説明

空気入りタイヤ修理用ゴム組成物および修理方法

【課題】簡便かつ迅速に空気入りタイヤの内面の修理すべき箇所を修理することのできるゴム組成物および修理方法の提供。
【解決手段】空気入りタイヤのタイヤ内面の修理すべき箇所に適用される空気入りタイヤ修理用ゴム組成物であって、ゴム成分、式(1)


(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含むことを特徴とする空気入りタイヤ修理用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのタイヤ内面の修理すべき箇所を修理するための修理材およびそれを用いて空気入りタイヤを修理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤが路上に放置された釘、ボルトなどによりタイヤ外面からタイヤ内面に至る貫通傷などの損傷を受けた場合に、ゴムを基材とするゴム組成物から成る修理材をタイヤ内面の損傷部およびその周辺の修理すべき箇所に貼り付けることが行われている。しかし、インナーライナー材が熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物から成る場合には、かかるインナーライナー材は従来の一般的なゴム組成物と接着しないため、従来のゴム組成物を修理材として使用する場合には、接着性向上のために、通常、インナーライナー材の損傷部周辺の表面を研磨してインナーライナー材の下側にあるゴム層(タイゴムなど)を露出させ、そのゴム層の露出面に修理材を貼り付ける。しかし、厚さが僅かに数十マイクロメートル乃至数百マイクロメートルである熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物から成るインナーライナー材のみを研磨により除去することは困難であり、研磨によりインナーライナー材の下側にあるゴム層やカーカス層を損傷する恐れがある。特許文献1には、タイヤ内面部における修理箇所に耐空気透過性の高い樹脂からなる薄膜修理材を接着剤により貼り付けることにより修理箇所を修理すること、およびタイヤ内面部における修理箇所に耐空気透過性の高い熱可塑性樹脂からなる薄膜修理材を溶着により貼り付けることにより修理箇所を修理することが記載されているが、特許文献1に記載の方法は、薄膜修理材が耐空気透過性の高いゴム成分(例えばブチルゴム)を基材とするゴム場合には、修理材の他に接着剤を必要とし、接着剤を塗布する工程または接着剤のフィルムを貼り付ける工程などを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−272809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、空気入りタイヤのタイヤ内面の損傷部をより簡便かつ迅速に修理することを可能にし、しかも、ゴム組成物に対しても、熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマー組成物に対しても優れた接着性を有する修理材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次のとおりである。
[1]空気入りタイヤのタイヤ内面の修理すべき箇所に適用される空気入りタイヤ修理用ゴム組成物であって、ゴム成分、式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜80質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が1〜4であることを特徴とする空気入りタイヤ修理用ゴム組成物。
【0008】
[2]ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物が加硫促進剤を含まないことを特徴とする[1]に記載のゴム組成物。
【0009】
[3]ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過20質量部以下であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過80質量部以下であることを特徴とする[1]に記載のゴム組成物。
【0010】
[4]ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜12質量部であり、硫黄の配合量がゴム成分100質量部に対して4質量部未満であり、加硫促進剤の配合量がゴム成分100質量部に対して0質量部超過2.1質量部未満であることを特徴とする[1]に記載のゴム組成物。
【0011】
[5]加硫促進剤がスルフェンアミド構造を有する化合物であり、スルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が0質量部超過1.5質量部未満であることを特徴とする[4]に記載のゴム組成物。
【0012】
[6]ゴム組成物が加硫促進剤としてスルフェンアミド構造を有する化合物およびチウラム構造を有する化合物を含み、チウラム構造を有する化合物の配合量が0質量部超過0.6質量部未満であることを特徴とする[5]に記載のゴム組成物。
【0013】
[7]式(1)中、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つが炭素原子数が1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0014】
[8]前記縮合物が、式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、nは整数であり、好ましくは1〜5の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0017】
[9]式(1)中、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする[1]に記載のゴム組成物。
【0018】
前記縮合物が、式(3)
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、mは整数であり、好ましくは1〜3の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする[9]に記載のゴム組成物。
【0021】
[11]メチレンドナーが、変性エーテル化メチロールメラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、およびヘキサメトキシメチルメラミンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0022】
[12]ジエン系ゴムがスチレンブタジエンゴムであることを特徴とする[1]〜[11]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0023】
