説明

空隙形成が制御された研磨パッド

ポリマー内部に分散した要素網状構造と、パッド内に形成された複数の空隙と、前記空隙の少なくとも一部分に連結される前記要素網状構造の少なくとも一部分と、を含む化学機械的平坦化研磨パッドが提供される。要素網状構造、およびポリマーと反応性プレポリマーとの少なくとも1つを含む組成物を提供するステップと、組成物に対し第1の気体を導入するステップと、気体を用いて組成物の中に複数の空隙を生成するステップと、を含む化学機械的平坦化研磨パッドを形成する方法も同様に開示されている。ポリマーまたは反応性ポリマーの内部で要素網状構造に対して力を加え、続いて力を除去し空隙を形成させることによる空隙形成方法も同様に開示されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に援用されている2008年4月1日に提出された米国仮特許出願第61/041,422号明細書の利益を請求するものである。
【発明の詳細な説明】
【0002】
[技術分野]
本発明は、シリコンなどの比較的平坦なまたは薄い半導体材料から形成される半導体デバイスなどの研磨材料に使用するための化学/機械的な研磨パッドに関する。研磨パッドは、空隙を含む繊維質ポリマーマトリクスを含んでいてもよく、空隙の幾何形状、分布、サイズなどは製造プロトコルにより目標レベルに調節される。
[背景技術]
半導体ウェハー、ブランケットシリコーンウェハーおよびコンピュータハードディスクなどのマイクロエレクトロニクスデバイスの製造におけるプロセスステップとしてCMP(化学機械的平坦化)を適用するにあたっては、研磨剤含有スラリーまたは研磨剤を含まないスラリーと併せて研磨パッドを使用して、デバイスの表面の平坦化に作用を及ぼしてもよい。概して、オングストロームのオーダーで測定されるデバイスの表面の高度の平坦性を達成するためには、スラリー流をデバイスの表面とパッドとの間に均等に分布させなくてはならない。スラリーのこのような均等な分布を促進するため、研磨パッド上に複数の溝またはくぼみ構造が具備されてもよい。複数の溝は、個々に0.010インチから0.050インチの溝幅、0.010インチから0.080インチの深さを有し、隣接する溝との間で0.12インチから0.25インチの間隔をそれぞれ有していてもよい。
【0003】
溝は上述の利点をもたらすかもしれないが、それでも、半導体ウェハー上にてダイ(または単一マイクロチップ)レベルでの局所的な平坦度をもたらすには充分でないかもしれない。これは、マイクロチップ上の相互連結部などの個々のフィーチャーと溝との間の差が比較的大きいことに起因する可能性がある。例えば最先端のULSIおよびVLSIマイクロチップは、研磨パッド上の個々の溝の幅および深さよりも何倍も小さいおよそ0.35マイクロメートル(0.000014インチ)というフィーチャーサイズを有する可能性がある。さらに、マイクロチップ上のフィーチャーサイズは同様に、隣接する溝の間の間隔の数千分の1の大きさであり、その結果、フィーチャーサイズレベルでのスラリーの不均等な分布がもたらされるかもしれない。
【0004】
局所的なフィーチャースケールの平坦度の均等性を改善する取り組みにおいて、CMPパッド製造業者は、一部のケースにおいて、パッドの表面上に凹凸すなわち高低部を設けた。これらの凹凸は、20マイクロメートルから100マイクロメートル超までの範囲のサイズを有し得る。このような凹凸は、溝に比べてマイクロチップのフィーチャーサイズにより近いサイズを有し得るものの、その形状およびサイズは研磨プロセス中に変化する可能性があり、ダイヤモンド研磨粒子が取り付けられたコンディショナを用いて研磨パッドの表面を研削することによる連続的な再生を必要とするかもしれない。コンディショナ上のダイヤモンド研削粒子は、パッド、スラリーおよびデバイスの表面の間の摩擦接触の結果として変形される凹凸表面を連続的にこすり落とし、新しい凹凸を露出させて平坦度の一貫性を維持する。しかしながら、コンディショニングプロセスは、変形した凹凸を切断する鋭いダイヤモンド粒子を利用するかもしれないことから、不安定であり得る。変形した凹凸の切断は充分に制御されない可能性があり、凹凸のサイズ、形状および分布の変化の結果として、今度は平坦度の均一性の変動がひき起こされるかもしれない。その上、コンディショニングから生成される摩擦熱も、せん断係数、硬度および圧縮率などの特性を含むパッドの表面特性を変化させることにより、平坦度の不均一性に影響する可能性がある。
[発明の概要]
