説明

空港面監視システムおよび空港面監視方法

【課題】空港面に存在する目標の誤検出を減少し、誤ターゲットの表示を抑制できる空港面監視システムを提供する。
【解決手段】ASDE10を用いたASDE追尾系統とMLAT20を用いたMLAT追尾系統を備え、MLAT追尾系統は、MLAT20が出力する目標位置検出情報に基づいて目標近傍の領域に対してはASDE追尾系統のビデオレベル判定部13のスレッショルドレベルを下げ、目標近傍以外の領域に対してはビデオレベル判定部13のスレッショルドレベルを上げるASDEビデオレベル判定用マップ情報205をビデオレベル判定部13に出力するスレッショルドMAP作成処理部23を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空港面に存在する航空機などの目標の位置を監視する空港面監視システムおよび空港面監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空港面監視システムとしては、例えば、特開2007−10367号公報(特許文献1)や特開平10−142329号公報(特許文献2)に示されたものがある。
特開2007−10367号公報には「複数の目標検出装置を併用して空港面を監視し、この複数の目標検出装置により検出された同一目標物についての航跡情報から統合航跡を生成して表示部に表示する空港面監視システムにおいて、空港面のセンターライン情報(空港面のマップ情報等から求めた滑走路や誘導灯等についての情報)を蓄積したセンターラインデータベースからセンターライン情報を読み出し、そのセンターライン情報を用いて複数の目標検出装置により検出された各航跡情報の座標位置地から基準センターラインまでの垂直距離をそれぞれ算出し、それらの垂直距離に基づく重み付け割合により同一目標物について統合航跡の座標位置を決定する空港面監視システム」が記載されている。
【0003】
また、特開平10−142329号公報には、「探査地域から反射したレーダー信号を受信し、このレーダー信号を増幅する対数増幅器を有する一次レーダー装置と、対数増幅器の出力からこの対数増幅器の入出力を算出する係数変換器と、誤目標発生数に対応する複数の入出力特性曲線を記憶し、算出された誤目標発生数に対応する入出力特性曲線を選択する係数選択器とからなる増幅器と、一次レーダー装置で受信したレーダー信号から誤目標発生数を算出する手段を有する自動識別装置とを備えた誤目標の抑圧装置(即ち、空港面監視システム)が記載されている。
【0004】
図10は、従来の空港面探知レーダーシステム(即ち、空港面監視システム)の構成を示すブロック図である。
なお、図10は、特開2007−10367号公報あるいは特開平10−142329号公報などに示された空港面監視システムそのものの構成ではないが、従来の空港面監視システムの構成例として、後述する本願発明による空港面監視システムの構成と対比させて図示したものである。
図10を用いて、従来の空港面探知レーダーシステムの動作について説明する。
一次レーダーであるASDE(AirportSurface Detection Equipment:空港面探知レーダー装置)10は、送受信機(図示なし)によってレーダーの送信信号を空港面に電波として一定周期で発射し、航空機や船舶等の目標で反射した反射電波をASDE10に配置されているレーダーアンテナ(図示なし)にて再度受信する。
そして、ASDE10のレーダーアンテナで受信した電波はASDE10の受信機(図示なし)に入力され、入力された微弱信号を増幅および周波数変換して、レーダービデオ信号101としてA/D変換部11に入力する。
【0005】
レーダービデオ信号101は、後段での処理の為に、A/D変換部11によってデジタルレーダービデオ信号102に変換される。
次に、ノイズ除去のスレッショルド処理のために、デジタルレーダービデオ信号102はメモリ部12によって一旦データ蓄積される。
メモリ部12から出力されるデジタルレーダービデオ信号103は、スレッショルド処理部130によってノイズ成分と目標成分(即ち、目標ビデオ信号)に分けられる。
その目標と判断された目標ビデオ信号1040の重心位置を求めるために、目標ビデオ信号1040はクラスタリング処理部14でクラスタ(塊)として処理される。
【0006】
クラスタ化したクラスタ信号(即ち、クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号)105は、重心位置算出部15よって、その重心位置(即ち、クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号の重心位置)が算出される。
現在処理されている目標の重心位置と今回入力した目標の重心位置の相関処理を行うために、重心位置算出部15で算出された重心位置算出信号106は、ASDE追尾処理部16によって、同一目標の重心位置算出信号としてASDE航跡データ107として出力される。
一方、二次レーダーであるMLAT(Multi-Lateration:マルチラテレーション)20は、航空機等からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3局の受信局で受信し、その受信時間差から航空機等の位置を測位し、測位した測位信号(位置検出情報)201をMLAT追尾処理部21に入力する。
【0007】
なお、モードSトランスポンダ信号とは、航空機が発信する信号(モードS)のことであり、モードS(航空機に固有のアドレス)信号により航空機の識別が可能である。
MLATでは、航空機からのモードSトランスポンダ信号を3局以上の受信局で受信し、受信局間の受信時刻差を各受信局と航空機との距離差に変換し、距離差が一定である条件からなる双曲線同士の交点を求め、航空機の位置を算出できる。
MLAT追尾処理部21は、MLAT20から出力する測位信号(位置検出情報)201を相関/追尾処理し、MLAT航跡データ202を出力する。
統合処理部40は、ASDE航跡データ107とMLAT航跡データ202を相関処理し、相関があれば同一目標として統合処理し、統合処理結果である統合航跡401を出力する。
統合処理部40から出力された統合処理結果(統合航跡)401は、表示データとして表示装置50にて表示される。
【特許文献1】特開2007−10367号公報(図1、要約)
【特許文献2】特開平10−142329号公報(図1、請求項5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の空港面探知レーダーシステム(空港面監視システム)では、ASDEのような高分解能一次レーダーとMLATのような2次レーダーを用いて、覆域が重なっている領域の目標(例えば航空機)を別々に監視し、自動で目標検出を行い、検出結果から追尾処理させる。
そして、ASDE追尾結果とMLAT追尾結果を統合処理して、表示装置でターゲットとして表示させる。
