説明

空間多重伝送用送信方法および送信装置

【課題】 少ない演算量で送信重みを決定できる、空間多重伝送用送信装置を提供する。
【解決手段】 N個のアンテナを用い、L個の空間多重送信を行う空間多重伝送用送信装置において、伝達係数行列推定部170は受信信号から伝達係数行列を推定する。送信重み決定部180は、伝達係数行列の相関行列に伝搬環境と相関のある推定送信重み行列を乗算し、得られる行列の列ベクトルから直交ベクトルを求め、これを送信重みとしてマルチビーム形成部131〜13Lに出力する。シリアル−パラレル変換部110は、送信信号にシリアル−パラレル変換を行い、送信部121〜12Lへ出力する。マルチビーム形成部131〜13Lは、送信部121〜12Lからの入力信号をN個の信号に分割し、送信重み決定部180により決定された重み付けを行った後、信号合成部141〜14Nの対応するポートに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のアンテナ素子を用い、空間多重による送信を行う空間多重伝送用送信方法および送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間多重伝送用送信装置は、複数のアンテナ素子から複数の信号を送信することで、周波数帯域を増大することなしに高速伝送を実現する送信装置である。
【0003】
図7に伝搬環境に最適となるように送信指向性を制御し、空間多重を行い、伝送速度を向上させる理想的な空間多重伝送用送信装置を示す。
【0004】
符号910はシリアル−パラレル変換部、921〜92Lは送信部、931〜93Lはマルチビーム形成部、941〜94Nは信号合成部、951〜95Nは信号切り替え部、961〜96Nはアンテナ素子、970は伝達係数行列推定部、980は特異値分解演算部である。
【0005】
アンテナ素子961〜96Nで受信された信号は信号切り替え部951〜95Nにより切り替えられ、伝達係数行列推定部970に出力される。伝達係数行列推定部970は受信したプリアンブル信号から伝達係数行列を算出し、特異値分解演算部980に出力する。特異値分解演算部980は伝達係数行列に特異値分解を行い、マルチビーム形成部931〜93Lに送信重みを出力する。
【0006】
送信信号系列は、シリアル−パラレル変換部910により、空間分割多重数Lに振り分けられ、それぞれ送信部921〜92Lにより変調され、マルチビーム形成部931〜93Lに出力される。マルチビーム形成部931〜93Lに入力された各信号系列は、伝達係数行列推定部970および特異値分解演算部980で決定された送信重みをかけられた後、信号合成部941〜94Nの対応するポートに出力される。信号合成部941〜94Nは入力された信号を合成し、その出力信号は、前記信号切り替え部951〜95Nを介し、アンテナ素子961〜96Nから送信される。
【0007】
ここで特異値分解演算部980ではマルチビーム形成部931〜93Lで送信信号にかける送信重みを以下のようにして決定する。
【0008】
空間多重伝送用送信装置のアンテナ素子数をM、通信相手である受信装置のアンテナ素子数をM、MをMとMのうち小さい方の数字とする。送信装置では、送信を行う伝搬環境の伝達係数行列Hの推定を行う。伝達係数行列Hは以下の(1)式で表すことができる。
【0009】
【数1】

【0010】
(1)式において、伝達係数行列Hの成分Hijはj番目の送信アンテナからi番目の受信アンテナの間の伝達係数を表す。伝達係数行列Hは、例えば以下のように推定される。受信装置から送信装置に、送信装置と受信装置で共に既知であるプリアンブル信号S(M×M行列)の送信を行い、送信装置における受信信号X(M×M)にプリアンブル信号の逆行列S−1(M×M行列)を乗算することで得られる行列の転置行列として得ることができる。
【0011】
伝達係数行列Hは、以下の(2)式に示す特異値分解により、ユニタリ行列V(M×M行列)、U(M×M行列)及び固有値√λを対角要素とする対角行列D(M×M対角行列)に分けることができる。
【0012】
【数2】

【0013】
(2)式において、Vijは送信装置においてj番目の送信ビームに対するi番目のアンテナ素子に適用する送信重みであり、Uijは受信装置のj番目の送信ビームに対するi番目のアンテナの受信信号に適用する受信重みの複素共役となっている。ここで、固有値λは各パスの伝送容量の大きさを表す。上付きの添え字Hは複素共役転置行列を表す。
【0014】
このようにして得られたVから、対応する固有値の大きいものから通信に用いる空間多重数Lだけ列ベクトルを選択し得られる上り送信ウェイトWを送信装置の送信重みとし、Uから通信に使用するL個の行ベクトルを選択し得られる上り受信ウェイトW′を受信装置の受信重みとすることで、各信号で特異値λに対応する最大の伝送容量を実現することができる。送信ウェイトWを以下の(3)式に示し、受信ウェイトW′を(4)式に示す。
【0015】
【数3】

【0016】
【数4】

【0017】
L=Mとした場合では、送信装置で送信信号S(M×1ベクトル)に送信重みVを用いて送信することで、受信信号X(M×1ベクトル)は以下の(5)式のように表せる。
【0018】
【数5】

【0019】
よって送信信号Sは受信信号Xに例えばUの複素共役転置行列を乗算することで、それぞれ対応する固有値の平方根を乗算された送信信号Sを得ることができ、各信号は固有値λだけ熱雑音Nに対する比(SN比)が高くなり、伝送容量が最大となる通信を実現できる。