化学機械的平坦化研磨パッドを形成する第1の方法が提供され、その方法は、要素網状構造と、ポリマーおよび反応性プレポリマーのうちの少なくとも1つとを含む組成物を用意するステップを含む。その後、組成物に対し気体を導入し、この気体を利用して組成物中に複数の空隙を生成してもよい。
【0005】
化学機械的平坦化研磨パッドを生成する第2の方法が提供され、その方法は、要素網状構造とポリマーおよび反応性ポリマーのうちの少なくとも1つとを含む組成物を提供するステップを含む。要素網状構造は、長さ、幅および/または厚みの寸法を有し、前記長さ、幅または厚み寸法の1つはポリマーまたは反応性プレポリマーの1つの存在下で力が加わることによって変化する。力が除去された際に、前記長さ、幅または厚み寸法の少なくとも1つの値が変化し、これにより次に1つまたは複数の空隙が形成されることになる。第2の方法は、単独でおよび/または第1の方法と組合せて使用されてもよい。ポリマーと反応性プレポリマーの組合せも用いられても良い。
【0006】
ポリマー内部に分散した要素網状構造、パッド内に形成された複数の空隙、および空隙の少なくとも一部分に連結された要素網状構造の少なくとも一部分、を含む化学機械的平坦化研磨パッドも同様に提供されている。
【0007】
本開示における上述のおよびその他の特徴、並びにそれらに到達する方法は、添付図面と併せて本明細書中で記述されている以下の実施形態の説明を参照することにより、さらに明確になりより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ポリマーマトリクス内の空隙の一実施例である。
【図2】ポリマーマトリクス内の空隙の別の実施例である。
【図3】空隙を形成するためのポリマーマトリクススタック内のくぼみの一実施例である。
【図4】空隙率に対する含水量の効果を示す表である。
【図5】空隙率に対するファブリック予熱の効果を示す表である。
【図6】空隙率に対する金型内部の隙間高さの効果を示す表である。
【図7】40ミルの金型隙間高さに対する空隙率を示すパッド横断面の走査電子顕微鏡写真である。
【図8】10ミルの金型隙間高さに対する空隙率を示すパッド横断面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[発明の詳細な説明]
本開示は、以下の説明に記載され、あるいは図面中に例示されている構造の詳細および構成要素の配置の応用において限定されるものではないと認識され得る。本明細書中の実施形態は、その他の実施形態となることもでき、また、さまざまな方法で実践または実施可能な実施形態である。同様に、本明細書中で使用されている表現および用語は、記述を目的としたものであって、限定的なものとみなされるべきではないと認識され得る。本明細書における「including(〜を含む)」「comprising(〜を含む、構成する)」または「having(〜を有する)」およびこれらの語尾変化形態の使用は、列挙される事項およびその同等物ならびに付加的な事項を包含するように意図されている。別段の限定がないかぎり、「連結される(connected)」、「結合される(coupled)」および「取付けられる(mounted)」並びにこれらの語尾変化形態は、本明細書中において広義で用いられ、直接的および間接的連結、結合および取付けを包含する。さらに、「連結される(connected)」および「結合される(coupled)」並びにこれらの語尾変化形態は、物理的または機械的連結または結合に限定されない。
【0010】
本開示は、シリコンウェハーなどの基板を研磨または平坦化するプロセスにおいて使用され得る化学機械的平坦化研磨パッドに関する。研磨パッドマトリクスには、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、エポキシ、さまざまなポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルクロリド、ポリビニルアルコールおよび/または上記のものの誘導体またはコポリマーを含む熱可塑性または熱硬化性ポリマーを含んでもよい。一実施例においては、研磨パッドマトリクス(すなわち所定のパッドにより画定される体積)は、ポリウレタンプレポリマーを含んでもよく、およびウレタンプレポリマーを架橋しおよび/または重合するために供給される硬化剤を含んでもよい。
【0011】