[13]前記空気入りタイヤ修理用ゴム組成物が、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナーを有する空気入りタイヤを修理するためのゴム組成物である、[1]〜[12]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0024】
[14]熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする[13]に記載のゴム組成物。
【0025】
[15]熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分がポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、エラストマー成分が臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする[13]に記載のゴム組成物。
【0026】
[16]熱可塑性樹脂が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂の総量の5〜100質量%であることを特徴とする[13]に記載のゴム組成物。
【0027】
[17]熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂成分の総量の5〜100質量%であることを特徴とする[13]に記載のゴム組成物。
【0028】
[18][1]〜[17]のいずれかに記載のゴム組成物からなるゴム層と熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムとの積層体である空気入りタイヤ用修理材。
【0029】
[19][18]に記載の積層体を、ゴム組成物からなるゴム層がタイヤ内面の修理すべき箇所と当接するようにタイヤ内面の修理すべき箇所に設置し、当該積層体を加熱することによって、タイヤ内面の修理すべき箇所に当該積層体を貼り付けることを特徴とする、空気入りタイヤの修理方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明のゴム組成物は、フェノール構造を有する縮合物とホルムアルデヒドを発生する塩基成分をゴム組成物に特定配合率にて配合し、かつ硫黄および加硫促進剤の配合調整をしたことにより、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物に対する接着強度が大きく、かつゴムとの接着性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含む。
【0032】
【化4】

【0033】
式(1)中、R1、R2、R3、R4およびR5は、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。
【0034】
ゴム成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴムおよびその水添物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムとしては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。なかでも、隣接ゴム材料との共架橋性の観点から、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴムが好ましく、より好ましくは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、臭素化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムである。ゴム成分は、2種以上のゴム成分の混合物であってもよい。
【0035】
式(1)で表される化合物の1つの好ましい例は、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つが炭素原子数が1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例の1つはクレゾールである。
式(1)で表される化合物のもう1つの好ましい例は、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例のもう1つはレゾルシンである。
【0036】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体等が挙げられる。また、これらの縮合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、変性されていてもよい。たとえば、エポキシ化合物で変性された変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体も本発明に使用することができる。これらの縮合物は、市販されており、本発明に市販品を使用することができる。
【0037】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、好ましくは、式(2)または式(3)で表される化合物である。
【0038】
【化5】

【0039】
式中、nは整数であり、好ましくは1〜5の整数である。
【0040】
【化6】

【0041】
式中、mは整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0042】
メチレンドナーとは、加熱等によりホルムアルデヒドを発生する塩基化合物をいい、たとえば、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、変性エーテル化メチロールメラミン、エステル化メチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサキス(エトキシメチル)メラミン、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N''−トリメチル−N,N’,N''−トリメチロールメラミン、N,N’,N''−トリメチロールメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’−ビス(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N''−トリブチル−N,N’,N''−トリメチロールメラミン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒドの放出温度の観点から、変性エーテル化メチロールメラミンが好ましい。
【0043】