【非特許文献1】(Miyashita,K.;Nishimura,T.;Ohgane,T.;Ogawa,Y.;Takatori,Y.;KeizoCho;”High data-rate transmission with eigenbeam-space division multiplexing(E-SDM)in a MIMO channel,‘’Vehicular Technology Conference,2002.Proceedings.VTC 2002-Fall.2002 IEEE 56th,Volume:3,24-28 Sept.2002 Pages:1302_1306 vol.3).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記の手段は最大の伝送容量を得ることを可能とするが、特異値分解の演算量が大きいことが問題となる。本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、少ない演算量で高い伝送速度を持つ通信を実現できる、空間多重伝送用送信方法および空間多重伝送用送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した問題を解決するために、本発明の空間多重伝送用送信方法は、複数のアンテナ素子を備え、伝搬環境情報を用いて送信重みを決定し、送信信号に送信重み付けを行ったうえで同一時間、同一周波数で複数の信号系列を送信する方法であって、送信局または受信局において、受信信号から伝達係数行列を推定し、それぞれ伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、前記相関行列にある演算が施された行列を乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを演算し、前記演算された直交ベクトルを送信局における送信重みとすることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0022】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、前記相関行列にある演算が施された行列を乗算した際に得られる行列の列ベクトルのノルムの値から、各ストリームの伝送品質を推定し、変調方式および電力配分を決定することを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0023】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、前記ある演算が施された行列は、伝搬環境に理論的に最適な送信重みと相関がある推定送信重み行列であることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0024】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、前記ある演算が施された行列は、過去の送信時に用いた送信重み行列であることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0025】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、直交波周波数分割多重を用い、複数の周波数帯でそれぞれ異なる信号系列を送信する場合に、受信信号から、それぞれの周波数帯で伝達係数行列を推定し、それぞれ伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、任意の周波数帯で相関行列の固有ベクトルを演算し、得られた送信重み行列を推定送信重み行列として近隣の周波数帯の相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルをその周波数帯の送信重みとすることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0026】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、受信信号から伝達係数行列を推定し、伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、伝達係数行列の複素共役転置行列、もしくは逆行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを送信重みとすることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0027】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、受信信号から伝達係数行列を推定し、伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、伝達係数行列の複素共役転置行列、または逆行列の列ベクトルに直交化法を用いることで得られる行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを送信重みとすることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0028】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、受信信号から伝達係数行列を推定し、伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、相関行列または、その逆行列の列ベクトルに直交化法を用いることで得られる行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを送信重みとすることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