研磨パッドは、ポリマー内部に分散された相互連結するおよび/または相互連結しない要素の網状構造などの数多くの要素を含んでもよい。要素は繊維で形成されてもよい。繊維は、(例えば、水性スラリーなど、パッドが研磨に使用される場合にパッドと共に用いられるスラリー中で)可溶性を示してもよいし、不溶性でもよく、またはそれらの混合であってもよい。さらに、繊維は、その中の全ての値および増分を含めて0.1mm〜500mmの範囲内の長さと、その中の全ての値および増分を含めて0.1μm〜100μmの範囲内の直径を有していてもよい。網状構造はファブリック(fabric)として設けられてもよい。ファブリックは、織布(woven)または不織布(non−woven fabric)であってもよい。不織布には、例えば梳き毛(carded)、スパンボンド(spunbond)またはメルトブロー布(melt blown fabric)が含まれてもよい。このようなファブリックは、概してシート形状で提供され、一面の平坦(平面)材料(例えば長さおよび幅に比べ厚みが小さいもの)であることを特徴としていてもよく、その材料は一般に1本のロールとして製造されるかまたはその他の形で提供されてもよい。他の材料のシートは、繊維質マットを含んでもよい。
【0012】
要素は所定の体積でポリマー内に存在してもよい。例えば、要素は、その中の全ての値および増分を含めて研磨パッドの2〜75体積%の範囲内で存在してもよい。要素は、研磨パッド自体の内部で比較的均等に分布してもよい。すなわち研磨パッドの所定の部分について、実質的に同じ体積の要素が存在してもよい。さらに、要素は研磨パッドの体積全体を通して層状に配置されてもよく、こうしてポリマーの1層が存在し次に要素の層が存在してもよい。要素を研磨パッドのまわりに或る幾何形状で配置してもよいということも同様に意図されている。例えば、要素をらせんとして、同心円状の輪の形または菱形または類似の交差パターンで配置してもよい。
【0013】
研磨パッドは同様に、以下では「空隙」と呼ぶ複数の細孔または空隙を含んでいてもよい。本発明において、空隙は、予備形成されおよび構造化された空隙体積を有する任意の外部追加物を使用することなく形成されてもよい。細孔または空隙は、その中の全ての値および増分を含めて0.1μm3〜1,000,000μm3の空間、例えば100μm3〜1,000,000μm3の空間を画定し得る。空隙は、ポリマーの内部での物理的または化学的相互作用によって形成されてもよい。例えば、個々の要素を加湿するポリマーの機能は空隙の創出に影響を及ぼすかもしれない。すなわち、ポリマーによる個々の要素の加湿が不充分である場合、空隙は個々の要素のまわりに作り出されるかもしれず、あるいはポリマーが個々の要素を充分に加湿した場合、空隙は実質的に削減されおよび/または消失するかもしれない。
【0014】
この概念から発展させて、繊維表面との特有な接触角度を提供する所定のポリマー樹脂を選択して、液体樹脂が繊維網状構造内部で硬化した際に、所望の空隙サイズが生み出され得るようにしてもよいということが認識され得る。液体樹脂(硬化前)と選択された繊維の表面との間などの接触角度が、親水性表面が疎水性樹脂と結び付けられるよう調整され、接触角度が比較的高く(すなわち90度超)なるようにすることが意図されている。同様に、疎水性表面を親水性樹脂と組合せて利用してもよいことも認識され得る。さらに、その疎水性または親水性の点で中間であり得る樹脂/繊維の組合せを使用し、ここでもまた硬化の際、所望の空隙体積が生成され得る。
【0015】
図1に示されている一実施例においては、細孔102は、ポリマーマトリクス106(すなわちポリマーが占有する体積)における要素網状構造104に連結されていなくてもよい。図2に示されている別の実施例においては、細孔202は、ポリマーマトリクス206における要素網状構造204と連結されていてもよい。図2を見れば分かるように、空隙は、1つ以上の要素の全てまたは一部分をとり囲んでいてもよい。図示されているように、要素網状構造204の一部分は、細孔/空隙202の少なくとも一部分の内部にあってもよい。換言すると、細孔/空隙202の少なくとも一部分は各々、要素網状構造104の少なくとも一部分を収納し得る体積を有していてもよい。
【0016】
別の実施例では、要素内に添加物を取り込むかまたは、揮発して気体を形成しひいては所定の空隙サイズおよび分布を形成しうる添加剤で要素をコーティングすることによって、空隙が形成されてもよい。したがって、この添加剤は、熱にさらされることにより、気体を放出し得るかまたは膨張を引き起こし得る化学反応または熱反応のいずれかにおいて空隙をもたらしてもよい。当業者であれば、こうして、所定の環境条件(例えば熱)に対してさらされる際に気体を発生させる化学構成要素として理解してもよい発泡剤を使用し得る、ということが認識できる。加えて、中空繊維の利用により、空隙が作り出されてもよい。1つの実施例において、繊維は、加熱時点で伸長するかまたは気体を放出し得る。さらに、レーザー、紫外線、照射などの所定のエネルギー源により活性化された際に、空隙が作り出されてもよい。
