説明

空気調和機のプロペラファンおよびその製造方法

【課題】 プロペラファンの軽量化を図り、装置のコストダウンおよび送風効率を向上させる。
【解決手段】 空気調和機のプロペラファンは、オレフィン系合成樹脂材料を予備発泡させた直径1mm〜5mmの発泡ビーズを金型41内に充填し発泡成型することにより、最大肉厚が10mm〜30mmの断面翼形状の羽根を備え、比重が0.3〜0.7に設定される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気調和機のプロペラファンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常の空気調和機では、室外機内に収納される圧縮機、室外熱交換器、四路切換弁および室内機内に収納される室内熱交換器により冷媒回路を構成している。四路切換弁を切り換えて、室外熱交換器が凝縮器として機能し、室内熱交換器が蒸発器として機能するように制御した場合には、冷房運転を行うことができる。また、四路切換弁を切り換えて、室外熱交換器が蒸発器として機能し、室内熱交換器が凝縮器として機能するように制御した場合には、暖房運転を行うことが可能となる。
【0003】室外機内には、吸い込んだ室外空気と室外熱交換器内を通過する冷媒との間で熱交換を行うための空気流を発生するプロペラファンが配置されている。プロペラファンは、モータシャフトが固定されるハブと、ハブの周囲に等間隔で配置される複数の羽根とから構成される。
【0004】このようなプロペラファンは、羽根の断面形状を翼形状とすることで、騒音の発生を抑制し、送風効率を向上させることが知られている。しかしながら、断面形状が翼形状である羽根は肉厚が大きくなるため質量が増加し、ファンモータのシャフトの強度、ファンモータのベアリングの強度、ファンモータが取り付けられるモータ台の強度などを高くする必要がある。
【0005】このため、ファンモータおよびこのファンモータを固定するモータ台に対するコストが高くなるという問題がある。さらに、羽根の肉厚が大きくなるため材料が多く必要となり、材料費が高くなるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したような問題に鑑みて、発泡剤を含む合成樹脂を金型内に充填して発泡成型しプロペラファンを構成することが考えられるが、いわゆるヒケを防止する効果を得ることができるものの、軽量化を図ることは困難である。
【0007】本発明では、プロペラファンの軽量化を図り、装置のコストダウンおよび送風効率を向上させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る空気調和機のプロペラファンは、オレフィン系合成樹脂材料を予備発泡させた直径1mm〜5mmの発泡ビーズを金型内に充填し発泡成型することにより、最大肉厚が10mm〜30mmの断面翼形状の羽根を備え、比重が0.3〜0.7に設定される。
【0009】この場合、金型内に充填される発泡ビーズは予め直径1mm〜5mmに予備発泡されているため、十分に大きな発泡倍率を得ることが可能であり、比重の軽いプロペラファンを得ることが可能となる。特に、羽根の肉厚が10mm〜30mm、比重が0.3〜0.7の範囲であるため、空気調和機に用いられるプロペラファンとしての十分な強度を得ることができる。
【0010】本発明の請求項2に係る空気調和機のプロペラファンは、請求項1に記載の空気調和機のプロペラファンであって、オレフィン系合成樹脂材料としてポリプロピレンを用いている。
【0011】この場合、プロペラファンとしての十分な強度を得ることが可能となる。本発明の請求項3に係る空気調和機のプロペラファンの製造方法は、球状に構成したオレフィン系合成樹脂材料を直径1mm〜5mmの発泡ビーズに予備発泡する工程と、発泡ビーズを金型内に充填し、最大肉厚が10mm〜30mmの断面翼形状の羽根を備え、比重が0.3〜0.7に設定されるプロペラファンを発泡成型する工程とを備える。
【0012】この場合、プロペラファンを構成する合成樹脂材料の発泡倍率を高くすることができ、比重の軽いプロペラファンを作成することが可能となる。また、プロペラファンを構成する羽根を、最大肉厚が10mm〜30mmの断面翼形状とすることで、騒音発生を抑制し送風効率を高めることが可能となる。
【0013】本発明の請求項4に係る空気調和機のプロペラファンの製造方法は、請求項3に記載の空気調和機のプロペラファンの製造方法であって、オレフィン系合成樹脂材料としてポリプロピレンを用いている。
【0014】この場合、プロペラファンとしての十分な強度を得ることが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の1実施形態が採用される空気調和機の室外機を図1、図2に示す。室外機10は、図1に示すように、熱交換室8および機械室9から構成されており、両室が仕切板(図示せず)で仕切られている。熱交換室8には、プロペラファン1を回転軸4aに装着したモータ4と、横断面がL字状である熱交換器5とが配設されており、前面には、桟形状の吹き出しグリル6がはめられている。モータ4によりプロペラファン1が回転すると、図1の2点鎖線で示す矢印の向きに沿って、熱交換器5を通過した空気が吹き出しグリル6から室外機10の前方(図1下方)へと流れる。なお、プロペラファン1は、図2に示す矢印の向きに回転する。機械室9には、圧縮機ユニット7や図示しない電装品などが配置される。