0029】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、相関行列に乗算する、伝達係数行列の複素共役転置行列、逆行列、相関行列、相関行列の逆行列のいずれかの行列の列ベクトルに直交化法を用いる際に、列ベクトルのノルムの大きいものから順に直交化することを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0030】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法は、得られた送信重みからなる送信重み行列を再び相関行列に乗算し、得られた行列の列ベクトルに対し直交化法を用いることを任意の回数行い、得られた直交ベクトルを送信重みとすることを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0031】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置は、N個のアンテナ素子を用い、L個の空間多重による送信を行う空間多重伝送用送信装置において、前記各アンテナ素子に接続され、受信信号と送信信号を切り替える信号切り替え部と、前記信号切り替え部に接続され、受信時に信号切り替え部から出力される信号を入力信号とし、伝達係数行列の推定を行う伝達係数行列推定部と、前記伝達係数行列推定部において推定された伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、行列乗算演算部に出力する相関行列演算部と、相関行列の固有ベクトル行列と相関がある行列を記憶し、行列乗算演算部に出力する推定送信重み行列記憶部と、相関行列演算部から入力される相関行列と推定送信重み行列記憶部から入力される推定重み行列を乗算する行列乗算演算部と、前記行列乗算演算部において演算された行列の各列ベクトルに対し、直交化演算を行い、得られた直交ベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部に出力する直交化演算部と、前記相関行列演算部、推定送信重み行列記憶部、行列乗算演算部、直交化演算部からなる送信重み決定部と、送信する入力信号にシリアル−パラレル変換を行い、空間多重数Lに振り分けるシリアル−パラレル変換部と、前記シリアル−パラレル変換部の出力信号を入力信号とし、送信信号系列をマルチビーム形成部に出力する送信部と、前記送信部から入力された信号を入力信号とし、N個の信号に分割し、前記送信重み決定部により決定された重み付けを行った後、N個の信号合成部の対応するポートに出力を行うマルチビーム形成部と、前記マルチビーム形成部のうち、対応するL個のマルチビーム形成部からL個のポートに出力された信号を重ね合わせ、前記信号切り替え部の他方のポートに出力を行う信号合成部と、を備えたことを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0032】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置は、前記送信重み決定部において、推定送信重み行列記憶部は、過去に用いた送信重み行列または直交波周波数分割多重における近隣の周波数帯での送信重み行列を記憶することを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0033】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置は、前記送信重み決定部は、前記伝達係数行列推定部において推定された伝達係数行列を入力信号とし、複素共役転置行列、逆行列、相関行列、相関行列の逆行列のうちいずれかを求める演算を行い、第1の直交化演算部に出力する行列演算部と、前記行列演算部から入力される行列に直交化演算を行い、行列乗算演算部に出力する第1の直交化演算部と、前記伝達係数行列推定部において推定された伝達係数行列を入力信号とし、相関行列を演算する相関行列演算部と、相関行列演算部から入力される相関行列と、第1の直交化演算部から入力される行列を乗算し、第2の直交化演算部に出力を行う行列乗算演算部と、前記行列乗算演算部から入力される行列を入力信号とし、行列の列ベクトルに対し直交化法を用いて直交ベクルを演算し、得られた直交ベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部に出力する第2の直交化演算部と、を備えたことを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0034】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置は、前記送信重み決定部は、演算された送信重み行列を、さらに相関行列と乗算し、得られる行列に直交化演算を行う動作を任意の回数繰り返す手段を有し、得られた直交ベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部に出力することを特徴とする。
これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の空間多重伝送用送信方法においては、受信信号から伝達係数行列を推定し、伝達係数行列から相関行列を演算し、この相関行列にある演算が施された行列を乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを送信局における送信重みとするようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0036】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、相関行列にある演算が施された行列を乗算した際に得られる行列の列ベクトルのノルムの値から、各ストリームの伝送品質を推定し、変調方式および電力配分を決定するようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0037】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、ある演算が施された行列は、伝搬環境に理論的に最適な送信重みと相関がある推定送信重み行列であるようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0038】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、ある演算が施された行列は、過去の送信時に用いた送信重み行列であるようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0039】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、直交波周波数分割多重を用い、複数の周波数帯でそれぞれ異なる信号系列を送信する場合に、それぞれの周波数の伝達係数行列の相関行列を演算し、また、任意の周波数帯で相関行列の固有ベクトルを演算し、得られた送信重み行列を推定送信重み行列として近隣の周波数帯の相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いて得られる直交ベクトルをその周波数帯の送信重みとするようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0040】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、伝達係数行列の相関行列を演算し、伝達係数行列の複素共役転置行列または逆行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いて得られる直交ベクトルを送信重みとするようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0041】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、伝達係数行列の相関行列を演算し、伝達係数行列の複素共役転置行列または逆行列の列ベクトルに直交化法を用いて得られる行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いて得られる直交ベクトルを送信重みとするようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0042】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、伝達係数行列の相関行列を演算し、相関行列または相関行列の逆行列の列ベクトルに直交化法を用いて得られる行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いて得られる直交ベクトルを送信重みとするようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0043】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、相関行列に乗算する、伝達係数行列の複素共役転置行列、逆行列、相関行列、相関行列の逆行列のいずれかの行列の列ベクトルに直交化法を用いる際に、列ベクトルのノルムの大きいものから順に直交化するようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0044】
また、本発明の空間多重伝送用送信方法においては、演算で得られた送信重みからなる送信重み行列に再び相関行列を乗算し、得られた行列の列ベクトルに対し直交化法を用いて直交ベクトルを得る動作を任意の回数繰り返し、得られた直交ベクトルを送信重みとするようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0045】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置においては、送信重み決定部は、伝達係数行列の相関行列を演算し、この相関行列と推定重み行列を乗算し、得られた行列の各列ベクトルに対し直交化演算を行い、得られた直交ベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部に出力するようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0046】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置においては、推定送信重み行列記憶部は、推定重み行列として、過去に用いた送信重み行列または直交波周波数分割多重における近隣の周波数帯での送信重み行列を記憶するようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0047】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置においては、送信重み決定部は、伝達係数行列の複素共役転置行列、逆行列、相関行列、相関行列の逆行列のうちいずれかを求めて直交化演算を行い、この直交化演算により得られる行列に相関行列を乗算し、この乗算結果の行列の列ベクトルに対して直交化を行ない送信重みを決定するようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【0048】