ASDEは一次レーダーであるため、空港内の建物や航空機が原因によるマルチパスが発生する。マルチパスは発生場所が不特定であり、なおかつビデオレベルが高い。
そのため、従来の空港面監視システムでは、ASDEが検出するデジタルビデオ信号に対してスレッショルド判定等の処理を施しても、目標を誤検出してしまい、偽ターゲットとして表示装置に表示される。
そのため、機材(例えば表示装置や算出処理された目標の位置情報を利用する各種機材など)を使用する管制官が間違いを引き起こしたり、確認作業の手順を増やすことになるという問題が発生する。
【0009】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、空港面に存在する航空機等の目標の誤検出を減少させ、誤ターゲットが表示されることを抑制し、空港面監視のための各種機材を使用する管制官の負荷を軽減することができる空港面監視システムおよび空港面監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる空港面監視システムは、空港面に電波を発射し、反射する電波を受信することによりレーダービデオ信号を生成して出力するASDE、上記ASDEから出力されるレーダービデオ信号をデジタルレーダービデオ信号に変換するA/D変換部、変換された上記デジタルレーダービデオ信号を記憶するメモリ部、上記メモリ部から出力されるデジタルレーダービデオ信号のレベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号を出力するビデオレベル判定部、上記ビデオレベル判定部から出力されるデジタルレーダービデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理部、上記ラスタリング処理部でクラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出部、上記重心位置算出部で算出された上記重心位置検出信号に基づいてASDE航跡データを出力するASDE追尾処理部とで構成されるASDE追尾系統と、
上記目標からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3個の受信局で受信し、その受信時刻差から目標の位置を測位して目標位置検出情報を出力するMLAT、上記MLATからの目標位置検出情報に基づいて上記目標を追尾し、MLAT航跡データを出力するMLAT追尾処理部とで構成されるMLAT追尾系統と、上記ASDE航跡データと上記MLAT航跡データを相関処理し、同一目標として統合処理して統合航跡データを作成する統合処理部と、上記統合処理部が作成する上記統合航跡を表示する表示装置を備えた空港面監視システムにおいて、更に、上記MLAT追尾系統は、上記MLATが出力する上記目標位置検出情報に基づいて、上記目標近傍の領域に対しては上記ビデオレベル判定部のスレッショルドレべルを下げ、上記目標近傍以外の領域に対しては上記ビデオレベル判定部のスレッショルドレべルを上げるASDEビデオレベル判定用マップ情報を上記ビデオレベル判定部に出力するスレッショルドMAP作成処理部を有したものである。
【0011】
また、本発明に係わる空港面監視方法は、ASDEによって空港面に電波を発射し、反射する電波を受信することによりレーダービデオ信号を生成して出力するステップと、上記レーダービデオ信号をデジタルレーダービデオ信号に変換するステップと、変換された上記デジタルレーダービデオ信号を記憶するステップと、記憶されたデジタルレーダービデオ信号のレベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号を出力するビデオレベル判定ステップと、上記ビデオレベル判定ステップにおいて出力されるデジタルレーダービデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理ステップと、クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出ステップと、算出された上記重心位置検出信号に基づいてASDE航跡データを出力するASDE追尾処理ステップと、MLATによって目標からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3個の受信局で受信し、その受信時刻差から目標の位置を測位して目標位置検出情報を出力するステップと、上記目標位置検出情報に基づいて目標を追尾し、MLAT航跡データを出力するMLAT追尾処理ステップと、上記ASDE航跡データと上記MLAT航跡データを相関処理し、同一目標として統合処理して統合航跡を作成する統合処理ステップと、上記統合処理部ステップにおいて作成される統合航跡を表示するステップを有した空港面監視方法において、更に、上記目標位置検出情報に基づいて、目標近傍の領域に対しては上記ビデオレベル判定のためのスレッショルドレベルを下げ、上記目標近傍以外の領域に対しては上記ビデオレベル判定のためのスレッショルドレべルを上げるステップを有しているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による空港面監視システムあるいは空港面監視方法によれば、MLATによる目標位置検出結果を用いて目標検出位置近傍のASDEの目標検出スレッショルドを下げ、他の領域のスレッショルドを上げることによって、ASDEの目標検出確度が高くなり、目標の誤検出ならびに誤追尾を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態について説明する。
なお、各図間において、同一符合は、同一あるいは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
図において、ASDE(AirportSurface Detection Equipment)10は、送受信機(図示なし)によってレーダーの送信信号を空港面に電波として発射し、航空機等の目標物で反射した反射電波をASDEレーダーアンテナ(図示なし)にて再度受信し、受信した電波を受信機(図示なし)に入力し、受信機に入力された微弱信号を増幅および周波数変換してレーダービデオ信号101を出力する。
【0014】
A/D変換部11は、ASDE10から出力されるレーダービデオ信号101をデジタルレーダービデオ信号102に変換する。
メモリ部12は、A/D変換部11でデジタル信号に変換されたデジタルレーダービデオ信号102を一時的に記録(蓄積)し、デジタルレーダービデオ信号103をビデオレベル判定部13へ出力する。
更に、本実施の形態では、MLAT(Multi-Lateration)20の検出情報(即ち、MLAT20が検出する目標位置検出情報)203を一時的に記録して、目標位置検出情報(即ち、MLAT20が検出した目標位置検出情報)204として出力する検出情報メモリ部22と、検出情報メモリ部22から出力される目標位置検出情報204に基づいてスレッショルドMAPを作成し、ASDEビデオレベル判定用マップ情報205としてビデオレベル判定部13へ出力するスレッショルドMAP作成処理部23を備えている。