【0016】プロペラファン1は、図3に示すように、モータ4の回転軸4aに装着される円筒形状のハブ2と、ハブ2の外周面に送風方向に所定の傾斜角を有している複数の羽根3とから構成されている。ハブ2の内周部には、モータ4の回転軸4aに回転不能に嵌合する溝など(図示せず)が形成されている。この実施形態においては、図示したように、3枚の羽根3,3を備えるプロペラファン1を採用している。
【0017】羽根3は、いわゆる前進翼と呼ばれる構造であり、空力性能の向上のために前縁部が外周側ほど回転方向に前進している形状となっている。また、羽根3は、流入してくる気流(空気)に対する剥離の発生度合い、特に前縁剥離の度合いを減少させるために、図4に示すように、丸みを帯びた前縁部31と、肉厚の薄い後縁部32と、前縁部31と後縁部32との中間に位置して正圧面側に凹所33が形成される中間部34とを有する厚翼形状(エアフォイル形状)の断面形状を有している。
【0018】このようなプロペラファン1は、オレフィン系合成樹脂材料を予備発泡させて直径1mm〜5mmの発泡ビーズを作成し、この発泡ビーズを金型内に充填し発泡成型することにより作成される。このとき、羽根3の最大肉厚部分における肉厚a(図4)が、10mm〜30mmとなるように設定される。また、プロペラファン1全体の比重が0.3〜0.7の範囲となるように、発泡成型が行われる。オレフィン系合成樹脂材料としては、ポリプロピレンを採用することが好ましい。
【0019】このようなプロペラファン1の製造工程を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。ステップS1では、ポリプロピレンなどの球状に構成したオレフィン系合成樹脂材料を直径1mm〜5mmに予備発泡させて発泡ビーズを作成する。予備発泡させた発泡ビーズの径としては、単一径のものを使用することも可能であり、また、異なる径の複数種のものを用いることも可能である。特に、羽根3の各部における肉厚差が比較的小さな場合には、単一径の発泡ビーズで作成することが可能であり、肉厚差が大きい場合にはそれに対応して異なる径の複数種の発泡ビーズを用いることが好ましい。
【0020】ステップS2では、金型内に発泡ビーズを射出して充填する。図5に示すように、金型41は、成型装置に固定される固定金型42と、固定金型42に対して移動可能に成型装置に支持されている移動金型43とから構成されている。移動金型43を固定金型42に閉止した際には、プロペラファン1の形状を構成する成型キャビティ44が形成される。この成型キャビティ44は、形成されるプロペラファンの羽根の最大肉厚が10mm〜30mmの範囲となるように設定されている。
【0021】固定金型42側に設けられる材料供給口45より発泡ビーズを成型キャビティ44内に充填する。このとき、水、蒸気などとともに成型キャビティ44内に発泡ビーズを射出することにより、肉厚の小さい部分や先端部分に対しても発泡ビーズを行き渡らせることが可能となる。
【0022】ステップS3では、金型41内において発泡ビーズを所定温度に加熱してさらに発泡させることによりプロペラファン1の成型を行う。このとき、図6に示すように、成型キャビティ44内に充填された発泡ビーズは、成型キャビティ44内の隅々まで行き渡り、互いに溶着してプロペラファン1を形成する。また、表面部分は、溶融した材料によってスキン層が形成され、プロペラファン1の強度を高めることとなる。
【0023】成型キャビティ44内において各発泡ビーズが十分に発泡し互いに溶着して表面にスキン層が形成されるまで、発泡成型工程を行う。ここでは、成型品の比重が0.3〜0.7の範囲で適宜選択された比重となるように発泡ビーズの発泡倍率を求め、この発泡倍率となるような加熱温度および成型時間を理論的に求めて、これに従って発泡成型工程を行う。この発泡成型工程が終了した段階で、金型41に冷却水をかけるなどして成型品の冷却を行う。
【0024】ステップS4では、型開きを行う。金型41の型開きは、図7に示すように、移動金型43を移動させることにより行うことができる。ステップS5では、成型品を取り出す。この場合、固定金型42側に設けられるイジェクトピン(図示せず)を用いて成型品50を押し出すことにより、ランナ51から成型品50を分離するとともに、成型品50の取り出しを行うことが可能となる。
【0025】このようにして取り出された成型品50は、比重が0.3〜0.7の範囲で適宜設定されたものとなり、羽根の最大肉厚が10mm〜30mmのものとなる。このことにより、プロペラファンとして十分な強度を維持しつつ軽量化を図ることが可能となる。