また、本発明の空間多重伝送用送信装置においては、送信重み決定部は、演算された送信重み行列をさらに相関行列と乗算し、得られた行列に直交化演算を行う動作を任意の回数繰り返すようにしたので、これにより、送信重みを決定するために必要な演算量を削減し、高い伝送速度を持つ通信を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図1を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の空間多重伝送用送信装置の構成例を示すブロック図であり、伝搬環境に最適となる送信指向性制御により高い伝送品質を得る通信を行う場合に、送信重みをより簡易に決定することを可能とする構成を示している。
【0050】
図1において、符号110はシリアル−パラレル変換部、121〜121は送信部、131〜13Lはマルチビーム形成部、141〜14Nは信号合成部、151〜15Nは信号切り替え部、161〜16Nはアンテナ素子、170は伝達係数行列推定部、180は送信重み決定部、181は相関行列演算部、182は行列乗算演算部、183は直交化演算部、184は推定送信重み行列記憶部である。
【0051】
アンテナ素子161〜16Nで受信された信号は信号切り替え部151〜15Nにより切り替えられ、伝達係数行列推定部170に出力される。伝達係数行列推定部170は受信したプリアンブル信号から伝達係数行列を算出し、送信重み決定部180の相関行列演算部181に出力する。相関行列演算部181は伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を求める。推定送信重み行列記憶部184には、送信重みと相関のある推定送信重み行列を記憶しておき、行列乗算演算部182では、相関行列演算部181から入力される相関行列と、推定送信重み行列記憶部184から入力される推定送信重み行列とを乗算し、得られる行列を直交化演算部183に出力する。直交化演算部183は送信重みを決定し、マルチビーム形成部131〜13Lに送信重みを出力する。
【0052】
送信信号系列は、シリアル−パラレル変換部110により、空間分割多重数Lに振り分けられ、それぞれ送信部121〜12Lにより変調され、マルチビーム形成部131〜13Lに出力される。マルチビーム形成部131〜13Lに入力された各信号系列は、送信重み決定部180で決定された送信重みをアナログ、もしくはデジタル量で乗算された後、信号合成部141〜14Nの対応するポートに出力される。信号合成部141〜14Nは入力された信号を合成し、その出力信号は、信号切り替え部151〜15Nを介し、アンテナ素子161〜16Nから送信される。
【0053】
簡単のため受信装置のアンテナ素子数をM、空間多重伝送用送信装置のアンテナ素子数をN(N≧M)、とした場合の通信を考える。
【0054】
空間多重伝送用送信装置は、伝達係数行列Hを既知信号の受信や、フィードバック情報の活用等により推定を行う。相関行列演算部181では、伝達係数行列の複素共役転置行列Hと伝達係数行列Hを乗算し、相関行列Rを算出する。この相関行列Rは以下の(6)式で表される。
【0055】
【数6】

【0056】
行列乗算演算部182では、この相関行列Rと、推定送信重み行列記憶部184から出力される理論的に最適な送信重み行列Vと相関を持つ推定重み行列V′を乗算する。その結果得られる行列R′は、以下の(7)式で表される。
【0057】
【数7】

【0058】
(7)式に示す行列R′においては、VとV′が相関を持つために、α>βとなっている。よってここで得られる行列R′はVと高い相関を持つ。
【0059】
直交化演算部183では、このR′の各列ベクトルr′〜r′に対し、直交化法を用いることでより理想的な送信重みに近づける。ここで選択した列ベクトルをr′、r′、・・・、r′とおき、ベクトルaとbの内積を(a、b)と表すものとする。w=r′として、(8)式に示すグラムシュミットの直交化法を行うと、直交ベクトルw、w、・・・、wを求めることができる。
【0060】
【数8】

【0061】
これらの直交ベクトルw、w、・・・、wは、(3)式で与えられる理想的な送信重みと相関が高い。よって、これらのベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部131〜13Lに出力することで、特異値分解のような演算付加の大きい処理を行うことなく、高い伝送容量を実現することができる。
【0062】
最適な送信重み行列Vと相関を持つ推定重み行列V′としては、過去に用いた送信重みや、伝達係数行列の複素共役転置行列や、伝達係数行列の逆行列や、直交波周波数分割多重を用いる場合には、近隣の周波数帯で求めた送信重み等を用いることができる。
【0063】
次に、送信重み決定部180の他の構成例について説明する。図2は本発明の空間多重伝送用送信装置の送信重み決定部の他の構成例を示すブロック図である。図2において、符号281は相関行列演算部、符号282は行列乗算演算部、符号283は直交化演算部(第2の直交化演算部)、符号284は行列演算部、符号285は直交化演算部(第1の直交化演算部)である。
【0064】
