される溶剤によって第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0096】
第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することを抑制できることから、第1のセラミックグリーンシート3を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第1のセラミックグリーンシート3が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第1のセラミックグリーンシート3と、第1のセラミックグリーンシート3が有する貫通孔3aの内に配設されるビア導体パターン5との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0097】
また、同様に、第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できることから、第2のセラミックグリーンシート7を取り扱う際、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する際、あるいは、積層体11を加圧・焼成する際における第2のセラミックグリーンシート7が部分的に変形することを抑制できる。そのため、第2のセラミックグリーンシート7と、第2のセラミックグリーンシート7が有する貫通パターン7aの内に配設される内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0098】
従って、上記の部分的な変形によって生じる厚みのばらつきに起因して生積層体11の内部における第1および第2のセラミックグリーンシート7の間に隙間が生じることが抑制される。そのため、複数のセラミックグリーンシートを互いに接合するために、積層方向に大きな圧力を加えることが必ずしも必要ないので、内部導体ペーストが変形する可能性を小さくできる。
【0099】
また、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させることによって、ビア導体パターン5および内部導体パターン9の強度を高めることができるので、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する積層工程において、内部導体となる導体ペーストが変形することを抑制できる。
【0100】
結果として、大電流および高インダクタンスに対応する積層型電子部品1を提供することが可能となる。
【0101】
(1)第1の準備工程
まず、第1のセラミックグリーンシート3を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第1のセラミックグリーンシート3と同様にして作製すればよい。図13に示すように、上面および下面に開口する貫通孔3aについてもまた、第1の実施形態における貫通孔3aと同様にして形成すればよい。
【0102】
(2)第1の配設工程
次に、図13に示すように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、第1の実施形態における導体ペーストと同様の材料を用いることができる。
【0103】
(3)第1の乾燥工程
次に、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させる。ビア導体パターン5を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、貫通孔3aに配設されたビア導体パターン5に乾燥した風をあてることによってビア導体パターン5を乾燥させる、貫通孔3aにビア導体パターン5が配設された第1のセラミックグリーンシート3を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによってビア導体パターン5を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させる方法が挙げられる。
【0104】
(4)第2の準備工程
次に、第2のセラミックグリーンシート7を複数作製する。具体的には、第1の実施形態における第2のセラミックグリーンシート7と同様にして作製すればよい。図14に示すように、上面および下面に開口するとともに内部導体パターン9の形状に対応した貫通パターン7aについてもまた、第1の実施形態における貫通パターン7aと同様にして形成すればよい。
【0105】
このとき、第2のセラミックグリーンシート7の厚みを第1のセラミックグリーンシート3の厚みよりも大きくすることによって、内部導体パターン9の厚みを大きくすることが容易となる。そのため、内部配線の抵抗値を小さくして電流値を大きくすることができ、インダクタンス値を大きくすることができる。
【0106】
(5)第2の配設工程
次に、図14に示すように、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9として導体ペーストを配設する。導体ペーストとしては、第1の実施形態における導体ペーストと同様
の材料を用いることができる。
【0107】
このとき、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9として導体ペーストを充填することによって内部導体パターン9を配設すればよい。あるいは、まず、内部導体パターン9を準備して、内部導体パターン9が貫通パターン7a内に位置するように第2のセラミックグリーンシート7を配設してもよい。
【0108】
内部導体パターン9は、ビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する一つの導体ペーストによって構成されていてもよいが、これに限られるものではない。例えば、第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、複数の導体ペーストを重ねることによってビア導体パターン5の厚みよりも大きい厚みを有する内部導体パターン9を形成してもよい。
【0109】
(6)第2の乾燥工程