なお、スレッショルドMAPとは、MLAT20が検出する目標位置検出情報204に基づいて目標位置付近の目標検出レベルを低く設定するためのスレッショルドレベル変化特性のことである。
【0015】
ビデオレベル判定部13は、スレッショルドMAP作成処理部23からのASDEビデオレベル判定用マップ情報205に基づいて、メモリ部12から出力されるデジタルレーダービデオ信号103のレベルを判定し、判定されたビデオレベルが閾値(スレッショルドレベル)より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号104を出力する。
クラスタリング(clustering:塊にすること)処理部14は、ビデオレベル判定部13から出力されるノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号104の重心位置を求めるために、ビデオレベル判定部13から出力されるデジタルレーダービデオ信号104を「塊(クラスタ)」として処理する。
【0016】
重心位置算出部15は、クラスタリング処理部14でクラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号105からその重心位置(即ち、クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号の重心位置)を算出し、重心位置算出信号106を出力する。
ASDE追尾処理部16は、重心位置算出部15で算出されたデジタルレーダービデオ信号の重心位置であるASDE検出位置結果(即ち、重心位置検出信号106)より前回処理された目標結果と比較し、前回処理された目標と現在処理されている目標との相関をとる。
そして、相関があれば、前回処理された目標と現在処理されている目標が同一の目標であると判断し、ASDE航跡データ(即ち、ASDE追尾処理部16による目標の追尾処理結果)107を出力する。
一方、MLAT20は、空港面およびその周辺をカバーし、航空機等からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3局の受信局で受信し、その受信時間差から目標とする航空機等の位置を測位し、測位信号201として、MLAT追尾処理部21に入力する。
【0017】
MLAT追尾処理部21は、MLAT20から出力される目標の測位信号201と前回検出された目標の測位結果と比較して相関をとり、両者に相関があれば同一目標と判断し、MLAT航跡データ(即ち、MLAT追尾処理部21による目標の追尾処理結果)202を出力する。
更に、検出情報メモリ部22は、MLAT20の検出情報(即ち、MLAT20が検出する目標の位置情報)203を一時的に記録して出力する。
スレッショルドMAP作成処理部23は、検出情報メモリ部22から出力される検出情報(即ち、MLAT20が検出した目標の位置情報)204からスレッショルドMAPを作成する。
そして、スレッショルドMAP作成処理部23で作成されたスレッショルドMAPは、ASDEビデオレベル判定用マップ情報205としてビデオレベル判定部13に入力される。
統合処理部41は、ASDE追尾処理結果とMLAT追尾処理結果から同一目標判定を実施して統合処理結果(即ち、統合航跡データ)401を出力し、表示装置50は統合処理部41からの統合処理結果(統合航跡データ)401を表示させる。
【0018】
次に、上述の説明と一部重複するが、本実施の形態による空港面監視システムの動作について説明する。
図1において、ASDE10から出力されたレーダービデオ信号101は、A/D変換部11に入力されて、デジタルレーダービデオ信号102に変換される。
A/D変換部11でデジタル信号に変換されたデジタルレーダービデオ信号102は、ビデオレベル判定のために一旦メモリ部12に格納される。
更に、本実施の形態による空港面監視システムでは、MLAT20による目標位置検出情報(MLAT検出情報)203を一時的に記録して出力する検出情報メモリ部22と、検出情報メモリ部22から出力される目標位置検出情報204からスレッショルドMAPを作成するスレッショルドMAP作成処理部23とを備えている。
【0019】
そして、MLAT20から出力されたMLAT検出情報(目標位置検出情報)203は、スレッショルドマップ作成のために、検出情報メモリ部22に格納される。
スレッショルドMAP作成処理部23では、検出情報メモリ部22に格納されていたMLAT検出情報(目標位置検出情報)からASDEビデオレベル判定用マップを作成し、ASDEビデオレベル判定用マップ情報205をビデオレベル判定部13に出力する。
例えば、スレッショルドMAP作成処理部23は、MLAT20が出力する目標位置検出情報に基づいて、目標近傍の領域に対してはビデオレベル判定部13のスレッショルドレべルを下げ、目標近傍以外の領域に対してはビデオレベル判定部13のスレッショルドレべルを上げるASDEビデオレベル判定用マップ情報205をビデオレベル判定部13に出力する。
このビデオレベル判定用マップ情報205は、ASDEのビデオレベル判定部13でのデジタルレーダービデオ信号のレベル判定に使用される。
【0020】
ビデオレベル判定部13は、スレッショルドMAP作成処理部23から出力されるビデオレベル判定用マップ情報205を用いてメモリ部12から出力されるデジタルレーダービデオ信号103に対してスレッショルド判定を実施し、スレッショルド値以下のデジタルレーダービデオ信号をノイズとして除去する。
ビデオレベル判定部13によってノイズが除去さけたデジタルレーダービデオ信号104はクラスタリング処理部14に入力されてクラスタ(cluster:塊)化されたデジタルレーダービデオ信号105になり、重心位置算出部14に入力される。
重心位置算出部14は、入力さるクラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号105の重心位置を算出し、重心位置算出信号(重心位置データ)106を出力する。
出力された重心位置算出信号106は、ASDE追尾処理部16へ入力される。
ASDE追尾処理部16において、前回処理された目標結果と比較して同一目標と判定され、ASDE追尾処理データ(即ち、ASDE航跡データ)107となり、統合処理部41に入力される。
【0021】
一方、MLAT20から出力されたMLAT検出結果である測位信号(即ち、目標位置検出情報)201はMLAT追尾処理部21に入力される。
MLAT追尾処理部21において、前回処理された目標結果と比較して同一目標と判定され、MLAT追尾処理データであるMLAT航跡データ202となり、統合処理部41に入力される。