伝達係数行列推定部170によって推定された伝達係数行列を入力信号とし、相関行列演算部281と行列演算部284とはそれぞれ伝達係数行列の相関行列、伝達係数行列の複素共役転置行列を演算する。直交化演算部285は、行列演算部284から出力された行列の各列ベクトルに対し、直交化法を用いた行列を行列乗算演算部282に出力し、行列乗算演算部282では、相関行列演算部281により演算された相関行列と、直交化演算部285により入力された行列を乗算し、得られた行列を直交化演算部283に出力し、直交化演算部283においては入力された行列の各列ベクトルに対し直交化を行い、マルチビーム形成部に送信重みとして出力する。
【0065】
行列演算部284において得られる伝達係数行列Hの複素共役転置行列Hは、以下の(9)式のように表すことができる。
【0066】
【数9】

【0067】
(9)式に示す複素共役転置行列Hの固有値√λには、√λ>√λ>‥・>√λの関係が成り立っており、複素共役転置行列Hの列ベクトルは理想的な送信重み行列Vの最大固有値に対応する第一固有ベクトルと相関を持つことが期待できる。よってこの行列の各列ベクトルに直交化法を行うことで、理想的な送信重み行列Vと相関の高い行列を得ることができる。このような行列を行列乗算演算部282において相関行列と乗算することで、(7)式と同様の効果を期待できる。よって特異値分解を行うことなく、高い伝送容量を達成する送信重みによる通信を実現できる。
【0068】
また、行列演算部284においては、演算する行列として伝達係数行列の逆行列、相関行列、相関行列の逆行列のいずれの行列を用いてもその効果が期待できる。伝達係数行列の逆行列H−1を以下の(10)式に示し、相相関行列HHを(11)式に示し、相関行列の逆行列(HH)−1を(12)式に示す。
【0069】
【数10】

【0070】
【数11】

【0071】
【数12】

【0072】
(10)式、(11)式、(12)式において、固有値√λには、√λ>√λ>‥・>√λ関係が成り立っており、伝達係数行列の逆行列、および相関行列の逆行列に関しては、列ベクトルが理想的な送信重み行列Vの最も小さい固有値に対応する固有ベクトルと相関が高くなり、相関行列の列ベクトルは理想的な送信重み行列Vの第一固有ベクトルと相関が高くなることが期待できる。よってこれらのうちいずれかの行列の各列ベクトルに直交化法を行うことで、理想的な送信重み行列Vと相関の高い行列を得ることができる。このような行列を行列乗算演算部282において相関行列と乗算することで、(7)式と同様の効果を期待できる。よって特異値分解を行うことなく、高い伝送容量を達成する送信重みによる通信を実現できる。
【0073】
また、伝達係数行列の複素共役転置行列、逆行列、相関行列、相関行列の逆行列、および相関行列に対し理想的な送信重み行列と相関が高いと思われる行列を乗算した行列のいずれかに、直交化法を用いる際に、列ベクトルのノルムの大きいものから適用することで、より得られる結果を理想的な送信重み行列に近づけることができる。
【0074】
なお、図2の直交化演算部285と直交化演算部283は共通のものを用いることも可能であり、行列演算部284は、相関行列の演算を行う場合には、相関行列演算部281で共通してこの機能を担うことができる。
【0075】
図1の直交化演算部183は、その出力結果を行列乗算演算部182に出力することができる。また、図2の直交化演算部283は、その出力結果を行列乗算演算部282に出力することができる。行列乗算演算部182もしくは282において再び相関行列と乗算することで、さらに理想的な送信重みに近い行列が直交化演算部183もしくは283に出力され、直交化されることにより、さらに高い伝送容量を実現する送信重み行列をマルチビーム形成部に出力することができる。また、さらにここで得られた行列を再び行列乗算演算部182もしくは282に出力し、同様の処理を複数回繰り返すことでより伝送容量を高めることができる。
【0076】
行列乗算演算部182もしくは282において、相関行列に理想的な送信重み行列と相関を持つ行列を乗算した際に得られる行列R′は(7)式のようになるが、この列ベクトルのノルムは、固有値の2乗であるλ〜λと近い値をとる。送信重み行列Vによる通信は先に述ベたように固有値に対応する信号対雑音比を得ることができる。よってある送信ウェイトを用いる通信で適用する変調方式や電力配分の値について、この行列Rの列ベクトルのノルムの値を用いることができ、例えば、256QAM、64QAM、16QAM、QPSK、BPSKなどの変調方式から適切な変調方式を選択することができる。
【0077】
また、特異値分解において、ベき乗法やQR法のような繰りかえし演算により固有ベクトルを求める場合に、相関行列に乗算する予め求める推定送信重み行列を、初期値として用い、収束までの繰り返し回数を早めることで、演算量を削減することもできる。
【0078】
次に、本発明の空間多重伝送用送信装置による効果を具体的な例により説明する。空間多重伝送用送信装置において送信素子数を4、受信素子数を4とした場合に、伝達係数行列の逆行列の列ベクトルに、ノルムの大きいものから直交化演算を行ったものを、相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトルに再び直交化演算を行ったものを送信重みとした場合の伝送容量を、送信重みを適用しないで無指向性での送信を行った従来方法と、(3)式で与えられる理想的な送信重みを適用した理想値と、それぞれ比較を行う。
【0079】
本発明による指向性制御法の効果を検証するために用いる伝搬環境を示す。図3に示すように送信局と受信局それぞれの周囲にラプラシアン分布で角度拡がり25°のクラスタをNo.1からNo.6(#1〜#6)まで6つずつ設置した。到来波は90波とし、15波ずつNo.1からNo.6までのグループに分けた。
【0080】
到来波の素波電力と到来時間を表すグラフを図4に示す。それぞれのグループの到来波は、基地局および端末局の周りに設置した同番号のクラスタを通過する確率を50%とし、そのほかの番号のクラスタを通過する確率をそれぞれ10%ずつとなっている。