次に、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させる。内部導体パターン9を乾燥させる方法としては、第1の実施形態における方法と同様に、例えば、貫通パターン7aに配設された内部導体パターン9に乾燥した風をあてることによって内部導体パターン9を乾燥させる、貫通パターン7aに内部導体パターン9が配設された第2のセラミックグリーンシート7を常温よりも高い温度に設定された乾燥室に所定時間入れておくことによって内部導体パターン9を乾燥させる、あるいは、マイクロ波加熱を行うことによってビア導体パターン5を乾燥させる方法が挙げられる。
【0110】
(7)積層工程
次に、図15に示すように、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層する。さらに、図16に示すように、第2のセラミックグリーンシート7の上面にさらに第1のセラミックグリーンシート3を積層する。このようにして、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7が交互に積層される。このとき、第2の乾燥工程により乾燥させた内部導体パターン9を介して隣り合う第1の乾燥工程により乾燥させたビア導体パターン5が接続されるように、上記のセラミックグリーンシートが積層される。
【0111】
第1の実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層した後に、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させている。
【0112】
一方、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させた後に、第1のセラミックグリーンシート3の上面に第2のセラミックグリーンシート7を積層している。
【0113】
このように、貫通孔3aの内にビア導体パターン5を配設するとともに、貫通孔3aの内に配設されたビア導体パターン5を乾燥させた第1のセラミックグリーンシート3と、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9を配設するとともに、貫通パターン7aの内に配設された内部導体パターン9を乾燥させた第2のセラミックグリーンシート7と、をそれぞれ準備した後に、第2のセラミックグリーンシート7を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設した場合であっても、ビア導体パターン5および内部導体パターン9をそれぞれ乾燥させていることから、第1の実施形態と同様に、第1のセラミックグリーンシート3および第2のセラミックグリーンシート7が膨潤することを抑制できる。
【0114】
また、第1の実施形態および第2の実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3または第2のセラミックグリーンシート7を積層する工程と、第1の乾燥工程または第2の乾燥工程と、が交互になされているため、積層数が多くなる程に積層型電子部品1を作製する時間が多く必要とされる。
【0115】
一方、本実施形態の積層型電子部品の製造方法においては、貫通孔3aの内にビア導体パターン5が配設された複数の第1のセラミックグリーンシート3と、貫通パターン7aの内に内部導体パターン9が配設された複数の第2のセラミックグリーンシート7とに対して、同時に第1の乾燥工程および第2の乾燥工程を行うことが可能となるため、積層数が多くなる場合であっても積層型電子部品1を作製する時間を短縮することができる。
【0116】
なお、図13〜16は本実施形態の積層構造を明確にするための分解斜視図である。そのため、複数の第1のセラミックグリーンシート3および複数の第2のセラミックグリーンシート7の数はそれぞれ図13〜16に示す分解斜視図に示す数に限られるものではない。また、生積層体11の積層方向の両端部には、ビア導体パターン5および内部導体パターン9が露出しないように第1のセラミックグリーンシート3と同組成の第3のセラミックグリーンシート15を配設しても良い。
【0117】
なお、複数の導体ペーストを重ねることによって内部導体パターン9を形成している場合には、複数の導電ペーストを配設した後に、これらの導電ペーストを第2の乾燥工程として乾燥してもよいがこれに限られるものではない。例えば、第2の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、複数の導電ペーストをそれぞれ配設する際に、導電ペーストのそれぞれを乾燥させることによって第2の乾燥工程としてもよい。
【0118】
また、複数の導電ペーストを重ねることによって内部導体パターン9が形成されている場合には、第1の実施形態の積層型電子部品の製造方法と同様に、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の導電ペーストの幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターンほど小さいことが好ましい。
【0119】
(8)焼成工程
上述の通り、第1のセラミックグリーンシート3と第2のセラミックグリーンシート7とが交互に積層された生積層体11を加圧・焼成することによって積層体11が作製される。セラミックグリーンシートおよび導体ペーストとして用いる材料によって最適な焼成温度は異なるが、本実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては約850℃〜1150℃の温度で焼成すればよい。
【0120】
さらに、第1の実施形態の積層型電子部品1と同様に、焼成された積層体11の側面に一対の外部電極13が形成される。一対の外部電極13としては、第1の実施形態における外部電極13と同様の材料を用いることができる。
【0121】
以上により、本実施形態の積層型電子部品1を作製することができる。
【0122】
上記の各実施形態の積層型電子部品の製造方法においては、それぞれ第1のセラミックグリーンシート3およびビア導体パターン5の厚みよりも第2のセラミックグリーンシート7および内部導体パターン9の厚みが大きい。そのため、ビア導体パターン5に含有される有機溶剤並びにバインダの総量よりも内部導体パターン9に含有される有機溶剤並びにバインダの総量が多いことから、第1の乾燥工程においてビア導体パターン5を乾燥させるよりも第2の乾燥工程において内部導体パターン9をより乾燥させることが好ましい。