加硫剤としては、無機系加硫剤と有機系加硫剤があり、無機系加硫剤としては、硫黄、一塩化硫黄、セレン、テルル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛等が挙げられ、有機系加硫剤としては、含硫黄有機化合物、ジチオカルバミン酸塩、オキシム類、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ジニトロソ化合物、変性フェノール樹脂、ポリアミン、有機過酸化物等が挙げられる。なかでも、硫黄、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼンのような有機過酸化物、臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体のような変性フェノール樹脂、酸化亜鉛、含硫黄有機化合物が好ましい。
【0044】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(以下、単に「縮合物」ともいう。)の配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。縮合物の配合量が少なすぎると、良好な接着を得るのに必要な熱量、時間が増大するため加硫効率が悪化し、逆に多すぎると、得られるゴム組成物の加硫伸びが損なわれ、破断しやすくなる。
【0045】
メチレンドナーの配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.5〜80質量部であり、好ましくは1〜40質量部である。メチレンドナーの配合量が少なすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に多すぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0046】
メチレンドナーの配合量/縮合物の配合量の比は、1〜4であり、好ましくは1〜3である。この比が小さすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に大きすぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0047】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄である場合は、ゴム組成物が加硫促進剤を含まないことが好ましい。
【0048】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なかでも、なかでも、隣接ゴム材料との共架橋性の観点から、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、それらの混合物が好ましい。
【0049】
ゴム成分中のジエン系ゴムの割合は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、ゴム成分のすべてがジエン系ゴムであることがさらに好ましい。
【0050】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、かつゴム組成物がさらに加硫促進剤を含む場合は、縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過20質量部以下であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過80質量部以下であることが好ましい。縮合物の配合量が少なすぎると、縮合体が加硫促進剤と反応して界面での樹脂との反応が進行しなくなる。逆に多すぎると、得られるゴム組成物の加硫伸びが損なわれ、破断しやすくなる。メチレンドナーの配合量が少なすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に多すぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0051】
加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、アルデヒド・アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系が挙げられ、好ましくはチアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系である。
【0052】
チアゾール系加硫促進剤は、チアゾール構造を有する化合物であり、たとえば、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアジルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、(ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられるが、なかでもジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0053】
スルフェンアミド系加硫促進剤は、スルフェンアミド構造を有する化合物であり、たとえば、N−シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられるが、なかでもN−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが好ましい。
【0054】
チウラム系加硫促進剤は、チウラム構造を有する化合物であり、たとえば、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等が挙げられるが、なかでもテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
【0055】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜12質量部である場合は、硫黄の配合量がゴム成分100質量部に対して4質量部未満であり、加硫促進剤の配合量がゴム成分100質量部に対して0質量部超過2.1質量部未満であることが好ましい。硫黄の配合量が多すぎると、ゴム組成物系内での縮合物の反応と競争的に進行するために接着を低下させる。加硫促進剤が配合されないと、加硫反応が進行しづらく、加硫効率が悪化し、逆に加硫促進剤の配合量が多すぎると、縮合体が加硫促進剤と反応して界面での樹脂との反応が進行しなくなる。
この場合において、加硫促進剤がスルフェンアミド構造を有する化合物であるときは、スルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が0質量部超過1.5質量部未満であることが好ましい。スルフェンアミド構造を有する化合物が配合されないと、加硫反応が進行しづらく、加硫効率が悪化し、逆にスルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が多すぎると、促進剤の反応が樹脂の反応と競合するために接着反応を阻害する。
この場合において、ゴム組成物が加硫促進剤としてスルフェンアミド構造を有する化合物およびチウラム構造を有する化合物を含むときは、チウラム構造を有する化合物の配合量が0質量部超過0.6質量部未満であることが好ましい。チウラム構造を有する化合物が配合されないと、加硫反応が進行しづらく、加硫効率が悪化し、逆にチウラム構造を有する化合物の配合量が多すぎると、加硫の際にチウラム構造を有する化合物から硫黄が放出されるために接着反応が阻害される。