【0017】
図3に示されているさらなる実施例では、複数の要素304を含むポリマーマトリクス306の層を積重ねることで空隙が作り出されてもよく、ここでポリマーマトリクス306層は表面310内にくぼみ308を含んでいてもよい。くぼんだ表面310は、層が積重ねられた際に空隙を形成し得る。追加的な実施例では、ポリマーマトリクスに亀裂を入れて空隙を形成してよく、あるいはレーザー、エッチングまたはエンボス加工を用いて空隙を形成してもよい。
【0018】
空隙は、ポリマーマトリクスの内部に空隙体積を形成し得る。そして、所定の体積百分率のポリマーマトリクスが空隙を画定する。1つの実施例においては、空隙体積は、その中の全ての値および増分を含めて、研磨パッドの所定の体積の5%〜25%の範囲内にあってもよい。別の実施例では、空隙体積は、その中の全ての値および増分を含めて、研磨パッドの所定の体積の10%〜75%の範囲内にあってもよい。
【0019】
空隙は、研磨パッド自体の内部に比較的均等に分布していてもよい。すなわち、研磨パッドの所定の一部分につき、実質的に同じ空隙体積が存在してもよい。さらに、空隙を研磨パッドの体積全体にわたり層状に配置し、空隙の層が存在し次にポリマーマトリクスの層が存在するようにしてもよい。空隙を研磨パッドのまわりにおいて或る幾何形状に配置してもよいということも意図されている。例えば空隙を、らせんとして、同心円状に軸の形または菱形または類似の交差パターンで配置してもよい。
【0020】
研磨パッドは、ポリマーまたはプレポリマー、任意の硬化剤または添加剤および要素を前処理することによって形成されてもよい。その後、プレポリマーを、硬化剤または追加的な添加剤と組合せ、金型内で要素全体にわたり送り出してもよい。重合が進むまで、設定温度または設定温度プロファイルに金型を保ち、研磨パッドを得てもよい。プレポリマーと硬化剤との反応は結果として、比較的分子量の高いポリマーをもたらし、それは硬化または(架橋が発生する場合には)ゲル化と理解してもよい。次に研磨パッドを取り出し、所定の時間および温度でオーブン内で副次的に硬化させてもよい。
【0021】
研磨パッドがひとたび硬化すると、研磨パッドの表面を溶かすかバフ磨きして、あらゆる表面層を除去してもよい。任意の溝、刻み目または打ち抜き穴を付加してもよい。感圧接着剤などの接着剤を用いて研磨パッドをサブパッドに積層してもよい。
【0022】
上述のことから発展させて、プレポリマーは反応性であってよく、それ自体10,000以下の数平均分子量を有していてもよい。例えば、プレポリマーは反応性末端基を含んでいてよく、次にこれらを硬化剤により接合させてよく、ここで硬化剤は、反応性プレポリマー用の共反応体として理解されてもよい。例えば、プレポリマーは、反応性有機塩基性末端基を含んでいてもよく、具体的には、アミノ(−NH2)またはヒドロキシル(−OH)終端ポリエーテルを含んでいてもよく、また硬化剤は、2つ以上のイソシアネート基を含むイソシアネート(−NCO)化合物を含んでいてもよい。反応性プレポリマーは、また、ヒドロキシル終端ポリエステル類またはヒドロキシル終端ポリジエン類、例えばヒドロキシル終端ポリジエン、例えばヒドロキシル終端ポリブタジエンをも含んでいてもよい。さらに、認識できるように、硬化剤(ジイソシアネート化合物)と反応性プレポリマーの組合せを、未反応イソシアネートが幾分かの残留レベル(例えば5.0重量パーセント以下または0.1〜5.0重量パーセント以下)で残るような形で調整した際に、次に、選択された量の水を導入してよく、この水はこのときイソシアネートと反応して二酸化炭素を形成し、指摘されている通り、この二酸化炭素に依存して、パッド内部に空隙を形成してもよい。
【0023】
この点において、水は、イソシアネートと組合せられた場合に発泡剤として理解されてもよく、したがって、水は空隙を提供するために使用されてもよい気体供給源となる他の構成要素でもよい。その他の発泡剤は、転位することで、気体状態に転換するおよび/または気体形態に転換するのに充分な蒸気圧をそれ自体有するあらゆる有機化合物を含んでもよく、当該有機化合物は、当然ながらパッド内部に空隙を提供する。概して、熱にさらされた際に転位するかまたは気体に転換する構成要素を使用してもよい。例えば、AIBNまたは比較的低分子量のフレオンまたはハロゲン化フレオン型化合物を利用してもよい。例えば、クロロトリフルロメタン(CTFN)を使用してもよい。したがって、発泡剤には、圧力が放出された際に膨張する圧縮ガス、浸出した際に細孔を残す可溶性固体、気体に変わる際に気泡を発生させる液体、そして熱の影響下で分解または反応して気体を形成する化学的作用物質が含まれてもよい。化学的発泡剤は、重炭酸アンモニウムまたはナトリウムなどの単純な塩から、複雑な窒素放出剤(AIBN)までの範囲にわたる。