【0123】
具体的には、第1の乾燥工程におけるビア導体パターン5を乾燥させる時間よりも、第2の乾燥工程における内部導体パターン9を乾燥させる時間が長いことが好ましい。これによって内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができるので、内部導体パターン9が変形する可能性をさらに小さくできる。
【0124】
また、上記のようにビア導体パターン5および内部導体パターン9を乾燥させる時間を調整することによって内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができるが、第1の乾燥工程におけるビア導体パターン5を乾燥させる温度よりも、第2の乾燥工程における内部導体パターン9を乾燥させる温度を高くすることによっても、内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができる。たとえば、ビア導体パターン5を乾燥させる第1の乾燥室および内部導体パターン9を乾燥させる第2の乾燥室を準備して、第1の乾燥室の内部温度よりも第2の乾燥室の内部温度を高く設定しておくことによって、上記のように内部導体パターン9を効率良く乾燥させることができる。
【0125】
また、上記の各実施形態の積層型電子部品の製造方法において、図17に示すように、複数の内部導体パターン9のうち、ビア導体パターン5を介して積層方向に隣り合う少なくとも二つの内部導体パターン9は、積層方向に平行な断面において、第2のセラミックグリーンシート7の上面側に位置する内部導体パターン9aの積層方向に垂直な方向の幅L1が、第2のセラミックグリーンシート7の下面側に位置する内部導体パターン9bの積層方向に垂直な方向の幅L2よりも小さいことが好ましい。
【0126】
内部導体パターン9を第1のセラミックグリーンシート3の上面に配設する工程において、製造工程上の不可避のずれが生じる場合がある。また、上記の各実施形態の積層型電子部品1の製造方法においては、第1のセラミックグリーンシート3が膨潤することが抑制されることから、第2のセラミックグリーンシート7と、内部導体パターン9との間での厚みのばらつきが小さくなるが、製造工程上の不可避の厚みのばらつきが生じる可能性がある。
【0127】
そのため、積層方向に隣り合う少なくとも二つの内部導体パターン9のうち、上面側に位置する内部導体パターン9aにおける、下面側に位置する第1のセラミックグリーンシート3の上に位置する部分と、下面側に位置する内部導体パターン9bの上に位置する部分との間で段差が生じる可能性がある。
【0128】
しかしながら、上記のように第1のセラミックグリーンシート3の上面側に位置する内部導体パターン9aの積層方向に垂直な方向の幅L1が、第1のセラミックグリーンシート3の下面側に位置する内部導体パターン9bの積層方向に垂直な方向の幅L2よりも小さいことによって、上面側に位置する内部導体パターン9aを、下面側に位置する内部導体パターン9bの上に安定して位置させることができる。従って、内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性を低減することができる。
【0129】
特に、図17に示すように、複数の内部導体パターン9は、積層方向に平行な断面において、積層方向に垂直な方向の幅が、積層方向の上側に位置する内部導体パターン9ほど小さいことがさらに好ましい。これによって、それぞれの内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性を低減することができるからである。
【0130】
また、上記のように積層方向の上側に位置する内部導体パターン9ほど積層方向に垂直な方向の幅が小さい場合には、積層方向に平行な断面において、積層方向に平行な方向の厚みが、積層方向の上側に位置する内部導体パターン9ほど大きいことがさらに好ましい。
【0131】
第1のセラミックグリーンシート3の上面側に位置する内部導体パターン9aと第1のセラミックグリーンシート3の下面側に位置する内部導体パターン9bとの間での断面積のばらつきを小さくすることができるからである。これらの内部導体パターン9の断面積のばらつきが小さいことによって、内部導体パターン9の抵抗率のばらつきを小さくすることができるので、局所的に大きな発熱が生じる可能性を小さくすることができる。
【0132】
また、図18に示すように、積層方向に隣り合う二つの内部導体パターン9を平面透視した場合に、上面側に位置する内部導体パターン9aの少なくとも一部が、第1のセラミックグリーンシート3の下面側に位置する内部導体パターン9bの一部と重なり合っていることがさらに好ましい。これによって、内部導体パターン9に部分的な厚みのばらつきが生じる可能性をさらに低減することができるからである。
【0133】
なお、図18において、積層方向に隣り合う二つの内部導体パターン9のうち、下面側に位置する内部導体パターン9bの外周を一点鎖線にて便宜的に示している。また、上面側に位置する内部導体パターン9aを斜線で示すとともにその外周を鎖線にて便宜的に示している。
【0134】
なお、単体の積層型電子部品1の製造方法について示したが、積層方向に隣り合う内部導体パターン9がビア導体パターン5を介して接続された、積層方向に向かって巻回されたコイル状の内部配線が複数併設された生積層体11の集合体を形成してもよい。このような生積層体11の集合体を作製した後、それぞれの生積層体11に分割するとともにそれぞれの生積層体11を焼成することによって複数の積層型電子部品1を同時に作製することができる。また、上記する生積層体11の集合体を同時焼成した後に、それぞれの積層型電子部品1に分割してもよい。
【0135】
上述の通り、各実施形態の積層型電子部品の製造方法について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0136】
1・・・積層型電子部品
3・・・第1のセラミックグリーンシート
3a・・・貫通孔
5・・・ビア導体パターン
7・・・第2のセラミックグリーンシート
7a・・・貫通パターン
9・・・内部導体パターン
11・・・生積層体(積層体)
13・・・外部電極
15・・・第3のセラミックグリーンシート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを準備する第1の準備工程と、