【0056】
本発明のゴム組成物を使用して空気入りタイヤのタイヤ内面の損傷部を修理する場合に、本発明のゴム組成物を層状に成形した後、損傷部およびその周辺の修理すべき箇所に本発明のゴム組成物からなるゴム層を当接させ、当該ゴム層を修理すべき箇所に当接させたまま加熱することにより本発明のゴム組成物からなるゴム層を修理すべき箇所に貼り付けることができる。本発明のゴム組成物をゴム層の形態で修理すべき箇所に貼り付ける場合には、上記のように本発明のゴム組成物からなるゴム層を修理材として修理すべき箇所に貼り付ける他に、本発明のゴム組成物からなるゴム層を下記の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムと積層させて積層体とした後、この積層体を修理材として、本発明のゴム組成物からなるゴム層が修理すべき箇所に当接するように修理材を設置し、修理材を加熱することによって、修理すべき箇所に修理材を貼り付けることができる。加熱温度は、好ましくは150〜200℃であり、加熱時間は好ましくは1〜40分間である。本発明のゴム組成物からなるゴム層を熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムと積層させてなる修理材を使用する場合には、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムが有する高い空気遮断性のために、上記修理材により修理された箇所は高い内圧保持機能を示すことができる。
【0057】
本発明のゴム組成物により修理することのできる空気入りタイヤは、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム(例えば塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム)などのゴム成分を基材とするインナーライナー材、または熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナー材がタイヤ内面に設置されたものである。
【0058】
本発明のゴム組成物からなるゴム層と積層して修理材を構成することのできる熱可塑性樹脂のフィルムとしては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等からなるものを挙げることができる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66(N6/66)、ナイロン6/66/12(N6/66/12)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン9T、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル等が挙げられる。ポリニトリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。ポリメタクリレート系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられる。ポリビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。イミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド(PI)等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
なかでも、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、ナイロン6Tが、耐疲労性と空気遮断性の両立という点で、好ましい。
【0059】
熱可塑性樹脂には、加工性、分散性、耐熱性、酸化防止性などの改善のために、充填剤、補強剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤などの、樹脂組成物に一般的に配合される配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合してもよい。可塑剤は、空気遮断性および耐熱性の観点から、配合しない方がよいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、配合してもよい。
【0060】
本発明のゴム組成物からなるゴム層と積層して修理材を構成することができる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムは、熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物から成るものであり、当該組成物の熱可塑性樹脂成分がマトリックス相を構成し、エラストマー成分が分散相を構成する。
【0061】
熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂成分としては、前記の熱可塑性樹脂と同一のものが使用できる。
【0062】
熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマー成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴムおよびその水添物としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBRおよび低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムとしては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムとしては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。
なかでも、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体が、空気遮断性の観点から、好ましい。
【0063】
エラストマー成分には、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などの、ゴム組成物に一般的に配合される配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合してもよい。
【0064】
熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマー成分と熱可塑性樹脂成分との組み合わせは、限定するものではないが、ハロゲン化ブチルゴムとポリアミド系樹脂、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合ゴムとポリアミド系樹脂、ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、イソプレンゴムとポリスチレン系樹脂、水素添加ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴムとポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴムとポリオレフィン系樹脂、非結晶ブタジエンゴムとシンジオタクチックポリ(1,2−ポリブタジエン)、非結晶イソプレンゴムとトランスポリ(1,4−イソプレン)、フッ素ゴムとフッ素樹脂等が挙げられるが、空気遮断性に優れたブチルゴムとポリアミド系樹脂の組み合わせが好ましく、なかでも、変性ブチルゴムである臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合ゴムとナイロン6/66もしくはナイロン6またはナイロン6/66とナイロン6のブレンド樹脂との組み合わせが、耐疲労性と空気遮断性の両立という点で特に好ましい。
【0065】
熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分とを、たとえば2軸混練押出機等で、溶融混練し、マトリックス相を形成する熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分を分散相として分散させることにより、製造することができる。熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分の質量比率は、限定するものではないが、好ましくは10/90〜90/10であり、より好ましくは15/85〜90/10である。
【0066】
熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を含むことができる。
【0067】
本発明のゴム組成物からなるゴム層を熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムと積層して修理材を構成する場合に、修理すべき箇所の大きさおよび形状に応じて、修理材の大きさおよび形状(例えば楕円形、長円形、円形など)を適宜選択することができる。かかる積層体からなる修理材において、本発明のゴム組成物からなるゴム層および熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムの厚さはそれぞれ、当該修理材を使用して修理された箇所に十分な強度および空気遮断性を与えるものであればよいが、修理材が厚すぎると重量が増大してしまう。修理材における本発明のゴム組成物からなるゴム層の厚さは通常0.1〜2mmであり、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムの厚さは通常50〜300μmである。
【0068】
本発明のゴム組成物を使用して修理される空気入りタイヤのインナーライナー材が熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含んでなる場合に、当該インナーライナー材の熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物は、本発明のゴム組成物からなるゴム層と積層して修理材を構成することができるものとして先に記載した熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物と同じまたは異なる組成を有することができる。修理材を構成する熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物がインナーライナー材と同じ組成を有する場合には、修理材の機械的変形特性をインナーライナー材と実質的に同じにすることができるので好ましい。
【0069】
エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むフィルムと、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物を含むゴム組成物との組み合わせは、フィルムとゴム組成物の層との界面の接着性がきわめて良好であるので、特に好ましい。
ここで、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むフィルムとは、熱可塑性樹脂のフィルムであって熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むもの、または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムであって熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むものをいう。エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂のフィルムの場合、熱可塑性樹脂の総量の5〜100質量%、より好ましくは20〜70質量%であり、熱可塑性エラストマー組成物のフィルムの場合、熱可塑性樹脂成分の総量の5〜100質量%、より好ましくは20〜70質量%である。
【0070】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」ともいう。)は、エチレン単位(−CHCH−)とビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)とからなる共重合体であるが、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位の含有量すなわちエチレン含有量が好ましくは5〜55モル%、より好ましくは20〜50モル%のものを使用する。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が少なすぎるとポリアミド樹脂との相溶性に劣る。逆にエチレン含有量が多すぎると熱可塑性樹脂に含まれる水酸基の数が減るために接着力向上が期待できない。エチレン−ビニルアルコール共重合体はエチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物であるが、そのケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が小さすぎると空気バリア性が低下し、また熱安定性も低下する。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、市販されており、たとえば、日本合成化学工業株式会社からソアノール(登録商標)の商品名で、株式会社クラレからエバール(登録商標)の商品名で入手することができる。エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)H4815B(エチレン含有量48モル%)、A4412B(エチレン含有量42モル%)、DC3212B(エチレン含有量32モル%)、V2504RB(エチレン含有量25モル%)、株式会社クラレ製「エバール」(登録商標)L171B(エチレン含有量27モル%)、H171B(エチレン含有量38モル%)、E171B(エチレン含有量44モル%)などがある。