【0024】
より具体的な実施形態として、ヒドロキシル終端ポリエーテルとジイソシアネート終端化合物とを組合せ、発泡剤(例えば約5.0重量%以下の発泡剤)の存在下で反応させてポリウレタンを形成してもよい。ジイソシアネートは、脂肪族および/または芳香族タイプのジイソシアネート化合物の両方を含んでいてもよい。例えばジイソシアネート化合物はメチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(2.4−TDIまたは2−6−TDI)を含んでいてもよい。ポリエーテルは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび/またはポリエチレン−ポリプロピレンコポリマーを含んでいてもよい。このようなポリエーテルは、約10,000以下の分子量を有していてもよい。さらに、所望レベルの一定の架橋を誘発するべく2を超える官能価を有するイソシアネート化合物を含んでもよい。
【0025】
以上で説明したポリウレタン調合物はまた、増量剤も含んでいてもよい。増量剤は、比較的低分子の化合物であってもよく、当該増量剤は、反応性プレポリマーと反応し全体的により高い分子量をもたらし得ると理解されても良い。概して、このような増量剤は、例えば、比較的低い分子量(500以下)のジヒドロキシ化合物および/またはジアミン化合物などの化合物である。このようなジヒドロキシ化合物および/またはジアミン化合物としては、脂肪族および/または芳香族の部分上でのジヒドロキシおよび/またはジアミン官能基を使用してもよい。
【0026】
本発明によれば、本明細書中で研磨パッドを形成するための組成物には、(例えば数平均分子量が10,000を超えるような比較的高い分子量の)ポリマーの1つ、または反応性プレポリマー(指摘された通り、10,000以下の数平均分子量)の組成物が含まれていてもよいということがここで認識され得る。したがって、ポリマーは、加熱されることが可能で、流動した後により低温で凝固して研磨パッド製品を提供するポリマーの1つであってもよい。したがって反応性プレポリマーは、(共反応体の存在下で)比較的高い分子量(例えば10,000を超える数平均分子量)まで硬化され得るものであってもよい。さらに、本明細書においては、上記で再度示唆した通り、反応性プレポリマー/硬化剤の組合わせの形で、上記で示唆した通りのポリマーを利用してもよい、ということも意図されている。
【0027】
ここで、要素網状構造として繊維が利用され、このような繊維がその繊維に付随する特定のレベルの水/水分(例えば0.1〜5.0重量%)を有する場合、イソシアネートの存在下の水は、気体を発生させ、構成要素が面する界面において、繊維上に空隙を形成し得ることが認識され得る。すなわち、反応性プレポリマーとの反応のために主として標的にされるジイソシアネート反応体は、繊維上またはその繊維内部で、水分が大気レベルの残留水と接触し、反応して二酸化炭素ガスを生成し、かくして、繊維と直接結び付けられた空隙(例えば繊維の全てまたは一部分をとり囲む空隙)を生じさせる。換言すると、そのような結果、網状構造の少なくとも一部分がそのような空隙の内部にあるか、あるいはそのような空隙の少なくとも一部分が要素網状構造の一部分を含む。残留水を含有するファブリック材料が、より高い相対的空隙率レベルを提供しやすいということが認識されるかもしれない。
【0028】
平坦化または研磨中に研磨パッドが摩滅するにつれて、要素および/または空隙が露出するかもしれない。要素および/または空隙が研磨溶液と接触した際に可溶性を示し得る場合、要素および/または空隙は、さまざまな幾何形状の空隙を提供する可能性がある。
【0029】
水性スラリーのような、パッドを研磨に使用する場合にパッドと共に使用されるスラリーの中に、可溶性の要素網状構造が混合された状況でこのような空隙が特に有用である得ることが、さらに認識できる。このような可溶性の要素網状構造(例えば可溶性繊維)が使用され、この要素網状構造が溶解する場合、要素網状構造が占有する空間は、このときスラリーによって占有されてもよい。ここでは、空隙が繊維のまわりに形成されているため、繊維がひとたび溶解すると、このときスラリーが占有し得る空間体積は空隙の増加体積分だけ増大する。こうして、このようなパッドはより大きい量のスラリーを保持することができる。