ASDE追尾処理データであるASDE航跡データ107とMLAT追尾処理データであるMLAT航跡データ202により、統合処理部41では目標である航空機の位置、速度、ヘディング(機首方位のこと)、モードSアドレス(航空機固有のアドレス)などにより相関処理を実施し、相関があればASDE追尾処理結果とMLAT追尾処理結果の統合処理を行い、統合位置を算出して統合航跡を作成する。
作成された統合航跡は統合処理結果401として統合処理部41から出力される。
なお、統合航跡とは、目標である航空機の位置情報だけでなく、速度やヘディング等の位置情報も含むものである。
この統合処理結果401は、表示装置50によって統合ターゲットとして表示される。
【0022】
ここで、図2は、本実施の形態1による空港面監視システムを使用しない場合の動作を説明するための図であり、図2(a)は目標である航空機のエコーと虚像のエコーのASDEビデオレベルを示しており、図2(b)は表示装置50に表示される目標(航空機)のエコーと虚像のエコーの位置に統合ターゲットが表示されている様子を示している。
図2(a)に示すように、航空機および偽像のビデオレベルがスレッショルドレベルを超えており、航空機および偽像の両方がターゲットとして表示装置50に出力されることになる。
なお、図2(a)の横軸(距離)は、図2(b)に示した波線と対応している。
一方、図3は、本実施の形態1による空港面監視システムを使用した場合の動作を説明するための図であり、図3(a)は目標である航空機のエコーと虚像のエコーのASDEビデオレベル(即ち、ASDE10で検出されたデジタルレーダービデオ信号のレベル)を示しており、図3(b)は表示装置50に表示される目標(航空機)のエコーと虚像のエコーの位置に統合ターゲットが表示されている様子を示している。
図3(a)に示すように、本実施の形態では、MLAT20の検出位置の近傍(即ち、目標である航空機の検出位置の近傍)のスレッショルドレベルを下げ、それ以外の領域のスレッショルドレベルを上げている。
従って、虚像に対してスレッショルドレベルが高くなっており、図3(b)に示すように、偽像に対して統合ターゲット(誤ターゲット)が生成されることが減少し、統合処理全体の性能が向上する。
即ち、本実施の形態によれば、図3(b)に示すように、虚像のエコーが表示装置50に表示されなくなるので、空港面に存在する航空機等の目標の誤検出を減少させ、誤ターゲットを表示することを抑制し、機材を使用する管制官の負荷を軽減することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態による空港面監視システムは、空港面に電波を発射し、反射する電波を受信することによりレーダービデオ信号を生成して出力するASDE(空港面探知レーダー装置)10、ASDE10から出力されるレーダービデオ信号をデジタルレーダービデオ信号に変換するA/D変換部11、変換されたデジタルレーダービデオ信号を記憶するメモリ部12、メモリ部12から出力されるデジタルレーダービデオ信号のレベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号を出力するビデオレベル判定部13、ビデオレベル判定部13から出力されるデジタルレーダービデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理部14、クラスタリング処理部でクラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出部15、重心位置算出部15で算出された重心位置検出信号に基づいてASDE航跡データ107を出力するASDE追尾処理部16とで構成されるASDE追尾系統と、
目標からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3個の受信局で受信し、その受信時刻差から目標の位置を測位して目標位置検出情報を出力するMLAT20、MLAT20からの目標位置検出情報に基づいて目標を追尾し、MLAT航跡データ202を出力するMLAT追尾処理部21とで構成されるMLAT追尾系統と、
ASDE航跡データ107とMLAT航跡データ202を相関処理し、同一目標として統合処理して統合航跡401を作成する統合処理部41と、統合処理部41が作成する統合航跡401を表示する表示装置50を備えた空港面監視システムにおいて、
更に、MLAT追尾系統は、MLAT20が出力する目標位置検出情報に基づいて、目標近傍の領域に対してはASDE追尾系統のビデオレベル判定部13のスレッショルドレべルを下げ、目標近傍以外の領域に対してはビデオレベル判定部13のスレッショルドレべルを上げるASDEビデオレベル判定用マップ情報205をビデオレベル判定部13に出力するスレッショルドMAP作成処理部23を有している。
【0024】
また、本実施の形態による空港面監視方法は、ASDEによって空港面に電波を発射し、反射する電波を受信することによりレーダービデオ信号を生成して出力するステップと、レーダービデオ信号をデジタルレーダービデオ信号に変換するステップと、変換されたデジタルレーダービデオ信号を記憶するステップと、記憶されたデジタルレーダービデオ信号のレベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号を出力するビデオレベル判定ステップと、ビデオレベル判定ステップにおいて出力されるデジタルレーダービデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理ステップと、クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出ステップと、算出された重心位置検出信号に基づいてASDE航跡データを出力するASDE追尾処理ステップと、MLATによって目標からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3個の受信局で受信し、その受信時刻差から目標の位置を測位して目標位置検出情報を出力するステップと、目標位置検出情報に基づいて目標を追尾し、MLAT航跡データを出力するMLAT追尾処理ステップと、ASDE航跡データとMLAT航跡データを相関処理し、同一目標として統合処理して統合航跡を作成する統合処理ステップと、統合処理部ステップにおいて作成される統合航跡を表示するステップを有した空港面監視方法において、更に、目標位置検出情報に基づいて、目標近傍の領域に対してはビデオレベル判定のためのスレッショルドレべルを下げ、目標近傍以外の領域に対してはビデオレベル判定のためのスレッショルドレべルを上げるステップを有している。
【0025】
このように、本実施の形態による空港面監視システムあるいは空港面監視方法は、一次レーダーであるASDEと二次レーダーであるMLATを用いて空港面上の監視目標を自動検出し、自動検出結果により、目標を追尾処理させる。