【0081】
各到来波グループに適用した伝搬パラメータを図6に示す。到来波全体での遅延スプレッドは61nsecとなる。搬送波周波数を5.2GHz、各サブキャリアの周波数帯域を0.31MHz、サブキャリア数を50とした。それぞれのビームに等電力を割り当てるものとし、復号にはMMSEアルゴリズムを用いた。
【0082】
上記のような伝搬環境モデルを用い、クラスタおよびそれを構成する散乱体、それぞれの到来波の位相をランダムに与え、100回試行し、全サブキャリア数(50)×試行回数(100)のデータを用い、その伝送容量の累積確率を計算した。その結果を図5に示す。図5によれば、累積確率の50%値において、理想値からの劣化量は0.4%低い値程度であることが示された。
【0083】
以上説明したように、本発明の空間多重伝送用送信装置においては、演算負荷の大きい特異値分解の演算を行わずに送信重みを決定することを可能にすることで、演算量を削減し、且つ高い伝送品質を得ることができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の空間多重伝送用送信装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、特異値分解による空間分割多重を用いた通信において、簡易な演算で送信重みを決定することを可能とし、高い伝送速度をもつ通信を実現できるので、本発明は空間多重伝送用送信方法および空間多重伝送用送信装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の空間多重伝送用送信装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】空間多重伝送用送信装置の送信重み決定部の他の構成例を示すブロック図である。
【図3】計算機シミュレーションに用いた伝搬環境を示す図である。
【図4】計算機シミュレーションに用いた到来素波の電力分布を示す図である。
【図5】本発明の効果を示す伝送容量の累積確率を示す図である。
【図6】到来波グループの伝搬パラメータを示す図である。
【図7】理想的な空間多重伝送用送信装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0087】
110、910 シリアル−パラレル変換部
121〜12L、921〜92L 送信部
131〜13L、931〜93L マルチビーム形成部
141〜14N、941〜94N 信号合成部
151〜15N、951〜95N 信号切り替え部
161〜16N、961〜96N アンテナ素子
170、970 伝達係数行列推定部
181、281 相関行列演算部
182、282 行列乗算演算部
183、283、285 直交化演算部
184 推定送信重み行列記憶部
284 行列演算部
980 特異値分解演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子を備え、伝搬環境情報を用いて送信重みを決定し、送信信号に送信重み付けを行ったうえで同一時間、同一周波数で複数の信号系列を送信する方法であって、
送信局または受信局において、
受信信号から伝達係数行列を推定し、それぞれ伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、
前記相関行列にある演算が施された行列を乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを演算し、
前記演算された直交ベクトルを送信局における送信重みとすること
を特徴とする空間多重伝送用送信方法。
【請求項2】
前記相関行列にある演算が施された行列を乗算した際に得られる行列の列ベクトルのノルムの値から、各ストリームの伝送品質を推定し、変調方式および電力配分を決定すること
を特徴とする請求項1に記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項3】
前記ある演算が施された行列は、伝搬環境に理論的に最適な送信重みと相関がある推定送信重み行列であること
を特徴とする請求項1または2記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項4】
前記ある演算が施された行列は、過去の送信時に用いた送信重み行列であること
を特徴とする請求項1または2記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項5】
直交波周波数分割多重を用い、複数の周波数帯でそれぞれ異なる信号系列を送信する場合に、
受信信号から、それぞれの周波数帯で伝達係数行列を推定し、それぞれ伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、
任意の周波数帯で相関行列の固有ベクトルを演算し、得られた送信重み行列を推定送信重み行列として近隣の周波数帯の相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルをその周波数帯の送信重みとすること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項6】
受信信号から伝達係数行列を推定し、伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、
伝達係数行列の複素共役転置行列、もしくは逆行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを送信重みとすること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項7】