【0030】
プロセス条件に関しては、特にポリマーと共に提供される含水量、界面活性剤のレベルによって、要素網状構造の予熱によっておよび金型内部の隙間高さの変更によって、空隙率は変動し得るということが分かっている。
【0031】
図4は、0.1%から0.2%までの界面活性剤レベルの増大に伴って、ポリマー(ウレタン)内の含水量が0.5%から1%まで増加し、パッドの空隙率が増加してパッド密度が減少することを示している。
【0032】
図5は、要素網状構造(ファブリック)が予熱された場合、図4に示された空隙率に比べて空隙率が減少し、パッド密度は増大することを示している。
図6は、金型の隙間高さが130ミル(0.130インチ)から100ミル(0.100インチ)まで変更された場合、空隙の発生が可能であり、空隙率は気体の不在下で、形成されたポリマーと連結する要素網状構造(ファブリック)に対して増大され得る、ということを示している。すなわち、以下でより完全に説明されているように、ポリマー内部の所定の圧縮からのファブリックの弾性回復などのような主として機械的手段として理解され得るものに起因して、空隙が形成され得る。
【0033】
まず第1に、図6における隙間高さに対する言及が、金型内に封入された体積の高さに対する言及であるということは、指摘するに値する。この特定の実施例において、金型は同様に約34インチの幅および34インチの長さも有していた。しかしながら、研磨パッドの生産に適すると考えられるあらゆる金型寸法が本明細書において意図されている。さらに、金型は、外気と連通する比較的小さい開口部をも含むようになっていてよく、こうして、金型を通気させてもよいしおよび/または金型内に空気を引き込んで空隙を形成させてもよい。すなわち、図6に示されているデータに関して、利用されるファブリックは、約130ミルの特定の厚みを有していた。したがって、約130ミルの隙間高さが備わった金型内に設置された場合、ファブリックは有意な圧縮を受けない。あるいは、100ミルの金型隙間高さがこの同じ厚み130ミルのファブリックに適用される場合、そのときファブリックは圧縮されるということが認識できる。次に、このような圧縮の解除時点でファブリックは反発でき(例えば弾性回復)、そのとき金型内およびポリマー内に空気を引き込むように作用し、それにより結果として空隙が形成される。空気またはその他のあらゆる気体の引き込みが所望されても良く、形成されたポリマーがファブリックに接着し得るという特徴の結果であってもよく、ファブリックが反発すると、減圧された領域が局所的に形成され、かくして金型ベントを通して利用可能な気体が引き込まれ、続いて空隙が生じる。したがって、130ミルの隙間高さで空隙率は比較的低く(8.7%)、100ミルの隙間高さで空隙率は比較的高い値(29.57%)まで増大させられることが分かる。
【0034】
したがって、選択されたファブリックに対する力の印加に関して、かかる力をファブリックの物理的寸法の少なくとも1つ、例えばファブリックの長さ、幅および/または厚みのいずれかに加えてもよいということがわかる。このような示された寸法の1つに対する力の印加時点で、そのときファブリックは、長さ、幅または厚みという寸法の1つが変化してもよい。力が除去されると、前記長さ、幅または厚み寸法の少なくとも1つは、再びその値を変化させ(例えばファブリックはその当初の寸法に復帰しようとする)、これは次に1つまたは複数の空隙の形成を導く。例えば、力が除去されると、圧縮された要素網状構造は回復し、上記で指示した通り、これは次に一部の気体の引き込みと空隙形成を導き得る。
【0035】
したがって、選択された金型内のファブリックの厚みを圧縮、削減し、その後力を除去し空隙を形成させることが適切であるかもしれないが、ファブリックの長さおよび/または幅および/または厚みの寸法を拡大しても類似の結果が得られるという点を理解すべきである。さらに、所望ならば、全ての寸法(長さ、幅および厚み)を削減または拡大してもよい。したがって、本開示の広義の文脈においては、要素網状構造(例えばファブリック)を利用してもよく、このファブリックは、寸法変化(長さ、幅または厚みのうちの1つの増加または減少)が発生した時点で、研磨パッド体積の内部に1つまたは複数の空隙を形成させることになる。このような点において、このとき、例えば要素の網状構造の長さ、幅または厚みの特定の寸法を拡大させ次に回復を許容した場合、要素網状構造はそのとき任意の付随するポリマーまたは反応性プレポリマーと共に1つ以上の寸法において収縮しその結果として空隙が形成されると理解してもよいことから、空隙の形成が可能であると認識できる。