前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、
前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、
上面および下面に開口する貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを準備する第2の準備工程と、
前記第1の乾燥工程により乾燥させた前記第1のセラミックグリーンシートの上面に前記第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程と、
前記ビア導体パターンと接合するように前記貫通パターンの内に前記貫通パターンの形状に対応した内部導体パターンを配設する第2の配設工程と、
前記貫通パターンの内に配設された前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、
前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えたことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを準備する第1の準備工程と、
前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、
前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程により乾燥させた前記第1のセラミックグリーンシートの上面に、前記ビア導体パターンと接合するように、前記ビア導体パターンよりも厚みの大きい内部導体パターンを配設する工程と、
前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、
上面および下面に開口するとともに前記内部導体パターンの形状に対応した貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを準備する第2の準備工程と、
前記第2の乾燥工程により乾燥させた前記内部導体パターンが前記貫通パターン内に位置するように、前記第1のセラミックグリーンシートの上面に前記第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程と、
前記積層工程により積層された前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えたことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを複数準備する第1の準備工程と、
前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、
前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、
上面および下面に開口するとともに前記内部導体パターンの形状に対応した貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを複数準備する第2の準備工程と、
前記貫通パターンの内に内部導体パターンを配設する第2の配設工程と、
前記貫通パターンの内に配設された前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、
前記第2の乾燥工程により乾燥させた前記内部導体パターンを介して、前記第1の乾燥工程により乾燥させた隣り合う前記ビア導体パターンが接続されるように、複数の前記第1のセラミックグリーンシートおよび複数の前記第2のセラミックグリーンシートを交互に積層する積層工程と、
前記積層工程により積層された前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2の
セラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えたことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1の乾燥工程において前記ビア導体パターンを乾燥させる時間よりも、前記第2の乾燥工程において前記内部導体パターンを乾燥させる時間を長くすることを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の乾燥工程において前記ビア導体パターンを乾燥させる温度よりも、前記第2の乾燥工程において前記内部導体パターンを乾燥させる温度を高くすることを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
複数の前記内部導体パターンのうち、前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートの積層方向に前記ビア導体パターンを介して隣り合う少なくとも2つの前記内部導体パターンについて、前記積層方向に平行な断面において、前記第1のセラミックグリーンシートの上面側に位置する前記内部導体パターンの前記積層方向に垂直な方向の幅を、前記第1のセラミックグリーンシートの下面側に位置する前記内部導体パターンの前記積層方向に垂直な方向の幅よりも小さくすることを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
複数の前記内部導体パターンについて、前記積層方向に平行な断面において、前記積層方向に垂直な方向の幅を、前記積層方向の上側に位置する前記内部導体パターンほど小さくすることを特徴とする請求項6に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記2つの内部導体パターンを平面透視した場合に、前記第1のセラミックグリーンシートの上面側に位置する前記内部導体パターンの少なくとも一部を、前記第1のセラミックグリーンシートの下面側に位置する前記内部導体パターンの一部と重なり合うように配置することを特徴とする請求項6に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項1】
上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを準備する第1の準備工程と、