【0071】
本発明のゴム組成物からなるゴム層を熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムと積層してなる上記の修理材は、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムにゴム組成物からなるゴム層を積層することによって製造することができる。限定するものではないが、より具体的には、次のようにして製造することができる。まず、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物を、インフレーション成形装置、Tダイ押出機等の成形装置でフィルム状に成形して、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを作製する。次に、ゴム組成物を、Tダイ押出機等で、前記フィルムの上に押出すと同時に積層して、修理材を製造する。
【実施例】
【0072】
(1)熱可塑性エラストマー組成物のフィルムの作製
表1に示す配合比率で原料を配合して熱可塑性エラストマー組成物を調製し、その熱可塑性エラストマー組成物をインフレーション成形装置で成形し、0.2mmのフィルムを作製した。作製したフィルムを以下フィルムAという。
【0073】
【表1】

【0074】
表2に示す配合比率で原料を配合して熱可塑性エラストマー組成物を調製し、その熱可塑性エラストマー組成物をインフレーション成形装置で成形し、0.2mmのフィルムを作製した。作製したフィルムを以下フィルムBという。
【0075】
【表2】

【0076】
(2)ゴム組成物の調製
下記の原料を表3、表4および表5に示す配合比率で配合し、19種類のゴム組成物を調製した。
スチレンブタジエンゴム: 日本ゼオン株式会社製「Nipol 1502」
天然ゴム: SIR−20
カーボンブラック: 東海カーボン株式会社製「シーストV」
ステアリン酸: 工業用ステアリン酸
アロマオイル: 昭和シェル石油株式会社製「デソレックス3号」
酸化亜鉛: 正同化学工業株式会社製「亜鉛華3号」
クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体: 田岡化学工業株式会社製「スミカノール610」
変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体: 田岡化学工業株式会社製「スミカノール620」
メチレンドナー: 変性エーテル化メチロールメラミン(田岡化学工業株式会社製「スミカノール507AP」)
硫黄: 5%油展処理硫黄
加硫促進剤(1): ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーDM」)
加硫促進剤(2): N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(大内化学工業株式会社製「ノクセラーNS」)
加硫促進剤(3): テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(大内化学工業株式会社製「ノクセラーTOT−N」)
過酸化物: 化薬アクゾ株式会社製「パーカドックス14/40」(1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼン40%含有)
樹脂架橋剤: 田岡化学工業株式会社製「タッキロール250−I」(臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体)
【0077】
(3)積層体の作製
上記(1)で作製した熱可塑性エラストマー組成物のフィルムAの上に、上記(2)で調製したゴム組成物をそれぞれ0.7mmの厚さで押出積層し、19種類の積層体を作製した。
さらに、上記(2)で調製した実施例10〜14のゴム組成物については、上記(1)で作製した熱可塑性エラストマー組成物のフィルムBとの積層体も作製した。
【0078】
(4)積層体の評価
作製した積層体について、下記「[1]剥離強度」試験に記載のとおり剥離強度を評価して、熱可塑性エラストマー組成物から成るインナーライナー材を有する空気入りタイヤに対して本発明のゴム組成物を修理材として使用する場合の耐剥離性をシミュレートした。
【0079】
[1]剥離強度
積層体の試料を、加硫後、幅25mmに切断し、その短冊状試験片の剥離強度をJIS−K6256に従い測定した。測定された剥離強度(N/25mm)を次の基準で指数化した。指数0以外はすべて良好の範囲である。
指数 剥離強度(N/25mm)
0 0以上20未満
1 20以上25未満
2 25以上50未満
3 50以上75未満
4 75以上100未満
5 100以上200未満
6 200以上
【0080】
さらに、フィルムAまたはBをインナーライナー材として有するタイヤ内面に本発明のゴム組成物からなるゴム層を貼り付けて走行した場合の耐剥離性および耐亀裂性を評価した。評価結果を表3、表4および表5に示す。なお、各評価項目の評価方法は次のとおりである。
[2]タイヤ走行試験
(a)タイヤ剥離性
フィルムAまたはBをインナーライナー材として有する195/65R15サイズのタイヤを定法により作製し、フィルムAまたはBのタイヤ内面側のクラウンセンター部に長さ4cm、幅3cmおよび厚さ0.7mmの上記各タイヤ修理用ゴム組成物を設置し、ゴム組成物を温度170℃で10分間加熱してタイヤ内面に貼り付けた。次に、得られたタイヤを、リム15×6JJ、内圧200kPaとして、排気量1800ccのFF乗用車に装着し、市街地を30,000km走行した。その後、タイヤをリムから外し内面観察を行い、積層体の剥離の有無を調べた。剥離がなかった場合を○で、剥離があった場合を×で表す。
【0081】
(b)タイヤ亀裂性
上記「(a)タイヤ剥離性」試験において、剥離の有無を調べた積層体について、亀裂(クラック)の有無についても目視にて調べた。亀裂がなかった場合を○で、亀裂があった場合を×で表す。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
実施例1〜14はすべて良好な評価結果を示した。
比較例1は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体およびメチレンドナーを含まない従来技術に相当するものであり、剥離があった。
比較例2は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体およびメチレンドナーの配合量が少ないもので、剥離があった。
比較例3は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体およびメチレンドナーの配合量が多いもので、剥離はなかったが、亀裂があった。
比較例4は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体の配合量に対するメチレンドナーの配合量の比が小さいもので、剥離があった。