そして、ASDE追尾処理結果とMLAT追尾処理結果を統合処理する場合、一次レーダーであるASDEの誤検出(即ち、虚像の検出)を防ぐために二次レーダーであるMLATの検出結果を用いてASDEで検出した目標位置近傍の領域に対して目標判定レベルのスレッショルドを低く設定し、目標位置近傍以外の領域に対してはスレッショルドを高く設定することにより、一次レーダーであるASDEの目標検出確度を高くすることができる。
その結果、空港面に存在する航空機等の目標の誤検出を減少させ、誤ターゲットを表示することを抑制し、機材を使用する管制官の負荷を軽減することができる。
【0026】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
前述の実施の形態1では、スレッショルドMAP作成処理部は、MLATが出力する目標位置検出情報に基づいて、目標近傍の領域に対してはASDE追尾系統のビデオレベル判定部スレッショルドレべルを下げ、目標近傍以外の領域に対してはビデオレベル判定部のスレッショルドレべルを上げるASDEビデオレベル判定用マップ情報をビデオレベル判定部に出力していたが、本実施の形態による空港面監視システムのスレッショルドMAP作成処理部は、MLATが出力する目標位置検出情報に代えて、MLAT追尾処理部が検出する目標の位置、速度、ヘディング等の追尾情報に基づいて、ASDEビデオレベル判定用マップ情報をビデオレベル判定部に出力することを特徴とするものである。
【0027】
前述の実施の形態1による空港面監視システムでは、検出情報メモリ部22から出力される目標の目標位置検出情報204からスレッショルドMAPを作成していた。
本実施の形態では、図4に示すとおり、検出情報メモリ部に代えて、MLAT追尾処理部21が検出する目標の位置、速度、ヘディング等のMLAT追尾情報206を一旦記憶する追尾情報メモリ部24が付加されている。
そして、スレッショルドMAP作成処理部23は、追尾情報メモリ部24から出力される目標の位置、速度、ヘディング等の追尾情報207に基づいて、ASDEビデオレベル判定用マップ情報208をビデオレベル判定部13に出力する。
【0028】
ビデオレベル判定部13は、メモリ部12から出力されるデジタルレーダービデオ信号103に対して、スレッショルドMAP作成処理部23から入力されるASDEビデオレベル判定用マップ情報208に基づいてスレッショルド判定を実施し、スレッショルド値以下のデジタルレーダービデオ信号をノイズとして除去する。
ビデオレベル判定部13によるビデオレベル判定処理後、ノイズが除去さけたデジタルレーダービデオ信号104はクラスタリング処理部14に入力され、形をもった塊となり、クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号105になり、重心位置算出部14に入力される。
クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号105の重心位置を算出し、重心位置算出信号(重心位置データ)106となり、ASDE追尾処理部16へ入力される。
ASDE追尾処理部16において、前回処理された目標結果と比較して同一目標と判定され、ASDE追尾処理データ(即ち、ASDE航跡データ)107となり、統合処理部41に入力される。
【0029】
一方、MLAT20から出力されたMLAT検出結果である測位信号(即ち、目標位置検出情報)201はMLAT追尾処理部21に入力される。
MLAT追尾処理部21において、前回処理された目標結果と比較して同一目標と判定され、MLAT追尾処理データであるMLAT航跡データ202となり、統合処理部42に入力される。
ASDE追尾処理データであるASDE航跡データ107とMLAT追尾処理データであるMLAT航跡データ202とにより、統合処理部42では、目標の位置、速度、ヘディング、モードSアドレスなどによって相関処理を実施し、相関があればASDE追尾処理結果とMLAT追尾処理結果の総合処理を行い、統合処理結果401を出力する。
統合処理結果401は、表示装置50によってターゲットとして表示される。
【0030】
次に図5に基づいて本実施の形態による空港面監視システムの動作について説明する。
図5(a)は、追尾情報から航空機が停止中と判断して、スレッショルドMAPを作成している場合に、表示装置50に表示される「ASDE追尾処理結果とMLAT追尾処理結果の総合処理結果」を示している。
一方、図5(b)は、追尾情報から航空機の移動を判断して、スレッショルドMAPを作成している場合に、表示装置50に表示される「ASDE追尾処理結果とMLAT追尾処理結果の総合処理結果」を示している。
図5(b)に示されるように、本実施の形態におけるスレッショルドMAP作成処理部23は、例えば、目標(飛行機)が移動している場合は、MLAT追尾処理部21による目標追尾情報の一つである移動速度に応じてその進行方向に対してスレッショルドレべルを下げる領域を目標の進行方向に対して大きくしている。
即ち、スレッショルドMAP作成処理部23からビデオレベル判定部13に出力される
ASDEビデオレベル判定用マップ情報208は、目標の移動速度に応じてその進行方向に対してスレッショルドレべルを下げる領域を大きくしている。
このように、本実施の形態では、MLATによる目標の追尾情報に合わせて、スレッショルドMAPの作成が可能である。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態による空港面監視システムにおいては、MLAT追尾系統のスレッショルドMAP作成処理部23は、MLAT20が出力する目標位置検出情報に代えて、MLAT追尾処理部21が検出する目標の位置、速度、ヘディング等の追尾情報206に基づいて、ASDEビデオレベル判定用マップ情報をビデオレベル判定部13に出力する。
従って、MLATによる目標の追尾情報(速度や進行方向など)に応じてビデオレベル判定部におけるスレッショルドレベルを下げる領域を変更することが可能となるので、目標の検出確度を更に高めることができ、信頼性の高い空港面監視システムを実現できる。
【0032】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
前述の実施の形態1では、一次レーダーとしてASDEを使用していたが、本実施の形態では、ASDEに代えてカメラを使用することにより、カメラの背景差分方式ならびにスキャン間差分方式でのスレッショルド値をMLATのスレッショルドMAP作成に使用することにより、カメラの誤検出を防ぐことが可能とし、統合処理の性能を向上させるようにしたものである。
本実施の形態による空港面監視システムの動作について、図6に基づいて説明する。
実施の形態1では、一次レーダーとしてASDE10を使用して、そのスレッショルドレベルをMLAT20からの目標位置検出情報で変化させることにより、統合処理の性能を向上させていた。