前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、
前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、
上面および下面に開口する貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを準備する第2の準備工程と、
前記第1の乾燥工程により乾燥させた前記第1のセラミックグリーンシートの上面に前記第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程と、
前記ビア導体パターンと接合するように前記貫通パターンの内に前記貫通パターンの形状に対応した内部導体パターンを配設する第2の配設工程と、
前記貫通パターンの内に配設された前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、
前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えたことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを準備する第1の準備工程と、
前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、
前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程により乾燥させた前記第1のセラミックグリーンシートの上面に、前記ビア導体パターンと接合するように、前記ビア導体パターンよりも厚みの大きい内部導体パターンを配設する工程と、
前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、
上面および下面に開口するとともに前記内部導体パターンの形状に対応した貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを準備する第2の準備工程と、
前記第2の乾燥工程により乾燥させた前記内部導体パターンが前記貫通パターン内に位置するように、前記第1のセラミックグリーンシートの上面に前記第2のセラミックグリーンシートを積層する積層工程と、
前記積層工程により積層された前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えたことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
上面および下面に開口する貫通孔を有する第1のセラミックグリーンシートを複数準備する第1の準備工程と、
前記貫通孔の内にビア導体パターンを配設する第1の配設工程と、
前記貫通孔の内に配設された前記ビア導体パターンを乾燥させる第1の乾燥工程と、
上面および下面に開口するとともに前記内部導体パターンの形状に対応した貫通パターンを有し、前記第1のセラミックグリーンシートよりも厚みの大きい第2のセラミックグリーンシートを複数準備する第2の準備工程と、
前記貫通パターンの内に内部導体パターンを配設する第2の配設工程と、
前記貫通パターンの内に配設された前記内部導体パターンを乾燥させる第2の乾燥工程と、
前記第2の乾燥工程により乾燥させた前記内部導体パターンを介して、前記第1の乾燥工程により乾燥させた隣り合う前記ビア導体パターンが接続されるように、複数の前記第1のセラミックグリーンシートおよび複数の前記第2のセラミックグリーンシートを交互に積層する積層工程と、
前記積層工程により積層された前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2の
セラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを備えたことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1の乾燥工程において前記ビア導体パターンを乾燥させる時間よりも、前記第2の乾燥工程において前記内部導体パターンを乾燥させる時間を長くすることを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の乾燥工程において前記ビア導体パターンを乾燥させる温度よりも、前記第2の乾燥工程において前記内部導体パターンを乾燥させる温度を高くすることを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
複数の前記内部導体パターンのうち、前記第1のセラミックグリーンシートおよび前記第2のセラミックグリーンシートの積層方向に前記ビア導体パターンを介して隣り合う少なくとも2つの前記内部導体パターンについて、前記積層方向に平行な断面において、前記第1のセラミックグリーンシートの上面側に位置する前記内部導体パターンの前記積層方向に垂直な方向の幅を、前記第1のセラミックグリーンシートの下面側に位置する前記内部導体パターンの前記積層方向に垂直な方向の幅よりも小さくすることを特徴とする請求項3に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
複数の前記内部導体パターンについて、前記積層方向に平行な断面において、前記積層方向に垂直な方向の幅を、前記積層方向の上側に位置する前記内部導体パターンほど小さくすることを特徴とする請求項6に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記2つの内部導体パターンを平面透視した場合に、前記第1のセラミックグリーンシートの上面側に位置する前記内部導体パターンの少なくとも一部を、前記第1のセラミックグリーンシートの下面側に位置する前記内部導体パターンの一部と重なり合うように配置することを特徴とする請求項6に記載の積層型電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−99600(P2012−99600A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245185(P2010−245185)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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