受信信号から伝達係数行列を推定し、伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、
伝達係数行列の複素共役転置行列、または逆行列の列ベクトルに直交化法を用いることで得られる行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを送信重みとすること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項8】
受信信号から伝達係数行列を推定し、伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、
相関行列または、その逆行列の列ベクトルに直交化法を用いることで得られる行列を相関行列に乗算し、得られる行列の列ベクトル成分に対し直交化法を用いることで得られる直交ベクトルを送信重みとすること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項9】
相関行列に乗算する、伝達係数行列の複素共役転置行列、逆行列、相関行列、相関行列の逆行列のいずれかの行列の列ベクトルに直交化法を用いる際に、列ベクトルのノルムの大きいものから順に直交化すること
を特徴とする請求項7または請求項8に記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項10】
得られた送信重みからなる送信重み行列を再び相関行列に乗算し、
得られた行列の列ベクトルに対し直交化法を用いることを任意の回数行い、得られた直交ベクトルを送信重みとすること
を特徴とする請求項1に記載の空間多重伝送用送信方法。
【請求項11】
N個のアンテナ素子を用い、L個の空間多重による送信を行う空間多重伝送用送信装置において、
前記各アンテナ素子に接続され、受信信号と送信信号を切り替える信号切り替え部と、
前記信号切り替え部に接続され、受信時に信号切り替え部から出力される信号を入力信号とし、伝達係数行列の推定を行う伝達係数行列推定部と、
前記伝達係数行列推定部において推定された伝達係数行列の複素共役転置行列と伝達係数行列の積である相関行列を演算し、行列乗算演算部に出力する相関行列演算部と、
相関行列の固有ベクトル行列と相関がある行列を記憶し、行列乗算演算部に出力する推定送信重み行列記憶部と、
相関行列演算部から入力される相関行列と推定送信重み行列記憶部から入力される推定重み行列を乗算する行列乗算演算部と、
前記行列乗算演算部において演算された行列の各列ベクトルに対し、直交化演算を行い、得られた直交ベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部に出力する直交化演算部と、
前記相関行列演算部、推定送信重み行列記憶部、行列乗算演算部、直交化演算部からなる送信重み決定部と、
送信する入力信号にシリアル−パラレル変換を行い、空間多重数Lに振り分けるシリアル−パラレル変換部と、
前記シリアル−パラレル変換部の出力信号を入力信号とし、送信信号系列をマルチビーム形成部に出力する送信部と、
前記送信部から入力された信号を入力信号とし、N個の信号に分割し、前記送信重み決定部により決定された重み付けを行った後、N個の信号合成部の対応するポートに出力を行うマルチビーム形成部と、
前記マルチビーム形成部のうち、対応するL個のマルチビーム形成部からL個のポートに出力された信号を重ね合わせ、前記信号切り替え部の他方のポートに出力を行う信号合成部と、
を備えたことを特徴とする空間多重伝送用送信装置。
【請求項12】
前記送信重み決定部において、
推定送信重み行列記憶部は、過去に用いた送信重み行列または直交波周波数分割多重における近隣の周波数帯での送信重み行列を記憶すること
を特徴とする請求項11に記載の空間多重伝送用送信装置。
【請求項13】
前記送信重み決定部は、
前記伝達係数行列推定部において推定された伝達係数行列を入力信号とし、複素共役転置行列、逆行列、相関行列、相関行列の逆行列のうちいずれかを求める演算を行い、第1の直交化演算部に出力する行列演算部と、
前記行列演算部から入力される行列に直交化演算を行い、行列乗算演算部に出力する第1の直交化演算部と、
前記伝達係数行列推定部において推定された伝達係数行列を入力信号とし、相関行列を演算する相関行列演算部と、
相関行列演算部から入力される相関行列と、第1の直交化演算部から入力される行列を乗算し、第2の直交化演算部に出力を行う行列乗算演算部と、
前記行列乗算演算部から入力される行列を入力信号とし、行列の列ベクトルに対し直交化法を用いて直交ベクルを演算し、得られた直交ベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部に出力する第2の直交化演算部と、
を備えたことを特徴とする請求項11に記載の空間多重伝送用送信装置。
【請求項14】
前記送信重み決定部は、
演算された送信重み行列を、さらに相関行列と乗算し、得られる行列に直交化演算を行う動作を任意の回数繰り返す手段を有し、得られた直交ベクトルを送信重みとしてマルチビーム形成部に出力すること
を特徴とする請求項11に記載の空間多重伝送用送信装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−222742(P2006−222742A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34385(P2005−34385)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】