これに対して、本実施の形態では、ASDE10に代えてカメラ30を使用して目標(航空機)を撮像する。
そして、カメラ30で撮像した目標の撮像信号であるカメラビデオ情報301をA/D変換部31でデジタルカメラビデオ信号302に変換し、変換されたデジタルカメラビデオ信号302を輝度差分レベル判定部33に入力するために一旦メモリ部32で記録し、メモリ部32は記録されていたデジタルカメラビデオ信号303を輝度差分レベル判定部33に出力する。
【0033】
輝度差分レベル判定部33では、カメラ30で撮像した背景画像と現在画像との輝度差分レベルから目標検出する「背景差分方式」もしくは前スキャン時データと今回のスキャン時データの輝度差分レベルから目標検出する「スキャン間相関方式」、もしくは、スキャン間方式と背景差分方式の両方を用いて、スレッショルドレベル値以下のデータはノイズと判断する。
なお、スキャン間相関とは、スキャン毎に検出筒される信号に対して相関を取ることである。
ノイズと判断されなかった輝度差分レベル判定後情報304は、クラスタリング処理部34で形をもった塊になり、クラスタ後カメラビデオ信号305となり、重心位置算出部35に入力される。
重心位置算出部35では、クラスタ化されたカメラビデオ信号の重心位置を算出し、カメラ画面情報から重心位置情報へと変換され、カメラ検出結果306として、カメラ追尾処理部36に入力される。
カメラ追尾処理部36では、前回処理された目標結果と比較して同一目標と判定され、カメラ航跡データ(即ち、カメラ追尾処理部36による目標の追尾処理結果)307となり統合処理部43に入力される。
【0034】
また、目標からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3個の受信局で受信し、その受信時刻差から目標の位置を測位して目標位置検出情報を出力するMLAT20、MLAT20からの目標位置検出情報に基づいて目標を追尾し、MLAT航跡データ202を出力するMLAT追尾処理部21とで構成されるMLAT追尾系統を設けている。
更に、MLAT追尾系統は、MLAT20が出力する目標位置検出情報(即ち、検出情報メモリ部22から出力する目標位置検出情報)に基づいて、輝度差分レベル判定部33の判定レベルを制御するためのスレッショルドMAP情報を作成するスレッショルドMAP作成処理部23を有している。
統合処理部43では、目標の位置、速度、ヘディング、モードSアドレスなどによって、相関処理を実施し、カメラ追尾処理結果(カメラ航跡データ307)とMLAT追尾処理結果(MLAT航跡データ202)の総合処理を行い、統合処理結果403を出力する。
なお、実施の形態1と同一符号は、同一のものを示し、説明を省略する。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態による空港面監視システムは、前述の実施の形態1におけるASDE追尾系統に代えて、空港面を撮像してカメラビデオ信号を生成して出力するカメラ30、カメラビデオ信号をデジタルカメラビデオ信号に変換するA/D変換部31、変換されたデジタルカメラビデオ信号を記憶するメモリ部32、メモリ部32から出力されるデジタルカメラビデオ信号の輝度差分レベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルカメラビデオ信号を出力する輝度差分レベル判定部33、輝度差分レベル判定部33から出力されるデジタルカメラビデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理部34、ラスタリング処理部34でクラスタ化されたデジタルカメラビデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出部35、重心位置算出部35で算出された重心位置検出信号に基づいてカメラ追尾処理データ(カメラ航跡データ)307を出力するカメラ追尾処理部36とで構成されるカメラ追尾系統を用い、輝度差分レベル判定部33は、MLAT追尾系統のスレッショルドMAP作成処理部23の出力205によりスレッショルドレべルが制御される。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、ASDEの代わりにカメラを使用し、MLATのスレッショルドMAPを輝度差分レベル判定に使用することによって、カメラの目標検出精度を高くなり、カメラによる誤目標検出を抑圧することが可能となり、統合処理(即ち、統合航跡の作成)の性能向上させることができる。
即ち、本実施の形態によれば、一次レーダーであるASDEの代わりにカメラを使用しても、空港面に存在する航空機等の目標の誤検出を減少させ、誤ターゲットを表示することを抑制し、機材を使用する管制官の負荷を軽減することができる信頼性の高い空港面監視システムを実現することができる。
【0037】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
前述の実施の形態1では、一次レーダーとしてASDEを使用したASDE追尾系統と二次レーダーとしてMLATを使用したMLAT追尾系統を設けていたが、本実施の形態では、実施の形態3で説明したカメラ追尾系統も更に備えたものである。
即ち、図1に示した実施の形態1による空港面監視システムの構成に、更に、図6に示した実施の形態3による空港面監視システムのカメラ追尾系統を設けたものである。
本実施の形態では、ASDE追尾系統およびMLAT追尾系統に加えて、更に、カメラ30を使用したカメラ追尾系統を設けている。
従って、実施の形態1で説明したように、ASDE10のレーダー目標検出処理において、MLAT20が検出する目標位置近傍のスレッショルドレベルを下げ、それ以外の領域のスレッショルドレベルを上げることにより、ASDE10の偽像が検出されることを減少させると共に、実施の形態3で説明したように、カメラ30の背景差分方式ならびにスキャン間差分方式でのスレッショルド値をMLAT追尾系統のスレッショルドMAP作成処理部23の出力に基づいて制御することにより、カメラ30による目標の誤検出を防ぐことも可能になり、統合処理(即ち、統合航跡の作成)の性能を更に向上することができる。
【0038】
前述の実施の形態1では、MLAT20からの目標位置検出情報に基づいて、スレッショルドMAP作成処理部23はスレッショルドMAPを作成し、ASDE追尾系統のビデオレベル判定部13に使用していたが、本実施の形態では図7に示すとおり、カメラ追尾系統も追加し、カメラ追尾系統の輝度差分レベル判定部33にもスレッショルドMAP作成処理部23が作成するスレッショルドMAPを使用することにより、ASDE追尾処理精度もカメラ追尾処理精度も向上する。
統合処理部44では、目標の位置、速度、ヘディング、モードSアドレスなどにより、