【0026】プロペラファンとしての適正品質を、その最大肉厚と比重とに基づいて表したグラフを図9に示す。図9に示すように、最大肉厚が10mm以下のものは、断面形状が翼形状を構成することが困難でありエアフォイルの効果がなくなってしまう。また、比重が0.3よりも小さくなると、プロペラファンとしての強度が不足し、割れや欠けの原因となるおそれがある。
【0027】さらに、比重が0.3以上で強度の問題を克服する場合であっても最大肉厚が30mmを超えると、プロペラファンの重量が大きくなり、ファンモータなどの強度を考慮する必要がでてくる。
【0028】また、最大肉厚を10mm以上とした断面翼形状に構成した場合、比重が0.7を超えるとプロペラファンの重量が大きくなり、同様に、ファンモータなどの強度を考慮する必要がでてくる。
【0029】以上から、最大肉厚10mm〜30mmの羽根を備え、比重が0.3〜0.7に設定されるプロペラファン1を構成することにより、空気調和機のプロペラファンとして適正な強度を維持するとともに、軽量化を図ることが可能となり、装置のコストダウンおよびプロペラファンの送風効率を高く維持することができる。本発明のように、ポリプロピレンなどのオレフィン系合成樹脂材料を予備発泡させた直径1mm〜5mmの発泡ビーズを金型内に充填し発泡成型することにより、高い発泡倍率で成型品を作成することができ、上述したように比重が0.3〜0.7のプロペラファンを作成することが可能となる。
【0030】
【発明の効果】本発明の請求項1に係る空気調和機のプロペラファンでは、金型内に充填される発泡ビーズは予め直径1mm〜5mmに予備発泡されているため、十分に大きな発泡倍率を得ることが可能であり、比重の軽いプロペラファンを得ることが可能となる。特に、羽根の最大肉厚が10mm〜30mm、比重が0.3〜0.7の範囲であるため、空気調和機に用いられるプロペラファンとしての十分な強度を得ることができる。
【0031】本発明の請求項2に係る空気調和機のプロペラファンでは、オレフィン系合成樹脂材料としてポリプロピレンを用いているため、プロペラファンとしての十分な強度を得ることが可能となる。
【0032】本発明の請求項3に係る空気調和機のプロペラファンの製造方法では、プロペラファンを構成する合成樹脂材料の発泡倍率を高くすることができ、比重の軽いプロペラファンを作成することが可能となる。また、プロペラファンを構成する羽根を、最大肉厚が10mm〜30mmの断面翼形状とすることで、騒音発生を抑制し送風効率を高めることが可能となる。
【0033】本発明の請求項4に係る空気調和機のプロペラファンの製造方法では、オレフィン系合成樹脂材料としてポリプロピレンを用いているため、プロペラファンとしての十分な強度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態が採用される空気調和機の室外機の概略構成を示す断面図。
【図2】その正面図。
【図3】プロペラファンの斜視図。
【図4】羽根の断面図。
【図5】成型工程を説明するための金型の断面図。
【図6】成型工程を説明するための金型の断面図。
【図7】成型工程を説明するための金型の断面図。
【図8】成型工程のフローチャート。
【図9】プロペラファンの最大肉厚と比重に基づく特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1 プロペラファン
2 ハブ
3 羽根
31 前縁部
32 後縁部
34 中間部
41 金型
44 成型キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】オレフィン系合成樹脂材料を予備発泡させた直径1mm〜5mmの発泡ビーズを金型(41)内に充填し発泡成型することにより、最大肉厚が10mm〜30mmの断面翼形状の羽根(3)を備え、比重が0.3〜0.7に設定される空気調和機のプロペラファン。
【請求項2】前記オレフィン系合成樹脂材料はポリプロピレンである、請求項1に記載の空気調和機のプロペラファン。
【請求項3】球状に構成したオレフィン系合成樹脂材料を直径1mm〜5mmの発泡ビーズに予備発泡する工程と、前記発泡ビーズを金型内に充填し、最大肉厚が10mm〜30mmの断面翼形状の羽根(3)を備え、比重が0.3〜0.7に設定されるプロペラファン(1)を発泡成型する工程と、を備える空気調和機のプロペラファンの製造方法。
【請求項4】前記オレフィン系合成樹脂材料はポリプロピレンである、請求項3に記載の空気調和機のプロペラファンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2002−221339(P2002−221339A)
【公開日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−17972(P2001−17972)
【出願日】平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】