【0036】
さらに、所定のファブリックに関して、その弾性特性(例えば弾性応答)に応じてこのようなファブリックを選択してよく、この弾性応答を空隙の形成に利用し得る。本発明の文脈において、ファブリックは、所定の印加力および対応する寸法変化に関して、その中の全ての値および増分を含めて1.0%〜99%という弾性回復を有していてもよいことが意図されている。ファブリックはまた、示された弾性回復特性に従って最大200%までの弾性伸びをも有していてもよい。理解されるように、比較的大きい量の弾性回復は、金型内に引き込まれる気体のレベルを比較的高くし、かくして比較的高い空隙形成量を提供する。このような方向性に沿って、ファブリックが1%〜10%の弾性回復を有することが、所定のCMPタイプの適用による空隙の発生に充分であり得るということが理解されるべきである。
【0037】
機械的手段として上記で記述されたものの使用に起因する空隙率の実際の差異は、ここでは、それぞれ図7および図8に示されている。各々、ほぼ同じ倍率で撮影されたこれらの走査電子顕微鏡写真から、形成されたポリマー内に気体を引き込んで化学機械研磨パッドの内部に空隙を作り出すためにファブリックの弾性回復を利用してもよい、ということがわかる。加えられた力に対するファブリックの回復を通して空隙を形成するこのような方法は、したがって、以上で示した通り、単独でおよび/または(例えば熱により気体を形成する添加剤からの)揮発する気体の使用と組合せた形で使用してもよい。すなわち、揮発する気体および引き込まれた気体は同一であっても(例えばこれらは両方共空気であってもよい)、また異なるものであっても(例えば空気対窒素)よい。
【0038】
複数の方法および実施形態についての上述の説明は、例示を目的として提示されたものである。それは網羅的なものとして意図されておらず、明らかに、以上の教示に照らして数多くの修正および変形形態が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械的平坦化研磨パッドを形成する方法において、
要素網状構造、およびポリマーと反応性プレポリマーとのうちの少なくとも1つを含む組成物を提供するステップと、
前記組成物に第1の気体を導入するステップと、
前記気体を用いて前記組成物中に複数の空隙を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記組成物に対して第1の気体を導入する前記ステップが、揮発して気体を提供する前記組成物の構成要素により達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学反応、熱反応および熱に対する曝露のうちの少なくとも1つの結果として、前記構成要素が揮発する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記構成要素が発泡剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記構成要素に要素網状構造が備わっている、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物に第1の気体を導入する前記ステップが、気体を発生させる条件下に前記組成物内部の発泡剤をさらすことによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記発泡剤に前記要素網状構造が備わっている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、前記要素網状構造を金型内に入れることと、その後ポリマーおよび反応性プレポリマーのうちの少なくとも1つを金型に導入することとによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の気体が、金型内での前記組成物のゲル化の間に前記組成物に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記要素網状構造の少なくとも一部分が、前記空隙の少なくとも一部分に連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記要素網状構造が相互に連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