相関処理を実施し、ASDE追尾処理結果(即ち、ASDE航跡データ107)、カメラ追尾処理結果(即ち、カメラ航跡データ)307およびMLAT追尾処理結果(即ち、MLAT航跡データ)202の統合処理を行い、統合処理結果404を出力する。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態による空港面監視システムは、実施の形態2による空港面監視システムにおいて、更に、カメラ追尾系統を備え、統合処理部404は、ASDE航跡データ107、MLAT航跡データ202およびカメラ航跡データ307を統合処理して統合航跡を作成する。
このように、本実施の形態では、ASDEのビデオレベル判定部およびカメラの輝度差分レベル判定部に対して、MLATが検出する目標位置に基づくスレッショルドMAPを使用することによりカメラおよびASDEの両方の誤目標を抑圧することができるので、更に信頼性の高い空港面監視システムを実現できる。
【0040】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
前述の実施の形態1では、MLAT20による目標位置検出情報からスレッショルドレベルMAPを作成し、目標検出位置近傍以外のスレッショルドレベルを上げ、ASDEの偽像を検出しないようにしていたが、本実施の形態では、機体データベースを付加することにより、機体の大きさに合わせてスレッショルドMAPを変化(即ち、ASDEビデオレベル判定進呈用マップ情報を変化)させることが可能にとしたものである。
図9は、本実施の形態による空港面監視システムの動作を説明するための図である。
図8および図9を用いて、本実施の形態による空港面監視システムの特徴的な動作を説明する。
【0041】
前述の実施の形態1では、MLAT20による目標置検出情報からスレッショルドMAPを作成していた。
本実施の形態では、実施の形態による空港面監視システムにおいて、更に、機体データベース60を設けることにより、スレッショルドMAP作成処理部23は、検出情報メモリ部22でメモリされている目標位置検出情報204と機体データベース60にある機体の大きさ情報(例えば、機体の長さや幅等)の対応により、スレッショルドMAPを変化させることが可能となる。
図9(a)は、データベース60との照合によりMLAT検出情報のモードSアドレスから目標が小型機と判断された場合であり、図9(b)は、データベース60との照合によりMLAT検出情報のモードSアドレスから目標が大型機と判断された場合である。
【0042】
図9に示すように、目標が小型機と判断された場合に比べて目標が大型機と判断された場合、スレッショルドMAP作成処理部23はビデオレベル判定部13におけるスレッショルドレベルを下げる領域を大きくしている。
即ち、スレッショルドMAP作成処理部23からビデオレベル判定部13に出力されるASDEビデオレベル判定用マップ情報は、機体の大きさに応じたものに設定される。
このように、本実施の形態では、機体データベース60を付加することにより、機体の大きさに応じたスレッショルドMAP(ASDEビデオレベル判定用マップ情報)を設定することができ、ASDEの偽像が検出させることが減少し、ASDE航跡データとMLAT航跡データの統合処理の性能を向上させることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態による空港面監視システムは、実施の形態1による空港面監視システムにおいて、更に、機体の大きさ情報を含むデータベース60を備え、MLAT追尾系統のスレッショルドMAP作成処理部23は、MLAT20が出力する目標位置検出情報および目標である飛行機の機体の大きさ情報に基づいて、ビデオレベル判定部13のスレッショルドレベルを制御する。
これにより、機体の大きさに応じてビデオレベル判定部のスレッショルドレベルを下げる領域の大きさを制御できるので、ASDEの目標検出確度を更に高くすることができ、ASDE航跡データとMLAT航跡データの統合処理の性能向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、空港面に存在する航空機等の目標の誤検出を減少し、誤ターゲットの表示を抑制できる信頼性の高い空港面監視システムの実現に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1による空港面監視システムを使用しない場合の動作を説明するための図である。
【図3】実施の形態1による空港面監視システムを使用した場合の動作を説明するための図である。
【図4】実施の形態2による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態2による空港面監視システムの動作を説明するための図である。
【図6】実施の形態3による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態4による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態5による空港面監視システムの構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態5による空港面監視システムの動作を説明するための図である。
【図10】従来の空港面探知レーダーシステムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
10 ASDE 11 A/D変換部
12 メモリ部 13 ビデオレベル判定部
14 クラスタリング処理部 15 重心位置算出部
16 ASDE追尾処理部 20 MLAT
21 MLAT追尾処理部 22 検出情報メモリ部
23 スレッショルドMAP作成処理部 24 追尾情報メモリ部
30 カメラ 31 A/D変換部
32 メモリ部 33 輝度差分レベル判定部
34 クラスタリング処理部 35 重心位置算出部
36 カメラ追尾処理部
41、42、43、44、45 統合処理部 50 標示装置
101 レーダービデオ信号
102 デジタルレーダービデオ信号
103 メモリ部から出力されるデジタルレーダービデオ信号
104 ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号
105 クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号
106 重心位置算出信号
107 ASDE航跡データ
201 MLATから出力される目標の測位信号
202 MLAT航跡データ
203 MLATから出力する目標位置検出情報
204 検出情報メモリ部から出力する目標位置検出情報
205 ASDEビデオレベル判定用マップ情報
206 MLAT追尾情報
207 追尾情報メモリ部から出力する追尾情報
208 ASDEビデオレベル判定用マップ情報
301 カメラビデオ情報
302 デジタルカメラビデオ信号
303 デジタルカメラビデオ信号
304 輝度差分レベル判定後情報