比較例5は、クレゾール・ホルムアルデヒド縮合体の配合量に対するメチレンドナーの配合量の比が大きいもので、剥離があった。
実施例10〜14は、熱可塑性エラストマー組成物のフィルム(フィルムAまたはフィルムB)とレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合体を含むゴム組成物との組み合わせが、耐剥離性および耐亀裂性の点で特に優れていることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤのタイヤ内面の修理に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤのタイヤ内面の修理すべき箇所に適用される空気入りタイヤ修理用ゴム組成物であって、ゴム成分、式(1)
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、水素、ヒドロキシル基または炭素原子数が1〜8個のアルキル基である。)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、メチレンドナーおよび加硫剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜80質量部であり、メチレンドナーの配合量/前記縮合物の配合量の比が1〜4であることを特徴とする空気入りタイヤ修理用ゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物が加硫促進剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過20質量部以下であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部超過80質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分がジエン系ゴムを含み、加硫剤が硫黄であり、ゴム組成物がさらに加硫促進剤を含み、前記縮合物の配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部であり、メチレンドナーの配合量がゴム成分100質量部に対して0.5〜12質量部であり、硫黄の配合量がゴム成分100質量部に対して4質量部未満であり、加硫促進剤の配合量がゴム成分100質量部に対して0質量部超過2.1質量部未満であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
加硫促進剤がスルフェンアミド構造を有する化合物であり、スルフェンアミド構造を有する化合物の配合量が0質量部超過1.5質量部未満であることを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
ゴム組成物が加硫促進剤としてスルフェンアミド構造を有する化合物およびチウラム構造を有する化合物を含み、チウラム構造を有する化合物の配合量が0質量部超過0.6質量部未満であることを特徴とする請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
式(1)中、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つが炭素原子数が1〜8個のアルキル基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記縮合物が、式(2)
【化2】

(式中、nは整数であり、好ましくは1〜5の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
式(1)中、R1、R2、R3、R4およびR5のうち少なくとも1つが水酸基で、残りが水素または炭素原子数が1〜8個のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記縮合物が、式(3)
【化3】

(式中、mは整数であり、好ましくは1〜3の整数である。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
メチレンドナーが、変性エーテル化メチロールメラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、およびヘキサメトキシメチルメラミンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
ジエン系ゴムがスチレンブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記空気入りタイヤ修理用ゴム組成物が、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナーを有する空気入りタイヤを修理するためのゴム組成物である、請求項1〜12のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項14】
熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分がポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、エラストマー成分が臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項16】
熱可塑性樹脂が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂の総量の5〜100質量%であることを特徴とする請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項17】
熱可塑性エラストマー組成物が熱可塑性樹脂成分にエラストマー成分を分散させた組成物であり、熱可塑性樹脂成分が、エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を含み、エチレン−ビニルアルコール共重合体の配合量が熱可塑性樹脂成分の総量の5〜100質量%であることを特徴とする請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載のゴム組成物からなるゴム層と熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムとの積層体である空気入りタイヤ用修理材。
【請求項19】
請求項18に記載の積層体を、ゴム組成物からなるゴム層がタイヤ内面の修理すべき箇所と当接するようにタイヤ内面の修理すべき箇所に設置し、当該積層体を加熱することによって、タイヤ内面の修理すべき箇所に当該積層体を貼り付けることを特徴とする、空気入りタイヤの修理方法。

【公開番号】特開2012−121972(P2012−121972A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272843(P2010−272843)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】