記要素網状構造がパッド内部の一層の中に提供されている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記要素網状構造の少なくとも一部分が親水性である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記要素網状構造が複数の繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記繊維がファブリックの形態で提供される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記繊維がシートの形で提供される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
研磨のためにパッドが使用される場合に、パッドと共に用いられるスラリーの存在下で前記要素網状構造の少なくとも一部分が可溶性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記要素網状構造がスラリー中で可溶性を示す複数の繊維を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記要素網状構造が長さ、幅および/または厚み寸法を有し、前記長さ、幅または厚み寸法の1つを前記ポリマーまたは前記反応性プレポリマーの1つの存在下での力を印加により変化させ、前記力を除去し、前記長さ、幅および/またはの厚みのうちの少なくとも1つの値を変化させて1つまたは複数の空隙を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の気体および第2の気体が空気を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
化学機械的平坦化研磨パッドを形成する方法において、
要素網状構造と、ポリマーおよび反応性ポリマーのうちの少なくとも1つとを含む組成物を提供するステップを含み;
前記要素網状構造が長さ、幅および/または厚み寸法を有し、前記長さ、幅または厚み寸法の1つが前記ポリマーまたは反応性プレポリマーの1つの存在下での力の印加によって変化し、前記力を除去し、前記長さ、幅および/またはの厚みのうちの少なくとも1つの値を変化させて1つまたは複数の空隙を形成する、方法。
【請求項22】
ポリマー内部に分散した要素網状構造と、
パッド内に形成された複数の空隙と、
前記空隙の少なくとも一部分に連結された前記要素網状構造の少なくとも一部分と、
を含む化学機械的平坦化研磨パッド。
【請求項23】
空隙が、0.1μm3〜1,000,000μm3の空間を画定している、請求項22に記載のパッド。
【請求項24】
空隙が、100μm3〜1,000,000μm3の空間を画定している、請求項22に記載のパッド。
【請求項25】
パッドが1つの体積を有し、
前記空隙がパッドの体積の10%〜75%を構成している、請求項22に記載のパッド。
【請求項26】
パッドが1つの体積を有し、
空隙がパッドの体積の5%〜25%を構成している、請求項22に記載のパッド。
【請求項27】
前記要素網状構造が相互に連結している、請求項22に記載のパッド。
【請求項28】
前記要素網状構造がパッド内部の1層の中に提供されている、請求項22に記載のパッド。
【請求項29】
前記要素網状構造の少なくとも一部分が親水性である、請求項22に記載のパッド。
【請求項30】
前記要素網状構造が複数の繊維を含む、請求項22に記載のパッド。
【請求項31】
前記繊維がファブリックの形で提供される、請求項30に記載のパッド。
【請求項32】
前記繊維がシートの形で提供される、請求項30に記載のパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−517853(P2011−517853A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502929(P2011−502929)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/078610
【国際公開番号】WO2009/123659
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(507255732)イノパッド,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】