305 クラスタ後カメラビデオ信号
306 カメラ検出結果
307 カメラ航跡データ
401〜405 統合処理部による統合処理結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空港面に電波を発射し、反射する電波を受信することによりレーダービデオ信号を生成して出力するASDE、上記ASDEから出力されるレーダービデオ信号をデジタルレーダービデオ信号に変換するA/D変換部、変換された上記デジタルレーダービデオ信号を記憶するメモリ部、上記メモリ部から出力されるデジタルレーダービデオ信号のレベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号を出力するビデオレベル判定部、上記ビデオレベル判定部から出力されるデジタルレーダービデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理部、上記ラスタリング処理部でクラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出部、上記重心位置算出部で算出された上記重心位置検出信号に基づいてASDE航跡データを出力するASDE追尾処理部とで構成されるASDE追尾系統と、
上記目標からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3個の受信局で受信し、その受信時刻差から目標の位置を測位して目標位置検出情報を出力するMLAT、上記MLATからの目標位置検出情報に基づいて上記目標を追尾し、MLAT航跡データを出力するMLAT追尾処理部とで構成されるMLAT追尾系統と、
上記ASDE航跡データと上記MLAT航跡データを相関処理し、同一目標として統合処理して統合航跡を作成する統合処理部と、
上記統合処理部が作成する上記統合航跡を表示する表示装置を備えた空港面監視システムにおいて、
更に、上記MLAT追尾系統は、上記MLATが出力する上記目標位置検出情報に基づいて、上記目標近傍の領域に対しては上記ビデオレベル判定部のスレッショルドレベルを下げ、上記目標近傍以外の領域に対しては上記ビデオレベル判定部のスレッショルドレベルを上げるASDEビデオレベル判定用マップ情報を上記ビデオレベル判定部に出力するスレッショルドMAP作成処理部を有したことを特徴とする空港面監視システム。
【請求項2】
上記MLAT追尾系統の上記スレッショルドMAP作成処理部は、上記MLATが出力する目標位置検出情報に代えて、上記MLAT追尾処理部が検出する目標の位置、速度、ヘディング等の追尾情報に基づいて、ASDEビデオレベル判定用マップ情報を上記ビデオレベル判定部に出力することを特徴とする請求項1に記載の空港面監視システム。
【請求項3】
上記ASDE追尾系統に代えて、
空港面を撮像してカメラビデオ信号を生成して出力するカメラ、上記カメラビデオ信号をデジタルカメラビデオ信号に変換するA/D変換部、変換された上記デジタルカメラビデオ信号を記憶するメモリ部、上記メモリ部から出力されるデジタルカメラビデオ信号の輝度差分レベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルカメラビデオ信号を出力する輝度差分レベル判定部、上記輝度差分レベル判定部から出力されるデジタルカメラビデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理部、上記ラスタリング処理部でクラスタ化されたデジタルカメラビデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出部、上記重心位置算出部で算出された上記重心位置検出信号に基づいてカメラ航跡データを出力するカメラ追尾処理部とで構成されるカメラ追尾系統を用い、
上記輝度差分レベル判定部は、上記MLAT追尾系統の上記スレッショルドMAP作成処理部の出力によりスレッショルドレべルが制御されることを特徴とする請求項1に記載の空港面監視システム。
【請求項4】
更に、上記カメラ追尾系統を備え、上記統合処理部は、上記ASDE航跡データ、上記MLAT航跡データおよび上記カメラ航跡データを統合処理して統合航跡を作成することを特徴とする請求項2に記載の空港面監視システム。
【請求項5】
更に、機体の大きさ情報を含むデータベースを備え、上記MLAT追尾系統の上記スレッショルドMAP作成処理部は、上記MLATが出力する上記目標位置検出情報および上記機体の大きさ情報に基づいて、上記ビデオレベル判定部のスレッショルドレベルを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の空港面監視システム。
【請求項6】
ASDEによって空港面に電波を発射し、反射する電波を受信することによりレーダービデオ信号を生成して出力するステップと、
上記レーダービデオ信号をデジタルレーダービデオ信号に変換するステップと、
変換された上記デジタルレーダービデオ信号を記憶するステップと、
記憶されたデジタルレーダービデオ信号のレベルを判定し、判定されたレベルが閾値より小さいものはノイズとして除去し、ノイズが除去されたデジタルレーダービデオ信号を出力するビデオレベル判定ステップと、
上記ビデオレベル判定ステップにおいて出力されるデジタルレーダービデオ信号をクラスタとして処理するクラスタリング処理ステップと、
クラスタ化されたデジタルレーダービデオ信号からその重心位置を算出し、重心位置算出信号を出力する重心位置算出ステップと、
算出された上記重心位置検出信号に基づいてASDE航跡データを出力するASDE追尾処理ステップと、
MLATによって目標からのモードSトランスポンダ信号を少なくとも3個の受信局で受信し、その受信時刻差から目標の位置を測位して目標位置検出情報を出力するステップと、
上記目標位置検出情報に基づいて目標を追尾し、MLAT航跡データを出力するMLAT追尾処理ステップと、
上記ASDE航跡データと上記MLAT航跡データMLAT航跡データを相関処理し、同一目標として統合処理して統合航跡を作成する統合処理ステップと、
上記統合処理部ステップにおいて作成される統合航跡を表示するステップを有した空港面監視方法において、
更に、上記目標位置検出情報に基づいて、目標近傍の領域に対しては上記ビデオレベル判定のためのスレッショルドレベルを下げ、上記目標近傍以外の領域に対しては上記ビデオレベル判定のためのスレッショルドレベルを上げるステップを有していることを特徴とする空港面監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−215918(P2008−215918A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51186(P2007−51186)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】